(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.画像形成装置
1−1.全体構成
1−2.現像部の詳細な構成
1−3.現像剤の構成および製造方法
1−4.動作
1−5.作用および効果
2.変形例
【0015】
<1.画像形成装置>
本発明の一実施形態の画像形成装置に関して説明する。
【0016】
ここで説明する画像形成装置は、例えば、電子写真方式のフルカラープリンタであり、媒体Mの表面に画像を形成する。媒体Mの材質は、特に限定されないが、例えば、紙およびフィルムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0017】
<1−1.全体構成>
まず、画像形成装置の全体構成に関して説明する。
図1は、画像形成装置の平面構成を表している。
【0018】
この画像形成装置は、例えば、
図1に示したように、筐体1の内部に、1または2以上のトレイ10と、1または2以上の送り出しローラ20と、1または2以上の現像部30と、転写部40と、定着部50と、搬送ローラ61〜67と、搬送路切り替えガイド71,72とを備えている。
【0019】
なお、筐体1には、画像が形成された媒体Mを排出するためのスタッカ部2が設けられており、その媒体Mは、搬送経路R1〜R5に沿って搬送される。
【0020】
[トレイおよび送り出しローラ]
トレイ10は、媒体Mを収納しており、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されている。このトレイ10には、例えば、複数の媒体Mが積層された状態で収納されており、その複数の媒体Mは、送り出しローラ20によりトレイ10から1つずつ取り出される。
【0021】
ここでは、画像形成装置は、例えば、2つのトレイ10(11,12)と、2つの送り出しローラ20(21,22)とを備えている。なお、2つのトレイ11,12は、例えば、互いに重なるように配置されている。
【0022】
[現像部]
現像部30は、現像剤(いわゆるトナー)を用いて現像処理を行う。具体的には、現像部30は、静電潜像を形成すると共に、クーロン力を利用して静電潜像に現像剤を付着させることにより、現像剤像(いわゆるトナー像)を形成する。なお、現像剤の詳細な構成に関しては、後述する(
図3参照)。
【0023】
ここでは、画像形成装置は、例えば、4つの現像部30(30Y,30M,30C,30K)を備えている。
【0024】
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されていると共に、後述する中間転写ベルト41の移動経路に沿って配列されている。ここでは、現像部30Y,30M,30C,30Kは、例えば、中間転写ベルト41の移動方向において、上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
【0025】
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、後述するカートリッジ38に収納されている現像剤の種類が異なることを除いて、同様の構成を有している。なお、現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれの詳細な構成に関しては、後述する。
【0026】
[転写部]
転写部40は、現像部30により現像処理された現像剤を用いて転写処理を行う。具体的には、転写部40は、現像部30により静電潜像に付着された現像剤を媒体Mに転写させる。
【0027】
この転写部40は、例えば、中間転写ベルト41と、駆動ローラ42と、従動ローラ(アイドルローラ)43と、バックアップローラ44と、1または2以上の1次転写ローラ45と、2次転写ローラ46と、クリーニングブレード47とを含んでいる。
【0028】
中間転写ベルト41は、媒体Mに現像剤が転写される前に、その現像剤が一時的に転写される中間転写媒体である。この中間転写ベルト41は、例えば、無端の弾性ベルトであり、ポリイミドなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、中間転写ベルト41は、駆動ローラ42、従動ローラ43およびバックアップローラ44により張架された状態において、その駆動ローラ42の回転に応じて移動可能である。
【0029】
駆動ローラ42は、モータなどの駆動源を介して時計回りに回転可能である。従動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれは、駆動ローラ42の回転に応じて、その駆動ローラ42と同様に時計回りに回転可能である。
【0030】
1次転写ローラ45は、現像部30から供給される現像剤を中間転写ベルト41に転写(1次転写)させる。この1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41を介して現像部30(後述する感光体ドラム31)に圧接されている。なお、1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41の移動に応じて時計回りに回転可能である。
【0031】
ここでは、転写部40は、例えば、4つの現像部30(30Y,30M,30C,30K)に対応して、4つの1次転写ローラ45(45Y,45M,45C,45K)を含んでいる。また、転写部40は、1つのバックアップローラ44に対応して、1つの2次転写ローラ46を含んでいる。
【0032】
2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41に転写された現像剤を媒体Mに転写(2次転写)させる。この2次転写ローラ46は、バックアップローラ44に圧接されており、例えば、金属製の芯材と、その芯材の外周面を被覆する発泡ゴム層などの弾性層とを含んでいる。なお、2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41の移動に応じて反時計回りに回転可能である。
【0033】
クリーニングブレード47は、中間転写ベルト41に圧接されており、その中間転写ベルト41の表面に残留した不要な現像剤を掻き取る。
【0034】
[定着部]
定着部50は、転写部40により媒体Mに転写された現像剤を用いて定着処理を行う。具体的には、定着部50は、転写部40により媒体Mに転写された現像剤を加熱しながら加圧することにより、その現像剤を媒体Mに定着させる。
【0035】
この定着部50は、例えば、加熱ローラ51と、加圧ローラ52とを含んでいる。
【0036】
加熱ローラ51は、現像剤像を加熱する回転体であり、時計回りに回転可能である。この加熱ローラ51は、例えば、中空円筒状の金属芯と、その金属芯の表面に形成された樹脂コートとを含んでいる。金属芯は、例えば、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。樹脂コートは、例えば、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子化合物を含んでいる。
【0037】
加熱ローラ51(金属芯)の内部には、例えば、ハロゲンランプなどのヒータが設置されている。この加熱ローラ51の表面温度は、例えば、その加熱ローラ51から離れた位置に配置されているサーミスタにより検出される。
