(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筐体内に収容したバーナーを燃焼させるための燃焼室と、該燃焼室内に露出された高温側ヒートシンクを介して加熱される高温部と、前記燃焼室と反対面に位置され、送風ファンにより冷却される低温側ヒートシンクを取り付けた低温部とを備える熱電変換素子とを有しており、前記筐体に形成された吹き出し口から、前記バーナーにより加熱された燃焼熱を放出する燃焼機器であって、
前記送風ファンは前記熱電変換素子により生成される熱起電力により駆動される構成であり、
前記高温側ヒートシンク及び前記低温側ヒートシンクは、前記熱電変換素子に密着する板状の基部と、この基部から互いに所定の間隔を置いて突出する複数のフィンを有し、
前記高温側ヒートシンク及び前記低温側ヒートシンクと、前記熱電変換素子の前記高温部及び前記低温部とが密着するように、付勢力をもって押さえつけられるようにした付勢部材を有し、
前記付勢部材は、前記高温側ヒートシンク及び/又は前記低温側ヒートシンクの中央領域を押さえつけるようにすると共に、前記高温側ヒートシンク及び/又は前記低温側ヒートシンクの前記フィンの間に入って、前記基部を押さえつけるようにし、
前記付勢部材および前記高温側ヒートシンクを間に介在させて前記低温側ヒートシンクに接続された固定部材を有し、
前記固定部材は枠状体であり、その枠状体により前記付勢部材を前記高温側ヒートシンクに押さえつけると共に、中央開口部から前記高温側ヒートシンクの前記フィンを突出させる
ことを特徴とする燃焼機器。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の燃焼機器は、ガスや灯油等の燃料を燃焼させ、その燃焼熱を利用して生じた起電力により送風ファンを駆動させるようにした燃焼機器であり、その用途は暖房用に限定するものではなく、燃焼により加熱作用を発揮する装置一般を含む。以下の説明では、本発明の好ましい実施形態としてファンヒータを例にあげ、図を参照しながら詳しく説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
また、以下の図において、同一の符号を付した箇所は特に言及がない限り同様の構成であるから重複する説明は省略する。
【0019】
図1〜
図3は本発明の好ましい第1実施形態に係る燃焼機器としてのファンヒータの構成を示している。
これらの図において、ファンヒータ10は、好ましくは、持ち運び可能な大きさとされ、外部電源がない場所であっても使用が可能とされている。
ファンヒータ10は、筐体12、燃料供給部20、燃焼室30、後述する熱電変換素子を備えた熱電変換装置としての熱電変換ユニット40、及び送風ファン50、この送風ファン50の冷却空気が送られる低温空間S2等を有している。
〔筐体の概要〕
図1ないし
図3を参照する。
筐体12は、例えばスチールに耐熱塗装が施して形成されており、全体的に矩形状とされ、持ち運びが便利なように側面12Bに取っ手が設けられている。
この筐体12内部には、
図2に示すように、燃料供給部20と燃焼室30が配置されており、そして、背面12Cに送風ファン50が取付けられている。
【0020】
筐体12の前面12Aには、筐体12内の熱を送風ファン50の送風により、温風として外部に吹き出すようにした吹き出し口18が形成され、この吹き出し口18には、吹き出し方向を調整するための複数枚のルーバー19が設けられている。ルーバー19は後述する変向部71と同様の傾きθ1により固定されているが、手動或いは自動でその傾きを変えられるようにして、風向きを変更可能としてもよい。なお、前面12Aには燃焼室30の火炎が視認できるように、
図1に示すように、多数の貫通孔でなる、のぞき窓16が形成されている。
図2に示すように、筐体12の背面12Cには、開閉自在な扉27を有し、この扉27を開けてガスボンベ22の出し入れが可能とされている。
〔天面部について〕
【0021】
筐体12の最上部には、上方に凸となる曲面でなるドーム状の天面部14が設けられている。天面部14には、
図1からも理解されるように、幅方向に長い並列に並んだスリット部でなる放熱口14aが適宜の数だけ形成されている。放熱口14aは、送風ファン50が駆動するまでの燃焼熱を外部に放出するための孔であり、また後で説明する。
このように、天面部14は平坦な面が無いので、ファンヒータ10の上には、一般的な意味で鍋等の器具を置くことが防止されることで安全が図られている。
【0022】
さらに、天面部14が高温状態の時には、不用意に触れたりすると火傷するおそれがある。そこで、天面部14の少なくとも上面には、高温時にだけ注意喚起する文字や記号を予め印刷するようにしてもよい。
このような高温時にのみ発色、もしくは変色する塗料の成分としては、例えば、可逆性タイプのサーモクロミック機能材料として、無機化合物では、Ag
2HgI
4やCu
2HgI
4等のAg,Cu,Hg,Pbなどの重金属のヨウ化物や錯体が実用化されている。また、有機化合物では、縮合芳香環置換エチレン誘導体、コレステリック液晶や3,6−ジメトキシフルオラン、ローダミンBラクタムなどを用いることができる。特に、有機化合物系材料の場合は50〜100℃の範囲で変色性を示すので好ましい。
【0023】
〔燃焼関係について〕
燃料供給部20は燃焼室30のバーナー32に燃料を供給するための部分である。
本発明の燃焼機器に用いられる燃料にはガスや灯油等を利用することができるが、本実施形態の場合の燃料はガスであり、さらに、
