(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高熱伝導部と低熱伝導部とを含む基材と、接着剤層を含む熱伝導性接着シートであって、該基材の一方の面に接着剤層が積層され、かつ該基材の他方の面が、該低熱伝導部の該接着剤層と接する面とは反対側の面と、該高熱伝導部の該接着剤層と接する面とは反対側の面とで構成、もしくは該高熱伝導部と該低熱伝導部の少なくともどちらかが該基材の厚みの一部分を構成し、前記高熱伝導部及び前記低熱伝導部が樹脂組成物から形成され、前記高熱伝導部を構成する前記樹脂組成物に熱伝導性フィラー及び/又は導電性炭素化合物を含み、該熱伝導性フィラーが金属酸化物及び金属窒化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする熱伝導性接着シート。
請求項1に記載の熱伝導性接着シートを製造する方法であって、剥離可能な支持基材上に、樹脂組成物から形成される高熱伝導部と、樹脂組成物から形成される低熱伝導部とから基材を形成する工程、及び該基材に接着剤層を積層する工程を含むことを特徴とする熱伝導性接着シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[熱伝導性接着シート]
本発明の熱伝導性接着シートは、高熱伝導部と低熱伝導部とを含む基材と接着剤層を含む熱伝導性接着シートであって、該基材の一方の面に接着剤層が積層され、かつ該基材の他方の面が、該低熱伝導部の該接着剤層と接する面とは反対側の面と、該高熱伝導部の該接着剤層と接する面とは反対側の面とで構成、もしくは該高熱伝導部と該低熱伝導部の少なくともどちらかが該基材の厚みの一部分を構成していることを特徴としている。
【0011】
本発明の熱伝導性接着シートは、基材と接着剤層とから構成されている。
本発明の熱伝導性接着シートの構成等を、図面を使用して説明する。
【0012】
<基材>
基材は、熱伝導率が互いに異なる高熱伝導部と低熱伝導部とから構成される。
図1に本発明の熱伝導性接着シートの斜視図の一例を示す。熱伝導性接着シート1は、高熱伝導部4a、4bと低熱伝導部5a、5bとを含む基材7と接着剤層8から構成され、高熱伝導部と低熱伝導部は、交互に配置されている。すなわち、基材7の一方の面に接着剤層8が積層され、かつ基材7の他方の面が、低熱伝導部5a、5bの接着剤層8と接する面とは反対側の面と、高熱伝導部4a、4bの接着剤層8と接する面とは反対側の面とで構成されている。
熱伝導性接着シート1の基材7を構成する高熱伝導部と低熱伝導部の配置(以下、厚みの構成ということがある。)は、以下に述べるように、特に制限されない。
図2に本発明の熱伝導性接着シートの断面図(配置を含む)の種々の例を示す。
図2の(a)は、
図1の断面図であり、高熱伝導部4と低熱伝導部5とがそれぞれ独立に基材7のすべての厚みを構成している。また、
図2の(b)〜(g)は、高熱伝導部4と低熱伝導部5の少なくともどちらかが基材の厚みの一部分を構成している。具体的には、
図2の(b)、(d)は、低熱伝導部5が基材7の厚みの一部分を構成し、基材7の接着剤層8と接する面は、高熱伝導部4のみから形成されている。さらに、
図2の(c)、(e)は、高熱伝導部4が基材7の厚みの一部分を構成し、基材7の接着剤層8と接する面は、低熱伝導部5のみから形成されている。
図2の(f)は、高熱伝導部4が基材7の厚みの一部分を構成し、基材7の接着剤層8と接する面は、高熱伝導部4と低熱伝導部5の両方で形成されており、基材7の接着剤層8と接する面とは反対側の面は、低熱伝導部5のみから形成されている。
図2の(g)は、低熱伝導部5が基材7の厚みの一部分を構成し、基材7の接着剤層8と接する面は、高熱伝導部4と低熱伝導部5の両方で形成されており、基材7の接着剤層8と接する面とは反対側の面は、高熱伝導部4のみから形成されている。基材7の厚みの構成は、適用する電子デバイスの仕様に合わせ、適宜選択することができる。例えば、熱を特定の方向に選択的に放熱するという観点から、例えば、
図2の(a)〜(g)の厚みの構成を選択することが好ましく、高熱伝導部と低熱伝導部とが、それぞれ独立に基材のすべての厚みを構成している、すなわち、(a)の厚みの構成がさらに好ましい。また、電子デバイスの内部から発生する熱を外部に効率的に放熱する観点から、例えば、
図2の(a)〜(g)の厚みの構成を電子デバイスの仕様に合わせ選択することができる。この際、例えば、高熱伝導部の体積を大きく、かつ適用するデバイス面に対向する面積を大きくする構成にすることで、放熱量を、効率的に制御できるため好ましい。