【0038】
加圧ローラ52は、現像剤像を加圧する回転体であり、加熱ローラ51に圧接されながら反時計回りに回転可能である。この加圧ローラ52は、例えば、金属棒である。金属棒は、例えば、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。
【0039】
[搬送ローラ]
搬送ローラ61〜67のそれぞれは、媒体Mの搬送経路R1〜R5を介して互いに対向するように配置された一対のローラを含んでおり、送り出しローラ20により取り出された媒体Mを搬送させる。具体的には、例えば、媒体Mの片面だけに画像が形成される場合には、その媒体Mは、搬送経路R1,R2に沿って搬送ローラ61〜63により搬送される。また、例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、その媒体Mは、搬送経路R1〜R5に沿って搬送ローラ61〜67により搬送される。
【0040】
[搬送路切り替えガイド]
搬送路切り替えガイド71,72は、媒体Mに形成される画像の様式(媒体Mの片面だけに画像が形成されるか、媒体Mの両面に画像が形成されるか)などの条件に応じて、その媒体Mの搬送方向を切り替える。
【0041】
<1−2.現像部の詳細な構成>
次に、
図1に示した現像部30の詳細な構成に関して説明する。
図2は、現像部30の平面構成を拡大している。
【0042】
現像部30Y,30M,30C,30Kのそれぞれは、例えば、
図2に示したように、感光体ドラム31と、帯電ローラ32と、現像ローラ33と、供給ローラ34と、現像ブレード35と、クリーニングブレード36と、発光ダイオード(LED)ヘッド37と、カートリッジ38とを含んでいる。
【0043】
感光体ドラム31は、例えば、円筒状の導電性支持体と、その導電性支持体の外周面を被覆する光導電層とを含む有機系感光体であり、モータなどの駆動源を介して反時計回りに回転可能である。導電性支持体は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む金属パイプである。光導電層は、例えば、電荷発生層および電荷輸送層などを含む積層体である。
【0044】
帯電ローラ32は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性エピクロロヒドリンゴム層とを含んでおり、時計回りに回転可能である。この帯電ローラ32は、感光体ドラム31を帯電させるために、その感光体ドラム31に圧接されている。
【0045】
現像ローラ33は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性ウレタンゴム層とを含んでおり、時計回りに回転可能である。この現像ローラ33は、供給ローラ34から供給される現像剤を担持すると共に、感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像に現像剤を付着させる。
【0046】
供給ローラ34は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性発泡シリコンスポンジ層とを含んでおり、反時計回りに回転可能である。この供給ローラ34は、現像ローラ33に摺接しながら、感光体ドラム31の表面に現像剤を供給する。
【0047】
現像ブレード35は、供給ローラ34の表面に供給された現像剤の厚さを規制する。この現像ブレード35は、例えば、現像ローラ33から所定の距離を隔てた位置に配置されており、その現像ローラ33と現像ブレード35との間隔に基づいて、現像剤の厚さが制御される。また、現像ブレード35は、例えば、ステンレスなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0048】
クリーニングブレード36は、感光体ドラム31の表面に残留した不要な現像剤を掻き取る。このクリーニングブレード36は、例えば、感光体ドラム31の延在方向と略平行な方向に延在しており、その感光体ドラム31に圧接されている。また、クリーニングブレード36は、例えば、ウレタンゴムなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0049】
LEDヘッド37は、感光体ドラム31の表面を露光することにより、その感光体ドラム31の表面に静電潜像を形成する露光装置であり、例えば、LED素子およびレンズアレイなどを含んでいる。LED素子およびレンズアレイは、そのLED素子から出力された光(照射光)が感光体ドラム31の表面において結像するように配置されている。
【0050】
カートリッジ38は、例えば、現像部30に対して着脱可能に装着されており、現像剤を収納している。カートリッジ38に収納されている現像剤の色は、例えば、以下の通りである。現像部30Yのカートリッジ38には、例えば、イエローの現像剤が収納されている。現像部30Mのカートリッジ38には、例えば、マゼンタの現像剤が収納されている。現像部30Cのカートリッジ38には、例えば、シアンの現像剤が収納されている。現像部30Kのカートリッジ38には、例えば、ブラックの現像剤が収納されている。
【0051】
<1−3.現像剤の構成および製造方法>
次に、現像剤の構成および製造方法に関して説明する。
図3は、上記した画像形成装置に用いられる現像剤である現像剤100の断面構成を模式的に表している。
【0052】
ここで説明する現像剤100は、例えば、一成分現像方式の現像剤であり、より具体的には、負帯電の現像剤である、
【0053】
一成分現像方式とは、現像剤に電荷を付与するためのキャリア(磁性粒子)を用いずに、その現像剤自身に適切な帯電量を付与する方式である。これに対して、二成分現像方式とは、上記したキャリアと現像剤とを混合することにより、そのキャリアと現像剤との摩擦を利用して現像剤に適切な帯電量を付与する方式である。
【0054】
一成分現像方式の現像剤である現像剤100は、上記したように、負帯電の現像剤であるため、その現像剤100には、負の帯電量が付与されている。負の現像剤である現像剤100の飽和帯電量は、特に限定されないが、例えば、−50μC/g〜−10μC/gである。
【0055】
なお、現像剤100の色は、特に限定されない。すなわち、現像剤100は、現像部30Yに用いられるイエローの現像剤でもよいし、現像部30Mに用いられるマゼンタの現像剤でもよいし、現像部30Cに用いられるシアンの現像剤でもよいし、現像部30Kに用いられるブラックの現像剤でもよい。
【0056】
[現像剤の構成]
現像剤100は、例えば、複数の粒子状である。複数の粒子状の現像剤100のそれぞれは、
図3に示したように、外添剤102を含んでいる。
【0057】
より具体的には、現像剤100は、母粒子101と、その母粒子101に定着された外添剤102とを含んでおり、その外添剤102は、複数の粒子状である。すなわち、複数の粒子状の現像剤100は、複数の母粒子101と、各母粒子101に定着された複数の粒子状の外添剤102とを含んでいる。
【0058】
母粒子101は、例えば、着色剤を含んでいる。ただし、母粒子101は、着色剤と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0059】
