(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のアンモニアエンジンシステムにあっては、燃焼室内に供給されたアンモニアの燃焼効率が依然として低いため、未だ実用化されていないのが現状である。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、燃焼効率を向上させることができる燃焼システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、鋭意研究の結果、アンモニアガスから分解生成された窒素ガス及び水素ガスを含む分解生成ガスを、燃焼装置に供給するアンモニアガスのガス量よりも少ないガス量を当該アンモニアガスに混合することで、燃焼装置が効率的に燃焼することを見い出し、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の燃焼システムは、アンモニアガスを燃料とする燃焼装置を備えた燃焼システムであって、アンモニアガスを窒素ガスと水素ガスとに分解する分解装置と、前記分解装置により分解生成された窒素ガス及び水素ガスを含む分解生成ガスと、アンモニアガスとを混合する分解生成ガス混合器と、を備え、前記燃焼装置は、その内部に、前記分解生成ガス混合器で混合された混合ガスを供給する供給手段を有し、前記混合ガス中の前記分解生成ガスの混合割合が50%未満に設定されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された燃焼システムによれば、分解装置により分解生成された窒素ガス及び水素ガスを含む分解生成ガスとアンモニアガスとを混合した混合ガスを燃焼装置に供給する際に、その混合ガス中の分解生成ガスの混合割合を50%未満に設定することで、燃焼装置を効率的に燃焼させることができる。また、分解生成ガスのガス量を少なくすることができるので、分解生成ガスを生成する際に行われるアンモニアガスの分解に必要な消費電力コストおよびエネルギーコストを抑えることができる。
【0008】
また、前記燃焼システムにおいて、前記混合割合が0.1〜20%の範囲内に設定されているのが好ましい。この場合、分解生成ガスの混合量をさらに少なくすることができるので、アンモニアガスの分解に必要な消費電力コストおよびエネルギーコストをさらに抑えることができる。特に、使用可能な消費電力に制限がある移動式の燃焼システムに本発明を適用する場合に有効である。
【0009】
また、前記燃焼システムにおいて、前記分解装置により分解生成された前記分解生成ガスを貯留する貯留タンクをさらに備え、前記分解生成ガス混合器は、前記貯留タンクに貯留されている前記分解生成ガスと、アンモニアガスとを混合するのが好ましい。
この場合、分解生成ガス混合器により分解生成ガスとアンモニアガスとを混合するときに、貯留タンクに貯留されている分解生成ガスが用いられるので、分解生成ガス混合器に分解生成ガスを不足することなく供給することができる。
【0010】
また、前記燃焼システムにおいて、前記混合ガスと空気とを混合する空気混合器をさらに備え、前記供給手段は、前記燃焼装置の内部に、前記空気混合器で混合された空気混合ガスを供給するのが好ましい。
この場合、分解生成ガスとアンモニアガスとの混合ガスに燃焼し易い空気をさらに混合して生成された空気混合ガスが燃焼装置に供給されるので、燃焼装置をさらに効率的に燃焼させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃焼システムによれば、燃焼効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニアエンジンシステム(燃焼システム)の構成を示す模式図である。
図1において、本実施形態のアンモニアエンジンシステムは、主にアンモニアガスを燃料とするアンモニアエンジン(燃焼装置)1を備えている。
【0014】
図2は、アンモニアエンジン1を示す要部断面図である。
図2において、アンモニアエンジン1は、内部に燃焼室11aを有するシリンダ11と、燃料を燃焼室11a内に供給する供給手段12と、燃焼室11a内に供給された燃料を点火させる点火装置13と、燃焼室11a内から燃焼後の排気ガスを排出する排出手段14とを備えている。
【0015】
シリンダ11は、筒状のシリンダライナ11bと、シリンダライナ11bの上部開口を覆うシリンダヘッド11cと、シリンダライナ11b内に往復動可能に設けられたピストン11dとを有している。シリンダライナ11bとシリンダヘッド11cとピストン11dとによって囲まれた空間が燃焼室11aとされている。シリンダヘッド11cには、燃料を燃焼室11a内に供給するための供給孔11c1、及び排気ガスを外部へ排出するための排出孔11c2が形成されている。
