(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6519702
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20190520BHJP
H01R 13/436 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R13/42 F
H01R13/436
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-136083(P2018-136083)
(22)【出願日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年11月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 博崇
(72)【発明者】
【氏名】笹木 仁人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 龍太郎
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−517221(JP,A)
【文献】
実開昭55−065779(JP,U)
【文献】
実開昭55−036551(JP,U)
【文献】
特開2018−120687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42−13/436
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延設されて前端及び後端が外部に開放された挿通孔と、前記前端と前記後端との間において前記挿通孔を外部に連通する連通孔と、を備える絶縁性のハウジングと、
前記挿通孔に挿通され、後方側がケーブルの導電部に接続すると共に前方側が相手側コネクタと接続可能な導電性を有するスリーブと、
前記連通孔に取り付けられ、前記挿通孔に挿通される前記スリーブに係合する絶縁性のリテーナーと、
を有し、
前記スリーブは、
前後方向と交差する方向に突出するフランジ部を備え、
前記ハウジングは、
前記交差する方向に弾性変形可能であると共に、前記フランジ部を前後から挟持して前記スリーブを前記挿通孔に保持する挟持部を備え、
前記リテーナーは、
前記スリーブを前記挿通孔に挿通した際に、前記挟持部が前記交差する方向に弾性変形する位置に設けられる、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、
後方に延設される片持ちの形状の延設部を備え、
前記挟持部は、
前記延設部の後端に設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、
前記リテーナーが取り付けられる取付部を備え、
前記挟持部は、
前記取付部に設けられ、
前記リテーナーは、
前記取付部に対して着脱自在に取り付けられることにより前記弾性変形する位置に設けられる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記挟持部は、
前記フランジ部の前方への移動を規制する規制部を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに接続する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気コネクタにおいて、ケーブルに接続される端子をハウジングに固定する構成としては、ケーブルに接続された端子に設けた突起をハウジングの係合孔に係合して固定するものが知られている。このような構成を有する電気コネクタは、端子をケーブルに接続する前にハウジングにケーブルを挿通しておく必要があるため、製造工程が複雑化すると共に、ケーブルと端子との接続に不具合を生じた場合にはケーブル及び端子のみならずハウジングも廃棄することになるため、コストの上昇を招くという課題を有する。
【0003】
これに対して、特許文献1は、端子4を一次係止する可撓性の係止ランス7を有するコネクタハウジング2と、端子と交差する方向からコネクタハウジング内に挿入され、端子を二次係止するスペーサ6と、を備え、係止ランス7とスペーサ6とが端子4の同一箇所を係止する電気コネクタを開示している。特許文献1の電気コネクタによれば、ケーブルと端子とを接続する前にケーブルをハウジングに挿通しておく必要がないため、製造工程の複雑化を防ぐことができると共に、端子とケーブルとの接続に不具合を生じた場合にハウジングを廃棄する必要をなくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−076800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、係止ランスは端子の後方への移動を規制してはいるものの端子の前方への移動を規制していないため、端子の前方への移動を規制する係止ランス以外の規制部をハウジングに別途設ける必要がある。また、特許文献1においては、このような規制部を設けない場合又は規制部を設けることができない場合には、端子が必要以上に前方に押し込まれてしまい、ハウジングに対する端子の挿入位置が適正ではなくなるという課題を有する。
