(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例の生産計画システムの構成図である。
図示の生産計画システム10は、生産計画記憶部11、電力価格記憶部12、調整対象オーダー決定部13、順序変更部14、電気料金算出部15、オーダー決定部16(計画選択部16a等)、生産スケジュール生成部17などを有する。
【0015】
生産計画記憶部11は、予め任意に作成された、複数の製造オーダーに係わる所定の情報から成る生産計画情報を記憶する。尚、これを、初期の生産計画情報(初期生産計画情報)と呼ぶものとする。生産計画情報は、例えば、複数の製造オーダーそれぞれについて、品種、着手時間や、複数の工程に関する情報等から成るものである。各工程に関する情報は、例えば、その工程で使用する設備、所要時間、所要電力等である。生産計画情報については、後に具体例を図示して詳しく説明するものとする。尚、上記着手時間は、その製造オーダーの実行順序を示すものである。つまり、着手時間が相対的に早い製造オーダーは、実行順序が相対的に早いものと言える。
【0016】
そして、後述するように、本手法では、基本的に、上記初期生産計画情報における任意の製造オーダーの実行順序を変更(交換)することで、電気料金が安く済むという改良を含む何等かの改良が行われた改良版の生産計画を、自動生成するものである。
【0017】
電力価格記憶部12には、予め、時間帯別の電力単価情報が記憶されている。時間帯は、例えば1時間単位(0:00〜0:59、1:00〜1:59、・・・、23:00〜23:59)であるが、この例に限らない。
【0018】
調整対象オーダー決定部13は、上記生産計画情報の各製造オーダーの中で、任意に指定された条件に合致する製造オーダーは全て、調整対象オーダーと決定する。尚、例えば更に、上記条件に合致しない製造オーダーは全て、調整非対象オーダーと決定するようにしてもよいが、これは必須ではない。
【0019】
順序変更部14は、上記調整対象オーダーに係わる上記所定の情報(特にその着手時間23等)と上記時間帯別の電力単価情報に基づいて、任意の調整対象オーダーの実行順序を変更することで、生産計画情報の改良版の候補を生成する。この候補は、複数生成してもよい。複数生成する場合、当該複数の候補の中から1つを選択して、これを生産計画情報の改良版に決定する。選択方法の一例は後述するが、この例に限らない。また、候補が1つのみであれば、選択の必要なく、それが生産計画情報の改良版となる。
【0020】
何れにしても、本手法によれば、生産計画情報の改良版は、初期生産計画情報に比べて、少なくとも電気料金が安価になるという改良が実現されるものとなる。これに加えて更に別の改良が実現される形態があってもよい。詳しくは後述する。
【0021】
また、順序変更部14は、例えば、分類部14a、交換部14b等から成る。
分類部14aは、各調整対象オーダーを、電力単価の低い低価格オーダーと電力単価の高い高価格オーダーの何れかに分類する。電力単価の高い/低いは、例えば、その調整対象オーダーの製造予定時間(着手時間23等)に対応する電力単価が、例えば予め設定される所定の閾値以上であるか否かによって決定する。よって、この分類の際には、上記時間帯別の電力単価情報も用いることになる。尚、当然、電力単価が閾値以上のものが高価格オーダーに分類され、閾値未満のものが低価格オーダーに分類される。
【0022】
尚、上記閾値は、予め任意に設定される例に限らず、例えば、上記時間帯別の電力単価情報に基づいて決定してもよい。例えば、全時間帯の電力単価の平均値を求め、該平均値を上記閾値として用いるようにしてもよい。
【0023】
交換部14bは、低価格オーダーに分類された調整対象オーダーと、高価格オーダーに分類された調整対象オーダーとの間で、実行順序の交換を行うことで、上記生産計画情報の改良版の候補を生成する。基本的には、実行順序の交換後の方が交換前よりも全体の電気料金が安くなるように、実行順序の交換を行うものである。例えば、低価格オーダーに分類された調整対象オーダー群の中で所要電力の少ない調整対象オーダーと、高価格オーダーに分類された調整対象オーダー群の中で所要電力の多い調整対象オーダーとを交換対象オーダーとし、これら交換対象オーダーの間で実行順序を交換する。一例としては、低価格オーダーに分類された調整対象オーダー群の中で最も所要電力の少ない調整対象オーダーと、高価格オーダーに分類された調整対象オーダー群の中で最も所要電力の多い調整対象オーダーとを、交換対象オーダーとし、これら交換対象オーダーの間で実行順序を交換する。
【0024】
実行順序の交換は、例えば、上記各交換対象オーダーの着手時間23を交換することで実現するものであるが、この例に限らない。
電力単価の高い時間帯に所要電力が多いオーダーを実行すれば、当然、電気料金が高くなる。その逆に、電力単価の低い時間帯であるにも係わらず、所要電力が少ないオーダーを実行することは、電力単価が低いメリットを十分に生かせないことになる。つまり、ミスマッチが生じていることになる。上記実行順序の交換処理によれば、この様なミスマッチを解消して、以ってトータルの電気料金を安くできることになる。
【0025】
ここで、上記生産計画情報は、上記製造オーダー毎に、複数の属性情報を有するものであり、上記調整対象オーダー決定の為の条件は、該複数の属性情報の何れかの内容が指定されたものである。この属性情報は、後述する一例では、工程や設備であり、以って上記調整対象オーダー決定の為の条件は、これら工程、設備の何れかの内容が指定されたものである。後述する具体例では、設備が“研磨機1”が指定されている。勿論、これは一例であり、この例に限らない。
