(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519503
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】放射線システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
A61B6/00 300Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-49950(P2016-49950)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-164051(P2017-164051A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 翔大
(72)【発明者】
【氏名】中西 功
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−005331(JP,A)
【文献】
特表2002−532174(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0312093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線装置と、コンピュータと、これらを中継する基板とを有する放射線システムであって、
前記基板は、前記コンピュータからの電気信号を映像データに変換する変換手段と、当該映像データを通信により前記放射線装置に送信する送信手段を有し、
前記基板と前記放射線装置とは、電気的に絶縁されていることを特徴とする放射線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線システムにおいて、
前記基板は、前記コンピュータからの前記電気信号に画像処理を行う、または前記コンピュータからの前記電気信号を圧縮する信号処理手段を備えることを特徴とする放射線システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線システムにおいて、
前記基板は、前記コンピュータおよび放射線装置との間でデータを送受信するための通信手段をさらに有することを特徴とする放射線システム。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線システムにおいて、
前記基板は、前記コンピュータからの前記電気信号から前記変換手段で変換された前記映像データと、前記放射線装置から前記通信手段を介した前記データと、前記コンピュータから前記通信手段を介した前記データとを調停する信号調停手段を備えることを特徴とする放射線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線装置と、コンピュータと、これらを中継する基板とを有する放射線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の放射線装置として、例えば、
図6に示すような構造がある。
図6に示すように、放射線装置101と、放射線装置101の周囲で外部にあるコンピュータ201とを、ケーブル301を介して電気的に接続している。
図6に示すように、放射線装置101は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN: Local Area Network) ポート(以下、「LANポート」と略記する)102と医用画像送信部103と映像信号受信部104とを備えている。また、コンピュータ201は、LANポート202とグラバーボード203とグラフィックカード204とを備えている。以下、通信プロトコルとして、イーサネット(登録商標)(英語表記ではEthernet(登録商標))プロトコルを例に採って説明する。
【0003】
放射線装置101のLANポート102とコンピュータ201のLANポート202とを、Ethernet(登録商標)ケーブル302を介して電気的に接続することで、放射線装置101とコンピュータ201との間をEthernet(登録商標)通信する。放射線装置101の医用画像送信部103とコンピュータ201のグラバーボード203とを、例えば低電圧差動信号(LVDS: Low Voltage Differential Signaling) 規格のケーブル303を介して電気的に接続することで、医用画像の信号をグラバーボード203に送信する。
【0004】
