(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519883
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】直列油圧ハイブリッドトランスミッションのためのコントローラ
(51)【国際特許分類】
B60K 17/10 20060101AFI20190520BHJP
F15B 1/033 20060101ALI20190520BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20190520BHJP
B60K 6/12 20060101ALI20190520BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20190520BHJP
F16H 61/472 20100101ALI20190520BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
B60K17/10 F
F15B1/033
F15B11/028 G
B60K6/12
F15B11/00 B
B60K17/10 G
F16H61/472
E02F9/22 M
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-546477(P2016-546477)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公表番号】特表2017-512148(P2017-512148A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2015052216
(87)【国際公開番号】WO2015117965
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2018年1月4日
(31)【優先権主張番号】61/935,587
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/935,622
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515207385
【氏名又は名称】ダナ イタリア エスピーエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オルネッラ、ギウリオ
(72)【発明者】
【氏名】セラオ、ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】コソリ、エトーレ
(72)【発明者】
【氏名】ゼンドリ、ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】アキーレ、フランチェスコ
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−261578(JP,A)
【文献】
特開昭55−006077(JP,A)
【文献】
特表2009−520928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/10
B60K 6/12
E02F 9/22
F15B 1/033
F15B 11/00
F15B 11/028
F16H 61/472
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための直列油圧ハイブリッドシステムであって、
可変油圧容量部を有する第2油圧移動ユニットと流体連通した第1油圧移動ユニットを有する油圧回路であって、前記第1油圧移動ユニットは、内燃エンジンと駆動係合されるまたは選択的に駆動係合される、前記油圧回路と、
少なくとも1つの蓄圧器弁を介して前記油圧回路と選択的に流体連結される高圧の油圧蓄圧器および低圧の油圧蓄圧器と、
制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
オペレータからの入力を受信し、
前記入力に基づいて、要求されるトルクおよびターゲットシステム圧力を計算し、
蓄圧器圧力を前記ターゲットシステム圧力と比較し、
前記比較の結果に基づいて、前記内燃エンジンの速度および前記蓄圧器弁の弁状態のうちの少なくとも1つを制御するよう適合され、
複数の前記油圧蓄圧器は、前記油圧回路から流体的に切り離され、前記蓄圧器圧力は、前記ターゲットシステム圧力より高く、前記制御ユニットは、前記少なくとも1つの蓄圧器弁を介して複数の前記油圧蓄圧器を前記油圧回路と流体連結するように適合され、
前記制御ユニットは、複数の前記油圧蓄圧器を前記油圧回路に流体連結するプロセスの前または間に、前記油圧回路の油圧を前記蓄圧器圧力に調節するべく、前記第2油圧移動ユニットの油圧移動量を調整するように適合される、
直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項2】
前記ターゲットシステム圧力は、前記要求されるトルクを提供する間、前記油圧ハイブリッドシステムの伝動効率を最大化する、
請求項1に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記車両の移動方向、車速、およびギア選択のうちの少なくとも1つに基づいて、前記ターゲットシステム圧力を計算するように適合される、
請求項1または2に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記第2油圧移動ユニットの前記油圧移動量αを調整する比例積分コントローラ(PIコントローラ)を有し、
前記PIコントローラは、αを制御変数として用い、前記PIコントローラは、低減されたトルクT'req=Treq−δを、関係式α~T'req/△pに従った所望の値として用い、
δは正の摂動パラメータであり、△pは測定された油圧システム圧力である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項5】
前記摂動パラメータは、予め定められたマップに従った、車速、エンジン速度、前記要求されるトルクTreq、および測定された前記油圧システム圧力のうちの少なくとも1つの関数である、
請求項4に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項6】
複数の前記油圧蓄圧器は、前記油圧回路に流体連結され、前記蓄圧器圧力は、前記ターゲットシステム圧力より高く、前記制御ユニットは、燃料消費量を低減するべくエンジン速度を低減するように適合される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項7】
前記第2油圧移動ユニットは、可変油圧容量部を有し、
前記制御ユニットは、前記要求されるトルクを提供すべく、前記第2油圧移動ユニットの前記油圧移動を調整するように適合される、