着色剤は、主に、現像剤100を用いて形成される画像を着色する。この着色剤は、任意の色の顔料および任意の色の染料(色素)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。顔料および染料のそれぞれの色は、着色剤が用いられる現像剤100の色に応じて決定される。
【0060】
イエローの顔料は、例えば、ピグメントイエロー74などである。マゼンタの顔料は、例えば、キナクリドンなどである。シアンの顔料は、例えば、フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3)などである。ブラックの顔料は、例えば、カーボンなどである。
【0061】
イエローの染料は、例えば、C.I.ピグメントイエロー74およびカドミウムイエローなどである。マゼンタの染料は、例えば、C.I.ピグメントレッド238などである。シアンの染料は、例えば、ピグメントブルー15:3などである。ブラックの染料は、例えば、カーボンブラックなどであり、そのカーボンブラックは、例えば、ファーネスブラックおよびチャンネルブラックなどである。
【0062】
なお、現像剤100中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、後述する結着剤の含有量(100重量部)に対して2重量部〜25重量部であり、好ましくは2重量部〜15重量部である。
【0063】
他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、結着剤、離型剤および帯電制御剤などである。
【0064】
結着剤は、主に、着色剤などを結着させる。この結着剤は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびスチレン−ブタジエン系樹脂などの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0065】
中でも、結着剤は、ポリエステル系樹脂を含んでいることが好ましい。ポリエステル系樹脂は、紙などの媒体Mに対して高い親和性を有するため、結着剤としてポリエステル系樹脂を含む現像剤100は、媒体Mに定着しやすくなるからである。また、ポリエステル系樹脂は、比較的分子量が小さい場合においても高い物理的強度を有するため、結着剤としてポリエステル系樹脂を含む現像剤は、優れた耐久性を有するからである。
【0066】
このポリエステル系樹脂は、例えば、1または2以上のアルコールと1または2以上のカルボン酸との反応物(縮重合体)である。
【0067】
アルコールの種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のアルコールおよびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のアルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、ソルビトールおよびグリセリンなどである。
【0068】
カルボン酸の種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のカルボン酸およびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンジカルボン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸およびドデセニル無水コハク酸などである。
【0069】
ポリエステル系樹脂の種類(結晶状態)は、特に限定されない。このため、ポリエステル系樹脂は、結晶性ポリエステル系樹脂でもよいし、非晶質ポリエステル系樹脂でもよいし、双方でもよい。中でも、ポリエステル系樹脂の種類は、結晶性ポリエステルであることが好ましい。現像剤100が媒体Mにより定着しやすくなると共に、その現像剤100の耐久性がより向上するからである。
【0070】
現像剤100(母粒子101)が結着剤として結晶性ポリエステルを含んでいるか否かを調べるためには、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて現像剤100を分析すればよい。示差走査熱量測定法を用いて、結着剤として結晶性ポリエステルを含んでいる現像剤100を2回連続して分析すると、1回目の測定結果では30℃〜70℃の範囲内に吸熱ピークが検出されると共に、2回目の測定結果では30℃〜70℃の範囲内に吸熱ピークが検出されない。
【0071】
離型剤は、主に、現像剤100の定着性および耐オフセット性などを向上させる。この離型剤は、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物などのワックスのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この他、離型剤は、例えば、上記した一連のワックスのブロック共重合物などでもよい。
【0072】
脂肪族炭化水素系ワックスは、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィンの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスなどである。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物は、例えば、酸化ポリエチレンワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスは、例えば、カルナバワックスおよびモンタン酸エステルワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物は、その脂肪酸エステル系ワックスのうちの一部または全部が脱酸化されたワックスであり、例えば、脱酸カルナバワックスなどである。
【0073】
なお、現像剤100中における離型剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤の含有量(100重量部)に対して0.1重量部〜20重量部であり、好ましくは0.5重量部〜12重量部である。
【0074】
帯電制御剤は、主に、現像剤100の摩擦帯電性などを制御する。負帯電の現像剤である現像剤100に用いられる帯電制御剤は、例えば、アゾ系錯体、サリチル酸系錯体およびカリックスアレン系錯体などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0075】
なお、現像剤100中における帯電制御剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤の含有量(100重量部)に対して0.05重量部〜15重量部であり、好ましくは0.1重量部〜10重量部である。
【0076】
外添剤102は、主に、現像剤100(母粒子101)同士の凝集などを抑制することにより、その現像剤100の流動性を向上させる。ただし、外添剤102は、例えば、現像剤100の環境安定性、帯電安定性、現像性、保存性およびクリーニング性などを向上させる役割も果たす。
【0077】
この外添剤102は、上記したように、複数の粒子状であると共に、母粒子101に定着されている。このため、複数の粒子状の外添剤102は、母粒子101の表面およびその近傍に存在しながら、その母粒子101に固定されている。
