(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トナー及びキャリア液を含む液体現像剤で現像されたトナー像が保持された光透過性の記録媒体の前記トナー像を保持した面と接触し、前記記録媒体及びトナー像に存在する前記キャリア液を吸収する回転体と、
前記回転体に接触し、前記記録媒体を当該回転体に押し付けて通過させる圧接域を形成する光透過性の加圧部材と、
レーザ光を前記加圧部材の一部を透過させてから前記圧接域内に存在するときの前記記録媒体を透過させて前記トナー像に照射する照射手段と、
を備える定着装置。
前記照射手段は、前記圧接域のうちレーザ光が照射される照射域から当該圧接域の入口との間にレーザ光が照射されない第1の非照射域を存在させるよう構成されている請求項1に記載の定着装置。
前記照射手段は、前記圧接域のうちレーザ光が照射される照射域から当該圧接域の出口との間にレーザ光が照射されない第2の非照射域を存在させるよう構成されている請求項1又は2に記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
[実施の形態1]
図1及び
図2は、実施の形態1に係る定着装置を用いた画像形成装置を概念的に示すものである。
図1はその画像形成装置の構成を示し、
図2はその定着装置の構成を示している。
【0016】
画像形成装置1は、トナー及びキャリア液を含む液体現像剤で構成されるトナー像を形成してから光透過性の記録媒体9に転写する画像形成部2と、その画像形成部2で転写されたトナー像を記録媒体9に定着させる定着部3とを少なくとも備えている。
【0017】
<画像形成部の構成>
画像形成部2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナーからなるトナー像をそれぞれ個別に形成する4つの画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを用いて構成されている。4つの画像形成ユニット20(Y,M,C,K)はいずれも、液体現像剤のトナーの色が異なることを除けば、同様に、感光体の一例としての感光ドラム21と、帯電装置22と、露光装置23と、現像装置24(Y,M,C,K)と、転写装置25等を備えている。
【0018】
感光ドラム21は、接地処理された円筒又は円柱状の導電性基材上に感光層を形成してなるものであり、矢印で示す方向に回転駆動するよう設けられている。帯電装置22は、感光ドラム21の像形成領域となる外周面部分を所要の電位に帯電させる接触式又は非接触式のものである。露光装置23は、感光ドラム21の帯電後の像形成領域に画像情報に基づいて露光して静電潜像を形成するものである。
【0019】
現像装置24(Y,M,C,K)は、感光ドラム21上の静電潜像をその色成分に対応した色のトナーを含む液体現像剤で現像することでトナー像を形成する液体現像方式の現像装置である。液体現像剤は、現像ロールを介して感光ドラム21と向き合う現像域に供給される。
液体現像剤は、紛体のトナーを電気絶縁性液体のキャリア液に分散させてなる液状の現像剤である。トナーとしては、主として、結着用樹脂と着色のための顔料や染料とを混合して平均粒径が例えば0.1〜5μmの紛体(微粒子)としたものが使用される。結着用樹脂として、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられる。また、トナーには、必要に応じてレーザ光(のエネルギー)を所望量吸収させるため赤外線吸収剤等が添加される。キャリア液としては、例えば、パラフィン系オイル、エーテル系オイル、シリコーン系オイル等が使用される。このキャリア液は、不揮発性のものを使用されるが、揮発性のものを使用しても構わない。また、液体現像剤は、キャリア液に、トナーを現像剤全体に対する質量割合が例えば5〜30%程度になるよう配合して作製される。さらに、液体現像剤の粘度は、25℃において0.1mPa・s以上且つ1000Pa・s以下の範囲内の値であることが望ましい。特に粘度が1000Pa・sより大きくなると、液体現像剤の攪拌やその搬送(搬液)等の取り扱いが困難となり、均一な液体現像剤を供給するための装置の負担が大きくなる。
【0020】