請求項6に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項8】
複数の前記油圧蓄圧器が前記油圧回路と流体連結され、前記蓄圧器圧力が前記ターゲットシステム圧力と等しいまたは未満である場合、前記制御ユニットは、前記蓄圧器圧力が前記ターゲットシステム圧力に少なくとも維持されるようにエンジン速度を増加させるのに必要な燃料消費量を計算するよう適合され、
前記制御ユニットは、前記計算された燃料消費量に基づいて、複数の前記油圧蓄圧器を前記油圧回路から切り離すように、または前記エンジン速度を増加させるように適合される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項9】
複数の前記油圧蓄圧器が前記油圧回路に流体連結される場合に、前記蓄圧器圧力が上限圧力より高い、前記蓄圧器圧力が下限圧力より低い、および前記蓄圧器圧力が前記要求されるトルクを提供するには低すぎる、という複数の条件のうちの少なくとも1つが満たされるとき、前記制御ユニットは、複数の前記油圧蓄圧器を前記油圧回路から流体的に切り離すように適合される、
請求項1から8のいずれか1項に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項10】
前記第1油圧移動ユニットは可変油圧容量部を有し、
複数の前記油圧蓄圧器を前記油圧回路から流体的に切り離す前に、前記制御ユニットは、複数の前記油圧蓄圧器と前記油圧回路との間で油圧流体が流れないように、前記第1油圧移動ユニットの前記油圧移動とエンジン速度とのうちの少なくとも1つを調整するように適合される、
請求項8または9に記載の直列油圧ハイブリッドシステム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の直列油圧ハイブリッドシステムを制御する方法であって、
オペレータから入力を受信する段階と、
前記入力に基づいて、要求されるトルクおよびターゲットシステム圧力を計算する段階と、
蓄圧器圧力を前記ターゲットシステム圧力と比較する段階と、
前記比較の結果に基づいて、前記内燃エンジンの速度および前記少なくとも1つの蓄圧器弁の弁状態のうちの少なくとも1つを制御する段階と、を備え、
複数の前記油圧蓄圧器は、前記油圧回路から流体的に切り離され、前記蓄圧器圧力は、前記ターゲットシステム圧力より高く、複数の前記油圧蓄圧器は、前記少なくとも1つの蓄圧器弁を介して前記油圧回路と流体連結され、
複数の前記油圧蓄圧器を前記油圧回路に流体連結するプロセスの前または間に、前記油圧回路の油圧を前記蓄圧器圧力に調節するべく、前記第2油圧移動ユニットの油圧移動量が調整される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、主に、特に自動車のための直列油圧ハイブリッドトランスミッションシステムに関する。より具体的には、発明は、システムを制御する制御ユニットを含む直列油圧ハイブリッドトランスミッションシステムと、直列油圧ハイブリッドシステムを制御する方法とに関する。
【0002】
本明細書は、2014年2月4日出願の米国仮特許出願No.61/935,587、および2014年2月4日出願の米国仮特許出願No.61/935,622からの優先権を主張し、両方の全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0003】
異なる複数のアプローチが、自動車における車両燃料消費量を低減すべく試みられてきた。1つのアプローチは、内燃エンジンのサイズを低減するものであった。フルサイズのエンジンと比べ、より小さい内燃エンジンはより少ない燃料を使用する。しかし、より小さなエンジンは通常、より大きなエンジンに関連する動力に欠ける。
【0004】
したがって、複数のより小さな内燃エンジンを使用して、車両に追加の動力を提供しうる複数の装置でそれらのエンジンを補うべく、別の傾向が開発されてきた。1つの例では、1又は複数の電気モータが使用され、より小さな内燃エンジンを補う。この場合、電気モータの動力源、例えばバッテリーが、車両に乗せられる必要がある。しかし、バッテリーは重く、相当量の空間を取り、人および環境にとって維持し処理することは危険でありうる。
【0005】
別の例では、油圧蓄圧器が、低減されたサイズの内燃エンジンにより提供される動力を補うべく使用されうる。油圧ハイブリッドシステムの燃料消費量および性能は、車両を動作させるために使用される制御方法にかなり依存する。
【0006】
したがって、本発明の目的は、改良された車両性能及び/又は改良された燃料効率を提供する油圧ハイブリッドシステムを開発することである。
【0007】
本目的は、請求項1の直列油圧ハイブリッドシステムにより解決される。特定の実施形態が従属項に記載される。
【0008】
従って、車両のための直列油圧ハイブリッドシステムが提案される。当該システムは、第2油圧移動ユニットと流体連通する第1油圧移動ユニットを有する油圧回路であって、第1油圧移動ユニットは、内燃エンジンと駆動係合されまたは選択的に駆動係合される、油圧回路と、少なくとも1つの蓄圧器弁を介して油圧回路と選択的に流体連結される高圧の油圧蓄圧器および低圧の油圧蓄圧器と、制御ユニットと、を備え、制御ユニットは、オペレータからのトルクに関する要求T
reqを受信し、トルクに関する要求に基づいて、ターゲットシステム圧力を計算し、蓄圧器圧力をターゲットシステム圧力と比較し、比較の結果に基づいて、内燃エンジンの速度および蓄圧器弁の弁状態のうちの少なくとも1つを制御するよう適合される。
【0009】
計算されたターゲットシステム圧力および測定された蓄圧器圧力に基づいて、およびそれら2つの比較の結果に基づいて、制御ユニットは、良好な車両性能を改良されたエネルギー効率と組み合わせるように、エンジン速度及び/又は蓄圧器弁を制御しうる。
【0010】
本明細書の範囲内で、明確な記述「X
1、...、X
nのうち少なくとも1つ」は、X
1、...、X
nのうちの、完全なセットを含む任意のサブセットを含みうる。
【0011】
システムは通常、オペレータがトルクに関する要求を入力する1又は複数の入力装置を有する。これらは、例えば、アクセルペダル、ハンドル、レバー、ノブ、スイッチ、タッチスクリーン、マイク、またはカメラのうち少なくとも1つを含みうる。システムはさらに、蓄圧器圧力を測定するための1又は複数の圧力センサを備えうる。圧力センサは、複数の蓄圧器のうち少なくとも1つに配置されうる。
【0012】
第1油圧移動ユニットは、油圧ポンプを含みうる。例えば、第1油圧移動ユニットは、静油圧ラジアルピストンポンプまたは静油圧アキシャルピストンポンプなどの静油圧ポンプを含みうる。第1油圧移動ユニットは、可変油圧容量部を有しうる。例えば、第1油圧移動ユニットは、可動斜板または斜軸デザインを有しうる。
【0013】
