(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱部を有するガス器具本体と、ガス器具本体の動作を設定するための操作部と、画面表示を行う表示部と、携帯端末装置と近距離無線通信を行うアンテナを有する器具側無線通信部と、携帯端末装置との所定の情報の通信を制御する制御ユニットとを備えるガス器具であって、
器具側無線通信部のアンテナは、表示部の回路基板の周囲に配設されており、
携帯端末装置が表示部に近接すると、器具側無線通信部のアンテナ位置を示す位置情報を表示部に表示させる制御構成を有するガス器具。
【背景技術】
【0002】
給湯システム、ガスコンロ、ファンヒータ等のガス器具は、加熱部を有するガス器具本体と、ガス器具本体を動作させるための操作部と、操作部で入力された入力情報や、動作情報、エラー情報等を画面表示する表示部とを備えている。例えば、給湯システムは、ガスバーナを有する給湯器と、給湯温度や風呂温度を設定する温度設定スイッチや、設定温度を画面表示するための液晶表示部を有するリモコン装置とを備えている。また、ガスコンロは、コンロバーナやグリルバーナを有するガスコンロ本体と、自動調理を行うための調理設定スイッチや、調理メニューや調理時間等の調理条件を画面表示する液晶表示部を有する操作パネルとを備えている。さらに、ファンヒータは、ガスバーナを有するファンヒータ本体と、ファンヒータ本体の上部に、設定温度を設定する温度設定スイッチや、設定温度や室温を画面表示する液晶表示部を有する天板パネルとを備えている。
【0003】
ところで、近年、住居内の複数の家電機器を通信ネットワークに接続することが提案されている。しかしながら、このように複数の家電機器を直接、通信ネットワークに接続するためには、有線、無線いずれであっても接続が煩雑となる。
【0004】
一方、従来からRFID(Radio Frequency IDentification)やNFC(Near Field Communication)の近距離無線通信を家電機器へ利用することが検討されており、例えば、家電機器である洗濯機にRFIDタグを設け、RFIDタグに携帯電話やPDA(Personal Digital Assistance)等の携帯端末装置を近接させることによって、携帯端末装置を経由して通信ネットワークと通信することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
上記近距離無線通信では、使用される周波数帯域にもよるが、各無線通信部のアンテナが所定の距離(例えば、10cm程度)以下に接近した場合に、情報の通信が可能な通信状態が確立される。そのため、機器本体と携帯端末装置との間で情報の通信を行おうとする場合、正確にアンテナが配設されている部分に携帯端末装置を近接させる必要がある。上記観点から、特許文献1では、洗濯機の前面上部に設けられた操作表示パネルの表示部とは異なる位置に器具側無線通信部のアンテナを配設し、その外面にアンテナへのタッチを想起させる視認可能な図形を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガス器具の場合、ガスバーナ等の加熱部がガス器具本体内に収容されているため、ガス器具本体には高耐熱性が必要とされ、通常、比較的厚い金属製の筺体が用いられる。それゆえ、金属製の筺体の内部にアンテナを配置させると、携帯端末装置をガス器具本体に近接させても通信状態が確立され難いという問題がある。また、給湯システムのように、屋外に給湯器が配置され、屋内に操作部や表示部を設けたリモコン装置が配置されるガス器具では、給湯器にアンテナを設けても、屋内の携帯端末装置と屋外の給湯器との間で近距離無線通信による通信状態を確立することが難しい。そのため、近距離無線通信を利用する場合、ガス器具の操作部及び表示部として使用される樹脂製のリモコン装置や、操作パネル、天板パネル等に器具側無線通信部を設けることも考えられるが、これらはガス器具本体に比べて小サイズであり、またデザイン上の制約から特許文献1のようにアンテナ位置を表示する図形を形成することが難しい。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、近距離無線通信によりガス器具と携帯端末装置との間で良好な通信状態を確立すること、及びガス器具と携帯端末装置との間でガス器具の固有情報を通信することにより、使用時だけでなく、製造時やメンテナンス時の利便性に優れるガス器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加熱部を有するガス器具本体と、ガス器具本体の動作を設定するための操作部と、画面表示を行う表示部と、携帯端末装置と近距離無線通信を行うアンテナを有する器具側無線通信部と、携帯端末装置との所定の情報の通信を制御する制御ユニットとを備えるガス器具であって、