転写装置25は、感光ドラム21上に形成されるトナー像を最終的に記録媒体9に転写させるものである。実施の形態1における転写装置25は、感光ドラム21上のトナー像を一時的に転写して搬送する中間転写体の一例としての中間転写ロール26と、中間転写ロール26に転写されたトナー像を記録媒体9に転写する最終転写ロール27とで構成されている。中間転写ロール26は、感光ドラム21の転写位置で接触して矢印で示す方向に従動回転するよう設けられている。最終転写ロール27は、中間転写ロール26の転写位置で接触して従動回転するよう設けられている。また、中間転写ロール26と感光ドラム21との間には、感光ドラム21上のトナー像を静電作用により中間転写ロール26へ転写させるための一次転写電圧が供給される。最終転写ロール27と中間転写ロール26との間には、中間転写ロール26上のトナー像を静電作用により記録媒体9へ転写させるための二次転写電圧が供給される。
【0021】
光透過性の記録媒体9としては、例えば、連続する透明フィルムが使用される。光透過性とは、少なくともレーザ光を透過させることができる性質のことをいう。また、透明とは、光透過性を有する無色又は有色の透明である。光透過性及び透明については、これ以降においても同様である。この透明フィルムは、例えば、図示しない記録媒体の送出し供給部から画像形成部2にむけて送り出されて供給されるとともに、画像形成部2及び定着部3をこの順に通過した後に図示ない回収部に巻き取る等の状態で回収されるようになっている。
上記透明フィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート),OPP(オリエンテッドポリプロピレン),ONY(延伸ナイロン)等からなるフィルムが使用される。PETフィルムは、ポリエチレンテレフタレート材を二軸延伸加工して得られるフィルムであり、耐熱性、寸法安定性、透明性、機械適性に優れている。OPPフィルムは、ポリプロピレン材を二軸延伸加工して得られるフィルムであり、透明性、防湿性に優れている。このOPPフィルムは、例えば、ラミネートフィルムのベース材として使用されており、食品の分野をはじめ幅広い分野で活用されている。ONYフィルムは、ナイロン6を二軸延伸加工して得られるフィルムであり、ピンホール、衝撃、摩耗などに強く、耐熱、耐寒、バリアー性などに優れ、主に食品用、重袋用、工業雑貨用のフィルム材として使用されている。
【0022】
このような画像形成部2では、以下のようにして液体現像剤で現像されるトナー像を形成して光透過性の記録媒体9に転写する。
【0023】
画像形成部2の各画像形成ユニット20(Y,M,C,K)では、画像形成動作時になると、回転始動する各感光ドラム21の外周面の像形成領域が各帯電装置22により所要の電位にそれぞれ帯電させられた後、その各感光ドラム21の帯電した像形成領域に各露光装置23から各色成分の画像信号に対応した光がそれぞれ照射されて各色成分に対応した静電潜像が形成される。続いて、各感光ドラム21に形成された各色成分の静電潜像は、対応する現像装置24(Y,M,C,K)を通過する際に、液体現像剤が供給されて現像されることで、前記4色(Y,M,C,K)のいずれかの色のトナー像として各感光ドラム21上に形成される。
【0024】
そして、各感光ドラム21上に形成された各トナー像は、各転写装置25における中間転写ロール26にそれぞれ転写された後、中間転写ロール26を介して最終転写ロール27と対峙する転写位置まで搬送される。一方、転写装置25における中間転写ロール26と最終転写ロール27の間には、光透過性の記録媒体9が連続して供給されている。これにより、各中間転写ロール26に転写された各トナー像は、最終転写ロール27の転写作用により光透過性の記録媒体9に順次転写される。この各画像形成ユニット20(Y,M,C,K)で各トナー像(T)が転写された光透過性の記録媒体9は、次工程の定着部3にむけて搬送されて移動する。
【0025】
なお、この液体現像方式を採用する画像形成部2では、各画像形成ユニット20において感光ドラム21からトナー像が中間転写ロール26に転写される際、その感光ドラム21上に存在する液体現像剤のキャリア液の一部が中間転写ロール26に転写される。しかも、その中間転写ロール26からトナー像が記録媒体9に転写される際にも、中間転写ロール26上に存在する液体現像剤のキャリア液の一部が記録媒体9に転写される。記録媒体9に転写されたキャリア液は、記録媒体9が上記透明フィルムであれば、記録媒体9に浸透することがない。また、そのキャリア液は、不揮発性のものであれば、揮発して減少又は消失することもない。
一方、画像形成部2は、各画像形成ユニット20における感光ドラム21のトナー像転写後に残留する液体現像剤が図示しないドラム清掃装置により除去され、また、転写装置25における中間転写ロール26のトナー像転写後に残留する液体現像剤が図示しないロール清掃装置により除去されるようになっている。
【0026】
<定着部の構成>
定着部3は、次の構成からなる定着装置4Aを用いて構成されている。
【0027】
定着装置4Aは、
図1や