【0078】
複数の粒子状の外添剤102が母粒子101の表面およびその近傍に存在しやすいように、その複数の粒子状の外添剤102の平均粒径は、複数の母粒子101の平均粒径よりも小さくなっている。ただし、本発明に関して説明する「平均粒径」は、いわゆるメジアン径(D50:μm)であり、以降においても同様である。
【0079】
複数の粒子状の外添剤102の平均粒径は、複数の母粒子101の平均粒径よりも小さくなるように設定されていれば、特に限定されない。このため、複数の粒子状の外添剤102の平均粒径は、任意に設定可能である。この場合には、互いに平均粒径が異なる2種類以上の外添剤102を併用してもよい。
【0080】
外添剤102は、例えば、無機材料および有機材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機材料は、例えば、疎水性シリカなどである。有機材料は、例えば、メラミン樹脂などである。
【0081】
この現像剤100では、例えば、母粒子101に対する外添剤102の定着性を向上させることにより、画像の形成時などにおいて外添剤102が母粒子101から剥離(脱落)することを抑制している。これに伴い、複数の粒子状の外添剤102のうちの一部または全部は、母粒子101の内部に部分的または全体的に入り込んでいることが好ましい。
【0082】
上記した「母粒子101の内部に部分的または全体的に入り込んでいる」とは、母粒子101の輪郭(外縁)Lに着目した場合において、外添剤102のうちの一部または全部が輪郭Lよりも内側(母粒子101の内部)に位置していることを意味している。
【0083】
具体的には、複数の粒子状の外添剤102は、例えば、3種類の状態にある外添剤102A〜102Cを含んでいる。ただし、外添剤102は、外添剤102A〜102Cの全てを含んでいてもよいし、外添剤102A〜102Cのうちの一部だけを含んでいてもよい。より具体的には、外添剤102は、例えば、外添剤102Aと共に外添剤102Bだけを含んでいてもよいし、外添剤102Aと共に外添剤102Cだけを含んでいてもよいし、外添剤102Aと共に外添剤120B,102Cの双方を含んでいてもよい。
【0084】
外添剤102Aは、母粒子101の表面に存在しており、その外添剤102Aの全体は、母粒子101の輪郭Lよりも外側に位置している。これにより、外添剤102Aは、母粒子101の内部まで入り込んでいないため、その外添部102Aは、母粒子101により弱く保持されている。
【0085】
外添剤102Bは、母粒子101の表面近傍に存在しており、その外添剤102Bの一部は、母粒子101の輪郭Lよりも内側に位置している。これにより、外添剤102Bの一部は、母粒子101の内部まで入り込んでいるため、その外添剤102Bは、母粒子101により強固に保持されている。
【0086】
外添剤102Cは、母粒子101の表面近傍に存在しており、その外添剤102Cの全体は、母粒子101の輪郭Lよりも内側に位置している。これにより、外添剤102Cの全体は、母粒子101の内部まで入り込んでいるため、その外添剤102Cは、母粒子101により著しく強固に保持されている。
【0087】
外添剤102A〜102Cの存在状態の比較から明らかなように、母粒子101に対する定着性は、外添剤102A〜102Cの順に高くなるため、その外添剤102A〜102Cは、その順に母粒子101から剥離しにくくなる。
【0088】
すなわち、外添剤102Aは、母粒子101により弱く保持されているため、その外添剤102Aは、画像の形成工程を繰り返すと母粒子101から剥離しやすい傾向にある。外添剤102Bは、母粒子101により強固に保持されているため、その外添剤102Bは、外添剤102Aと比較して、画像の形成工程を繰り返しても母粒子101から剥離しにくい傾向にある。外添剤102Cは、母粒子101により著しく強固に保持されているため、その外添剤102Cは、外添剤102Bと比較して、画像の形成工程を繰り返しても母粒子101から剥離しにくい傾向にある。
【0089】
これらのことから、外添剤102が外添剤102B,102Cのうちの一方または双方を含んでいる場合には、その外添剤102が外添剤102B,102Cのうちの一方または双方を含んでいない場合と比較して、画像の形成時などにおいて外添剤102が母粒子101から剥離しにくくなる。このように外添剤102が母粒子101から剥離しにくくなる傾向は、外添剤102中に占める外添剤102B,102Cのそれぞれの割合が大きくなるほど顕著になる。
【0090】
複数の粒子状の外添剤102のうちの一部または全部が母粒子101の内部に部分的または全体的に入り込んでいるかどうか、すなわち外添剤102が外添剤102B,102Cのうちの一方または双方を含んでいるかどうかを確認するためには、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡を用いて現像剤100を観察すればよい。
【0091】
現像剤100の形状は、特に限定されないが、できるだけ球状に近いことが好ましい。現像剤100の転写性などが向上するため、画像の品質が向上するからである。なお、
図3では、現像剤100の平面形状(輪郭)が円形である場合を示している。
【0092】
より具体的には、複数の粒子状の現像剤100の平均円形度は、特に限定されないが、中でも、0.955〜0.970であることが好ましい。画像の品質が十分に向上するからである。
【0093】
なお、現像剤100中における外添剤102の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤の含有量(100重量部)に対して0.01重量部〜10重量部であり、好ましくは0.05重量部〜8重量部である。
【0094】
この場合には、現像剤100の流動性を調整するために、必要に応じて、比較的大きい平均粒径(D50)を有する追加の外添剤102を用いてもよい。この追加の外添剤102は、例えば、上記した無機粒子などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その追加の外添剤102の平均粒径は、例えば、50nm以上である。なお、現像剤100中における追加の外添剤102の含有量は、特に限定されないが、例えば、結着剤の含有量(100重量部)に対して0.5重量部〜3重量部である。
【0095】
[現像剤の物性]
現像剤100では、画像の形成時において擦れ現象が発生することを抑制するために、母粒子101に対する外添剤102の定着状態が適正化されている。この擦れ現象は、画像の品質を低下させる不具合であり、その擦れ現象の詳細に関しては、後述する。
【0096】
具体的には、現像剤100が分散されたポリオキシエチレンラウリルエーテル(PLE)溶液に超音波を印加した際に下記の式(1)により算出される外添剤102の剥離率(%)は、30.6%以下であり、好ましくは25.6%以下である。
【0097】
剥離率(%)=[1−(X/Y)]×100 ・・・(1)
(Xは、超音波の印加後において現像剤100中に含まれている外添剤102の量(重量%)である。Yは、超音波の印加前において現像剤100中に含まれている外添剤102の量(重量%)である。)
【0098】
