特許第6519885号(P6519885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519885
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】注射器のための二重チャンバ混合装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20190520BHJP
   A61M 5/19 20060101ALI20190520BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   A61M5/315 580
   A61M5/315 510
   A61M5/19
   A61M5/31 510
【請求項の数】24
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-137986(P2017-137986)
(22)【出願日】2017年7月14日
(62)【分割の表示】特願2014-523148(P2014-523148)の分割
【原出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2017-185329(P2017-185329A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年8月14日
(31)【優先権主張番号】61/515,554
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/545,653
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517295698
【氏名又は名称】ユーエヌエル ホールディングス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】UNL Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】モジュデバクシュ、ラミン
(72)【発明者】
【氏名】ダンガー、ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パーマー、アシュリー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネッソン、ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー、フィリップ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィアー、アーロン エム.
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05312336(US,A)
【文献】 国際公開第2011/075760(WO,A1)
【文献】 米国特許第4655747(US,A)
【文献】 米国特許第6132400(US,A)
【文献】 特開平08−308928(JP,A)
【文献】 特開2010−234055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/19
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器のための混合装置であって、
長手軸線に沿ってほぼ同軸の関係にある外側バレルおよび内側バレルであって、前記混合装置が複数の混合物質を備えることが可能であり、少なくとも第1の混合物質は、前記外側バレルと前記内側バレルとの間の外側チャンバに配置可能であり、少なくとも第2の混合物質は、前記内側バレル内の内側チャンバに配置可能であり、前記内側バレルは少なくとも1つの開口を有し前記外側バレルは、前記外側チャンバと大気とを流体連通させる少なくとも1つのベントを有する、外側バレルおよび内側バレルと、
前記外側チャンバ内に配置される少なくとも1つのシールと、を備え、
前記少なくとも1つのシールは、前記内側バレルの前記少なくとも1つの開口とシール状態で係合する第1の位置から、少なくとも部分的に前記少なくとも1つの開口と前記少なくとも1つのベントとの間の第2の位置へ前記長手軸線と平行に移動するように構成されそれによって、前記少なくとも1つのシールが前記第2の位置に配置されたときに、前記第1の混合物質を前記少なくとも1つの開口を通して前記外側チャンバから前記内側チャンバに入れて、前記第2の混合物質との混合物を形成することができるようにした、混合装置。
【請求項2】
前記内側バレルおよび前記外側バレルは同心である、請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開口は前記内側バレルの壁に設けられる複数の開口を含む、請求項1に記載の混合装置。
【請求項4】
前記外側バレルと前記内側バレルとの間に配置される前記外側チャンバ内で軸方向に移動可能な混合プランジャをさらに備える、請求項1に記載の混合装置。
【請求項5】
前記混合プランジャに係合、連結、接続、または固定され、前記外側チャンバで摺動可能に移動可能である近位シールをさらに備える、請求項に記載の混合装置。
【請求項6】
前記内側バレルの前記少なくとも1つの開口とシール状態で係合する前記少なくとも1つのシールが遠位シールであり、
前記混合プランジャの軸方向の移動が、少なくとも部分的に前記少なくとも1つの開口と前記少なくとも1つのベントとの間の前記第2の位置或いは前記少なくとも1つの開口と前記少なくとも1つのベントとの中間の前記第2の位置への、前記遠位シールの前記長手軸線と平行な移動を間接的に促進する、請求項5に記載の混合装置。
【請求項7】
前記混合プランジャの軸方向の移動が、前記内側バレル内の前記内側チャンバへの前記少なくとも第1の混合物質の流入を促進する、請求項に記載の混合装置。
【請求項8】
前記混合プランジャが前記外側チャンバで摺動可能に移動するとき、前記少なくとも1つのベントが前記外側チャンバから大気への空気の放出を促進する、請求項に記載の混合装置。
【請求項9】
前記内側バレルの前記少なくとも1つの開口とシール状態で係合する前記少なくとも1つのシールに隣接または接触し、それぞれの前記ベントに挿入可能な複数の突出部を有する着脱可能な安全キャップをさらに備える、請求項に記載の混合装置。
【請求項10】
1つまたは複数の混合プランジャロックをさらに備える、請求項5に記載の混合装置。
【請求項11】
前記外側チャンバに配置可能な前記第1の混合物質が、1つまたは複数の流体を含む、請求項1に記載の混合装置。
【請求項12】
前記流体が薬学的に活性な流体または薬学的に不活性な流体である、請求項11に記載の混合装置。
【請求項13】
前記内側チャンバに配置可能な前記第2の混合物質が、1つもしくは複数の薬学的に活性な固体、または1つもしくは複数の薬学的に活性な流体を含む、請求項11に記載の混合装置。