図2に示されるように、画像形成部2においてトナー及びキャリア液Cを含む液体現像剤で現像されたトナー像Tが保持された光透過性の記録媒体9のトナー像Tを保持した面9aと接触し、記録媒体9及びトナー像Tに存在するキャリア液Cを吸収する回転体5と、回転体5に接触し、回転体5に記録媒体9を押し付けて通過させる圧接域NPを形成する光透過性の加圧部材6と、レーザ光Lbを加圧部材6の一部を透過させてから圧接域(ニップ)NP内に存在するときの記録媒体9を透過させてトナー像Tに照射する照射手段7と、を備えるものである。上記トナー像Tは、未定着の像である。また、
図1では定着部3を画像形成部2と別体であるように便宜上示しているが、定着部3は画像形成部2と一体的に構成されている。
【0028】
回転体5は、記録媒体9及びトナー像Tに存在するキャリア液Cを可能な限り吸収することができる構造物である。この回転体5としては、例えば、ロール基体51と、ロール基体51の外周面に設ける弾性吸収層53と、弾性吸収層53の外周面に設ける最外層55で構成される吸収ロール5Aが使用される。
また、回転体5は、回転自在に設けられるとともに、図示しない回転駆動装置からの動力を受けて記録媒体9を通過移動させるべき方向に回転駆動するよう構成されている。
【0029】
上記ロール基体51としては、例えば金属等の材料を用いて作製される円筒状の基体が用いられる。また、上記弾性吸収層53は、キャリア液を吸収することができる弾性を有する層である。弾性は、吸収層53が加圧部材6と圧接したときに弾性的に変形して圧接域NPを形成できる程度のものであることが好ましい。この弾性吸収層53としては、例えば、連続気泡を有する多孔質の弾性材料を用いて構成される。連続気泡は、キャリア液Cを毛細管現象等により急速に吸収して保持することができる程度の特性を示す連続した気泡である。さらに、上記最外層55としては、例えば、通気性とトナーに対する離型性を有する多孔質フィルム材(フッ素樹脂等からなる延伸多孔質フィルムなど)等を用いて構成される。
【0030】
また、吸収ロール5Aからなる回転体5には、
図2に示されるように、回転体5(主に吸収ロール5Aの弾性吸収層53)が吸収したキャリア液Cを回収する回収装置80が装備されている。
回収装置80としては、例えば、回転体5の外周面に接触して従動回転するとともに回転体5が保持するキャリア液Cを吸着して回収する回収ロール81と、回収ロール81の外周面に接触してその外周面に付着する回収キャリア液Cbをかき取る除去部材82と、除去部材82でかき取った回収キャリア液Cbを収容する収容容器83とで構成される吸着式の装置が用いられる。
【0031】
加圧部材6は、回転体5との間で記録媒体9を回転体5に押し付けて通過させる圧接域NPを形成することができる光透過性の部材で構成されるものである。圧接域NPは、例えば、記録媒体9が通過する方向における幅寸法(通過距離)が5〜15mm程度の値になる領域として形成される。
【0032】
このような加圧部材6としては、例えば、透明の回転体61が用いられる。透明の回転体61としては、石英ガラス等の材料を用いて製作される円筒状の透明ロールが適用される。この透明の回転体61は、照射手段7から照射されるレーザ光を圧接域NPに集光させる集光部材として機能するよう使用される。このため、透明の回転体61は、所要の集光作用が得られるように、その直径、厚み等の条件が設定される。また、透明の回転体61は、その回転体の屈折率等を調整するため、その円筒の内部空間に水、オイル等の透明な液体69を、例えばその内部空間が完全に充填される量だけ封入することができる。
透明の回転体61からなる加圧部材6は、回転自在に設けられるとともに、回転駆動する回転体5である吸収ロール5Aの外周面に所要の圧力で接触するよう図示しない加圧機構で弾性的に加圧された状態で設けられている。
【0033】
照射手段7は、レーザ光Lbを、加圧部材6の一部を透過させてから圧接域NP内に存在する記録媒体9を透過させてトナー像Tに照射することができるものである。この照射手段7としては、所要の発振波長(例えば700〜1000nm)のレーザ光Lbを発生(発振)させるレーザ光源71、必要な光学部品等で構成される装置が使用される。レーザ光源71は、圧接域NPの長手方向(記録媒体9の通過方向とほぼ直交する方向又は回転体6の回転軸方向)にそってレーザ光Lbを連続させた状態(ライン状)で照射することができるよう、複数のものが用いられるとともに必要な調整が施された状態に配置される。
【0034】
また、照射手段7は、例えば、透明の回転体61からなる加圧部材6の外部の位置であって加圧部材6を挟んで回転体5とは反対側の位置に配置される。このため、このときの照射手段7は、レーザ光源71から発生させるレーザ光Lbを、透明の回転体61の一部を透過させた後に圧接域NP内に到達させるよう照射させることになる。これにより、この照射手段7から発振されるレーザ光Lbは、円筒形の透明の回転体61の肉圧部(又は壁)を2回透過して屈折させられた後に、圧接域NP内に集光させられた状態で照射される。
