(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519757
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】干し芋の加工品の製造方法及び干し芋の加工品の使用方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/10 20160101AFI20190520BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20190520BHJP
【FI】
A23L19/10
A23L27/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-30777(P2017-30777)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-134034(P2018-134034A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】517021879
【氏名又は名称】圷 正生
(74)【代理人】
【識別番号】100165135
【弁理士】
【氏名又は名称】百武 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100173646
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(72)【発明者】
【氏名】圷 正生
(72)【発明者】
【氏名】圷 正樹
【審査官】
鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−141814(JP,A)
【文献】
特開平08−214769(JP,A)
【文献】
特開平11−221041(JP,A)
【文献】
特開2002−171950(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3114385(JP,U)
【文献】
特開2010−252637(JP,A)
【文献】
特開2016−163547(JP,A)
【文献】
"オンライン ショッピング:いもせんべいアーカイブ", 2009.7.12, retrieved on 2018.12.04, retrieved from the Internet, URL:https://www.imosenbei.com/shopping/cat1/
【文献】
"東洋堂|川越の伝統菓子 いもせんべい/Kawagoe Sweets", YouTube [online][video], 2015.1.31, retrieved on 2018.12.5, retrieved from the Internet, URL:https://www.youtube.com/watch?v=f7G6MBMLhk&feature=youtu.be
【文献】
"生と乾物の栄養を比べてみましょう", 2014.12.24, retrieved on 2018.12.5, retrieved from the Internet, URL:https://www.med.or.jp/komichi/food/foodSto_05_pop01.html
【文献】
"かんころもちせんべい[紙袋入]-K.グリーン", 2016.2.20, retrieved on 2018.12.04, retrieved from the Internet, URL:http://gotosenbei.ocnk.net/product/6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00−20
A23L 27/00−27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/WPIX/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干し芋を加工する干し芋の加工品の製造方法であって、
干し芋の加熱と干し芋の加圧を同時に行う2〜6分程度の加熱加圧工程を有し、
干し芋の加熱は、110〜140℃の温度下で行い、