図2に示すように、燃料を供給するための燃料源を、燃料供給部20に対して着脱可能なように、圧縮された液化ガスが収容されたカートリッジ式ガスボンベ22とされている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、ガスボンベ22は、ボンベ接続部23に対して、着脱可能となっている。ガスボンベ22から吐出された燃料ガスは、ボンベ接続部23内に設けられたガバナに入って圧力調整され、模式的に示したガス弁33を介してバーナー32に供給される。これにより、バーナー32により燃料ガスが燃焼される。なお、ガス弁33は、例えばノーマリクローズの電磁弁を利用することができる。
なお、ガスボンベ22が加熱されてその内部圧力が異常に上昇した時、安全機構が作動して外れるように、ボンベ接続部23とガスボンベ22との着脱はマグネットとされている。このボンベ接続部23は、
図1の操作摘み部28と接続されている。
【0025】
使用者は、手動により、操作摘み部28を回転することにより、
図2の電磁弁でなるガス弁33を強制的に開き、引き続き操作摘み部28を同じ方向に動かすことで、図示しない圧電着火手段でなるイグナイタ電極34から火花放電を行い、バーナー32の噴出する燃料ガスに点火する。
燃焼火炎中には、火炎検出装置が配置されている。この実施形態では、例えば、火炎検出装置として
図2で模式的に示す熱電対26を用いることができ、バーナー32の燃焼中は、熱電対の温接点26aが加熱され、火炎以外の箇所に配置された冷接点26bとの間に温度勾配を生じるので、該熱電対26に起電力が生じる。この電力は電磁弁で構成されたガス弁33の電磁石を駆動して開弁状態に保持するので、バーナー32からは燃焼ガスが出続け、燃焼が持続される。バーナー32としては、例えば、ブンゼンバーナーを用いることができる。
【0026】
また、火炎検出装置としては、上述のように熱電対26を利用することができるが、フレームロッド電極を用いて火炎電流を検出することも可能である。しかしながら、フレームロッド電極では、それ自体は起電力を生成しないため、火炎を検知したりガス弁(電磁弁)33の駆動電力を得たりするためには、別途電力が必要になってしまい、外部電源や蓄電池を不要とするファンヒータ10においては、最も好ましい態様とは言えない。この点、熱電対26では、その起電力により火炎FRの検知やガス弁33の駆動電力を得ることができるし、温接点26aに燃焼による煤が付着しても確実に動作するため好ましい。
【0027】
さらに、
図1において、ファンヒータ10の前面の摘み部28の上には火力変更用ノブ35が設けられている。この火力変更用ノブ35は、ガス弁33の後段でバーナー32の前段には、図示しない2段階式調整弁を切換えるものである。この切り替えにより、本実施形態のファンヒータ10では、バーナー32へ供給するガス量を複数の段階に設定するように調整できる。この実施形態では、2段階として、バーナー32の火力をF1、F2の大小2通りに変更できるようにしている。
【0028】
〔燃焼室及びその周辺の構成〕
図2を参照する。
図において、筐体12の内部は中央部からやや後方位置で、内部空間を区分するように垂直に配置された区分壁29により、奥行き方向Xに関して図の左側の前側領域と、図の右側の後側領域とに2つの空間を区分している。前側領域が燃焼室30を有する高温空間S1であり、後側領域が低温空間S2である。
燃焼室30は燃料ガスが燃焼する高温空間S1を有し、この高温空間S1にバーナー32及びイグナイタ電極34が配設されている。そして、燃料供給部20から供給された燃料ガスはバーナー32に送られるようになっている。
図3に示すように、バーナー32は、例えば、高温空間S1の横幅方向Yに長い棒状であり、その長手方向に複数の炎口32aを一列に並べることで、高温空間S1の横幅方向Yに沿って一列に満遍なく火炎を形成するようにしている。
また、燃焼室30の正面壁30bの一部又は全体は耐熱ガラスで形成され、
図1ののぞき窓16から内側が視認できる構成とされている。
図2に示す正面壁30bの上端部は、送風ファン50側(背面12C側)に向って上昇するように傾斜する壁面でなり、これにより、吹き出し口18に向かう空気流路の整流壁37になると共に、燃焼室30内を上昇する空気流の流路断面積を狭めている。
区分壁29の上端部は機器前方に向かって90度折れ曲がり、水平に伸びる邪魔板39が設けられている。
【0029】
これら整流壁37と邪魔板39の作用により、燃焼室30を上昇する燃焼熱は、燃焼室30の上部に配置され、機器前方に向いた上部開口82により直上への流れが抑制されて可及的に機器前方へ、すなわち吹き出し口18に向かうようにされている。
さらに、この上部開口82と放熱口14aとの間には、送風ファン50の駆動時に上部開口82からの燃焼熱が放熱口14aから抜けるのを抑え、この抑えられた燃焼熱を送風ファン50からの風によって吹き出し口18の方向に向かわせる変向部71が設けられている。
具体的には、変向部71は、筐体12の上部において、天面部14に至る位置には、機器の後部を基端として、機器の前方(吹き出し口18側)へ向かって僅かに下降する様に傾斜する板状として形成されている。
そして、変向部71よりも正面側は上方へ抜ける開口72となっており、送風ファン50が駆動するまでの燃焼熱はこの開口72を抜けて天面14に向かい放熱口14aから抜けるようになっている。これに対して、変向部71と邪魔板39の間は、背面12Cの外気を取り込む吸気口53と前面12Aの吹き出し口18とをつないで温風を放出するための主流路の一部を構成する空気流路83となり、送風ファン50の駆動後、上部開口82から出る燃焼熱は、その流れが送風ファン50による冷却空気で吹き出し口18方向にベクトルを変えると共に、該冷却空気と混ざった温風となり、吹き出し口18から前方に、外部へ向けて、吹き出すようになっている。
このようにして、変向部71があることによって、送風ファン50の駆動前と駆動後の上部開口82からの燃焼熱の流れが変わるようになる。
【0030】
図2に示す送風ファン50は、主に、
図1及び