また、照射手段7は、例えば、図示しない制御手段により、そのレーザ光Lbの照射動作が、定着対象のトナー像Tを保持する記録媒体9の部分が圧接域NP内に存在して通過するときに限定されて実行されるよう設定されている。この場合、トナー像Tの圧接域NP内に導入されて通過する時期は、例えば、画像形成部2においてトナー像が記録媒体9に転写される開始時点及び終了時点から圧接域NPに到達して通過するまでの所要時間を推測して得られる予測情報などが利用される。
【0035】
さらに、照射手段7は、
図3に示されるように、圧接域NPの記録媒体9が通過する方向Dにおいてほぼ中央部となる領域にレーザ光Lbが集光されて照射される照射域(E2)を存在させるよう構成されている。
これにより、この照射手段7は、圧接域NPのうちレーザ光Lbの照射域(E2)から圧接域NPの入口との間にレーザ光Lbが照射されない入口側の非照射域(E1)を存在させるとともに、圧接域NPのうちレーザ光Lbの照射域(E2)から圧接域NPの出口との間にレーザ光Lbが照射されない出口側の非照射域(E3)を存在させるよう構成していることになる。このうち入口側の非照射域(E1)は、後述するように回転体5がキャリア液Cを吸収し始める液吸収領域として利用される。また、出口側の非照射域(E3)は、後述するようにレーザ光の照射域(E2)でレーザ光の照射を受けて溶融されたトナー像Tのトナーを冷却する冷却領域として利用される。
ちなみに、圧接域NPの記録媒体通過方向Dに沿う寸法を5〜15mm程度とした場合、例えば、照射域(E2)の同寸法を0.2±0.1mm程度とし、入口側の非照射域(E1)の幅寸法(入口から照射域までの距離)を3〜10mm程度とし、出口側の非照射域(E3)の同寸法(照射域から出口までの距離)を2〜12mm程度とする。
【0036】
<定着部の動作>
この定着部3(定着装置4A)による定着は、次のように行われる。
【0037】
定着部3では、
図1、
図2等に示されるように、定着装置4Aにおける回転体5(5A)が回転駆動するとともに、定着装置4Aにおける加圧部材6(61)が回転体5(5A)に接触して圧接域NPを形成しながら従動回転する。そして、定着部3による定着は、定着装置4Aにおける圧接域NPに対し、画像形成部2で転写されたトナー像Tを保持する光透過性の記録媒体9が導入されることで開始される。この際、記録媒体9は、圧接域NPに導入されると、回転体5(5A)と加圧部材6(61)に挟持された状態で圧接部NPを通過するよう搬送される。
【0038】
まず、圧接域NPに導入された記録媒体9は、圧接域NPにおいて、トナー像Tを保持した面(像保持面)9aが回転体5である吸収ロール5Aに接触する一方で、その像保持面9aと反対側の非像保持面9b側に接触する加圧部材6である透明の回転体61により加圧されて吸収ロール5Aに押し付けられる。なお、圧接域NPに導入されるときの記録媒体9には、前述したように像保持面9a側に液体現像剤のキャリア液Cがトナー像Tの内部も含めて存在している。
【0039】
これにより、圧接域NPでは、その入口側の非照射域(E1)において記録媒体9の像保持面9a上に存在するキャリア液Cが、回転体5の吸収ロール5Aにより吸収され始める。
この際、吸収ロール5Aは、キャリア液Cをその最外層55を通過させて弾性吸収層53に吸収して保持する。このときの吸収ロール5Aは、弾性吸収層53が弾性を有しているので、記録媒体9のトナー像Tに起因して存在する像保持面9Aの凹凸に追従して弾性変形し、これにより像保持面9Aとの密着性が向上して、キャリア液Cの優れた吸収能力が発揮される。また、吸収ロール5Aは、弾性吸収層53に吸収されたキャリア液Cが回収装置80によって回収され、これにより再びキャリア液Cを吸収する能力が回復する。なお、回転体5の吸収ロール5Aによるキャリア液Cの吸収は、記録媒体9が圧接域NP内に存在している間、継続して行われる。
また、入口側の非照射域(E1)におけるキャリア液Cの吸収は、例えば、記録媒体9としてキャリア液を吸収しない又はしにくい性質の媒体(フィルム、樹脂コート材など)を適用する場合や、キャリア液Cとして不揮発性のものを適用する場合に、キャリア液の存在による定着不良を誘発することを未然に防ぐことが可能になり、特に有益である。
【0040】