器具側無線通信部のアンテナは、表示部の回路基板の周囲に配設されており、
携帯端末装置が表示部に近接すると、器具側無線通信部のアンテナ位置を示す位置情報を表示部に表示させる制御構成を有するガス器具である。
【0010】
上記ガス器具によれば、表示部の回路基板の周囲に器具側無線通信部のアンテナが配設されるから、小サイズのリモコン装置、操作パネル、天板パネル等に表示部が設けられている場合でも、回路基板の配置を大きく変更することなく、アンテナを設けることができる。また、リモコン装置のパネルカバーや、操作パネル、天板パネル等のパネルは樹脂で形成できるため、安価に防水性を確保しながら、ガス器具と携帯端末装置との間で近距離無線通信による通信状態を容易に確立することができる。さらに、小サイズのリモコン装置等には、アンテナ位置を表示する図形を形成することが難しいが、上記ガス器具によれば、携帯端末装置を表示部に近接させるとアンテナ位置を示す位置情報が表示部に表示されるから、図形を形成することなく、アンテナに対して携帯端末装置を正確に配置させることができる。また、携帯端末装置が表示部に近接したときのみアンテナ位置を示す位置情報が表示部に表示されるから、近距離無線通信が行われていないときに表示部の視認性が阻害されることもない。そして、給湯システムのように屋外にガス器具本体が配設される場合でも、屋内のリモコン装置等の表示部にアンテナを設けることにより、器具側無線通信部を介して屋外のガス器具本体と通信することができる。
【0011】
上記ガス器具において、好ましくは、
携帯端末装置と通信する所定の情報は、ガス器具の機器特定情報、製造履歴情報、検査履歴情報、メンテナンス情報、エラー情報、センサ情報等のガス器具の固有情報を含む。
上記ガス器具によれば、使用時だけでなく、製造時やメンテナンス時においても、ガス器具の固有情報を、ガス器具本体を分解することなく、携帯端末装置で確認できる。また、非接触でガス器具の固有情報を確認できるから、ガス器具の固有情報を取得するにあたって、ハーネスのコネクタ接続作業が不要であるだけでなく、コネクタの接続不良による通信不良も回避できる。
【0012】
上記ガス器具においては、好ましくは、
制御ユニットは、ガス器具の固有情報を記憶する主記憶部を備え、
器具側無線通信部は、主記憶部に記憶されたガス器具の固有情報の少なくとも一部を記憶する副記憶部を備えており、
制御ユニット及び器具側無線通信部は、単一の電子ユニットに設けられ、
電子ユニットの交換にあたって、副記憶部に記憶されたガス器具の固有情報を器具側無線通信部から携帯端末装置に送信させ、
電子ユニットが新たな電子ユニットに交換された後、携帯端末装置から器具側無線通信部に送信されるガス器具の固有情報を新たな電子ユニットの主記憶部に書き込む。
上記ガス器具によれば、交換作業では電子ユニットを交換するだけでよく、ガス器具の固有情報の同期は非接触で行うことができる。また、制御ユニットに不備が生じたり、停電により、主記憶部に記憶されたガス器具の固有情報を読み出すことができなくても、副記憶部から携帯端末装置にガス器具の固有情報を読み出すことができる。そして、電子ユニットを交換しても、交換前までの各種の履歴情報が新たな電子ユニットの記憶部に書き込まれるため、交換後のメンテナンス等の作業を効率的に行うことができる。
【0013】