図3の吹き出し口18から温風を吹き出させるための「温風吹き出し機能」を果たすとともに、同時に熱電変換ユニット40の低温部を冷却するための「冷却機能」を有するものである。即ち、バーナー32が燃焼し続けると、その燃焼熱で熱電変換ユニット40の低温部も温度が上昇し易くなるが、一旦、送風ファン50が起動すると、その風で該低温部は後述する低温側ヒートシンク44を介して冷却され、これにより、送風ファン50が駆動される期間は、高温部43と低温部44との温度差を維持できるようになっている。
具体的には、送風ファン50は、吸気口53と吹き出し口18とをつなぐ主流路(上記温風吹き出し機能を果たすための図の空気流AR4の流路)において、燃焼室30の上部開口82よりも上流に配置され、吸気口53から外気を筐体12内に取り入れて、低温側ヒートシンク44に向かって冷却用の空気を送ると共に、吹き出し口18に向かって空気を送る機能を果たす。
図2に示す送風ファン50は、好ましくは、モータ52の駆動により、軸流方向(図のX方向と同じ)に沿って送風するプロペラ51を有する軸流ファンである。
この送風ファン50は、外部電源を用いずに、
図3の熱電変換ユニット40により生じた熱起電力で駆動する。
【0031】
図3に示すように、燃焼室30である高温空間S1は、正面壁30b、側面壁30c,30d、背面壁30e(区分壁29と同一箇所)で囲まれた内部筐体のような空間により画成されている。
図4と
図5は、この空間を正面壁30bだけ取り外した状態にて具体的構成を示したものである。
図3に戻ると、送風ファン50の風は、側面壁30c,30dの外側を、AR1,AR1で示すように筐体12の内部壁面流のように前方へ回り込むようになっている。つまり、燃焼室30は相当に加熱されているために、燃焼室30の側面壁30c,30dと筐体12の内壁との間に空気の層を設けることによって、燃焼室30からの熱が筐体12の外面へ移動するのを防止するのであり、このため、筐体12の外面はバーナー32の燃焼中も過度に熱くなることが無い。
そして、送風ファン50からの冷却空気は、低温空間S2において熱電変換ユニット40の低温側ヒートシンク44を冷却しつつ、
図3に示すように、燃焼室30より両側外側でかつ筐体の壁面内側において機器の前方に向かう、空気流AR1,AR1となり、また、
図2に示すように、低温空間S2において上方に向かう空気流AR4となって空気流路83を通り抜けるのである。
かくして、上部開口82を抜ける燃焼熱を有する空気流AR2は、空気流路83を通り抜けた空気流AR4により、吹き出し口18に適切に導かれることになる。
【0032】
ここで、吹き出し口18の下端部18aの周辺と燃焼室30との間には、送風ファン50により生ずる吹き出し口18側に向かって上昇する空気流AR3の侵入を阻む封止部材81が設けられている。本実施形態の場合、封止部材81は、正面壁30bの上部において、整流壁37の基端付近から吹き出し口18の下端部18aまでを塞ぎ、吹き出し口18側に向かって緩く下降傾斜する平板とされている。この封止部材81は平面視では
図3の一点鎖線の平行斜線で示す範囲に配置され、この範囲を封止している。
【0033】
この封止部材81の機能を以下に詳細に説明する。
図3にAR1で示すように、送風ファン50からの送風が
図2のAR4として筐体内を通過するだけでなく、正面壁30bの前面(吹き出し口18側)に回り込み、これにより
図2に示すように該正面壁30bと筐体の間をAR3として上昇する。封止部材81は、この上昇流AR3の侵入を阻むことで筐体10の上部に送られないようにする。これにより、空気流路83を通過する空気流AR4の吹き出し口18に向かう勢いを上昇流AR3が阻害する事態を防止できる。また、上昇流AR3により筐体10の上部領域に熱がこもり、内部温度上昇による部品の熱損傷などを効果的に防止できる。
これに加えて、封止部材81は、燃焼室30の正面壁30bから吹き出し口18の下端部18aまでを塞いでいるので、この封止部材81と、燃焼室30の正面壁30bと、上述した変向部71とで筐体12内の上部開口82と吹き出し口18との間の空間S5を画すことで、吹き出し口18方向へ導いた温風を効率よく吹き出し口18から排出させることができる。
しかも、機器を運転していない時などに、天面部14の放熱口14aから機器内部に落下する埃や塵等の異物が入った際には、変向部71上に落下したものは、傾斜面に沿って開口72に移動される。この異物等は、開口72を抜けて封止部材81に落ちる。そうすると、この異物等は、封止部材81の傾斜面に沿って、機器前面の吹き出し口14から外部に排出される。このように、封止部材81は、筐体12内に侵入した異物等を適切に案内して機器外部に排出する異物排出部としての機能も発揮する。
【0034】
具体的には、変向部71の先端71aは、
図2の一点鎖線の仮想線で示されるように、機器の奥行き方向Xについて、封止部材81の後端81aよりも吹き出し口18側(
図2の左側)に配置され、これにより、落下してきた異物を封止部材81上に容易に落下可能にしている。さらに、上述した整流壁37(正面壁30bの上端部)は、送風ファン50側(
図2の右側)に向かって上昇するように傾斜することで、奥行き方向Xについて、変向部71の先端71aよりも送風ファン50側に位置するようにしている。従って、送風ファン50の駆動前に放熱口14aから落下してきた塵や埃などの異物が、燃焼室30の上方や空間S5を浮遊していても、該異物を整流壁37に当てさせて、それを封止部材81の上に落すことができ、上部開口82の中への侵入を可及的に防止することができる。
また、封止部材81の先端部81bは、吹き出し口18の最下段よりも上方にして、異物を取り出し易くしつつ、折り曲げ加工されて上昇流AR3が吹き出し口18から吹き出すことを防止している。
【0035】
〔熱電変換ユニット等〕
この実施形態では、熱電変換装置は、例えば熱電変換ユニット40として構成されている。
熱電変換ユニット40は
