【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るセキュリティシステムは、
外部ネットワークに接続されるよう構成される第1ゲートウェイ装置と、
内部ネットワークに接続されると共に、前記第1ゲートウェイ装置に接続されるよう構成される第2ゲートウェイ装置と、
前記第1ゲートウェイ装置と前記第2ゲートウェイ装置とを双方向通信が可能に接続する双方向通信ラインと、を備え、
前記第1ゲートウェイ装置は、特定のアプリケーションレイヤのプロトコルである特定プロトコルを処理するよう構成される第1プロキシ部を有し、
前記第2ゲートウェイ装置は、前記特定プロトコルを処理するよう構成される第2プロキシ部を有し、
前記第1ゲートウェイ装置が前記外部ネットワークから前記内部ネットワークへ向けたインバウンドの伝送データを受信すると、前記第1プロキシ部は、前記インバウンドの伝送データが特定プロトコルのものである場合には、前記インバウンドの伝送データによって運ばれる特定プロトコルの通信情報を受信した後に、前記特定プロトコルの通信情報を前記双方向通信ラインにより前記第2ゲートウェイ装置に送信し、前記インバウンドの伝送データが前記特定プロトコルの通信情報のものではない場合には前記インバウンドの伝送データを前記第2ゲートウェイ装置へ送信しないよう構成され、
前記第2プロキシ部は、前記双方向通信ラインを介して前記第1プロキシ部から前記特定プロトコルの通信情報を受信した場合には、前記内部ネットワークにおける通信の宛先アドレスを前記特定プロトコルの通信情報から取得し、前記宛先アドレスに対して前記特定プロトコルの通信情報を送信するよう構成される。
【0011】
上記(1)の構成によれば、外部ネットワークから内部ネットワークへ向けたインバウンド通信は、特定プロトコルの通信情報のための通信である場合には、第1ゲートウェイ装置から第2ゲートウェイ装置へ送信(中継)される。この際、第1ゲートウェイ装置は、インバウンドの伝送データによって運ばれる特定プロトコルの通信情報を第1プロキシ部で受信した上で、第2ゲートウェイ装置へ送信(中継)する。すなわち、この特定プロトコルの通信情報は、受信側エンド装置とメッセージ(制御コマンドなど)を交換するために送信側エンド装置が生成した通信データである。また、第1ゲートウェイ装置は、外部ネットワークのネットワークレイヤプロトコル(例えば、IP)を終端した後に、内部ネットワークに向けて特定プロトコルの通信情報を送信しなおす。このように、外部ネットワークの送信側エンド装置と内部ネットワークの受信側エンド装置との間を論理的に分断すると共に、この論理的に分断されたネットワークを中継可能な通信の主体を、特定プロトコルを処理可能な第1プロキシ部および第2プロキシ部に制限することで、特定プロトコル以外の通信は内部に侵入できない。このため、外部ネットワークから内部ネットワークへの攻撃や不正侵入といった不正アクセスを遮断することができ、内部ネットワークを保護することができる。
【0012】
また、第2ゲートウェイ装置の第2プロキシ部は、第1ゲートウェイ装置から受信した特定プロトコルの通信情報に基づいて内部ネットワークの受信側エンド装置の宛先アドレス(例えば、宛先IPアドレスなど)を取得することで、受信側エンド装置に特定プロトコルの通信情報を送信することができる。つまり、特定プロトコル以外の通信は、受信側エンド装置の宛先アドレスが取得できず、内部ネットワークの受信側エンド装置に送信(中継)されない。このため、第2ゲートウェイ装置によって、内部ネットワークの保護を強固にすることができる。このように、セキュリティシステムは、第1ゲートウェイ装置と第2ゲートウェイ装置の二段構えで内部ネットワークを保護しており、セキュリティシステムによって内部ネットワークを強固に保護することができる。また、第1ゲートウェイ装置(第1プロキシ部)および第2ゲートウェイ装置(第2プロキシ部)による通信制御は、送信側エンド装置および受信側エンド装置の通信処理(IPパケット化や特定の通信インタフェースの採用など)に影響を与えることがなく、セキュア(安全)かつ自由度の高い通信経路を構築することができる。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第1ゲートウェイ装置と前記第2ゲートウェイ装置とを、前記第2ゲートウェイ装置から前記第1ゲートウェイ装置に向けた片方向通信が可能に接続する片方向通信ラインを、さらに備え、
前記第2ゲートウェイ装置が前記内部ネットワークから前記外部ネットワークへ向けたアウトバンド伝送データを受信すると、前記アウトバンド伝送データは、前記双方向通信ラインを経由することなく、前記片方向通信ラインを経由して前記第1ゲートウェイ装置へ送信される。
上記(2)の構成によれば、アウトバウンド通信は片方向通信ラインを必ず経由するように構成される。このため、片方向通信ラインによって、データダイオードのように、外部ネットワークからの攻撃や不正侵入を確実に遮断しながら、内部ネットワークの送信側エンド装置から外部ネットワークの受信側エンド装置(宛先)にプラントの運転情報などを送ることができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記片方向通信ラインは、前記第2ゲートウェイ装置の送信物理ポートと前記第1ゲートウェイ装置の受信物理ポートとを接続する光ファイバケーブルである。