【請求項14】
前記内側チャンバは薬学的に活性な固体を内包して、前記外側チャンバは薬学的に活性な流体または薬学的に不活性な流体を内包し、
前記流体が前記少なくとも1つの開口を通して前記外側チャンバから前記内側チャンバへ流入することにより、前記流体と、前記薬学的に活性な固体との混合が促進される、請求項13に記載の混合装置。
【請求項15】
前記内側チャンバは第1の薬学的に活性な流体を内包して、前記外側チャンバは第2の薬学的に活性な流体を内包し、
前記第1の薬学的に活性な流体が前記少なくとも1つの開口を通して前記外側チャンバから前記内側チャンバへ流入することにより、前記第1の薬学的に活性な流体と、前記第2の薬学的に活性な流体との混合が促進される、請求項13に記載の混合装置。
【請求項16】
輸送プランジャと、
針と、
請求項1に記載の混合装置と、を備える注射器。
【請求項17】
格納可能な針を備える格納可能な注射器である、請求項16に記載の注射器。
【請求項18】
前記輸送プランジャは前記針の回収を促進すべく前記針と係合することが可能である、請求項17に記載の注射器。
【請求項19】
回収が付勢部材によって促進される、請求項18に記載の注射器。
【請求項20】
前記輸送プランジャが、前記付勢部材を備えるとともに、最初に付勢された状態の前記付勢部材を解放可能に維持するように協働するプランジャ部材とプランジャ外側部とを備え、
前記プランジャ部材が前記プランジャ外側部から解放されることにより、前記付勢部材が解放され、係合する前記針と前記プランジャ部材との回収が促進される、請求項19に記載の注射器。
【請求項21】
前記外側バレルと前記内側バレルとを接続するベントキャップをさらに備え、前記少なくとも1つのベントは前記ベントキャップに形成される、請求項1に記載の混合装置。
【請求項22】
前記ベントキャップは、前記外側バレル及び前記内側バレルのうちの少なくとも一方と一体に形成される、請求項21に記載の混合装置。
【請求項23】
前記ベントキャップは前記外側バレル及び前記内側バレルに固定される、請求項21に記載の混合装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つのシールは、少なくとも部分的に、前記第1の混合物質によって付与される力によって、前記第1の位置から前記第2の位置へ移動することが可能である、請求項1に記載の混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器のための混合装置に関するものである。より詳細には、本発明は、1つまたは複数の医薬物質を貯蔵、混合、および注入できる格納可能な注射器のための混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
注入前に輸送可能な物質を混合するための混合装置を備える注射器を提供することは、公知である。これは、たとえば、注入直前に、脱水、凍結乾燥、乾燥させた、または粉末状の活性物質に希釈剤を加えることを可能とし、それは特に水和した形で貯蔵すると、活性を低下または損失する物質に有用である。
【0003】
注射器のための大多数の混合装置は、連続チャンバを利用し、注射器は、たとえば、膜またはエラストマーシールによって分離された第1の近位チャンバおよび第2の遠位チャンバを有する、1つのバレルを有する。いくつかのそのような連続チャンバ混合注射器は、バレルの部分のバイパス突出部を利用し、近位チャンバの流体に分割膜を迂回させ、遠位チャンバで流体または粉末と混合させることができる。
【0004】
しかし、同心バレル構成を利用する混合注射器もある。しかし、現在までのところ、同心バレル混合注射器は、複雑な組み立て、使用者による複数の操作工程、または製造、組み立て、操作を難しくする独特のニュアンスを必要とする。たとえば、既存の同心バレル混合注射器には、互いに対して選択的に回転可能である同心の内側バレルおよび外側バレルを必要とし、その中の通過手段を内包する1つまたは複数のシールリングを必要とするものもある。バレルは、内側バレルの穴をシールリングの通過手段に合わせるために回転する必要がある。シールリングの通過手段は、シールリングを通して半径方向に延在する開口部、および半径方向に延在する開口部からシールリングの縦方向に延在している溝を含む。この配置では、溝は、半径方向に延在する開口部で外側バレルに接続し、半径方向に延在する開口部は、内側バレルの穴で、溝と選択的に接続している。これにより、外側バレルから内側バレルへの流体の流れが可能となり、その結果、流体が内側バレルの物質と混合される。そのような構成は、複雑な要素、および使用者が装置を操作するにあたっての厄介な要件を必要とする。
【0005】
その他の同心バレル設計では、バレル内に長手軸方向に同軸に設置された、外側および内側の入れ子式管状要素を利用する。外側管状要素およびバレルは、液体のリザーバを保持するチャンバを形成する。外側管状要素は、チャンバから内側管状要素に液体を流すことができる流体流路をその中に有する。内側管状要素は、その中にオリフィスを有する上部のシールを備えた注入ポートの近くに端部を有する。この内側管状要素は、その上の弾性のシールで、プランジャの端部を受ける。したがって、そのような混合注射器構成は、外側および内側の同心のチャンバが第3のバレルの中に存在する、3つの管状要素を必要とする。
【0006】
混合注射器構成の同心バレルの使用に関連する多数の複雑性がある。上述の複雑性に加えて、同心バレルを利用している混合注射器は、特に、容器の無菌状態の維持、シールのための要素の相互作用、ベント要件、内力の分布などの要因に対処する必要がある。二重チャンバの注射器には、流体を保持するための環状空間を形成し、内側バレルと外側バレルとの間の1つまたは複数の開口を利用して環状空間から内側バレルへの液体の流れを可能し、その結果、内側バレルで液体を物質と混合する、同心の内側バレルおよび外側バレルを有するものもある。液体は、環状空間で摺動可能に可動するプランジャの押下により、環状空間から内側バレルに流動される。第1および第2のシールバンドは、環状空間で内側バレルのまわりで摺動可能に受け止められ、それに沿って、相互に離間している。シールバンドの位置により、流体通路の無菌状態の維持方法、内力の配置方法、ベント方法を決めることができる。たとえば、両方のシールバンドを、最初、開口より上に置き、第1の液体要素のためのシールされた環状容積を形成してもよい。この配置のため、開口は、第2のシールバンドより遠位の、無菌化されている必要のある環状空間の任意の空気が、プランジャの押下時に、開口を通して放出されることを可能とするベントとしても機能する必要がある。このベント要件は、困難を引き起こすことがあり、真空下で内側チャンバを充填し、第2の再構成シールの下で内側チャンバおよび外側バレルの遠位部分からすべての空気を取り除く必要など、追加の装置および処理工程を必要とすることがある。