干し芋の加圧は、干し芋の厚さが0.5〜2mm、加工前の面積の2〜5倍程度の面積になるように行う干し芋の加工品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱加圧工程の前に、干し芋をカットする工程を有する請求項1に記載の干し芋の加工品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱加圧工程の後に、干し芋を破砕する工程を有する請求項1又は2に記載の干し芋の加工品の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の干し芋の加工品の製造方法により製造された干し芋の加工品を調味料又は食材として使用する干し芋の加工品の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干し芋を加工した干し芋の加工品の製造方法に関する。また、その干し芋の加工品の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
干し芋は、サツマイモの加工品であり、サツマイモを蒸かした後、皮をむき、そのままの状態又は所定厚さにスライスして、天日又は乾燥機により乾燥させることにより製造される。干し芋は、ビタミンB1やビタミンC、カリウムなどの栄養成分が含まれており栄養価が高いこと、また食物繊維を多く含み、砂糖や添加物を使用しないことなどから自然食品及び健康食品として、子供から大人まで人気の高い加工品である。
【0003】
干し芋の原料であるサツマイモは、各種料理の原材料となるのに対して、干し芋はそれ自体が加工品であり、独特の風味や自然の甘みを備えることから、そのまま食されるのが一般的である。従って、せいぜい干し芋を食べやすい大きさにカットしたり、少し温めたりする程度で食されるが、下記特許文献1及び2には、干し芋を揚げたり、干し芋をオーブンで焼いたりする加工方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、干し芋を揚げた後に砂糖や水飴などの甘味液を吹き付ける調理方法が開示されており、特許文献2には、干し芋をオーブンで焼くことで滅菌処理を行い、その後密封することで菌の繁殖を防ぐ、焼き干芋の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−79729号公報
【特許文献2】特開2005−304419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の構成によれば、新規な干し芋菓子が提供されるが、吹き付けられた甘味液によって干し芋の味が変化してしまう。干し芋は加工品であり、それ自体が独特の風味や自然の甘みを備えているので、サツマイモのような原材料とは違って、風味や味が変化してしまうと干し芋本来の良さが損なわれてしまう。特に自然な甘みが干し芋の特徴であることから、甘味液によって干し芋の甘みが変化することは好ましくない。
【0007】
特許文献2に記載の構成によれば、干し芋は滅菌処理により衛生的にはなるが、オーブンで焼く際に焦げやすいこと、また焦げてしまうと味や風味が変化してしまい、この場合も干し芋本来の良さが損なわれてしまうといった問題点がある。更に、焦げないように、温度や時間を調整したり、干し芋の状態を監視したりするのも煩雑であり、処理操作に負担がかかってしまう。
【0008】
干し芋は、サツマイモを寒い季節に干すことで糖度がアップして甘みが増すため、だいたい冬場の12月から2月にかけて加工が集中している。干し芋の入った袋に脱酸素剤を入れてパックすることで2ヶ月程度は日持ちするものの、それ以上の長期保存には向かないため、あまり年中流通するものではない。上述のように、干し芋は栄養価が高く、自然食品及び健康食品としての利用価値も高いことから、もっと長期保存ができ、シーズンを通して、より手軽に入手できることが望ましい。
【0009】
また、干し芋はそのまま手で持って食する場合が多いが、水分をある程度含んでおり、手がベトベトすることで、アウトドア向きではない。今後は自然食品及び健康食品としての利点を生かし、保存食や非常食として利用されることも期待される。
【0010】
そこで、本発明は、アウトドアにも適し、長期保存が可能であり、干し芋本来の風味も生かしつつ、簡便に製造可能な干し芋の加工品の製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る干し芋の加工品の製造方法は、干し芋の加熱と干し芋の加圧を同時に行う
2〜6分程度の加熱加圧工程を有
し、干し芋の加熱は、110〜140℃の温度下で行い、干し芋の加圧は、干し芋の厚さが0.5〜2mm、加工前の面積の2〜5倍程度の面積になるように行う。