【0026】
これにより、工程や設備が同じである製造オーダーのみを入替え対象とすることができるため、特定の工程や設備ばかりに生産が集中するといった不具合を生じさせることなく
電気料金を削減した生産計画を立てることができる。また、これに伴って、製造ラインに従事する人員の負荷に偏りを生じさせることも防止できることになる。すなわち、例えば、研磨機として研磨機1と研磨機2の2台がありそれぞれに作業員が従事しているとした場合、例えば、研磨機1ばかりに生産が集中することを防止でき、これによって研磨機1の作業員の負荷が増大するような事態を防止できることになる。
【0027】
また、上記順序変更部14は、例えば、上記実行順序の交換を繰り返し行うことで、上記生産計画情報の改良版の候補を複数生成するものであってもよい。そして、この場合、上記計画選択部16aは、該複数の候補の中の1つを改良版生産計画情報に決定する。
【0028】
ここで、計画選択部16aは、例えば、上記初期生産計画情報による生産時間である基準生産時間と、上記各候補による各生産時間と各電気料金に基づいて、その生産時間が上記基準生産時間より短い候補のなかで最も電気料金が安価な候補を、上記生産計画情報の改良版に決定するようにしてもよい。
【0029】
生産時間は、基本的に、「“実際の生産に要する所要時間”+“待ち時間”」である。製造オーダーを入れ替えても“実際の生産に要する所要時間”は変わらないのであるから、生産時間が短くなることは“待ち時間”が短くなることを意味する。任意の製造オーダーについて、任意の設備を用いた製造作業が可能な状態になっても、その設備で他の製造オーダーの製造作業が実行中であれば、当該製造作業が完了するまで待たなければならず、これが上記“待ち時間”である。尚、全ての製造オーダーに係わる「“実際の生産に要する所要時間”+“待ち時間”」の総計が、生産時間であると見做してもよい。換言すれば、生産計画情報に係わる全ての製造オーダーを製造完了するまでに掛かる時間が、生産時間であると見做しても構わない。
【0030】
生産スケジュール生成部17は、このような各製造オーダーの各設備での実際の実行時間や待ち時間を、不図示の生産ライン情報などを入力データとすることで、例えば、リストスケジューリング法などの公知のスケジューリング手法により、決定する。決定したスケジューリングの結果から、各製造オーダーの着手時間、完了時間、待ち時間が分かるため、生産時間を算出できる。
【0031】
生産時間に関係なく電気料金が最も安価な候補を選んだ場合、電気料金が安くなっても生産時間が長くなる可能性があり、これは望ましいことではない。本手法によれば、生産時間が初期生産計画情報よりも長くならないようにしつつ電気料金が出来るだけ安価な候補が選ばれるようにできる。また、生産時間が長くならないということは、ラインの生産効率の低下を防止できることを意味することになる。
【0032】
図2は、本例の生産計画システムの処理フローチャート図である。
尚、
図2では、上記初期生産計画情報は初期生産計画情報D1と記し、上記調整対象オーダー決定の為の条件は対象指定情報D2と記し、上記時間帯別の電力単価情報は時間帯別電力単価情報D3と記し、上記生産計画情報の改良版の候補は生産計画候補D4と記している。
【0033】
調整対象オーダー決定部13は、工程もしくは設備に関して任意に指定された調整対象決定条件を示す対象指定情報D2に基づいて、上記生産計画記憶部11に記憶されている初期生産計画情報D1において、上記調整対象決定条件に該当する製造オーダーを全て上記調整対象オーダーとする(ステップS11)。尚、これに加えて更に、上記調整対象決定条件に該当しない製造オーダーを全て上記調整非対象オーダーとするようにしてもよい。後述する一例では、設備が“研磨機1”である製造オーダーを、全て、調整対象オーダーとすることになる。
【0034】
順序変更部14は、上記電力価格記憶部12に記憶されている時間帯別電力単価情報D3を用いて、上記調整対象オーダーの実行順序を変更する(ステップS12)。これは、例えば、まず、各調整対象オーダーに対応する電力単価(電気料金単価)、すなわち各調整対象オーダーの製造予定時間(後述する着手時間など)に対応する電力単価(電気料金単価)を、時間帯別電力単価情報D3から得る。そして、各調整対象オーダーを、対応する電力単価に応じて、高価格オーダーと低価格オーダーの何れかに分類する。例えば、対応する電力単価が、予め設定される閾値より高い調整対象オーダーは高価格オーダーに分類し、閾値未満である調整対象オーダーは低価格オーダーに分類する。
【0035】
そして、高価格オーダーに分類された調整対象オーダーの中の任意の調整対象オーダーと、低価格オーダーに分類された調整対象オーダーの中の任意の調整対象オーダーとで、実行順序を交換する。これは、例えば、製造開始予定時間(後述する着手時間など)を交換する。交換対象となるのは、例えば、低価格オーダーに分類された調整対象オーダーの中で最も所要電力の少ない調整対象オーダーと、高価格オーダーに分類された調整対象オーダーの中で最も所要電力の多い調整対象オーダーである。両者の実行順序を交換することで、所要電力が比較的少ない調整対象オーダーが新たな高価格オーダーとなり、所要電力が比較的多い調整対象オーダーが新たな低価格オーダーとなる。
【0036】