【0007】
一般に、同心バレルを備える従来技術の混合装置は、構造が複雑で、多くの場合、1つのチャンバからもう一方のチャンバへの液体物質の流れを可能とする、1つまたは複数の開口を合わせるためのバレルの回転を必要とする。これに加えて、混合装置の製造および操作の容易さに関する重大な制限を有する、さまざまな無菌状態、シール、およびベントのための配置が、使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、前記のものなどの、従来技術の混合装置および/または注射器に関連する1つまたは複数の問題を軽減する混合装置および/または混合装置を備える注射器を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は注射器のための混合装置であって、前記装置が、ほぼ同軸の関係にある外側バレルおよび内側バレルであって、前記混合装置が複数の混合物質を備えることが可能であり、少なくとも第1の混合物質は、外側バレルと内側バレルとの間の外側チャンバに配置可能であり、少なくとも第2の混合物質は、前記内側バレル内の内側チャンバに配置可能であり、内側バレルは、第1の混合物質を内側バレル内の内側チャンバに入れることができる1つまたは複数の流体通路を備え、その結果、第2の混合物質との混合物をつくることができる、外側バレルおよび内側バレルと、大気と流体連通している前記外側チャンバの1つまたは複数のベントと、内側バレルの前記1つまたは複数の流体通路とシール状態で係合する第1の位置から、少なくとも部分的に前記1つまたは複数の流体通路と前記1つまたは複数のベントとの間の第2の位置への軸方向の移動が可能である、前記外側チャンバに配置された少なくとも1つのシールとを備える、混合装置を提供する。好適には、内側バレルおよび外側バレルは、互いに対して回転できない。
【0010】
1つまたは複数の流体通路は、1つまたは複数の開口、穴、ボア、ポート、壁穴、または管路を備えてもよい。これらは、任意の適切な形、構成、配置、および/または数でもよい。好ましくは、流体通路は複数の開口を備える。開口は、半径方向のボア(すなわち、バレルの軸に垂直)、ある角をなすボア(すなわち、バレルの軸にある角度をなす)、螺旋状(たとえば、バレル壁の厚さを横断する際にある角をなす半径方向の経路)、または任意の数のその他の構成でもよい。また、開口の数および位置は、位置的な間隔および配置において、要求される混合特性のために調節されてもよい。そのように、開口のこれらのパラメータは、混合注射器の要求される混合、希釈、およびその他の流動特性を促進するために構成されてもよい。
【0011】
好適には、混合装置は外側バレルと内側バレルとの間の外側チャンバ内で軸方向に移動可能な混合プランジャをさらに備え、内側バレルの内側チャンバへの少なくとも第1の混合物質の流入を促進し、内側バレルの前記1つまたは複数の流体通路とシール状態で係合する第1の位置から、前記1つまたは複数の流体通路と前記ベントとの中間、または少なくとも部分的に前記1つまたは複数の流体通路と前記ベントとの間の前記第2の位置への、前記シールの軸方向の移動を促進する。混合プランジャは、使いやすさまたは審美性のために、指および/または親指のための延長部などの、1つまたは複数の延長部を有してもよい。
【0012】
好ましくは、流体混合装置は、複数のシールを含む。好ましくは、複数のシールは、近位シールと遠位シールとを備える。好ましい実施形態において、複数のシールは、係合可能または接続可能に、混合プランジャに連結、接続可能、または固定され、外側チャンバで摺動可能に移動可能である近位シールと、最初は内側バレルの前記1つまたは複数の流体通路とシール状態で係合する第1の位置で、1つまたは複数の流体通路とのシール状態の係合から、前記1つまたは複数の流体通路と前記ベントとの中間、または少なくとも部分的に前記1つまたは複数の流体通路と前記ベントとの間の第2の位置に外側チャンバで摺動可能に移動可能である、前記遠位シールとを備える。混合プランジャの移動は、プランジャが係合される、または接続可能に連結または固定される近位シールの移動を引き起こす。この移動は、外側チャンバの第1の混合物質に中継され、同様に、遠位シールに中継される。したがって、混合プランジャの軸方向の移動は、間接的に(すなわち、直接接触の必要なしに)、遠位シールの前記第2の位置への軸方向の移動を促進する。
【0013】
好ましくは、1つまたは複数のベントは、混合プランジャおよび遠位シールが外側チャンバで摺動可能に移動されるとき、外側チャンバから大気中への空気の放出を促進するために使用可能である。1つまたは複数のベントは、前記外側バレルに一体的に形成されてもよく、または前記内側バレルおよび/または外側バレルに取り付けられるか固定されるベントキャップでもよい。いずれの実施形態においても、管路、穴、多孔質膜、折たたみ可能な要素などが、利用されてもよい。たとえば、少なくとも一実施形態において、ベントキャップは、1つまたは複数のベント管路を備えるプラスチックのベントキャップであり、プラスチックのベントキャップは、外側バレルの遠位端で外側チャンバを閉じているが、混合プランジャの押下および遠位シールの移動時は、空気が1つまたは複数のベント管路を大気中へと通過することを可能とする。
【0014】
一実施形態において、混合装置は、着脱可能な安全キャップをさらに備える。好ましくは、着脱可能な安全キャップは、使用前(たとえば、運搬中)の遠位シールの不必要な移動を防ぐ。着脱可能な安全キャップは、遠位シールに隣接または接触して、それぞれのベント管路に挿入可能な複数の突出部を備えてもよい。
【0015】
混合装置は、外側バレルに取り付けられる、または外側バレルと一体的に形成される、バレル延長部をさらに備えてもよい。バレル延長部は、任意選択的に、フィンガーフランジまたはグリップを含んでもよく、または、代わりに、それに接続される任意選的なフィンガーフランジまたはグリップを有してもよい。
【0016】
混合装置は、1つまたは複数の混合プランジャロックをさらに備えてもよい。一実施形態において、混合プランジャおよびバレル延長部の要素は、前記混合プランジャロックを形成するために係合可能である。1つの特定の実施形態において、混合プランジャロックは、使用中の、外側チャンバからの混合プランジャの取り外しを防ぐ。別の特定の実施形態において、混合プランジャロックは、混合完了後の、混合プランジャの軸方向近位側への移動を防ぐ。
【0017】
第1および第2の混合物質は、1つまたは複数の流体、または1つまたは複数の固体を備えてもよい。外側チャンバに配置可能な第1の混合物質は、流体でもよい。流体は、薬学的に活性な流体、または、希釈剤などの薬学的に不活性な流体でもよい。内側チャンバに配置可能な第2の混合物質は、薬学的に活性な固体、あるいは、薬学的に活性または不活性な流体でもよい。
【0018】