上記(3)の構成によれば、第2ゲートウェイ装置から第1ゲートウェイ装置への片方向通信ラインを容易に実装することができる。また、光ファイバケーブルにより通信を行うため、大量のデータを高速に通信することができる。例えば、内部ネットワークが制御ネットワークの場合には、プラントなどの運転情報を内部ネットワークの外部に送ることになるが、このような場合に高速通信を行うことができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(3)の構成において、
前記双方向通信ラインでは、ルーティングが不可能なプロトコルによる通信が行われるよう構成される。
上記(4)の構成によれば、シリアル通信などのルーティング不可能なプロトコルによって、第1ゲートウェイ装置と第2ゲートウェイ装置とが接続される。つまり、外部ネットワークからのインバウンド通信は、一旦シリアル通信に変換されることになる。このため、内部ネットワークおよび外部ネットワークがIPネットワークである場合など、外部ネットワークからのインバウンド通信がそのままセキュリティシステム1を経由して内部ネットワークにルーティングされることはなく、セキュアな通信経路を構築することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(4)の構成において、
前記外部ネットワークおよび前記内部ネットワークはIPネットワークである。
上記(5)の構成によれば、内部ネットワークと外部ネットワークとによってIPネットワークが形成されており、このIPネットワークは、第1ゲートウェイ装置および第2ゲートウェイ装置によって論理的に分離される。このため、インターネットなどの外部ネットワークからのIP通信は、特定プロトコルの通信以外は内部ネットワークから遮断されており、IPを基盤とするインターネットなどからのサイバー攻撃から内部ネットワークを保護することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記第1ゲートウェイ装置は、前記特定プロトコルの通信情報をポート番号により識別する。
上記(6)の構成によれば、UDPやTCPのポート番号によって、特定プロトコルの通信を容易に識別することができる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記第2ゲートウェイ装置は、前記内部ネットワークから受信した前記アウトバウンドの伝送データがUDP/IP通信である場合には、前記片方向通信ラインを使用して、前記アウトバウンドの伝送データを前記第1ゲートウェイ装置に送信する。
上記(7)の構成によれば、UDP/IPはコネクションレス型の通信であり、外部ネットワークの宛先装置からの送達確認なしにデータを送ることができる。このため、内部ネットワークの送信元装置から外部ネットワークの宛先装置に対して、片方向通信ラインを使用した片方向通信を容易に行うことができる。
【0019】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の構成において、
前記特定プロトコルは、標準化されていない独自プロトコルである。
上記(8)の構成によれば、独自プロトコルである特定プロトコルを解釈可能な装置である第1ゲートウェイ装置および第2ゲートウェイ装置のみが、外部ネットワークから受信した独自プロトコル(特定プロトコル)の伝送データを内部ネットワークの宛先に向けて中継可能に構成される。このため、外部ネットワークから内部ネットワークへ標準化されたアプリケーションレイヤのプロトコルの伝送データを送ることはできず、サイバー攻撃に対する防御力を増強することができる。
【0020】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の構成において、
前記双方向通信ラインは、RS−232Cを含むシリアル通信である。
上記(9)の構成によれば、第1ゲートウェイ装置と第2ゲートウェイ装置の間の特定プロトコルの通信情報の送受信を、標準のインタフェースを用いた簡易な方法により行うことができる。また、内部ネットワークが制御ネットワークの場合である場合には、外部ネットワーク側に接続されるリモートPC(送信側エンド装置)から通信される制御ネットワークの制御要求などの通信データは小容量であり、このような通信に対して適切な通信速度を提供することもできる。
【0021】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の構成において、
前記第1ゲートウェイ装置は、第1ファイアウォールを介して前記外部ネットワークに接続され、
前記第2ゲートウェイ装置は、第2ファイアウォールを介して前記内部ネットワークに接続される。
上記(10)の構成によれば、第1ファイアウォールおよび第2ファイアウォールによって、予め定義された所定の通信を許可しつつ、外部ネットワークから内部ネットワークへのサイバー攻撃を遮断することができ、内部ネットワークをより強固に保護することができる。また、第1ゲートウェイ装置および第2ゲートウェイ装置の処理負荷の軽減を図ることもできる。
