特許第6519663号(P6519663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519663
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】表示装置およびX線CT装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20190520BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20190520BHJP
   G01N 23/083 20180101ALI20190520BHJP
【FI】
   G01N23/04 340
   G01N23/046
   G01N23/083
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-548583(P2017-548583)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2015081230
(87)【国際公開番号】WO2017077627
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】原田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大西 修平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
(72)【発明者】
【氏名】欅 泰行
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−80971(JP,A)
【文献】 特開2004−279058(JP,A)
【文献】 特開平11−126697(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/033028(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0257713(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
G01N 23/046
G01N 23/083
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CT装置に用いられるCT用ソフトウェア機能を有した表示装置であって、
複数のCT撮像条件のプリセットが登録されたコントロールを、画質に関連する2次元の指標にて表示画面に配置するように構成し、
前記コントロールを選択することにより、選択された当該コントロールに対応したCT撮像条件を設定するように構成する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記指標は、空間分解能および濃度分解能であることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置において、
前記CT撮像条件を選択した際に、選択された当該条件に対応した出力画像の目安となるイメージ図としてプレビュー画像を表示することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置において、
前記コントロールをアイコンとして表示画面に各指標毎に沿って縦横に並べて配置することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表示装置において、
前記コントロールを、各指標毎に独立で表示することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の表示装置において、
設定された前記CT撮像条件を表示する撮像条件表示手段を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表示装置において、
設定された前記CT撮像条件を決定するための入力を行う撮像条件入力決定手段を備え、
当該撮像条件入力決定手段への入力により、決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行う
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の表示装置において、
材質の選択が可能なコントロールを表示画面にさらに設け、
当該コントロールを選択した際に、選択された当該コントロールに対応した各材質毎にCT撮像条件を設定する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表示装置において、
前記材質の選択が可能なコントロールは、ドロップダウンリスト,コンボボックス,ラジオボタン,チェックボックスまたはタブであることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の表示装置において、
登録されたCT撮像条件のプリセットを編集可能に構成することを特徴とする表示装置。
【請求項11】
対象物に照射するためのX線を発生するX線源と、前記対象物を載置するステージと、前記X線源から前記対象物に照射されて透過したX線を検出するX線検出器と、CT撮像条件を設定する機能を含むCT用ソフトウェア機能を有する表示装置と、前記X線検出器で検出されたデータから前記対象物のCT像を再構成する再構成処理部を備えるX線CT装置において、
前記表示装置は請求項1から請求項10のいずれかに記載された表示装置であることを特徴とするX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)装置に用いられるCT用ソフトウェア機能を有した表示装置およびX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、CT用ソフトウェア機能を有した表示装置(グラフィカルユーザインタフェース)は産業用X線CT装置に用いられる。なお、X線透視撮影装置は、1枚の投影データを取得してX線撮影を行う、あるいはX線を照射して複数の投影データを逐次に取得して、各々の投影データをリアルタイムに表示(動画表示)するX線透視を行う。よって、X線透視を行う場合には、投影データが最適な画像であるか否かをX線透視の途中でモニタリングにより確認することができる。したがって、撮像条件が適切でなかったとしても、モニタリングの結果から撮像条件をX線透視の途中で変更することも可能である。