一実施形態において、内側チャンバは薬学的に活性な固体を内包し、外側チャンバは水などの薬学的に不活性な希釈剤を内包し、それによって、外側チャンバから内側チャンバへの1つまたは複数の開口を通しての希釈剤の流入は、薬学的に活性な固体との混合を促進する。希釈剤と薬学的に活性な固体との相互作用は、次の、患者への送出のための薬学的に活性な固体の再構成を可能とする。
【0019】
別の実施形態において、内側チャンバは薬学的に活性な固体を内包し、外側チャンバは薬学的に活性な流体を内包し、それによって、外側チャンバから内側チャンバへの1つまたは複数の開口を通しての流体の流入は、内側チャンバでの薬学的に活性な固体との混合を促進する。薬学的に活性な流体と薬学的に活性な固体との相互作用は、次の、患者への送出のための薬学的に活性な固体の再構成を可能とする。
【0020】
さらに別の実施形態において、内側チャンバは第1の薬学的に活性な流体を内包し、外側チャンバは第2の薬学的に活性な流体を内包し、それによって、外側チャンバから内側チャンバへの1つまたは複数の開口を通しての第1の薬学的に活性な流体の流入は、内側チャンバでの第2の薬学的に活性な流体との混合を促進する。第1の薬学的に活性な流体と第2の薬学的に活性な流体との相互作用は、次の、患者への送出のための薬学的に活性な流体の混合を可能とする。
【0021】
したがって、混合装置は、外側チャンバおよび内側チャンバでの複数要素医薬物質の貯蔵を促進してもよく、その結果、運搬中および長期の貯蔵の間、医薬物質の安定性および有効性を維持する。
【0022】
別の態様において、本発明は、輸送プランジャと、針アセンブリと、前記の態様による混合装置とを備える注射器を提供する。注射器は、患者を治療するための1つまたは複数の混合物質を、貯蔵、運搬、混合、注入するために利用されてもよい。後述されるように、注射器は、使用後の針を回収し、望ましい刺傷防止を提供し、注射器の再利用を防ぐ安全機能をさらに内包してもよい。
【0023】
好適には、輸送プランジャは、混合装置の内側バレル内で摺動可能に移動可能であり、その結果、使用者、患者、またはその他の受取人への混合物質または混合物の送出を促進する。
【0024】
好ましい形態において、注射器は、格納可能な針を備える格納可能な注射器である。好ましくは、輸送プランジャは、針を回収するために針を係合することが可能である。好適には、針の回収は、針の回収を促進するためにエネルギーを蓄積して、解放することが可能なばね、弾性材料、またはその他の部材などの付勢部材によって促進される。格納可能な注射器が、本明細書で開示される混合装置で使用可能な任意の針回収機構を備えてもよいことはいうまでもない。一例として、それに限定されないが、針回収機構は、国際公開第2006/119570号パンフレット、国際公開第2006/108243号パンフレット、国際公開第2009/003234号パンフレット、および国際公開第2011/075760号パンフレットに記載されているものであってもよい。
【0025】
一実施形態によれば、格納可能な注射器は、付勢部材、プランジャ部材、プランジャ外側部、および1つまたは複数のロック部材を備え、プランジャ部材およびプランジャ外側部が協働し、解放可能に、最初に付勢された状態の前記付勢部材を維持するプランジャと、格納可能な針を備え、格納可能な針がプランジャ部材によって係合可能なカニューレおよび針体を備える針アセンブリとを備える。
【0026】
好ましくは、プランジャシールはプランジャ部材に取り付けられて、前記針体を係合することが可能である。
好ましくは、針アセンブリは、格納可能な針を保持する針シールをさらに備えてもよく、格納可能な針のカニューレは、使用者、患者、またはその他の受取人に混合物質または混合物の送出を許すために、針シールを通過する。
【0027】
少なくとも一実施形態において、混合プランジャは解放リングをさらに備える。好適には、解放リングは、混合装置の混合プランジャの近位端(すなわち、係合可能または接続可能に、第1すなわち近位シールに連結、接続可能、または固定された遠位端の反対側)にある。解放リングは、混合プランジャと別々の要素、または一体でもよい。好ましい実施形態において、解放リングは混合プランジャのより小さな直径の近位部である。格納可能な注射器のプランジャ部材が針体を係合した後、解放リングは針回収を作動させてもよい。針回収の作動時、付勢部材を最初に付勢された状態から伸張できるように、プランジャ部材がプランジャ外側部から解放される。プランジャ外側部は、解放リングとほぼ接触または接続したままであるが、プランジャ部材は、付勢部材の解放によって、近位側へ軸方向に移動させられ、カニューレおよび針体の回収が可能となる。
【0028】
好適には、格納可能な注射器は、1つまたは複数の輸送プランジャロックシステムを備える。前記ロックシステムの一実施形態において、輸送プランジャのプランジャ外側部は、針回収後に、混合プランジャの解放リングを係合可能であるロック部材を備え、その結果、解放リングに対する輸送プランジャのさらなる移動を防ぐ、または妨げることができる。前記ロックシステムの別の実施形態において、プランジャ外側部は、プランジャ部材およびそれとともに係合された針の回収後に、プランジャ部材を係合するクリップを備える。
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態において、格納可能な注射器は、本質的には国際公開第2011/075760号パンフレットに記載される回収機構を、上述の混合プランジャの解放リングへの機能的な変更とともに備える。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、混合装置を組み立てる方法であって、(i)内側バレルの内側チャンバと連通している1つまたは複数の開口を有する内側バレルを覆って同軸上に外側バレルを配置し、外側バレルおよび内側バレルが同軸であることにより外側チャンバを形成し、ここで、外側チャンバは、1つまたは複数の開口の遠位に配置される、流体連通している1つまたは複数のベントを有する工程と、(ii)外側チャンバに、1つまたは複数の開口と解放可能にシール状態に係合するように、シールを挿入する工程とを備える方法を提供する。
【0031】
一実施形態において、方法は、工程(i)の前に、1つまたは複数の開口の遠位に配置される内側バレルの部分への、1つまたは複数のベントを備えるベントキャップの固定をさらに含む。好ましくは、外側バレルの遠位端は、ベントキャップに接続される。
【0032】
好ましくは、方法は、針アセンブリを、1つまたは複数の開口の遠位に配置される内側チャンバに挿入する工程をさらに含む。
さらなる態様において、本発明は混合装置を備える注射器を製造する方法であって、(i)混合装置の外側チャンバに第1の混合物質を配置し、第1の混合物質と接触する第1すなわち近位シールを混合装置の外側チャンバに挿入する工程と、(ii)混合装置の内側チャンバに第2の混合物質を配置する工程と、(iii)輸送プランジャを内側バレルに挿入し、ここで、輸送プランジャは、内側バレルの1つまたは複数の開口の近位側に位置する工程と、(iv)混合プランジャを外側チャンバに取り付け、ここで、混合プランジャは第1すなわち近位シールに接触する工程とを備える方法を提供する。