【0013】
〈高熱伝導部〉
高熱伝導部は、樹脂組成物、金属等から形成されるが、柔軟性の優れる基材が得られることから、樹脂組成物から形成されることが好ましい。前記高熱伝導部の形状は、特に制限はなく、後述する電子デバイス等の仕様に応じて、適宜変更することができる。ここで、本発明における高熱伝導部は、後述する低熱伝導部よりも熱伝導率が高いほうをいう。
【0014】
(樹脂)
本発明に用いる樹脂は、特に限定されないが、電子部品分野等で使用されているものの中から任意の樹脂を適宜選択することができる。
【0015】
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。前記高熱伝導部を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物等のシクロオレフィン系ポリマー;塩化ビニル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリフェニレンエーテル;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のポリサルフォン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド;シリコーン樹脂;及びこれらの高分子の二種以上の組合せ;等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れ、放熱性が低下しにくいという点からポリアミド系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びシリコーン樹脂が好ましい。
【0016】
高熱伝導部は、後述する所望の熱伝導率に調整するために、上記樹脂と熱伝導性フィラー及び/又は導電性炭素化合物とを含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。
以下、熱伝導性フィラー及び導電性炭素化合物を「熱伝導率調整用物質」ということがある。
【0017】
(熱伝導性フィラー及び導電性炭素化合物)
熱伝導性フィラーとしては、特に制限はないが、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム、窒化ホウ素等の金属窒化物、銅、アルミニウム等の金属から選ばれる少なくとも1種類、また、導電性炭素化合物としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、カーボンナノファイバー等から選ばれる少なくとも1種類が好ましい。これらの熱伝導性フィラー及び導電性炭素化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、熱伝導率調整用物質としては、熱伝導性フィラーが好ましい。また、熱伝導性フィラーとしては、金属酸化物と金属窒化物とを含むことがより好ましい。さらに、熱伝導性フィラーとして金属酸化物と金属窒化物とを含む場合、金属酸化物と金属窒化物との質量比率は、10:90〜90:10が好ましく、20:80〜80:20がより好ましく、50:50〜75:25がさらに好ましい。
熱伝導率調整用物質の形状は、特に制限されるものではないが、適用するデバイス、素子等に貼付した際に、それらの接触又は機械的損傷により、電子デバイス、素子等の電気特性等が損なわれない形状であればよく、例えば、板状(鱗片状を含む)、球状、針状、棒状、繊維状のいずれでもよい。
【0018】
熱伝導率調整用物質のサイズは、高熱伝導部の厚み方向に熱伝導率調整用物質を均一に分散させて熱伝導性を向上させる観点から、例えば、平均粒子径が0.1〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、5〜50μmがさらに好ましく、10〜30μmが特に好ましい。なお、平均粒子径は、例えば、コールターカウンター法により測定することができる。熱伝導率調整用物質の平均粒子径がこの範囲にあれば、個々の物質内部での熱伝導が小さくなることもなく、結果として高熱伝導部の熱伝導率が向上する。また、粒子同士の凝集が起こりにくく、均一に分散させることができ、さらに、高熱伝導部への充填密度が十分となり、物質界面において高熱伝導部が脆くなることもない。
【0019】
熱伝導率調整用物質の含有量は、所望の熱伝導率に応じて適宜調整され、樹脂組成物中、40〜99質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、50〜80質量%が特に好ましい。熱伝導率調整用物質の含有量がこの範囲にあれば、放熱特性、耐折性、耐屈曲性が優れ、高熱伝導部の強度が維持される。