放射線装置101の映像信号受信部104とコンピュータ201のグラフィックカード204とを、例えばデジタル・ビジュアル・インターフェース(DVI: Digital Visual Interface) 規格またはビデオ・グラフィックス・アレイ(VGA: Video Graphics Array) 規格のケーブル304を介して電気的に接続することで、コンピュータ201(のグラフィックカード204)の映像信号を映像信号受信部104が受信する。このように、放射線装置とコンピュータとの間では、コンピュータの映像信号やEthernet(登録商標)プロトコルに変換した信号(Ethernet(登録商標)信号)や医用画像の信号や同期信号を転送する。
【0005】
DVI規格のように電気的に絶縁されていない接続が存在する。このように、放射線装置とコンピュータとの間は電気的に接続されているので、コンピュータの機種変更のためには放射線装置全体で安全性を確認する必要がある。特に、医用画像の場合には定格が厳しいので、安全性の動作テストを行う必要があり、より一層安全性を確認する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように放射線装置全体で安全性を確認する必要があるので、かかる(安全性の動作テストを行う)工数・費用が大きいという問題がある。そのために、コンピュータの機種変更が容易でない。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、安全性を確認する工数・費用が小さくなる放射線装置の接続に用いられる放射線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る放射線システムは、放射線装置と、コンピュータと、これらを中継する基板とを有する放射線システムであって、 前記基板は、前記コンピュータからの電気信号を映像データに変換する変換手段と、当該映像データを通信により前記放射線装置に送信する送信手段を有し、 前記基板と前記放射線装置とは、電気的に絶縁されていることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]この発明に係る放射線システムによれば、放射線システムは、放射線装置と、コンピュータと、これらを中継する基板とを有し、基板は、コンピュータからの電気信号を映像データに変換する変換手段と、当該映像データを通信により放射線装置に送信する送信手段を有し、基板と放射線装置とは、電気的に絶縁されている。基板を介して放射線装置・コンピュータ間で通信し、コンピュータからの電気信号を変換手段が映像データに変換し、当該映像データを通信により送信手段が放射線装置に送信することで、コンピュータから変換された映像データについても放射線装置が受信することができる。また、放射線装置・基板間では電気的に絶縁されているので、コンピュータの機種変更時に基板・コンピュータ間の安全性を確認することで、放射線装置全体で安全性を確認する場合と比較して、安全性を確認する工数・費用が小さくなる。その結果、コンピュータの機種変更を容易にすることができる。
【0010】
上述したこの発明に係る放射線システムにおいて、基板は、コンピュータからの電気信号に画像処理を行う、またはコンピュータからの電気信号を圧縮する信号処理手段を備えてもよい。上述したこの発明に係る放射線システムにおいて、基板は、コンピュータからの電気信号に画像処理を行う、またはコンピュータからの電気信号を圧縮する信号処理手段を備えてもよい。ここでの「信号処理」とは、コンピュータからの電気信号を圧縮する処理も含め、映像に関する一般的な画像処理(例えば拡大・縮小や切り出し)を意味し、放射線装置特有の画像処理(つまり放射線装置で得られた放射線画像の画像処理)と相違することに留意されたい。また、DVI規格では無圧縮の電気信号を送信するように設計されているので、信号処理手段にて当該電気信号を圧縮することができる。
【0011】
また、上述したこれらの発明に係る放射線システムにおいて、基板は、コンピュータおよび放射線装置との間でデータを送受信するための通信手段をさらに有するのが好ましい。ここでの「通信」は、基板・コンピュータ間の送受信、基板・放射線装置間の送受信も含まれる。
【0012】
また、上述した通信手段をさらに有した放射線システムにおいて、基板は、コンピュータからの電気信号から変換手段で変換された映像データと、放射線装置から通信手段を介したデータと、コンピュータから通信手段を介したデータとを調停する信号調停手段を備えるのが好ましい。
【0013】