そして、本発明は、上記ガス器具を用いる近距離無線通信システムである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ガス器具本体の内部でなく、近距離無線通信に有利なリモコン装置、操作パネル、天板パネル等の表示部の回路基板の周囲に器具側無線通信部のアンテナが設けられるとともに、携帯端末装置を表示部に近接させると器具側無線通信部のアンテナ位置を示す位置情報が表示部に表示されるから、アンテナ位置を示す図形を形成することなく、正確に携帯端末装置をアンテナに近接させることができ、容易に近距離無線通信による通信状態を確立させることができる。また、本発明によれば、製造履歴情報やエラー情報等のガス器具の固有情報を近距離無線通信により携帯端末装置に読み込むことができるから、ガス器具本体を分解することなく、的確な修理や点検を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら、本実施の形態に係るガス器具について具体的に説明する。
図1は、本実施の形態における近距離無線通信システムを適用した給湯システムと暖房システムとを備える温水供給システム1の全体構成を示す概略構成図である。
図1において、BR、DR、及びTRはそれぞれ、浴室、脱衣室、及びトイレである。この温水供給システム1は、ガス器具本体として屋外に設置された給湯器10を、操作部及び表示部として浴室BRや脱衣室DRに設置された複数のリモコン装置4,6を有するとともに、温水供給先として、浴室BR内の浴槽13や浴室BRや台所の出湯蛇口(図示せず)、浴室BR内を暖房乾燥する浴室暖房乾燥機2等を有している。
【0017】
屋外に設置された給湯器10と浴槽13とは、浴槽13内の湯水を給湯器10との間で循環させる戻り管15及び往き管16で接続されており、戻り管15には、図示しない注湯管が接続されている。また、給湯器10と浴室暖房乾燥機2とは、給湯器10で生成した温水を循環させる温水循環配管21で接続されている。なお、図示しないが、給湯器10と各出湯蛇口とは、給湯器10で生成した温水を供給する温水供給管で接続されている。
【0018】
給湯器10は、前面開放の箱型形状に形成された金属製のケーシング本体11と、ケーシング本体11の前方開口部を閉塞する金属製の扉12とを備えており、図示しないが、ケーシング本体11内には、ガスバーナ、給湯用熱交換器、暖房用熱交換器、循環ポンプや、各種運転を実行するための給湯器用制御ユニット等が設けられている。
【0019】
また、浴室暖房乾燥機2は、下方開放の箱型形状に形成されたケーシング本体22と、図示しないが、下方開口部に浴室BR側から取り付けられるグリル板とを備えており、ケーシング本体22内には、放熱用熱交換器、循環ファン、換気ファンや、各種運転を実行するための浴室暖房乾燥機用制御ユニット等が設けられている。
【0020】
浴室BR内には、湯張り運転や追焚き運転等を行うための浴室用リモコン装置4が設けられており、脱衣室DR内には、浴室暖房乾燥機2による換気運転、暖房運転、乾燥運転等を行うための脱衣室用リモコン装置6が設けられている。
【0021】
浴室用リモコン装置4は、給湯器10内に設けられた給湯器用制御ユニットと通信線を介して配線接続されており、脱衣室用リモコン装置6は、給湯器用制御ユニット、及び浴室暖房乾燥機2内に設けられた浴室暖房乾燥機用制御ユニットと通信線を介して配線接続されている。なお、上記のように、各リモコン装置4,6は、異なる運転機能を実行するためのものであるが、近距離無線通信に関してはいずれのリモコン装置4,6も同一の構成を有する器具側無線通信部が設けられているため、以下では、浴室用リモコン装置4について説明し、脱衣室用リモコン装置6については説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、浴室用リモコン装置4には、樹脂製のパネルカバー面に、給湯器10の運転状態等を画面表示する液晶表示部40が形成されており、液晶表示部40の下方には、給湯器10の電源をオン・オフする運転スイッチ41、湯張り運転、追焚き運転の各運転モードを実行する運転モードスイッチ42,43、給湯温度や湯張り温度を設定する温度設定スイッチ44等からなる操作部45が設けられている。また、液晶表示部40の表面の周囲には、LED(Light Emitting Diode)発光部46が配設されている。
【0023】