ただし、PLE溶液は、上記したように、エーテル型非イオン性界面活性剤であるPLEを含む溶液であり、具体的には、花王株式会社製のエマルゲン109P(製品名)である。PLE溶液に関する条件は、濃度=5%および温度=32℃とする。超音波の印加に関する条件は、強度(周波数)=40kHzおよび時間=10分間とする。
【0099】
なお、PLE溶液に現像剤100を分散させる場合には、100重量部のPLE溶液に対して5重量部の現像剤100を加える。また、PLE溶液に現像剤100を加えたのち、そのPLE溶液を3時間以上撹拌する。
【0100】
この「剥離率」は、上記した式(1)から明らかなように、超音波の印加に起因して母粒子101から剥離した外添剤102の量を表す指標である。すなわち、剥離率が小さいということは、超音波の印加に起因して母粒子101から剥離した外添剤102の量が少ないことを意味する。一方、剥離率が大きいということ、超音波の印加に起因して母粒子101から剥離した外添剤102の量が多いことを意味する。ただし、式(1)を用いて算出される剥離率の値は、小数点第2位を四捨五入した値とする。
【0101】
上記した剥離率の条件(30.6%以下)から明らかなように、現像剤100では、その剥離率が十分に小さくなるように制御されている。この剥離率の条件が満たされているのは、主に、上記した外添剤102B,102Cの存在によると考えられる。すなわち、母粒子101により保持されている外添剤102B,102Cは、現像剤100に超音波が印加されても母粒子101から剥離しにくいため、その外添剤102B,102Cが母粒子101から剥離する量は、剥離率が十分に小さくなるように抑えられている。
【0102】
[現像剤の製造方法]
現像剤100は、例えば、以下の手順により製造される。
【0103】
現像剤100の製造方法は、特に限定されない。すなわち、現像剤100は、例えば、粉砕法を用いて製造されてもよいし、重合法を用いて製造されてもよいし、それら以外の方法を用いて製造されてもよい。もちろん、現像剤100を製造するために、上記した製造方法のうちの2種類以上を併用してもよい。なお、重合法は、例えば、溶解懸濁法などである。
【0104】
ここでは、例えば、粉砕法を用いて現像剤100を製造する場合に関して説明する。
【0105】
現像剤100を製造する場合には、最初に、着色剤と、必要に応じて結着剤などの他の材料とを混合することにより、混合物を得る。
【0106】
続いて、混合物を溶融させながら混練したのち、溶融混練後の混合物を冷却することにより、前駆体を得る。この場合には、溶融混練用の装置として、例えば、押し出し成型機および二軸混練機などのうちのいずれか1種類または2種類以上を用いる。この前駆体は、上記した着色剤などを含む母粒子101の塊である。
【0107】
続いて、前駆体を粉砕したのち、粉砕後の前駆体を分級することにより、複数の母粒子101を得る。この粉砕処理の回数は、1回だけでもよいし、2回以上でもよい。粉砕処理の回数が2回以上である場合には、1回以上の粗粉砕処理と1回以上の微粉砕処理とを行ってもよい。この場合には、粉砕用の装置として、例えば、カーターミル、ジェットミルおよび衝突式粉砕機などのうちのいずれか1種類または2種類以上を用いる。また、分級用の装置として、例えば、風力分級機などのうちのいずれか1種類または2種類以上を用いる。
【0108】
特に、前駆体を粉砕する場合には、前外添処理を行うために、前駆体に外添剤102を添加することにより、その外添剤102と共存する状態において前駆体を粉砕する。この外添剤102の添加量は、最終的(現像剤100の製造完了後)に現像剤100に含まれることになる外添剤102の総量Wのうちの一部の量W1(W1<W)とする。前外添処理では、前駆体が粉砕されながら、その前駆体に外添剤102が外添されるため、母粒子101に外添剤102が定着されると共に、その外添剤102のうちの一部(外添剤102B,102C)が母粒子101の内部まで入り込む。このため、前外添処理では、主に、上記した外添剤102A〜102Cのうち、外添剤102B,102Cが形成されやすくなる。
【0109】
最後に、後外添処理を行うために、母粒子101に外添剤102を添加したのち、その外添剤102と共存した状態において母粒子102を撹拌する。この外添剤102の添加量は、最終的に現像剤100に含まれることになる外添剤102の総量Wのうちの残りの量W2(=W−W1)とする。この場合には、後外添用の装置として、例えば、ヘンシェルミキサなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を用いる。後外添処理では、母粒子101に外添剤102が定着される。このため、後外添処理では、主に、上記した外添剤102A〜102Cのうち、外添剤102Aが形成されやすくなる。
【0110】
これにより、現像剤100が完成する。この現像剤100を製造する場合には、例えば、前外添処理における外添剤102の添加量W1を調整することにより、上記した剥離率を制御可能である。
【0111】
<1−4.動作>
次に、画像形成装置の動作に関して説明する。
【0112】
ここでは、
図1および
図2を参照しながら、媒体Mの片面に画像が形成される場合に関して説明する。この場合には、トレイ11に収納されている媒体Mが用いられることとする。
【0113】
この画像形成装置は、例えば、以下で説明するように、現像処理、転写処理、定着処理およびクリーニング処理を行う。
【0114】
[現像処理]
トレイ11に収納された媒体Mは、送り出しローラ21により取り出される。この媒体Mは、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により矢印F1の方向に搬送される。
【0115】
現像処理では、現像部30Yにおいて、感光体ドラム31が回転すると、帯電ローラ32が回転しながら感光体ドラム31の表面に直流電圧を印加する。これにより、感光体ドラム31の表面が均一に帯電する。
【0116】
続いて、画像信号に応じて、LEDヘッド37が感光体ドラム31の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム31の表面では、光の照射部分において表面電位が減衰(光減衰)するため、その感光体ドラム31の表面に静電潜像が形成される。
【0117】
一方、現像部30Yでは、カートリッジ38に収納されているイエローの現像剤が供給ローラ34に向けて放出される。
【0118】
供給ローラ34に電圧が印加されたのち、その供給ローラ34が回転する。これにより、カートリッジ38からイエローの現像剤が供給ローラ34の表面に供給される。
【0119】
現像ローラ33に電圧が印加されたのち、その現像ローラ33が供給ローラ34に圧接されながら回転する。これにより、供給ローラ34の表面に供給されたイエローの現像剤が現像ローラ33の表面に吸着するため、その現像剤が現像ローラ33の回転を利用して搬送される。この場合には、現像ローラ33の表面に吸着されているイエローの現像剤の一部が現像ブレード35により除去されるため、その現像ローラ33の表面に吸着されたイエローの現像剤の厚さが均一化される。
【0120】
現像ローラ33に圧接されながら感光体ドラム31が回転したのち、その現像ローラ33の表面に吸着されていたイエローの現像剤が感光体ドラム31の表面に移行する。これにより、感光体ドラム31の表面(静電潜像)にイエローの現像剤が付着するため、イエローの現像剤像が形成される。