続いて、記録媒体9は、圧接域NPのほぼ中央部にある照射域(E2)に達すると、照射手段7から発振されるレーザ光Lbが、加圧部材6である透明の回転体61の一部を透過した後に記録媒体9である透明フィルムを透過してトナー像Tに向けて照射される。この際、レーザ光Lbは、加圧部材6である透明の回転体61の一部(レーザ光の光路と重なる2箇所や透明な液体69)を透過して集光された後、記録媒体9の像非保持面9bから入射してトナー像Tに達するように進む。
これにより、レーザ光Lbが照射されたトナー像Tの部分を構成するトナーは、圧接域NP内において記録媒体9と接する界面の方から溶融し始めるとともに、圧接域NPにおける加圧作用を受けながら記録媒体9の透明フィルムに接着し始める。
【0041】
最後に、記録媒体9は、圧接域NPにおける出口側の非照射域(E3)を通過する際、非照射域(E3)の手前の照射域(E2)でレーザ光Lbを照射されて溶融するトナー像Tのトナーがレーザ光Lbの照射を受けずに通過することになり、自然冷却され始める。
これにより、トナー像Tは、自然冷却により固化し始めるので、記録媒体9である透明フィルムに定着される。
図2における符号FTは、記録媒体9に定着された後のトナー像を示す。
【0042】
以上の定着部3による定着は、定着装置4Aの圧接域NPにおいて、キャリア液の吸収(除去)と記録媒体9側からのレーザ光照射によるトナー像Tの溶融とをほぼ同時に行うことになるので、液体現像剤で現像されたトナー像Tを光透過性の記録媒体9に効率よく定着させることができる。
このため、この定着部3による定着では、例えば、レーザ光を照射してトナー像を溶融(定着)させるに先立ってキャリア液を除去する工程(装置)を別途設ける必要がなく、また、そのキャリア液の除去を行うに先立ってトナー像の乱れを防止するために仮定着する工程(装置)を更に追加して設ける必要がない。また、キャリア液除去手段や仮定着手段を設ける必要がない分だけ(別言すれば、キャリア液の除去手段とレーザ照射による定着手段が1つの定着装置に装備された構成になっている分だけ)、定着装置4Aを簡素な構成にすることが可能になる。
【0043】
また特に、定着部3における定着装置4Aでは、その圧接域NPが、記録媒体9の通過方向Dの下流側にむけて、入口側の非照射域(E1)、レーザ光の照射域(E2)及び出口側の非照射域(E3)という3つ領域に区分されている(
図3)。
【0044】
これにより、最初に、入口側の非照射域(E1)において記録媒体9上に存在するキャリア液の吸収が回転体5により行われ、続いて、レーザ光の照射域(E2)においてキャリア液が低減された記録媒体9上のトナー像のレーザ光照射による溶融(加熱)が行われる。このため、トナー像Tは、キャリア液が低減された状態でレーザ光の照射を受けて瞬間的に溶融されるようになり、しかも、キャリア液の介在が少ない状態で記録媒体9に接着するようになる。また、トナーがレーザ光の照射による溶融して流動する前にキャリア液の除去が開始されるので、キャリア液を効率的に吸収(除去)することが可能になる。
この点、例えば、定着装置4Aにおいて回転体5がキャリア液を吸収することができない回転体であった場合には、次の不具合がある。すなわち、記録媒体9上に存在するキャリア液は、圧接域NPに導入されるときにその回転体(記録媒体9も含む)に吸収されることがないので、圧接域NPの入口側に押し戻されるようになる。この結果、未定着のトナー像Tを構成するトナーも、そのキャリア液と一緒に押し戻されるように移動させられるので、像乱れが発生してしまう。
【0045】
次に、出口側の非照射域(E3)においてレーザ光の照射で溶融したトナー像Tの自然冷却が圧接域NPに挟まれた状態で行われる。このため、トナー像Tは、像乱れの発生が抑制されつつ記録媒体9への定着が促進されるようになり、また、確実な冷却が行われることにより固化され始めることで回転体5からの剥離がされやすくなる。
これに対し、この定着装置4Aにおいて圧接部NPに出口側の非照射域(E3)を存在させないように構成した場合には、上記トナー像Tの自然冷却がなされなくなるので、上述したトナー像Tの定着の促進や回転体5からの剥離性の向上が得られなくなる。
【0046】
そして、この定着装置4Aでは、光透過性の記録媒体9上に保持された未定着のトナー像Tに対し、記録媒体9の像非保持面(背面)9bからレーザ光Lbを透過させて照射しているので、以下の利点がある。
【0047】
まず、トナー像Tは、記録媒体9に接している界面側のトナー(部分)から溶融し始めて記録媒体9に対する接着力が直接的に発生するので、例えばレーザ光Lbをトナー像Tの表面側(像保持面9a側)から照射する場合に比べて効率の良い定着がなされる。
