(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6518864
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】車載音源方向検出システム
(51)【国際特許分類】
G01S 3/803 20060101AFI20190513BHJP
G01S 3/808 20060101ALI20190513BHJP
G08G 1/0965 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
G01S3/803
G01S3/808
G08G1/0965
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-200446(P2018-200446)
(22)【出願日】2018年10月24日
【審査請求日】2018年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512227753
【氏名又は名称】井上 時子
(74)【代理人】
【識別番号】711009394
【氏名又は名称】谷川 光有
(72)【発明者】
【氏名】高山一男
(72)【発明者】
【氏名】中村正孝
【審査官】
東 治企
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−044489(JP,A)
【文献】
特開平06−231388(JP,A)
【文献】
特開2002−240660(JP,A)
【文献】
特開平07−218614(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/001684(WO,A1)
【文献】
特許第5831963(JP,B1)
【文献】
特許第6375475(JP,B1)
【文献】
特開2006−194700(JP,A)
【文献】
大塚 紳一郎 ほか,"車載マイクロフォンによる緊急車両検知システム",情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2003年 3月,Vol.2003, No.25,pp.25-32,ISSN: 0919-6072
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72−1/82
G01S 3/80−3/86
H04R 1/00−3/14
G08G 1/00−1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車の運転支援及び自動運転のため、クラクション音、緊急車両の警報音などの検出対象メディアごとの音源方向を検出するシステムにおいて、
車両の上部空間に面した平面の10cm×10cm以内の一区画に複数のマイクを配置し、その信号の演算を伴う合成処理により複数方向の指向性を形成させ、その指向性出力を分岐し、検出対象メディアごとの信号を通過させる周波数選択フィルタを介して、各メディアごと各指向性方向別に分別された信号から、音源方向検出処理を行なう構成とし、
クラクション音など音源と自車間距離が数m以内の近距離で瞬時検出すべきメディアに対しては、上記分別された信号から最大振幅方向を求め音源方向と見なし、
緊急車両の警報音など音源と自車間距離が数mを超え、音波伝播で障害物による反射、回折が想定されるメディアに対しては、上記分別された信号から周波数成分変化パターンの時間的な進み遅れを検出し、
進み遅れ時間差が概ね10mSec 以下と小さいと判定される場合は上記分別された信号から、最大振幅方向を求め音源方向と見なし、進み遅れ時間差がそれより大きい場合は、上記分別された信号から最も時間的に進んだ指向性方向が音源方向とみなす音源方向検出処理を行う車載音源方向検出システム。
【請求項2】
最大振幅方向を求める方法として、各メディアごと各方向別に分別された信号から、最大振幅が得られる分別方向が音源方向と見なす方法、又は前方向指向性振幅、後方向指向性振幅、左方向指向性振幅、右方向指向性振幅を検出し、Y方向の振幅とX方向の振幅に分解し、音源方向角度=Arctan(Y方向の振幅/X方向の振幅)として音源方向を求める請求項1の車載音源方向検出システム。
【請求項3】
各メディアごと、各方向別の指向性出力の周波数成分の変化パターンを検出する場合、信号を符号関数による2値化処理をおこなった後に周波数に比例した値に変換する請求項1の車載音源方向検出システム。
【請求項4】