【0003】
それに対して、X線CT装置は、(例えば600枚〜2400枚程度の)複数の投影データを用いて再構成処理を行って再構成画像(CT画像)を取得する。よって、X線透視撮影装置とは異なり、X線CT装置によってCT撮像を行う場合には、CT撮像が終了して、かつ再構成処理が終了した後でないと、再構成画像が最適な画像であるか否かを確認することができない。したがって、CT撮像条件が適切でなかった場合には、CT撮像および再構成処理を最初からやり直さなければならない。CT撮像を再度行ったとしても、再設定(変更)されたCT撮像条件が最適であるか否かは、再撮像後の再構成画像を確認しないと判らず、場合によっては、最適な再構成画像が得られるまでCT撮像を何回も繰り返さなければならない。
【0004】
そこで、CT撮像前に最適なCT撮像条件を予め設定する必要がある。従来のX線CT装置では、最適なCT撮像条件を設定する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。通常、設定されたCT撮像条件が最適であるとユーザが判断したら、グラフィカルユーザインタフェース(GUI: Graphical User Interface)の表示画面に表示された撮像条件入力決定ボタンをユーザがクリックすることにより、当該CT撮像条件を決定するための入力を行う。そして、決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行う。
【0005】
産業用X線CT装置では、様々な材質、構造を撮像対象とし、画像に求められる分解能(空間分解能や濃度分解能)、撮像時間も様々であるので、撮像条件の自由度が高く、以下のような撮像条件を対象物(ワーク)毎に設定する必要がある。
・X線条件。ここで、X線条件として、X線を発生するX線管の管電流や管電圧がある。
・露光時間。ここで、露光時間はX線の正味の照射時間である。
・ビュー数。
・アベレージ数。ここで、上述したビュー数およびアベレージ数の関係は、以下の通りである。すなわち、同一の投影角度毎または対象となる投影角度の近傍(対象となる投影角度の撮像時間の前後の投影角度)を含んだ投影角度毎のアベレージ数で平均された数がビュー数となり、ビュー数×アベレージ数がCT撮像に必要な撮像枚数となる。例えば、ビュー数が600,アベレージ数が3の場合には、CT撮像に必要な撮像枚数は1800(=600×3)枚となる。なお、対象となる投影角度の近傍を含んだ各投影角度で投影データを平均する場合には、各々の投影角度での投影データを、対象となる同一の投影角度での投影データと近似してみなす。
・スライス厚。
・BH校正データの選択。ここで、BH校正とは、「ビームハードニング補正」のことを示す。なお、本明細書でのビームハードニング補正は、画像処理ソフトウェア(画像処理アルゴリズム)での補正を意味する。
・スケーリング係数。ここで、本明細書でのスケーリング係数は、階調補正(「ガンマ補正」とも呼ばれる)に用いられる応答特性を意味する。
【0006】
その他に、撮像条件として、X線管の焦点位置からX線検出器に垂線を下ろしたときに、当該垂線方向の焦点位置からX線検出器までの距離(SDD: Source to Detector Distance)や、X線管の焦点位置から対象物の回転中心までの距離(SRD: Source to Rotation center Distance)や、CTにおけるスキャンモード(例えば、コーンピームCT(CBCT))や、スキャン回数や、総スキャン時間などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−112627号公報
【特許文献2】特開2011−080971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、撮像条件の設定項目が多く、条件設定に手間がかかるという問題点がある。また、産業用X線CT装置を十分に理解していない(経験が浅い)ユーザが撮像条件を設定する際に、どの設定が最適であるかを判断することができないという問題点がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができるCT用ソフトウェア機能を有した表示装置およびX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明の表示装置は、X線CT装置に用いられるCT用ソフトウェア機能を有した表示装置であって、複数のCT撮像条件のプリセットが登録されたコントロールを、画質に関連する2次元の指標にて表示画面に配置するように構成し、前記コントロールを選択することにより、選択された当該コントロールに対応したCT撮像条件を設定するように構成することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の表示装置によれば、複数のCT撮像条件がプリセットとして予め作成されており、各々のプリセットがコントロールにそれぞれ対応づけられて登録されている。各々のコントロールを、画質に関連する2次元の指標にて表示画面に配置し、ユーザが任意のコントロールを選択することにより、選択された当該コントロールに対応したCT撮像条件が選択される。指標は、画質に関連するものであり、2次元からなるので、CT撮像条件を十分に理解していないユーザでも、コントロールを視覚で確認して選択するだけで、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で選択して設定することができる。また、CT撮像した後に、さらなる画質改善を求めて再撮像する場合、求められる画質に対して何を選択するのかが明確になっているので、CT撮像条件を簡単に変更することができる。その結果、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる。
