特許第6519705号(P6519705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6519705
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】洪水防止止水構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/12 20060101AFI20190520BHJP
   E01F 15/04 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   E02B3/12
   E01F15/04 A
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-210666(P2018-210666)
(22)【出願日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐人
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−059386(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3166822(JP,U)
【文献】 米国特許第06042301(US,A)
【文献】 特開2011−047160(JP,A)
【文献】 実開昭61−068116(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04〜 3/14
E04H 9/00〜 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域の岸に沿って設けられる洪水防止止水構造であって、
既存の護岸構造の天端の上に略水平方向に配置された脚部と、
略鉛直方向に立設された立設部と、
前記脚部を上方から覆って、前記脚部に上方から自重を加える嵩上げ部と、
を有してなり、
前記脚部は、
前記水域の岸に沿う方向と略直交する略水平方向に配置された棒状部材と、
前記棒状部材の下面に取り付けられて略水平に配置された、貫通孔を複数備える面状部材と、
を有し、
前記立設部は、
下部が前記棒状部材に固定されて立設され、前記水域の岸に沿って複数設けられた支柱と、
前記支柱に取り付けられた止水パネルと、
を有し、
前記止水パネルは、対向する最大面積の面のうちの一方の面が前記水域に面するように配置されていることを特徴とする洪水防止止水構造。
【請求項2】
水域の岸に沿って設けられる洪水防止止水構造であって、
既存の護岸構造の天端の上に略水平方向に配置された脚部と、
略鉛直方向に立設された立設部と、
前記脚部を上方から覆って、前記脚部に上方から自重を加える嵩上げ部と、
を有してなり、
前記脚部は、
前記水域の岸に沿う方向と略直交する略水平方向に配置された棒状部材と、
前記棒状部材の下面に取り付けられて略水平に配置された、エキスパンドメタルからなる面状部材と、
を有し、
前記立設部は、
下部が前記棒状部材に固定されて立設され、前記水域の岸に沿って複数設けられた支柱と、
前記支柱に取り付けられた止水パネルと、
を有し、
前記止水パネルは、対向する最大面積の面のうちの一方の面が前記水域に面するように配置されていることを特徴とする洪水防止止水構造。
【請求項3】
前記棒状部材は、断面がH形の鋼材であることを特徴とする請求項1または2に記載の洪水防止止水構造。
【請求項4】
前記面状部材は、前記水域の岸に沿って複数設けられ、
隣接する前記面状部材は、前記水域の岸に沿う方向の端部同士が重なり合って構造的に連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【請求項5】
前記洪水防止止水構造は、さらに、下端部板状体を備えており、
前記下端部板状体は、長手方向が前記水域の岸に沿う方向となるように配置されるとともに、対向する最大面積の面のうちの一方の面が下面となるように前記止水パネルの下端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【請求項6】
前記面状部材は、前記下端部板状体に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載の洪水防止止水構造。
【請求項7】
前記止水パネルは、長手方向が前記水域の岸に沿う方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【請求項8】
前記止水パネルは、前記水域に面する前記一方の面が、略鉛直面となっていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【請求項9】
前記洪水防止止水構造は、さらに、側端部板状体を備えており、
前記側端部板状体は、前記止水パネルの、前記水域の岸に沿う方向の両端部に取り付けられ、前記止水パネルの下端部から上端部にわたって配置され、
前記側端部板状体の対向する最大面積の面は、前記止水パネルと直交し、
前記止水パネルは、前記水域の岸に沿って複数設けられ、
前記水域の岸に沿う方向に隣り合う前記止水パネルに取り付けられた前記側端部板状体のうち、隣接する前記側端部板状体同士の間、および隣接する前記止水パネルの側端同士の間の少なくとも一部に、前記側端部板状体および前記止水パネルの略高さ方向に目地材が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【請求項10】