【0006】
本発明の目的は、コストを上昇させることなく、ハウジングに対してスリーブを適正な位置に保持することができる電気コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気コネクタは、前後方向に延設されて前端及び後端が外部に開放された挿通孔と、前記前端と前記後端との間において前記挿通孔を外部に連通する連通孔と、を備える絶縁性のハウジングと、前記挿通孔に挿通され、後方側がケーブルの導電部に接続すると共に前方側が相手側コネクタと接続可能な導電性を有するスリーブと、前記連通孔に取り付けられ、前記挿通孔に挿通される前記スリーブに係合する絶縁性のリテーナーと、を有し、前記スリーブは、前後方向と交差する方向に突出するフランジ部を備え、前記ハウジングは、
前記交差する方向に弾性変形可能であると共に、前記フランジ部を前後から挟持して前記スリーブを前記挿通孔に保持する挟持部を備
え、前記リテーナーは、前記スリーブを前記挿通孔に挿通した際に、前記挟持部が前記交差する方向に弾性変形する位置に設けられる。
【0008】
フランジ部がハウジングの挟持部によって前方への移動を阻止されると共に後方への移動を阻止されることにより、スリーブがハウジングの適正な位置においてハウジングの挟持部によって前後方向への移動が規制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストを上昇させることなく、ハウジングに対してスリーブを適正な位置に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気コネクタの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電気コネクタの一部を構成するハウジングの側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る電気コネクタの一部を構成するスリーブの斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る電気コネクタの一部を構成するスリーブの側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る電気コネクタの一部を構成するリテーナーの斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電気コネクタの一部を拡大した断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る電気コネクタの一部を更に拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態に係る電気コネクタにつき、詳細に説明する。図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、y軸の正方向を前方向、y軸の負方向を後ろ方向、x軸方向を左右方向、z軸の正方向を上方向、及びz軸の負方向を下方向として説明する。
【0012】
<電気コネクタの構成>
本発明の実施形態に係る電気コネクタ1の構成につき、
図1から
図10を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0013】
電気コネクタ1は、ハウジング10と、スリーブ20と、リテーナー30と、を有している。電気コネクタ1は、例えば車載用の電気コネクタである。
【0014】
ハウジング10は、絶縁性を有する材料によって形成されており、挿通孔11と、連通孔12と、取付部13と、延設部14と、挟持部15と、貫通孔16と、を備えている。
【0015】
挿通孔11は、円筒状であり、前後方向に延設されて前端及び後端が外部に開放されている。挿通孔11は、電気コネクタ1に接続されるケーブル100の数と同じ数だけ設けられている。
【0016】
連通孔12は、左右方向に延設されていると共に、挿通孔11の前端と後端との間において挿通孔11を取付部13において外部に連通している。連通孔12は、ハウジング10の側壁に設けられている。
【0017】
取付部13は、ハウジング10の側壁に凹設されている。
【0018】
延設部14は、ハウジング10の側壁に設けられており、取付部13の前端から後方に延設されて片持ちの形状になっている。延設部14は、前端を支点として左右方向に弾性変形可能になっている。
【0019】
挟持部15は、延設部14の後端に設けられていると共に、後述のフランジ部23を挟持している。挟持部15は、規制部である前方係止部151と、後方係止部152と、を備えている。
【0020】
前方係止部151は、内部側方に突出しており、
図10に示すように、前後方向に直交すると共にフランジ部23の前面23aに対向する後面151aを備えている。
【0021】
後方係止部152は、内部側方に突出しており、