【0020】
(その他の成分)
高熱伝導部には、必要に応じて適宜な範囲内で、例えば、光重合開始剤、架橋剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料や染料等の着色剤、粘着付与剤、帯電防止剤、カップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0021】
〈低熱伝導部〉
低熱伝導部の形状は、前記高熱伝導部の形状と同様、特に制限はなく、後述する電子デバイス等の仕様に応じて、適宜変更することができる。ここで、本発明の低熱伝導部は、前記高熱伝導部よりも熱伝導率が低いほうをいう。
【0022】
低熱伝導部は、前記高熱伝導部よりも熱伝導率が低い材料であれば特に限定されず、樹脂組成物、金属等から形成される。なかでも、柔軟性の優れる基材が得られることから、樹脂組成物(本発明においては、前述した熱伝導率調整用物質等を含まない場合でも、樹脂組成物と称する。)から形成されることが好ましい。樹脂としては、特に制限されないが、前述した高熱伝導部に用いた樹脂と同一種類の樹脂が挙げられる。通常、機械的特性、接着性等の観点から高熱伝導部に用いる樹脂と同一樹脂を用いる。
なお、前記高熱伝導部の熱伝導率より十分低ければ、該樹脂組成物中に熱伝導率調整用物質を含んでいてもよいが、前記高熱伝導部の熱伝導率との差を大きくするため、熱伝導率調整物質を含まないことがより好ましい。
【0023】
(その他の成分)
低熱伝導部には、さらに前記高熱伝導部と同様、必要に応じて適宜な範囲内で、同種類の添加剤が含まれていてもよい。
【0024】
高熱伝導部及び低熱伝導部のそれぞれの層の厚みは、1〜200μmが好ましく、3〜100μmがさらに好ましい。この範囲であれば、熱を特定の方向に選択的に放熱することができる。また、高熱伝導部及び低熱伝導部のそれぞれの層の厚みは、同じであっても異なっていてもよい。
高熱伝導部及び低熱伝導部のそれぞれの層の幅は、適用する電子デバイスの仕様により適宜調整して用いるが、通常、0.01〜3mm、好ましくは0.1〜2mm、さらに好ましくは0.5〜1.5mmである。この範囲であれば、熱を特定の方向に選択的に放熱することができる。また、高熱伝導部及び低熱伝導部のそれぞれの層の幅は、同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
高熱伝導部の熱伝導率は、低熱伝導部の熱伝導率に比べて十分に高ければよく、熱伝導率が0.5(W/m・K)以上が好ましく、1.0(W/m・K)以上がより好ましく、1.3(W/m・K)以上がさらに好ましい。高熱伝導部の熱伝導率の上限は、特に制限はないが、通常2000(W/m・K)以下が好ましく、500(W/m・K)以下がより好ましい。
【0026】
低熱伝導部の熱伝導率は、0.5(W/m・K)未満が好ましく、0.3(W/m・K)以下がより好ましく、0.25(W/m・K)以下がさらに好ましい。高熱伝導部及び低熱伝導部のそれぞれの熱伝導率が上記のような範囲にあれば、熱を特定の方向に選択的に放熱することができる。
【0027】
高熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率は、0.1MPa以上が好ましく、0.15MPa以上がより好ましく、1MPa以上がさらに好ましい。また、低熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率は、0.1MPa以上が好ましく、0.15MPa以上がより好ましく、1MPa以上がさらに好ましい。高熱伝導部及び低熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以上である場合には、基材が過度に変形することが抑制され、安定的に放熱することができる。高熱伝導部及び低熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、500MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましく、50MPa以下であることがさらに好ましい。
高熱伝導部及び低熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率は、前述した樹脂や、熱伝導率調整用物質の含有量により調整することができる。