図示しないが、液晶表示部40の内方には、液晶表示部40よりも幅広の回路基板40aが配置されており、回路基板40aの周囲には、近距離無線通信を行うためのNFCタグのパターンアンテナ51が配設されている。なお、液晶表示部40は、回路基板40a上に設けられた液晶表示パネルを備え、2枚の透明基板間に液晶を封入したもので、一方の透明基板に駆動回路が形成され、後述する給湯器用制御ユニットからの制御信号に応じて駆動されるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、NFCタグを構成する器具側無線通信部50は、既述したパターンアンテナ51と、NFC用の通信制御IC(Integral Circuit)52と、不揮発性メモリ(副記憶部)53とを備える。パターンアンテナ51は、一本の導線を液晶表示部40の回路基板40aの周囲に環状に数回巻き回し、これを樹脂製のパネルカバーで覆うことにより外部から視認不能に埋設されている。近距離無線通信としては、例えば、13.56MHz帯を用いる高周波数帯域のRFIDまたはNFCが挙げられるが、これらに限定されるものでなく、表示部や携帯端末装置の形態に応じて適宜選択することができる。
【0025】
給湯器用制御ユニット70には、リモコン装置4,6以外に、図示しない浴室暖房乾燥機用制御ユニット、電磁弁、イグナイタ、各種温度センサや水位スイッチ、水流スイッチ等が電気配線を介して接続されている。また、
図3に示すように、給湯器用制御ユニット70は、機能的構成として、制御部71、各種プログラムや給湯器10等の固有情報が記憶されたメモリ(主記憶部)72、各リモコン装置4,6と通信する通信制御部73、各リモコン装置4,6に所定の画面を表示させる表示制御部74、LED制御部75、エラー検知部76等を備える。給湯器用制御ユニット70は、各リモコン装置4,6からの入力信号に応じて、湯張り運転等を行うとともに、温度センサ等の検知センサからの入力信号に応じて、給湯器10の異常が生じた場合、各リモコン装置4,6に給湯器10のエラー情報を送信する。
【0026】
給湯器用制御ユニット70のメモリ72には、給湯器10、浴室暖房乾燥機2、各リモコン装置4,6等を特定するための機器特定情報(例えば、型式、シリアルナンバ等)、製造年月日、製造工場等の製造履歴情報、各種検査の検査履歴情報、メンテナンス情報、エラー情報、各種検知センサから出力されるセンサ情報等が記憶されている。また、メモリ72には、後述する携帯端末装置8により通信ネットワークを介した所定のサーバのデータベースにアクセスするためのサーバ特定情報が記憶されていてもよい。これにより、携帯端末装置8を介して、給湯器10の固有のサーバへアクセスし所定の情報を入手できる。
【0027】
給湯器用制御ユニット70の制御部71は、運転累積時間等の運転データや、エラーが生じたり、修理が行われたりした場合の履歴データ等の固有情報をメモリ72にその都度格納する。また、制御部71は、メモリ72に格納されている固有情報の一部を浴室用リモコン装置4に定期的に出力し、不揮発性メモリ53に記憶する。これにより、停電等で浴室用リモコン装置4に電源が供給されない場合や給湯器用制御ユニット70に故障が生じて、メモリ72に格納された固有情報を読み出せない場合でも、不揮発性メモリ53に記憶された固有情報を携帯端末装置8で読み取ることができる。
【0028】
浴室用リモコン装置4は、上記した器具側無線通信部50と、制御部61、表示制御部62、近距離無線通信用の第1通信制御部63、給湯器用制御ユニット70と通信する第2通信制御部64、LED制御部65等を備えたリモコン用制御ユニット60とを備えており、リモコン用制御ユニット60は、器具側無線通信部50、液晶表示部40、操作部45、LED発光部46等と接続されている。
【0029】
携帯端末装置8は、器具側無線通信部50と近距離無線通信可能な携帯電話やPDA等からなり、例えば、スマートフォンが使用される。携帯端末装置8は、操作部85と、液晶表示部86と、パターンアンテナ81及び通信制御IC82を備える端末側無線通信部80と、通話及びネットワーク通信用の第2通信部87とを備える。また、
図3に示すように、携帯端末装置8は、機能的構成として、制御部91、表示制御部92、近距離無線通信用の第1通信制御部93、通話及びネットワーク通信用の第2通信制御部94、並びに通信ネットワークからの情報や各リモコン装置4,5からの固有情報を記憶するデータ記憶部95等を有する端末用制御ユニット90を備える。さらに、データ記憶部95には、近距離無線通信を実行するためのアプリケーションが格納されており、所定の操作を行うことにより、液晶表示部86に所定の画面が表示されるように構成されている。
【0030】
