特許第6519782号(P6519782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519782
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】車両のステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
   B62D1/16
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-86374(P2015-86374)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-203759(P2016-203759A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084124
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 一眞
(72)【発明者】
【氏名】平井 尚
(72)【発明者】
【氏名】黒川 泰明
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−316651(JP,A)
【文献】 特開平10−310065(JP,A)
【文献】 特開2010−143535(JP,A)
【文献】 特開2005−313756(JP,A)
【文献】 特開2011−073547(JP,A)
【文献】 特開2005−267947(JP,A)
【文献】 特開2003−148427(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0061797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールが端部に装着されるステアリングシャフトを支持するステアリングコラムと、該ステアリングコラムに締結する取付ブラケットを備えた車両のステアリング装置において、前記ステアリングコラムが、外周面に形成された少なくとも一つの凹部を有し、前記取付ブラケットが、前記ステアリングコラムの軸心方向に突出形成され前記凹部に嵌合可能な凸部を有すると共に、該凸部が前記凹部に嵌合した状態で保持する緊締部材であって、前記凸部が前記凹部に嵌合した状態で圧縮するかしめ部を有する緊締部材を備えたことを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
ステアリングホイールが端部に装着されるステアリングシャフトを支持するステアリングコラムと、該ステアリングコラムに締結する取付ブラケットを備えた車両のステアリング装置において、前記ステアリングコラムが、外周面に形成された少なくとも一つの凹部を有し、前記取付ブラケットが、前記ステアリングコラムの軸心方向に突出形成され前記凹部に嵌合可能な凸部を有すると共に、該凸部が前記凹部に嵌合した状態で保持する緊締部材を備え、前記ステアリングコラムは、前記凹部とは別に外周面に形成された係止用凹部を有すると共に、該係止用凹部に隣接する軸方向の案内溝を有し、前記緊締部材は、前記凸部とは別に前記ステアリングコラムの軸心方向に突出形成され、前記係止用凹部に嵌合可能な係止用凸部を有し、該係止用凸部が前記係止用凹部に嵌合するように前記案内溝に沿って案内され、前記凸部が前記凹部に嵌合した状態で、前記係止用凸部が前記係止用凹部に保持されることを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記緊締部材は、帯状弾性金属部材が屈曲されて正面視U字形状に形成されると共に、少なくとも前記凸部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング装置に関し、特に、ステアリングコラムに対し取付ブラケットを容易に組み付け得るステアリング装置に係る。
【背景技術】
【0002】
市販車両のステアリング装置においては、ステアリングコラムに取付ブラケットが組み付けられており、例えば下記の特許文献1の図1に開示されている。即ち、特許文献1の図1右方に、符合は付されていないが、取付ブラケットが装着されている。一般的なステアリングコラムにはコラムカバー等が取り付けられるが、通常、コラムカバー等は取付ブラケットに接合され、取付ブラケットはステアリングコラムに締結されている。具体的には、ステアリングコラムの外周面の三箇所に螺子穴が形成され、これに螺合する雄螺子によって取付ブラケットが螺子固定されている(特許文献1の図1には一個の螺子頭が表れている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5569382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように特許文献1に記載のステアリング装置においては、一般的なステアリング装置と同様、取付ブラケットはステアリングコラムに螺子固定されているので、構成部品として例えば三個の雄螺子が必要である。また、ステアリングコラムには例えば三箇所に螺子穴が形成されており、夫々に雄螺子を螺合する必要があるので、かなりの組付工数が必要となる。特に、各雄螺子の締付トルクを適切に管理する必要があり、これを怠ると、ステアリングコラムの螺子穴内の螺子溝を損ない、螺子固定が不可能となるおそれがある。このため、ステアリングコラムへの取付ブラケットの締結手段に関し、部品点数の低減のみならず、組付工数の低減が切望されていた。