2系統の周波数成分変化パターンの時間的進み遅れを検出する場合、周波数に比例した値に変換後、帯域通過フィルタを通した2系統信号をVfA,VfBとしVfA,VfBを減算した後積分した信号をVintとし、VfAとVfBを加算した信号をVaddとして、VintとVaddを乗算した後平均化した信号であるLaedが正か負かにより信号の進み遅れを検出する請求項1の車載音源方向検出システム。
【請求項5】
車両の上部空間に面した平面の一区画に、マイク受音部相当の数mmの複数の穴を開け、その上部は、防水でありながら音波振動が通過する軟質材料で覆う構造とし、穴を開けた部分の下部に複数マイクを設置する、請求項1の車載音源方向検出システム。
【請求項6】
複数マイク設置位置が車のリアスポイラ内である請求項5の車載音源方向検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両周辺のクラクション音、緊急車両の警報音の音源方向を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転では、画像認識、レーザーレーダセンシング、ミリ波センシング等をセンサーとして利用しているが、音情報は別の情報も含んでおり、音源種類と音源方向センシングも運転支援を含め必要なセンサーとなる。 本発明の目的は、クラクション音のような近距離で単発的な音の音源方向検出と、緊急車両のサイレン音のような直接方向からの音波が減衰し到来する回折波、反射波が存在する環境での音源方向検出を行うことである。
従来の音波の到来方向検出の適用分野は、横の壁面などの反射物は存在するが、音源位置と音源方向検出部の間には音波を遮蔽する物は存在しない環境への適用であった。したがって音波到来方向検出方式は、反射波の影響による検出誤差を低減することに焦点が置かれていた。また、検出対象は、音声のような多数の周波数成分を有し、ある程度連続的な音であり、クラクション音、緊急車両警報音のような単発の音とか特定周波数の音とかの検出は考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】(特開2001-166025)には複数マイクによる音波到来時間差(位相差)を周波数分解し到来角度を求め、検出結果を合成することにより検出角度精度を向上させることが示されているが、回折波に対する誤動作回避方策は示されていない。
【特許文献2】(特開2017-128075 )では音源方向にシステム正面を追従させる場合に反射波による精度低下を防止するため、指向性形成したマイクシステムを使用しているが、回転制御を前提としている点が異なる。また回折波に対する対処が示されていない。
【特許文献3】(特開2017-67666)ではマイクロホンアレイを用いて、指向性の方向を順次変更して、最大振幅方向が音源方向と見なす方式であるが、音波伝播路に障害物による反射、減衰が発生した場合の対処は示されていない。
【特許文献4】(特開2010-105357 )では複数マイクを使用して自車の近接車両の走行音を取得する場合に収録音の質を向上することを目指している。そこで使用されている音源方向推定方法は、複数の周波数成分の時間差を用いているが、音源が遠方で音波伝播中に障害物による反射、減衰が発生した場合の対処方策は示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転では、画像認識、レーザーレーダセンシング、ミリ波センシング等により他の車の位置を検出するが、検出すべき対象車の間に大型車両がいる場合とか、建物の影になっている場合は光、電波では検出できない。また他車の発するクラクション音は、危険通知、更に“どけてください”などのメッセージ情報もあり、光、電波のセンシングには無い情報を含んでいる。更に緊急車両が近づいた場合は、一般車は退避義務があり緊急車両が大型車両、建屋陰など見通し外に位置する場合でもその車両の真の方向つまり真の音源方向を検出する必要がある。
【0005】
クラクション音の検出の場合は数m程度の距離でかつ単発的な音であり、瞬時に正確な音源方向検出することが必用となる。緊急車両警報音検出の場合は数10m離れた音も検出する必要となるが、その場合は建物とか大型車両の影となる場合がある。音源からの音波は回折音としても音源方向から到来するが振幅は減衰する、一方で音源から建屋等で反射を繰り返した音波も減衰するが、回折波より振幅が大きい場合があるため単に振幅最大方向の音波到来方向が音源位置すなわち緊急車両の位置とは限らない。
【0006】