携帯端末装置8は、端末側無線通信部80と器具側無線通信部50との間で通信状態が確立すると、器具側無線通信部50を介して不揮発性メモリ53やメモリ72から所定の情報を読み取る。また、携帯端末装置8から器具側無線通信部50の不揮発性メモリ53や器具側無線通信部50を介してメモリ72に所定の情報が書き込まれる。さらに、携帯端末装置8から器具側無線通信部50を介して所定の情報が給湯器用制御ユニット70に送られると、給湯器用制御ユニット70は所定の制御動作を実行する。すなわち、この近距離無線通信システムは、不揮発性メモリ53やメモリ72に記憶されているガス器具の固有情報を携帯端末装置8で読み出す機能と、携帯端末装置8から不揮発性メモリ53やメモリ72への情報の書き込み機能と、給湯器10の動作を携帯端末装置8からの制御信号によって実行可能な制御機能とを有する。
【0031】
次に、
図4を参照して、本実施の形態の温水供給システム1を有する近距離無線通信システムでエラー情報を確認する制御動作を説明する。なお、以下では、浴室用リモコン装置4を用いた近距離無線通信の制御動作について説明するが、脱衣室用リモコン装置6を用いた制御動作も同様である。
【0032】
給湯器10に何らかの異常が生じ、給湯器用制御ユニット70から浴室用リモコン装置4に所定のエラー信号が送信されると、浴室用リモコン装置4の液晶表示部40に所定のエラーコードが表示される。エラーコードを認識した携帯端末装置8の操作者(例えば、使用者)が、携帯端末装置8に記憶されている近距離無線通信用のアプリケーションを起動すると(ステップS1)、携帯端末装置8の液晶表示部86に、
図5(a)に示すような携帯端末装置8を浴室用リモコン装置4に近接させることを指示するための表示(例えば、「リモコン装置の表示部に携帯端末装置を近づけてください」の文字表示)が画面表示される(ステップS2)。この状態で、携帯端末装置8を浴室用リモコン装置4の液晶表示部40に近づけ、携帯端末装置8と器具側無線通信部50のパターンアンテナ51との距離が所定以下(例えば、約10cm以下)になり、通信が開始されると、器具側無線通信部50で携帯端末装置8が認識され、
図3に示すようなパターンアンテナ51が浴室用リモコン装置4の液晶表示部40の形成領域に設けられていることを示す表示(例えば、「NFC」の文字表示)が画面表示される(ステップS3〜S4)。これにより、携帯端末装置8の操作者に器具側無線通信部50のアンテナ位置を認識させることができる。
【0033】
器具側無線通信部50と端末側無線通信部80との間で情報の送受信が可能な通信状態が確立すると(ステップS5)、メモリ72から機器特定情報やエラー情報等の固有情報が読み出され、読み出された固有情報が携帯端末装置8へ送信されるように器具側無線通信部50が制御される(ステップS6〜S7)。このとき、液晶表示部40の周囲に形成されたLED発光部46を点灯または点滅表示させてもよい。これにより、器具側無線通信部50と端末側無線通信部80との間で情報の通信が行われていることを認識できる。
【0034】
固有情報を受信した携帯端末装置8は、所定の情報を取得するためにサーバへの要求情報を作成し、第2通信部87により通信ネットワークを介してサーバにアクセスする(ステップS8〜S10)。なお、携帯端末装置8で受信した固有情報には、サーバのアドレス情報が含まれており、第2通信部87はそのアドレス情報に基づいてサーバに要求情報を送信する。これにより、携帯端末装置8を介して、給湯器10を通信ネットワークと間接的に接続することができる。
【0035】
図示しないが、サーバは、データベースを含み、データベースには、ガス器具に応じた所定の情報、例えば、給湯器10の取扱説明書、各種設定方法、故障診断方法、修理手順等が予め記憶されている。そして、携帯端末装置8から受信した要求情報によって特定される給湯器10に応じた応答情報を作成し、作成した応答情報を携帯端末装置8に送信する(ステップS11〜S13)。
【0036】
応答情報を受信した携帯端末装置8は、
図5(b)に示すような応答情報に応じた表示(例えば、「給湯器の扉が開いています」の文字表示)を液晶表示部86に画面表示させる(ステップS14〜S15)。
【0037】
