(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図9に示すように、ワイヤーハーネス500として、車体ボディ内側の室内領域E1と車体ボディ外側の室外領域E2とに跨って配設されるものがある。ワイヤーハーネス500は、室内領域E1と室外領域E2との間の仕切壁Wを貫通して配設される。ワイヤーハーネス500のうち室内領域E1に配設される端部にはコネクタ510が接続され、当該コネクタ510が室内領域E1側の電気機器等に接続される。ワイヤーハーネス500のうち室外領域E2に配設される端部にはコネクタ520が接続され、当該コネクタ520が室外領域E2側の電気機器等に接続される。
【0005】
このような場合、ワイヤーハーネス500内を伝って室外領域E2から室内領域E1に水が侵入しないようする必要がある。そこで、特許文献1に開示のようにケーブルの端部に線間シール構造を設け、当該線間シール構造及びコネクタ520をコネクタカバーで覆った構造を採用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、ケーブルの端部に線間シール構造を設けると、端部構造が大型化してしまう。室外領域E2におけるコネクタ500の接続先の周辺空間や電線端部の止水空間が小さい場合には、そのような線間シール構造を設けることが困難となってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスの室外領域での端部構造を小型化しつつ、室外領域から室内領域への水の侵入を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様は、室内領域と室外領域とに跨って配設され、前記室外領域側の接続対象部品に接続されるワイヤーハーネスであって、前記室内領域と前記室外領域との境界を通って配設され、線間止水された止水ケーブルと、前記室外領域で前記止水ケーブルに接続されると共に、前記接続対象部品に接続可能な非止水ケーブルとを備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記止水ケーブルは、複数の第1電線と、前記複数の第1電線の周囲を覆うシースと、前記シースのうち前記非止水ケーブルに接続される側の端部で前記複数の第1電線の間を止水する線間止水部とを含み、前記止水ケーブルのうち前記非止水ケーブルに接続される側の端部に第1中継コネクタが設けられ、前記非止水ケーブルは、端部間で隙間がある状態で線状に集合している複数の第2電線を含み、前記非止水ケーブルのうち前記止水ケーブルに接続される側の端部に第2中継コネクタが設けられ、前記非止水ケーブルのうち前記接続対象部品に接続される側の端部に接続先コネクタが設けられているものである。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記接続先コネクタに、前記第2電線が前記接続先コネクタに導かれる部分で前記第2電線を伝った前記接続先コネクタ内への水の侵入を抑制するコネクタ止水部が設けられているものである。
【0012】
第4の態様は、
第2又は第3の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記非止水ケーブルは、前記複数の第2電線の延在方向中間部で分岐する分岐電線を含むものである。
【0013】
第5の態様は、
第2から第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記非止水ケーブルの接続先コネクタ又は前記接続対象部品の位置で前記複数の第2電線のうちの一部に電気的に接続されると共に前記接続先コネクタから延出して前記室外領域側の他の接続対象部品に接続される第3電線をさらに備えるものである。
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記止水ケーブルの中間部に、前記室内領域と前記室外領域とを仕切るパネルに形成された貫通孔に配設されるグロメットが装着されているものである。