そして、上記実行順序交換結果を反映させた生産計画候補D4を生成する。これは、最初は、上記初期生産計画情報D1に対して、上記実行順序交換結果を反映させることになり、生産計画候補D4−aを生成するものと記すものとする。その後は、ステップS11〜S14の処理を繰り返すことによって、その都度、その時の最新の生産計画候補D4に対して、そのときの実行順序交換結果を反映させることで新たな生産計画候補D4を生成する。これは、ここでは仮に、生産計画候補D4−b、D4−c、D4−d等が生成されるものとする。つまり、上記生産計画候補D4−aに対してそのときの実行順序交換結果を反映させることで新たな生産計画候補D4―bを生成する。同様にして、生産計画候補D4−bに対してそのときの実行順序交換結果を反映させることで新たな生産計画候補D4―cを生成する。生産計画候補D4−cに対してそのときの実行順序交換結果を反映させることで新たな生産計画候補D4―dを生成する。
【0037】
尚、生成された複数の生産計画候補D4は、全て一時的に記憶しておくようにしてもよい。そして、これら複数の候補のなかから1つを、改良版の生産計画情報に決定する。本手法によれば、このように決定された改良版生産計画情報は、上記初期生産計画情報D1に比べて、少なくともトータルの電気料金が少なくて済むようになる。
【0038】
そして、電気料金算出部15は、まず、上記生成された生産計画候補D4を用いて、生産スケジュール生成部17で生産計画候補D4に含まれる全てのオーダーの各設備での実行時間や待ち時間等を計算したのち(ステップS12b)、各時間帯別に、その時間帯の全所要電力を求める。これは、例えば、その時間帯に実行予定の全オーダー(全工程)の所要電力(消費電力)の合計値を求める(ステップS13)。そして、上記時間帯別電力単価情報D3を用いて、各時間帯別に、その時間帯の上記全所要電力に、その時間帯の電力単価を乗算することで、その時間帯の電気料金を算出する。更に、これら各時間帯の電気料金を合計することで、トータルの電気料金を算出する(ステップS14)。
【0039】
そして、上記生成された生産計画候補D4を、上記算出されたトータルの電気料金を付与して、一時的に記憶して、所定の停止条件を満たしたか否かを判定する(ステップS15)。所定の停止条件を満たしていない場合には(ステップS15,NO)、ステップS11に戻り、再び上記ステップS11〜S14の処理を実行することで、上記新たな生産計画候補D4を生成する。但し、今度は、ステップS11の抽出対象は、上記初期生産計画情報D1ではなく、最新の生産計画候補D4となる。上記一例の場合、2回目の処理では、ステップS11の処理は、上記生産計画候補D4−aから、上記調整対象オーダーを抽出することになる。
【0040】
上記のように、所定の停止条件を満たすまで一連の処理(ステップS11〜S14の処理)を繰り返し実行し、実行する毎に新たな生産計画候補D4を生成すると共にその電気料金を算出し、停止条件が満たされたら(ステップS15,YES)、オーダーを確定する処理を実行する(ステップS16)。このステップS16の処理は、例えば上記生成された複数の生産計画候補D4の中の1つを、改良版生産計画情報に決定するものである。これは、例えば、複数の生産計画候補D4のなかで最もトータルの電気料金が低いものを、改良版生産計画情報に決定するようにしてもよいが、この例に限らない。上記のように、電気料金だけでなく生産時間も考慮して、改良版生産計画情報に決定するようにしてもよい。例えば、初期生産計画情報D1の生産時間と、複数の生産計画候補D4それぞれの生産時間を求めて、その生産時間が初期生産計画情報D1の生産時間未満である生産計画候補D4のなかで最もトータルの電気料金が低いものを、生産計画に決定するようにしてもよい。
【0041】
何れにしても、後に、改良版生産計画情報を用いて製造作業が行われることになる。
尚、所定の停止条件としては、例えば繰り返し回数や電力コスト削減割合、交換する製造オーダーの所要電力などを用いることができる。つまり、予め設定される所定回数だけ上記一連の処理(ステップS11〜S14の処理)を実行したら、停止条件が満たされたと判定するようにしてもよい。あるいは、上記ステップS14で算出したトータルの電気料金が、上記初期生産計画情報D1によりトータルの電気料金の何%に相当するのかを求めて、これが予め設定される所定の閾値未満である場合に、停止条件が満たされたと判定するようにしてもよい。尚、その為には、上記初期生産計画情報D1に応じたトータルの電気料金も、算出して記憶しておく必要がある。あるいは、交換しようとする低価格オーダーと高価格オーダーとの所要電力の差がある値以下になったら、停止条件が満たされたと判定するようにしてもよい。
【0042】
ここで、
図3に、初期生産計画情報D1のデータ構成例を示す。尚、特に図示しないが、生産計画候補D4のデータ構成は、初期生産計画情報D1と同じであってよい。また、生産計画候補D4が初期生産計画情報D1と異なる点は、基本的に、製造オーダーの製造開始予定時間である着手時間23のデータ内容のみである。つまり、上記実行順序交換を行った製造オーダーの着手時間23が変わることになる。詳しくは後に具体例を用いて説明する。
【0043】
図3に示す例では、初期生産計画情報D1は、この生産計画に係わる製造オーダー毎に、その識別用番号などであるオーダーNo.21、品種22、着手時間23と、順序づけられた複数の工程毎の情報(工程情報24)等からなる。尚、製造オーダーは、製造ラインに対して任意の数だけ存在する。
【0044】