図2から理解されるように、区分壁29に固定されている。固定方法は後述する。
熱電変換ユニット40は、
図2、
図4、
図5にその配置位置が示されていて、
図10には熱電変換ユニットの水平断面が示されている。
これらを適宜参照しながら、その構成例を説明する。
図2において燃焼室30(高温空間S1)に露出している熱電変換素子41の高温部41a(
図6参照)に接続された高温側ヒートシンク43と、低温空間S2に露出している熱電変換素子41の低温部41b(
図6参照)に接続された低温側ヒートシンク44は、それぞれ同じ材料で形成されたヒートシンクであり、熱伝導性の良好な金属、例えば鉄、銅、アルミニウム等から選ばれる材料が用いられている。
【0036】
図6および
図10から理解されるように、高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク44とは熱電変換素子41を密着状態で挟み込んでおり、熱電変換素子41に面状に密着する板状の基部43b,44bと、この基部43b,44bから互いに所定の間隔を置いて突出する複数のフィン43a,44aを有することにより、熱交換に適する大きな表面積と、大きさに応じた熱容量を持つように作られている。
ここで、熱電変換素子41は、ゼーベック効果を利用して熱起電力を発生するゼーベック素子(半導体素子)を用いている。このような熱電変換素子41は、n型半導体とp型半導体を貼り合わせて形成されており、加熱されると異種半導体の境界間でキャリア移動が行われ、起電力を生じる。
この場合、電流の電位差をV、高温側と低温側の温度差をΔTとすると、
V=aΔT(aはゼーベック係数)
が成立し、高温側と低温側の温度勾配が大きい程、生成される起電力による電圧は大きくなる。
【0037】
また、この実施形態で特徴的なのは、高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク44との大きさが異なり、異なる熱容量となることである。これにより適切な温度勾配を得て、十分な起電力を生成し、効果的に送風ファン50の高い回転数を得るようにしている。また、高温側ヒートシンク43の熱容量を小さくすることで、立ち上がり時において、高温側ヒートシンク43を迅速に加熱し易くし、これにより、送風ファン50を早く駆動することができる。本実施形態の場合、高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク44との大きさの割合は、1対2程度に設定されている。
【0038】
なお、燃焼室30内では、燃焼時における火炎FRと高温側ヒートシンク43の距離を近くして、立ち上がり時において、高温側ヒートシンク43を迅速に加熱するとよい。しかし、火炎FRと高温側ヒートシンク43との距離は近いほど、高温側ヒートシンク43への熱伝導は大きくなるが、近すぎると熱電変換ユニット40内の熱電変換素子41を損傷してしまう恐れがある。そこで、本実施形態の場合、既に説明したように、
図1の火力変更用ノブ35により、
図2のバーナー32への燃料ガスのインプット量を2段階に切換え可能としているが、このような能力調整において、最大燃焼時に、高温側ヒートシンク43に対する加熱で熱電変換素子への損傷を防止できる程度に高温側ヒートシンク43の大きさ及び燃焼室30内への突出度を決定し、これに従って、低温側ヒートシンク44の大きさを、得られる起電力との関係において決定している。
【0039】
本実施形態では、上述のように、筐体は、機器の正立状態において、前面側から後面側へかけて、区分壁29を基準にして、高温空間S1と低温空間S2に区分される。高温空間S1にはバーナー32のある燃焼室30を、低温空間S2には送風ファン50を配置することで、筐体12内には、機器の奥行方向に沿って、燃焼室30、熱電変換ユニット40、送風ファン50の各部を互いに対向するように配置でき、きわめてコンパクトな燃焼機器を実現できる。しかも送風ファン50を軸流ファンとして低温側ヒートシンク44に接近して対向させることができ、冷却効率も高い。
【0040】
図6は、熱電変換ユニット40の構成例を分解斜視図で示している。
図において、熱電変換ユニット40は、厚みの薄い正方形もしくは矩形でなる熱電変換素子41と、熱電変換素子41の高温部41aと低温部41bを挟み込むように密着して配置されるふたつの伝熱部材42a,42bと、これらを表裏から挟むように密着固定される高温側ヒートシンク43およびそれより大きな低温側ヒートシンク44と、高温側ヒートシンク43を囲み、内部に熱電変換素子41および伝熱部材42を収容する枠部材45と、枠部材45の開口内周に収容され、熱電変換素子41に対する各ヒートシンク43,44の密着力を付与する付勢部材46と、低温側ヒートシンク44に対して固定されるとともに、熱電変換素子41、伝熱部材42、高温側ヒートシンク43、枠部材45を間において押さえ込む固定部材62とを有している。
【0041】
熱電変換素子41は既に説明したとおり、ゼーベック素子であり、2枚の異種半導体を張り合わせて構成されていて、給電コード41cが引き回され、送風ファンのモータ52(
図2参照)の図示しない駆動回路に接続されている。
伝熱部材42は、特にアルミニウムの鋳造品等でなるヒートシンクの接触面における微細な凹凸面などに充填されることで、むらなく密着されるような均一な面、つまり平坦面を作り出すものである。このため、熱伝導率に優れた合成樹脂等の液剤を塗布するなどして得ることができるもので、例えば、シリコーングリース等を使用することができる。