また、トナー像Tは、圧接域NPにおいて回転体5である吸収ロール5Aとの界面側のトナー(部分)が記録媒体9との界面側のトナー(部分)よりも遅れて溶融し、その温度も相対的に低い状態にあるので、例えばレーザ光Lbをトナー像Tの表面側(像保持面9a側)から照射する場合に比べて、圧接域NPで吸収ロール5Aの多孔質からなる最外層55に接触しても、トナー像Tを構成するトナーの一部が分断されて吸収ロール5A側に転移するおそれや、あるいは乱されるおそれがない。
さらに、トナー像Tは、圧接域NPにおいて上述した溶融する時期にわずかなずれが生じるとともに加圧作用を受けるので、そのトナー像Tの内部(トナー粒子どうしの隙間)に存在するキャリア液Cが、吸収ロール5Aに接している界面側の未溶融のトナーどうしにおける隙間(空隙)を通して吸収ロール5A側に押し出され、最後に吸収ロール5Aにより吸収される。このため、トナー像Tの内部にキャリア液Cが存在したままで行う定着の場合のような定着不良(例えばキャリア液の介在により、トナーの記録媒体9との接着力が十分に得られない現象)や、画質不良(例えば所望の色再現性、濃度、光沢性が得られない現象)が発生することが抑制される。
【0048】
<比較試験>
以下、記録媒体9上に保持された未定着のトナー像Tに対して記録媒体9の像非保持面(背面)9bからレーザ光Lbを透過させて照射することの有利性を確認するために行った比較試験について説明する。
【0049】
比較試験は、
図4に示されるように、光透過性の記録媒体9上にシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の色のトナー層をこの順に下から3層積み重ねた状態で転写させて同じレーザ光照射による定着を行うときに、レーザ光Lbを記録媒体9の像保持面9a(第3層)側から照射する場合と、レーザ光Lbを記録媒体9の像非保持面9b(第1層)側から照射する場合とで、その3つの各トナー層がレーザ光照射により吸収するエネルギーの割合をそれぞれ測定した。
この際、上記各色のトナー層を構成する各トナーとしてはいずれも、ポリエステル樹脂からなる平均粒径が約6μmのトナーを使用した。また、各トナーには、単層トナーのときのレーザ光吸収量が80%になるように赤外線吸収剤を添加した。記録媒体9としては、OPPフィルムからなる厚さ約0.02mmの透明樹脂フィルムを使用した。レーザ光Lbは、発振波長が900nm、照射幅が0.15mmからなる条件のものを照射した。各トナー層のエネルギー吸収割合については、OPPフィルム上に上記各色のトナー層を個々に形成して定着した画像サンプルに上記レーザ光Lbを照射したときに透過する光エネルギーを測定した。
【0050】
この比較試験の結果を
図5に示す。この結果から、レーザ光Lbを記録媒体9の像非保持面9b(第1層)側から照射した場合は、レーザ光Lbを記録媒体9の像保持面9a(第3層)側から照射した場合した場合に比べて、記録媒体9との界面側のトナー(部分)のエネルギー吸収量が多くなることがわかる。
これは、同じエネルギーのレーザ光Lbを照射して定着を行う場合、そのレーザ光Lbを像非保持面9b(第1層)側から照射した方が記録媒体9との界面側のトナー(部分)が良く溶けるということになる。また、同じ定着性を得る場合、レーザ光Lbを像非保持面9b(第1層)側から照射した方が相対的に少ないレーザ光のエネルギーで済むということになる。本発明者の実験によれば、このレーザ光Lbのエネルギーについては像非保持面9b(第1層)側から照射した方が3割程度削減できるという結果が得られている。
【0051】
[実施の形態2]
図6及び
図7は、実施の形態2に係る定着部3を構成する定着装置4Bを概念的に示すものである。
図6は定着装置4Bの構成を示している。
図7は
図6の定着装置4Bにおける回転体及び回収装置を示し、特に回転体をその回転軸に沿って切断した状態で示している。
【0052】
実施の形態2に係る定着装置4Bは、回転体5について他の構成の吸引ロール5Bに変更し、回収装置について他の構成の回収装置85に変更した以外は実施の形態1に係る定着装置4Aと同じ構成からなるものである。このため、実施の形態2に関する説明においては、実施の形態1に係る定着装置4Aと同じ構成部分には同じ符号を付し、その説明を必要なとき以外は省略する(この点はこれ以後の実施の形態においても同様である)。
【0053】
この定着装置4Bは、
図6に示されるように、その基本的な構成は実施の形態1に係る定着装置4Aの場合と同様に、液体現像剤で現像されたトナー像Tを保持した光透過性の記録媒体9のトナー像Tを保持した面と接触し、記録媒体9及びトナー像Tに存在するキャリア液Cを吸収する回転体5と、回転体5に接触し、回転体5に記録媒体9を押し付けて通過させる圧接域NPを形成する光透過性の加圧部材6と、レーザ光Lbを加圧部材6の一部を透過させてから圧接域NP内に存在する記録媒体9を透過させてトナー像Tに照射する照射手段7と、を備えるものである。