上記各工程情報24は、それぞれ、例えば、その工程の名称である工程名31、その工程に用いる設備の名称である設備名32、その工程の設備名32の設備における製造作業時間である所要時間33、その工程の設備名32の設備における製造作業に要する電力である所要電力34等から構成される。
【0045】
設備毎の所要時間33は、その設備におけるその工程に係わる作業に掛かる時間であり、それによる消費電力が各設備毎の所要電力34となる。これは、例えば、過去の実績値を用いるものである。
【0046】
図4は、上記ステップS11の調整対象オーダー決定処理の詳細フロー図である。
ステップS11の処理は、例えば図示のステップS21,S22,S23の処理から成る。すなわち、初期生産計画情報D1における各製造オーダーを順次処理対象として、処理対象の製造オーダーが、対象指定情報D2が示す所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS21)。処理対象の製造オーダーが所定の条件を満たす場合には(ステップS21,YES)、当該処理対象の製造オーダーを“調整対象オーダー”に分類する(ステップS22)。一方、処理対象の製造オーダーが所定の条件を満たさない場合には(ステップS21,NO)、当該処理対象の製造オーダーは“調整非対象オーダー”に分類する(ステップS23)。
【0047】
尚、対象指定情報D2が示す所定の条件が、例えば後述する一例のように「設備が“研磨機1”」である場合には、上記ステップS21の判定は、処理対象の製造オーダーの上記設備名32が、“研磨機1”であるか否かを判定するものとなる。勿論、この例では、設備名32が“研磨機1”である場合には上記ステップS21の判定はYESとなる。
【0048】
図5は、上記ステップS12のオーダー順序変更処理の詳細フロー図である。
ステップS12の処理は、例えば、図示のステップS31、S32,S33,S34の処理から成る。
【0049】
すなわち、まず、上記“調整対象オーダー”に分類された製造オーダー全てを処理対象として、当該各“調整対象オーダー”を、低価格オーダー、高価格オーダーの何れかに分類する(ステップS31)。この処理は、時間帯別電力単価情報D3を用いて行う。時間帯別電力単価情報D3の具体例は特に示さないが、例えば1時間単位、30分単位などの各時間帯毎に対応付けて、電気料金の単価が記憶されているものである。そして、ステップS31では、初期生産計画情報D1を参照して上記各“調整対象オーダー”の着手時間23を取得して、この着手時間23が含まれる時間帯を判定して、この時間帯に対応する電気料金単価を時間帯別電力単価情報D3から取得する。そして、この電気料金単価が、例えば予め設定される閾値以上であれば高価格オーダーと判定し、閾値未満であれば低価格オーダーと判定する。
【0050】
尚、上記閾値は、上記予め設定される例に限らず、例えば、時間帯別電力単価情報D3の全ての電気料金単価の平均値を求めて、これを閾値とするようにしてもよい。
上記ステップS31の分類処理が完了したら、続いて、高価格オーダーに分類された“調整対象オーダー”の中から入替候補を決定すると共に、低価格オーダーに分類された“調整対象オーダー”の中から入替候補を決定する(ステップS32)。入替候補は、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよいが、ここでは入替候補が1つである例を用いて説明する。入替候補の決定処理は、例えば、高価格オーダーに関しては最も所要電力の多いものを入替候補とし、低価格オーダーに関しては最も所要電力の少ないものを入替候補とする。尚、入替候補をそれぞれ2つとする場合には、更に、高価格オーダーに関して2番目に所要電力の多いものと、低価格オーダーに関して2番目に所要電力の少ないものも、入替候補とする。
【0051】
そして、上記2つの入替候補の実行順序を交換する(ステップS33)。これは、例えば、2つの入替候補の上記着手時間23を交換する。これによって、高価格オーダーだった“調整対象オーダー”が低価格オーダーとなり、その逆に低価格オーダーだった“調整対象オーダー”が高価格オーダーとなる。換言すれば、交換後は、比較的所要電力が多いものが低価格オーダーとなり、比較的所要電力が少ないものが高価格オーダーとなる。よって、交換前よりも、電気料金が少なくなることになる。
【0052】
仮に、交換前に低価格オーダーであった“調整対象オーダー”が、電気料金単価がa円、所要電力がb(W)であり、交換前に高価格オーダーであった“調整対象オーダー”が、電気料金単価が2a円、所要電力が2b(W)であったものとする。この場合、電気料金は、交換前ではa×b+2a×2b=5abとなる。交換後は、一方が電気料金単価が2a円、所要電力がb(W)となり、他方が電気料金単価がa円、所要電力が2b(W)となるので、電気料金は、2a×b+a×2b=4abとなり、交換後の方が電気料金が安くなる。尚、この計算では、所要時間は全て上記時間帯の時間(例えば1時間)であるものとしている。
【0053】
これを一般化すると、電気料金単価がa円で所要電力がx(W)の低価格オーダーと、電気料金単価がb円で所要電力がy(W)の高価格オーダーを交換すると、電気料金が
a×x+b×y−(a×y+b×x)=(b−a)×(y−x)
だけ交換によって削減できる。すなわち、電気料金単価の差(b−a)が大きく、所要電力の差(y−x)が大きいほど、交換による電力削減効果が大きくなる。
【0054】
最後に、上記ステップS33の交換処理を実行後の調整対象オーダー群に、調整非対象オーダーを統合することで(ステップS34)、上記生産計画候補D4を生成する。尚、この例に限らず、例えば、初期生産計画情報D1や最新の生産計画候補D4に対して、上記入替候補の交換結果を反映させることで、新たな生産計画候補D4を生成するものであってもよい。