高温側および低温側の各ヒートシンク43,44の構成については既に説明した通りであり、高温側ヒートシンク43が、低温側ヒートシンク44よりも小さくされている理由は2つあり、ひとつは、送風ファンの駆動に必要とされるための十分な熱勾配を迅速に得られるように熱容量を変えるためである。もうひとつの理由は、既に説明した二段階の燃焼時に、ともに、バーナー32の火炎により、熱電変換素子41を損傷しない程度に火炎とヒートシンクとの距離を保つために高温側ヒートシンク43の大きさを決定するためである。熱電変換素子41の耐熱温度(本実施形態の場合、250℃)を超えた過熱による故障を防止しなければならない。なお、熱電変換素子41の高温部41aは送風ファン50の駆動と報知手段59(ファンヒータが駆動していることを報知する手段であり、
図1参照)の点灯を維持できるだけの温度であれば足り(例えば、220℃)、熱電変換素子41の耐熱温度を超えないように、送風ファン50が駆動した後は高温側ヒートシンク43を冷却するようにしてもよい。
【0042】
枠部材45は、高温側ヒートシンク43の基部43b、熱電変換素子41、伝熱部材42を囲んで収容して、高温側ヒートシンク43、熱電変換素子41、及び伝熱部材42の熱が固定部材67に伝達するのを防ぐ断熱材であり、さらに、ゴミ等の異物の侵入も防止している。枠部材45の内側開口の形状は、高温側ヒートシング43の外形と略同形で、しかもわずかに大きな内側開口を有する。枠部材45は、例えば、セラミック等の無機繊維からなる断熱材で形成されている。
【0043】
付勢部材46は、高温側ヒートシンク43及び低温側ヒートシンク44と、熱電変換素子41の高温部41a及び低温部41bとが密着するように、付勢力をもって押さえつけられるようにするための部材であり、本実施形態の場合、高温側ヒートシンク43を熱電変換素子41側に押し付ける付勢力を有している。付勢部材46は付勢力を発揮し得るものであれば形状や材質は問わないが、本実施形態では、熱電変換素子41側に向けて、中央部が湾曲突出する金属板バネで構成されている。この付勢部材46は
図6において、互いに所定距離を隔てて、上下に平行に配された帯状部分46b,46bの間をつなぐように架け渡され、互いに間隙を有するように平行に形成された複数の湾曲櫛部46aを有している。この湾曲櫛部46aは、高温側ヒートシンク43を付勢力をもって押さえつけても、フィン43aが
図4に示すように燃焼室30に露出可能なように、
図10に示すように、高温側ヒートシンク43の複数のフィン43aどうしの間に挿入可能な細い幅とされている。換言すれば、
図6及び
図10に示すように、湾曲櫛部46aは4本設けられ、互いの間隙は広いスリットとして開口され、高温側ヒートシンク43のフィン43aはこの各湾曲櫛部46aの間のスリットを抜けるようになっている。
【0044】
固定部材62は、付勢部材46を押さえ付けるようにして低温側ヒートシンク44に接続されることで、低温側ヒートシンク44との間にある各部材46,45,43,42,41を固定させる押え治具であり、
図7ないし
図10に詳しく示されている。
これら
図7ないし
図10、および
図4、
図5を参照しながら、固定部材62について説明する。
固定部材62は、段付き凹部を有する金属枠でなる枠状体であり、この枠状体と低温側ヒートシンク44との間に付勢部材46と枠部材45を介在させ、そして、付勢部材46を高温側ヒートシンク43側(低温側ヒートシンク44側)に押さえつけることで、その付勢力により、付勢部材46や枠部材45だけではなく、高温側ヒートシンク43、伝熱部材42、及び熱電変換素子41も位置決め固定している。これにより、付勢力をもって押さえつけられた高温側ヒートシンク43は、その主面が熱電変換素子41の高温部41aの主面と密着するようになる。なお、固定部材62は、例えば板金製品である。
【0045】
具体的には、枠状体である固定部材62の上側と下側には、
図7〜
図9に示すように、低温側ヒートシンク側に向って折り返される折り返し部63,63が設けられている。この折り返し部63,63は、付勢部材46と係止される係止部である。すなわち、折り返し部63,63に対して、
図6に示す付勢部材46の帯状部分46b,46bが係止され、これにより、付勢部材46は、高温ヒートシンク43に押さえつけられても外れずに、付勢力を発揮できる。そして、付勢部材46を高温側ヒートシンク43に押さえつけると、
図10に示すように、フィン43aの間に挿入された複数の湾曲櫛部46aは、高温側ヒートシンク43の基部43bの中央領域(熱電変換素子41の中央領域に対応した領域)をバランスよく押さえつける。さらに、湾曲櫛部46aは、高温側ヒートシンク43と密着する領域を増やすようにして撓みながら付勢力を発揮させているので、高温側ヒートシンク43の基部43bと熱電変換素子41との密着面積(図の場合、伝熱部材42を介した密着面積)を可及的に大きくすることができる。
以上のようにして、高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク44は、
図6に示す熱電変換素子41の高温部41aと低温部41bとに可能な限り広い面積で密着するので、熱電変換効率が向上する。さらに、湾曲櫛部46aは、高温側ヒートシンク43と密着する領域を増やすようにして撓みながら、低温側ヒートシンク44側に付勢力を発揮させているので、例えば固定部材62やこの固定部材62を取付ける燃焼室30の背面壁30eが経年使用による熱変形をして、高温側ヒートシンク43を押さえつける湾曲櫛部46aの撓み方が変わったとしても、高温側ヒートシンク43を押さえ続けることができる。しかも、湾曲櫛部46aはフィン43aの間に入って、基部43bの中央領域を押さえつけて、基部43bと熱電変換素子41の中央領域との密着を高めているので、基部43bと熱電変換素子41との熱変形による中央領域の浮き上がりを防止することができる。かくして、高い熱電変換効率を長期間持続でき、性能の低下を防止できる。
【0046】
また、
図6〜
図9に示すように、固定部材62は、その枠状体のうち、左右一対の帯状部67,67に、それぞれ低温側ヒートシンク44側に部分的に突出した複数の凸状部84(図の場合は合計4つ)が形成され、この凸状部84の領域のみが