【0121】
[1次転写処理]
転写部40において、駆動ローラ42が回転すると、その駆動ローラ42の回転に応じて従動ローラ43およびバックアップローラ44が回転する。これにより、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する。
【0122】
1次転写処理では、1次転写ローラ45Yに電圧が印加されている。この1次転写ローラ45Yは、中間転写ベルト41を介して感光体ドラム31に圧接されているため、上記した現像処理において感光体ドラム31の表面(静電潜像)に付着されたイエローの現像剤は、中間転写ベルト41に転写される。
【0123】
こののち、イエローの現像剤が転写された中間転写ベルト41は、引き続き矢印F5の方向に移動する。これにより、現像部30M,30C,30Kおよび1次転写ローラ45M,45C,45Kにおいて、上記した現像部30Yおよび1次転写ローラ45Yと同様の手順により現像処理および1次転写処理が順に行われる。よって、中間転写ベルト41に各色(マゼンタ、シアンおよびブラック)の現像剤が順次転写されるため、各色の現像剤像が形成される。
【0124】
すなわち、現像部30Mおよび1次転写ローラ45Mにより、中間転写ベルト41の表面にマゼンタの現像剤が転写されるため、マゼンタの現像剤像が形成される。続いて、現像部30Cおよび1次転写ローラ45Cにより、中間転写ベルト41の表面にシアンの現像剤が転写されるため、シアンの現像剤像が形成される。続いて、現像部30Kおよび1次転写ローラ45Kにより、中間転写ベルト41の表面にブラックの現像剤が転写されるため、ブラックの現像剤像が形成される。
【0125】
もちろん、実際に現像部30Y,30M,30C,30Kおよび1次転写ローラ45Y,45M,45C,45Kのそれぞれにおいて現像処理および転写処理が行われるかどうかは、画像を形成するために必要な色(現像剤の種類およびその組み合わせ)に応じて決定される。
【0126】
[2次転写処理]
搬送経路R1に沿って搬送される媒体Mは、バックアップローラ44と2次転写ローラ46との間を通過する。
【0127】
2次転写処理では、2次転写ローラ46に電圧が印加されている。この2次転写ローラ46は、媒体Mを介してバックアップローラ44に圧接されるため、上記した1次転写処理において中間転写ベルト41に転写された現像剤は、媒体Mに転写される。
【0128】
[定着処理]
2次転写処理において媒体Mに現像剤が転写されたのち、その媒体Mは、引き続き搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送されるため、定着部50に投入される。
【0129】
定着処理では、加熱ローラ51の表面温度が所定の温度となるように制御されている。加熱ローラ51に圧接されながら加圧ローラ52が回転すると、その加熱ローラ51と加圧ローラ52との間を通過するように媒体Mが搬送される。
【0130】
これにより、媒体Mの表面に転写された現像剤が加熱されるため、その現像剤が溶融する。しかも、溶融状態の現像剤が媒体Mに圧接されるため、その現像剤が媒体Mに強固に付着する。よって、媒体Mの表面に画像が形成される。
【0131】
画像が形成された媒体Mは、搬送経路R2に沿って搬送ローラ63により矢印F2の方向に搬送されるため、スタッカ部2に送出される。
【0132】
なお、ここでは詳細に説明しないが、媒体Mの搬送手順は、その媒体Mの表面に形成される画像の様式に応じて変更される。
【0133】
例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3〜R5に沿って搬送ローラ64〜67により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド71,72により制御される。これにより、媒体Mの裏面(未だ画像が形成されていない面)において、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が再び行われる。
【0134】
また、例えば、媒体Mの片面に複数回に渡って画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3,R5に沿って搬送ローラ64〜66により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド71,72により制御される。これにより、媒体Mの表面(既に画像が形成されている面)において、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が再び行われる。
【0135】
[クリーニング処理]
この画像形成装置では、任意のタイミングにおいてクリーニング処理が行われる。
【0136】
現像部30Yでは、感光体ドラム31の表面に不要な現像剤が残留する場合がある。この不要な現像剤は、例えば、1次転写処理において用いられた現像剤の一部であり、中間転写ベルト41に転写されずに感光体ドラム31の表面に残留した現像剤である。
【0137】
そこで、現像部30Yでは、クリーニングブレード36に圧接されている状態において感光体ドラム31が回転するため、その感光体ドラム31の表面に残留している現像剤がクリーニングブレード36により掻き取られる。これにより、感光体ドラム31の表面から不要な現像剤が除去される。
【0138】
なお、上記したクリーニングブレード36を用いたクリーニング処理は、現像部30G,30C,30Kのそれぞれにおいても同様に行われる。
【0139】
また、転写部40では、1次転写処理において中間転写ベルト41の表面に移行した現像剤の一部が2次転写処理において媒体Mの表面に移行されずに、その中間転写ベルト41の表面に残留する場合がある。
【0140】
そこで、転写部40では、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する際に、その中間転写ベルト41の表面に残留した現像剤がクリーニングブレード47により掻き取られる。これにより、中間転写ベルト41の表面から不要な現像剤が除去される。
【0141】
<1−5.作用および効果>
この画像形成装置では、現像剤100に関する外添剤102の剥離率が30.6%以下であるため、上記したように、画像の形成工程を繰り返しても外添剤102が母粒子101から剥離しにくくなる。よって、擦れ現象が発生しにくくなるため、高品質な画像を得ることができる。この場合には、剥離率が25.6%以下であれば、より高い効果を得ることができる。
【0142】
特に、複数の粒子状の外添剤102のうちの一部または全部が母粒子101の内部に部分的または全体的に入り込んでいれば、その母粒子101に対して外添剤102が強固に定着されるため、上記した条件を満たすように剥離率を容易かつ安定に設定することができる。
【0143】
また、複数の粒子状の現像剤100の平均円形度が0.955〜0.970であれば、その現像剤100の転写性などが向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0144】