【0055】
本発明によれば、生産効率の悪化や工程や設備利用の偏りなどの不具合を最小限に抑制しつつ、消費電力削減を図った生産計画を立てることができる。
以下、具体例を示して、更に詳細に説明する。
【0056】
図6に、生産ラインの具体例と、この生産ラインに係わる初期生産計画情報D1の具体例の一部と、それに基づいて上記生産スケジュール生成部17によって生成される生産スケジュールの具体例を示す。
【0057】
まず、この例の生産ラインは、切削工程を担う旋盤1、研磨工程を担う研磨機1および研磨機2、塗装工程を担う塗装機1、焼成工程を担う電気炉1、メッキ工程を担うメッキ機1、からなる4工程5設備の生産ラインである。研磨工程では、研磨機1と研磨機2の何れか一方を用いる。そして、図示の例では、最上流工程が切削工程であり、その後工程が研磨工程もしくは焼成工程であり、最下流工程が塗装工程もしくはメッキ工程となっている。尚、この様な情報は、不図示の生産ライン情報として、予め作成されて記憶されている。
【0058】
また、
図6には、初期生産計画情報D1の具体例の一部を示しており、決められた実行順序に従った各製造オーダーの識別ID(上記オーダーNo.21に相当)と着手時間23を示している。識別IDは、図示のオーダーA、オーダーB、オーダーCである。尚、図ではオーダーA、B、Cのみ示してあるが、他は省略しているだけであり、他にも例えばオーダーD,E,F,G,H,I等もあるものとする。
【0059】
初期生産計画情報D1の具体例の一部によれば、オーダーA→オーダーB→オーダーCの順に生産開始(着手)されるものであり、着手時間はオーダーAが9:00、オーダーBが9:10、オーダーCが9:20となっている。
【0060】
そして、
図6には、初期生産計画情報D1に基づいて生成された生産スケジュールの具体例も示してある。生産スケジュールは、上記各設備における上記各製造オーダーの実行順序と実行開始時間等である。
【0061】
例えば、生産ラインの最上流の設備である上記旋盤1に関しては、基本的には、初期生産計画情報D1の実行順序と着手時間23等が、そのまま、旋盤1における実行順序と実行開始時間等となる。つまり、オーダーA→オーダーB→オーダーCの順に旋盤作業開始されるものであり、実行開始時間はオーダーAが9:00、オーダーBが9:10、オーダーCが9:20となっている。
【0062】
ここで、本例では、オーダーA,Bは、切削工程→研磨工程→塗装工程の順に3つの工程が実行されるものであり、オーダーCは、切削工程→焼成工程→メッキ工程の順に3つの工程が実行されるものであるものとする。この情報は、初期生産計画情報D1に含まれているものとする。また、ここでは仮に、切削工程及び研磨工程における作業時間(所要時間33)は全て10分であるものとする。
【0063】
これより、図示のように、オーダーAに関しては、更に、研磨機1が割当てられると共にその実行開始時間は上記9:00の10分後の9:10となり、更に塗装機1が割当てられると共にその実行開始時間は上記9:10の10分後の9:20となる。同様に、オーダーBに関しては、更に、研磨機2が割当てられると共にその実行開始時間は上記9:10の10分後の9:20となり、更に塗装機1が割当てられると共にその実行開始時間は上記9:20の10分後の9:30となるはずであるが図示のように9:32となっている。これは、例えば、塗装機1におけるオーダーAの作業終了時間が9:32であった為に、待ち時間が生じたからである。
【0064】
この様に、生産計画に従って生産作業全体が完了するまでに掛かる時間には、待ち時間が含まれるものであり、待ち時間の大きさはスケジューリング次第で変わることになる。そして、待ち時間は、全体の作業完了時間に影響することになる。当然ながら、待ち時間の合計値が多くなるほど、全体の作業完了時間は遅くなることになる。そして、当然ながら、全体の作業完了時間は遅くなることは、望ましいことではなく、出来るだけ早く作業完了することが望ましい。尚、当然、この様なスケジューリング結果から、全体の作業完了時間は分かることになる。
【0065】
他の設備(電気炉1、メッキ機1など)についても、例えば図示のように、スケジューリングが行われる。
例えば上記のような生産スケジュール生成部17の処理は、既存の技術により実現できる。例えば、生産スケジューラ等と呼ばれる既存ツールを用いて実現できる。生産スケジューラの具体的な製品名としては、例えば「FLEXSCHE(フレクシュ)」等が知られている。「FLEXSCHE(フレクシュ)」に対して、上記初期生産計画情報D1と不図示の生産ライン情報などを入力データとすることで、例えば
図6に示すような生産スケジュール(ガントチャートなど)が生成される。
【0066】
そして、この様な生産スケジュール(ガントチャートなど)によれば、上記“生産時間”が分かる。これは、例えば、最下流の設備に関して、その設備の最後に実行される製造オーダーの、当該設備における製造作業が完了する時間を求める。最下流の設備が複数ある場合には、各設備について製造作業完了時間を求めて、その中で最も遅いものを全体の生産終了時間と見做す。そして、全体の生産開始時間から全体の生産終了時間までの時間が、上記“生産時間”となる。
【0067】
図6の例では、最下流の設備は、塗装機1とメッキ機1である。そして、