第2油圧移動ユニットは、1又は複数の油圧モータを含みうる。例えば、第2油圧移動ユニットは、静油圧ラジアルピストンモータまたは静油圧アキシャルピストンモータなどの静油圧モータを含みうる。第2油圧移動ユニットは、可変油圧容量部を有しうる。例えば、第2油圧移動ユニットは、可動斜板または斜軸デザインを有しうる。第2油圧移動ユニットは、通常、車両出力と駆動係合するまたは選択的に駆動係合する。車両出力は、例えば、ギアボックス、ドライブシャフト、車両の車軸、ファイナルドライブ、および1又は複数のホイールのうち少なくとも1つを含みうる。
【0014】
ターゲットシステム圧力は、第2油圧移動ユニットにおいて、要求されるトルクを伝えることに対応しているシステム圧力である。システム圧力は、例えば、油圧回路の第1メイン流体ラインと油圧回路の第2メイン流体ラインとの油圧間の圧力差であってよい。
【0015】
通常、第1油圧移動ユニットおよび第2油圧移動ユニットは各々、第1流体ポートおよび第2流体ポートを有する。第1メイン流体ラインは、第1油圧移動ユニットの第1流体ポートを第2油圧移動ユニットの第1流体ポートに流体連結し得、第2メイン流体ラインは、第1油圧移動ユニットの第2流体ポートを第2油圧移動ユニットの第2流体ポートに流体連結しうる。油圧回路は次に、第1および第2油圧移動ユニットと第1および第2メイン流体ラインとを含む密閉型静油圧回路でありうる。油圧回路は通常、外部環境から遮断されている。例えば、油圧回路における最小油圧は、少なくとも10barまたは少なくとも20barであってよい。
【0016】
蓄圧器弁の弁状態を制御することは、蓄圧器弁を開位置に保持しておくこと、蓄圧器弁を閉位置に保持しておくこと、蓄圧器弁を開けて蓄圧器を油圧回路に流体連結すること、および蓄圧器弁を閉じて蓄圧器を油圧回路から流体的に切り離すことのうち少なくとも1つを含みうる。弁状態を制御することは、さらに、蓄圧器弁を開く及び/又は閉じるタイミングを制御することを含みうる。エンジン速度を制御することは、エンジン速度をその現在の速度に保持しておくこと、エンジン速度を低減すること、エンジン速度を増加させること、のうち少なくとも1つを含みうる。制御ユニットは、蓄圧器弁の現在の弁状態に基づいて、蓄圧器弁及び/又はエンジン速度を制御するように構成されうる。
【0017】
例えば、要求されるトルクT
reqを(場合によっては、予め定められた許容差内で)提供しうるシステム圧力の複数の値のうち、ターゲットシステム圧力は、システムの伝動効率が最大値となるシステム圧力でありうる。換言すると、ターゲット圧力は、トランスミッションがトルクに関する要求の制限を考慮して最も効率的に動作されるシステム圧力でありうる。
【0018】
ターゲットシステム圧力は、車両状態の、または高圧蓄圧器および低圧蓄圧器のうち少なくとも1つの充填状態の関数であってよい。制御ユニットはしたがって、車両状態と、複数の蓄圧器のうち少なくとも1つの充填状態とのうち少なくとも1つに基づいて、ターゲットシステム圧力を計算するよう適合されうる。車両状態は、例えば、車両の移動方向(例えば前方向または逆方向)、車速、およびギア選択のうち少なくとも1つを有しうる。システムは、速度データを制御ユニットに提供するよう適合された速度センサを有しうる。制御ユニットは、関係式Δp
target=a・T
req/αに従って、第2油圧移動ユニットの油圧移動量(displacement)αに基づいてターゲットシステム圧力を計算するよう構成されうる。ここで、aはシステム依存定数である。
【0019】
第2油圧移動ユニットが可変油圧容量部を有する場合、伝動効率を最大化することは、第2油圧移動ユニットの油圧移動量αを最適な値αoptにセットすることを含みうる。いくつかの場合では、αoptは、第2油圧移動ユニットの最大移動量であってよい。制御ユニットは、例えば、現在の車両状態に基づいてαoptを計算し、第2油圧移動ユニットの油圧移動量αを最適な値αoptにセットするよう構成されうる。例えば、制御ユニットは、関係式Δp
target=a・T
req/α
optに従って、ターゲットシステム圧力を決定するよう適合されうる。ここで、aはシステム依存定数である。
【0020】
制御ユニットは、油圧蓄圧器が油圧回路から流体的に切り離され、蓄圧器圧力がターゲットシステム圧力より高い場合に、蓄圧器弁を作動させて、油圧蓄圧器を油圧回路に流体連結させるよう構成されうる。この場合、蓄圧器に蓄積された油圧エネルギーは、油圧回路に伝達され得、第2油圧移動ユニットを駆動または追加的に駆動させる。
【0021】
例えば、燃料消費量を低減するべく、制御ユニットは、油圧蓄圧器が油圧回路に流体連結され、蓄圧器圧力がターゲットシステム圧力より高い場合に、エンジン速度を低減するよう構成されうる。好ましくは、制御ユニットは次に、さらに、要求されるトルクが常に第2油圧移動ユニットにおいて提供されるように、第2油圧移動ユニットの油圧移動量αを調整するよう構成される。
【0022】
ターゲットシステム圧力はまた、蓄圧器圧力であってよい。例えば、ターゲット圧力は、高圧蓄圧器における圧力でありうる。制御ユニットは次に、例えば油圧回路へ/から蓄圧器を連結/切断する前及び/又は間、蓄圧器弁、エンジン速度、および第1及び/又は第2油圧移動ユニットの油圧移動のうち少なくとも1つを制御し、油圧回路における油圧を蓄圧器圧力に調節するよう適合されうる。
【0023】
例えば、制御ユニットは、油圧蓄圧器を油圧回路に流体連結するプロセスの前または間、油圧回路の油圧を蓄圧器圧力に調節するべく、第2油圧移動ユニットの油圧移動量αを調整するよう適合されうる。例えば、制御ユニットは、連結されるプロセスにおける蓄圧器と油圧回路の流体ラインとの間の最大圧力差が閾値より小さくなった後または直後にのみ、蓄圧器を油圧回路に流体連結させるために蓄圧器弁を開くよう構成されうる。これは、さもなければ連結手順の間に蓄圧器と油圧回路間の大きな圧力差によって引き起こされうる機械的ジャークを低減しうる。これは、通常、高圧蓄圧器の油圧回路への連結に関して最適である。
【0024】
連結手順の前及び/又は間に第2油圧移動ユニットの油圧移動αを調整するために、制御ユニットは、比例積分(PI)コントローラを含みうる。PIコントローラは、αを制御変数として使用しうる。さらに、PIコントローラは、第2油圧移動ユニットの出力での低減されたトルクT'req=T
req−δを所望の値として使用しうる。例えば、連結手順の前及び/又は間にシステム圧力を蓄圧器圧力に適合させるべく、PIコントローラは、関係式α=a・T'req/Δpに従ってαをセットしうる。ここで、δは正の摂動パラメータであり、Δpは測定された油圧システム圧力であり、aはシステム固有定数である。システムは、油圧回路におけるシステム圧力Δpを測定するための1又は複数の圧力センサを備えうる。摂動パラメータδは、車両速度、エンジン速度、要求されるトルクT
req、および測定される油圧システム圧力のうち少なくとも1つの関数であってよい。制御ユニットは、予め定められたマップに従ってδを選択するよう構成されうる。マップは、油圧回路の幾何学寸法又は同様のものなどのシステム固有パラメータに基づいて生成されうる。
【0025】