以上のように、上記実施の形態のガス器具によれば、屋外に配置される場合のあるガス器具本体の給湯器10でなく、屋内に設置される浴室用リモコン装置4に近距離無線通信を行うための器具側無線通信部50のアンテナを設けているから、携帯端末装置8の操作者はガス器具と携帯端末装置8との間で通信状態を確立するために屋外に移動することなく、屋内に設けられた浴室用リモコン装置4に携帯端末装置8を近づけることにより、近距離無線通信による通信状態を確立することができる。また、近距離無線通信によりガス器具と携帯端末装置8との間で情報の通信が可能であるため、ガス器具本体の給湯器10を通信ネットワークに直接、接続する必要がなく、メンテナンス等のために給湯器10にハーネスを接続する必要もない。これにより、煩雑な接続設定が不要となり、接続不良が生じるのも防止できる。さらに、金属製の筺体が用いられる給湯器10でなく、樹脂製のパネルカバーを有する浴室用リモコン装置4の液晶表示部40の回路基板40aの周囲に器具側無線通信部50のパターンアンテナ51が埋設されており、携帯端末装置8を浴室用リモコン装置4に近接させると、器具側無線通信部50のアンテナ位置を示す位置情報が液晶表示部40に表示されるから、浴室用リモコン装置4の表面にアンテナ位置を示す視認可能な図形が形成されていなくても、携帯端末装置8の操作者は正確に携帯端末装置8をパターンアンテナ51に近接させることができる。これにより、ガス器具と携帯端末装置8との間で良好な通信状態を確立させることができる。また、携帯端末装置8が液晶表示部40に近接しなければアンテナ位置を示す位置情報が液晶表示部40に表示されないから、近距離無線通信が行われていない通常の使用時に液晶表示部40の視認性が阻害されることもない。そして、パターンアンテナ51は液晶表示部40の回路基板40aの周囲に設けられており、リモコン装置4のパネルカバーによって埋設されているから、安価に耐水性を確保することができる。また、ガス器具本体の給湯器10と直接、通信することなく、浴室用リモコン装置4を介してガス器具の固有情報、例えば、エラー情報を携帯端末装置8で確認することができる。従って、ガス器具本体を分解することなく、ガス器具の状態を把握することができるとともに、浴室用リモコン装置4の液晶表示部40が小サイズで、画面表示が限られている場合でも、詳細な情報を携帯端末装置8に表示させることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図6は、本実施の形態における近距離無線通信システムを適用したファンヒータ100を示す概略構成図である。図示しないが、ファンヒータ100は、金属製のケーシング本体101の内部にガスバーナ、対流ファンや、暖房運転を行うために制御ユニット等が設けられたファンヒータ本体102と、ケーシング本体101の上面に、樹脂製の操作部及び液晶表示部が一体に設けられた天板パネル200とを備える。
【0039】
図7に示すように、天板パネル200の操作部223には、運転スイッチ221や温度設定スイッチ222等が設けられており、液晶表示部230には、設定温度、室温やタイマ時間等が表示される。
【0040】
図示しないが、液晶表示部230の内方には、上記実施の形態と同様に、液晶表示部230よりも幅広の回路基板230aが配置されており、回路基板230aの周囲には、近距離無線通信を行うためのNFCタグのパターンアンテナ251が配設されている。
【0041】
図8に示すように、NFCタグを構成する器具側無線通信部250は、パターンアンテナ251と、NFC用の通信制御IC252と、不揮発性メモリ(副記憶部)253とを備える。なお、本実施の形態では、ガス器具本体であるファンヒータ本体102と液晶表示部230が設けられた天板パネル200とが一体に形成されているため、ファンヒータ100全体の運転を制御する制御ユニット270や器具側無線通信部250は、上記回路基板230aに形成された電子部品を有する単一の電子ユニット(図示せず)により構成されているが、これらは別々に設けられてもよい。
【0042】
制御ユニット270は、器具側無線通信部250、操作部223、液晶表示部230、図示しない温度センサ等と接続されている。また、制御ユニット270は、機能的構成として、上記実施の形態と同様に、制御部271、各種プログラムやガス器具の固有情報が記憶されたメモリ(主記憶部)272、通信制御部273、液晶表示部230に所定の画面を表示させる表示制御部274、エラー検知部275等を備えており、操作部223での操作に応じて、暖房運転等を行うとともに、温度センサ等の検知センサからの入力信号に応じて、ファンヒータ100の異常が生じた場合、エラー情報を報知する。