隣接する前記側端部板状体同士は、構造的に連結されていることを特徴とする請求項に記載の洪水防止止水構造。
【請求項11】
隣接する前記側端部板状体同士は、ボルトによって構造的に連結されていることを特徴とする請求項10に記載の洪水防止止水構造。
【請求項12】
前記洪水防止止水構造は、さらに、上端部板状体を有し、
前記上端部板状体は、長手方向が前記水域の岸に沿う方向となるように配置されるとともに、対向する最大面積の面のうちの一方の面が上面となるように前記止水パネルの上端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【請求項13】
前記止水パネルは、鋼板を有してなることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【請求項14】
前記洪水防止止水構造は、さらに、車両用防護柵を備え、
前記車両用防護柵は、前記支柱に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水域の岸に沿って設ける洪水防止止水構造に関し、具体的には例えば、水域沿いの護岸構造や堤防またはそれらの近傍に設ける洪水防止止水構造に関する。本願において、水域とは、水をたたえた領域のことであり、例えば、河川、湖沼、海洋等のことである。
【0002】
また、本発明は、既存の護岸構造に穴を開けることなく洪水防止止水構造を設置することが望まれる場合に好適に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
近年、我が国において、突発的な集中豪雨が多く発生するようになってきており、洪水が発生して冠水したという報告も多くなされるようになってきている。洪水に対する現時点での一般的な方法は、応急的に土のうや水のうを積み上げて洪水を防ぐという方法である。この方法は、必要な数の土のうや水のうが予め準備できていて、それらを積み上げるために必要な人員がいる場合には、すぐに完成させることができるという点に利点がある。しかしながら、近年では、人員が不足して、必要な数の土のうや水のうを積み上げるのに時間を要することがある。また、必要な数の土のうや水のうを積み上げても、土のうや水のうは、地面の不陸に対する追従性が良くないため、地表面との密着性が不十分で止水性に問題がある。
【0004】
一方、土のうや水のうを積み上げる以外の方法としては、例えば、鉄筋コンクリート製胸壁(パラペット)を設置することが考えられる。胸壁の設置による方法は、土のうや水のうを積み上げる方法と比較して、接地面における水密性が改善するという利点があるが、壁の厚さにより道路の幅員が減少するという問題があり、また、設置工事が大がかりになるという問題がある。
【0005】
これに対して、特許文献1には、個々の区画を締結手段によって複数つなぎ合わせることで迅速かつ容易に洪水防止障壁を形成できるとされる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、パネル部材を水平に対して鋭角に保持するように支持部材を構成して、前記パネル部材上の水の重量を、接地面における水密性の向上に利用するとされる技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1で開示された技術では、障壁となる区画の幅が大きくなってしまい、利用できる道路の幅を減少させてしまう。
【0008】
また、特許文献2で開示された技術では、パネル部材を水平に対して鋭角に保持するため、利用できる道路の幅を減少させてしまう。
【0009】
これに対して、本発明者は、先行する特許出願(特願2018−177800)において、対象とする水域の岸に沿う方向と直交する水平方向の幅が小さく、また、止水性に優れ、さらに、設置時の施工性が良好な洪水防止止水構造を提案している。
【0010】
しかしながら、この洪水防止止水構造は、既存の護岸構造の天端に、支柱を設置するための穴を開けることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2016−532033号公報
【特許文献2】特表2009−504946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、既存の護岸構造に穴を開けることなく設置することが可能な洪水防止止水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の洪水防止止水構造により、前記課題を解決したものである。
【0014】
即ち、本発明に係る洪水防止止水構造は、水域の岸に沿って設けられる洪水防止止水構造であって、既存の護岸構造の天端の上に略水平方向に配置された脚部と、略鉛直方向に立設された立設部と、前記脚部を上方から覆って、前記脚部に上方から自重を加える嵩上げ部と、を有してなり、前記立設部は、下部が前記脚部に固定されて立設され、前記水域
の岸に沿って複数設けられた支柱と、前記支柱に取り付けられた止水パネルと、を有してなり、前記止水パネルは、対向する最大面積の面のうちの一方の面が前記水域に面するように配置されていることを特徴とする洪水防止止水構造である。
【0015】
前記脚部は、前記水域の岸に沿う方向と略直交する略水平方向に配置された棒状部材と、前記棒状部材に取り付けられて略水平に配置された面状部材と、を有してなり、前記支柱の下部が、前記棒状部材に固定されているように構成してもよい。