複数の油圧蓄圧器が油圧回路に流体連結されている間に、蓄圧器圧力は、ターゲットシステム圧力にまでまたはより低く低下しうる。この状況では、制御ユニットは、蓄圧器圧力が少なくともターゲットシステム圧力で維持されるようにエンジン速度を増加させるのに必要な燃料消費量を計算するよう構成されうる。制御ユニットは次に、さらに、計算された燃料消費量に基づいて、蓄圧器を油圧回路から流体的に切り離す、またはエンジン速度を増加させる、のいずれかを行うように適合されうる。
【0026】
例えば、計算された燃料消費量が、標準静油圧モードで、すなわち蓄圧器が切り離された状態でシステムを操作するために必要な燃料消費量より高い場合に、制御ユニットは、複数の蓄圧器を油圧回路から流体的に切り離すように構成されうる。一方、計算された燃料消費量が、標準静油圧モードでシステムを操作するために必要な燃料消費量より低い場合に、制御ユニットは、蓄圧器が連結された状態を維持し、エンジン速度を増加させるよう構成されうる。制御ユニットが蓄圧器が連結された状態を維持してエンジン速度を増加させる場合に、エンジン速度は、少なくともターゲットシステム圧力で蓄圧器圧力を維持するために必要とされる速度にまで増加されることが好ましい。この状況では、制御ユニットはさらに、少なくともターゲット圧力で蓄圧器圧力を維持するように第2油圧移動ユニットの油圧移動量を調整するよう構成されうる。
【0027】
蓄圧器が油圧回路に流体連結されているとき、蓄圧器圧力が上限圧力より高い、蓄圧器圧力が下限圧力より低い、および蓄圧器圧力が要求されるトルクを提供するためには低すぎる、のうち少なくとも1つの条件が満たされる場合、制御ユニットはさらに、蓄圧器を油圧回路から流体的に切り離すように適合されうる。
【0028】
第1油圧移動ユニットが可変油圧容量部を有する場合、切り離し手順をスムーズにして切り離し手順の間にシステムの制御性を増加させるべく、蓄圧器を油圧回路から流体的に切り離す前または直前に、制御ユニットは、第1油圧移動ユニットの油圧移動量およびエンジン速度のうち少なくとも1つを調整するよう構成されうる。例えば、制御ユニットは、油圧蓄圧器と油圧回路との間の油圧流体の流量が閾値流量より低くなるように、第1油圧移動ユニットの油圧移動量およびエンジン速度のうち少なくとも1つを調整するよう適合されうる。制御ユニットは次にさらに、油圧回路と蓄圧器との間の油圧流体の流量が閾値流量より低くなった後にのみ、蓄圧器を切り離すために蓄圧器弁を閉じるよう構成されうる。制御ユニットは、蓄圧器と油圧回路との間の測定された圧力差に基づいて、または1又は複数の流量センサを介して得られた流量測定データに基づいて、複数の蓄圧器と油圧回路との間の油圧流体の流量を決定するよう適合されうる。流量センサは、例えば、油圧回路及び/又は蓄圧器に配置されうる。
【0029】
直列油圧ハイブリッドシステムの制御方法を提案する。方法は、好ましくは、上記説明した直列油圧ハイブリッドシステムを制御するためのものである。方法は、オペレータから入力を受信する段階と、入力に基づいて、要求されるトルクおよびターゲットシステム圧力を計算する段階と、蓄圧器圧力をターゲットシステム圧力と比較する段階と、比較の結果に基づいて、内燃エンジンの速度および蓄圧器弁の弁状態のうちの少なくとも1つを制御する段階と、を備える。
【0030】
方法はさらに、電子制御ユニットによって実行される上記説明した段階のうちの1又は複数を備えうる。
【0031】
現在提案したシステムおよび方法の好ましい実施形態が、以下詳細な記載において説明され、以下の添付の図面に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】密閉形油圧回路と、油圧回路に選択的に流体連結される複数の油圧蓄圧器と、システムを制御するための電子制御ユニットとを含む直列油圧ハイブリッドシステムである。
【0033】
【
図2】
図1の制御ユニットの制御アーキテクチャの概略である。
【0034】
【
図3】
図1の制御ユニットにより実行される制御方法の状態フローである。
【0035】
【
図4】油圧蓄圧器の油圧回路への連結に関する状態フローである。
【0036】
【
図5】蓄圧器が油圧回路に流体連結される場合の
図1の制御ユニットにより実行されるハイブリッドモード制御方法の状態フローである。
【0037】
【
図6】
図1の油圧回路の複数の油圧コンポーネントの作動に関連する状態フローである。
【0038】
【
図7】油圧蓄圧器の油圧回路への連結に関連する別の状態フローである。
【0039】
【
図8】従来技術による、油圧回路へ高圧蓄圧器を流体的に連結させるプロセスの間の複数のシステムパラメータである。
【0040】
【
図9】現在請求される内容により、油圧回路へ高圧蓄圧器を流体的に連結させるプロセスの間の複数のシステムパラメータである。
【0041】
【
図10】油圧蓄圧器の油圧回路からの切り離しに関連する状態フローである。
【0042】
図1は、オフハイウェイ車両、例えばホイールローダに配置される直列油圧ハイブリッドシステム1を示す。システム1は、油圧モータ3に流体連通される油圧ポンプ2を含む。ポンプ2は、内燃エンジン(ICE)4に駆動係合される。モータ3は、他方で、車両出力5に駆動係合される。車両出力5は、例えば、ドライブシャフト、ファイナルドライブ、車両の車軸、および1又は複数のホイールのうち少なくとも1つを含みうる。ポンプ2およびモータ3は各々、可変油圧容量部を有する。例えば、ポンプ2は、可動式斜板を有する静油圧アキシャルピストンポンプであってよく、モータ3は、可動式斜板を有する静油圧アキシャルピストンモータであってよい。
【0043】
ポンプ2およびモータ3は、第1メイン流体ライン6、第2メイン流体ライン7、および出力増大ハブ8を介して互いに流体連通している。ハブ8は、複数の流体ライン、電気アクチュエータ、および蓄圧器弁14、15を備えるメカトロニクスユニットである。ハブ8は、ポンプ2およびモータ3を、メイン流体ライン6および7を介して流体連結または選択的に流体連結させて、密閉形静油圧回路9を形成する。
【0044】
システム1はさらに、ハブ8に流体連結された高圧ブラダ蓄圧器10および低圧ブラダ蓄圧器11を含む。ハブ8の蓄圧器弁14、15は、蓄圧器10および11を静油圧回路9から流体的に切り離すこと、高圧蓄圧器10を第1メイン流体ライン6に流体連結させ、同時に低圧蓄圧器を第2メイン流体ライン7に流体連結させ、一方、高圧蓄圧器10を第2メイン流体ライン7から流体的に切り離し、同時に低圧蓄圧器11を第1メイン流体ライン6から流体的に切り離すこと、高圧蓄圧器10を第2メイン流体ライン7に流体連結させ、同時に低圧蓄圧器を第1メイン流体ライン6に流体連結させ、一方、高圧蓄圧器10を第1メイン流体ライン6から流体的に切り離し、同時に低圧蓄圧器11を第2メイン流体ライン7から流体的に切り離すこと、のうちの1つを選択的に行うよう構成される。
【0045】