図10に示すように低温側ヒートシンク44と接続されている。具体的には、
図7に示すように、凸状部84には、低温側ヒートシンク44に接続するためのビス孔84aが形成され、このビス孔84aの周囲84bのみが低温側ヒートシンク44と接触している。従って、高温側ヒートシンク43の熱が熱電変換素子41に伝わらずに固定部材62を介して低温側ヒートシンク44に逃げることを可及的に防止できる。
【0047】
そして、固定部材62は、
図10に示すように、その中央開口部69から湾曲櫛部46aで直接押さえつけられていない高温側ヒートシンク43のフィン43aを突出させ、この突出させたフィン43aを、
図4及び
図5に示す燃焼室30の壁部(背面壁30e)に形成された貫通孔49から燃焼室30内に露出(図の場合は突出)させる構成としている。従って、熱電変換ユニット40は、
図4及び
図5に示すように区分壁29(背面壁30e)のバーナー側には高温側ヒートシンク43が露出すると同時に、送風ファン50側には低温側ヒートシンク44が露出する。なお、貫通孔49は高温側ヒートシンク43の外形と同形であり、わずかに大きくされている。
【0048】
このようにして熱電変換ユニット40は燃焼室の背面壁30eに接続して組み付けられるが、本実施形態の場合、以下のようにして、燃焼室の背面壁30eに接続される。
即ち、
図5及び
図7に示すように、固定部材62の帯状部67,67には、その各外縁の中間付近で背面壁30e側に向かって折り返されて、先端が屈曲された掛止片66,66が形成されている。この掛止片66,66は、
図5に示す背面壁30eの小さな縦スリットでなる固定孔29aに差し込んで、全体をやや下にスライドさせることで、引っかけられるようになっており、これにより熱電変換ユニット40を燃焼室の背面壁30e(区分壁29)に接続して容易な組み立てが可能となる。
【0049】
ここで、固定部材62は、
図5〜
図7に示すように、低温側ヒートシンク44側とは反対側に部分的に突出して、燃焼室の壁部(背面壁30e)に突き当たる突き当て部65を有している。この突き当て部65は、奥行き方向の位置規制手段であり、帯状部67,67の各外縁が燃焼室の背面壁30e側に向かって折り返されて形成され、外側の4か所に等間隔で配置されている。これにより、
図5に示すように、低温側ヒートシンク44を留め具86で背面壁30eに押し付けるように留めたとしても、突き当て部65の先端が背面壁30e(区分壁29)に突き当たり、
図4に示す燃焼室内に突出した高温側ヒートシンク43が突出し過ぎないようにしている。従って、高温側ヒートシンク43の過度な加熱を抑制して、熱電変換素子41の破損を防止できる。
【0050】
〔燃焼室と高温部との関係〕
本実施形態の場合、高温側ヒートシンク43が早く加熱されて、送風ファン50の起動時間を短縮できるように、以下の種々の工夫がなされている。
先ず、
図3及び
図4に示すように、高温側ヒートシンク43は燃焼室30内に配置(高温空間S1に露出)されている。具体的には、高温側ヒートシンク43のフィン43aは燃焼室30の背面壁30eから正面側に向かって突出している。
また、高温側ヒートシンク43は、複数枚のフィン43aが高温空間S1の横幅方向Yに列設した状態である。
また、高温側ヒートシンク43は低温側ヒートシンク44に比べて小さく、バーナー32への燃料ガスの供給量を最大にした場合、約40秒で低温側ヒートシンク44との温度差が150℃になるようにされている。
また、バーナー32への燃料ガスの供給量を最大にし、火炎FRを最大にした状態において、高温側ヒートシンク43の主面部(正面部)はその火炎FRの先端部と対面するように配置されている。なお、高出力での燃焼時においても、火炎FRが高温側ヒートシンク43に接触しないように、バーナー32は高温側ヒートシンク43から所定の距離をおいて配置されている。
【0051】
〔放熱口について〕
以上のように、本実施形態では、高温側ヒートシンク43をいち早く加熱して、送風ファン50の起動時間の短縮を図っているが、それでも、送風ファン50の起動にはある程度の時間が必要である。即ち、高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク44との間に、例えば150℃の温度差が生じることで、半導体からなる熱電変換素子41に起電力が生じるため、該温度差が生じるまで例えば約40秒間程度が必要となる。
このため、この送風ファン50が起動するまでの時間帯、バーナー32の燃焼熱は筐体12内にこもって内部温度が上昇し、内部部品の損傷を引き起こす恐れがある。
そこで、本実施形態では、この送風ファン50の起動までの燃焼熱を外部に放出するための放熱口14aが、吹き出し口18とは別に形成されている
【0052】
具体的には、放熱口14aは、
図1に示すように、複数のスリット状の貫通孔を列設して形成されており、少なくとも貫通孔よりも大きな物がこの放熱口14aを通って筐体12内に侵入しない形状とされている。なお、放熱口14aはスリット状の貫通孔に限られず、例えば、多数の丸状や多角形状の小孔、或いは網状であってもよい。
すなわち、放熱口14aは筐体12内に熱がこもらないように放出する機能を発揮するものであり、このことから、放熱口14aは吹き出し口18よりも上側、より好ましくは、本実施形態では、上述のように、筐体12の天面部14に形成されている。
なお、吹き出し口18も筐体12の上部に形成されており(本実施形態の場合、
図2の一点鎖線の仮想線で示されるように、燃焼室30の上部開口82よりも上側の部分を有し)、これにより、吹き出し口18よりも上側の筐体内の空間S4が小さい場合であっても、送風ファン50が起動するまでの熱は、放熱口14aからだけではなく、吹き出し口18からも逃げられるようにしている。
【0053】
〔運転状態の報知装置〕