【0016】
点火装置13は、例えば点火プラグからなり、シリンダヘッド11cの中心部において、その厚さ方向に貫通して固定されている。点火装置13の下端部には、燃料を点火させる点火部13aが設けられている。
【0017】
供給手段12は、シリンダヘッド11cの供給孔11c1を開閉する供給弁12aを備えており、図示しない駆動手段により供給弁12aを開放駆動することにより、供給孔11c1から燃焼室11a内に燃料を供給するようになっている。
排出手段14は、シリンダヘッド11cの排出孔11c2を開閉する排出弁14aを備えており、図示しない駆動手段により排出弁14aを開放駆動することにより、燃焼室11a内の燃焼後の排気ガスを排出孔11c2から排出するようになっている。
【0018】
図1において、アンモニアエンジンシステムは、アンモニアガスを貯留する燃料タンク2と、燃料タンク2から取り出されたアンモニアガスとアンモニアエンジン1の排気ガスとの間で熱交換する熱交換器5とをさらに備えている。燃料タンク2と熱交換器5とは、燃料タンク2から延びる第1流路L1、および第1流路L1から分岐した第1分岐流路L2を介して接続されている。
【0019】
熱交換器5は、筒状のケース51と、ケース51内に設けられた螺旋状の内管52と、内管52の一端が接続されてケース51の長手方向一端部(
図1の右端部)から外部に突出する導入管53と、内管52の他端が接続されてケース51の長手方向他端部(
図1の左端部)から外部に突出する排出管54とを備えている。ケース51の前記長手方向他端部側の端面には排気ガスが導入される導入口51aが形成され、ケース51の前記長手方向一端部側の端面には排気ガスが排出される排出口51bが形成されている。
【0020】
第1流路L1には複数(ここでは2個)のレギュレータ6が設けられている。レギュレータ6は、燃料タンク2から排出されるアンモニアガスを低圧(例えば0.3MPa)に調整するものである。これにより、アンモニアガスは吸熱反応によって温度が低下するので、熱交換器5の導入管53には、燃料タンク2から低温(0℃以下)のアンモニアガスが導入される。
【0021】
ケース51の導入口51aは、アンモニアエンジン1の排出孔11c2に連通しており、この排出孔11c2から排気される高温(約400℃)の排気ガスは、導入口51aからケース51内に導入されて排出口51bから外部に排出される。その際、熱交換器5のケース51内を排気ガスが通過するときに、その高温の排気ガスと内管52に導入された低温のアンモニアガスとの間で熱交換が行われる。すなわち、高温の排気ガスは、低温のアンモニアガスによって冷却され、低温のアンモニアガスは、高温の排気ガスによって所定温度(約20℃)まで予備加熱される。
【0022】
図1において、アンモニアエンジンシステムは、熱交換器5によって予備加熱されたアンモニアガスを加熱して分解する熱分解装置(分解装置)3と、分解生成された水素ガス及び窒素ガスを含む分解生成ガスを貯留する貯留タンク4とをさらに備えている。
【0023】
図3は、熱分解装置3を示す断面図である。
図3において、熱分解装置3は、アンモニアガス(NH
3)を加熱して、下記式(1)に示すように、窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)とに吸熱分解反応するものである。
2NH
3→N
2+3H
2 ・・・(1)
この熱分解装置3は、内部が密閉されたケース31と、このケース31に固定された外側金属管32と、外側金属管32に固定された内側金属管33と、内側金属管33の内部に配設されたヒータ34とを備えている。なお、本実施形態では、分解装置として熱分解装置を用いているが、触媒分解や電気分解などの他の方法によりアンモニアを分解する分解装置を用いてもよい。
【0024】
外側金属管32は、ケース31の内部に配置されている。外側金属管32の軸方向両端部は、ケース31の両側壁31a,31bを貫通して各側壁31a,31bに固定されている。外側金属管32の軸方向両端には、これらの開口をそれぞれ閉塞する蓋部材36,37が取り付けられており、外側金属管32の内部は密閉状態とされている。
【0025】
内側金属管33は、外側金属管32の内部において軸線方向に沿って配置されている。内側金属管33の軸方向両端部は、前記蓋部材36,37をそれぞれ貫通して各蓋部材36,37に固定されている。外側金属管32と内側金属管33との間には密閉された断熱空間Sが形成されている。