【0033】
さらに他の態様において、本発明は、混合装置を備える注射器を操作する方法であって、(i)混合装置の混合プランジャを操作し、その結果、複数の物質を混合する工程と、(ii)輸送プランジャを操作し、工程(i)で混合される物質を受取人に輸送する工程とを備える方法を提供する。
【0034】
少なくとも一実施形態において、混合装置を備える注射器の操作方法は、(iii)針回収機構を作動させ、注射器に針を回収する工程をさらに備える。好ましくは、ほぼすべての物質が受取人に輸送された後に、針回収機構が作動する。
【0035】
本明細書の全体にわたって、別段の指示がない限り、「備える」、「備える」、および「備えている」は、排他的ではなく包括的に使用され、規定された整数または整数群は、1つまたは複数の他の規定されていない整数または整数群を含んでもよい。
【0036】
本発明の非限定的な実施形態は、以下の図面を参照して本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】(a)は混合装置の実施形態の側面図を示し、(b)は流体通路の開口を示すために遠位シールを取り除いた、混合装置の実施形態の側面図を示す。
図2】取り付けられる任意選的な安全キャップをさらに備える混合装置の実施形態を示す。
図3A】混合装置を備える格納可能な注射器の実施形態を示す。
図3B】混合装置を備える格納可能な注射器の実施形態の分解組立図を示す。
図4】格納可能な注射器の輸送プランジャの断面図を示す。
図5】混合装置の混合プランジャの押下前に安全キャップを取り外した後の、混合装置を備える格納可能な注射器の実施形態を示す。
図6】混合装置の混合プランジャを押下した後の、混合装置を備える格納可能な注射器の実施形態を示す。
図7】輸送プランジャを押下した後の、混合装置を備える格納可能な注射器の実施形態を示す。
図8】回収前に輸送プランジャによって係合される針アセンブリの実施形態を示す。
図9】プランジャ部材をプランジャ外側部から解放し、ばねの復元および針回収を促進する解放リングの実施形態を示す。
図10】格納可能な注射器のロックシステムの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1(a)および図1(b)を参照すると、混合装置100の実施形態は、壁111および内側チャンバ112を備える内側バレル110と、壁121を備える外側バレル120と、混合プランジャ130とを備える。外側チャンバ140は、内側バレル110の壁111と外側バレル120の壁121との間に形成される。内側バレル110および外側バレル120は、プラスチックおよびガラスを含む複数の材料を任意に使用して製造されてもよいが、好ましくはガラスから製造される。内側バレル110および外側バレル120は、ほぼ同心の関係にあり、内側バレル110および外側バレル120は、ほぼ共通の中心長手方向軸を有する。内側バレル110および外側バレル120は、互いに対して回転できない。
【0039】
外側バレル延長部150は、使用者がつかむのを支援するフィンガーグリップ151A、151Bを備える。外側バレル延長部150は、外側バレル120と一体的に形成されてもよく、または外側バレル120に固定される別々の要素でもよい。外側バレル延長部150は、内唇152とロッキングリング153とをさらに備え、その機能は以下にさらに詳細に記載される。
【0040】
典型的には、外側チャンバ140は液体物質を内包して、内側チャンバ112は固体物質を内包し、それによって、液体物質は、内側チャンバ112で固体物質と混合可能であり、注入のための適切な混合物質を形成する。しかし、少なくとも一実施形態において、外側チャンバ140および内側チャンバ112は両方とも、液体物質と接触する。
【0041】
図1(a)および図1(b)に示す実施形態において、外側バレル120は内側バレル110より短い。この構成はたとえば、熱伝達スリーブ(図示せず)を内側バレル110の部分のまわりに配置し、それと直接接触できるなどの、いくつかの利点を提供する。これは、内側チャンバ112に配置される液体物質の、その場での凍結乾燥を可能にするために有用であり、それは、液体物質を充填し、混合装置100の製造中または製造後に液体物質を粉末に凍結乾燥することを可能にすることによって行われる。
【0042】
他の実施の形態においては、内側バレル110および外側バレル120は、ほぼ同じ長さである。この実施形態は審美的により満足のいくものとなり、外側チャンバ140として追加の容積を提供できる。また、摺動可能に配置される第1すなわち近位シール160および第2すなわち遠位シール170も、外側チャンバ140に配置される。
【0043】
外側バレル120は、複数のベント122を備えるベントキャップ123をさらに備え、それによって、ベントされる空間142は、ベント122と第2すなわち遠位シール170との間に配置される。物質がこのベントされる空間142と接触しないため、ベントされる空間142は無菌でなくてよく、大気に通じていてもよい。この特徴により、操作の混合工程中、第2すなわち遠位シール170は複数のベント122の方への移動が可能となり、その結果、外側チャンバから内側チャンバへの流体の通過のための1つまたは複数の開口114が開く。外側チャンバ140から内側チャンバ112への流体通路は、第2すなわち遠位シール170の位置が移動した結果として無菌のままである。
【0044】
混合プランジャ130は、ボタン131と、外側チャンバ140内で摺動可能で、軸方向に移動可能である円筒状軸体132とを備える。混合プランジャ130は、軸体132に配置され、軸体132から外方に付勢されるバネプロング133A、133Bをさらに備えてもよい。混合プランジャ130を混合装置100の外側チャンバ140に挿入するとき、バネプロング133A、133Bは内方に(すなわち、付勢に対して)移動される。組み立てられた混合装置100において、バネプロング133A、133Bは、以下にさらに詳細に記載されるように、外側チャンバ140からの混合プランジャ130の取り外しを防ぐ。混合プランジャ130は、軸体132に配置され、軸体132から外方に付勢されるロックプロング134A、134B(134Bは見えない)をさらに備える。混合が完了した後、ロックプロング134A、134Bは外方に付勢され、バレル延長部150の内唇152を係合し、混合プランジャ130の近位側への移動しないよう固定し易くする。
【0045】
混合プランジャ130は、円筒状軸体132の近位端(すなわち、使用者に近い側)で、解放リング136をさらに備える。解放リング136は、混合プランジャ130と別々の要素、または一体の要素でもよい。好ましい実施形態において、解放リング136は混合プランジャ130のより小さな直径の近位部である。解放リング136の機能は、以下にさらに詳細に記載される。