次に、本実施例における運転状態の報知装置の構成例について説明する。
図1及び
図2に示すように、ファンヒータ10では、バーナー32の燃焼により、温風を得るだけでなく、同時に熱電変換ユニット40により起電力を得て、送風ファン50の風を起し、これにより、ファンヒータとしての温風の吹き出しを実現している。
ここで、ファンヒータ10においては、そのような運転状態を外部からモニタすることができるように、報知装置59を備える。
ところが、ファンヒータ10内には電池等の内蔵電源は備えておらず、報知装置59を電気で動作するようにした場合には、熱電変換ユニット40による駆動電流を、送風ファンのファンモータ52に与えるだけでなく、その回路を分岐して報知装置59にも駆動電流を供給し、これを運転モニタとして作動させるのが好ましい。
ところが、ファンヒータ10が燃焼を終えた直後は、筐体12内の燃焼室30の温度は急激には常温にならず、余熱が存在するために、熱電変換ユニット40の高温側と低温側にはしばらく熱勾配が残り、40秒程度の時間は熱電変換ユニット40が起電力を生成し続けることから、ファンヒータ10の運転を終了しているにもかかわらず、報知装置59は運転を継続していると表示してしまい、場合によっては、使用者はファンヒータ10の駆動を切ったにもかかわらず、いまだ運転していると勘違いする可能性があるという不都合がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、ファンヒータ10の運転モニタを行うにあたり、以下のような報知装置59の構成を採用している。
図11は、報知装置59の電気的構成を示すブロック図である。
図において、熱電変換ユニット40は、
図6の給電コード41cを用いて、図示のような回路を形成しており、熱電変換ユニット40から、ゼーベック効果による駆動電流が送風ファンのファンモータ52に与えられることで、送風ファン50を駆動している。
この熱電変換ユニット40からファンモータ52への給電回路を並列に分岐し、例えば
図1の符号59に示すように筐体12の外部からファンヒータ10の運転状態を視認できる報知装置を設けることができる。
【0055】
図11において、報知装置59は熱電変換ユニット40からの給電回路を並列に分岐して配置した点灯装置を有している。点灯装置は白熱ランプやハロゲンランプ等でもよいが、本実施形態では、省電力で長寿命な発光ダイオード(以下、「LED」という。)59−1を取付けて、熱電変換ユニット40からの駆動電流のみを受けて点灯するようになっている。これにより、ファンヒータ10の運転中は報知装置59が点灯して、そのことを使用者に知らせる。
【0056】
LEDを接続した回路の途中にはスイッチ装置59−2が接続され、スイッチ装置59−2がオンしている時だけ、熱電変換ユニット40がその性能を正常に発揮していれば、LED59−1は点灯するようになっている。
このスイッチ装置59−2はオン・オフできるものであれば差動アンプ等代替できるどのような手段を用いてもよいが、本実施形態はトランジスタを用いている。
このトランジスタ59−2のベース端子には、好ましくはアンプ59−3を介して
図2で説明した火炎検出装置としてのサーモカップル等の熱電対26が接続されている。これにより、スイッチ装置59−2は熱電対26からの信号により開閉する構成とされ、具体的には、熱電対26がバーナー32の燃焼火炎を検出している間、スイッチ装置59−2はオンであり、熱電対26がバーナー32の燃焼火炎を検出しなくなると、スイッチ装置59−2はオフになって熱電変換ユニット40からLED59−1に流す駆動電流が止められる。
【0057】
アンプ59−3は、例えばオペアンプが用いられており、熱電変換ユニット40の起電力を電源電力として、熱電対26からの電流を増幅するようになっている。そうすると、例えば、熱電変換ユニット40から生成する熱起電力が何らかの理由で小さい場合などは、その能力を十分に発揮できず、スイッチ装置59−2もオフになって、LED59−1は点灯しなくなる。このようにして、使用者はバーナー32の燃焼火炎の有無だけではなく、熱電変換ユニット40の状態も含めた安定的な運転状態の成否も知ることができる。
【0058】
報知装置59は以上のように構成されており、
図2の構成および
図12のタイミングチャートを参照しながら、その動作を説明する。
使用者が、操作摘み部28(
図1参照)を回転することにより、
図2の電磁弁でなるガス弁33を強制的に開き、引き続き操作摘み部28を同じ方向に動かすと圧電着火手段でなるイグナイタ電極34から火花放電が行われ、バーナー32から噴出する燃料ガスに点火する(
図12のt1)。この時、バーナー32からの火炎により、熱電変換ユニット40の高温側ヒートシンク43が加熱されると、低温側ヒートシンク44との温度差により熱電変換ユニット40に内蔵された熱電変換素子41のゼーベック効果により、起電力が生じて送風ファン50のモータ52が駆動される。これにより、高温側ヒートシンク43は加熱され、他方、低温側ヒートシンク44は送風により冷却されるから、燃焼中は、送風ファン50の回転は維持され、同時に
図11のLED59−1にも駆動電流が流れて点灯する。
【0059】
つまり、燃焼中は、バーナー32の火炎FR中に、熱電対26の温接点26aがあり、高温になっているので、温接点26aと冷接点26bとの間に起電力を生じ、その電流は、
図11のアンプ59−3に与えられる。アンプ59−3で増幅された電流はトランジスタ59−2のベース端子に印加されるので、スイッチオンとなるから、トランジスタ59−2のコレクタからエミッタが通電し、LED59−1が点灯することになる。
これにより、
図12のt1ないしt2の間、つまり、ファンヒータ10の燃焼中は、
図1の報知装置59では、LED59−1の点灯が視認されるから、使用者はファンヒータ10が燃焼していることを視認できる。
【0060】
次に、使用者が