また、現像剤100が結着剤として結晶性ポリエステルを含んでいれば、その現像剤100が媒体Mにより定着しやすくなると共に、現像剤100の耐久性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0145】
ここで、上記した作用および効果が得られることの意義は、詳細には、以下で説明する通りである。
【0146】
現像剤の平均円形度は、画像の品質に影響を及ぼす。具体的には、現像剤の平均円形度が高いと、その現像剤の転写性能などが向上するため、画像の品質が向上する。
【0147】
ところで、現像剤の製造方法としては、上記したように、粉砕法および重合法などが用いられているが、画像形成速度の高速化、多様な種類の媒体に対する適応性およびコストなどの観点からは、粉砕法が用いられる傾向にある。結着剤として、紙などの媒体に対する親和性が高いポリエステル系樹脂を用いることにより、その媒体に対する現像剤の定着性が向上しやすいからである。また、現像剤に帯電制御剤などを添加しやすいからである。
【0148】
しかしながら、粉砕法により製造された現像剤の平均円形度は、重合法により製造された現像剤の平均円形度と比較して、低くなる傾向にある。このため、粉砕法により製造された現像剤を用いると、画像の高精細化に対応しにくいと共に、現像剤の転写性能が向上しにくいという問題がある。
【0149】
この平均円形度に関する問題を改善するためには、例えば、粉砕法により製造された現像剤を後処理することにより、その現像剤の平均円形度を事後的に向上させることが考えられる。ところが、現像剤の平均円形度を事後的に向上させると、その現像剤の表面積が低下する。これにより、現像剤の表面に保持される電荷量が低下すると共に、その現像剤の摩擦状況(摩擦力および摩擦の発生頻度)が低下するため、画質の低下を招いてしまう。この傾向は、特に、一成分現像方式の現像剤を用いた場合において顕著になる。
【0150】
この画質の低下を改善するためには、例えば、現像剤に含まれる外添剤の量を減少させることにより、その現像剤の流動性を意図的に低下させることが考えられる。ところが、現像剤の流動性が低下すると、その現像剤の表面に保持される電荷量が増加すると共に現像剤の摩擦状況は改善されるが、現像部30において供給ローラ34から現像ローラ33に現像剤を供給しにくくなる。これにより、画像形成装置を用いて画像を形成すると、その画像中において意図せずに印画濃度(濃淡)がばらつくため、いわゆる擦れ現象が発生してしまう。
【0151】
この擦れ現象が発生する傾向は、特に、画像の形成工程が繰り返されることにより、外添剤の剥離量の増加に起因して現像剤の流動性がより低下すると、顕著になる。また、擦れ現象が発生する傾向は、現像ローラ33から感光体ドラム31に供給される現像剤の量が多くなるほど発生しやすくなるため、ベタ画像(印画Duty=100%)を形成する場合において、顕著になる。
【0152】
これらのことから、外添剤を含む現像剤を用いる場合には、その現像剤の平均円形度の向上と擦れ現象の発生の抑制とがトレードオフの関係にあるため、高品質な画像を得ることが困難である。すなわち、現像剤の平均円形度を向上させると、擦れ現象が発生しやすくなるため、高品質な画像が得られにくくなる。一方、擦れ現象の発生を抑制しようとすると、現像剤の平均円形度を低くせざるを得ないため、その現像剤の平均円形度の低下に起因して高品質な画像が得られにくくなる。
【0153】
これに対して、本発明の画像形成装置では、上記したように、現像剤100に関する外添剤100の剥離率を30.6%以下となるように設定することにより、その現像剤100の平均円形度を高くしつつ、擦れ現象の発生が抑制される。よって、上記したトレードオフの関係が打破されるため、高品質な画像を得ることができる。
【0154】
<2.変形例>
なお、
図1では、4種類の色(イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック)に対応する4つの現像部30(30Y,30M,30C,30K)を用いたが、その現像部30の数は、特に限定されない。現像部30の数は、画像の形成に用いる色の数などの条件に応じて任意に設定可能である。
【0155】
また、
図3に示した外添剤102(102A〜102C)を含む現像剤100は、上記したように、4種類の現像剤(イエローの現像剤、マゼンタの現像剤、シアンの現像剤およびブラックの現像剤)のうちの一部(1種類、2種類または3種類)に適用されてもよいし、全部に適用されてもよい。この場合においても、同様の効果を得ることができる。ただし、画像の品質をできるだけ向上させるためには、現像剤100は、4種類の現像剤の全てに適用されることが好ましい。
【実施例】
【0156】
本発明の実施例に関して、詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.現像剤の製造
2.現像剤の物性
3.現像剤を用いて形成された画像の評価
【0157】
<1.現像剤の製造>
以下で説明する手順により、ブラックの現像剤を得るために、粉砕法を用いて5種類の現像剤S1〜S5を製造した。
【0158】
最初に、着色剤(カーボンブラック)と、結着剤(結晶性ポリエステル)と、離型剤(ポリオレフィンワックス)と、帯電制御剤(サリチル酸系錯体)とを混合することにより、混合物を得た。混合比は、結着剤100重量部に対して、着色剤5重量部、離型剤3重量部および帯電制御剤0.3重量部とした。
【0159】
続いて、押し出し成型機を用いて混合物を溶融混練したのち、その溶融混練された混合物を冷却することにより、前駆体を得た。
【0160】
続いて、カッターミルを用いて前駆体を粗粉砕し、引き続きジェットミルを用いて前駆体を微粉砕したのち、風力分級機を用いて微粉砕後の前駆体を分級することにより、母粒子を得た。前駆体を粗粉砕および微粉砕する場合には、前外添処理を行うために、その前駆体に外添剤を添加した。外添剤としては、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製のR972:平均粒径(D50)=16nm)とメラミン樹脂微粒子(株式会社日本触媒製のエポスターs:平均粒径(D50)=0.2μm)との混合物を用いた。外添剤の添加量(前外添量:%)は、表1に示した通りである。なお、一例を挙げると、前外添量が「40%」であるとは、最終的に現像剤に含まれる外添剤の総重量(100%)のうちの40%に相当する重量を意味している。
【0161】
最後に、後外添処理を行うために、母粒子に外添剤を添加したのち、ヘンシェルミキサを用いて母粒子および外添剤を混合撹拌した。後外添処理において添加される外添剤の種類は、前外添処理において添加された外添剤の種類と同様にした。外添剤の添加量(後外添量:%)は、表1に示した通りである。なお、一例を挙げると、後外添量が「60%」であるとは、最終的に現像剤に含まれる外添剤の総重量(100%)のうちの60%に相当する重量を意味している。
【0162】
外添剤の総添加量、すなわち前外添量と後外添量との和に関しては、最終的に母粒子100重量部に対して疎水性シリカ4重量部およびメラミン樹脂微粒子0.3重量部となるように設定した。
【0163】
これにより、現像剤S1〜S5が完成した。現像剤S1〜S5は、いずれも負帯電の現像剤であった。また、現像剤S1〜S5のそれぞれの平均円形度は、いずれも0.960であった。
【0164】