また、加熱加圧工程の前に、干し芋をカットする工程を設けても良い。
また、加熱加圧工程の後に、干し芋を破砕する工程を設けても良い。その場合に、干し芋の加工品を調味料又は食材として使用することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、干し芋の加熱と干し芋の加圧を同時に行うことで、干し芋の乾燥が効率よく進み、アウトドアにも適する加工品となる一方、干し芋本来の風味は保持される。特にシーズンを通して一年中食すことができ、自然食品を手軽に取れるようになると共に、脱酸素剤を入れてパックすることで半年から1年程度の長期保存にも適し、保存食や非常食としての利用価値も高い。また、製造工程も少なくて済むことから、簡便に干し芋の加工品を製造できる。更に、水分を多く含む干し芋とは食感の違う新規な加工品を提供でき、干し芋の加工品としての干し芋の新たな食べ方を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る干し芋の加工品の製造工程を示すフローチャート図である。
【
図2】丸干し芋をカットする方法を模式的に示す平面図である。
【
図3】平干し芋をカットする方法を模式的に示す図である。Aは縦にカットする場合の平面図であり、Bは横にカットする場合の平面図である。
【
図4】干し芋の加熱加圧方法を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る干し芋の加工品の製造工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る干し芋の加工品の製造方法について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る干し芋の加工品の製造工程を示すフローチャート図である。
図1に示すように、干し芋を適当な大きさにカットする工程(ステップS0)と、カットした干し芋を加熱及び加圧する工程(ステップS1)を行う。干し芋の加熱と干し芋の加圧を同時に行う加熱加圧工程(ステップS1)によって、原料となる干し芋を高温高圧下で処理することにより、干し芋の加工品を得ることができる。
【0016】
[干し芋]
干し芋の原料はサツマイモであるが、サツマイモの種類は特に限定されるものではない。例えば、紅はるか、玉豊、いずみ、シルクスィート、ほしこがね、安納芋、玉乙女、紅あずま、紅こがね、紅まさり等の種類のサツマイモから加工されたもので良い。また、干し芋の種類も限定されることはなく、丸干し芋、平干し芋、角切り芋、せっこう(干し芋の切り落とし、切れ端)など種々の加工方法で製造されたものが含まれる。
【0017】
[ステップS0:カット工程]
図2は、丸干し芋をカットする方法を模式的に示す平面図である。
図3には、平干し芋をカットする方法を模式的に示し、
図3Aは縦にカットする場合の平面図であり、
図3Bは横にカットする場合の平面図である。カットする大きさは、干し芋の大きさや好み、用途に応じて適宜選択すれば良い。カットは包丁や食用はさみ(ステンレス刃物鋼製など)等で行えば簡便である。
【0018】
例えば、直径2cm以上の丸干し芋1の場合は、厚み1cm程度の輪切りにして、長さ10cmほどの平干し芋10の場合は、縦に3〜4本程度のスティック状とするか、横に3等分程度にカットする。加熱加圧工程の前に、干し芋をカットすることで、食べやすい大きさや食べやすい薄さの干し芋のせんべい20(
図4)を製造できる。特に幼児にも食べやすく、また少量ずつ保存すれば小腹が空いたときにも重宝する。尚、この工程は適宜省略しても良い。特に、干し芋がせっこうなどの少量のもの(長さ4〜5cm程度)であればカットする必要もない。また、この工程は、後述するステップS1の後に行っても良いが、ステップS1の前に行う方が、干し芋が軟らかくカットしやすいため、加工品の形もきれいに仕上がりやすい。
【0019】
[ステップS1:加熱加圧工程]
干し芋をそのまま加熱する場合は焦げやすく、焦げてしまうと味や風味が変化してしまい、干し芋本来の良さが損なわれてしまう。しかし、本実施形態の加熱方法は、加熱と同時に加圧することを特徴としている。
加熱方法としては、水分を飛ばすことや加圧を同時に行うことを考慮すると、熱風を吹き付ける方法や焼く方法などがあるが、焼く方法が簡単であることから好ましい。
【0020】