【0054】
回転体5としては、例えば、孔開きロール基体52と、そのロール基体52の外周面に設ける吸収支持層54と、吸収支持層54の外周面に設ける弾性吸収層53と、弾性吸収層53の外周面に設ける最外層55で構成される吸引ロール5Bが使用される。
【0055】
このうち孔開きロール基体52は、例えば金属等の材料を用いて作製される円筒状の基体であって、その外周面に内部空間Sに貫通する通気孔56をほぼ均等に配置するように設けたものが用いられる。この孔開きロール基体52は、その一方の端部に端部部材57が取り付けられて内部空間Sが閉鎖されており、その他方の端部に内部空間Sと連続する貫通孔が形成された開口端部部材58が設けられている。
また、上記吸収支持層54は、後述する吸引式の回収装置85による吸引を行う際にその吸引力の影響を受けて弾性吸収層53が潰れるように変形してしまうことを防止するための通気性を有する層である。このような吸収支持層54としては、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂粉末を焼結して得られる焼結体が適用される。
【0056】
回収装置85は、回転体5である吸引ロール5Bにおける孔開きロール基体52の開口端部部材58と接続されて延びる通気管86と、通気管86の末端部に接続されて吸気により吸引ロール5Bの内部空間Sに吸引力を及ぼす吸気装置87と、通気管86の途中に設けられて吸引ロール5Bから吸引されるキャリア液Cを含む空気Mからキャリア液Cを分離して除去する分離装置88とで構成される吸引式の装置が用いられる。吸気装置87としては、例えば真空ポンプ等が適用される。分離装置88としては、キャリア液を分離することが可能なフィルターを装備する装置や、キャリア液を分離することが可能なフィルターを装備する装置や、必要によってはオイルミストを分離する気液分離フィルターを装備する装置等が適用される。
【0057】
この定着部3(定着装置4B)による定着は、主にキャリア液の吸収形式が異なる以外は、前述した実施の形態1に係る定着部3(定着装置4A)による定着とほぼ同様に行われる。
【0058】
特に定着装置4Bにおいては、圧接域NPに導入された記録媒体9の像保持面9a上に存在するキャリア液Cが、入口側の非照射域(E1)を始めとして圧接域NPの全域において回転体5の吸引ロール5Bによって吸収(吸引)される。
この際、吸引ロール5Bでは、回収装置85における吸気装置87の吸気作用に基づく吸引力が、孔開きロール基体52、吸収支持層54、弾性吸収層53及び最外層55をこの順に通して像保持面9aに及ぶ。
像保持面9a及びトナー像Tに存在するキャリア液Cは、吸引ロール5Bにおいて最外層55を通して弾性吸収層53に毛細管現象等により吸収されるが、それに併せて、
図7に示されるように、吸引ロール5Bが回収装置85による吸引力を受けることにより、最外層55、弾性吸収層53及び吸収支持層54を通過して、孔開きロール基体52の通気孔56からロール基体52の内部空間Sに吸引されて集められる。その後、吸引されたキャリア液Cは、通気管86を通して分離装置88に搬送された後、その分離装置88において空気Mと分離された状態で回収される。
【0059】
ちなみに、この定着装置4Bにおいては、吸引ロール5Bとして、孔開きロール基体52と弾性吸収層53との間に吸収支持層54を設けたものを採用している。このため、キャリア液の吸引に際しては、回収装置85の吸引力が孔開きロール基体52における複数の通気孔56に集中して弾性吸収層53の通気孔56に対応する部位に局所的に及ぶことが弾性吸収層53よりも硬い吸収支持層54の介在により緩和されて弾性吸収層53の上記部位やその周辺部が変形しにくくなる。この結果、定着装置4Bにおいては、弾性吸収層53の上記部位やその周辺部における連続する気泡が押しつぶされてキャリア液を吸引する作用が十分に発揮されなくなることが防止され、弾性吸収層53の吸収性能がその全域においてほぼ均等に且つ安定して確保される。
【0060】
[実施の形態3]
図8は、実施の形態3に係る定着部3を構成する定着装置4Cを概念的に示すものである。
【0061】
実施の形態3に係る定着装置4Cは、加圧部材6について他の構成の加圧部材6Bに変更した以外は実施の形態1に係る定着装置4Aと同じ構成からなるものである。
すなわち、定着装置4Cにおける加圧部材6Bは、光透過性を有するベルト62と、ベルト62を回転体5(吸収ロール5A)に押し付けて圧接域NPを形成するとともに照射手段7からのレーザ光Lbを透過させて圧接域NP内に集光させる加圧兼用集光部材としての加圧レンズ(パッド)63と、ベルト62を加圧レンズ63を含めて回転可能に架け回して支持する複数の支持ロール64〜67とで構成されている。