【0046】
第1すなわち近位シール160は、混合プランジャ130の円筒状軸体132の遠位端135と接触している。第2すなわち遠位シール170は、外側チャンバ140内の近位シール160から遠位に置かれる。第1すなわち近位シール160は、混合プランジャ130の軸体132の接触および移動により、外側チャンバ140内で軸方向に摺動可能に移動可能である。図1(b)で最もよく分かるように、内側バレル壁111の開口114は、流体が外側チャンバ140から内側チャンバ112に流れ込むことを可能にする流体通路を提供する。最初は、第2すなわち遠位シール170は、開口114とシール状態で係合する(たとえば、開口114を覆う。図1(a)と図1(b)を比較する)。
【0047】
図2に示す実施形態において、任意選的な安全キャップ180は、外側バレル120のブラケット125に、着脱可能に取り付けられる。安全キャップ180は、リング本体182、および遠位シール170に隣接または接触して、それぞれのベント122(図2では見えない)に挿入される突出部181を備える。これは、運搬中の気圧変動に応じた、または、使用者による意図された作動より前の混合プランジャ130の不注意による移動による、遠位シール170の不必要な移動を防ぐ。
【0048】
ここで、図3〜4および図8〜10を参照して、混合装置は、輸送プランジャ200と格納可能な針アセンブリ400とを備える格納可能な注射器1000の要素である。輸送プランジャ200は、混合装置100の内側バレル110の内側チャンバ112で、軸方向に摺動可能に可動であり、その結果、内側チャンバ112の流体内容物を輸送し、その後、格納可能な針400を回収する。
【0049】
プランジャ200は、軸体211と、環状の棚部212と、シール係合部材216とを備えるプランジャ部材210を備え、この実施形態において、シール係合部材216はネジ突出部217であり、プランジャシール800の相補的な、ねじ切りした凹部820と係合する。プランジャシール800は、針係合部810をさらに備える。
【0050】
プランジャ200は、基部225およびヘッド部222を備えた細長い本体221と、ロック部材227とを有する、プランジャ外側部220をさらに備える。
ボタン231と、アーム232と、軸体233とを備える制御棒230は、プランジャ部材210に解放可能に接続される。プランジャ200は、プランジャ部材210とプランジャ外側部220との間に取り付けられる圧縮されたばね270をさらに備え、最初は、プランジャ部材210の棚部212とプランジャ外側部220の基部225との間で圧縮された状態に保持される。少なくとも一実施形態において、制御棒230は、軸体233を介してプランジャ部材210と解放可能に連結され、それは任意選的な脆弱な連結部234(図10に示す)によって、プランジャ部材210に解放可能に接続される。制御棒230は、プランジャ外側部220にも解放可能に係合し、その結果、ばね270を、プランジャ部材210の環状の棚部212と細長い部分221のプランジャ外側部220の基部225との間で保持された最初の圧縮された状態に保つ。最初は、アーム232の棚部235は、プランジャ外側部220の縁229に接し、その結果、制御棒230を保持して、プランジャ外側部220に対する制御棒230の軸方向の移動を防ぐ。しかし、制御棒230のアーム232は弾性的に可撓性があって、図4に示す実線の矢印の方向に可動であり、それは、以下に記載されるように、プランジャ外側部220から制御棒230が解放されることにより、ばね270の復元を促進させる。
【0051】
針アセンブリ400は、カニューレ410および針体420を備える格納可能な針400と、保持器300と、針シール430と、イジェクタ600とを備える。
混合装置100の操作は、図1(a)、図1(b)、図5、および図6を特に参照することにより記載される。これらの実施形態において、外側チャンバ140は流体物質を内包して、内側チャンバ112は固体物質を内包し、それによって、流体は、内側チャンバ112で固体物質と混合可能であり、注入のための適切な混合された流体物質を形成する。図5で明らかなように、安全キャップ180(図2に示す)は外側バレル120から取り外され、外側チャンバ140での第2すなわち遠位シールの移動が可能である。
【0052】
最初は、第2すなわち遠位シール170は内側バレル壁111の開口114を覆い、外側チャンバ140から内側チャンバ112への液体の移動を防ぐ。実線の矢印の方向への混合プランジャ130の押下(すなわち、斜線の矢印の方向への、針400に向けての軸方向の移動)は、第1すなわち近位シール160を外側チャンバ140で遠位に押しやり、それは、外側チャンバ140に内包される液体を、第2すなわち遠位シール170に(すなわち、格納可能な針400の方へ)移動させ、その結果、開口114が開き、外側チャンバ140から内側チャンバ112への流体の移動が可能となる。
【0053】
図6に示すように、斜線の矢印の方向への混合プランジャ130の連続した押下は、第1すなわち近位シール160が第2すなわち遠位シール170と接触するまで、外側チャンバ140内の第1すなわち近位シール160をさらなる遠位に移動させ、外側チャンバ140から内側チャンバ112へ流体を連続して流す。シール160および170は、外側チャンバ140内で、第2すなわち遠位シール170がベントキャップ123に接触する、移動の端部に到達してもよい。この位置で、どちらかのシール160が、開口114とシール状態に係合する(すなわち、覆っている)、または、シール160および170の両方が、開口114と部分的にシール状態に係合してもよい。たとえば、外側チャンバ140から内側チャンバ112への流動が、開口114を完全に開放することを第2すなわち遠位シール170に要求しない場合、後者は可能である。
【0054】
この時点において、外側チャンバ140から内側チャンバ112への流体の送出は完了する。混合プランジャ軸体132の(外方に付勢される)ロックプロング134A、134Bが、バレル延長部150の内唇152に係合するため、混合プランジャ130は、外側チャンバ140から引き出すことができず、これ以降の、混合プランジャ130の近位側への(すなわち、使用者の方への)移動を防ぐロックを形成する。混合の後に混合プランジャ130を固定することは、輸送プランジャ200の力を、外側チャンバ140へと液体物質を押し戻す代わりに、針400による液体物質の注入に向けることに有用とすることができる。また、これは、開口114とシール状態で係合する第1すなわち近位シール160の最終的な位置決めによって達成されてもよい。同様に、混合プランジャ130の完全な軸方向の移動、および/または混合プランジャ130と外側バレル120の1つまたは複数の移動止め態様との間の係合が、輸送プランジャ200または内側バレル110のロック態様をアンロックして、輸送プランジャの軸方向の押下を可能としてもよい。これは有用な使用者フィードバックを提供し、適切な注入手順が装置によって続けられること、および薬剤処理の再構成または混合が、患者への注入前に可能であることを保証する。