なお、150℃における貯蔵弾性率は、動的弾性率測定装置[TAインスツルメント社製、機種名「DMA Q800」]により、初期温度を15℃、昇温速度3℃/minで150℃まで昇温させ、周波数11Hzにて測定された値である。
【0028】
高熱伝導部及び低熱伝導部の配置並びにそれらの形状は、いずれも、目的の性能が損なわれない限り、特に制限されない。
【0029】
前記基材の接着剤層と接する面とは反対側の面(すなわち、低熱伝導部と高熱伝導部とがそれぞれ独立して基材のすべての厚みを構成した場合:
図1、
図2(a))において、高熱伝導部と低熱伝導部との段差は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、実質的に存在しないことがさらに好ましい。
【0030】
高熱伝導部と低熱伝導部の少なくともどちらかが該基材の厚みの一部分を構成している、例えば、
図2(b)、(c)の場合、高熱伝導部と低熱伝導部との段差は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、実質的に存在しないことがさらに好ましい。さらに、高熱伝導部と低熱伝導部とで所定の段差が設けられている、
図2(d)、(e)の場合、基材の厚みを、高熱伝導部と低熱伝導部とでなる厚みとした時の、高熱伝導部と低熱伝導部との段差は、該基材厚みに対し、10〜90%が好ましい。また、基材において、高熱伝導部と低熱伝導部との体積比率は、10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましく、30:70〜70:30であることがさらに好ましい。
【0031】
<接着剤層>
接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、オレフィン系接着剤、エポキシ系接着剤等の公知の接着剤が挙げられる。この中で、耐熱性に優れ、熱伝導率が高く、放熱性に優れるという観点からシリコーン系接着剤が好ましく用いられる。
【0032】
接着剤層には、本発明の目的が損なわれない範囲で、例えば、粘着付与剤、可塑剤、光重合性化合物、光重合開始剤、発泡剤、重合禁止剤、老化防止剤、充填剤、カップリング剤、帯電防止剤等のその他の成分を添加してもよい。
【0033】
接着剤層の厚みは、1〜200μmが好ましく、5〜100μmがさらに好ましい。この範囲であれば、熱伝導性接着シートとして使用した場合、放熱にかかる制御性能に影響を及ぼすことがなく、熱を特定の方向に選択的に放熱することができる。
【0034】
熱伝導性接着シートの放熱にかかる制御性能と、粘着力とのバランスを調整するという観点から、前記基材の厚みと、前記接着剤層の厚みとの比率(接着剤層/基材)が、0.005〜1.0であることが好ましく、0.01〜0.8であることがより好ましく、0.1〜 0.5であることがさらに好ましい。
【0035】
〈剥離シート〉
熱伝導性接着シートは、接着剤層の表面に剥離シートを有していてもよい。剥離シートとしては、例えば、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの剥離剤をなどの剥離剤を塗付したもの等が挙げられる。該剥離シートの厚みについては特に制限はないが、通常20〜150μmである。本発明に用いる剥離シートに用いる支持基材としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。
【0036】
〈電子デバイス〉
本発明の熱伝導性接着シートを積層した電子デバイスは、特に制限されないが、放熱等の熱制御の観点から、熱電変換デバイス、光電変換デバイス、大規模集積回路等の半導体デバイス等が挙げられる。特に、熱伝導性接着シートは、熱電変換モジュールに積層することで、熱を特定の方向へ選択的に放熱することができ、結果として熱電性能を向上させることができるため、熱電変換デバイスに好ましく用いられる。
なお、熱伝導性接着シートは、電子デバイスの片面に積層してもよく、両面に積層してあってもよい。電子デバイスの仕様にあわせて、適宜選択する。
以下、電子デバイスとして、熱電変換デバイスの場合を例にとって、説明する。
【0037】
(熱電変換デバイス)
熱電変換デバイスとは、熱と電気との相互エネルギー変換を行う熱電変換素子の内部に温度差を付与することにより電力が得られる電子デバイスである。
図3は、本発明の熱伝導性接着シートを熱電変換モジュールに積層した際の熱電変換デバイスの一例を示す断面図である。