また、加熱温度が110℃より低いと、水分の蒸発が十分に進まず、水分が抜けにくい。一方、加熱温度が140℃を超えると焦げやすくなる。従って、加熱温度は110〜140℃にすることで、焦げにくく、且つ十分に乾燥させることができる。焦げにくい上記温度範囲にすることで食品の加熱に由来するアクリルアミドの生成は抑えられる。尚、加熱温度を120℃未満にすることで、アクリルアミドの抑止効果が高いことから、110℃以上〜120℃未満にするとより好ましい。
【0021】
また、加圧は、圧力容器に入れて加圧する方法や鉄板やフライパンに入れて上からプレスする方法などがあるが、プレスする方法が簡単であることから好ましい。干し芋を、その厚さが、0.5〜2mm程度になるまで加圧する。0.5mmよりも薄すぎると割れやすくなるが、2mmまでの厚さであると、加熱や加圧によって干し芋が硬くなっても、幼児にも十分噛める固さであり食することができる。尚、0.5〜1mm程度とすると、よりパリッとし、また噛む力の弱い人でも十分食することが出来る。尚、加熱温度や加える圧力は、干し芋の大きさや種類、水分量や糖度などによって適宜選択すれば良い。また、食感等の消費者の好みによっても適宜選択可能である。
【0022】
図4は、干し芋を加熱加圧する方法を模式的に示す斜視図である。使用する加工品製造装置3としては、市販されているせんべい焼き機を利用すれば、簡単に加工できる。また、ガス火の場合は温度調節が難しいが、IHヒーターや電気ヒーターで加熱する場合は温度調節が容易であるので好適である。
【0023】
例えば、
図4に示すように、長さ10cm、厚さ5mm程度の平干し芋10を3等分にカットした後、加工品製造装置3の下の鉄板5aの上に載せて、加熱温度を110〜140℃に設定し、取っ手15を下げて上の鉄板5bで挟み、留め具19を留め具の受け具17に嵌めて固定、プレスし、焼くことで、2〜6分程度の短時間で厚さ0.5〜2mmの干し芋のせんべい20を製造できる。尚、鉄板5a、5bがフッ素樹脂加工されているものであると、くっつかず、剥がれやすい。
【0024】
加熱温度は上部鉄板温度コントロール計2a、下部鉄板温度コントロール計2bで設定する。せんべい20の厚さは、上の鉄板5bの四隅にあるネジ13の突出高さを調整することで、変更できる。焼き時間は、140℃の場合は2分30秒、120℃の場合は5〜6分など、高温の場合は直ぐに焼き上がることから時間を短く設定すれば良い。
【0025】
せんべい20は、加工品製造装置3の引き出し7を手前に引いてその中の金網9の上に載せることで冷やされて、食される。干し芋のせんべい20の大きさ(面積)は焼く前の2〜5倍程度になるが、干し芋の糖度や水分量によって出来上がりの大きさは若干変わってくる。糖度が大きいと比較的大きくなり、小さいと比較的小さくなる。また、水分量は、焼く前に比べて15%程度減少することで、保存性にも優れた加工品が得られる。
【0026】
尚、製品として流通させる場合は、
図1に示すように、形や大きさなどを選別する選別工程(ステップS2)、食品包装用の袋(ナイロンとポリエチレンの複合フィルムでできた袋など)に袋詰めして脱酸素剤を封入する袋詰め工程(ステップS3)を経ることになる。
【0027】
本実施形態の製造方法により、加熱と加圧を同時に行うことで、乾燥が効率よく進む。従って、干し芋の加熱時間が短縮され、干し芋の焦げが防止されると共に、干し芋本来の風味は保持される。また干し芋を単に加熱するだけではなく、加圧することで、干し芋の厚さが薄くなるため、幼児などにも食べやすいものとなる。また干し芋の加工品は厚さが薄くても硬くなるため、強度が保たれること、また水分が飛んで軽くなっているため携帯にも便利であり、香ばしくパリパリとした良い食感も付与される。そして、干し芋のベトベト感もなくなり、アウトドアでも直接手で持って食することが可能となる。
【0028】
そして、このような新規な加工品を提供できることで、今まで身体に良いものであることは分かっていながら、軟らかい、ベトベトするなどの好みが合わずに干し芋を敬遠していた消費者にとっても、パリパリとした食感であることから好まれ、手軽に栄養食品を取れるようになる。
【0029】
また、干し芋の場合は、脱酸素剤を入れても2ヶ月程度の保存しかできないが、この加工品の場合は、半年から1年程度の長期保存も可能となり、保存食や非常食としての利用価値も高い。更に、加工工程も少なくて済むことから、簡便に干し芋の加工品を製造できる。そして、短時間で加工できることから生産性にも優れ、大量生産も可能となる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る干し芋の加工品の製造方法について説明する。