【0016】
前記面状部材が、前記棒状部材の下面に取り付けられているように構成してもよい。
【0017】
前記棒状部材として、例えば、断面がH形の鋼材を用いることができる。
【0018】
前記面状部材は、貫通孔を複数備えていることが好ましい。
【0019】
前記面状部材として、例えば、エキスパンドメタルを用いることができる。
【0020】
前記面状部材が、前記水域の岸に沿って複数設けられている場合、隣接する前記面状部材は、前記水域の岸に沿う方向の端部同士が重なり合って構造的に連結されていることが好ましい。
【0021】
ここで、本願において、「構造的に連結」とは、所定の力を伝達できるように連結されていることを意味する。
【0022】
前記洪水防止止水構造は、さらに、下端部板状体を備えており、前記下端部板状体は、長手方向が前記水域の岸に沿う方向となるように配置されるとともに、対向する最大面積の面のうちの一方の面が下面となるように前記止水パネルの下端部に取り付けられていることが好ましい。
【0023】
前記洪水防止止水構造は、さらに、下端部板状体を備えており、前記下端部板状体は、長手方向が前記水域の岸に沿う方向となるように配置されるとともに、対向する最大面積の面のうちの一方の面が下面となるように前記止水パネルの下端部に取り付けられている場合、該下端部板状体に前記面状部材が取り付けられているように構成してもよい。
【0024】
前記止水パネルは、長手方向が前記水域の岸に沿う方向となるように配置されていることが好ましい。
【0025】
前記止水パネルは、前記水域に面する前記一方の面が、略鉛直面となっていることが好ましい。
【0026】
前記洪水防止止水構造は、さらに、側端部板状体を備えており、前記側端部板状体は、前記止水パネルの、前記水域の岸に沿う方向の両端部に取り付けられ、前記止水パネルの下端部から上端部にわたって配置され、前記側端部板状体の対向する最大面積の面は、前記止水パネルと直交し、前記止水パネルは、前記水域の岸に沿って複数設けられ、前記水域の岸に沿う方向に隣り合う前記止水パネルに取り付けられた前記側端部板状体のうち、隣接する前記側端部板状体同士の間、および隣接する前記止水パネルの側端同士の間の少なくとも一部に、前記側端部板状体および前記止水パネルの略高さ方向に目地材が設けられていることが好ましい。
【0027】
隣接する前記側端部板状体同士は、構造的に連結されていることが好ましい。
【0028】
隣接する前記側端部板状体同士は、ボルトによって構造的に連結してもよい。
【0029】
前記洪水防止止水構造は、さらに、上端部板状体を有し、前記上端部板状体は、長手方向が前記水域の岸に沿う方向となるように配置されるとともに、対向する最大面積の面のうちの一方の面が上面となるように前記止水パネルの上端部に取り付けられていることが好ましい。
【0030】
前記止水パネルは、鋼板を有してなるようにしてもよい。
【0031】
前記洪水防止止水構造に、さらに、車両用防護柵を備えさせ、前記車両用防護柵が、前記支柱に取り付けられているように構成してもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、既存の護岸構造に穴を開けることなく設置することが可能な洪水防止止水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を示す正面図
図2】本発明の第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を示す側面図
図3図1のIII−III線断面図
図4】本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造60を示す正面図
図5】本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造60を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、適用対象となる水域の岸として河川の岸を取り上げて説明するが、本発明の適用対象となる水域の岸が河川の岸に限定されるわけではない。
【0035】
(1)第1実施形態
(1−1)第1実施形態に係る洪水防止止水構造の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を示す正面図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を示す側面図であり、図3は、図1のIII−III線断面図である。図3においては、嵩上げ部50の記載は省略している。
【0036】
本発明の実施形態に係る洪水防止止水構造10は、脚部20と、立設部30と、嵩上げ部50と、を有してなる。また、洪水防止止水構造10は、図1および図3に示すように、河川102の岸に沿う方向に、複数配置されている。
【0037】
以下、各部位(脚部20、立設部30、嵩上げ部50)について順に説明する。
【0038】
(1−1−1)脚部20の構成
脚部20は、洪水防止止水構造10の土台となる部位であり、既存の護岸構造100の天端100Aの上に略水平方向に配置された部位である。脚部20は、上方から嵩上げ部50によって覆われていて、上方から嵩上げ部50の重量が加えられており、この重量によって、脚部20の位置は固定されている。
【0039】