図3に示した熱電変換デバイス10は、支持体上(図示せず)上に、P型材料からなる薄膜のP型熱電素子11、N型材料からなる薄膜のN型熱電素子12から構成される熱電変換素子を有し、さらに電極13を設けてなる熱電変換モジュール16と、該熱電変換モジュール16の第1面17に積層された熱伝導性接着シート1A、さらに前記第1面17とは反対側の第2面18に、積層された熱伝導性接着シート1Bから構成される。
【0038】
熱伝導性接着シート1Aは、高熱伝導部14a、14b、低熱伝導部15a、15b、15cを含む基材と、該基材の一方の面に積層された接着剤層20とを含み、また熱伝導性接着シート1Bは、高熱伝導部14’a、14’b、14’cと低熱伝導部15’a、15’bを含む基材と、該基材の一方の面に積層された接着剤層20とを含む。
【0039】
図4に本発明の熱伝導性接着シートと熱電変換モジュールを構成要素ごとに分解した斜視図の一例を示す。
図4において、(a)が熱電変換モジュールの支持体19の表面側の熱電素子に設けられる熱伝導性接着シート1Aの斜視図であり、(b)が熱電変換モジュール16の斜視図であり、(c)が熱電変換モジュールの支持体19の裏面側に設けられる熱伝導性接着シート1Bの斜視図である。
上記のような構成をとることにより、熱伝導性接着シート1A及び熱伝導性接着シート1Bから、効率良く熱を拡散することができる。また、熱伝導性接着シート1Aの高熱伝導部14a、14bと、熱伝導性接着シート1Bの高熱伝導部14’a、14’b、14’cとが対向しないように、位置をずらして積層することで、熱を特定の方向に選択的に放熱させることができる。これにより、熱電変換モジュールに効率良く温度差を付与でき、発電効率の高い熱電変換デバイスが得られる。
【0040】
本発明に使用される熱電変換モジュール16は、例えば、
図4(b)に示されるように、支持体19上に、P型熱電素子11とN型熱電素子12と電極13とから構成される。P型熱電素子11とN型熱電素子12は直列接続となるように薄膜状に形成され、それぞれの端部で、電極13を介して接合して電気的に接続されている。なお、熱電変換モジュール16におけるP型熱電素子11とN型熱電素子12は、
図3に示すように、「電極13、P型熱電素子11、電極13、N型熱電素子12、電極13、・・・・・」のように配置してもよく、「電極13、P型熱電素子11、N型熱電素子12、電極13、P型熱電素子11、N型熱電素子12、電極13、・・・・・」のように配置してもよく、さらに「電極13、P型熱電素子11、N型熱電素子12、P型熱電素子11、N型熱電素子12、・・・電極13」のように配置してもよい。
前記熱電素子には、特に制限されないが、熱電変換モジュールにより電気エネルギーに変換される熱源の温度域において、ゼーベック係数の絶対値が大きく、熱伝導率が低く、電気伝導率が高い、いわゆる熱電性能指数の高い材料を使用することが好ましい。
【0041】
P型熱電素子及びN型熱電素子を構成する材料としては、熱電変換特性を有すものであれば特に制限はないが、ビスマステルライド、Bi
2Te
3等のビスマス−テルル系熱電半導体材料、GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料、アンチモン−テルル系熱電半導体材料、ZnSb、Zn
3Sb
2、Zn
4Sb
3等の亜鉛−アンチモン系熱電半導体材料、SiGe等のシリコン−ゲルマニウム系熱電半導体材料、Bi
2Se
3等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料、β―FeSi
2、CrSi
2、MnSi
1.73、Mg
2Si等のシリサイド系熱電半導体材料、酸化物系熱電半導体材料、FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料などが用いられる。
【0042】
P型熱電素子11及びN型熱電素子12の厚みは、0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmがさらに好ましい。
なお、P型熱電素子11とN型熱電素子12の厚みは、特に限定されるものではなく、同じ厚みでも、異なる厚みでもよい。
【0043】
[熱伝導性接着シートの製造方法]
本発明の熱伝導性接着シートの製造方法は、高熱伝導部と低熱伝導部とを含む基材と接着剤層から構成され、該基材の一方の面に接着剤層が積層され、かつ該基材の他方の面が該低熱伝導部の該接着剤層と接する面とは反対側の面と、該高熱伝導部の該接着剤層と接する面とは反対側の面とで構成、もしくは該高熱伝導部と該低熱伝導部の少なくともどちらかが該基材の厚みの一部分を構成している熱伝導性接着シートを製造する方法であって、剥離可能な支持基材上に、樹脂組成物から形成される高熱伝導部と、樹脂組成物から形成される低熱伝導部とから基材を形成する工程、及び該基材に接着剤層を積層する工程を含むことを特徴とする。