本明細書では「信号調停」とは信号の転送方向を制御することを意味する。この場合、信号調停によって、変換手段で変換された映像データも含め、通信手段を介したコンピュータからのデータを、1つのケーブルを介して放射線装置が受信することができるとともに、同一のtケーブルを介して放射線装置からデータを基板、さらにはコンピュータに送信することができる。その結果、放射線装置・基板間の接続が1つのケーブルのみとなり、ケーブル数の削減となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る放射線システムによれば、放射線システムは、放射線装置と、コンピュータと、これらを中継する基板とを有し、基板は、コンピュータからの電気信号を映像データに変換する変換手段と、当該映像データを通信により放射線装置に送信する送信手段を有し、基板と放射線装置とは、電気的に絶縁されている。コンピュータの機種変更時に基板・コンピュータ間の安全性を確認することで、放射線装置全体で安全性を確認する場合と比較して、安全性を確認する工数・費用が小さくなる。その結果、コンピュータの機種変更を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1に係るX線撮影装置のブロック図である。
【
図2】外部にあるコンピュータを含んだ実施例1に係るX線撮影システムのブロック図である。
【
図3】パルストランス付きRJ45の回路図である。
【
図4】実施例2に係るX線撮影装置のブロック図である。
【
図5】外部にあるコンピュータを含んだ実施例2に係るX線撮影システムのブロック図である。
【実施例1】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るX線撮影装置のブロック図であり、
図2は、外部にあるコンピュータを含んだ実施例1に係るX線撮影システムのブロック図であり、
図3は、パルストランス付きRJ45の回路図である。後述する実施例2も含めて、本実施例1では、放射線装置としてX線撮影装置を例に採って説明するとともに、放射線システムとしてX線撮影システムを例に採って説明する。
【0017】
図2に示すように、X線撮影システム1は、X線撮影装置10(
図1も参照)と基板30とを備えている。X線撮影装置10と基板30とは、Ethernet(登録商標)ケーブル51,52を介して電気的に接続されている。また、基板30と外部にあるコンピュータ40とは、Ethernet(登録商標)ケーブル53およびDVI規格またはVGA規格のケーブル54を介して電気的に接続されている。X線撮影システム1は、この発明における放射線システムに相当し、X線撮影装置10は、この発明における放射線装置に相当し、基板30は、この発明における基板に相当する。
【0018】
X線撮影装置10は、
図1に示すように、被検体Mを載置した天板11と、被検体Mに向けてX線を照射するX線管12と、X線管2から照射されて被検体Mを透過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器(以下、「FPD」と略記する)13とを備えている。
【0019】
この他に、
図1および
図2に示すように、X線撮影装置10は、FPD13によって検出されたX線に基づいて画像処理を行う画像処理部14と、技師などの操作者がデータや命令(コマンド)を入力する入力部15と、各構成部を統括制御する中央演算処理装置(以下、「CPU」と略記する)16と、画像処理部14によって各種の画像処理で得られたX線画像に関する信号を含んだEthernet(登録商標)信号について、Ethernet(登録商標)ケーブル51を介して後述する基板30のX線撮影装置通信部31と通信(X線撮影装置通信部31への送信,X線撮影装置通信部31からの受信を含む)するLANポート17と、Ethernet(登録商標)ケーブル52を介して後述する基板30のX線撮影装置通信部36からX線画像に関する信号を受信するLANポート18と、LANポート18からX線画像に関する信号をX線画像として出力する画像出力部19と、画像処理部14によって各種の画像処理で得られたX線画像を記憶するとともに、画像出力部19によって出力されたX線画像を記憶するメモリ部20と、画像出力部19によって出力されたX線画像を表示する表示部21とを備えている。
【0020】
天板11やX線管12やFPD13や入力部15や表示部21を除いて、X線撮影装置10の各構成部は、
図2に示すようにキャビネットC
1に収納されている。また、基板30およびコンピュータ40、それらを接続するEthernet(登録商標)ケーブル53およびケーブル54は、
図2に示すようにキャビネットC
2に収納されている。
【0021】