【0012】
ここで、本明細書でのコントロールは、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)における仮想的なツールを意味し、「ウィジェット(Widget)」とも呼ばれる。選択を含んだ入力設定を行うコントロールとして、例えば、アイコンやドロップダウンリストやコンボボックスやラジオボタンやチェックボックスやタブなどがある。
【0013】
アイコンは、物事を簡単な絵柄で記号化して表現したものである。ドロップダウンリストは、ユーザが一覧から1つの値を選択することを可能にしたものである。コンボボックスは、ユーザが値を直接入力することもできるし、既存のオプションから選択することもできるようにしたものである。ラジオボタンは、「オプションボタン」とも呼ばれ、事前定義された選択肢のうち1つを選択する場合に使用され、1つのボタンを選択(押下)すると、前回に選択(押下)されていたボタンが選択(押下)されていない状態に戻り、常に1つのボタンのみが選択(押下)されるようにしたものである。チェックボックスは、いくつかあるオプションから複数の項目を選択するのに使用されるようにしたものである。タブは、ドキュメントを切り替えて表示するためのものであり、タブの選択により管理するドキュメントを切り替えて表示させる仕組みとなっているものである。
【0014】
上述した本発明の表示装置における指標の一例は、空間分解能および濃度分解能(すなわちコントラスト)である。ユーザが空間分解能,濃度分解能の少なくともいずれか一方に対応した任意のコントロールを選択することにより、選択された当該コントロールに対応したCT撮像条件が選択される。指標は、画質に関連した空間分解能および濃度分解能であり、2次元からなるので、CT撮像条件を十分に理解していないユーザでも、コントロールを視覚で確認して選択するだけで、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で選択して設定することができる。また、CT撮像した後に、さらなる画質改善を求めて再撮像する場合、画像に求められる空間分解能または濃度分解能に対して何を選択するのかが明確になっているので、CT撮像条件を簡単に変更することができる。その結果、空間分解能,濃度分解能の少なくともいずれか一方に対応したコントロールを選択することにより、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる。
【0015】
また、上述した本発明の表示装置において、CT撮像条件を選択した際に、選択された当該条件に対応した出力画像の目安となるイメージ図としてプレビュー画像を表示するのが好ましい。選択された当該条件に対応した出力画像の目安となるイメージ図としてプレビュー画像を表示することにより、選択された条件でどのような出力画像が得られるかのイメージ図としてプレビュー画像を表示することができ、CT撮像条件を選択した際にどのように出力画像が変化するのかを表示することができる。また、CT撮像や再構成処理しなくてもプレビュー画像からどのような出力画像が得られるかを確認することができる。
【0016】
また、上述した本発明の表示装置において、コントロールをアイコンとして表示画面に各指標毎に沿って縦横に並べて配置するのが好ましい。上述したように、アイコンは、物事を簡単な絵柄で記号化して表現したものであるので、ユーザがアイコンを認識しやすく、最適なCT撮像条件をより一層直感的に設定することができる。
【0017】
また、上述した本発明の表示装置において、コントロールを、各指標毎に独立で表示してもよい。例えば、指標が上述した空間分解能(すなわち解像度)および濃度分解能(コントラスト)である場合に、解像度、コントラストのそれぞれの設定の組み合わせにて、撮像条件をそれぞれ設定することができる。
【0018】
また、上述した本発明の表示装置において、設定されたCT撮像条件を表示する撮像条件表示手段を備えるのが好ましい。設定されたCT撮像条件を確認するとともに、その場で修正することもできる。
【0019】
また、上述した本発明の表示装置において、設定されたCT撮像条件を決定するための入力を行う撮像条件入力決定手段を備え、当該撮像条件入力決定手段への入力により、決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行う。設定されたCT撮像条件が最適であるとユーザが判断したら、撮像条件入力決定手段への入力を行うことにより、当該CT撮像条件を決定するための入力を行う。そして、決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行う。
【0020】
また、上述したこれらの発明の表示装置において、材質の選択が可能なコントロールを表示画面にさらに設け、当該コントロールを選択した際に、選択された当該コントロールに対応した各材質毎にCT撮像条件を設定するのが好ましい。コントロールを材質毎にさらに設け、画質に関連する2次元の指標に合わせてコントロールを配置する。コントロールを選択することにより、指標および材質に対応したCT撮像条件設定に必要なパラメータが全て設定される。したがって、CT撮像条件を十分に理解していないユーザでも、対象物(ワーク)の材質・求められる画像の画質から最適なCT撮像条件を選択することができる。
【0021】
また、上述した本発明の表示装置における材質の選択が可能なコントロールの一例は、ドロップダウンリスト,コンボボックス,ラジオボタン,チェックボックスまたはタブである。ドロップダウンリスト,コンボボックス,ラジオボタン,チェックボックスまたはタブで、材質の選択が可能なコントロールを構成することにより、材質の選択が可能なコントロールをユーザが選択しやすく、材質・画質から最適なCT撮像条件を選択することができる。
【0022】