【0055】
第2すなわち遠位シール170とベント122との間のベントする空間142が、混合装置100の任意の物質と決して接触しないことはいうまでもなく、それゆえに、ベントする空間142の領域で無菌状態を維持する必要はない。ベントする空間142は空気で充填してもよく、それは、混合プランジャ130の押下および第2すなわち遠位シール170の軸方向の移動時に、外側バレル120と内側バレル110との間およびベント122と第2すなわち遠位シールとの間の環状空間から追い出される。さらに、最初は、第2すなわち遠位シール170が、内側バレル110の壁111の開口114を覆うため、外側チャンバ140と内側チャンバ112との間のこの流体通路の無菌状態は、混合装置100の使用中、維持される。流体は、常に非無菌部分に接触することなく、外側チャンバ140から内側チャンバ112に流されるため、第2すなわち遠位シール170のみ、外側バレル120および内側バレル110の任意の非無菌部分と潜在的に接触している。
【0056】
また、格納可能な注射器1000が「閉鎖系」であることもいうまでもなく、それは、針注入による以外に流体通路のベントがないことを意味する。したがって、輸送プランジャ200は、混合プランジャ130の遠位への移動に応じて、内側チャンバ112内で近位側へ(すなわち、使用者の方へ)軸方向に移動してもよい。これは、混合プランジャ130の遠位への移動が、外側チャンバ140から内側チャンバ112に液体を押しやり、内側チャンバ112内の圧力および/または流体体積を増加させるためである。格納可能な針400の上で依然として閉じられている剛性針シース119により、内側バレル120内で近位側に輸送プランジャ200を押しやる以外に、体積膨張のための空間はない。混合が完了したこと、および注入を開始してもよいことが、視覚および触覚での指示により使用者に提供されるため、これは望ましい応答である。
【0057】
内側チャンバ112での物質の混合完了後、注射器1000はすぐに使える。剛性針シールド119が取り外され、針400のカニューレ410が受取人に挿入され、輸送プランジャ200が押し下げられ、受取人に内側チャンバ112の混合された流体内容物が輸送される。物質の混合をさらに促進するために注射器を手動で振り動かすこと、および/または注入の前に残気を取り除くために注射器の準備をすることなどの標準的な医療行為は、針の挿入および流体内容物の注入の前に行ってもよい。
【0058】
本発明の少なくとも一実施形態において、針回収は、国際公開第2011/075760号パンフレットに記載されていることと本質的に同じであり、図7〜9を参照して以下のように簡単に記載される。流体内容物を送出する間、輸送プランジャ200は、図7の実線の矢印の方向に、バレル110を通って軸方向に移動する。図8に示すように、プランジャシール800は針シール430を圧迫し、次に、イジェクタ600を圧迫する。これにさらに、イジェクタリング610は、保持器300のアーム320A、320Bのフック端321A、321Bを、図8の実線の矢印の方向である半径方向外方に移動させ、その結果、保持器300から針体420が解放され、後続の回収のために格納可能な針400が解放される。この時点で、プランジャシール800のはめ込まれた座部810は、格納可能な針体420のセグメント425と係合し、凹部860は、カニューレ410の流体端部412を受容している。これにより、格納可能な針400はプランジャ部材210に有効に連結される。
【0059】
図9に示すように、格納可能な針400を、流体内容物の送出の終わりに回収するために、圧縮されたばね270を復元する必要があり、それはプランジャ外側部220からプランジャ部材210が解放されることによって促進される。この解放は、解放リング136によって促進される。プランジャ部材210およびプランジャ外側部220がほぼ完全に押し下げられて(すなわち、斜線の矢印に従って遠位方向へ軸方向に移動させられて)、内側チャンバ112から流体を注入するとき、一方または両方が解放リング136と接触してもよい。この接触により、解放リング136は、アーム232を半径方向内方に(実線の矢印の方向に)移動させ、プランジャ外側部220の縁229との係合をなくす。この解放により、圧縮されたばね270の復元、およびプランジャ部材210の棚部212を押すことが可能となり、その結果、連結された制御棒230により、プランジャ部材210を回収する。プランジャ外側部220は、解放リング136とほぼ接触または接続したままであるが、針体420およびカニューレ410に連結されたプランジャ部材210は、ばね270の復元によって、近位側へ軸方向に移動させられ、その結果、カニューレ410および針体420を回収する。
【0060】
好適には、格納可能な注射器1000は、輸送プランジャ200のための1つまたは複数のロックシステムを備える。図10に示すように、前記ロックシステムの一実施形態において、輸送プランジャ200のプランジャ外側部220は、針回収後に解放リング136の下側137を係合する端部228を備えるロック部材227を備え、その結果、図10に示すように、解放リングに対する輸送プランジャ200のさらなる移動を防ぐ、または妨げることができる。したがって、最初の、針回収の作動を支援することに加えて、解放リング136は、初期使用の後に輸送プランジャ200を固定し、その結果、再利用を防ぐために、二次的に機能してもよい。
【0061】
また、プランジャ200のための、別の前記1つまたは複数のロックシステムも、図10に示される。回収後、プランジャ外側部220のクリップ224およびプランジャ部材210の係止溝219は協働して、プランジャ部材210およびプランジャ外側部220を一緒に固定するロックシステムを形成し、プランジャ外側部220に対するプランジャ部材210の移動を防ぐ。
【0062】
プランジャ部材210および格納可能な針410の回収の終わりに、制御棒230は、任意選択的に、任意選的な脆弱な連結部234で、プランジャ部材210から分離し、手動で格納可能な注射器100から取り外し、「清潔な」廃棄物として廃棄でき、そのため、プランジャ部材210が注射器から外に突出し、輸送プランジャ200をバレル110に押し戻そうとし、針(図示せず)を再係合しようとすることは、仮にあってもほとんどない。この任意選的な脆弱な連結部234(図10に示される)は、注射器が回収位置にあり、任意選択的に、再利用が防がれているとき、ヘッド部222を越えて近位側に延在する点で、プランジャ部材210に沿って配置されてもよい。
【0063】