図6に示す製造オーダーだけで考えるならば、塗装機1に関しては製造オーダーDが最後であって作業開始時間は9:50であり、メッキ機1に関しては製造オーダーIが最後であり作業開始時間は9:55である。仮に両方とも所要時間33が10分であるとしたならば、塗装機1の製造作業完了時間は10:00となり、メッキ機1の製造作業完了時間は10:05となる。よって、メッキ機1の製造作業完了時間(=10:05)が、上記全体の生産終了時間と見做される。また、全体の生産開始時間は、生産計画において実行順序が最も早い製造オーダーの着手時間23であり、
図6の例ではオーダーAの9:00である。
【0068】
これより、この例では、“生産時間”は、全体の生産開始時間(9:00)から全体の生産終了時間(=10:05)までの時間である1時間5分となる。
また、初期生産計画情報D1の代わりに、各生産計画候補D4を用いてもよい。これより、初期生産計画情報D1や各生産計画候補D4それぞれに応じた生産スケジュールが生成されることになり、以ってそれぞれに応じた生産完了時間が分かることになる。
【0069】
そして、このような生産完了時間や電気料金に基づいて、上記のように、複数の生産計画候補D4の中から1つを選択して改良版生産計画情報とする。その後、任意のときに、この改良版生産計画情報に基づく生産スケジュールに従って、各設備で生産が行われることになる。
【0070】
尚、各設備で製造が行われる際には、各設備では電力を消費する。生産スケジュールが変われば、製造ラインで消費される電力が変わることになる。
上述した生産スケジュール生成部17の処理は、例えば概略的には以下のようになると言うこともできる。
【0071】
すなわち、初期生産計画情報D1より各製造オーダーを順次処理対象とする。上記一例では、オーダーA→オーダーB→オーダーCの順に処理対象となる。そして、処理対象オーダーについて、以下の処理を実行する。
【0072】
まず、処理対象オーダーの着手時間23と各工程情報24を取得する。各工程情報24は、実行順に格納されているものとし、まず、この実行順に各工程情報24に基づいて、その工程を所定の設備に割当てる。すなわち、その工程情報24の設備名32が示す設備に対して、所要時間33の時間分を、その工程の作業時間として割当てる。これは、基本的には、既に1以上の他の工程の作業時間が割当て済みである場合には、それらの最後の直後から割当てる。例えば、既に他の2つの工程の作業時間が割当て済みであり、これらは9:00〜9:10と9:10〜9:20であった場合、9:20から所要時間33の時間分を、その工程の作業時間として割当てる。例えば所要時間33=15分であったならば、9:20〜9:35を割当てる。
【0073】
但し、上記のように基本的には既に割当て済みの他の作業時間の直後から割当てるものであるが、着手時間23または前の工程の作業終了時間が、当該“直後”の時間よりも後である場合には、着手時間23または前の工程の作業終了時間の直後から、作業時間を割当てる。これは、最初の工程に関しては着手時間23を用い、2番目以降の工程に関しては“前の工程の作業終了時間”を用いる。上記一例において、仮に“前の工程の作業終了時間”が9:25であったとするならば、上記9:20〜9:35ではなく9:25〜9:40を割当てることになる。
【0074】
図7、
図8は、初期生産計画情報D1の具体例(1/2)、(2/2)である。
尚、初期生産計画情報D1のデータ構成自体は、既に図示・説明してあり、
図7、
図8には具体的なデータ例を示している。つまり、ここでは、オーダーNo.21が図示のA,B,C,D,E,F,G,H,I,・・・、P,Q,R,・・・である各製造オーダー(ここでは、製造オーダーA,B,C,D,E,F,G,H,I,・・・、P,Q,R,・・・などと記すものとする)に関する各情報からなる。勿論、これは一例に過ぎない。
【0075】
代表して、製造オーダーA(オーダーNo.21がA)を例にして説明するならば、品種22=“部品A”、着手時間23=“9:00”であり、3つの工程から成り、以って工程情報24は3つある。
【0076】
1つ目の工程情報24は、工程名31=“切削”、設備名32=“旋盤1”、所要時間33=“10(分)”、所要電力34=“2.1(W)”である。2つ目の工程情報24は、工程名31=“研磨”、設備名32=“研磨機1”、所要時間33=“10(分)”、所要電力34=“3.5(W)”である。3つ目の工程情報24は、工程名31=“塗装”、設備名32=“塗装機1”、所要時間33=“10(分)”、所要電力34=“4(W)”である。なお、3つの工程情報24を分かり易く区別する為に、ここでは、工程名31を図示の「工程1」31、「工程2」31、「工程3」31と記してある。
【0077】
尚、所要時間33と所要電力34は、主に品種と工程と設備によって変わるが、さらに加工者の熟練度などにより製造オーダーごとに個別に変わる可能性がある。
このように、例えば、同一の製品品種であっても、製造工程や製造設備が異なる場合や製造担当者の熟練度などにより所要時間や所要電力が異なる場合があるため、製造オーダーごとに所要時間33や所要電力34を保持している。したがって、製品品種ごとに製造所要時間と使用電力を記憶するようなマスターファイルを設ける必要はない。
【0078】
なお、製造オーダーごとの所要時間33や所要電力34は、過去の実績から数値を求めてもよいし、予め計測した値を利用してもよいし、設備の諸元などの想定の数値を用いてもよいし、製造担当者の熟練度を考慮して調整した値を用いても構わない。
【0079】