また、上述したこれらの発明の表示装置において、登録されたCT撮像条件のプリセットを編集可能に構成してもよい。このように構成することにより、例えば、ユーザが、プリセットを任意に変更あるいは追加することができ、さらに、選択する材質の内容を任意に変更あるいは材質の種類を任意に追加することもできる。
【0023】
また、上述したこれらの発明の表示装置を備えたX線CT装置に適用することができる。
すなわち、本発明のX線CT装置は、対象物に照射するためのX線を発生するX線源と、前記対象物を載置するステージと、前記X線源から前記対象物に照射されて透過したX線を検出するX線検出器と、CT撮像条件を設定する機能を含むCT用ソフトウェア機能を有する表示装置と、前記X線検出器で検出されたデータから前記対象物のCT像を再構成する再構成処理部を備えるX線CT装置において、前記表示装置は請求項1から請求項10のいずれかに記載された表示装置である。
【0024】
本発明のX線CT装置によれば、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる本発明の表示装置を備えることにより、CT撮像前に最適なCT撮像条件を予め設定することができる。したがって、CT撮像を再度行う必要がない。また、たとえCT撮像条件が適切でなかったとしても、例えばプレビュー画像を表示することにより、CT撮像前にCT撮像条件を再設定(変更)することができ、最適な再構成画像が得られるまでCT撮像を何回も繰り返す必要がない。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る表示装置によれば、複数のCT撮像条件がプリセットとして予め作成されており、各々のプリセットがコントロールにそれぞれ対応づけられて登録されている。各々のコントロールを、画質に関連する2次元の指標にて表示画面に配置し、ユーザが任意のコントロールを選択することにより、選択された当該コントロールに対応したCT撮像条件が選択される。指標は、画質に関連するものであり、2次元からなるので、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる。
また、本発明に係るX線CT装置によれば、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる本発明の表示装置を備えることにより、CT撮像前に最適なCT撮像条件を予め設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例に係るX線CT装置の概略図および表示装置のブロック図である。
図2】実施例に係る表示装置におけるCT撮像条件設定画面の一態様である。
図3】実施例に係るCT撮像条件設定のフローチャートである。
図4】アイコンおよびそれに登録されたプリセットに関するテーブルの一態様である。
図5】変形例に係る表示装置におけるCT撮像条件設定画面の一態様である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、実施例に係るX線CT装置の概略図および表示装置のブロック図である。
【0028】
図1に示すように、本実施例に係るX線CT装置1は、対象物Oを撮像する撮像部2と、対象物Oを載置するステージ3と、そのステージ3を駆動するステージ駆動部4と、撮像部2を駆動する撮像駆動部5と、撮像部2のX線管21に管電流や管電圧を与えるために高電圧を発生する高電圧発生部6と、撮像部2のX線検出器22によって得られた投影データに対して再構成処理を行う再構成処理部7とを備えている。
【0029】
撮像部2は、対象物OにX線を照射するX線管21と、X線管21から照射され対象物Oを透過したX線を検出するX線検出器22とを備えている。X線検出器22については、イメージインテンシファイア(I.I)やフラットパネル型X線検出器(FPD: Flat Panel Detector)などに例示されるように、特に限定されない。本実施例では、X線検出器22としてフラットパネル型X線検出器(FPD)を例に採って説明する。X線管21は、本発明におけるX線源に相当する。
【0030】
FPDは、画素に対応して縦横に並べられた複数の検出素子からなり、X線を検出素子が検出して、検出されたX線のデータ(電荷信号)をX線検出信号として出力する。このようにして、X線管21からX線を対象物Oに向けて照射し、FPDからなるX線検出器22がX線を検出してX線検出信号を出力する。そして、X線検出信号に基づく画素値を画素(検出素子)に対応付けて並べることで投影データを取得する。
【0031】
ステージ駆動部4は、図示を省略するモータや駆動軸などから構成され、ステージ3を図中のZ軸心周りに水平面内で回転させる。ステージ3の水平面内での回転によって対象物OもZ軸心周りに水平面内で回転し、複数の投影データを取得する。
【0032】
撮像駆動部5は、ステージ駆動部4と同様に、図示を省略するモータや駆動軸などから構成されている。X線検出器22にX線管21が対向するようにそれぞれを移動させてX線CT撮影を行う。また、X線管21またはX線検出器22を水平方向(図中のX方向)に移動させて、X線CT撮影における拡大率を変更することも可能である。また、X線管21またはX線検出器22をX軸に対して傾斜させて、対象物Oの斜め方向から撮像することも可能である。
【0033】
高電圧発生部6は、高電圧を発生させて管電流や管電圧をX線管21に与えることで、X線管21からX線が発生して、対象物Oに対してX線を照射する。再構成処理部7は、複数の投影データを用いて、フィルター補正逆投影法(FBP: Filtered Back Projection) ,逐次近似法あるいはそれらを組み合わせた手法などの公知の再構成処理を実行することで、対象物Oに関する再構成画像を取得する。
【0034】
X線CT装置1に用いられるCT用ソフトウェア機能を有した表示装置30は、メモリ部8と入力部9とモニタ10とコントローラ11とを備えている。そしてオペレータ(ユーザ)の操作環境としては、表示装置30はグラフィカルユーザインタフェース(GUI)で構成されている。
【0035】