脚部20は、棒状部材22と、面状部材24とを有してなる。
【0040】
棒状部材22は、断面がH形の鋼材であり、図1図3に示すように、河川102の岸に沿う方向と略直交する略水平方向に配置されており、河川102に沿って複数設けられている。棒状部材22の河川102側の端部22Aの上面には、立設部30の支柱32が溶接で取り付けられて固定されている。断面がH形の鋼材である棒状部材22の具体的な断面寸法や長さは、洪水時に想定される水圧や洪水防止止水構造10の高さ等に応じて設計計算により算定するが、断面寸法は、具体的には例えば、H150×150×7×10(高さ150mm、フランジ幅150mm、ウェブ厚7mm、フランジ厚10mm)であり、長さは、具体的には例えば1000mmである。なお、棒状部材22の前記した寸法は、具体的な寸法例を示しただけであり、棒状部材22の寸法が、前記した寸法に限定されるわけではない。また、本第1実施形態では、棒状部材22として、断面がH形の鋼材を用いたが、棒状部材22として使用できる鋼材の形状はこれに限定されるわけではなく、支柱32および面状部材24を固定できるものであれば使用可能であり、例えば、断面がI形やC形(溝形)の鋼材も使用することができ、また、丸筒状や角筒状の鋼材も使用することができる。
【0041】
面状部材24は、メッシュ状のエキスパンドメタルであり、図1図3に示すように、棒状部材22の下面22Bおよび下端部板状体36の下面36Aに溶接で取り付けられている。面状部材24は、嵩上げ部50の重量を受け止めて、洪水防止止水構造10全体の位置を固定する役割を有する。なお、棒状部材22の下面22Bおよび下端部板状体36の下面36Aへの面状部材24の取り付けは溶接でなくてもよく、例えばボルトを用いて機械的に取り付けてもよい。また、面状部材24を取り付ける棒状部材22の部位は下面22Bに限定されるわけではなく、他の部位にしてもよく、面状部材24を取り付ける下端部板状体36の部位は下面36Aに限定されるわけではなく、他の部位にしてもよい。
【0042】
エキスパンドメタルは、面と直交する方向に凹凸のある部材であるので、面状部材24としてエキスパンドメタルを用いることにより、洪水防止止水構造10の脚部20と既存の護岸構造100の天端100Aとの間の摩擦係数を大きくすることができ、洪水防止止水構造10が水平力を受けた際(例えば、地震時や洪水時等)に、洪水防止止水構造10全体が水平方向に移動することを防止する。また、エキスパンドメタルは、洪水防止止水構造10の脚部20と嵩上げ部50との間の摩擦係数も大きくするので、洪水防止止水構造10の脚部20の上方の嵩上げ部50が、地震時に、洪水防止止水構造10の脚部20の上から水平方向にずれることを防止する。また、エキスパンドメタルは、メッシュ状の部材であるので、雨水が下方に抜けることができ、面状部材24の上面に雨水が溜まることはない。
【0043】
面状部材24の幅(河川102に沿う方向の幅)は、止水パネル34の長さよりも少し長くして、河川102に沿う方向に隣り合う面状部材24の端部同士を重ね合わせるようにし、その重ね合わせ部24Aで、隣り合う面状部材24の端部同士を連結して、河川102に沿う方向に隣り合う面状部材24同士を構造的に連結させるようにすることが好ましい。隣り合う面状部材24の端部同士の連結は、具体的には例えば、ボルトおよびナット等を用いて行うことができ、面状部材24同士の重ね合わされた部位を、添接板を介してボルトの頭部とナットで挟み込むことで、河川102に沿う方向に隣り合う面状部材24同士を構造的に連結することができる。なお、面状部材24がエキスパンドメタルである場合、一般的に、ボルトの軸径の方がエキスパンドメタルの目の幅よりも大きいので、ボルトの軸部が挿通できるように、エキスパンドメタルの重ね合わせ部を切り欠いて、ボルトの軸部を挿通させてから添接板を介してナットで締め込んで、隣り合うエキスパンドメタル同士を連結する。
【0044】
河川102に沿う方向に隣り合う面状部材24同士を構造的に連結することにより、洪水時に流木等が1つの洪水防止止水構造10に衝突しても、その際に加わる外力は隣の洪水防止止水構造10にも伝達されるので、流木等が衝突した洪水防止止水構造10が倒壊することを防止することができる。
【0045】
なお、本第1実施形態では、面状部材24として、エキスパンドメタルを用いたが、面状部材24として使用できる部材はこれに限定されるわけではなく、下面と既存の護岸構造100の天端100Aとの間の摩擦係数が所定以上の大きさで、かつ、上面と嵩上げ部50との間の摩擦係数が所定以上の大きさであり、さらに、雨水が抜けることができるように貫通孔が適宜に設けられた面状の部材であれば、使用することができる。
【0046】
(1−1−2)立設部30の構成
立設部30は、洪水時に洪水の水圧を受け止める部位であり、略鉛直方向に立設された壁状の部位である。
【0047】
立設部30は、支柱32と、止水パネル34と、下端部板状体36と、側端部板状体38と、上端部板状体40と、中央部板状体42と、目地材44とを有してなる。
【0048】