【0062】
このうちベルト62としては、例えば、透明ポリイミド等の材料を用いて作製される透明なベルトが使用される。このベルト62は、複数の支持ロール64〜67に回転自在に支持されて回転体5の回転力により従動回転する構成にするか、あるいは複数の支持ロール64〜67のいずれか1つを駆動ロールとすることで回転駆動するように構成される。加圧レンズ63としては、例えば、透明ガラス、透明ポリカーボネート等の透明な材料を用いて加圧作用及び集光作用の双方が得られるよう所要の形状に成形したものが使用される。加圧レンズ63は、回転体5と接する側の部位の断面が半円形、湾曲形等の形状になっている。また、加圧レンズ63は、図示しない保持部材に保持されるとともに、図示しない加圧機構により所要の圧力で回転体5に押し付けられた状態で支持される。
【0063】
照射手段7は、上記加圧部材6Bの採用により、例えばベルト62の内側に存在する空間(内部)に存在するよう配置される。この場合、照射手段7は、レーザ光Lbを、加圧レンズ63及びベルト62をこの順で透過させた後に圧接域NP内に集光させた状態で照射できるように構成されている。
【0064】
この定着部3(定着装置4C)による定着は、主に加圧部材6Bの採用に伴う構造的な変更が発生する以外は、前述した実施の形態1に係る定着部3(定着装置4A)による定着とほぼ同様に行われる。
【0065】
特に定着装置4Cにおいては、回転駆動する回転体5(5A)に、透明のベルト62がその内周面から加圧レンズ63に押し付けられることにより、圧接域NPが形成される。また、照射手段7から発振されるレーザ光Lbが、加圧レンズ63及びベルト62の一部を透過してから圧接域NPにおける照射域(E2)に集光され、その圧接域NP内に存在する記録媒体9を透過してトナー像Tに照射される。
【0066】
なお、実施の形態3においては、定着装置4Cにおける照射手段7をベルト62の外側の位置(外部)に配置しても構わない。また、定着装置4Cにおける吸収ロール5A及び回収装置80を例えば実施の形態2における吸引ロール5B及び回収装置85に変更していもよい。
【0067】
[実施の形態4]
図9は、実施の形態4に係る定着部3を概念的に示すものである。
【0068】
実施の形態4に係る定着部3は、キャリア液の吸収とレーザ光を背面側から照射する(第1の)定着装置4に加えて、その定着装置4よりも記録媒体9の搬送方向下流側の位置に第2の定着装置100を設けたものである。
第2の定着装置100は、第1の定着装置4で定着されたトナー像FTを記録媒体9に再び定着させるものである。第2の定着装置100としては、例えば、トナー像FTを加熱するロール形態、ベルト形態等の加熱用回転体110と、加熱用回転体110に接触して圧接域NPを形成するロール形態、ベルト形態等の加圧用回転体120とを少なくとも備えたものが使用される。
【0069】
このような定着部3では、第1の定着装置4による定着と第2の定着装置100による定着とが行われるので、液体現像剤で現像して得られるトナー像Tの光透過性の記録媒体9への定着をより確実に行うことができる。
ちなみに、この第2の定着装置100は、第1の定着装置4において記録媒体9等に存在するキャリア液がほぼ吸収されて除去されているので、キャリア液を吸収する機能は不要である。また、第2の定着装置100は、第1の定着装置4を仮の定着を行う定着装置として機能させる場合、最終的な定着(本定着)を行う定着装置として機能させることができる。
【0070】
[他の実施の形態]
実施の形態1〜4では、定着装置4における圧接域NPとして、入口側の非照射域(E1)及び出口側の非照射域(E3)の双方を存在させる構成例を示したが、その2つの非照射域のいずれか一方を存在させないように構成しても構わない。この場合は、省略された非照射域の前述した作用効果が得られなくなる。
また、定着装置4における回転体5としては、ベルト形態のものを適用することも可能である。さらに、定着装置4における加圧部材6としては、記録媒体9を通過させる圧接域NPを形成することが可能であれば、固定的に設置される形態の部材を適用することもできる。
【0071】
実施の形態1〜4では、光透過性の記録媒体9として、連続する透明のフィルムを適用する場合を例示したが、例えば、所要のサイズ及び形状に裁断された光透過性のフィルム又はシートを適用することも可能である。
【0072】
画像形成装置1における画像形成部2は、実施の形態1等で例示した構成のものに限定されず、液体現像剤で現像したトナー像Tを形成するとともにそのトナー像Tを光透過性の記録媒体9に転写することが可能な構成のものであればよい。