【0014】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスであって、前記止水ケーブルが、前記室外領域において曲った状態で配設可能な曲げ可能部を含むものである。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、接続対象部品に接続可能な非止水ケーブルには、止水構造を設けなくてもよい。このため、ワイヤーハーネスの室外領域での端部構造を小型化することができる。また、非止水ケーブルは、室外領域で止水ケーブルに接続されており、この止水ケーブルが室内領域と室外領域との境界を通って室内領域に導かれている。このため、止水ケーブルによって室外領域から室内領域への水の侵入が抑制される。これにより、ワイヤーハーネスの室外領域での端部構造を小型化しつつ、室外領域から室内領域への水の侵入を抑制することができる。
【0016】
第2の態様によると、非止水ケーブルは、端部間で隙間がある状態で線状に集合している複数の第2電線を含むため、止水構造を設けなくてもよい。このため、ワイヤーハーネスの室外領域での端部構造を小型化することができる。また、止水ケーブルについては、シースと、線間止水部とによって、線間止水を行うことができる。
【0017】
第3の態様によると、コネクタ止水部によって、接続先コネクタ内への水の侵入を抑制できる。
【0018】
第6の態様によると、止水ケーブルの外周を伝う水は、グロメットによって遮られるため、室内領域への水の侵入が抑制される。
【0019】
非止水ケーブルについては、線間止水構造を省略することができる。このため、
第4の態様のように、非止水ケーブルが、前記複数の第2電線の延在方向中間部で分岐する分岐電線を含む構造とすることも、容易に実現できる。
【0020】
第5の態様によると、非止水ケーブルを途中で分岐させずに、第2電線のうちの一部を第3電線として分岐させて他の接続対象部品に接続できる。
【0021】
第7の態様によると、止水ケーブルを曲げることで、種々のレイアウトに対応し、あるいは、余長の吸収を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。
図1はワイヤーハーネスの全体構成を示す概略図である。
【0024】
このワイヤーハーネス10は、室内領域E1と室外領域E2とに跨って配設され、室外領域E2側の接続対象部品に接続される。
【0025】
室内領域E1は、例えば、車両ボディ内側の領域等であり、当該車両ボディ等によって、外部から水が掛らないように保護された領域である。
【0026】
室外領域E2は、例えば、エンジンルームを含む車両ボディ外側の領域であり、外部から水が掛る可能性がある領域である。室外領域E2には、防水構造を有する電子制御ユニット、センサ、駆動源(モータ等)等の接続対象部品60が配設されている。
【0027】
室内領域E1と室外領域E2との間には、車両ボディの一部等によって構成されるパネル70が設けられており、当該パネル70によって室内領域E1と室外領域E2とが区画されている。パネル70には、ワイヤーハーネス10を通すための貫通孔72が形成されている。
【0028】
ワイヤーハーネス10は、止水ケーブル20と、非止水ケーブル40とを備える。
【0029】
止水ケーブル20は、室内領域E1と室外領域E2との境界を通って配設され、線間止水されたケーブルである。ここで、線間止水されたケーブルとは、止水ケーブル20に含まれる複数の第1電線22の間への水の侵入を抑制する止水構造を持つケーブルをいう。
【0030】
止水ケーブル20の一端部は、室内領域E1において当該室内領域E1内に配設された電気部品又は他のワイヤーハーネス等に接続される。止水ケーブル20は、室内領域E1からパネル70に形成された貫通孔72を通って室外領域E2に向けて案内されている。止水ケーブル20の他端部は、室外領域E2内に配設されている。
【0031】
非止水ケーブル40は、室外領域E2において止水ケーブル20に接続されると共に、室外領域E2内の接続対象部品60に接続されたケーブルである。ここで、非止水ケーブル40とは、当該非止水ケーブル40に含まれる複数の第2電線の間への水の侵入を抑制する止水構造を持たないケーブル又はある程度の止水構造を持っていても当該止水構造が止水ケーブル20における止水構造よりも簡素化、小型化されており、当該第1電線22の間への水の侵入抑制効果が止水ケーブル20における止水構造の水侵入抑制効果よりも低いケーブルをいう。