基板30は、Ethernet(登録商標)ケーブル51を介してX線撮影装置10のLANポート17とEthernet(登録商標)信号について通信(Ethernet(登録商標)通信)するX線撮影装置通信部31と、X線撮影装置通信部31と通信して、かつEthernet(登録商標)ケーブル53を介して後述するコンピュータ40のLANポート41とEthernet(登録商標)通信するコンピュータ通信部32と、ケーブル54を介して後述するコンピュータ40のグラフィックカード43から映像信号を受信する映像信号受信部33と、コンピュータ40の映像信号に画像処理を行う、またはコンピュータ40の映像信号を圧縮する画像処理部34と、画像処理部34で処理されたコンピュータ40の映像信号をEthernet(登録商標)プロトコルに変換する映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35と、映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35を介してコンピュータ40の映像信号(X線画像に関する信号)をEthernet(登録商標)プロトコルに変換した信号を、Ethernet(登録商標)ケーブル52を介してX線撮影装置10のLANポート18に送信するX線撮影装置通信部36と、各構成部を統括制御するCPU37とを備えている。X線撮影装置通信部36は、この発明における送信手段に相当し、X線撮影装置通信部31,36,コンピュータ通信部32,映像信号受信部33は、この発明における通信手段に相当し、画像処理部34は、この発明における信号処理手段に相当し、映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35は、この発明における変換手段に相当する。
【0022】
外部にあるコンピュータ40は、Ethernet(登録商標)ケーブル53を介して基板30のコンピュータ通信部32とEthernet(登録商標)通信するLANポート41と、LANポート41を制御するCPU42と、映像信号を出力して、ケーブル54を介して映像信号を基板30の映像信号受信部33に送信するグラフィックカード43とを備えている。
【0023】
X線撮影装置10のLANポート17と基板30のX線撮影装置通信部31とは、Ethernet(登録商標)ケーブル51を介して電気的に接続されている。X線撮影装置10のLANポート18と基板30のX線撮影装置通信部36とは、Ethernet(登録商標)ケーブル52を介して電気的に接続されている。基板30のコンピュータ通信部32とコンピュータ40のLANポート41とは、Ethernet(登録商標)ケーブル53を介して電気的に接続されている。基板30の映像信号受信部33とコンピュータ40のグラフィックカード43とは、(DVI規格またはVGA規格の)ケーブル54を介して電気的に接続されている。
【0024】
X線撮影装置10の画像処理部14は、上述したCPUで構成されている。画像処理部14は、プログラムデータに応じて内部の使用するハードウェア回路(例えば論理回路)が変更可能なプログラマブルデバイス(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))あるいはGPU(Graphics Processing Unit) などで構成されてもよい。X線撮影装置10の入力部15は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。X線撮影装置10のメモリ部20は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。
【0025】
基板30の各構成部は、基板30に搭載するCPUや、上述したプログラマブルデバイスや、後述する変成器やイーサネット(登録商標)ICなどで構成されている。
【0026】
Ethernet(登録商標)の具体的な通信プロトコルについては、トランスミッション・コントロール・プロトコル(TCP: Transmission Control Protocol) とインターネット・プロトコル(IP: Internet Protocol) とを組み合わせたTCP/IPやユーザ・データグラム・プロトコル(UDP: User Datagram Protocol)などに例示されるように、特に限定されない。
【0027】
X線撮影装置10から配線したEthernet(登録商標)ケーブル51,52を接続するコネクタで絶縁を基板30に対して行う。X線撮影装置10から配線したEthernet(登録商標)ケーブル51,52を接続するコネクタで絶縁を基板30に対して行うには、当該コネクタとしてパルストランス付きRJ45を採用する。パルストランス付きRJ45は、
図3に示すように2個のコイルが磁気的に結合された変成器からなり、当該変成器を基板30(
図2も参照)に搭載する。一方のコイルは、Ethernet(登録商標)ケーブル51,52(
図2を参照)を接続するRJ45コネクタに接続され、他方のコイルはイーサネット(登録商標)IC(
図2ではX線撮影装置通信部31,36)に接続されている。
【0028】
一次コイル(入力側のコイル)に交流電流を流し、変動磁場を発生させる。それを相互インダクタンスで結合された二次コイル(出力側のコイル)に伝え、再び電流に変換して出力する。このように、一次コイルおよび二次コイルにより絶縁を行いつつ、交流電流からなるパルス信号を伝送することができる。X線撮影装置10(