支柱32は、下端が棒状部材22の河川102側の端部22Aの上面に溶接で取り付けられて固定されて立設されており、河川102に沿って複数設けられている柱部材であり、止水パネル34を保持する部材である。支柱32は、角筒状の形状であり、その断面形状は、具体的には例えば、外形が100mm×100mm程度の角形である。支柱32の全長は、嵩上げ部50の厚さや洪水防止止水構造10の止水壁としての必要な高さに応じて、適宜に定めればよいが、具体的には例えば、0.85m程度である(支柱32を固定する棒状部材22の高さ150mmを考慮すると、支柱32の上端の高さは、既存の護岸構造100の天端100Aから1m程度になる。)。なお、支柱32の前記した寸法は、具体的な寸法例を示しただけであり、支柱32の形状が、前記した寸法に限定されるわけではない。また、支柱32の形状は角筒状でなくてもよく、例えば円筒状であってもよい。
【0049】
止水パネル34は、例えば厚さ6mmほどの鋼板からなるパネルで、板状体である。止水パネル34は、その外面34A(図2参照)が河川102の側に位置して河川102に面する略鉛直面となるように、2本の支柱32に取り付けられ、その長手方向が河川102に沿う方向となるように配置されている。これにより、河川102が氾濫して水があふれ出たときに、あふれ出た水を堰き止めることができる。また、止水パネル34の大きさは、幅(河川102に沿う方向の幅)が4m程度で、高さが1m程度である。止水パネル34の厚さおよび大きさは、洪水時に想定される水圧や洪水防止止水構造10の高さ等に応じて、適宜に変更してもよい。
【0050】
なお、止水パネル34の外面34Aは、止水パネル34の内外面のうち、支柱32に取り付けられておらず、支柱32から遠い側の面(外面)のことであり、河川102に面する面のことである。また、止水パネル34の内面34Bは、支柱32に溶接で取り付けられており、河川102に面する面(外面34A)とは反対側の面のことである。また、止水パネル34の外面34Aおよび内面34Bは、止水パネル34の対向する最大面積の面である。
【0051】
また、止水パネル34の表面に、防食のための処理を施してもよく、防食のための処理としては、例えば、モルタル吹き付けや亜鉛メッキ、塗装等を挙げることができる。
【0052】
止水パネル34は、2本の支柱32に取り付けられているが、その2本の支柱32が、止水パネル34の両端部(河川102に沿う方向の両端部)からそれぞれ1m程度となるような位置で、内面34Bが前記2本の支柱32に溶接されて取り付けられている。止水パネル34の長手方向の長さ(河川102に沿う方向の幅)は4m程度であるので、前記2本の支柱32の間の間隔は2m程度である。また、前記2本の支柱32の間の中央部には、厚さ12mmで幅(止水パネル34の内面34Bと直交する方向の幅)100mm、長さ1000mm程度の細長い鋼板からなる中央部板状体42が、溶接で止水パネル34の内面34Bに上下方向に取り付けられている。中央部板状体42は、後述する下端部板状体36、側端部板状体38、および上端部板状体40とともに、大面積の止水パネル34を補強する。なお、中央部板状体42の形状は前記した形状(厚さ12mm、幅100mm、長さ1000mm程度)に限定されるわけではなく、厚さや幅を適宜に変更してもよい。ただし、中央部板状体42の長さは、止水パネル34の高さ(本第1実施形態では1m程度)と同程度に合わせることが、補強効果の点で好ましい。
【0053】
さらに、止水パネル34は、2本の角筒状の支柱32に、前記2箇所の位置(止水パネル34の両端部からそれぞれ1m程度となるような位置)に溶接で取り付けられるが、溶接以外の方法で、止水パネル34を支柱32に取り付けてもよく、例えばボルト等を用いて機械的に支柱32に取り付けてもよい。
【0054】
下端部板状体36は、厚さ12mmで幅(止水パネル34の内面34Bと直交する方向の幅)100mm程度の細長い鋼板からなる板状体である。下端部板状体36は、1枚の止水パネル34あたり、2本の支柱32の間に配置される長さ2000mm程度のもの1本と、支柱32の側面から止水パネル34の側端部に至る範囲に配置される長さ1000mm程度のもの2本が用いられる。
【0055】
下端部板状体36は、その下面36Aの位置が止水パネル34の下端と一致するような位置において、止水パネル34の内面34Bに、長手方向が止水パネル34の幅方向(河川102に沿う方向)となるように、溶接で取り付けられる。
【0056】
下端部板状体36の端部(河川102に沿う方向の端部)は、止水パネル34の両端部の位置を除き、棒状部材22の側端部に当接し、その部位に溶接され、止水パネル34の両端部の位置においては、側端部板状体38の下端部の側面に当接し、その部位に溶接される。
【0057】
下端部板状体36の下面36Aには、前述したように、メッシュ状のエキスパンドメタルである面状部材24が、図1図3に示すように、溶接で取り付けられる。
【0058】
したがって、下端部板状体36は、4m×1m程度の大きさの面を有する止水パネル34を補強する役割だけでなく、メッシュ状のエキスパンドメタルである面状部材24を固定する役割も有する。
【0059】
側端部板状体38は、厚さ12mmで幅(止水パネル34の内面34Bと直交する方向の幅)100mm、長さ1000mm程度の細長い鋼板からなる板状体であり、対向する最大面積の面が止水パネル34の内面34Bと直交するような配置状態で、長手方向が上下方向となるように、止水パネル34の内面34Bの両端部(河川102に沿う方向の両端部)に溶接で取り付けられる。
【0060】
隣り合う洪水防止止水構造10の隣接する側端部板状体38同士の間および隣り合う洪水防止止水構造10の隣接する止水パネル34の側端同士の間には、目地材44が設けられ、隣接する側端部板状体38同士の間および隣接する止水パネル34の側端同士の間の隙間が塞がれる。