混合装置100のいくつかの他の変形形態が考えられる。剛性針シース119に代わるものとして、ベント剛性針シールドが、第1の保護要素および第2の保護要素を含んでもよく、要素が拡張した状態に別々に摺動されるとき、ベントが発生してもよいように、第1および第2の要素は摺動可能に係合されている。第1および第2の要素が係合して、収縮した状態にあるとき、ベントは針端部で許可されない。しかし、第1および第2の要素が係合しているが、拡張した状態にある(たとえば、軸に沿って別々に摺動される)とき、針を患者にさらす危険なしに、針を通して空気をベントすることが可能となる。必要に応じ、針によるそのようなベントを使用して、外側チャンバ140から内側チャンバ112への流体の移動時に、内側チャンバ112内の空気体積および/または圧力の変化をベントしてもよい。
【0064】
別の変形形態において、押下の終わりに、混合プランジャ130を、混合プランジャ130によって遠位方向へ軸方向に移動した点で係合する、相補的な移動止め態様(図示せず)を介して外側バレル120に固定し、その後の近位方向への軸方向移動を防いでもよい。これらの相補的な移動止めは、上述のロックプロング134A、134Bとともに、または、それに代わるものとして使用されてもよい。
【0065】
さらに別の変形形態において、バレル延長部150は、遠位方向への混合プランジャの完全な軸方向への移動時に、混合プランジャ130を係合する外側バレル120の前記の相補的な移動止め態様(図示せず)を含んでもよい。
【0066】
さらに別の変形形態において、外側チャンバ140は、たとえばもう一つの脆弱または多孔性の膜、壁、シール部材などにより、異なる流体物質または固体物質を内包する各区画に区分されてもよく(すなわち、複数の区画を構成する)、それによって、混合プランジャ130の押下は、それぞれの異なる流体物質または固体物質の混合を促進する。さらに、または、あるいは、内側チャンバ112が同じように区分され、各区画が異なる流体物質または固体物質を備えてもよい。したがって、混合装置100は、混合および注入のために、2つ以上の物質を含んでもよい。
【0067】
本明細書で開示される混合装置および注射器が、注射器による送出の前に複数の物質を混合するための、効率的で簡単に操作されるシステムを提供することは、上述からいうまでもない。上述のような多くの従来技術の混合装置とは異なり、使用前に、内側バレルおよび外側バレルを回転、または別の方法で配置し、流体通路を開けるまたは合わせる必要はない。外側バレルのベントおよび内側バレルの開口に関する遠位シールの位置決めが、十分なベントを提供している間、混合装置の内容物を無菌に保ち、それは上述のような多くの従来技術の混合装置とは対照的である。
【0068】
混合装置100、格納可能な注射器1000、またはいずれの個々の要素の組み立てや製造においては、当該技術分野における複数の公知の材料および方法論を利用してもよい。たとえば、イソプロピルアルコールおよびヘキサンなどの複数の公知の洗浄液は、要素や装置を洗浄するために使用されてもよく、複数の公知の粘着剤または接着剤は、製造工程で同様に使用されてもよい。さらに、公知のシリコン処理流体および工程は、新規要素および新規装置の製造中に、使用されてもよい。1つまたは複数の開口を内側バレルに加えるために、機械的またはレーザ穴あけ加工などの、公知の穴あけまたは中ぐりの方法論が使用されてもよい。さらにまた、公知の殺菌工程が、最終製品の無菌状態を確実にするために、1つまたは複数の製造または組み立て段階で使用されてもよい。
【0069】
一実施形態において、混合装置を組み立てる方法は、以下の工程を含む。(i)内側バレルの遠位端に1つまたは複数のベントを有するベントキャップを固定し、ここで、内側バレルが通る1つまたは複数の開口を有し、ベントキャップは1つまたは複数の開口の遠位に固定される工程と、(ii)内側バレルを覆って同軸上に外側バレルを配置し、外側バレルの遠位端をベントキャップに接続し、ここで、外側バレルは、内側バレルの直径より大きい直径を有し、バレルの間の環状空間が外側チャンバを形成するように、バレルがそろえられる工程と、(iii)遠位シールを外側チャンバに挿入して、遠位シールを1つまたは複数の開口とシール状態で係合するように置く工程と、(iv)針アセンブリを内側チャンバに挿入し、針アセンブリを開口の遠位に存在するようにする工程。
【0070】
上述のように、接着剤または粘着剤は、混合装置の1つまたは複数の要素を互いに固定するために利用されてもよい。あるいは、混合装置の1つまたは複数の要素は、統一された要素でもよい。たとえば、ベントキャップは、内側バレルおよび外側バレルに接着剤で固定される別々の要素でもよく、またはベントキャップは、内側バレルに接着される外側バレルの遠位端であらかじめ形成された態様でもよい。これらの要素は、個々に、または一緒に無菌化されてもよく、無菌環境で組み立てても、または組み立て後に無菌化されてもよい。1つまたは複数のバレルは、組み立て前または組み立て後に、シリコン処理されてもよい。
【0071】
混合装置は、混合注射器の要素として利用されてもよい。一実施形態において、混合装置を備える注射器を製造する方法は、以下の工程を含む。(i)外側チャンバの第1の流体物質を少なくとも部分的に充填し、第1の流体物質と接触して近位シールを外側チャンバに挿入する工程と、(ii)内側チャンバの第2の流体物質を少なくとも部分的に充填して、輸送プランジャを内側バレルに挿入し、ここで、輸送プランジャが内側バレルの開口に近位側に位置する工程と、(iii)混合プランジャを外側チャンバに取り付け、ここで、混合プランジャが、近位シールと接触して停止してもよい工程。
【0072】
複数の公知の充填工程および装置は、注射器製造工程の充填工程を実現するために利用されてもよい。一実施形態において、第2の流体物質は液体物質として充填されてもよく、特定のバレル熱交換装置を使用して、その場で凍結乾燥されてもよい。これらの製造および組み立て工程において記載される針アセンブリ、輸送プランジャおよびその他の要素は、前述したものでもよく、または、これらの要素と同じ機能を実現する複数の同様の要素であってもよい。
【0073】
本明細書の全体にわたって、目標は、本発明の好ましい実施形態を記述することであり、本発明を任意の一実施形態または特徴の特定の集合体に限定することではない。さまざまな変更形態および変形形態が、本発明から逸脱することなく、記載および図示される実施形態に対してなされてもよい。
【0074】
本明細書に引用される、優先権出願である2011年8月5日に出願された米国仮特許出願第61/515,554号明細書および各特許の開示、ならびに、科学的文献、コンピュータプログラム、およびアルゴリズムは、その全体が参照により組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
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図10