そのような状況に対し正しく音源方向を検出することが課題である。更に車のどの位置にどのようにマイクを搭載するかも課題である。音波の到来方向検出には、複数マイクによる指向性形成を利用するが、指向性形成に必用な音波到来方向角度に応じた時間差が得られる構造実現が課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方式は、車両の外部空間に面した一区画に複数のマイクを配置し、このマイク出力信号の演算合成により複数方向の指向性を形成し、それにより得られる音波到来方向ごとの信号に分解する。その出力からクラクション音、緊急車両警報音等の検出すべきメディアごとの信号を通過させるフイルターにより到来方向別、メディア別信号に分離する。この分離後の分別された信号から音源方向を検出する。
【0008】
クラクション音は近距離音でありほぼ直接音が優勢であること及び瞬時判断が必用なことから、各方向からの振幅のうち最も振幅値の大きい方向を音源方向とみなす。更には各方向の振幅をX方向成分、Y方向成分に分解し逆正接関数であるArctan演算で音源方向を求める方法も方法として分解能を高める。
【0009】
緊急車両は遠方に位置する状態から緊急車両の音源方向を検出する必要がある。その場合、音源と受音位置の間に大型車両及び建屋等音波を遮蔽したり反射したりする物体が存在することにより回折波、反射波が発生する。回折波は振幅の減衰が大きいがほぼ音源方向から到来する、一方反射波は真の音源方向とは別方向から到来するが振幅減衰は回折波より小さい場合がある。したがって、振幅情報だけで到来方向を決定すると誤検出が発生する可能性がある。
【0010】
なお回折波とはホイヘンスの原理により、障害物の陰に回り込んで波が進む現象のことで音波は減衰するが、直線的に伝播する経路も存在する。
そこで到来方向別、メディア別信号に分離後の各方向からの音波の周波数成分変化パターンの時間的進み遅れを検出し、最も変化パターンが進んでいる方向が音源方向と見なす処理とする。これにより、正しい方向である回折波の到来方向を音源方向と見なすことが可能となる。この方式は検出に数秒必用となるが緊急車両は大音量であり遠方からの音も検出可能であり数秒かけて時間差を検出し正しい音源方向を検出することができる。
【0011】
マイクの搭載場所としては、車両上面の平面部分の一画に配置する必要があるが、設置場所の実施例として、多くの車両に搭載されているリアスポイラの一分を改造し内側への配置する方法がある。その場合は、リアスポイラの硬質プラスチック上部に小型マイク受音部サイズである数mmの穴を開けその上部は空気振動は伝達するが水は通さない軟質素材でカバーする。
なお、車両に数10cm以上の距離を置いて配置するマイクシステムでは、マイク入力の振幅と到来時間の相関性が低下するが、10cm×10cm以下の狭い範囲にマイクを複数個配置し、演算により指向性形成することにより、各指向性出力の振幅と到来時間の相関性が高くなり、各指向性方向の振幅差、到来時間差検出が正確に行われる。
【発明の効果】
【0012】
マイクの指向性形成と検出するメディアごとに分離するフィルタにより、瞬時判定が必用なメディアの場合も、遠方からの音波で回折、反射がある場合も同じハードウエアで判定方法を変えることにより、複数メディアの音源方向を正しく検出できるようになる。
【0013】
また複数方向の指向性形成に周波数成分変化パターンの時間的進み遅れ検出を組合せることにより、見通し外の回折波、反射波が存在する緊急車両音の音源方向の正しい検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明(車載音源方向検出システム)の全体構成
【
図3】到来方向の振幅差から音源方向を検出する実施例
【
図4】緊急車両が見通し外の場合の回折波、反射波伝播例
【
図6】緊急車両警報音の周波数成分変化パターンの進み遅れ検出方式
【
図7】周波数成分変化パターン進み遅れ検出信号処理波形例
【
図8】周波数成分変化パターン進み遅れ検出出力の特性
【発明を実施するための形態】
【0015】
4方向指向性形成の場合の全体構成の実施例を
図1に示す。車両の上部平面に複数のマイクを設置し、加算、減算、積分等により、4方向の指個性を形成しその出力をクラクション音検出、救急車音検出、パトカー音等各メディアを検出するフィルタにより分割し、各メディアごとの検出処理ブロッに入力し音源方向を検出する。
【0016】
検出すべき音を分離し抽出する周波数領域のフイルタ特性例を
図2 に示す。クラクション音は310Hz〜580Hzの複数の不協和音の組合せ音であり310Hz〜580Hzの帯域通過フィルタを通過した信号を用いる。緊急車両のうち救急車は960Hzが0.65秒770Hzが0.65秒の音の繰り返しであり、 770Hzと960Hzの帯域通過フィルタを通過した信号を用いる。 パトカーのサイレン音は430Hz〜870Hzに4秒周期か8秒周期で変化するスィープ音であるが、クラクション音、救急車音と重ならない600Hz〜700Hzの帯域通過フィルタで検出する。なお、車両のエンジン音、ロードノイズ等も混入するが、クラクション音、緊急車両の警報音は音圧が高いのでフィルタで分離により抑圧可能である。