【0032】
非止水ケーブル40の一端部は、室外領域E2内において止水ケーブル20の他端部に接続されている。非止水ケーブル40の他端部は、室外領域E2内に配設された接続対象部品60に接続されている。
【0033】
このため室外領域E2内に配設された接続対象部品60は、止水ケーブル20と非止水ケーブル40とを含むワイヤーハーネス10を介して、室内領域E1内の電気部品又は他のワイヤーハーネスに接続される。
【0034】
室外領域E2内においては、非止水ケーブル40に対して水が掛り得るため、当該非止水ケーブル40の第2電線42の間に水が浸入することがあり得る。しかしながら、当該非止水ケーブル40の第2電線42の間に侵入した水は、室外領域E2内において外部に排出される。
【0035】
また、室外領域E2内においては、止水ケーブル20に対して水が掛り得る。しかしながら、止水ケーブル20は線間止水されたケーブルであるため、第1電線22の間への水の侵入は抑制されている。そして、止水ケーブル20がパネル70の貫通孔72を通って室内領域E1内に導かれている。このため、止水ケーブル20の第1電線22の間を伝って、室内領域E1内に水が侵入することが抑制されている。
【0036】
また、非止水ケーブル40に対しては、止水構造が省略され、又は、簡素化、小型化された構造であるため、その端部構造は小型化されている。このため、室外領域E2内のエリア、特に、接続対象部品60近くでの配設エリアが狭い場合でも、止水ケーブル20の配設エリアを十分に確保できる。
【0037】
図2は止水ケーブル20の端部を示す概略断面図である。
図1及び
図2に示すように、止水ケーブル20は、複数の第1電線22と、シース24と、線間止水部26とを備える。
【0038】
第1電線22は、芯線と、当該芯線の周囲を覆う被覆とを備える。芯線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成された線状の部材である。被覆は、芯線の周囲に樹脂を押出被覆等することで形成された絶縁被覆である。複数の第1電線22は、線状にまとめられている。複数の第1電線22は、信号線、電源線、アース線のいずれかである。複数の第1電線22は、同じ外径のものであってもよいし、異なる外径のものであってもよい。
【0039】
シース24は、複数の第1電線22の周囲を覆う筒状の部材である。シース24は、複数の第1電線22の周囲に樹脂を押出被覆等することによって形成される。シース24の両端部のそれぞれでは、複数の第1電線22の端部が延出している。
【0040】
線間止水部26は、上記シース24のうち非止水ケーブル40に接続される側の端部で複数の第1電線22の間を止水するように構成されている。
【0041】
より具体的には、線間止水部26は、栓部材27と、カバー28とを備える。
【0042】
栓部材27は、ゴム等の弾性部材によって形成された柱状(ここでは円柱状)の部材に形成されている。栓部材27には、その一端部から他端部に向けて貫通する複数の貫通孔27hが形成されている。複数の貫通孔27hは、複数の第1電線22に対応して形成されており、それぞれ対応する第1電線22の外径と同じ又は小さい(僅かに小さい)内径に形成されている。そして、複数の第1電線22が、それぞれ対応する貫通孔27hに貫通するように挿入される。これにより、複数の第1電線22の間が栓部材27によって封止された状態となる。栓部材27は、可及的にシース24の開口縁部の近くに配設される。
【0043】
カバー28は、ゴム等の弾性部材によって形成された筒状部材であり、シース24の端部の外周部及び栓部材27の外周部を覆うように配設される。カバー28は、シース24の端部の外周部及び栓部材27の外周部に対して水の侵入を抑制するように可及的に密着している。このカバー28によって、シース24の開口縁部と栓部材27との間を経由する水の侵入が抑制されている。
【0044】
栓部材27が複数の第1電線22の間を止水し、カバー28がシース24の開口縁部と栓部材27との間を止水することで、止水ケーブル20内への水の侵入が抑制されている。