上記概説したように、蓄圧器10、11をメイン流体ライン6、7に選択的に流体連結させるべく、蓄圧器弁14、15のような多数の蓄圧器弁が使用されうる様々な方法があるということは、当業者は容易に理解する。蓄圧器弁14、15は、例えば、1又は複数の遮断弁を含みうる。これらは、電磁気力を介してまたは油圧力を介して作動されるよう構成されうる。後者の場合、蓄圧器弁14、15はさらに、遮断弁を操作するための1又は複数の電子的制御可能パイロット弁を含みうる。
【0046】
システム1はさらに、電子制御ユニット12および入力装置13を含む。制御ユニット12は、1又は複数のマイクロプロセッサを含みうる。入力装置13は、アクセルペダル、ブレーキ、および多数のノブおよびレバーを含みうる。車両のオペレータは、システム1を制御するための入力命令を入力するべく、入力装置13を使用しうる。制御ユニット12は、入力装置13からの入力を受信し、入力に基づいてシステム1を制御するよう構成される。具体的には、制御ユニット1は、ICE4の速度(rpmで測定される)、ポンプ2の油圧移動量、モータ4の油圧移動量、および蓄圧器弁14、15の弁状態を制御するよう構成される。
【0047】
システム1は、静油圧モードで動作されうる。静油圧モードでは、制御ユニット12は、蓄圧器10、11を静油圧回路9から流体的に切り離すべく、蓄圧器弁14、15を作動させる。さらに、静油圧モードでは、静油圧トランスミッションの分野で周知であるように、制御ユニット12は、機械的エネルギーが静油圧回路9を介してICE4から車両出力5に伝達されるように、ICE4、ポンプ2、およびモータ3を作動させうる。
【0048】
制御ユニット12はさらに、蓄圧器弁14、15を介して蓄圧器10、11を静油圧回路9に流体連結させることによって1又は複数のハイブリッドモードで動作するべく、システム1を制御しうる。
【0049】
1つのハイブリッドモードでは、制御ユニットは、高圧蓄圧器10を第1メイン流体ライン6に流体連結させ、低圧蓄圧器11を第2メイン流体ライン7に流体連結させるべく、蓄圧器弁を作動させる。ICE4は次に、油圧流体を低圧蓄圧器11から高圧蓄圧器10に移動させるべく、ポンプ2を駆動し得、それにより高圧蓄圧器10の油圧を増加させ、低圧蓄圧器11の油圧を低減させる(エネルギー蓄積)。
【0050】
別のハイブリッドモードでは、モータ3が車両出力5から運動エネルギーを取り入れて、取り入れた運動エネルギーを使用して、油圧流体を低圧蓄圧器11から高圧蓄圧器10へ移動させるように、蓄圧器10、11をモータ3に流体連結させるべく、制御ユニット12は、蓄圧器弁14、15を作動させてよく、それにより、高圧蓄圧器10の油圧を増加させ、低圧蓄圧器11の油圧を低減させる(回生制動)。制御ユニット12は、モータ3に蓄圧器10、11を流体連結させて、車両の前方および後方移動の両方の間に回生制動を実行すべく、蓄圧器弁14、15を作動させるよう構成されうる。制御ユニット12は、さらに、蓄圧器弁14、15を作動させて、回生制動の間にポンプ2をモータ3からおよび蓄圧器10、11から流体的に切り離すよう構成されうる。
【0051】
別のハイブリッドモードでは、制御ユニット14は、モータ3に蓄圧器10、11を流体連結させるように蓄圧器弁14、15を作動させ得、これにより油圧流体は、高圧蓄圧器10から低圧蓄圧器11へモータ3を介して移動させられてモータ3を駆動させる。それにより、高圧蓄圧器10の油圧を低減させ、低圧蓄圧器11の油圧を増加させる(ブースト)。
【0052】
このように、蓄圧器10、11に蓄積した油圧エネルギーは、車両出力5へ伝達されて車両を駆動させうる。制御ユニットは、ブースト動作が車両の前方および後方移動の両方の間に実行されうるように、蓄圧器弁14、15を作動させるよう構成されうる。
【0053】
他の電気\油圧ハイブリッド構成のすべての一般的な利点、すなわち、エネルギーを回復し油圧回路9にそれを再投入する実現性を有する一方、直列油圧システム1において、静油圧回路9の圧力は、蓄圧器10、11が油圧回路9に連結される場合に蓄圧器10、11の圧力にさせられる。従って、直列ハイブリッドアーキテクチャは、システム圧力を制御するには既に困難であった新たな制御変数を導入する。この新たな変数を導入することにより、現在提案しているシステム1は、ICE4により要求されるエネルギー量を低減して、駆動系の全体のトラクション性能を最適化することによって、燃料節約目的を実現することを目標とする最適な制御方法を提示する。
【0054】
そのために、標準静油圧トランスミッション(SHT)コントローラは、以下のタスク、すなわち、蓄圧器10、11の充填状態(SOC)の最適な値を規定して監視すること、蓄圧器10、11の連結および切り離し条件を規定すること、ICE4及び/又は運動エネルギー回復(回生制動)を介して蓄圧器10、11を充填する方法を規定すること、蓄圧器10、11のうちの1又は複数について連結/切り離し遷移を管理する最適な方法を規定すること、および、蓄圧器10、11のうちの1又は複数が油圧回路に連結されている間のエンジン4、ポンプ2、及び/又はモータ3についての最適な作動を規定すること、を実行可能になるように拡張されるべきである。
【0055】
本明細書は、上記言及された複数の要件を満たし、SHTコントローラに対するアドオン構造として構造化されるコントローラアーキテクチャを提示する。
【0056】
提案したコントローラアーキテクチャは
図2に示される。ここで、以下において、繰り返す複数の特徴は、同一の参照符号により表される。「標準静油圧トランスミッションの制御」12aは、車両が非ハイブリッド(すなわち、静油圧)モードで駆動される場合に、(限定されないが、ICE4、ポンプ2,モータ3、およびギアボックスのような)駆動系コンポーネントのための命令を提供する。換言すると、「標準静油圧トランスミッションの制御」12aは、ICE4、ポンプ2、モータ3、およびギアボックスを車両状態に従ってそれぞれ制御する。車両状態は、車両方向、車速、車両ギア選択等、およびドライバーの要求からなりうる。ドライバーの要求は、車両方向、アクセルペダル位置、ブレーキペダル位置、作動油圧命令等からなりうる。
【0057】
「ハイブリッドコントローラ」は、上記言及したSHTコントローラ12aに対するアドオンであり、上記言及した特徴の全てを追加するSHTコントローラ12aを拡張する「ハイブリッドスーパーバイザ」12bと、ハイブリッド動作が適している場合に、SHTコントローラ12aからの作動を、「ハイブリッドスーパーバイザ」12bからのものと置換する「作動オーバーライト」12cとの、2つの部分からなる。2つの制御方法(静油圧モードとハイブリッドモード)の間の切り替えは、
図3のフロー図に詳しく記載されている。
【0058】
16では、蓄圧器10、11は、油圧回路9から流体的に切り離され、制御ユニット12は、システム1を静油圧モードで操作する。17では、オペレータ/ドライバーは、入力装置13を介して入力命令を入力する。例えば、17では、オペレータは、アクセルペダルを押してよい、または、ブレーキを作動させてよい。制御ユニット12は、入力命令を受信し、入力命令に基づいて、モータ3の出力軸で要求されるトルクT
reqを計算する。制御ユニット12は、現在の車両状態にさらに基づいて、要求されるトルクT