【0017】
クラクション音検出は数m程度の近距離音のみを対象とし、単発音であり瞬時検出が必用となる。したがって、マイクの指向性出力信号に検出フィルタ通過後の振幅差を利用し音源方向を検出する。単純には各指向性出力のうち最も振幅値が高い指向性方向が音源方向と見なせばよいが、その場合の角度分解能は形成した指向性の方向数に制限される。そこで指向性ごとの振幅をX方向成分とY方向に分解しXY振幅の逆正接関数演算(Arctan)を行なえば連続的な角度に分解できる。この処理は時間領域の処理を伴わないので0.1Sec程度の時間で検出が可能となる。
【0018】
振幅差で音波到来方向を精密に求める実施例を
図3に示す。左右方向すなわちX方向の振幅差からX方向の振幅ベクトルを求め、前後方向すなわちY方向の振幅差からY方向ベクトルを求めArctan(逆正接)演算により到来方向の分解能を上げている。
角度を求める式を数1に示す。
【数1】
【0019】
緊急車両接近時は一般車は退避義務があり数10m先の音から検出が必要である。一方、緊急車両音は比較的長い周期(救急車は1.3秒)で音の周波数成分が規則的に変化する。数10m先からの音を検出する場合は建屋や大型車両の影響で回折音、反射音が生じ、振幅情報だけでは正しく音源方向を検出できなくなる。そこで各方向からの信号の振幅値に加え、各方向からの信号周波数成分の時間的進み遅れも検出し進み遅れ時間差が小さい場合は振幅値のみで音源方向を判定し、進み遅れの時間差が大きい場合は、時間的に最も進んでいる指向性方向が真の音源方向と見なす処理を行う。
【0020】
緊急車両が見通し外に存在する場合の音波伝播の回折波、反射波の例を
図4 に示す。緊急車両との間に建屋等が存在すると減衰するが回折波が音源方向から伝搬する。それに加え反射波により到来する音波も存在し、その方向の音波の振幅が回折波より大きい場合もある。したがって、単に振幅が大きい到来方向が音源方向とは限らない。回折により伝搬音波の振幅は小さくなるが距離は最短となり、時間領域で最も進んだ信号となる。したがって信号が時間的に最も進んだ指向性方向を検出すれば、緊急車両の方向を正しく検出可能となる。なお、時間的な進み遅れは伝搬路の差が10mとすると時間差は30mSecとなり、たとえば500Hzの1周期は2mSecであり、信号位相差で進み遅れを判定することはできない。したがって、時間的な進み遅れ検出は緊急車両警報音の周波数成分変化パターンの進み遅れを検出する必要がある。
【0021】
検出対象メディアが緊急車両警報音の場合の処理例を
図5に示す。まずは複数方向のレベルを検出し検出対象メディア以外の雑音の影響を受けないレベルである規定値以上のレベルが1方向の場合はその方向が音源方向と見なす。
規定値以上のレベルが複数方向の場合は振幅最大方向を基準として周波数成分の変化パターンの各方向の時間的進み、遅れを検出し規定値以上の時間差があるかどうかを検出し、時間差が規定値以下の場合は最大振幅方向が音源方向とみなす。複数方向の時間差が一定以上(差が大)の場合は最も時間的に進んでいる指向性方向を音源方向と判定する。
なお時間差が一定以上とは、見通し内か見通し外かに依存するため数m以内の時間差である10mSec程度以上か以下かで判定する。
【0022】
緊急車両警報音の周波数成分変化パターンの進み遅れを検出する方式の実施例を
図6に示す。メディア別、指向性別に分別した信号出力をSGN関数(符号関数)により2値化する。2値化処理のキャプチャー効果により、最も振幅が大きい周波数成分が抽出され雑音の影響を排除もできる。この2値化信号の立ち上がり立ち下り時間間隔から周波数に比例した値を生成し、その変化パターンを帯域通過フィルタに通す。この帯域通過フィルタは、検出すべきメディアに合わせた周波数の変化時間が一定範囲内のものを抽出するためのものである。
【0023】
帯域通過フィルタを通過した2方向からの到来信号VfAとVfBを減算後積分した信号とVintとVfAとVfBを加算した信号Vaddを乗算すると数2 〜数6に示すようになり、平均化後の信号LaedはTd すなわち A方向信号とB方向信号の到来時間差に比例した信号となる。
【0024】
VA:A方向信号振幅 VB:B方向信号振幅
Td : A方向信号とB方向信号の到来時間差
Tper:周波数の変化周期
τ:積分時定数
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0025】
その進み遅れ検出処理波形例を