【0061】
したがって、側端部板状体38は、4m×1m程度の大きさの面を有する止水パネル34を補強する役割だけでなく、隣接する側端部板状体38同士の間に目地材44を保持し、隣接する側端部板状体38同士の間および隣接する止水パネル34の側端同士の間の隙間を塞ぐ役割も有する。
【0062】
また、隣接する側端部板状体38同士の間を目地材44で塞ぐだけでなく、隣接する側端部板状体38同士をボルト等によって構造的に連結することが好ましい。このようにすることで、隣り合う洪水防止止水構造10同士は構造的に連結されることになり、洪水時に流木等が1つの洪水防止止水構造10に衝突しても、その際に加わる外力は隣の洪水防止止水構造10にも伝達されるので、流木等が衝突した洪水防止止水構造10が倒壊することを防止することができる。
【0063】
上端部板状体40は、厚さ12mmで幅(止水パネル34の内面34Bと直交する方向の幅)100mm、長さ4000mm程度の細長い鋼板からなる板状体であり、その上面40Aの位置が止水パネル34の上端と一致するような位置において、止水パネル34の内面34Bに、長手方向が止水パネル34の幅方向(河川102に沿う方向)となるように、溶接で取り付けられる。
【0064】
上端部板状体40の両端部(河川102に沿う方向の両端部)は、側端部板状体38の上端部の側面に当接し、側端部板状体38の上端部の側面に溶接されている。
【0065】
また、上端部板状体40の下面に支柱32の上端が当接し、溶接されており、上端部板状体40は、支柱32の上端を覆っている。したがって、上端部板状体40は、止水パネル34を補強する役割だけでなく、角筒状の支柱32に蓋をする役割も果たしている。
【0066】
目地材44は、隣接する側端部板状体38同士の間および隣接する止水パネル34の側端同士の間の隙間を塞ぐ役割を有する。また、目地材44は、止水パネル34の熱膨張および熱収縮を吸収する役割も有する。
【0067】
また、目地材44は、河川102の側とその反対側とを連通する隙間を残さないように、河川102に沿う方向に隣り合う止水パネル34に取り付けられた側端部板状体38のうち、隣接する側端部板状体38同士の間、および隣接する止水パネル34の側端同士の間の少なくとも一部に、側端部板状体38および止水パネル34の略高さ方向に途切れることなく、一列状に設けられる。
【0068】
目地材44としては、弾力性があって形状追従性に優れた材料を採用することが好ましく、また、屋外での使用となるため、紫外線劣化しにくい材料を採用することが好ましい。具体的には、例えば、エラスタイトや紫外線劣化しにくいゴム等を採用することができる。
【0069】
本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、隣接する側端部板状体38同士の間および隣接する止水パネル34の側端同士の間の隙間が、前述のように目地材44で塞がれるので、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性能に優れる。また、目地材44が配置される領域の幅(止水パネル34の内面34Bと直交する方向の幅)は、側端部板状体38の幅(止水パネル34の内面34Bと直交する方向の幅)である100mmに止水パネル34の厚さ6mmを加えた長さである106mmもあり、目地材44によって水を遮断する領域の幅が大きくなり、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性能がより高められている。ただし、106mmという幅は、現状で用いられている車両用防護柵の道路幅員方向の幅と同程度の幅であり、使用可能な道路幅員を狭くするということはない。
【0070】
なお、下端部板状体36、側端部板状体38、上端部板状体40および中央部板状体42は、止水パネル34に取り付けることが原則であるが、適宜に省略することも可能である。
【0071】
また、目地材44は、隣接する側端部板状体38同士の間、および隣接する止水パネル34の側端同士の間の隙間を全て埋め尽くすように配置するのが原則であるが、隣接する側端部板状体38同士の間および止水パネル34の側端同士の間の隙間に配置する目地材44の一部を省略することも可能である。ただし、目地材44は、河川102の側とその反対側とを連通する隙間を残さないように、河川102に沿う方向に隣り合う止水パネル34に取り付けられた側端部板状体38のうち、隣接する側端部板状体38同士の間、および隣接する止水パネル34の側端同士の間の少なくとも一部に、側端部板状体38および止水パネル34の略高さ方向に途切れることなく、一列状に配置することが必要である。
【0072】
(1−1−3)嵩上げ部50の構成
嵩上げ部50は、既存の護岸構造100の天端100Aの上に配置されて、既存の護岸構造100の高さ自体を嵩上げするとともに、洪水防止止水構造10の脚部20を上方から覆って、脚部20に自身の重量を加えて、この重量によって、脚部20の位置を固定して、洪水防止止水構造10の全体の位置を固定する役割を有する。ただし、図2に示すように、立設部30の止水パネル34の上端の位置の方が、嵩上げ部50の天端よりも高さが高く、止水パネル34の上端の高さ位置が、洪水時に水の浸入を防ぐ高さとなるので、後者の役割(洪水防止止水構造10の脚部20を上方から覆って、脚部20に自身の重量を加えて、この重量によって、脚部20の位置を固定して、洪水防止止水構造10の全体の位置を固定する役割。)の方が、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10における嵩上げ部50の役割として重要である。