図10に示すように、前後方向に直交する前面152aと、前方から後方に向けて外方に傾斜すると共に前後方向と交差する傾斜面152bと、を備えており、前面152aがフランジ部23の後面23bに対向するように設けられている。
【0022】
貫通孔16は、
図5に示すように、上下方向に延設されていると共に、連通孔12をハウジング10の上面又は下面において外部に連通している。
【0023】
スリーブ20は、導電性を有する材料によって形成されており、円筒状であると共に挿通孔11に挿通されている。スリーブ20は、ケーブル100の図示しない導電部と図示しない相手側コネクタの相手側導電部とを接続する。スリーブ20は、後方接続部21と、前方接続部22と、フランジ部23と、突出部24と、突出部25と、を備えている。
【0024】
後方接続部21は、スリーブ20の後方側に設けられており、ケーブル100の図示しない導電部に接続している。
【0025】
前方接続部22は、スリーブ20の前方側に設けられており、図示しない相手側コネクタの相手側導電部と接続可能になっている。前方接続部22は、前端が挿通孔11の前端よりも若干後方に位置している。
【0026】
フランジ部23は、前後方向に直交する方向(x−z平面に平行な方向)に突出していると共に、挟持部15によって前後が挟持されている。なお、フランジ部23は、前後方向に直交する方向に突出するように形成される場合に限らず、挟持部15によって挟持することが可能なように前後方向に交差する方向に突出していればよい。
【0027】
フランジ部23は、
図10に示すように、前面23aが挟持部15の前方係止部151の後面151aに対向すると共に、後面23bが挟持部15の後方係止部152の前面152aに対向している。
【0028】
突出部24は、フランジ部23の後方においてフランジ部23との間に所定の間隔を有して設けられており、前後方向に直交する方向に突出している。なお、突出部24は、前後方向に直交する方向に突出するように形成される場合に限らず、前後方向に交差する方向に突出していればよい。
【0029】
突出部25は、突出部24の後方において突出部24との間に所定の間隔を有して設けられており、前後方向に直交する方向に突出している。なお、突出部25は、前後方向に直交する方向に突出するように形成される場合に限らず、前後方向に交差する方向に突出していればよい。
【0030】
リテーナー30は、絶縁性を有する材料によって形成されており、連通孔12に取り付けられて挿通孔11に挿通されているスリーブ20に係合している。リテーナー30は、弾性部31と、本体部32と、ボス33と、を備えている。
【0031】
弾性部31は、本体部32から内部側方に延設された後に外部側方に折り返されて延設されることによりU字状になっている。弾性部31は、連通孔12に設けられると共に、
図2に示すように、突出部24と突出部25との間に設けられてスリーブ20を挿通孔11に保持する。弾性部31は、ハウジング10の貫通孔16に係合する係合突起311を備えている。弾性部31は、U字状に折り返した先端が取付部13において外部に露出している。
【0032】
本体部32は、板状であると共に取付部13に取り付けられている。本体部32は、延設部14を覆っている。
【0033】
ボス33は、本体部32の前方側の上面及び下面から突出して、取付部13の内壁に圧入されている。
【0034】
<電気コネクタの製造方法>
本発明の実施形態に係る電気コネクタ1の製造方法につき、以下に詳細に説明する。
【0035】
まず、スリーブ20の後方接続部21に対してケーブル100の導電部を加締め等によって接続する。
【0036】
次に、ケーブル100を接続したスリーブ20を、前方接続部22を先頭にしてハウジング10の挿通孔11に後方から挿入する。
【0037】
この際に、ハウジング10の延設部14は、後方係止部152の傾斜面152bがスリーブ20のフランジ部23によって外部側方に押圧されることにより外部側方に弾性変形する。そして、フランジ部23が後方係止部152を通過した際に、延設部14の弾性復帰力により延設部14が弾性変形前の状態に復帰して、規制部である前方係止部151と後方係止部152とでフランジ部23を挟持する状態になる。
【0038】
これにより、スリーブ20は、前後方向に移動しようとした際に、フランジ部23の前面23aが前方係止部151の後面151aに当接して前方への移動が規制されると共に、フランジ部23の後面23bが後方係止部152の前面152aに当接して後方への移動が規制される。従って、スリーブ20は、ハウジング10に保持されると共に、必要以上に前方に押圧されることがないため、ハウジング10に対する組み立て位置の不具合を抑制することができ、相手側コネクタの相手側導電部と安定して接続することができる。
【0039】
次に、リテーナー30をハウシング10の取付部13に取り付けると共に、リテーナー30の弾性部31を連通孔12に挿通する。
【0040】