【0045】
止水ケーブル20のうち非止水ケーブル40に接続される側の端部に第1中継コネクタ30が設けられている。第1中継コネクタ30は、止水ケーブル20を非止水ケーブル40に接続するためのコネクタである。ここでは、第1中継コネクタ30は、コネクタハウジング32と、コネクタ止水栓36とを備える。
【0046】
コネクタハウジング32は、樹脂等によって形成された部材であり、複数の第1電線22のそれぞれの端部に接続された端子23を収容するためのキャビティ33aが複数形成されている。また、コネクタハウジング32の前側には、コネクタフード34が形成されている。そして、各端子23がキャビティ33a内に挿入配置されることで、各端子23が、先端部をコネクタフード34内に突出させた姿勢で保持される。
【0047】
コネクタ止水栓36は、ゴム等の弾性部材によって形成された環状部材であり、複数の第1電線22のそれぞれの端部に外嵌めされている。端子23がキャビティ33aで保持された状態で、コネクタ止水栓36がキャビティ33aの後端部内に嵌り込んでいる。これにより、第1中継コネクタ30のうち第1電線22が延出する側から、コネクタハウジング32内に水が浸入することが抑制されている。
【0048】
上記カバー28は、栓部材27からコネクタハウジング32側にも延出しており、コネクタハウジング32の外周囲を覆っている。これにより、コネクタハウジング32と栓部材27との間に対する水の侵入も抑制されている。カバー28は、栓部材27とコネクタハウジング32との間で曲っていてもよい。カバー28がコネクタハウジング32を覆っていることは必須ではない。
【0049】
なお、ここでは、止水ケーブル20の一端部に、内側コネクタ38が設けられている。内側コネクタ38自体の構成は、上記第1中継コネクタ30と同様構成とすることができる。また、止水ケーブル20の一端部に、上記線間止水部26と同様構成の線間止水部39が設けられている。もっとも、止水ケーブル20の一端部では、線間止水部39は省略されてもよい。
【0050】
図3は非止水ケーブル40の端部を示す概略断面図である。
図1及び
図3に示すように、非止水ケーブル40は、端部間で隙間がある状態で線状に集合している複数の第2電線42を含む。
【0051】
第2電線42は、上記第1電線22と同様に、芯線と、当該芯線の周囲を覆う被覆とを備える。複数の第2電線42は、複数の第1電線22と同様に、信号線、電源線、アース線のいずれかである。複数の第2電線42は、同じ外径のものであってもよいし、異なる外径のものであってもよい。
【0052】
複数の第2電線42を線状に集合させた状態に保ち、かつ、外部から保護するため、複数の第2電線42の周囲に保護被覆44が設けられている。
【0053】
保護被覆44は、例えば、複数の第2電線42の周囲に装着されたコルゲートチューブ、上記シース24と同様に、複数の第2電線42の周囲に樹脂を押出被覆等された部材、複数の第2電線42の周囲に巻回された粘着テープ、樹脂シート等で構成することができる。保護被覆44は、省略されてもよい。
【0054】
保護被覆44の両端部のそれぞれでは、複数の第2電線42の端部が延出している。
【0055】
上記止水ケーブル20とは異なり、保護被覆44の端部には、線間止水部が設けられていない。このため、非止水ケーブル40の両端部において、複数の第2電線42の間に固体が介在しない隙間が存在しており、複数の第2電線42の間に水が浸入し得るようになっている。止水ケーブル20の両端部において線間止水部が設けられていないため、上記線間止水部26が設けられた構造と比較して、栓部材27の分、簡素化及び小型化が図られる。
【0056】
非止水ケーブル40のうち止水ケーブル20に接続される側の端部に第2中継コネクタ50が設けられ、止水ケーブル20のうち接続対象部品60に接続される側の端部に接続先コネクタ56が設けられている。
【0057】
接続先コネクタ56は、非止水ケーブル40を接続対象部品60に接続するためのコネクタであり、当該接続対象部品60に設けられた受側コネクタ64に接続可能に構成されている。ここでは、接続先コネクタ56は、コネクタハウジング57と、コネクタ止水栓59とを備える。