【0073】
本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、嵩上げ部50に、自然界において普通に存在する土砂(以下、普通土砂と記す。)を用いている。ただし、前述した嵩上げ部50の役割を果たすことができるのであれば、普通土砂以外の素材を嵩上げ部50に用いてもよく、例えば、コンクリートやアスファルトあるいは石や砂利を用いてもよい。ただし、嵩上げ部50の上を車両が通行できるようにすることが要求される場合には、車両の通行に耐える素材を嵩上げ部50に用いることが必要である。
【0074】
嵩上げ部50の必要な厚さは、洪水防止止水構造10の立設部30に加わる想定水平外力の大きさ、および用いる素材の密度から、設計計算で算出することができるが、具体的には例えば、厚さ500mm程度が標準的である。
【0075】
(1−2)第1実施形態に係る洪水防止止水構造の構築方法
本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10のうち、脚部20および立設部30は、工場で製作されて溶接等によって組み立てられた状態(図1図3に示すように組み立てられた状態)で現場に搬入される。また、現場搬入の直前に、目地材44が、側端部板状体38の側面および止水パネル34の側端に取り付けられる。そして現場に搬入し、既存の護岸構造100の天端100Aの所定位置に配置する。既存の護岸構造100の天端100Aが舗装されているときは、舗装を撤去するか、あるいは舗装の表面をコンクリートカッター等で目荒らししてから、組み立てられた脚部20および立設部30を、既存の護岸構造100の天端100Aの所定位置に配置する。なお、側端部板状体38の側面および止水パネル34の側端に取り付ける目地材44については、通常は、河川102の岸に沿って隣り合って配置される洪水防止止水構造10の一方の側端部板状体38の側面および止水パネル34の側端のみに取り付け、他方の側端部板状体38の側面および止水パネル34の側端には取り付けない。
【0076】
組み立てられた脚部20および立設部30を、既存の護岸構造100の天端100Aの所定位置に配置した後、嵩上げ部50に用いる素材を、脚部20の上方を含む所定の領域に所定の厚さとなるように配置して、脚部20に上方から荷重を加えて位置の固定を行う。
【0077】
以上のようにして、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を構築することができる。なお、必要に応じて、嵩上げ部50に締固め等の処置を行う。また、嵩上げ部50の上を車両が通行する場合には、嵩上げ部50の上にさらに舗装を施すことを検討してもよい。
【0078】
なお、脚部20および立設部30の全ての部位を、工場で溶接等によって組み立てなくてもよく、一部の部材を現場で溶接等により連結して組み立ててもよい。
【0079】
(1−3)第1実施形態に係る洪水防止止水構造の効果
本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、既存の護岸構造100の天端100Aに配置された脚部20を、嵩上げ部50が上方から覆って、脚部20に嵩上げ部50の重量を加えて、この重量によって、脚部20の位置を固定して、洪水防止止水構造10の全体の位置を固定する。
【0080】
このため、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、既存の護岸構造100に穴を開けることなく設置することが可能である。
【0081】
また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の立設部30は、河川102に沿う方向と直交する方向の幅が小さく、現状において用いられている車両用防護柵の道路幅員方向の幅と同程度の幅であり、嵩上げ部50を道路104として使用する場合でも、道路幅員を確保しやすい。
【0082】
また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の脚部20および立設部30は、ほとんどの部位が鋼材で製作され、軽量であり、現場への運搬時および据え付け時の作業性に優れる。また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の脚部20および立設部30のほとんどの部分は、工場で製作して組み立てられた状態で現場に搬入することが可能であるので、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の脚部20および立設部30を現場に据え付ける作業を容易化することができ、現場での工期も短くすることができる。
【0083】
また、河川102に沿う方向に隣り合う面状部材24同士を構造的に連結することにより、洪水時に流木等が1つの洪水防止止水構造10に衝突しても、その際に加わる外力は隣の洪水防止止水構造10にも伝達されるので、流木等が衝突した洪水防止止水構造10が倒壊することを防止することができる。
【0084】
また、隣接する側端部板状体38同士の間および隣接する止水パネル34の側端同士の間の隙間が、目地材44で塞がれるので、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性能に優れる。