図2も参照)から基板30にEthernet(登録商標)信号を送信する場合には、RJ45コネクタに接続されたコイルが一次コイルになり、イーサネット(登録商標)ICに接続されたコイルが二次コイルになる。逆に、基板30からX線撮影装置10にEthernet(登録商標)信号を送信する場合には、イーサネット(登録商標)ICに接続されたコイルが一次コイルになり、RJ45コネクタに接続されたコイルが二次コイルになる。
【0029】
なお、X線撮影装置10として放射線装置から配線したケーブル(
図2ではEthernet(登録商標)ケーブル51,52)を接続するコネクタで絶縁を基板30に対して行ったが、少なくとも放射線装置から配線したケーブルを接続するコネクタで絶縁を基板に対して行うのであれば、コンピュータから配線したケーブルを接続するコネクタでも絶縁を基板に対して行ってもよい。例えば、
図2のコンピュータ40から配線したEthernet(登録商標)ケーブル53を接続するコネクタでも絶縁を基板30に対して行う。また、コネクタで絶縁を行うことで、X線撮影装置10・基板30間で絶縁したが、2個のコイルが磁気的に結合された変成器をケーブル間に介在させることで、X線撮影装置10・基板30間で絶縁してもよい。
【0030】
図2の説明に戻り、このように、X線撮影装置10から配線したEthernet(登録商標)ケーブル51,52を接続するコネクタで絶縁を基板30に対して行うために、X線撮影装置10と接続するためのX線撮影装置通信部31,36には、Ethernet(登録商標)のRJ45コネクタは絶縁が可能なパルストランス付きを採用する。絶縁が可能なパルストランス付きを採用することで、X線撮影装置10と基板30との間を絶縁する。コンピュータ40の映像信号以外の信号については、基板30上のX線撮影装置通信部31およびコンピュータ通信部32を介してEthernet(登録商標)プロトコルで通信(Ethernet(登録商標)通信)する。
【0031】
コンピュータ40の映像信号については、次の手順でEthernet(登録商標)に変換して、X線撮影装置10に転送する。
1.基板30上の映像信号受信部33は、コンピュータ40のグラフィックカード43から映像信号を受信する。
2.基板30上の画像処理部34で、受信した映像信号に画像処理または画像圧縮、あるいはその両方を必要に応じて行う。
3.基板30上の映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35で映像信号をEthernet(登録商標)プロトコルに変換する。
4.映像信号についてEthernet(登録商標)プロトコルに変換した信号(Ethernet(登録商標)信号)について、基板30上のX線撮影装置通信部36でX線撮影装置10(のLANポート18)とEthernet(登録商標)通信する。
【0032】
以上のように、Ethernet(登録商標)通信で受信したコンピュータ40の映像信号をX線画像に関する信号として画像出力部19に送り込む。そして、当該X線画像に関する信号をX線画像として画像出力部19は出力して、当該X線画像をメモリ部20に書き込んで記憶し、X線画像を表示部21の画面に表示する際に、メモリ部20から読み出して、表示部21の画面に送り込む。
【0033】
後述する実施例2も含めて、本実施例1に係る放射線システム(各実施例ではX線撮影システム1)によれば、放射線装置(各実施例ではX線撮影装置10)と、コンピュータ40と、これらを中継する基板30とを有し、基板30は、コンピュータ40からの電気信号(各実施例では映像信号)をEthernet(登録商標)プロトコルの映像データに変換する変換手段(各実施例では映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35)と、当該映像データを通信により放射線装置(X線撮影装置10)に送信する送信手段(本実施例1ではX線撮影装置通信部36)を有し、基板30と放射線装置(X線撮影装置10)とは、電気的に絶縁されている。基板30を介して放射線装置(X線撮影装置10)・コンピュータ40間でEthernet(登録商標)通信し、コンピュータ40からの電気信号(映像信号)を変換手段(映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35)がEthernet(登録商標)プロトコルの映像データに変換し、当該映像データを通信により送信手段(X線撮影装置通信部36)が放射線装置(X線撮影装置10)に送信することで、コンピュータ40から変換されたEthernet(登録商標)プロトコルの映像データについても放射線装置(X線撮影装置10)が受信することができる。また、放射線装置(X線撮影装置10)・基板30間では電気的に絶縁されているので、コンピュータ40の機種変更時に基板30・コンピュータ40間の安全性を確認することで、放射線装置(X線撮影装置10)全体で安全性を確認する場合と比較して、安全性を確認する工数・費用が小さくなる。その結果、コンピュータ40の機種変更を容易にすることができる。