図1の操作摘み28を戻してファンヒータ10の燃焼を停止する(
図12のt2)。
そうすると、直ちに熱電対26の温度勾配は平坦になり、熱電対26の起電力は消失するので、
図11のトランジスタ59−2のエミッタ側は通電しなくなり、LED59−1も
図12のt2の時点で直ちに消灯する。
このように、本実施形態では、ファンヒータ10の運転停止と同時に迅速に報知装置59も運転停止を表示する。
なお、このようなスイッチ装置59−2を備えない場合、
図6の高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク44との温度差は、燃焼室30内の温度が下がるまでの暫くの間、熱電変換ユニット40からの起電力は消えない。このため、
図11から明らかなように、
図12のNТの間、LED59−1は点灯を続けることになる。したがって、使用者がファンヒータ10の運転を停止操作したにも係らず、報知装置59は「運転中」を示すから、機器の故障を疑ったり、操作摘み28を不要に回したりして、混乱を生じることになる。
しかし、本実施例によれば、そのような不都合が適切に防止できる。
【0061】
〔第2実施形態〕
図13は、本発明の第2実施形態に係るファンヒータ100の概略構成図である。
この図のファンヒータ100が、
図1〜
図12のファンヒータ10と異なるのは、報知装置90についてである。
即ち、報知装置90は、LEDではなく、筐体12に形成された窓部87を通して視認可能なマーカー部85と、このマーカー部85を窓部87に対して接近及び離間するように、熱電対26の起電力で移動させる移動手段部91とからなっている。
【0062】
窓部87は、筐体12内のマーカー部85を視認可能にするための例えば貫通孔であり、筐体12の前面、好ましくは、
図1の符号59と同様に操作摘み部28に隣接して形成されている。
図13のマーカー部85は、筐体12の内側であって前面に隣接して配置され、本実施形態の場合は上下方向Zに移動することで、窓部87に接近している時には視認可能であり、離間している時には視認不可能とされている。マーカー部85は筐体12の前面の色とは反対色で着色されるのが好ましい。
移動手段部91は、マーカー部85に接続された棒状の連結部材80と、この連結部材80を熱電対26の起電力により上下方向Zにスライドさせる駆動部92とを有している。
【0063】
駆動部92は、バーナー32の火炎FRの有無を検知する火炎検出装置である熱電対26の検出結果に基づいてスライドするようになっており、マーカー部85は、この駆動部92に同調してスライドするようになっている。
本実施形態の駆動部92には、熱電対26の検出結果に基づいて弁を開閉する安全弁が用いられている(以下、「駆動部92」を「安全弁92」という)。このように安全弁92を利用することで、マーカー部85は、火炎FRを検知しない時は窓部87から離間した図のAの位置に、火炎FRを検知している時は窓部87に接近した図のBの位置に移動可能としている。
【0064】
即ち、操作摘み部28を押し回すと、それに連動するシーソー状の部材76が主弁77と安全弁92を押し上げて、主弁77と安全弁92で塞がれていた管路RX1,RX2を開放してガスを通し、これによりバーナー32から火炎FRが生じる。そして、熱電対26の温接点26aが火炎FRで加熱されると起電力が生じ、その起電力は安全弁92の周辺に設けられた電磁石94に流れて、磁石からなる安全弁92は反発して上側に移動して開弁した状態を維持し、これにより、操作摘み部28から手を離しても開弁状態を維持される。そうすると、この安全弁92の上側への移動に同調して、連結部材80を介してマーカー部85も上側にスライドしてBの位置になり、窓部87から視認可能となる。なお、操作摘み部28から手を離しても、回された操作摘み部28と連動して、部材76は主弁77だけを押し上げるようになっている。
これに対して、使用者が火炎FRを消すために操作摘み部28を回し戻して主弁77を閉じたり、或いは、火炎FRが立ち消えしたりすると、熱電対26の起電力はなくなって安全弁92は管路RX2を閉じるように下側に移動し、この動きに同調して、連結部材80を介してマーカー部85も下側にスライドしてAの位置になり、窓部87から視認不可能となる。
このように、安全弁92は、本来の安全弁92としてだけではなく、マーカー部85を上下させるための駆動手段或いはスイッチ装置としての機能も兼ねている。
【0065】
本実施形態は以上のように構成されており、火炎検出装置である熱電対26の検出結果に基づいて報知装置90で報知結果を示すことができ、マーカー部85は上下運動する安全弁92に同調した動きをし、火炎FRの消失後に熱電変換ユニット40が未だ起電力を生成していたとしても、使用者は火炎FRが消失したことを把握できる。
ところで、この第2実施形態のマーカー部85の移動については、熱電対26からの起電力だけを利用しており、
図11のように熱電変換ユニット40から生成される起電力を利用していない。従って、火炎FRがついている限り、
図2に示す熱電変換素子41が故障をして送風ファン50が駆動しなくなった場合でも、
図13のマーカー部85は窓部87から視認される。しかし、送風機50が駆動せずにバーナー32の燃焼熱が筐体12内にこもって内部温度が上昇すると、燃焼室30上部に配置された図示しないサーモスタットが危険な温度に到達する前に作動することで、熱電対26から電磁石94に流れる起電力を遮断して安全弁92を閉じるので、燃焼が停止する。これにより、安全弁92の動きに同調してマーカー部85も下側にスライドしてAの位置になるので、使用者は火炎FRが消失したことを把握できる。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
実施形態で説明した各構成の一部は省略可能であり、また、説明しない他の構成と組み合わせることも可能である。