【0022】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る通信制御方法は、
外部ネットワークに接続されるよう構成される第1ゲートウェイ装置と、
内部ネットワークに接続されると共に、前記第1ゲートウェイ装置に接続されるよう構成される第2ゲートウェイ装置と、
前記第1ゲートウェイ装置と前記第2ゲートウェイ装置とを相互に接続する双方向通信ラインと、を備えるセキュリティシステムによって実行される通信制御方法であって、
前記第1ゲートウェイ装置が、前記外部ネットワークから前記内部ネットワークへ向けたインバウンドの伝送データを受信するインバウントデータ受信ステップと、
前記第1ゲートウェイ装置が、前記インバウンドの伝送データのアプリケーションレイヤのプロトコルを確認し、前記アプリケーションレイヤのプロトコルが特定プロトコルである場合には、前記インバウンドの伝送データを前記第2ゲートウェイ装置に前記双方向通信ラインを使用して送信し、前記特定プロトコルの通信情報以外の場合には前記インバウンドの伝送データを前記第2ゲートウェイ装置へ送信しないよう構成される第1インバウンド通信処理ステップと、
前記第2ゲートウェイ装置が、前記第1ゲートウェイ装置から受信した前記インバウンドの伝送データが前記特定プロトコルの通信情報である場合には、前記特定プロトコルの情報に基づいて、前記内部ネットワークにおける通信の宛先アドレスを取得し、前記宛先アドレスに対して前記インバウンドの伝送データを送信する第2インバウンド通信処理ステップと、を有する。
【0023】
上記(11)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を得ることができる。
【0024】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記セキュリティシステムは、前記第1ゲートウェイ装置と前記第2ゲートウェイ装置とを、前記第2ゲートウェイ装置から前記第1ゲートウェイ装置に向けた片方向通信が可能に接続する片方向通信ラインを、さらに備え、
前記第2ゲートウェイ装置が前記内部ネットワークから前記外部ネットワークへ向けたアウトバンド伝送データを受信すると、前記アウトバンド伝送データは、前記双方向通信ラインを経由することなく、前記片方向通信ラインを経由して前記第1ゲートウェイ装置へ送信されるアウトバウンド通信処理ステップを、さらに有する。
上記(12)の構成によれば、上記(2)と同様の効果を得ることができる。
【0025】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記片方向通信ラインは、前記第2ゲートウェイ装置の送信物理ポートと前記第1ゲートウェイ装置の受信物理ポートとを接続する光ファイバケーブルである。
上記(13)の構成によれば、上記(3)と同様の効果を得ることができる。
【0026】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)〜(13)の構成において、
前記双方向通信ラインでは、ルーティングが不可能なプロトコルによる通信が行われるよう構成される。
上記(14)の構成によれば、上記(4)と同様の効果を得ることができる。
【0027】
(15)幾つかの実施形態では、上記(12)〜(14)の構成において、
前記外部ネットワークおよび前記内部ネットワークはIPネットワークである。
上記(15)の構成によれば、上記(5)と同様の効果を得ることができる。
【0028】
(16)幾つかの実施形態では、上記(15)の構成において、
前記第1ゲートウェイ装置は、前記特定プロトコルの通信情報をポート番号により識別する。
上記(16)の構成によれば、上記(6)と同様の効果を得ることができる。
【0029】
(17)幾つかの実施形態では、上記(16)の構成において、
前記アウトバウンド通信処理ステップは、前記内部ネットワークから受信した前記アウトバウンドの伝送データがUDP/IP通信である場合には、前記片方向通信ラインを使用した前記アウトバウンドの伝送データの送信を許可するアウトバウンド通信フィルタリングステップを有する。
上記(17)の構成によれば、上記(7)と同様の効果を得ることができる。
【0030】
(18)幾つかの実施形態では、上記(11)〜(17)の構成において、
前記特定プロトコルは、標準化されていない独自プロトコルである。
上記(18)の構成によれば、上記(8)と同様の効果を得ることができる。
【0031】
(19)幾つかの実施形態では、上記(11)〜(18)の構成において、
前記双方向通信ラインは、RS−232Cを含むシリアル通信である。
上記(19)の構成によれば、上記(9)と同様の効果を得ることができる。
【0032】
(20)幾つかの実施形態では、上記(11)〜(19)の構成において、
前記第1ゲートウェイ装置は、第1ファイアウォールを介して前記外部ネットワークに接続され、
前記第2ゲートウェイ装置は、第2ファイアウォールを介して前記内部ネットワークに接続される。
上記(20)の構成によれば、上記(10)と同様の効果を得ることができる。