reqを計算しうる。
【0059】
さらに17では、制御ユニット12は、ターゲットシステム圧力を計算する。ターゲットシステム圧力または最適システム圧力は、要求されるトルクT
reqを生む圧力の範囲の中で、システム1の全体の伝動効率を最大化する圧力である。システム1の伝動効率は、それ自身が、モータ3の油圧移動量αに関連付けられうる。例えば、いくつかの場合では、システム1の伝動効率は、モータ移動量αが最大値である場合またはその最大値に近い場合に、最適でありうる。通常、静油圧モータ3の出力トルクTは、関係式α=a・T・Δpによって表されることができる。ここで、αはモータ移動量であり、Δpは、システム圧力(すなわち、第1メイン流体ライン6の静油圧と第2メイン流体ライン7の静油圧との間の差)であり、aは、システム依存の実数の正の定数である。蓄圧器10、11が静油圧回路9に流体連結される場合にシステム圧力は蓄圧器10、11の圧力にさせられるため、上記言及したターゲットシステム圧力は、蓄圧器10、11の最適なSOCとされることができる。
【0060】
18では、制御ユニット12は、蓄圧器10、11の現在のSOCを、既に計算したターゲットシステム圧力と比較する。具体的には、制御ユニット12は、蓄圧器10、11間の圧力差を、油圧回路9のメイン流体ライン6、7間の圧力差と比較する。蓄圧器SOCは、1又は複数の圧力センサ(
図1では不図示)を用いて測定または決定されうる。18において、蓄圧器10、11の現在のSOCがターゲットシステム圧力と等しいまたはより低い場合、制御ユニット12はステップ16に戻る。しかし、18において、蓄圧器10、11の現在のSOCがターゲットシステム圧力より高い場合、制御ユニット12は19に移る。19では、制御ユニット12は、蓄圧器10、11を密閉形静油圧回路9に流体連結させるべく、蓄圧器弁14、15を作動させる。
【0061】
図4の概略図は、蓄圧器弁14、15に連結命令を発行する制御ユニット12に関連する制御アーキテクチャを図示する。17では、制御ユニット12は、ターゲットシステム圧力または最適システム圧力を、要求されるトルクT
reqに基づいて計算する。18では、制御ユニット12は、連結要求/命令を発行する。連結命令は、蓄圧器弁14、15に命令して閉状態に保持させること、または蓄圧器弁14、15に命令して開かせて、蓄圧器10、11を油圧回路9に流体連結させることを含みうる。すなわち、18では、制御ユニット12は、ターゲットシステム圧力、蓄圧器10、11の測定したSOC、および現在の車両状態に基づいて蓄圧器弁14、15を制御する。
【0062】
図3に戻ると、制御ユニット12は、19から20に移る。20では、制御ユニットは、蓄圧器弁14、15が開状態であり、それにより蓄圧器10、11と油圧回路9の間に油圧流体が流れているかを決定する。例えば、システム1は、蓄圧器弁14、15が完全に開くと、有線ベースのまたは無線の電磁気信号を、制御ユニット12へ送信するよう適合される1又は複数の蓄圧器弁センサを備えうる。蓄圧器弁14、15が通常非ゼロ応答時間を有するため、21に移る前に蓄圧器弁14、15が完全に開いているかを点検することが、通常有利である。蓄圧器弁14、15の特定の設計に応じて、それらの応答時間は、0.05秒と0.25秒との間でありうる。蓄圧器10、11が静油圧回路9に完全に連結されると、制御ユニット12は21に移る。
【0063】
21では、制御ユニット12はハイブリッドモードに切り替え、22に移る。ここで、現在蓄圧器10、11が油圧回路9に連結されている場合、制御ユニット12は、オペレータからの現在の入力(17で提供された入力と等しいまたは異なりうる)、および現在の車両状態(17での車両状態と等しいまたは異なりうる)のうち少なくとも1つに基づいて、要求されるトルクT
reqおよびターゲットシステム圧力を再計算する。再び、ターゲットシステム圧力は、要求されるトルクT
reqを生んでいる間にシステム1が最大効率で動作されうるシステム圧力である。
【0064】
23では、制御ユニット12は再び、現在の蓄圧器SOC(18におけるより低いものでありうる)を、22で計算されたターゲットシステム圧力と比較する。23において、現在の蓄圧器SOCがターゲットシステム圧力より高い場合、制御ユニット12は、蓄圧器弁14、15に命令して開状態を保持させ、蓄圧器10、11が静油圧回路9に流体連結された状態を維持させる。しかし、23において、現在の蓄圧器SOCがターゲットシステム圧力と等しいまたはより低い場合、制御ユニット12は24に移る。
【0065】
24では、制御ユニット12は、第1の推定された燃料消費量(例えば、単位時間当たりで使用されるガソリンのリットルで測定される)を計算する。第1の推定された燃料消費量は、蓄圧器10、11が静油圧回路9に流体連結された状態を維持する間、システム圧力をターゲットシステム圧力に維持するために必要な燃料消費量である。この消費量は、蓄圧器10、11の現在のSOC、現在のシステム圧力、オペレータからの現在の入力、現在の車両状態というパラメータのうち少なくとも1つを入力として使用しうる。
【0066】
さらに24では、制御ユニット12はさらに、第2の推定された燃料消費量(例えば、単位時間当たりで使用されるガソリンのリットルで測定される)を計算する。第2の推定された燃料消費量は、蓄圧器10、11が静油圧回路9から流体的に切り離された状態で、システム圧力をターゲットシステム圧力に維持するために必要な燃料消費量である。
【0067】
さらに24では、制御ユニット12は、第1の推定された燃料消費量を第2の推定された燃料消費量と比較する。第1の推定された燃料消費量が第2の推定された燃料消費量と等しいまたは未満である場合、すなわち、蓄圧器10、11を静油圧回路9に流体連結された状態に維持することが、切り替えて静油圧モードに戻ることと少なくとも同じエネルギー効率であると、制御ユニット12が判定した場合、制御ユニット12は蓄圧器弁14、15に命令して開状態に保持させ、21に戻る。しかし、第1の推定された燃料消費量が第2の推定された燃料消費量より大きい場合、蓄圧器10、11を静油圧回路9から流体的に切り離すことによってエネルギーが節約されうると、制御ユニット12が判定した場合、制御ユニット12は25に移る。25では、制御ユニット12は、閉じるように蓄圧器弁14、15に命令する。
【0068】
26では、制御ユニットは、蓄圧器弁14、15が完全に閉じたかを決定する。再び、蓄圧器弁14、15が完全に閉じられると、蓄圧器弁センサは、有線ベースまたは無線の電磁気信号を制御ユニット12に送信しうる。蓄圧器弁14、15が完全に閉じられると、制御ユニット12は27に移る。27では、制御ユニット12は、切り替えて、静油圧モードに戻る。
【0069】
ハイブリッドモードにおいて制御ユニット12によって実行される制御方法のさらなる詳細は、
図3に関して上記説明したステップ23、24を参照する
図5において示される。
【0070】