この際に、弾性部31は、係合突起311が連通孔12の内壁によって押圧されることにより弾性変形する。そして、係合突起311が貫通孔16の位置に到達した際に、係合突起311が貫通孔16に係合して弾性部31の弾性復帰力により弾性部31が弾性変形前の状態に復帰すると共に、ボス33がハウジングの取付部13の内壁に圧入されることにより、リテーナー30がハウジング10の取付部13に取り付けられる。また、弾性部31は挿通孔11に突出して、挿通孔11に挿通されているスリーブ20の突出部24と突出部25との間に係合することにより、リテーナー30によってスリーブ20をハウジング10に固定する。これにより、電気コネクタ1が完成する。
【0041】
上記の製造方法により製造した電気コネクタ1において、接続するケーブル100を間違えたり破損等したことによりケーブル100を交換する場合には、ハウジング10の取付部13から外部に露出しているリテーナー30の弾性部31の先端を、本体部32側に弾性変形させることにより、係合突起311と貫通孔16との係合を解除する。そして、この解除した状態でリテーナー30を外部側方に引っ張ることにより、スリーブ20のフランジ部23と突出部24との間から弾性部31が引き抜かれ、取付部13からリテーナー30を取り外すことができる。これにより、取付部13において延設部14が外部に露出した状態になる。
【0042】
更に、延設部14を外部側方に弾性変形させることにより、挟持部15によってフランジ部23を挟持する状態を解除する。そして、この状態を維持しながらケーブル100を後方に引っ張って挿通孔11から後方に引き抜くことにより、ケーブル100を交換することができる。
【0043】
これにより、ケーブル100を容易に交換することができるため、電気コネクタ1を再利用することができ、コストを低減することができる。また、電気コネクタ1に接続される複数のケーブル100の各々が異なる用途に使用される場合において、ケーブル100を間違った挿通孔11に挿通してしまった場合に、ケーブル100を正しい挿通孔11に容易に挿通し直すことができる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、スリーブ20の前後方向と交差する方向に突出するフランジ部23を、ハウジング10の挟持部15によって前後から挟持してスリーブ20をハウジング10の挿通孔11に保持することにより、コストを上昇させることなく、ハウジング10に対してスリーブ20を適正な位置に保持することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、後方に延設される片持ちの形状の延設部14の後端に挟持部15を備えることにより、スリーブ20の前方側の前方接続部22に相手側コネクタが接続する構成のためにスリーブ20の前方側にフランジ部を形成できない電気コネクタ1において、フランジ部23よりも後方に前方へ延設する延設部を設けて、この延設部の前端にフランジ部23を挟持する挟持部を形成する場合に比べて、全体を小型化することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、挿通孔11の内壁の前方側においてスリーブ20の前方への移動を規制する規制部を形成できない構成を有する電気コネクタ1であっても、挿通孔11におけるスリーブ20の前方への移動を挟持部15で規制することができる。
【0047】
本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0048】
具体的には、上記実施形態において、電気コネクタ1に4本のケーブル100を接続したが、接続するケーブル100の本数と同じ数の挿通孔11を設けることにより、4本以外の任意の数のケーブル100を接続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ケーブルに接続する電気コネクタに好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 電気コネクタ
10 ハウジング
11 挿通孔
12 連通孔
13 取付部
14 延設部
15 挟持部
16 貫通孔
20 スリーブ
21 後方接続部
22 前方接続部
23 フランジ部
23a 前面
23b 後面
24 突出部
25 突出部
30 リテーナー
31 弾性部
32 本体部
33 ボス
100 ケーブル
151 前方係止部(規制部)
151a 後面
152 後方係止部
152a 前面
152b 傾斜面
311 係合突起
【要約】
【課題】コストを上昇させることなく、ハウジングに対して端子を適正な位置に保持すること。
【解決手段】電気コネクタ1は、前後方向に延設されて前端及び後端が外部に開放された挿通孔11と、前端と後端との間において挿通孔11を外部に連通する連通孔12と、フランジ部23を前後から挟持してスリーブ20を挿通孔11に保持する挟持部15と、を備える絶縁性のハウジング10と、挿通孔11に挿通されると共に、前後方向と交差する方向に突出するフランジ部23を備え、後方側がケーブル100の導電部に接続すると共に前方側が相手側コネクタと接続可能な導電性を有するスリーブ20と、連通孔12に取り付けられて挿通孔11に挿通されるスリーブ20に係合する絶縁性のリテーナー30と、を有する。
【選択図】
図8