内側金属管33の軸方向一端部(
図3の右端部)には、導入口33aが形成されており、熱交換器5で熱交換されたアンモニアガスが導入口33aから導入されるようになっている(
図1参照)。
【0026】
また、内側金属管33の軸方向他端部(
図3の左端部)には、径方向外側に延びる排出管38が接続されており、内側金属管33内に導入されたアンモニアガスから分解生成された分解生成ガスが排出管38から排出されるようになっている。排出管38は貯留タンク4に接続されており(
図1参照)、排出管38から排出された分解生成ガスは貯留タンク4に一時的に貯留される。
【0027】
ヒータ34は、例えば通電により発熱するニクロム線等の電熱線からなり、内側金属管33の内部において、その内周面に沿って螺旋状に配置されている。このヒータ34により、内側金属管33内に導入されたアンモニアガスを所定温度(400〜900℃)まで加熱するようになっている。なお、ヒータ34は、電熱線以外に、熱光線、プラズマ熱、熱風、赤外線、電磁波等のその他の熱源を利用してもよい。
【0028】
図1において、アンモニアエンジンシステムは、第1コントロールバルブ7A、第2コントロールバルブ7B、第1混合器8、第2混合器9、及び吸気部10をさらに備えている。第1混合器8(分解生成ガス混合器)は、燃料タンク2から取り出されたアンモニアガスと、貯留タンク4から取り出された分解生成ガスとを混合して第1混合ガス(混合ガス)を生成するものである。なお、第1混合器8は、アンモニアエンジン1の大きさ及び燃料使用量に応じて複数個備えていてもよい。
【0029】
第1混合器8には、燃料タンク2側の第1流路L1から分岐した第2分岐流路L3が接続されている。第2分岐流路L3の途中には第1コントロールバルブ7Aが設けられている。第1コントロールバルブ7Aは、第2分岐流路L3から第1混合器8に導入されるアンモニアガスのガス量を調整するものである。具体的には、第1コントロールバルブ7Aは、第1混合器8で生成される第1混合ガス中のアンモニアガスの混合割合が50%以上(より好ましくは80%〜99.9%)となるように、導入するアンモニアガスのガス量を調整する。
【0030】
また、第1混合器8には、貯留タンク4から延びる第2流路L4が接続されている。第2流路L4の途中には第2コントロールバルブ7Bが設けられている。第2コントロールバルブ7Bは、第2流路L4から第1混合器8に導入される分解生成ガスのガス量を調整するものである。具体的には、第1コントロールバルブ7Aは、第1混合器8で生成される第1混合ガス中の分解生成ガスの混合割合が50%未満(より好ましくは0.1%〜20%)となるように、導入する分解生成ガスのガス量を調整する。
【0031】
図4は、第1混合器8を示す断面図である。
図4において、第1混合器8は、中空の円筒部材からなる本体部81と、本体部81の内部の後側に取り付けられた円柱状の第1混合ノズル82と、本体部82の前側に取り付けられた円柱状の第2混合ノズル83とを有している。本体部81の後端面には、第1混合ノズル82にアンモニアガスを導入するための第1導入管84が突設されている。また、本体部81の外周の後端部は、第1混合ノズル82に分解生成ガスを導入するための第2導入管85が、径方向外側に突出して取り付けられている。
【0032】
第1混合ノズル82には、第1導入管84に連通する第1導入路82aと、第2導入管85に連通する第2導入路82bと、第1導入路82aと第2導入路82bとを連通する複数の連通路82cとが形成されている。第1導入路82aは、第1混合ノズル82の軸心部に沿って前後方向に貫通して形成されている。第2導入路82bは、第1混合ノズル82の後部側において径方向に延びて形成されている。
【0033】
連通路82cは、第1導入路82aの径方向外側において前後方向に延びて形成されており、連通路82cの後端は第2導入路82bに連通され、連通路82cの前端は第1導入路82aに連通されている。これにより、第1導入管84から第1導入路82aに導入されたアンモニアガスは、第2導入管85から第2導入路82b及び連通路82cを介して第1導入路82aに導入された分解生成ガスと混合される。そして、その混合されたガスは、第1導入路82aの前端に形成された噴霧口82dから本体部81の内部空間に噴霧される。
【0034】