<2.現像剤の物性>
以下で説明する手順により、現像剤S1〜S5のそれぞれの剥離率(%)を調べた。なお、以下では、現像剤S1の物性を調べる場合を例に挙げて説明する。現像剤S2〜S5のそれぞれの物性を調べる手順は、現像剤S1の物性を調べる手順と同様である。
【0165】
最初に、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(株式会社島津製作所製のEDX−800HS)を用いて、現像剤S1中に含まれている外添剤の量(超音波の印加前の外添剤量:重量%)を測定した。
【0166】
続いて、100重量部のPLE溶液に対して5重量部の現像剤S1を投入したのち、そのPLE溶液を撹拌することにより、その現像剤S1をPLE溶液中に分散させた。この場合には、PLE溶液として花王会社製のエマルゲン109Pを用いると共に、撹拌時間を3時間とした。PLE溶液に関する条件は、濃度=5%および温度=32℃とした。
【0167】
続いて、現像剤S1が分散されたPLE溶液に対して、超音波を印加した。PLE溶液に超音波を印加するためには、超音波洗浄機(アズワン株式会社製のUSCLEANER US−2R)を用いた。超音波の印加条件は、強度=40kHzおよび時間=10分間とした。超音波の印加後、純水および濾紙(厚さ=100mm)を用いてPLE溶液を濾過したのち、濾過物(超音波の印加後の現像剤S1)を乾燥させた。
【0168】
続いて、上記した超音波の印加前の外添剤量を調べた場合と同様の手順により、濾過物(現像剤S1)中に含まれている外添剤の量(超音波の印加後の外添剤量:重量%)を測定した。
【0169】
最後に、上記した式(1)に基づいて、外添剤の剥離率(%)を算出した。この剥離率を算出する場合には、超音波の印加後の外添剤量(重量%)をX、超音波の印加前の外添剤量(重量%)をYとした。
【0170】
現像剤S1〜S5のそれぞれに関して算出された剥離率は、表1に示した通りである。
【0171】
なお、現像剤S1〜S5のそれぞれは、互いに共通する結着剤(結晶性ポリエステル)を含んでいるため、互いに共通する熱物性を示した。具体的には、現像剤S1〜S5のそれぞれのガラス転移温度Tgは、いずれも60.8℃であった。また、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル株式会社製のEXSTAR600)を用いて現像剤S1〜S5のそれぞれを連続して2回分析したところ、1回目の溶融時には30℃〜70℃の範囲内に弱い吸熱ピークが検出されたが、2回目の溶融時(冷却後の再溶融時)には30℃〜70℃の範囲内に吸熱ピークが検出されなかった。
【0172】
【表1】
【0173】
<3.現像剤を用いて形成された画像の評価>
(実験例1〜5)
以下で説明する手順により、現像剤S1〜S5のそれぞれを用いて画像を形成したのち、その画像を評価した。なお、以下では、現像剤S1を用いて画像を評価する場合を例に挙げて説明する。現像剤S2〜S5のそれぞれを用いて画像を評価する手順は、現像剤S1を用いて画像を評価する手順と同様である。
【0174】
現像部のカートリッジに現像剤S1を投入したのち、その現像部が搭載された画像形成装置を用いて画像を形成した。画像形成装置として、株式会社沖データ製のカラープリンタc711dnを用いると共に、画像が形成される媒体として、株式会社沖データ製のカラープリンタ用紙 エクセレントホワイトA4を用いた。画像の種類は、ベタ画像(印画Duty=0.3%)とした。この画像は、通常のベタ画像において印画される横帯線の数を100%とした際、0.3%に相当する数の横帯線が印画される画像である。極めて小さい値(0.3%)となるように印画条件(印画Dutyの値)を設定したのは、ここでは現像剤S1に意図的にダメージを与える目的で実験するため、その現像剤S1の消費をできるだけ抑えるためである。
【0175】
画像を形成する場合には、以下の環境条件下において、6日間に渡って連続的に画像を形成した。この場合には、10秒間に1枚ずつ画像を形成すると共に、1日当たりにおける画像の形成回数を3000回とした。
1日目,2日目:温度=24℃,湿度=50%
3日目,4日目:温度=28℃,湿度=80%
5日目,6日目:温度=10℃,湿度=20%
【0176】
なお、画像を形成する場合には、現像ブレードと現像剤S1との摩擦などに起因して、その現像剤S1が負に帯電した。現像剤S1の負の帯電量は、−25μC/gであった。なお、現像剤S2〜S5のそれぞれも、負に帯電すると共に、現像剤S2〜S5のそれぞれの負の帯電量は、現像剤S1の帯電量と同様であった。
【0177】
6日間に渡って連続的に画像を形成しながら擦れ現象の発生状況を評価したところ、表2に示した結果が得られた。
【0178】
評価に用いる画像は、1日目〜6日目のそれぞれにおいて、3000回目に形成された画像とした。擦れの発生状況を調べる場合には、擦れ現象が全く発生していない場合を「A」と判定した。擦れ現象は僅かに発生しているが、その擦れ現象が実使用上において問題にならない場合を「B」と判定した。擦れ現象は発生しているが、その擦れ現象が実使用上において許容される程度である場合を「C」と判定した、擦れ現象が発生しており、その擦れ現象が実使用上において問題がある場合を「D」と判定した。
【0179】
【表2】
【0180】
擦れ現象の発生状況は、剥離率に応じて大きく変動した。
【0181】
具体的には、現像剤S1を用いたため、剥離率が30.6%よりも大きい場合(実験例1)には、実使用上において問題になる程度の深刻な擦れ現象が発生した。
【0182】
これに対して、現像剤S2〜S5を用いたため、剥離率が30.6%以下である場合(実験例2〜5)には、実使用上において問題がない程度まで擦れ現象の発生が抑制された。この場合には、特に、剥離率が25.6%以下(実験例3〜5)、好ましくは剥離率が23.1%以下(実験例4,5)であると、擦れ現象の発生がより抑制された。さらに、剥離率が20.5%以下であると(実験例5)、擦れ現象が発生しなかった。
【0183】
ここで、環境条件と擦れ現象の発生状況との関係に着目すると、その擦れ現象の発生状況は、特に、高温高湿条件(温度=28℃,湿度=80%)である3日目および4日目において悪化しやすい傾向を示した。この原因は、高温高湿条件下では現像剤の流動性が低下しやすいため、媒体に対する現像剤の定着性などが悪化することに起因していると考えられる。
【0184】
逆に言えば、剥離率が30.6%以下であると、高温高湿条件下において画像を形成した場合においても擦れ現象が発生しにくくなるため、その擦れ現象の影響を受けずに高品質な画像を形成しやすくなる。
【0185】
これらのことから、外添剤を含む現像剤を用いる場合には、その現像剤に関する外添剤の剥離率が30.6%以下であると、擦れ現象の発生が抑制された。よって、高品質な画像を得ることができた。
【0186】
以上、一実施形態を挙げながら本発明を説明したが、本発明は上記した一実施形態において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の一実施形態の画像形成装置の画像形成方式は、中間転写ベルトを用いた中間転写方式に限られず、他の画像形成方式でもよい。また、本発明の一実施形態の画像形成装置は、フルカラープリンタに限られず、モノクロ(単色)のプリンタでもよい。