【0058】
コネクタハウジング57は、樹脂等によって形成された部材であり、複数の第2電線42のそれぞれの端部に接続された端子43を収容するためのキャビティ58aが複数形成されている。コネクタハウジング57の先端部は、受側コネクタ64に形成された受用凹部内に挿入接続可能に構成されている。好ましくは、コネクタハウジング57が受側コネクタ64内に挿入接続された状態で、それらの間への水の侵入を抑制するためのシール部材が設けられる。そして、各端子43がキャビティ58a内に挿入配置されることで、各端子43が、コネクタハウジング57内の一定位置に保持される。コネクタハウジング57が受側コネクタ64内に挿入接続された状態で、各端子43が、受側コネクタ64内において対応する端子に接続される。端子43が筒部を有するメス端子であれば、受側コネクタ64に設けられる端子は、タブ又はピン状の挿入接続部を有するオス端子である。接続先コネクタ56と受側コネクタ64との挿入、被挿入関係(凹凸関係)、端子43と受側コネクタ64の端子のオスメス関係は、逆であってもよい。
【0059】
コネクタ止水栓59は、ゴム等の弾性部材によって形成された環状部材であり、複数の第2電線42のそれぞれの端部に外嵌めされている。端子43がキャビティ58aで保持された状態で、コネクタ止水栓59がキャビティ58aの後端部内に嵌り込んでいる。これにより、接続先コネクタ56のうち第2電線42が延出する側から、コネクタハウジング57内に水が浸入することが抑制されている。つまり、コネクタ止水栓59は、第2電線42が接続先コネクタ56に導かれる部分で第2電線42を伝った接続先コネクタ56内への水の侵入を抑制するコネクタ止水部である。
【0060】
なお、
図4に示すように、保護被覆44の端部の外周部からコネクタハウジング57の外周部に至る部分を覆うカバー55が設けられていてもよい。カバー55は、ゴム等の弾性部材によって形成された筒状部材である。これにより、コネクタハウジング57と保護被覆44との間に対する水の侵入も抑制されている。カバー55は、コネクタハウジング57と保護被覆44との間で曲っていてもよい。
【0061】
このようにカバー55を設けた構成であっても、上記線間止水を行う栓部材27が設けられた構成と比較すると、栓部材27が省略された分、止水構造を簡素化及び小型化できる。
【0062】
第2中継コネクタ50は、非止水ケーブル40を止水ケーブル20に接続するためのコネクタであり、上記第1中継コネクタ30に接続可能に構成されている。
【0063】
第2中継コネクタ50としては、上記接続先コネクタ56と同様に、コネクタハウジングと、コネクタ止水栓とを備えた構成を採用することができる。
【0064】
接続対象部品60の近くの領域が狭く、止水ケーブル20の第1中継コネクタ30の近くで比較的広いスペースを確保できる場合等には、第2中継コネクタ50に、上記線間止水部39と同様の線間止水部が設けられていてもよい。ケーブルの一端部に線間止水部が設けられ、他端部に線間止水部が設けられていない構成も、非止水ケーブルの一種である。
【0065】
また、止水ケーブル20の延在方向中間部にグロメット80が装着されている。グロメット80は、ゴム等の弾性部材によって形成されており、パネル70に形成された貫通孔27h内に嵌込可能な環状形状に形成されている。グロメット80には、その両端に貫通する貫通孔81が形成されており、止水ケーブル20を貫通孔81に貫通配置することができる。
【0066】
そして、止水ケーブル20を貫通孔27hに貫通させると共に,当該止水ケーブル20に装着されたグロメット80を貫通孔27hに嵌め込むと、止水ケーブル20の外周と貫通孔27hの内周との間がグロメット80によって塞がれる。これにより、室外領域E2の水が止水ケーブル20の外周を伝って室内領域E1内に伝わることが抑制されている。また、止水ケーブル20が当該グロメット80を介してパネル70に対して一定位置に保持される。
【0067】
上記ワイヤーハーネス10は、例えば、次のようにして、組付対象である車両等に組付けられる。
【0068】