【0005】
そこで、本発明は、ステアリングコラムに取付ブラケットを容易且つ適切に組み付け得る車両のステアリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、本発明は、ステアリングホイールが端部に装着されるステアリングシャフトを支持するステアリングコラムと、該ステアリングコラムに締結する取付ブラケットを備えた車両のステアリング装置において、前記ステアリングコラムが、外周面に形成された少なくとも一つの凹部を有し、前記取付ブラケットが、前記ステアリングコラムの軸心方向に突出形成され前記凹部に嵌合可能な凸部を有すると共に、該凸部が前記凹部に嵌合した状態で保持する緊締部材を備えることとしたものである。
【0007】
上記のステアリング装置において 前記緊締部材は、前記凸部が前記凹部に嵌合した状態で圧縮するかしめ部を有するものとするとよい。
【0008】
あるいは、上記のステアリング装置において、前記ステアリングコラムは、前記凹部とは別に外周面に形成された係止用凹部を有すると共に、該係止用凹部に隣接する軸方向の案内溝を有するものとし、前記緊締部材は、前記凸部とは別に前記ステアリングコラムの軸心方向に突出形成され、前記係止用凹部に嵌合可能な係止用凸部を有するものとし、該係止用凸部が前記係止用凹部に嵌合するように前記案内溝に沿って案内され、前記凸部が前記凹部に嵌合した状態で、前記係止用凸部が前記係止用凹部に保持されるように構成してもよい。
【0009】
上記の緊締部材は、帯状弾性金属部材が屈曲されて正面視U字形状に形成されると共に、少なくとも前記凸部が一体的に形成される構成とするとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のステアリング装置においては、ステアリングコラムが、外周面に形成された少なくとも一つの凹部を有し、取付ブラケットが、ステアリングコラムの軸心方向に突出形成され凹部に嵌合可能な凸部を有すると共に、この凸部が凹部に嵌合した状態で保持する緊締部材を備えることとしているので、ステアリングコラムに取付ブラケットを容易且つ適切に組み付けることができると共に、安定した緊締状態を維持することができる。特に、従来装置に比し、部品点数の低減のみならず、組付工数の低減が可能となる。
【0011】
上記のステアリング装置において、緊締部材は、上記の凸部が凹部に嵌合した状態で圧縮するかしめ部を有するものとすることができ、このかしめ部により緊締部材がステアリングコラムの軸心方向に押圧されて保持されるので組付工数の大幅な低減が可能となる。
【0012】
あるいは、上記のステアリング装置において、ステアリングコラムは、上記の凹部とは別に外周面に形成された係止用凹部を有すると共に、該係止用凹部に隣接する軸方向の案内溝を有し、緊締部材は、上記の凸部とは別にステアリングコラムの軸心方向に突出形成され、係止用凹部に嵌合可能な係止用凸部を有し、この係止用凸部が係止用凹部に嵌合するように案内溝に沿って案内され、上記の凸部が凹部に嵌合した状態で、係止用凸部が係止用凹部に保持される構成とすれば、組み付けが一層容易となり、組付工数の大幅な低減が可能となる。
【0013】
上記の緊締部材が、帯状弾性金属部材が屈曲されて正面視U字形状に形成されると共に、少なくとも凸部が一体的に形成される構成とすれば、最少の部品点数で容易且つ確実にステアリングコラムを緊締することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るステアリング装置において、取付ブラケットをステアリングコラムに組み付ける状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における取付ブラケットのステアリングコラムへの組付状態を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態における取付ブラケットのステアリングコラムへの組付状態を示す断面図である。
図4】本発明の他の実施形態における取付ブラケットのステアリングコラムへの組付状態を示す平面図である。
図5】本発明の他の実施形態における取付ブラケットのステアリングコラムへの組付状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態に係るステアリング装置の一部を示すもので、本実施形態においては、ステアリングホイール(図示せず)が端部(図1の左側)に装着されるステアリングシャフト1を支持するステアリングコラム10と、このステアリングコラム10に締結する取付ブラケット20を備えている。図1はステアリングコラム10に取付ブラケット20を組み付ける前の状態を示し、図2は組付後の状態を示している。尚、その他の構成部品の図示は省略するが、ステアリングコラム10には適宜テレスコピック機構やチルト機構が装着される。