【0034】
後述する実施例2も含めて、本実施例1では、放射線システム(X線撮影システム1)において、基板30は、コンピュータ40からの電気信号(映像信号)に画像処理を行う、またはコンピュータ40からの電気信号(映像信号)を圧縮する信号処理手段(各実施例では画像処理部34)を備えている。「課題を解決するための手段」の欄でも述べたように、ここでの「信号処理」とは、コンピュータからの電気信号(映像信号)を圧縮する処理も含め、映像に関する一般的な画像処理(例えば拡大・縮小や切り出し)を意味し、放射線装置(X線撮影システム1)特有の画像処理(つまり放射線装置で得られた放射線画像の画像処理、各実施例のようにX線画像の場合にはオフセット補正や階調変換やグリッド除去などの画像処理)と相違することに留意されたい。また、DVI規格では無圧縮の電気信号(映像信号)を送信するように設計されているので、信号処理手段(画像処理部34)にて当該電気信号(映像信号)を圧縮することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図4は、実施例2に係るX線撮影装置のブロック図であり、
図5は、外部にあるコンピュータを含んだ実施例2に係るX線撮影システムのブロック図である。上述した実施例1と共通する構成については、同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、図示を省略する。
【0036】
上述した実施例1では、
図1および
図2に示すようにX線撮影装置10は2つのLANポート17,18を備えているのに対して、本実施例2では、
図4および
図5に示すようにX線撮影装置10は1つのLANポート17のみを備えている。また、上述した実施例1では、
図2に示すように基板30は2つのX線撮影装置通信部31,36を備えているのに対して、本実施例2では、
図5に示すように基板30は1つのX線撮影装置通信部31のみを備えている。
【0037】
また、上述した実施例1では、
図2に示すように、X線撮影装置10のLANポート17と基板30のX線撮影装置通信部31とは、Ethernet(登録商標)ケーブル51を介して電気的に接続され、X線撮影装置10のLANポート18と基板30のX線撮影装置通信部36とは、Ethernet(登録商標)ケーブル52を介して電気的に接続されており、2つのEthernet(登録商標)ケーブル51,52を介してX線撮影装置10と基板30とは電気的に接続されている。これに対して、本実施例2では、
図5に示すように、X線撮影装置10のLANポート17と基板30のX線撮影装置通信部31とは、Ethernet(登録商標)ケーブル51を介して電気的に接続されており、1つのEthernet(登録商標)ケーブル51のみをX線撮影装置10と基板30とは電気的に接続されている。
【0038】
本実施例2では、
図4および
図5に示すように、X線撮影装置10のLANポート17は、画像処理部14,CPU16および画像出力部19に接続されている。また、
図5に示すように、基板30は、信号を調停する信号調停部38を備えている。信号調停部38は、この発明における信号調停手段に相当する。
【0039】
信号調停部38は、スイッチングハブで構成されている。信号調停部38は、X線撮影装置通信部31,コンピュータ通信部32および映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35に接続されている。CPU37については、図示を省略する。
【0040】
本実施例2でのコンピュータ40の映像信号以外の信号については、基板30上のX線撮影装置通信部31,信号調停部38およびコンピュータ通信部32を介してEthernet(登録商標)プロトコルで通信(Ethernet(登録商標)通信)する。
【0041】
本実施例2でのコンピュータ40の映像信号については、次の手順でEthernet(登録商標)に変換して、X線撮影装置10に転送する。
1.基板30上の映像信号受信部33は、コンピュータ40のグラフィックカード43から映像信号を受信する。
2.基板30上の画像処理部34で、受信した映像信号に画像処理または画像圧縮、あるいはその両方を必要に応じて行う。
3.基板30上の映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35で映像信号をEthernet(登録商標)プロトコルに変換する。
4.映像信号についてEthernet(登録商標)プロトコルに変換した信号(Ethernet(登録商標)信号)について、信号調停部38を介して基板30上のX線撮影装置通信部31でX線撮影装置10(のLANポート17)とEthernet(登録商標)通信する。