すなわち、止水ケーブル20のうち第1中継コネクタ30側の部分にブラケット82が取付けられ、非止水ケーブル40のうち第2中継コネクタ50側の部分にブラケット84が取付けられている。ブラケット82、84は、金属板、樹脂等で形成された部材であり、止水ケーブル20又は非止水ケーブル40に圧着固定、ネジ止固定、巻付固定等によって固定されている。ブラケット82、84は、車両ボディ等にネジ止、嵌込構造、溶接等によって固定され、ワイヤーハーネス10のうちブラケット82、84による支持箇所が一定位置に支持される。
【0069】
また、止水ケーブル20に装着されたグロメット80が貫通孔27hに嵌込まれることで、止水ケーブル20のうちグロメット80の装着箇所がパネル70に対して一定位置に支持される。
【0070】
さらに、接続先コネクタ56が接続対象部品60の受側コネクタ64に接続されることで、非止水ケーブル40のうち接続対象部品60側の端部が一定位置に支持される。
【0071】
上記ワイヤーハーネス10の組付状態では、一例として、止水ケーブル20は、室外領域E2において曲った状態で配設される。
図1に示す例では、止水ケーブル20のうちグロメット80による支持箇所とブラケット82による支持箇所との間の部分は曲げ可能部20Vとして、弧状に湾曲するように垂下がっている。止水ケーブル20自体は、曲げ変形可能な複数の第1電線22の周囲に樹脂製のシース24を形成した構成であるため、上記のように曲った状態で配設可能である。
【0072】
図5は、室外領域E2においてワイヤーハーネス10に水が掛った状態を示す説明図である。同図に示すように、非止水ケーブル40のうち接続先コネクタ56に近い部分に水Lが掛ったとする。この場合、接続先コネクタ56には、コネクタ止水栓59が設けられているため、当該接続先コネクタ56等に対する水の侵入は抑制されている。また、非止水ケーブル40の第2電線42の間には水が浸入し得る。第2電線42を通って保護被覆44内に水が浸入したとしても、当該水Lは、保護被覆44のいずれかの端部から外部に排出される。このため、非止水ケーブル40内に侵入した水は、止水ケーブル20側には伝わらない。ここで、水Lを排水しやすくするため、非止水ケーブル40の一端を他端よりも高い位置又は低い位置に配置することで水Lを誘導する構成としてもよい。
【0073】
また、止水ケーブル20自体は、線間止水部39によって線間止水されているため、複数の第2電線42の間に対する水の侵入は抑制されている。このため、室外領域E2において止水ケーブル20に水Lが掛ったとしても、水が止水ケーブル20内を伝って室内領域E1に侵入することが抑制されている。また、グロメット80によって、止水ケーブル20の外周を伝った水の侵入も抑制されている。
【0074】
以上のように構成されたワイヤーハーネス10によると、接続対象部品60に接続される非止水ケーブル40には、止水構造を設けなくてもよい。このため、ワイヤーハーネス10の室外領域E2での端部構造を小型化できる。また、非止水ケーブル40は、室外領域E2で止水ケーブル20に接続されており、この止水ケーブル20が室内領域E1と室外領域E2との境界を通って室内領域E1に導かれている。このため、止水ケーブル20によって室外領域E2から室内領域E1への水の侵入が抑制される。これにより、ワイヤーハーネス10の室外領域E2での端部構造を小型化しつつ、室外領域E2から室内領域E1への水の侵入を抑制することができる。
【0075】
また、非止水ケーブル40は、端部間で隙間がある状態で線状に集合している複数の第2電線42を含むため、止水構造を設けなくてもよい。このため、ワイヤーハーネス10の室外領域E2での端部構造を小型化できる。また、止水ケーブル20については、シース24と線間止水部39によって、線間止水を行い、もって、室内領域E1への水の侵入を抑制できる。
【0076】
また、接続先コネクタ56には、コネクタ止水栓59が設けられているため、当該コネクタ止水栓59によって、接続先コネクタ56への水の侵入を抑制できる。
【0077】
また、止水ケーブル20には、グロメット80が装着されているため、止水ケーブル20の外周を伝う水は、グロメット80によって遮られ、もって、室内領域E1への水の侵入が抑制される。
【0078】