また、初期生産計画情報D1を作成する際に、過去の実績データの中から、操業条件や生産量などが似通った生産実績を用いたり、予め適当に人が立てた計画を用いたりしても構わない。
【0080】
図9に、上記ステップS11の調整対象オーダー抽出処理の具体例を示す。
この例では、上記対象指定情報D2として、工程は“全て”であり(換言すれば“無条件”であり)、設備は“研磨機1”が指定されている。つまり、実質的に、設備名32=“研磨機1”が、抽出条件として指定されている。
【0081】
これより、
図7、
図8に示す例の初期生産計画情報D1の場合、設備名32として“研磨機1”がある製造オーダーは、製造オーダーA,D,E,P,Q,Rであるので、これらが調整対象オーダーに分類される。尚、これら以外の他の製造オーダー全てが、調整非対象オーダーに分類される。
【0082】
そして、上述したように、オーダー順序変更対象は、調整対象オーダーである。調整非対象オーダーについては、順序変更は行われない。
図10に、オーダー順序変更処理に関する具体例を示す。
【0083】
尚、
図10や上記
図9に示す各時間(9:00、9:10など)は、ここでは、その製造オーダーの着手時間23であるが、この例に限らない。
ここでは、
図9の具体例に応じた例を示すので、上記の通り調整対象オーダーは製造オーダーA,D,E,P,Q,Rであり、これらが処理対象となって、まず、低価格オーダーと高価格オーダーとに分類する。
図10では、時間帯別電力単価情報D3の簡単な具体例を示しており、図示の通り、9:00〜15:00の範囲内の各時間帯は全て電気料金単価が10円/kWhであり、15:00〜16:00の範囲内の各時間帯は全て電気料金単価が20円/kWhであり、16:00〜18:00の範囲内の各時間帯は全て電気料金単価が10円/kWhである。また、ここでは、低価格/高価格判別の為の閾値を、仮に、15円/kWhとする。よって、10円/kWhは低価格、20円/kWhは高価格となる。
【0084】
上記具体例に対して、
図7、
図8の具体例によれば、製造オーダーA,D,Eの着手時間23は9:00,9:30,9:40であるので、全て上記9:00〜15:00の時間帯に該当することになり、従って製造オーダーA,D,Eは全て低価格オーダーに分類されることになる。また、製造オーダーP,Q,Rの着手時間23は15:00,15:10,15:20であるので、全て上記15:00〜16:00の時間帯に該当することになり、従って製造オーダーP,Q,Rは全て高価格オーダーに分類されることになる。
【0085】
尚、上記一例では各製造オーダーが低価格/高価格のどちらに該当するのか判定する為に着手時間23を用いたが、この例に限らず、例えば製造時間帯(=着手時間23〜所要時間33の時間帯)を用いて判定するようにしてもよい。尚、この例の場合、例えば製造時間帯が14:50〜15:20等であった場合、上記9:00〜15:00の時間帯と上記15:00〜16:00の時間帯の両方に該当することになる。この様に低価格と高価格の両方の時間帯にまたがる製造オーダーについては、より多くかかる方に分類しても良いし、一律、調整非対象オーダーに分類しても構わない。
【0086】
続いて、低価格に分類された製造オーダーA,D,Eの中で最も所要消費電力の少ない製造オーダーを判別する。
図7、
図8の例では、製造オーダーAの所要消費電力は所要電力34のデータより2.1+3.5+4=9.6であり、製造オーダーDの所要消費電力は所要電力34のデータより2.2+2.9+4=9.1であり、製造オーダーEの所要消費電力は所要電力34のデータより2.1+3.1+4=9.2となる。よって、最も所要消費電力が少ないのは製造オーダーDとなる。
【0087】
同様にして、高価格に分類された製造オーダーP,Q,Rの中で最も所要消費電力の多い製造オーダーを判別すると、
図7、
図8の例では、製造オーダーQとなる。つまり、整合オーダーDと製造オーダーQとが交換対象となる。
【0088】
上記判別結果より、製造オーダーD−製造オーダーQ間で実行順序の交換を行うことになる。これは、例えば、製造開始予定時間(後述する着手時間23)を交換する。上記具体例では、製造オーダーDの着手時間23は9:30、製造オーダーQの着手時間23は15:10であったので、両者を交換することで、製造オーダーDの着手時間23は15:10に変更され、製造オーダーQの着手時間23は9:30に変更されることになる。この変更後は、図示のように、製造オーダーQは低価格オーダーに分類されることになり、製造オーダーDは高価格オーダーに分類されることになる。
【0089】
そして、交換後の低価格時間帯のオーダーと高価格時間帯オーダーとを統合し、これに更に調整非対象オーダーを統合することで、生産計画候補D4を生成する。
ここで、仮に、図示の生産計画候補D4が上記生産計画候補D4−aであるものとするならば、上記繰り返し処理の2回目の処理では、今度は、生産計画候補D4−aについて上記調整対象オーダーの決定や低価格/高価格の分類を行って、上記交換対象を決定し、当該交換対象間で実行順序の交換を行う。その際、上記具体例によれば、今度は、低価格に分類された製造オーダーA,Q,Eの中で最も所要消費電力の少ない製造オーダーを判別することになり、製造オーダーQの所要消費電力は所要電力34のデータより2.1+3.5+4=9.6であるので、製造オーダーEが上記交換対象となる。
【0090】
同様にして、高価格に分類された製造オーダーP,D,Rの中で最も所要消費電力の多い製造オーダーを判別すると、製造オーダーRが該当することになる。つまり、今度は、整合オーダーEと製造オーダーRとが上記交換対象となり、両者の実行順序の交換(着手時間23の交換)が行われることになる。その後に、上記統合等が行われて今度は上記生産計画候補D4−bが生成されることになる。