メモリ部8は、コントローラ11を介して、X線検出器22で得られた投影データや再構成処理部7で得られた再構成画像などのデータを書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出して、コントローラ11を介して、投影データや再構成画像をモニタ10に送り込んで出力する。メモリ部8は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)やハードディスクなどに代表される記憶媒体で構成されている。
【0036】
その他に、本実施例では、メモリ部8は、アイコンおよびそれに登録されたプリセットに関するプリセットテーブル8Aを備えている。CT撮像条件を設定する際に、コントローラ11を介して、プリセットテーブル8Aに記憶されたアイコンおよび複数のCT撮像条件のプリセットをモニタ10の表示画面(すなわち、図2のCT撮像条件設定画面10A)に読み出す。
【0037】
このように、複数のCT撮像条件のプリセットが登録されたアイコンを、画質に関連する2次元の指標として空間分解能および濃度分解能にてモニタ10の表示画面(図2のCT撮像条件設定画面10A)に配置するように表示装置30を構成する。そして、アイコンを選択することにより、選択された当該アイコンに対応したCT撮像条件を設定するように表示装置30を構成する。具体的なCT撮像条件設定については詳しく後述する。
【0038】
入力部9は、ユーザが入力したデータや命令をコントローラ11に送り込む。入力部9は、キーボードと、マウスやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。
【0039】
モニタ10は、本実施例のCT撮像条件設定のための画面(すなわち、図2のCT撮像条件設定画面10A)が表示されるように構成されている。その他に、CT撮像した後に、投影データや再構成画像をモニタ10に表示する。CT撮像条件設定画面についても詳しく後述する。
【0040】
コントローラ11は、X線CT装置1および表示装置30を構成する各部分を統括制御する。上述したように、CT撮像条件を設定する際に、コントローラ11を介して、プリセットテーブル8Aに記憶されたアイコンおよび複数のCT撮像条件のプリセットをモニタ10の表示画面に読み出す。そして、後述する撮像条件入力決定ボタン10f(図2を参照)をユーザがクリックすることにより、当該CT撮像条件を決定するための入力を行い、決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行うために、CT撮像条件に基づく制御命令をコントローラ11からステージ駆動部4や撮像駆動部5や高電圧発生部6に送り込む。なお、CT撮像した後には、X線検出器22で得られた投影データや再構成処理部7で得られた再構成画像などのデータを、コントローラ11を介して、メモリ部8に書き込んで記憶、あるいはモニタ10に送り込んで出力表示する。
【0041】
本実施例では、再構成処理部7やコントローラ11は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。なお、再構成処理部7については、GPU(Graphics Processing Unit) などで構成されてもよい。
【0042】
次に、CT撮像条件設定について、図2図4を参照して説明する。図2は、実施例に係る表示装置におけるCT撮像条件設定画面の一態様であり、図3は、実施例に係るCT撮像条件設定のフローチャートであり、図4は、アイコンおよびそれに登録されたプリセットに関するテーブルの一態様である。
【0043】
図2に示すように、モニタ10は、CT撮像条件設定画面10Aが表示されるように構成されており、複数(図2では9つ)のアイコン10aをCT撮像条件設定画面10A(表示画面)に配置している。複数(本実施例では9つ)のCT撮像条件がプリセットとして予め作成されており、各々のプリセットがアイコン10aにそれぞれ対応づけられて登録されている。各々のアイコン10aを、画質に関連する2次元の指標にてCT撮像条件設定画面10A(表示画面)に配置している。
【0044】
本実施例では、当該指標は空間分解能(すなわちCT画像サイズ)10bおよび濃度分解能(コントラスト)10cであり、アイコン10aをCT撮像条件設定画面10A(表示画面)に各指標(空間分解能10bおよび濃度分解能10c)毎に沿って縦横に並べて配置している。図2では、横軸を空間分解能10bとするとともに、縦軸を濃度分解能10cとして、3×3のアイコン10aを縦軸・横軸に沿って縦横に並べて配置している。
【0045】
なお、撮像時間を表すアイコンをプリセットに対応づけて、各々のアイコン10aに併記してもよい。ユーザが任意のアイコン10aを例えばマウスでクリックして選択すると、選択されたアイコン10aとそれ以外の残りのアイコン10aとを区別するために、選択されたアイコン10aをハイライト表示(強調表示)するのが好ましい。
【0046】
また、CT撮像条件を選択した際に、選択された当該条件に対応した出力画像の目安となるイメージ図としてプレビュー画像10dを表示する。イメージ図については、特に限定されない。例えば、予め得られた再構成画像をイメージ図としてもよいし、写真や模式図をイメージ図としてもよい。
【0047】
また、設定されたCT撮像条件を表示する撮像条件表示部10eをCT撮像条件設定画面10A(表示画面)に表示する。図2では、CT撮像条件設定画面10A(表示画面)の右側に撮像条件表示部10eを表示しているが、撮像条件表示部10eの表示位置については、特に限定されない。なお、図中に記載されている「スキャン回数」とは、対象物(ワーク)の高さを変えながら複数回CT撮像する回数のことを示し、「マルチ積算回数」とは、同じ位置で複数回CT撮像する回数のことを示し、「BHCデータ」とは、ビームハードニング補正データのことを示す。撮像条件表示部10eは、本発明における撮像条件表示手段に相当する。
【0048】