また、止水ケーブル20が室外領域E2で曲っているため、貫通孔27hの位置、接続対象部品60の位置、それらの間のスペース等の種々のレイアウトに対応することができ、あるいは、貫通孔27hと接続対象部品60との間でのワイヤーハーネス10の余長を吸収することができる。さらに、止水ケーブル20のうち室外領域E2で曲った状態で配設される部分の内部に水が溜り難くなる。また、止水ケーブル20は、ワイヤーハーネス10の組付状態では曲った状態でなく、車両走行時にサスペンションアーム等の可動部の動きに合わせて屈曲する部分に配設されていてもよい。当該屈曲する部分において、止水ケーブル20が曲がった状態となった場合にも、止水ケーブル20内に水が溜まり難くなる。
【0079】
ワイヤーハーネス10では、接続対象部品60に近い部分に、非止水ケーブル40が用いられているため、保護被覆44を省略することができる。あるいは、当該非止水ケーブル40を保護するとしても、止水ケーブル20に用いられているような封止性が高いシース24ではなく、コルゲートチューブ、巻回された粘着テープ等を保護被覆とすることができる。このため、非止水ケーブル40の途中で他の電線を分岐させ易い。
【0080】
これに鑑みた変形例を説明する。
図6は変形例に係るワイヤーハーネス110を示す概略図である。このワイヤーハーネス110では、非止水ケーブル40に対応する非止水ケーブル140は、複数の第2電線42の延在方向中間部で分岐する分岐電線142を含む。
【0081】
より具体的には、複数の第2電線42が線状に集合された状態で、その外周に粘着テープが巻回されて保護被覆144が形成されている。複数の第2電線42の延在方向中間部で、少なくとも1つの分岐電線142が分岐している。分岐電線142は、第2中継コネクタ50を介して止水ケーブル20の第1電線22のうちの1つに接続されている。保護被覆144は、複数の第2電線42から分岐電線142が分岐する部分を避けてその周囲に巻回されている。
【0082】
分岐電線142の先端部は、他の接続対象部品160に接続されている。分岐電線142と接続対象部品160とはコネクタ接続される構成であってもよいし、分岐電線142の端部に例えばセンサ等の直接接続対象部品160が接続されていてもよいし、当該直接接続対象部品160が一体化されていてもよい。
【0083】
このように、室外領域E2において複数の接続対象部品60、160が存在する場合においても、非止水ケーブル140において線間止水構造を省略することができるため、複数の第2電線42の途中で分岐する分岐電線142を含む構造とすることも容易に実現できる。また、接続先コネクタ56に接続される第2電線42を、接続対象部品60への接続に必要なもののみとすることが可能となり、接続先コネクタ56の小型化が可能となる。例えば、後述する変形例のような短絡用のバスバ244が不要となるため、その分接続先コネクタ56の小型化が可能となる。また、分岐電線142を最適な経路で他の接続対象部品160に接続できるため、分岐電線142の電線長を短くすることができる。
【0084】
上記例では、第2電線42に粘着テープを巻回して保護被覆144を形成した例で説明したが、その他、第2電線42にスリット付のコルゲートチューブを装着し、そのスリットから分岐電線142を導出させてもよい。また、第2電線42のうち分岐電線142が分岐する箇所の前後で別々のコルゲートチューブを装着するようにしてもよい。また、非止水ケーブル140として、押出被覆等によってシースが形成されたものを用い、分岐電線142を分岐させる箇所までシースを部分的に除去したものを用いてもよい。この場合、シースを除去した部分については、そのまま放置しておいてもよいし、他のコルゲートチューブを装着してもよいし、粘着テープを巻付けてもよい。
【0085】
また、接続先コネクタ56から延出する第2電線42の周囲に対して高い止水性が要求されないことから、当該接続先コネクタ56から延出する電線を、第2電線42とは別に引出すことにも適している。
【0086】
これに鑑みた変形例を説明する。