ハイブリッドモードにおいて、23a,24a,24bでは、制御ユニット12は、蓄圧器圧力が最適なシステム圧力を追っていくように、ICE4とポンプ2を制御する。具体的には、23において、蓄圧器圧力が最適なシステム圧力より高いと判定される場合、制御ユニット12は23aに移る。23aでは、制御ユニットは、内燃エンジン4に命令して、燃料消費量が低減されうるようにその速度を低減させる。同時に、制御ユニット12はポンプ2に命令して、ポンプ移動を調節させて、減少したエンジン速度にする。これは通常、ポンプ2にポンプ移動量を低減させるように命令するという意味を含む。
【0071】
一方、蓄圧器圧力が最適な圧力と等しいまたは未満であると23で判定される場合、かつ第1燃料消費量が第2燃料消費量より低いと24で判定される場合に、制御ユニット12は24aに移る。24aでは、制御ユニット12は、蓄圧器圧力を最適な圧力に維持すべく、内燃エンジン4に命令して、その速度を増加させる。同時に、制御ユニット12は、ポンプ2に命令して、ポンプ移動量を調節させ、増加されたエンジン速度にする。これは通常、ポンプ2にポンプ移動量を増加させるよう命令するという意味を含む。
【0072】
23aおよび24aから、制御ユニット12は、21に戻る前に24bに移りうる。24bでは、制御ユニット12は、モータ3に命令して、その出力において、要求されるトルクT
reqを提供するように、その移動量αを調整させる。これは、モータ3に、その移動量をα=T
req/(a・Δp
target)に従って調整するよう命令することを含みうる。ここで、Δp
targetは、22で計算された最適なシステム圧力であり、aは、システム依存定数である。制御ユニット12が蓄圧器弁14、15、ICE4、ポンプ2の移動、およびモータ3の移動を制御する制御方法は、
図6に概説される。
【0073】
蓄圧器10、11を静油圧回路9に流体連結させるプロセスの間(
図3のステップ19、20、21参照)、静油圧作動(エンジン速度、ポンプ移動、およびモータ移動を含む)は、蓄圧器10、11の過渡状態連結を適切に管理すべく変更されうる。この過渡状態の間、モータ3の出力におけるトルクのとぎれは、ドライバーがそのようなとぎれを、システム1の制御性を損ないうる機械的ジャークとして認知しうるため回避されるべきである。さらに、車両動作または性能(要求されるトルクT
reqのような)についての任意のドライバーの要求は、過渡状態の間に維持されるべきである。連結過渡状態は、
図7のフロー図において示されるように扱われる。
【0074】
16では(
図3および7参照)、システム1は静油圧モードであり、すなわち、蓄圧器10、11は、静油圧回路9から流体的に切り離され、制御ユニット12はSHT制御12aに従って動作し(
図2参照)、制御ユニット12はアクセルペダル位置に基づいてエンジン速度を制御し、制御ユニット12は、エンジン速度に基づいてポンプ移動を制御し、制御ユニット12は、モータ移動とギアボックス(
図1では不図示)を、車速に基づいて制御する。
【0075】
19(
図3および7参照)では、制御ユニット12は、蓄圧器弁14、15に開くように命令して、蓄圧器10、11を密閉形静油圧回路9に流体連結させ、制御ユニット12は19aに移る。
【0076】
19aでは、蓄圧器10、11はさらに、静油圧回路9から流体的に切り離されている。制御ユニット12は、上記ステップ16に関して説明したように、ICE4、ポンプ2、およびギアボックスを制御することを継続する。しかし、19aでは、制御ユニット12はモータ3に命令して、モータ移動量を調整させ、蓄圧器連結の間の油圧回路9における圧力のとぎれを防止または低減し、従って、ドライバーにより認識されるジャークを低減する。蓄圧器連結の直前及び/又は間に、静油圧回路9の油圧を蓄圧器圧力に調節するべく、モータ3の油圧移動量を調整するプロセスは、
図9に示され、以下さらにより詳細に説明される。
【0077】
19bでは、制御ユニット12は、メイン流体ライン6、7の油圧を蓄圧器10、11の油圧と比較する。19bでは、制御ユニット12は、少なくとも、高圧蓄圧器10が連結されることを意図されるメイン流体ラインの油圧を、高圧蓄圧器10の油圧と比較する。油圧回路9の油圧が蓄圧器圧力と閾値圧力差より大きく異なる間は、制御ユニットは、ステップ19a、19bを反復することを継続する。圧力差が閾値圧力差より低くなると、制御ユニット12はステップ19cに移る。
【0078】
19cでは、エンジン速度はアクセルペダル位置に従って制御され、ポンプ移動量はエンジン速度に従って制御され、ギアボックスは車速に従って制御される。19cでは、モータ3の油圧移動量αは、17で計算された(
図3参照)出力されるトルクに関する要求T
reqをモータ3の出力軸において維持するように制御される。すなわち、19cでは、モータ3の移動量は、α=T
req/(a・Δp)に従って制御される。ここで、Δpは、測定された現在のシステム圧力であり、aは、システム依存定数である。
【0079】
20では、制御ユニット12は、蓄圧器弁14、15が完全に開いていることを決定する(
図3および7参照)。蓄圧器弁14、15が完全に開くまで、制御ユニット12は、ステップ19cおよび20を繰り返す。蓄圧器弁14、15が完全に開くと、制御ユニット12は、ハイブリッドモードに切り替え、
図3および
図5に関して上記説明されたように、ステップ21、22、23、23a、24、24a、24b、25に移る。
【0080】
図7のステップ19a−cに関して上記説明した静油圧回路9へ蓄圧器10、11を流体連結させるプロセスの直前及び/又は間のモータ3の油圧移動量の調整は、ここでさらに詳細に説明される。
図8は、直列油圧ハイブリッドシステムのメイン流体ラインに高圧蓄圧器を連結させる従来のプロセスの間のシステムパラメータの時系列を示す。すなわち、
図8は、現在提案した制御ユニット12を用いては実行されない蓄圧器連結プロセスの間に生じる問題を示す。
【0081】
具体的には、
図8は、高圧蓄圧器の油圧の時系列30、高圧蓄圧器が流体連結されるメイン流体ラインの油圧の時系列31、(例えばアクセルペダルの位置に関連付けられる)ドライバーにより要求されるトルクの時系列32、および、静油圧モータの出力軸において提供される出力トルクの時系列33を示す。蓄圧器弁が時間t
0で開いているため、ライン圧力は突然に蓄圧器圧力にまで上昇し、それにより、数ミリ秒のみの期間内に約10倍で出力トルクの望ましくない突然の増加を引き起こすことは明確に見られうる。これは、従来の直列油圧ハイブリッドシステムにおける蓄圧器連結の間に生じる突然の機械的ジャークの問題を明確に示す。
【0082】
一方、
図9は、直列油圧ハイブリッドシステム1、特に
図1のコントローラ12を用いて実行される連結プロセスの間の対応する時系列を示す。具体的には、
図9は、高圧蓄圧器10の油圧の時系列40、第1メイン流体ライン6の油圧の時系列41、モータ3の油圧移動量αの時系列42、(アクセルペダルの位置に関連付けられる)駆動から要求されるトルクの時系列43、および、モータ3の出力軸で提供される測定される出力トルクの時系列44を示す。