【0044】
<基材形成工程>
剥離可能な支持基材上に、高熱伝導部及び低熱伝導部とを含む基材を形成する工程である。
【0045】
(支持基材)
剥離可能な支持基材として、前述した熱伝導性接着シートの接着剤層の表面に有する剥離シートと同一のものを用いることができ、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムが挙げられる。この中で、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの剥離剤を塗付したプラスチックフィルムが好ましい。
剥離剤の塗布方法は、公知の方法を用いることができる。
【0046】
〈高熱伝導部形成工程〉
高熱伝導部を形成する工程である。高熱伝導部は、樹脂組成物を用いて支持基材上、又は支持基材上及び低熱伝導部上に形成される。樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ステンシル印刷、ディスペンサー、スクリーン印刷法、ロールコート法、スロットダイ等の公知の方法により形成すればよい。
本発明に用いる樹脂組成物において、熱硬化性樹脂を使用した場合の硬化条件としては、使用する組成物により適宜調整されるが、80℃〜150℃が好ましく、より好ましくは90℃〜120℃である。また、必要に応じて、硬化は加圧しながら行うこともできる。
また、光硬化性樹脂を使用した場合は、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用い、紫外線により硬化させることができる。光量として、通常100〜1500mJ/cm
2である。
【0047】
〈低熱伝導部形成工程〉
低熱伝導部を形成する工程である。低熱伝導部は、前述した樹脂組成物を用いて、支持基材上、又は支持基材上及び高熱伝導部上に形成される。樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、高熱伝導部の形成と同様、例えば、ステンシル印刷、ディスペンサー、スクリーン印刷法、ロールコート法、スロットダイ等の公知の方法により形成すればよい。また、硬化方法に関しても、高熱伝導部の硬化方法と同様である。
なお、高熱伝導部及び低熱伝導部の形成順序は、特に制限されない。パターン形状、電子デバイスの仕様等により、適宜選択すればよい。
【0048】
<接着剤層積層工程>
前記基材形成工程で得られた基材に、接着剤層を積層する工程である。
接着剤層の形成は、公知の方法で行うことができ、前記基材に直接形成してもよいし、予め剥離シート上に形成した接着剤層を、前記基材に貼り合わせて、接着剤層を基材に転写させて形成してもよい。
【0049】
本発明の製造方法によれば、簡便な方法で、電子デバイス等の内部において、熱を逃がす又は熱の流れを特定の方向に選択的に制御でき、かつ低コストの熱伝導性接着シートを製造することができる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0051】
実施例、比較例で作製した熱伝導性シートの熱伝導率測定、温度差の評価及び電子デバイスの評価は、以下の方法で行った。
(a)熱伝導性接着シートの熱伝導率測定
熱伝導率測定装置(EKO社製、HC−110)を用いて、熱伝導率を測定した。
【0052】
(b)高熱伝導部及び低熱伝導部の温度測定
得られた熱伝導性接着シートの剥離シートを剥離して露出した接着剤層を、
図5に示したように、ソーダガラス(大きさ50mm×50mm、厚み0.5mm)からなる被着体2の上面に貼付した後、もう一方の側の剥離可能な支持基材を剥離した。次いで、被着体2の下面を75℃で1時間加熱し温度を安定させた後、被着体2の上面に付けたK熱電対(クロメルアルメル)により被着体の温度を測定した。なお、熱電対は、高熱伝導部及び低熱伝導部に対応する部分の被着体上(測定箇所:
図5において、A、B、C、D)に設けられており、1秒毎に5分間熱電対の温度を測定し、得られた各点での平均値を算出した。
【0053】
(熱電変換モジュールの作製)