【0043】
制御ユニット270のメモリ272には、上記実施の形態と同様に、ファンヒータ100を特定するための機器特定情報(例えば、型式、シリアルナンバ等)、製造年月日、製造工場等の製造履歴情報、各種検査の検査履歴情報、メンテナンス情報、エラー情報、各種検知センサから出力されるセンサ情報等が記憶されている。また、メモリ272には、携帯端末装置800により通信ネットワークを介した所定のサーバ(図示せず)のデータベースにアクセスするためのサーバ特定情報が記憶されていてもよい。
【0044】
制御ユニット270の制御部271は、運転累積時間等の運転データや、エラーが生じたり、修理が行われたりした場合の履歴データ等の固有情報をメモリ272にその都度格納する。また、制御部271は、メモリ272に格納されている固有情報の一部を器具側無線通信部250に定期的に出力し、不揮発性メモリ253に記憶する。
【0045】
携帯端末装置800は、上記実施の形態と同様に、携帯電話やPDA等からなり、操作部850と、液晶表示部860と、パターンアンテナ881及び通信制御IC882を備える端末側無線通信部880と、通話及びネットワーク通信用の第2通信部870とを備える。また、
図8に示すように、携帯端末装置800は、機能的構成として、制御部891、表示制御部892、近距離無線通信用の第1通信制御部893、通話及びネットワーク通信用の第2通信制御部894、並びに通信ネットワークからの情報やファンヒータ100からの固有情報を記憶するデータ記憶部895等を有する端末用制御ユニット890を備える。さらに、データ記憶部895には、近距離無線通信を実行するためのアプリケーションが格納されており、所定の操作を行うことにより、液晶表示部860に所定の画面が表示されるように構成されている。
【0046】
ファンヒータ100と携帯端末装置800との間の情報の通信、及び携帯端末装置800と通信ネットワークを介したサーバ(図示せず)との間の情報の通信は、上記実施の形態と同様であるため、説明を省略し、
図9、及び
図10を参照して、本実施の形態のファンヒータ100を有する近距離無線通信システムでエラー情報を確認する制御動作、及びそれに続く電子ユニットを交換する制御動作について説明する。
【0047】
ファンヒータ100に何らかの異常が生じると、天板パネル200の液晶表示部230に所定のエラーコードが表示される。エラーコードを認識した携帯端末装置800の操作者(例えば、メンテナンス)が、携帯端末装置800に記憶されているファンヒータ100を制御するための近距離無線通信用のアプリケーションを起動すると(ステップS31)、携帯端末装置800の液晶表示部860に、上記と同様に、携帯端末装置800を天板パネル200の液晶表示部230に近接させることを指示するための表示(例えば、「ファンヒータの表示部に携帯端末装置を近づけてください」の文字表示)が画面表示される(ステップS32)。この状態で、携帯端末装置800を天板パネル200の液晶表示部230に近づけ、携帯端末装置800と器具側無線通信部250のパターンアンテナ251との距離が所定以下(例えば、約10cm以下)になり、通信が開始されると、器具側無線通信部250で携帯端末装置800が認識され、
図7に示すようなパターンアンテナ251が天板パネル200の液晶表示部230の形成領域に設けられていることを示す表示(例えば、「NFC」の文字表示)が画面表示される(ステップS33〜S34)。これにより、携帯端末装置800の操作者に器具側無線通信部250のアンテナ位置を認識させることができる。
【0048】
器具側無線通信部250と端末側無線通信部880との間で情報の送受信が可能な通信状態が確立すると(ステップS35)、メモリ272または不揮発性メモリ253から機器特定情報やエラー情報等の固有情報が読み出され、読み出された固有情報が携帯端末装置800へ送信されるように器具側無線通信部250が制御される(ステップS36〜S37)。
【0049】
固有情報を受信した携帯端末装置800は、所定の情報を取得するためにサーバへの要求情報を作成し、第2通信部870により通信ネットワークを介してサーバにアクセスする(ステップS38〜S40)。