また、撮像条件入力決定ボタン10f(図2では「スタート」で表記)をCT撮像条件設定画面10A(表示画面)に表示する。撮像条件入力決定ボタン10fは、本発明における撮像条件入力決定手段に相当する。図2における「スタート」ボタンはCT撮像の実行を開始する機能を兼ねているので、このボタンを押すことによってCT撮像が開始される。
【0049】
また、撮像対象の材質の選択が可能なドロップダウンリスト10gをCT撮像条件設定画面10A(表示画面)に表示する。図2では、材質として樹脂を選択しているが、その他に例えば軽金属や重金属や電子部品・電器部品などがドロップダウンリスト10gに一覧表示されており、樹脂を含むこれらから1つを選択することが可能である。
【0050】
その他に、項目10hをCT撮像条件設定画面10A(表示画面)に表示する。図2では、CT撮像条件設定画面10A(表示画面)の上側に項目10hを表示しているが、項目10hの表示位置については、特に限定されない。また、項目10hに表示する内容についても、特に限定されない。例えば、図2に示すように、選択された材質(図2では樹脂)を項目10hの左側に表示し、設定された空間分解能(CT画像サイズ)(図2ではボクセルサイズ)を項目10hの中央に表示し、設定された総スキャン時間を項目10hの右側に表示する。
【0051】
撮像条件は、概略、図3のフローチャートに示すように決定される。まず材質を選択する(ステップS1)。次に2次元に配置された撮像条件アイコンの中から目的に合ったアイコンを選択する(ステップS2)。そうすると個別の撮像条件が撮像条件表示部に表示されるからそれを確認する(ステップS3)。その撮像条件が適当であれば撮像条件の設定は終了する。もし条件が不適当であると思われる場合にはステップS2に戻って撮像条件アイコンを選択しなおす。撮像条件の一部を変更する場合には、撮像条件表示部に表示された条件を直接変更するようにしてもよい。
【0052】
撮像条件の設定を例示する。材質が樹脂である場合について述べる。図4に示すように、プリセット01をアイコン01に対応づけて登録する。以下、同様にプリセット02をアイコン02に対応づけて登録し、以下同様に最終的にプリセット09をアイコン09に対応づけて登録したら、樹脂毎に9つのプリセット01〜09をアイコン01〜09に対応づけて登録したテーブルを作成する。同様に、他の材質として、例えば軽金属毎に9つのプリセット11〜19をアイコン11〜19に対応づけて登録したテーブルを作成し、重金属毎に9つのプリセット21〜29をアイコン21〜29に対応づけて登録したテーブルを作成する。このテーブル作成作業は装置の工場出荷時に行われて、予め設定されているので、必ずしもオペレータ(ユーザ)が個別に行う必要はない。
【0053】
(ステップS1)材質の選択
撮像する対象物(ワーク)から材質を選択する。例えば、対象物が樹脂で構成されている場合には、ユーザはドロップダウンリスト10g(図2を参照)をクリックして一覧から樹脂を選択する。プリセットテーブル8A(図1を参照)に記憶された、樹脂毎に9つのプリセット01〜09をアイコン01〜09に対応づけて登録したテーブル(図4を参照)をCT撮像条件設定画面10A(図2を参照)に読み出す。
【0054】
(ステップS2)撮像条件アイコンの選択
ユーザは、CT撮像条件設定画面10A(表示画面)に配置されたアイコン10a(図2を参照)から該当するアイコンをクリックして選択する。選択された当該アイコンに対応したCT撮像条件を撮像条件表示部10e(図2を参照)に表示する。このとき、プレビュー画像10d(図2を参照)を表示し、CT撮像条件の空間分解能や総スキャン時間を項目10h(図2を参照)に表示する。
【0055】
(ステップS3)撮像条件の確認
ユーザは、プレビュー画像10d、撮像条件表示部10eに表示されたCT撮像条件(撮像時間や分解能など)から撮像条件を確認する。
【0056】
撮像条件が適切でないとユーザが判断(図3では「NG」で表記)したら、ステップS2に戻る。撮像条件が最適であるとユーザが判断(図3では「OK」で表記)したら、撮像条件入力決定ボタン10f(図2を参照)をユーザがクリックすることにより、当該CT撮像条件を決定して、一連の撮像条件設定を終了する(図3では「End」で表記)。
【0057】
そして、図2に表示されたスタートボタン10fを押すと、図3のステップS1〜S3で決定された当該CT撮像条件に基づく制御命令をコントローラ11(図1を参照)からステージ駆動部4(図1を参照)や撮像駆動部5(図1を参照)や高電圧発生部6(図1を参照)に送り込んで、CT撮像条件に基づいてCT撮像を行う。
【0058】
本実施例に係る表示装置30によれば、複数のCT撮像条件がプリセットとして予め作成されており、各々のプリセットがコントロール(図2ではアイコン10a)として予め作成されており、各々のプリセットがコントロール(アイコン10a)にそれぞれ対応づけられて登録されている。各々のコントロール(アイコン10a)を、画質に関連する2次元の指標(本実施例では図2に示す空間分解能10bおよび濃度分解能10c)にて表示画面(図2ではCT撮像条件設定画面10A)に配置し、ユーザが任意のコントロール(アイコン10a)を選択することにより、選択された当該コントロール(アイコン10a)に対応したCT撮像条件が選択される。指標は、画質に関連するものであり、2次元からなるので、CT撮像条件を十分に理解していないユーザでも、コントロール(アイコン10a)を視覚で確認して選択するだけで、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で選択して設定することができる。また、CT撮像した後に、さらなる画質改善を求めて再撮像する場合、求められる画質に対して何を選択するのかが明確になっているので、CT撮像条件を簡単に変更することができる。その結果、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる。
【0059】
ここで、本明細書でのコントロールは、「課題を解決するための手段」の欄でも述べたように、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)における仮想的なツールを意味し、「ウィジェット(Widget)」とも呼ばれる。選択を含んだ入力設定を行うコントロールとして、本実施例では、図2に示すようにアイコン10aを用いている。上述したように、アイコン10aは、物事を簡単な絵柄で記号化して表現したものである。