図5は本発明の第2の実施形態に係る干し芋の製造工程を示すフローチャート図である。
図5に示すように、本実施形態の干し芋の加工品の製造方法は、前述した第1の実施形態の加熱加圧工程(ステップS1)の後に、干し芋を破砕する工程(ステップS4)を行うものである。尚、選別工程(ステップS2)は必要がなければ適宜省略可能であり、ステップS1の後に、選別工程を経ることなくステップS4に移っても良い。
【0031】
[ステップS4:破砕工程]
干し芋のせんべい20の破砕は、手で割っても良いし、包丁や食用はさみを使って切っても良い。また、ミルミキサーやフードプロセッサーなどの装置によって細かく砕いても良い。比較的荒く砕いて、他の料理のトッピングとして使用したり、比較的細かく粉砕して粒状とし、他の料理の隠し味として用いることもできる。干し芋には独特の風味や甘みがあるため、食感のみならず、風味付けや料理の味の変化も楽しむことができる。また、パウダー状にして、調味料や食材として他の料理に使用することで、利用の幅も拡がる。
【0032】
例えば、砂糖代わりの甘味料として、粗く又は細かく粉砕して生地に混ぜて焼いたり、煮込み料理に入れたり、ヨーグルトやサラダにかけたりすることで、ヘルシーな料理になる。また、粒状やパウダー状にして飲料の甘味料として用いても良い。
【0033】
食材としての使用法の一例として、
図5に示すように、選別工程(ステップS2)後の干し芋のせんべい20をミルミキサーでパウダー状にして(ステップS4)、でんぷんの粉や米粉に加え、水を混ぜて練ることで生地を作り(ステップS5:再加工工程)、ステップS1の加熱加圧工程を経ることで、先の干し芋のせんべい20とはまた違ったタイプのせんべいが出来上がる。即ち、干し芋の加工品の再加工を行うものである。干し芋をそのまま使用したせんべいに比べて、よりお米で作られたせんべいに食感が近くなり、サクサクした食感の新規な食品を提供できる。
【0034】
尚、調味料としての使用と食材としての使用の境界線は明確ではなく、破砕の仕方(粗い、細かい(粒状、パウダー状)など)によって区別されるわけではない。料理に対して使用する量が比較的多い場合を食材としての使用、比較的少ない場合を調味料としての使用といった程度の分け方にもなるが、細かく砕いて比較的多量に使用する場合は、食材としてのみならず、風味やうま味、甘みなどの調味料としての働きも兼ねるものとなる。
【0035】
本実施形態の干し芋の加工品の製造方法によれば、干し芋のせんべい20を破砕することで、お菓子や和洋中などの種々の料理の調味料や食材として、他の料理への利用可能性が広がる。また、本実施形態の干し芋の加工品の製造方法における上記以外の工程及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【実施例】
【0036】
丸干し芋と平干し芋(紅はるか、シルクスィート、玉豊等)を用いて、干し芋の加工品を製造した。加工品製造装置として福山製菓機械株式会社製のTW−200型を使用し、丸干し芋の場合は、大きさ(直径2cm、長さ10cm程度)のものを2本用意して、それぞれ厚み1cm程度になるように食用はさみで輪切りにし、平干し芋の場合は、大きさ(厚み5〜8mm、長さ10cm程度)のものを2本用意して、それぞれ横に3等分に食用はさみでカットした。
【0037】
丸干し芋と平干し芋の加工は同じ条件とし、加熱温度を120℃、加熱加圧時間を6分に設定し、加工後の厚みが1mmになるようにプレスした。重量の変化は100から86%(重量%、以下同じ)に減少し、減少した水分量は14%であった。重量変化の測定は、丸干し芋と平干し芋において、それぞれ加工前の干し芋の全重量と加工後の干し芋の全重量から算出し、丸干し芋と平干し芋共に同様の結果であった。
【0038】
また、それぞれ加工後の大きさ(面積)は加工前の2〜5倍程度になった。加工品はパリパリとした良い食感が付与され、香ばしく、軽くなって携帯性にも優れるものであった。またベトベト感もないことから、干し芋の風味や甘みは残しつつ、手軽な栄養食品として、いままで干し芋を敬遠していた消費者にとっても食べやすいものとなった。
【符号の説明】
【0039】
1 丸干し芋
2a 上部鉄板温度コントロール計
2b 下部鉄板温度コントロール計
3 加工品製造装置
5a、5b 鉄板
7 引き出し
9 金網
10 平干し芋
13 ネジ
15 取っ手
17 留め具の受け具
19 留め具
20 せんべい