【0016】
本実施形態のステアリングコラム10は金属製の円筒体で、その外周面に少なくとも一つの凹部が形成され、本実施形態では、図3に示すように円周方向に二つの凹部11及び12が形成されている。一方、ブラケット20は、正面視U字形状の帯状弾性金属部材である緊締部材20aの両端部に、正面視U字形状の接合端部を有する取付部材20bがボルト・ナット20cによって接合され、緊締部材20a及び取付部材20bによってステアリングコラム10を囲繞するように配設されている。
【0017】
通常、取付部材20bにはコラムカバー(図示せず)等が接合されるため、取付ブラケット20は一般的にコラムカバーブラケットと呼ばれているが、例えば取付部材20bの取付端部(図1及び図2の下方)に適宜変更を加え、コラムカバーに限らず種々の部材を接合し得るように構成することができる。尚、一枚の金属板で緊締部材20a及び取付部材20bに対応する部分を一体的に形成し、図1に示すように屈曲形成した後に、ボルト・ナット20cによって接合する構成のほか、両者を別体で形成し、一対のボルト・ナット20cによって接合する構成、更には、取付ブラケット20を単一部材で形成する構成としてもよい。
【0018】
本実施形態における取付ブラケット20の緊締部材20aには、図1乃至図3に示すように、上記の凹部11及び12に嵌合可能な凸部21及び22が、ステアリングコラム10の軸心(軸中心)方向に突出形成されている。更に、取付ブラケット20には、凸部21及び22が夫々凹部11及び12に嵌合した状態で締結する緊締部材として、かしめ部23が形成されている。即ち、帯状金属部材の緊締部材20aが屈曲されて、正面視U字形状に形成されると共に、凸部21及び22並びにかしめ部23が形成されている。そして、図2及び図3に示すように、凸部21及び22が夫々凹部11及び12に嵌合した状態で、かしめ部23を円周方向に圧縮することによって緊締部材20aが縮径され、取付ブラケット20がステアリングコラム10に緊締されるように構成されている。
【0019】
本実施形態は上記のように構成されているので、かしめ部23を圧縮する(かしめる)という容易な工程によって取付ブラケット20をステアリングコラム10に適切に組み付けることができると共に、凸部21及び22が夫々凹部11及び12に嵌合した状態、即ち、安定した緊締状態を維持することができる。従って、前述の従来装置における雄螺子を必要とすることなく、その締付トルクの厳格な管理も必要としないので、従来装置に比し、部品点数の低減のみならず、組付工数の大幅な低減が可能となる。
【0020】
図4及び図5は、本発明の他の実施形態に係るステアリングコラム10及び取付ブラケット20を示すもので、本実施形態のステアリングコラム10は、凹部11及び12とは別に外周面に形成された係止用凹部14を有すると共に、この係止用凹部14に隣接する軸方向の案内溝15を有する。一方、取付ブラケット20は、凸部21及び22とは別にステアリングコラム10の軸心方向に突出形成され、係止用凹部14に嵌合可能な係止用凸部24を有する。図4に示すように案内溝15の幅(a)は係止用凹部14の幅(b)より小となるように設定されており、両者間に段差が生ずるように形成されている。この段差部分、即ち、案内溝15の幅(a)と係止用凹部14の幅(b)との間は、テーパ状あるいは多段の溝幅に形成すればよい。
【0021】
尚、本実施形態では、係止用凹部14は凹部11及び12と同形状に形成され、係止用凸部24も凸部21及び22と同形状に形成されている。また、図4及び図5に示すステアリングコラム10及び取付ブラケット20のその他の構成は図1乃至図3に示すステアリングコラム10及び取付ブラケット20と同様であるので、同一の符合を付している。
【0022】
而して、取付ブラケット20がステアリングコラム10の案内溝15の外側に配置され、案内溝15の軸方向に押圧されると、係止用凸部24の先端部が案内溝15に沿って案内されて(図4の下方に)移動する。そして、係止用凸部24の基端部(先端部より幅広)が係止用凹部14に嵌合すると、係止用凸部24が係止用凹部14に保持された状態となる。このように、本実施形態においては、係止用凸部24が係止用凹部14に嵌合するように案内溝15に沿って案内され、凸部21及び22が夫々凹部11及び12に嵌合した状態で、係止用凸部24が係止用凹部14に保持されるように構成されているので、取付ブラケット20を案内溝15の軸方向に押圧すれば、凸部21及び22並びに係止用凸部24が夫々凹部11及び12並びに係止用凹部14に嵌合し、嵌合後は、取付ブラケット20自体のばね力によってその嵌合状態が保持される。従って、本実施形態によれば、取付ブラケット20の組み付けが一層容易となり、従来装置に比し組付工数の大幅な低減が可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1 ステアリングシャフト
10 ステアリングコラム
11、12 凹部
14 係止用凹部
15 案内溝
20 取付ブラケット
20a 緊締部材
20b 取付部材
21、22 凸部
23 かしめ部
24 係止用凸部
図1
図2
図3
図4
図5