特許第6518916号(P6518916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6518916-保護ヘルメット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6518916
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】保護ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/04 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
   A42B3/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-59606(P2017-59606)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-162532(P2018-162532A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】西山 智弘
(72)【発明者】
【氏名】西山 榮
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−280982(JP,A)
【文献】 米国特許第09247779(US,B1)
【文献】 中国特許出願公開第103720113(CN,A)
【文献】 特開2005−051207(JP,A)
【文献】 実開平3−127389(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット装着者の頭部を保護するための保護ヘルメットであって、
ヘルメット装着者の頭部を覆うように構成されたヘルメット本体と、
前記ヘルメット本体に開閉自在に設けられたバイザと、
を少なくとも備え、
前記ヘルメット本体は、ヘルメット装着者に対して音声情報を出力する音声出力部を備え、かつ
前記バイザは、ヘルメット装着者に対して視覚情報を出力する表示手段を備え
前記バイザが透明部材によって構成されており、
前記表示手段が、前記バイザに透明接着剤を介して貼り付けられた透明フレキシブルフラットパネルディスプレイであり、かつ、
前記表示手段が、アイコンを表示するとともに、表示されたアイコンに対するヘルメット装着者からのタッチ操作を受け付けるように構成されたタッチパネルを備えたことを特徴とする保護ヘルメット。
【請求項2】
少なくともヘルメット装着者の後方を撮影可能な撮像手段をさらに備え、
前記表示手段が、少なくとも前記音声出力部が動作中において、前記撮像手段の撮影情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の保護ヘルメット。
【請求項3】
前記表示手段は、ヘルメット装着者の左手側に配置されており、前記タッチパネルがヘルメット装着者の左手によってアイコンをタッチする操作を受け付けるように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の保護ヘルメット。
【請求項4】
前記表示手段が、前記バイザの左右両側にそれぞれ配置された複数の表示部を備えており、
ヘルメット装着者に提供すべき視覚情報に応じて、左側表示部または右側表示部を選択的に動作させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車およびオートバイ等の二輪車、水上バイク、ならびにスノーモービル(雪上バイク)等の乗り物を運転する運転者の頭部を保護するための保護ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車およびオートバイ等の二輪車、水上バイク、ならびにスノーモービル(雪上バイク)等の乗り物を運転する際には、通常、運転者は万一の事故発生に備えて保護ヘルメットを着用する。保護ヘルメットの多くはヘルメット本体で頭部の大部分を覆うように構成しているため、事故が発生した場合に頭部が適性に保護され、その結果、事故発生時の死亡率を低減させる効果が期待されてきた。
【0003】
ところが、ヘルメット本体で頭部の大部分を覆うと、ヘルメット装着車は周囲(特に後方)を視認しにくくなるという不都合があった。ヘルメット装着時には、視野が狭くなってしまうとともに、後方を目視するための振り返り動作を行いにくくなるといった不都合もあった。
【0004】
そこで、従来、ヘルメット装着者の後方の画像をヘルメット装着者の前方に表示するヘルメットディスプレイを搭載した保護ヘルメットが登場してきた。このようなヘルメットディスプレイに係る従来技術の中には、ヘルメット装着者の右側となる位置に後方右側の画像を左右反転して表示する右側表示部と、ヘルメット装着者の左側となる位置にヘルメット装着者の後方左側の画像を左右反転して表示する左側表示部と、を備えたヘルメットディスプレイが存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そして、このような従来技術によれば、ヘルメット装着者の右側後方の画像と左側後方の画像を明確に識別することができ、後方を振り返ることなく後方の状況を知ることが可能になり安全性を高めることができる、とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−163048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術においては、ヘルメットディスプレイによって後方の状況が把握され易くなっているが、実際、運転中にヘルメットディスプレイの表示内容を瞬時に把握することは容易ではない。特に、ヘルメット装着者の視点は通常遠方に置かれているため、安全確認のためにとっさに近方のヘルメットディスプレイに視点を移すことには相当の慣れが必要である。