図7は変形例に係るワイヤーハーネス210を示す概略図である。このワイヤーハーネス210では、非止水ケーブル240は、接続先コネクタ56に対応する接続先コネクタ256において複数の第2電線42のうちの一部に電気的に接続されると共に接続先コネクタ256から延出して室外領域E2側の他の接続対象部品160に接続される第3電線242をさらに備える。
【0087】
すなわち、複数の第2電線42は、接続先コネクタ256内に導かれている。少なくとも1つの第3電線242の一端部も接続先コネクタ256内に配設されている。複数の第2電線42の一部は、接続先コネクタ256内で第3電線242に接続されている。複数の第2電線42の残りは、上記実施形態で説明した端子接続構造を介して接続対象部品60内の電気回路に接続されている。
【0088】
複数の第2電線42の一部と第3電線242との接続は、例えば、複数の第2電線42の一部の端部に接続された端子と、第3電線242との端部に接続された端子とを、接続先コネクタ256内において短絡用のバスバ244を通じて接続することにより行うことができる。短絡用のバスバ244は、例えば、金属板を、各端子に接続可能な端子構造を含む形状にプレス加工等することによって形成することができる。かかる短絡用のバスバ244は、接続先コネクタ256の金型成形にインサートされたものであってもよいし、金型成型後、端子の装着後にセットされるものであってもよい。
【0089】
この変形例によると、非止水ケーブル240を途中で分岐させずに、複数の第2電線42のうちの一部を第3電線242に接続して分岐させて他の接続対象部品160に接続できる。
【0090】
図8は変形例に係るワイヤーハーネス310を示す概略図である。このワイヤーハーネス310では、非止水ケーブル340は、接続対象部品60の位置で複数の第2電線42のうちの一部に電気的に接続されると共に接続先コネクタ56に対応する接続先コネクタ356から延出して室外領域側E2の他の接続対象部品160に接続される第3電線342をさらに備える。
【0091】
すなわち、複数の第2電線42は、接続先コネクタ356内に導かれている。少なくとも1つの第3電線342の一端部も接続先コネクタ356内に配設されている。複数の第2電線42の一部は、接続対象部品60内で第3電線342に接続されている。複数の第2電線42の残りは、上記実施形態で説明した端子接続構造を介して接続対象部品60内の電気回路に接続されている。
【0092】
複数の第2電線42の一部と第3電線342との接続は、接続対象部品60の受側コネクタ64又は内部の回路(内部の実装基板に形成された回路等)で行うことができる。
【0093】
複数の第2電線42の一部と第3電線342との接続を、接続対象部品60の受側コネクタ64で行う場合、当該受側コネクタ64に上記短絡用のバスバ244と同様構成の部品を受側コネクタ64内に組込み、接続先コネクタ356と受側コネクタ64との接続により、複数の第2電線42の一部の端子と第3電線342の端子とが接続される構成とすればよい。
【0094】
複数の第2電線42の一部と第3電線342との接続を、接続対象部品60の内部の回路で行う場合、複数の第2電線42と第3電線342とを、上記実施形態で説明した端子接続構造を介して接続対象部品60内の電気回路に接続し、当該電気回路に、複数の第2電線42と第3電線342とを短絡させる回路346を含ませればよい。これにより、複数の第2電線42が、接続対象部品60内の短絡回路346を通じて第3電線342に接続される。そして、第3電線342は、接続先コネクタ356の基端部から外部に導出され、その先端部に他の接続対象部品160が接続される。なお、複数の第2電線42の残りは、接続対象部品60内の電気回路に接続される。
【0095】
これにより、非止水ケーブル340を途中で分岐させずに、複数の第2電線42のうちの一部を第3電線342として分岐させて他の接続対象部品160に接続できる。
【0096】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。例えば、
図6に示す変形例の分岐電線142と、
図7又は
図8の変形例に係る第3電線242、342とが組合わされて併用されてもよい。
【0097】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。