【0083】
時間t
1では、アクセルペダルが押され、要求されるトルク43の増加をもたらす。このトルクに関する要求と、測定された蓄圧器圧力40とに基づいて、制御ユニット12は、モータ3の移動量42を徐々に低減させることによって、高圧蓄圧器10を第1メイン流体ライン6へ流体連結させるプロセスを開始する。それにより、ライン圧力41は、それが時間t
2で蓄圧器圧力40に到達するまで滑らかに増加される。
【0084】
t
1とt
2との間の過渡状態の間に、制御ユニット12は、ポンプの命令を変更されないように維持する。したがって、
図9において見られうるように、モータ移動量42の低減は、システム圧力の増加をもたらす。同様に。モータ移動量の増加は、ライン圧力41の低減をもたらしうる。静油圧回路9の高圧ライン6が蓄圧器10の値に到達する場合、制御ユニット12は、弁14、15を作動させて、圧力のとぎれなしに、従ってドライバーにより認識される出力トルク44のジャークなしに、蓄圧器10、11を連結させる。
【0085】
具体的には、制御ユニット12は、例えばアクセルペダルの位置に基づいてトルクに関する要求43を計算する。制御ユニット12は、要求されるトルク43のエラーの予め定められたマージン内でモータ3の出力トルク44を維持する間に、第1メイン流体ライン6のライン圧力41を高圧蓄圧器10の蓄圧器圧力40に徐々に適合させるように、モータ3の油圧移動量αを調整するようプログラミングされる、比例積分(PI)コントローラを含む。
【0086】
上記説明したように、モータ3の出力トルクTは通常、T=a/Δp・αとして表されうる。ここで、aはシステム固有定数であり、Δpは測定されたシステム圧力であり、αはモータ移動量である。制御ユニット12は、不自然なトラッキングエラーまたは摂動δ(通常正の実数)を使用して、以下の関係式α=T
req/(a・Δp)に従ってモータ移動量αを連続的に調整するようプログラミングされる。例えば、モータ移動量αの調整に使用されるサンプリング時間間隔は、0.01秒より小さくてよい。摂動パラメータδの導入によって、モータ移動量αは、システム圧力41が蓄圧器圧力40に徐々に調節されるように調整される。摂動エラーδの大きさは、コントローラの開発における自由度である。
【0087】
合計過渡状態時間Δt=t
1−t
2(すなわち、制御ユニット12が移動調整アルゴリズムを開始する時間t
1と、流体ライン6と蓄圧器10との間の圧力差が最初に予め定められた閾値より低くなる時間t
2とによって定義される時間間隔)は、トラッキングエラーδとモータ応答時間とに強く依存する。容認される摂動δを増加させることによって、過渡状態の合計持続時間Δtは減少されうる。
【0088】
図9に示される実用化は、合計過渡状態時間Δtが蓄圧器弁14、15の応答時間の順にありうるという証拠である。
図9に示される例において、Δt=0.3秒である。従って、制御ユニット12は、制御ユニット12が蓄圧器弁14、15に開くように命令した直後にモータ調整過渡状態を開始し得、合計過渡状態時間Δtはさらに、蓄圧器弁14、15の応答時間にのみ起因する。
【0089】
異なる制御の概略が、上記説明した移動調整アルゴリズムを実現するよう実装されうる。圧力の展開がモータ応答時間に強く影響されるため、モータ移動量に上記複数の方式を適用することは、望ましい結果をもたらさない可能性がある。なぜなら、それらは、モータ3がゼロ応答時間であるという理想で想定しているためである。手順の最終的な目的は、トルクのとぎれを回避することであるため、複数のPIパラメータは、ドライバーの要求を監視する品質を考察することによって選択されうる。上記述べたように、ドライバーの要求がトルク設定値として表される場合、次に、現在のPI構成の品質を評価するための良好なコスト関数Jは、J=β・rms_error+y・Max_errorでありうる。ここで、βおよびyは、車両のタイプおよび開発における適用によって定義される調整パラメータである。過渡状態時間が速いため、提案した閉ループコントローラは、良好な調整結果のデータがテストおよび取得から利用可能になると、より容易な開ループコントローラに取り替えられうる。このように、蓄圧器の圧力センサまたは静油圧回路9のホースは除去可能である。
【0090】
図10は、蓄圧器10、11を静油圧回路9から流体的に切り離すプロセスの間に制御ユニット12により用いられる方法を示す。
【0091】
蓄圧器10、11が静油圧回路9に流体連結されると、制御ユニット12は蓄圧器弁14、15に命令して、
図5に関して上記説明したように、蓄圧器10、11の再充填要求に起因する燃料消費量が静油圧モードでの燃料消費量より大きくなるまで、または、蓄圧器10、11のSOCが要求されるトルクT
reqを提供するには低くなりすぎるまで、開いた状態を保持させ、蓄圧器10、11が連結された状態を維持させる。例えば回生制動の間に蓄圧器10、11のSOCが上限閾値圧力より高くなるとまたは高い場合、及び/又は、蓄圧器のSOCが下限閾値圧力より低く低下するとまたはより低く低下した場合、制御ユニット12はさらに、閉じるように蓄圧器弁14、15に命令して、蓄圧器10、11を静油圧回路9から切り離しうる。
【0092】
21では(
図3および5参照)、蓄圧器10、11は静油圧回路9に連結される。制御ユニット12は、ICE4を制御して、システム圧力を、最適な圧力でまたはその近くで維持させる(
図5のステップ23a、24a参照)。制御ユニット12は、エンジン速度に従ってポンプ移動量を、および車速に従ってギアボックスを制御する。制御ユニット12は、モータ3での出力トルクが17および22で計算された要求されるトルクT
reqを追っていくように、モータ移動量を制御する(
図3および24bでの
図5参照)。
【0093】
制御ユニット12が、ステップ25で閉じるように蓄圧器弁14、15に命令すると(すなわち、弁14、15が閉じる直前及び/又は閉じている間に)、ステップ25aに移る。25aでは、制御ユニット12は、エンジン速度およびポンプ移動を、蓄圧器10、11と静油圧回路との間の油圧流体の流量が最大閾値より小さくなるように調整する。換言すると、制御ユニット12は、ICE4およびポンプ2に、ポンプ2を介した流量がモータ3を介した流量に一致するように命令しうる。この条件では、蓄圧器10、11に入るまたはから出ていく流れが無く、次にすぐに蓄圧器が回路9から切り離されることができるということが推定されうる。
【0094】
25bで、ポンプ2を介した流量がモータ3を介した流量と一致すると、制御ユニットは、ステップ25cに移る。25cで、制御ユニット12は、ICE4およびポンプ2を、ポンプ2を介した流量がモータ3を介した流量に一致するように制御することを継続する。モータ移動は、要求されるトルクを追うように調整される。制御ユニット12が、26で蓄圧器弁14、15が完全に閉じられたと決定すると、26aおよび26bで、制御ユニット12はSHTモードに切り替える。27で、システム1は再び静油圧モードで動作される。