【0008】
本発明の目的は、ヘルメット装着者が、熟練を必要とせずに、容易に安全確認を行うことが可能な保護ヘルメットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る保護ヘルメットは、ヘルメット装着者の頭部を保護するように構成されている。この保護ヘルメットは、ヘルメット装着者の頭部を覆うように構成されたヘルメット本体、およびこのヘルメット本体に開閉自在に設けられたバイザを少なくとも備えている。
【0010】
ヘルメット本体は、ヘルメット装着者に対して音声情報を出力する音声出力部を備える。音声情報の例としては、ナビゲーション情報、車両や歩行者等の接近を通知する注意喚起情報、ラジオやミュージックプレイヤからのエンターテイメント用音声等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、音声出力部としては、通常のスピーカを用いることが可能であるが、ノイズキャンセリング機能や骨伝導機能を備えたイヤホンを装着者の耳にフィットするように配置しても良い。
【0011】
バイザは、ヘルメット装着者に対して視覚情報を出力する表示手段を備える。このバイザは、透明部材によって構成されていることが好ましい。また、表示手段が、バイザに透明接着剤を介して貼り付けられた透明フレキシブルフラットパネルディスプレイであることが好ましい。表示手段の代表例としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが挙げられる。フラットパネルディスプレイは透明性を有し、かつ、湾曲自在に構成されることが好ましい。ポリイミド等の樹脂基板を用いたり、0.05mm〜0.20mm程度までエッチングによって薄型化したガラス基板を用いたりすることによって、バイザの曲面に沿って湾曲するフラットパネルディスプレイを得ることが可能である。フラットパネルディスプレイは透明接着剤によってバイザに貼り付けることが好ましいがこの構成に限定されることはない。
【0012】
上述の保護ヘルメットが、少なくともヘルメット装着者の後方を撮影可能な撮像手段をさらに備え、表示手段が、少なくとも音声出力部が動作中において、撮像手段の撮影情報を表示することが好ましい。ヘルメット装着者が音声出力部からの音声を聞いている場合には、周囲の音が聞こえにくくなる可能性があるが、その際に表示手段が後方等の映像を表示することにより、周囲の状態を把握しやすくなり、安全性の低下を防止することが可能になる。
【0013】
さらに、表示手段が、バイザの左右両側にそれぞれ配置された複数の表示部を備えており、ヘルメット装着者に提供すべき視覚情報に応じて、左側表示部または右側表示部を選択的に動作させることが好ましい。例えば、右側に車両や歩行者等が存在する場合に右側の表示部を光らせる一方で、左側に車両や歩行者等が存在する場合に左側の表示部を光らせる等の注意喚起をすることにより、表示部の表示を詳細に眺めなくても迅速に危機回避行動をとることが可能になる。また、左折案内の場合に、左側の表示を光らせるといったことも可能になる。
【0014】
例えば、基本は音声によって注意喚起や案内情報を提供し、表示手段の表示を補助的に用いることにより、表示手段に焦点を合わせにくかったり、視野の遠近の切り替えを行いにくかったりする場合においても、ヘルメット装着者が容易に安全確認を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ヘルメット装着者が、熟練を必要とせずに、容易に安全確認を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るヘルメットの概略を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るヘルメットの概略を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るヘルメットの概略を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係るヘルメットの機能の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るヘルメット10を示している。ヘルメット10は、オートバイ100等の二輪車を運転する運転者50の頭部を保護するように構成されている。この実施形態では、ヘルメット10は、オートバイ用として説明しているが、オートバイ以外にも水上バイク、自転車等の2輪車、スノーモービル(雪上バイク)等の乗り物においても、本発明に係るヘルメットを利用することが可能である。
【0018】
ヘルメット10は、運転者50の前方を撮像するための前面カメラ12、運転者50の後方を撮像するための背面カメラ14、運転者50に音声を提供するスピーカ18、および運転者50の顔面を保護するための開閉自在なバイザ20を備えている。バイザ20は透明ポリ塩化ビニルやアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の透明樹脂によって構成されている。
【0019】