図6の一部に示すように、支持体36上に、P型熱電素子31(P型のビスマス−テルル系熱電半導体材料)とN型熱電素子32(N型のビスマス−テルル系熱電半導体材料)とを、それぞれ同一サイズ(幅1.7mm×長さ100mm、厚み0.5mm)となるように配置するとともに、両方の熱電素子及び熱電素子間に銅電極(銅電極33a:幅0.15mm×長さ100mm、厚み0.5mm;銅電極33b:幅0.3mm×長さ100mm、厚み0.5mm;銅電極33c:幅0.15mm×長さ100mm、厚み0.5mm)を設け、熱電変換モジュール37を作製した。
【0054】
(電子デバイス評価)
実施例、比較例で得られた熱電変換デバイスの下面38(
図6参照)をホットプレートで75℃に加熱し、反対側の上面39(
図6参照)を25℃に冷却した状態で、そのまま1時間保持し、温度を安定させた後、熱起電力V(V)、電気抵抗R(Ω)を測定した。出力P(W)は、測定した熱起電力Vと電気抵抗Rを用い、P=V
2/Rにより算出した。
【0055】
(実施例1)
(1)熱伝導性接着シートの作製
ポリイミドを含有する溶液(日産化学株式会社製、サンエバー150)をN-メチルピロリドンで希釈して15質量%溶液を調製し、ポリイミド100質量部に対して、熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素(昭和電工社製、「アルナビーズCB−A20S」、平均粒子径20μm)40質量部、とアルミナ(昭和電工社製、「ショウビーエヌ UHP−2」、平均粒子径12μm)20質量部を添加し、自転・公転ミキサー(THINKY社製、「ARE−250」)を用いて混合分散し、高熱伝導部形成用の樹脂組成物を調製した。
一方、ポリイミドを含有する溶液(日産化学株式会社製、サンエバー150)をN-メチルピロリドンで希釈した15質量%溶液を低熱伝導部形成用の樹脂組成物として用いた。
次に、剥離可能な支持基材(リンテック社製、「SP−PET382150」)の剥離処理された面に、前記高熱伝導部形成用の樹脂組成物を、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「ML−808FXcom−CE」)を用いて塗布し、90℃で1分間乾燥させ溶媒を除去することで、ストライプ状パターン(幅1mm×長さ100mm、厚み50μm、パターン中心間距離2mm)に高熱伝導部34を形成した。さらに、その上からアプリケータを用いて、低熱伝導部形成用の樹脂組成物を塗布し、120℃で1分間乾燥させ、該高熱伝導部のストライプ状パターン間に、高熱伝導部と同じ厚みの低熱伝導部35を形成することで、基材を得た。なお、高熱伝導層部34上には、低熱伝導部35が形成されていないことを確認した。高熱伝導部34と低熱伝導部35の厚みの差の絶対値は0μmであった。
一方、剥離シート(リンテック社製)の剥離処理された面に、シリコーン系接着剤を塗布し、90℃で1分乾燥させ、厚み10μmの接着剤層40を形成した。
接着剤層40と基材を貼り合わせ、剥離シートおよび剥離可能な支持基材で挟持された
図2(a)に示す構成の熱伝導性接着シートを作製した。前記基材の接着剤層と接する面とは反対側の面において、高熱伝導部34と低熱伝導部35との段差は実質的に存在しなかった。
なお、高熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率は4.2MPa、低熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率は0.2MPaであった。
【0056】
(2)熱電変換デバイスの作製
得られた熱伝導性接着シート2枚を、剥離シートおよび剥離可能な支持基材を剥離除去して、
図6に示すように、熱電変換モジュール37の熱電素子が形成された側の面と支持体36側の面にそれぞれ積層し、両面に熱伝導性接着シートが積層された熱電変換デバイスを作製した。
【0057】
(実施例2)
高熱伝導部の形成において、窒化ホウ素とアルミナの代わりに、熱伝導率調整用物質として導電性炭素化合物であるカーボンナノチューブ(Nano−C社製、SWCNT)を用いて基材を作製したこと以外は、実施例1と同様に熱伝導性接着シートを作製した。得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。高熱伝導部と低熱伝導部の厚みの差の絶対値は0μmであった。また、前記基材の接着剤層と接する面とは反対側の面において、高熱伝導部と低熱伝導部との段差は実質的に存在しなかった。
なお、高熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率は4.0MPa、低熱伝導部の150℃における貯蔵弾性率は0.2MPaであった。
【0058】
(実施例3)