【0060】
本実施例では、指標は、図2に示すように空間分解能(CT画像サイズ)10bおよび濃度分解能(コントラスト)10cである。ユーザが空間分解能,濃度分解能の少なくともいずれか一方に対応した任意のコントロール(アイコン10a)を選択することにより、選択された当該コントロール(アイコン10a)に対応したCT撮像条件が選択される。指標は、画質に関連した空間分解能10bおよび濃度分解能10cであり、2次元からなるので、CT撮像条件を十分に理解していないユーザでも、コントロール(アイコン10a)を視覚で確認して選択するだけで、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で選択して設定することができる。また、CT撮像した後に、さらなる画質改善を求めて再撮像する場合、画像に求められる空間分解能10bまたは濃度分解能10cに対して何を選択するのかが明確になっているので、CT撮像条件を簡単に変更することができる。その結果、空間分解能10b,濃度分解能10cの少なくともいずれか一方に対応したコントロール(アイコン10a)を選択することにより、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる。
【0061】
また、図2に示すように、CT撮像条件を選択した際に、選択された当該条件に対応した出力画像の目安となるイメージ図としてプレビュー画像10dを表示するのが好ましい。選択された当該条件に対応した出力画像の目安となるイメージ図としてプレビュー画像10dを表示することにより、選択された条件でどのような出力画像が得られるかのイメージ図としてプレビュー画像を表示することができ、CT撮像条件を選択した際にどのように出力画像が変化するのかを表示することができる。また、CT撮像や再構成処理しなくてもプレビュー画像10dからどのような出力画像が得られるかを確認することができる。
【0062】
また、図2に示すように、コントロールをアイコン10aとして表示画面(CT撮像条件設定画面10A)に各指標(空間分解能10bおよび濃度分解能10c)毎に沿って縦横に並べて配置するのが好ましい。上述したように、アイコン10aは、物事を簡単な絵柄で記号化して表現したものであるので、ユーザがアイコン10aを認識しやすく、最適なCT撮像条件をより一層直感的に設定することができる。
【0063】
また、図2に示すように、設定されたCT撮像条件を表示する撮像条件表示手段(図2では撮像条件表示部10e)を備えるのが好ましい。設定されたCT撮像条件を確認するとともに、その場で修正することもできる。
【0064】
また、図2に示すように、設定されたCT撮像条件を決定するための入力を行う撮像条件入力決定手段(図2では撮像条件入力決定ボタン10f)を備え、当該撮像条件入力決定手段(撮像条件入力決定ボタン10f)への入力により、決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行う。設定されたCT撮像条件が最適であるとユーザが判断したら、撮像条件入力決定手段(撮像条件入力決定ボタン10f)への入力を行うことにより、当該CT撮像条件を決定するための入力を行う。そして、決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行う。
【0065】
また、本実施例のように、材質の選択が可能なコントロール(本実施例では図2に示すドロップダウンリスト10g)を表示画面にさらに設け、当該コントロール(ドロップダウンリスト10g)を選択した際に、選択された当該コントロール(ドロップダウンリスト10g)に対応した各材質毎にCT撮像条件を設定するのが好ましい。コントロール(ドロップダウンリスト10g)を材質毎にさらに設け、画質に関連する2次元の指標(空間分解能10bおよび濃度分解能10c)に合わせてコントロール(ドロップダウンリスト10g)を配置する。コントロール(ドロップダウンリスト10g)を選択することにより、指標(空間分解能10bおよび濃度分解能10c)および材質に対応したCT撮像条件設定に必要なパラメータが全て設定される。したがって、CT撮像条件を十分に理解していないユーザでも、対象物(ワーク)の材質・求められる画像の画質から最適なCT撮像条件を選択することができる。
【0066】
また、本実施例では、上述した材質の選択が可能なコントロールは、図2に示すようにドロップダウンリスト10gである。ドロップダウンリスト10gで、材質の選択が可能なコントロールを構成することにより、材質の選択が可能なコントロールをユーザが選択しやすく、材質・画質から最適なCT撮像条件を選択することができる。ドロップダウンリスト10gは、ユーザが一覧から1つの値を選択することを可能にしたものである。
【0067】
また、本実施例に係るX線CT装置1によれば、操作性に優れ、最適なCT撮像条件を直感的に、少ない手順で設定することができる本実施例に係る表示装置30を備えることにより、CT撮像前に最適なCT撮像条件を予め設定することができる。したがって、CT撮像を再度行う必要がない。また、たとえCT撮像条件が適切でなかったとしても、本実施例のように例えばプレビュー画像10dを表示することにより、CT撮像前にCT撮像条件を再設定(変更)することができ、最適な再構成画像が得られるまでCT撮像を何回も繰り返す必要がない。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0069】
(1)上述した実施例では、マウスでクリックすることにより、コントロール(上述した実施例ではアイコン10a)を選択し、ドロップダウンリスト10g(図2を参照)をクリックして一覧から材質を選択したが、入力部9(図1を参照)をタッチパネルで構成することで、モニタ10(図1を参照)が入力部9の機能を兼用して、ユーザがタッチパネルのコントロールを指で押して選択してもよい。