【0050】
サーバは、データベースを含み、データベースには、ガス器具に応じた所定の情報、例えば、ファンヒータ100の取扱説明書、各種設定方法、故障診断方法、修理手順等が予め記憶されている。そして、携帯端末装置800から受信した要求情報によって特定されるファンヒータ100に応じた応答情報を作成し、作成した応答情報を携帯端末装置800に送信する(ステップS41〜S43)。
【0051】
図示しないが、応答情報を受信した携帯端末装置800は、応答情報に応じた表示(例えば、「電子ユニットの交換が必要です。ファンヒータの表示部に携帯端末装置を近づけてください」の文字表示)を液晶表示部860に画面表示させる(ステップS44〜S45)。
【0052】
そして、上記と同様に、操作者が携帯端末装置800を天板パネル200の液晶表示部230に近接させると、器具側無線通信部250と端末側無線通信部880との間で通信状態が確立され、不揮発性メモリ253に記憶されている固有情報が携帯端末装置800のデータ記憶部895に書き込まれる(ステップS46〜S52)。
【0053】
固有情報がデータ記憶部895に書き込まれると、電子ユニットの交換終了確認の表示(例えば、「電子ユニットの交換終了?」の文字表示)が携帯端末装置800の液晶表示部860に画面表示され、操作者が電子ユニットを交換した後、携帯端末装置800を操作して交換終了を選択すると、再度、上記と同様に、携帯端末装置800を液晶表示部230に近接させることを指示するための表示が画面表示される(ステップS53〜S54)。そして、携帯端末装置800を天板パネル200の液晶表示部230に近接させると、データ記憶部895に書き込まれた固有情報が新たな不揮発性メモリ253に書き込まれ、不揮発性メモリ253のデータとメモリ272のデータとを同期させる(ステップS55〜S60)。
【0054】
以上のように、上記実施の形態のガス器具によれば、ガス器具であるファンヒータ100と携帯端末装置800との間で良好な近距離無線通信による通信状態を確立することができる。また、上記実施の形態のガス器具によれば、電子ユニットの交換が必要な場合に、ファンヒータ100にハーネスを接続することなく、ガス器具の固有情報の一部または全部を新たな電子ユニットに転送することができる。これにより、機器特定情報だけでなく、個々のガス器具の状況に応じた履歴情報、例えば、運転履歴情報、エラー情報、メンテナンス情報等の固有情報を引き続き利用できるから、交換後のメンテナンス等を効率的に行うことができる。特に、制御ユニット270に不備が生じてファンヒータ100が運転不能となり、電子ユニットの交換を行うにあたってメモリ272からガス器具の固有情報の読み込みができない場合でも、器具側無線通信部250の不揮発性メモリ253からガス器具の固有情報を読み込むことができる。従って、上記実施の形態のガス器具によれば、ガス器具のメンテナンスの作業性を著しく向上させることができる。
【0055】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、表示部と操作部とが一体化されたリモコン装置や天板パネルが用いられているが、それぞれ別体で形成されていてもよい。
(2)上記実施の形態では、パターンアンテナが用いられているが、コイルアンテナやチップアンテナが用いられてもよい。
(3)上記実施の形態では、器具側無線通信部は、携帯端末装置との間で情報の送受信を行っているが、送信または受信のいずれか一方のみを行ってもよい。
(4)上記実施の形態では、アンテナ位置を示す位置情報は文字表示によって画面表示されているが、図形表示によってアンテナ位置の位置情報を表示させてもよい。また、表示部自体や発光部の点灯または点滅表示によりアンテナ位置の位置情報を表示させてもよい。
(5)上記実施の形態では、ガス器具の固有情報に基づきサーバにアクセスし、携帯端末装置にサーバからの応答情報を表示させているが、近距離無線通信システムが製造工場の検査工程等で使用される場合、所定の検査プログラムを搭載した携帯端末装置を用いることにより、サーバにアクセスすることなく、携帯端末装置で応答情報を作成してもよい。また、携帯端末装置の操作者が使用者である場合、携帯端末装置の表示部にガス器具の製造会社やメンテナンス業者等のホームページや連絡先等を表示させてもよい。