実施例1で用いた前記高熱伝導部形成用の樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に、剥離可能な支持基材の剥離処理された面に、ストライプ状パターン(幅1mm×長さ100mm、厚み50μm、パターン中心間距離2mm)に、高熱伝導部を形成した。
次いで、その上に実施例1で用いた低熱伝導部形成用の樹脂組成物を塗布し、120℃で1分乾燥させ、75μmの厚みの低熱伝導部を形成し、基材を作製した。該高熱伝導部のストライプ状パターン間に厚み75μmの低熱伝導部が形成され、該高熱伝導部上には厚み25μmの低熱伝導部が形成される構成であった。高熱伝導部と低熱伝導部の厚みの差の絶対値は25μmであった。さらに、実施例1と同様に接着剤層を積層し、
図2(c)に示す構成の熱伝導性接着シートを作製した。また、前記基材の接着剤層と接する面とは反対側の面において、高熱伝導部と低熱伝導部との段差は実質的に存在しなかった。
得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。
【0059】
(実施例4)
実施例3で得た基材から剥離可能な支持基材を剥離し、露出した面と接着剤層を貼り合わせて、
図2(f)に示す構成の熱伝導性接着シートを作製した。得られた熱伝導性接着シートの基材の接着剤層と接する面とは反対側の面は、すべて低熱伝導部で構成されていた。得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。
【0060】
(実施例5)
基材内の高熱伝導部と低熱伝導部の構成を逆に、すなわち、高熱伝導部を低熱伝導部に、低熱伝導部を高熱伝導部にしたこと以外は、実施例3と同様にして、
図2(b)に示す構成の熱伝導性接着シートを作製した。得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。
【0061】
(実施例6)
基材内の高熱伝導部と低熱伝導部の構成を逆にしたこと以外は、実施例4と同様にして、
図2(g)に示す構成の熱伝導性接着シートを作製した。得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。
【0062】
(実施例7)
実施例1で用いた前記高熱伝導部形成用の樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に、剥離可能な支持基材の剥離処理された面に、ストライプ状パターン(幅1mm×長さ100mm、厚み50μm、パターン中心間距離2mm)に、高熱伝導部を形成した。
次いで、剥離可能な支持基材の剥離処理された面に、実施例1で用いた前記低熱伝導部形成用の樹脂組成物を塗布し、120℃で1分乾燥させ、25μmの厚みの低熱伝導部を形成した。
次いで、低熱伝導部と高熱伝導部を貼り合わせて基材を作製した。得られた基材は、厚み25μmの低熱伝導部上に、厚み50μmのストライプ状パターンの高熱伝導部が積層された構成であった。さらに、実施例1で用いた接着剤層を、該ストライプ状パターンを有しない低熱伝導部の反対側の面に積層し、
図2(e)に示す構成の熱伝導性接着シートを作製した。得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。
【0063】
(実施例8)
基材内の高熱伝導部と低熱伝導部の構成を逆にしたこと以外は、実施例7と同様にして、
図2(d)に示す構成の熱伝導性接着シートを作製した。得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。
【0064】
(比較例1)
PGSグラファイトシート(パナソニックデバイス社製、熱伝導率:1950(W/m・K)、厚み:100μm)を基材として用いて、実施例1と同様に接着剤層を積層し、熱伝導性接着シートを作製した。得られた熱伝導性接着シートを用いて、実施例1と同様に熱電変換デバイスを作製した。
【0065】
(比較例2)
被着体に熱伝導性接着シートを貼付せず、温度差の測定を行った。また、熱電変換モジュール37に熱伝導性接着シートを積層せず、電子デバイス評価を行った。
【0066】
実施例1〜8及び比較例1、2で得られた熱電変換デバイスの評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1〜8で用いた本発明の熱伝導性接着シートにおいては、比較例に比べ、高熱伝導部と隣接する低熱伝導部間の温度差が大きくとれることが分かった。また、本発明の熱伝導性接着シートを熱電変換デバイスに適用した場合、大きな出力が得られることが分かった。