【0070】
(2)上述した実施例では、図1に示す撮影態様であったが、トモシンセシス(tomosynthesis) などに例示されるように、断層撮影に関する撮影態様については特に限定されない。
【0071】
(3)上述した実施例では、複数のCT撮像条件のプリセットが登録されたコントロールとして、図2に示すようにアイコン10aを用いたが、選択を含んだ入力設定を行うコントロールであれば、図2に示すドロップダウンリスト10gをコントロールとして用いてもよい。その他に、選択を含んだ入力設定を行うコントロールとして、例えば、コンボボックスやラジオボタンやチェックボックスやタブなどがある。コンボボックスは、ユーザが値を直接入力することもできるし、既存のオプションから選択することもできるようにしたものである。ラジオボタンは、「オプションボタン」とも呼ばれ、事前定義された選択肢のうち1つを選択する場合に使用され、1つのボタンを選択(押下)すると、前回に選択(押下)されていたボタンが選択(押下)されていない状態に戻り、常に1つのボタンのみが選択(押下)されるようにしたものである。チェックボックスは、いくつかあるオプションから複数の項目を選択するのに使用されるようにしたものである。タブは、ドキュメントを切り替えて表示するためのものであり、タブの選択により管理するドキュメントを切り替えて表示させる仕組みとなっているものである。
【0072】
(4)上述した実施例では、材質の選択が可能なコントロールは、図2に示すようにドロップダウンリスト10gであったが、上述したようなコンボボックス,ラジオボタン,チェックボックスまたはタブであってもよい。
【0073】
(5)上述した実施例では、指標は、図2に示すように空間分解能(CT画像サイズ)10bおよび濃度分解能(コントラスト)10cであったが、画質に関連する2次元の指標であれば、空間分解能や濃度分解能以外でもよい。例えば、明暗や色柄の範囲を表現したダイナミックレンジや、ノイズに関するSN比などから2つのパラメータを選択して、選択された当該パラメータを、画質に関連する2次元の指標として用いてもよい。また、空間分解能または濃度分解能のいずれかから1つのパラメータを選択するとともに、ダイナミックレンジやSN比などから1つのパラメータを選択して、選択されたこれらのパラメータを、画質に関連する2次元の指標として用いてもよい。
【0074】
(6)上述した実施例では、図2に示すように、CT撮像条件を選択した際に、選択された当該条件に対応した出力画像の目安となるイメージ図としてプレビュー画像10dを表示したが、必ずしもプレビュー画像を表示する必要はない。ただし、CT撮像や再構成処理しなくても、どのような出力画像が得られるかを確認するために、上述した実施例のようにプレビュー画像を表示するのが好ましい。
【0075】
(7)上述した実施例では、図2に示すように、コントロールをアイコン10aとして表示画面(CT撮像条件設定画面10A)に各指標(空間分解能10bおよび濃度分解能10c)毎に沿って縦横に並べて配置したが、コントロールを、各指標毎に独立で表示してもよい。例えば、上述した実施例のように、指標が上述した空間分解能(すなわち解像度)および濃度分解能(コントラスト)である場合に、図5に示すように、解像度、コントラストのそれぞれの設定の組み合わせにて、撮像条件をそれぞれ設定することができる。
【0076】
(8)上述した実施例では、設定されたCT撮像条件を表示する撮像条件表示手段(図2では撮像条件表示部10e)を備えたが、必ずしも撮像条件表示手段(撮像条件表示部10e)を備える必要はない。ただし、設定されたCT撮像条件を確認するために、上述した実施例のように撮像条件表示手段(撮像条件表示部10e)を備えるのが好ましい。
【0077】
(9)上述した実施例では、設定されたCT撮像条件を決定するための入力を行う撮像条件入力決定手段(図2では撮像条件入力決定ボタン10f)が撮像開始のボタンを兼ねるものであったが、それぞれを別のボタンとしてもよい。設定されたCT撮像条件が適切でないのにも関わらずCT撮像が自動的に行われてしまうのを防止するために、撮像開始ボタンとは別に撮像条件入力決定手段(撮像条件入力決定ボタン10f)を備えてもよい。すなわち、CT撮像条件が適切であるか否かを確認して、撮像条件が最適であるとユーザが判断した後に、撮像条件入力決定手段(撮像条件入力決定ボタン10f)への入力を行うことにより、当該CT撮像条件を決定するための入力を行い、あらためて撮像開始ボタンが押された時点で決定された当該CT撮像条件に基づいてCT撮像を行うようにしてもよい。
【0078】
(10)上述した実施例では、上述した実施例では、材質の選択が可能なコントロール(上述した実施例では図2に示すドロップダウンリスト10g)を表示画面にさらに設け、当該コントロール(ドロップダウンリスト10g)を選択した際に、選択された当該コントロール(ドロップダウンリスト10g)に対応した各材質毎にCT撮像条件を設定したが、対象物(ワーク)が1種類であれば、必ずしも各材質毎にCT撮像条件を設定する必要はない。
【0079】
(11)ユーザが、プリセットを任意に変更あるいは追加するように構成してもよいし、選択する材質の内容を任意に変更あるいは材質の種類を任意に追加するように構成してもよい。このように、登録されたCT撮像条件のプリセットを編集可能に構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明は、産業用X線CT装置に適している。
【符号の説明】
【0081】
1 … X線CT装置
3 … ステージ
7 … 再構成処理部
8A … プリセットテーブル
10 … モニタ
10A … CT撮像条件設定画面(表示画面)
10a … アイコン
10b … 空間分解能(CT画像サイズ)
10c … 濃度分解能(コントラスト)
10d … プレビュー画像
10e … 撮像条件表示部
10f … 撮像条件入力決定ボタン
10g … ドロップダウンリスト
21 … X線管
22 … X線検出器
30 … 表示装置
O … 対象物
図1
図2
図3
図4
図5