【0085】
また、隣接する側端部板状体38同士の間を目地材44で塞ぐだけでなく、隣接する側端部板状体38同士をボルト等によって構造的に連結した場合には、隣り合う洪水防止止水構造10同士は構造的に連結されることになり、洪水時に流木等が1つの洪水防止止水構造10に衝突しても、その際に加わる外力は隣の洪水防止止水構造10にも伝達されるので、流木等が衝突した洪水防止止水構造10が倒壊することを防止することができる。
【0086】
(1−4)補足
前述したように、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10においては、止水パネル34を取り付ける支柱32の部位は、支柱32の河川102側の側面であるが、止水パネル34を取り付ける支柱32の部位を、支柱32の道路104側の側面に変更することも可能である。
【0087】
(2)第2実施形態
図4は、本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造60を示す正面図であり、図5は、本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造60を示す側面図である。
【0088】
本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造60は、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10に車両用防護柵70を付加した実施形態であり、具体的には、支柱64に対して河川102側(止水パネル34が取り付けられている側)とは反対の側である道路104の側に、車両用防護柵70をさらに付加している。
【0089】
本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造60は、車両用防護柵70の付加およびそれに付随して必要となった変更以外は、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10と同様であるので、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10と対応する部材および部位には原則として同一の符号を付し、説明は原則として省略する。
【0090】
本第2実施形態に係る洪水防止止水構造60は、前述したように車両用防護柵70を有しているが、車両用防護柵の道路面からの高さ(車両用防護柵を取り付けるための設置用ボルトの道路面からの高さ)は、一般的に600mmである。本第2実施形態に係る洪水防止止水構造60は、厚さ500mm程度の嵩上げ部を備えているため、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の長さ0.85m程度の支柱32では、道路面50Aから600mmの高さに設置用ボルト70Aで車両用防護柵70を取り付けることはできない。
【0091】
そこで、本第2実施形態に係る洪水防止止水構造60では、立設部62に、長さ1.15m程度の支柱64を用いており、車両用防護柵70を取り付けるための設置用ボルト70Aの道路面50Aからの高さを600mm確保できるようにしている。
【0092】
本第2実施形態に係る洪水防止止水構造60においては、設置用ボルト70Aの道路面50Aからの高さが600mmとなるように、かつ、支柱64に対して河川102側(止水パネル34が取り付けられている側)とは反対の側である道路104の側となるように、設置用ボルト70Aで車両用防護柵70を支柱64に取り付けている。なお、符号64Aは支柱64の上端に設けられた蓋である。
【0093】
第1実施形態に係る洪水防止止水構造10に車両用防護柵70をさらに付加して取り付けた態様である洪水防止止水構造60は、洪水防止の機能だけでなく、車両走行の安全性を向上させる機能も有しており、道路104の河川102側の端部空間の高度な有効活用を実現している。
【符号の説明】
【0094】
10、60…洪水防止止水構造
20…脚部
22…棒状部材
22A…端部
22B…下面
24…面状部材
24A…重ね合わせ部
30、62…立設部
32、64…支柱
34…止水パネル
34A…外面
34B…内面
36…下端部板状体
36A…下面
38…側端部板状体
40…上端部板状体
40A…上面
42…中央部板状体
44…目地材
50…嵩上げ部
50A…道路面
64A…蓋
70…車両用防護柵
70A…設置用ボルト
100…既存の護岸構造
100A…天端
102…河川
104…道路
【要約】
【課題】既存の護岸構造に穴を開けることなく設置することが可能な洪水防止止水構造を提供する。
【解決手段】水域102の岸に沿って設けられる洪水防止止水構造であって、既存の護岸構造100の天端100Aの上に略水平方向に配置された脚部20と、略鉛直方向に立設された立設部30と、脚部20を上方から覆って、脚部20に上方から自重を加える嵩上げ部50と、を有してなり、立設部30は、下部が脚部20に固定されて立設され、水域102の岸に沿って複数設けられた支柱32と、支柱32に取り付けられた止水パネル34と、を有してなり、止水パネル34は、対向する最大面積の面のうちの一方の面34Aが水域102に面するように配置されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5