【0042】
このように、信号調停部38で、コンピュータ40の映像信号をEthernet(登録商標)プロトコルに変換した信号(Ethernet(登録商標)信号)と、X線撮影装置10からのEthernet(登録商標)信号と、コンピュータ40からのEthernet(登録商標)信号とを調停する。
【0043】
本実施例2での主たる作用・効果および信号処理手段(各実施例では画像処理部34)を備えた作用・効果については、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。
【0044】
本実施例2のように、放射線システム(各実施例ではX線撮影システム1)において、基板30は、コンピュータ40からの電気信号(各実施例では映像信号)から変換手段(各実施例では映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35)で変換されたEthernet(登録商標)プロトコルの映像データと、放射線装置(各実施例ではX線撮影装置10)から通信手段(本実施例2ではX線撮影装置通信部31)を介したデータ(各実施例ではEthernet(登録商標)信号)と、コンピュータ40から通信手段(各実施例ではコンピュータ通信部32)を介したデータ(各実施例ではEthernet(登録商標)信号)とを調停する信号調停手段(本実施例2では信号調停部38)を備えるのが好ましい。
【0045】
「課題を解決するための手段」の欄でも述べたように、本明細書では「信号調停」とは信号の転送方向を制御することを意味する。この場合、信号調停によって、変換手段(映像信号−Ethernet(登録商標)変換部35)で変換されたEthernet(登録商標)プロトコルの映像データも含め、通信手段(コンピュータ通信部32)を介したコンピュータからのデータ(Ethernet(登録商標)信号)を、1つのケーブル(
図5ではEthernet(登録商標)ケーブル51)を介して放射線装置(X線撮影システム1)が受信することができるとともに、同一のEthernet(登録商標)ケーブル51を介して放射線装置(X線撮影システム1)からデータ(Ethernet(登録商標)信号)を基板30、さらにはコンピュータ40に送信することができる。その結果、放射線装置(X線撮影システム1)・基板30間の接続が1つのEthernet(登録商標)ケーブル51のみとなり、ケーブル数の削減となる。
【0046】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0047】
(1)上述した各実施例では、放射線装置としてX線撮影装置を例に採って説明するとともに、放射線システムとしてX線撮影システムを例に採って説明したが、X線以外の放射線(α線,β線,γ線など)装置に適用してもよい。
【0048】
(2)上述した各実施例では、撮影に適用したが、撮影よりも弱い線量で放射線(各実施例ではX線)を照射して複数の投影データを逐次に取得して、各々の投影データをリアルタイムに表示(動画表示)する透視に適用してもよい。
【0049】
(3)上述した各実施例では、人体または小動物などの被検体を撮影する医用のX線撮影装置・X線撮影システムに適用したが、基板などの被検体を透視・撮影する工業用や産業用の放射線装置・放射線システムに適用してもよい。
【0050】
(4)上述した各実施例では、
図1や
図4に示す撮影態様であったが、CT(Computed Tomography) 撮影やトモシンセシス(tomosynthesis) などの断層撮影に例示されるように、透視・撮影態様については特に限定されない。
【0051】
(5)上述した各実施例では、基板は、コンピュータの電気信号(映像信号)に画像処理を行う、またはコンピュータの電気信号(映像信号)を圧縮する信号処理手段(各実施例では画像処理部34)を備えたが、DVI規格以外の規格で圧縮の電気信号(映像信号)を送信することでコンピュータの電気信号(映像信号)を圧縮する処理が必要でない場合、あるいは映像に関する一般的な画像処理(例えば拡大・縮小や切り出し)を行う必要がない場合、必ずしも信号処理手段(画像処理部34)を備える必要はない。
【0052】
(6)上述した各実施例では、通信プロトコルとして、イーサネット(登録商標)プロトコルを例に採って説明したが、通常において用いられる通信プロトコルであれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 … X線撮影システム
10 … X線撮影装置
30 … 基板
31,36 … X線撮影装置通信部
32 … コンピュータ通信部
34 … 画像処理部
35 … 映像信号−Ethernet(登録商標)変換部
38 … 信号調停部
51〜53 … Ethernet(登録商標)ケーブル