【0091】
図11に、上記ステップS12bの生産スケジューリング生成結果および上記ステップS13の時間帯別消費電力計算結果の具体例を示す。
図11における上側には、上記既存ツールを用いて生成される、上記生産計画候補D4に応じたガントチャートを示す。ガントチャートは、例えば上記
図6に示したものに相当する。生産計画候補D4における各製造オーダーの着手時間23と各工程の所要時間33等に基づいて、ガントチャートは生成される。
【0092】
そして、このガントチャートに基づいて、各製造オーダーの所要電力34等も用いて、各時間帯別の消費電力を求める。この処理については既に一例を説明してある。
図11における下側には、このような各時間帯別の消費電力の算出結果例を示す。
【0093】
そして、上記時間帯別電力単価情報D3を用いて、各時間帯別に、その時間帯の上記消費電力に、その時間帯の電力単価を乗算することで、その時間帯の電気料金を算出する。
図12に、このような電気料金算出結果の一例を示す。
【0094】
この例では、時間帯の単位は30分である。これより、上記処理により例えば9:00-18:00について30分毎の時間帯別の消費電力が算出されて、時間帯別電力単価(図示の“価格”)を用いて図示の“料金”(30分毎の時間帯別の電気料金)が計算される。
【0095】
更に図示の例では、全ての時間帯の時間帯別料金を合計することで、一日の電気料金(6300円)が計算される。
例えば、この一日の電気料金(生産計画による全製造オーダーの製造完了に掛かる電気料金の一例)が、上記改良版生産計画情報の決定の際に、用いられることになる。これは、例えば、複数の候補D4のなかで最も上記“一日の電気料金”が少ないものを、改良版生産計画情報に決定するが、この例に限らない。
【0096】
尚、上記ステップS15の判定に用いる停止条件として、繰り返し回数を100回など適切な値を指定することもできるし、上記算出される電気料金が初期生産計画に対して、ある割合もしくはある絶対値分だけ削減されることを指定することもできるし、交換しようとする低価格オーダーと高価格オーダーとの所要電力の差がある値以下になることを指定することもできる。
【0097】
図13に、上記計画選択部16aの処理イメージを示す。
上記のように、繰り返し処理によって、生産計画候補D4が複数生成されてもよく、
図13には例えば生産計画候補D4−a、D4−b、D4−cの具体例のイメージを示す。
【0098】
計画選択部16aは、上記のように、これら複数の生産計画候補D4の中の1つを選択することで、最終的な生産計画(改良版生産計画情報)を決定する。
この選択方法は、様々であってよく、例えば単純に上記電気料金の合計値(
図12の例では6300円)が最も小さい生産計画候補D4を、改良版生産計画情報に決定するようにしてもよいが、この例に限らない。
【0099】
例えば、高価格時間帯の消費電力が最も少ない生産計画候補D4を、生産計画に決定するようにしてもよい。これによって、ピークカットを図ることができる。
その他、生産計画候補から計算し得る適切な評価指標を用いて構わない。
【0100】
あるいは、上記の通り、例えば、初期生産計画情報D1による生産時間である基準生産時間と、上記各候補D4による各生産時間と各電気料金(上記合計値など)に基づいて、その生産時間が上記基準生産時間より短い候補のなかで最も電気料金が安価な候補D4を、改良版生産計画情報に決定するようにしてもよい。
【0101】
あるいは、生成された複数の生産計画候補D4をオペレーターに提示して、オペレーターがポインティングデバイス等を用いて所望の生産計画候補D4を選択可能とする構成としても構わない。
【0102】
本手法によれば、製造オーダーの実行順序の入れ替えを行うことで、全体の電力料金を削減した生産計画を立てることができる。
あるいは、本手法によれば、特定の工程や設備ばかりに生産が集中するといった不具合を生じさせることなく(以って、作業員の負荷に偏りを生じさせることなく)、所要電力料金を削減した生産計画を立てることができる。これは、対象とする工程もしくは機械(設備)を指定させ、該指定された製造オーダーのみを入替え対象とすることで、比較的似通った製造オーダーのみを入替え対象とすることができる為である。
【0103】
あるいは、本手法によれば、例えば一例としては、製造オーダーの入れ替えを複数回繰り返すことで、複数の生産計画の候補を生成して、改良版の生産計画として複数の候補から選択することができ、より好ましい改良版生産計画を得ることが期待できる。
【0104】
あるいは、本手法によれば、生産時間が初期の生産計画情報よりも長くならないようにしつつ(以ってラインの生産効率の低下を防止しつつ)所要電力料金を削減した生産計画を立てることができる。これは、換言すれば、本手法によれば、入替え後の製造計画に過剰な待ち時間が発生することを防止しつつ所要電力料金を削減した生産計画を立てることができる。これは、製造オーダーの入れ替えを複数回繰り返すことで複数の生産計画の候補を生成して、待ち時間が初期よりも少ない候補の中から選択するためである。
【0105】
あるいは、上記各効果のうちの複数の効果が、得られるようにすることもできる。
このように、本手法によれば、任意の生産計画に対して、該生産計画による製品製造に伴う電気料金が安く済む改良を含む改良が行われた改良版の生産計画を自動生成できる。