図7に示すが検出値LaedはA信号とB信号の進み遅れに対応したプラス、マイナス出力が得られる。また“信号時間差/信号周波数変化周期”に対する進み遅れ検出特性を
図8に示す。 “信号時間差/信号周波数変化周期”が±0.2以下であれば正しく判定できるが救急車警報音の周波数変化周期Tdは1.3秒であり、その0.2倍は0.26秒であり、距離差85m相当の時間差があっても検出可能である。
【0026】
車両へのマイク配置は、車両から突起が無い事及び車両強度に影響しない事が要求される。一方複数マイクで水平面の複数方向指向性を形成するには、車両の一画の平面に近接した平面に複数マイクを配置できることが好ましい。また、到来音波が車両の陰にならないことが要求される。
その条件を満たす位置として、リアスポイラ面に搭載する実施例を
図9に示す。空間から到来する音波を受けるには、硬質であるリアスポイラ上面に小型マイクサイズの数mmの穴を開けその部分は防水であるが、空気振動を通す軟材料を設置する。これにより、車両の一区画に複数マイクがほぼ自由空間上に配置された特性相当となり、これらのマイク信号の演算により複数方向指向性が形成される。
なおマイク間距離は5cm程度マイク数4個で指向性形成可能である。
【0027】
車両の一区画の平面に近接した平面の複数マイクから指向性を形成方法の基本となる2マイクによる指向性形成例を示す
図10に示す。この特性は数7〜数9に示す動作となり、指向性特性は
図11に示すようになる。このような構成を組み合わせることにより複数方向の指向性を形成できる。なおこの構成の場合はマイク間距離5Cm間隔の配置例である。
この基本の2個ペアを複数個使用すれば、4方向指向性、8方向指向性形成が可能となる。
形成する指向性例を、
図12(4方向指向性の例)、
図13(8方向指向性の例)に示す。
【0028】
k=ω/c c:音波速度
ω:音源角周波数 d:マイク間距離
【数7】
【符号の説明】
【0031】
101:車両上面の一区画に配置した複数マイク
102:演算を伴う合成により複数方向指向性を形成
103:A方向指向性出力
104:B方向指向性出力
105:C方向指向性出力
106:D方向指向性出力
【0032】
111:方向Aのクラクション音抽出後の信号
112:方向Bのクラクション音抽出後の信号
113:方向Cのクラクション音抽出後の信号
114:方向Dのクラクション音抽出後の信号
【0033】
131:方向Aのパトカーサイレン音抽出後の信号
132:方向Bのパトカーサイレン音抽出後の信号
133:方向Cのパトカーサイレン音抽出後の信号
134:方向Dのパトカーサイレン音抽出後の信号
【0034】
140:クラクション音の音源方向検出処理部
141:救急車警報音の音源方向検出処理部
142:パトカーサイレン音の音源方向検出処理部
【0035】
311:右方向の指向性出力に検出すべきメディアのフィルタ通過させた信号
312:左方向の指向性出力に検出すべきメディアのフィルタ通過させた信号
313:前方向の指向性出力に検出すべきメディアのフィルタ通過させた信号
314:後方向の指向性出力に検出すべきメディアのフィルタ通過させた信号
320:Arctan(逆正接)処理により角度検出部
【0036】
610:A方向指向性信号に抽出フイルタを通過した信号にSGN関数による2値化処理
611:B方向指向性信号に抽出フイルタを通過した信号にSGN関数による2値化処理
620:A方向2値化信号の周波数に比例した値に変換
621:B方向2値化信号の周波数に比例した値に変換
630:A方向周波数変化信号に対する帯域制限フィルタ
631:B方向周波数変化信号に対する帯域制限フィルタ
640:時間積分部
650:時間平均化部
【0037】
910:車両のリアスポイラ内部に防水処理を施し複数マイクを搭載
【要約】
【課題】 車の運転支援、自動運転に適用するセンサー用として、クラクション音、緊急車両の警報音などの各メディアの音源方向を検出する場合、音源種類に応じた時間応答性の実現と、遠方の緊急車両警報音が建屋に遮られ見通し外となる環境下での正しい音源方向検出が課題となる。
【解決手段】 車両の上面の一区画の内側に複数のマイクを配置し、複数方向の指向性を形成し、それにより音波到来方向ごとの信号に分解する。さらに検出すべきメディアごとの信号を通過させるフイルターにより到来方向別、メディア別信号に分離する。この信号の振幅差を検出することに加え、各方向各メディアからの音波の周波数変化パターンの進み遅れを検出する手段を用いて総合的に音源方向を検出する。これにより、クラクション音のような単発音も、緊急車両音のように遠方からの音で反射したり、建物などにより遮られる音波でも正しく音源方向を検出できるようなる。
【選択図】
図1