バイザ20は、図2(A)および図2(B)に示すように、第1の表示部22、第2の表示部24、第3の表示部26、および第4の表示部28を備えている。第1の表示部22、第2の表示部24、第3の表示部26、および第4の表示部28は、湾曲可能な0.2mm程度の超薄型ガラス基板が採用されたフレキシブル液晶ディスプレイまたはフレキシブル有機ELディスプレイであり、シリコン系接着剤等の透明接着剤を介してバイザ20に貼り付けられている。さらに、第1の表示部22は、運転者からのタッチ操作を受け付けるように構成されたタッチパネル222を備えている。
【0020】
第1の表示部22、第2の表示部24、第3の表示部26、および第4の表示部28は、運転者50の眼からの近接配置されることになるため、運転者50が焦点を合わせにくいと感じる場合には、バイザ20における表示部添付領域にピント調整機能(レンズ機能等)を持たせるような表面処理(マイクロレンズアレイ形成のための凹凸加工等)をすると良い。または、バイザ20における表示部添付領域を運転者50から離れる方向に凸状になるように加工することによって、各表示部が運転者50の眼から離れるようにしても良い。
【0021】
図3は、ヘルメット10の概略を示すブロック図である。同図に示すように、ヘルメット10は、上述した構成要素に加えて、制御部30、メモリ32、通信部16、ナビゲーション装置34、マイク36、および電源部38を備えている。制御部30は、メモリ32に格納されたプログラム群を適宜読み込み、ヘルメット10の各部の動作を統括的に制御するように構成される。
【0022】
通信部16は、ヘルメット10に電話回線を介する通話機能を持たせるためのものである。ナビゲーション装置34は、GPS34を備えており、ヘルメット10を装着した運転者50に対して提供すべき位置情報や地図情報等を管理している。マイク36は、運転者50が発する音声を受け付けるように構成される。
【0023】
電源部38は、リチウムイオンバッテリ等の小型バッテリであり、ヘルメット10の各部に通電するように構成されている。電源部38から第1の表示部22、第2の表示部24、第3の表示部26、および第4の表示部28への通電は、通常の配線でも良いが、例えば、バイザ20表面に形成した導電性ポリマー層またはメタルナノワイヤ層等の透明導電膜を介して行うようにすると良い。
【0024】
図4(A)は、第2表示部24の表示内容の例を示している。ここでは、背面カメラ14が撮像した映像が表示されている。背面カメラ14が撮像した映像は、そのまま表示しても良いが、画像を左右反転した上で、左右のそれぞれ配置されている第1の表示部22および第2の表示部24に表示することも可能である。
【0025】
図4(B)は、第2表示部24にナビゲーション装置34からの案内情報を表示している例を示している。運転者50は、バイザ20の右上端部に一瞬だけ視点を動かすことにより、どの交差点でどちらの方向に進めば良いのかを知ることができる。なお、ナビゲーション装置34からの案内情報は常時表示している必要はなく、例えば、運転者が左手でタッチパネル222に対して操作をした場合にのみ数秒だけ表示するようにしても良い。また、運転中に第2表示部24を視認することが難しい場合に備えて、運転者が左手でタッチパネル222に対して操作をすることにより画像表示モードと音声案内モードとが切り替わるようにしても良い。例えば、画像が表示されているときに音声案内モードに切り替えることにより、表示内容と同じ内容をスピーカ18から音声案内してもらうことが可能になり、安全性が向上する。
【0026】
図4(C)は、第1表示部22の表示内容の例を示している。ここでは、運転者50が通信部16を介する通話着信を受けたときの表示状態を示している。通話着信を受けたときには、第1表示部22の左側に通話アイコンが表示され、右側に通話終了(通話拒否)アイコンが表示される。運転者50が通話アイコンをタッチすることにより、運転者50は、運転中であってもマイク36およびスピーカ18を用いて通話することが可能になる。通話中は、周囲の音が聞こえにくくなり運転の安全性がやや低下するため、第2表示部24に後方の映像を常時表示するようにしたり、背面カメラ14が接近車を認識するたびに、図4(D)に示すような、接近車の存在を通知する音声警告を割り込ませたりすると良い。
【0027】
上述の実施形態では、透明樹脂製のバイザ20に薄型ガラス製のディスプレイを貼り合せたハイブリッドディスプレイを構成されたが、両方とも透明樹脂にしたり、両方とも薄型ガラス製にしたりすることも可能である。
【0028】
このようにバイザ20に向かって画像を投射するプロジェクション方式ではなく、バイザ20にディスプレイを貼り付ける構成を採用することにより、構成の簡素化を図り、ヘルメットの軽量化を実現することが可能になる。
【0029】
なお、運転者用のヘルメットではなく、同乗者の使用に特化した同乗者専用のヘルメットとして構成する場合には、視野が狭くなっても安全性に影響がない。このため、各表示部を大きく構成して、エンターテイメント性の高い映像や音声を提供する構成を採用することも可能である。また、運転者用のヘルメットの前面カメラ12の撮影情報を同乗者のヘルメットに提供したり、同乗者の背面カメラ14の撮影情報を運転者のヘルメットに提供したりしても良い。
【0030】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
10−ヘルメット
12−前面カメラ
14−背面カメラ
16−通信部
18−スピーカ
20−バイザ
22−第1表示部
24−第2表示部
26−第3表示部
28−第4表示部
30−制御部
34−ナビゲーション装置
図1
図2
図3
図4