第2混合ノズル83は、第1混合ノズル82から噴霧されたガスの一部と他部とを混合するものであり、アンモニアガスと分解生成ガスとの混合をより確実に行うものである。第2混合ノズル83には、第1混合ノズル82と同様に、本体部81の内部空間にそれぞれ連通する第1導入路83aおよび第2導入路83bと、第1導入路83aと第2導入路83bとを連通する複数の連通路83cとが形成されている。
【0035】
第2混合ノズル83の前端部は、本体部81の外部に突出するように取り付けられている。これにより、第1混合ノズル82から本体部81の内部空間に噴霧されたガスは、第2混合ノズル83の第1導入路83a及び第2導入路83bにそれぞれ導入される。
【0036】
そして、第1導入路83aに導入されたガスと、第2導入路83bから連通路83cを介して第1導入路83aに導入されたガスとが混合されることで、アンモニアガスと分解生成ガスとが適切に混合された第1混合ガスとなる 第1混合ガスは、第1導入路82aの前端に形成された噴霧口83dから外部に噴霧される。
【0037】
なお、第1混合器8は、上記のノズル方式以外に、プロペラ式、振動式、流動式、フィン式などの他の混合方式であってもよい。また、本実施形態の第1混合器8では、第1導入管84からアンモニアガスを導入し、第2導入管85から分解生成ガスを導入しているが、第1導入管84から分解生成ガスを導入し、第2導入管85からアンモニアガスを導入するようにしてもよい。
【0038】
図1において、第2混合ノズル83から噴霧された第1混合ガスは、第3流路L5を介して第2混合器9に導入される。第2混合器9(空気混合器)は、第1混合器8により混合された第1混合ガスと、吸気部10から吸気された空気とを混合して第2混合ガス(空気混合ガス)を生成するものである。吸気部10には、空気の吸気口10aと排気口10bとが形成されており、吸気部10の内部にはエアフィルタ10cが取り付けられている。
【0039】
第2混合器9には、空気を導入するための第1導入口91が形成されており、この第1導入口91は吸気部10の排気口10bに接続されている。また、第2混合器9には、第1混合器8により混合された第1混合ガスを導入するための第2導入口92が形成されている。これにより、第2導入口92から導入された第1混合ガスは、第1導入口91から導入された空気と混合される。その際、第1導入口91から導入される空気の供給量は、空燃比が約5%となるように設定されている。
【0040】
第2混合器9には、その内部で混合して生成された第2混合ガスを排出する排出口93が形成されている。排出口93は、アンモニアエンジン1の供給孔11c1に連通しており、排出口93から排出された第2混合ガスは、アンモニアエンジン1の供給手段12により供給孔11c1から燃焼室11a内に供給される(
図2参照)。
【0041】
以上、本実施形態のアンモニアエンジンシステムによれば、熱分解装置3により分解生成された窒素ガス及び水素ガスを含む分解生成ガスとアンモニアガスとを混合した混合ガスをアンモニアエンジン1に供給する際に、その混合ガス中の分解生成ガスの混合割合を50%未満に設定することで、アンモニアエンジン1を効率的に燃焼させることができる。また、分解生成ガスのガス量を少なくすることができるので、分解生成ガスを生成する際に行われるアンモニアガスの加熱分解に必要な消費電力コストを抑えることができる。
【0042】
また、前記混合割合を0.1〜20%の範囲内に設定した場合には、分解生成ガスの混合量をさらに少なくすることができるので、アンモニアガスの加熱分解に必要な消費電力コストをさらに抑えることができる。特に、使用可能な消費電力に制限がある移動式の燃焼システムに本発明を適用する場合に有効である。
【0043】
また、第1混合器8により分解生成ガスとアンモニアガスとを混合するときに、貯留タンク4に貯留されている分解生成ガスが用いられるので、第1混合器8に分解生成ガスを不足することなく供給することができる。
また、第2混合器9により、第1混合器8で混合された混合ガスに、燃焼し易い空気をさらに混合し、その空気混合ガスがアンモニアエンジン1に供給されるので、アンモニアエンジン1をさらに効率的に燃焼させることができる。
【0044】
上述の実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更は本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態では、第2混合器9で混合して生成された第2混合ガスをアンモニアエンジン1に供給しているが、第1混合器8で混合して生成された第1混合ガスをアンモニアエンジン1に直接供給しても良い。また、燃焼装置としてアンモニアエンジンを用いているが、アンモニアガスを燃料とするガスバーナーを適用してもよい。