(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明による半導体基板の製造方法は、窒化物半導体を含むバッファ層を基板上に成長させる工程と、窒化物半導体を含む電子供給層をバッファ層上に成長させる工程とを備える。バッファ層を成長させる工程において、アンモニアガスをN原料とするMOCVD法(有機金属気相成長法:Metalorganic Vapor Chemical Deposition)を用いるとともに該アンモニアガスに窒素ガスを添加する。
【0012】
また、本発明による半導体装置の製造方法は、窒化物半導体を含むバッファ層を基板上に成長させる工程と、窒化物半導体を含む電子供給層をバッファ層上に成長させる工程と、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極を前記電子供給層上に形成する工程とを備える。バッファ層を成長させる工程において、アンモニアガスをN原料とするMOCVD法を用いるとともに該アンモニアガスに窒素ガスを添加する。
【0013】
窒化物半導体層を成長させる際、その成長速度は、原料ガスの反応による膜厚の増加と、昇華による膜厚の減少とのバランスによって定まる。すなわち、成長温度を上げると昇華による膜厚の減少量が大きくなり、結果として成長速度が低下する。逆に、成長温度を下げると原料ガスの反応による膜厚の増加が優位となり、成長速度が速くなる。しかし、成長速度を速くすると、成長途中の窒化物半導体に生じる結晶欠陥を埋め込むことが難しくなり、成長後の窒化物半導体における表面ピット密度が増加してしまう。従って、表面ピットの生成を抑えるためには、成長温度を上げて成長速度を遅くすることが望ましい。
【0014】
しかしながら、成長温度を上げて昇華作用を高めると、窒化物半導体の成長中に、GaNが解離して窒素が蒸発するため、窒素原子(N)が抜けることによる結晶欠陥が生じ易くなる。これにより、III族原子に対して窒素原子(N)が少なくなる、いわゆるストイキオメトリーからずれた結晶構造となり、結晶中にアクセプタが生じて、例えばHEMTの場合、ピンチオフ時のリーク電流が増大してしまう。
【0015】
これに対し、上記の半導体基板の製造方法及び半導体装置の製造方法では、バッファ層を成長させる工程において、アンモニアガスをN原料とするMOCVD法を用いるとともに該アンモニアガスに窒素ガスを添加している。このように、N原料であるアンモニアガスに窒素ガスを添加することにより、成長中の表面近傍の窒素分圧を高めることで窒素原子(N)の抜けを低減することができる。従って、上記の各製造方法によれば、窒化物半導体の成長面に形成される表面ピットを低減できる。また、結晶中のアクセプタの生成を抑えて、ピンチオフ時におけるリーク電流を低減することができる。
【0016】
上記の各製造方法では、バッファ層を成長させる工程における成長温度が1000℃以上であってもよい。
【0017】
上記の各製造方法では、アンモニアガス及び窒素ガスを、MOCVD装置の共通の配管を通じて反応室内に供給してもよい。これにより、基板表面近傍の窒素分圧をムラなく高めることができる。
【0018】
上記の各製造方法では、アンモニアガスの流量に対し、窒素ガスの添加量を10〜100ppmとしてもよい。このような微量の窒素ガスを添加することにより、窒化物半導体の結晶構造を保ちつつ、上述した窒素原子(N)の抜けを効果的に低減することができる。
【0019】
上記の各製造方法では、電子供給層を成長させる工程において、アンモニアガスをN原料とするMOCVD法を用いるとともに該アンモニアガスに窒素ガスを添加してもよい。これにより、電子供給層においても表面ピットを低減し、またピンチオフ時のリーク電流をより一層低減することができる。或いは、電子供給層を成長させる工程において電子供給層にn型不純物をドープしてもよい。この場合、結晶欠陥に起因するアクセプタをn型不純物によって補償することができるので、ピンチオフ時のリーク電流をより一層低減することができる。
【0020】
上記の各製造方法では、バッファ層を成長させる工程において、キャリアガスとして水素ガスを供給してもよい。これにより、窒素ガスの添加による上記作用を効果的に得ることができる。
【0021】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る半導体基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体基板の構成を示す断面図である。この半導体基板1Aは、HEMTの作製に好適に用いられるエピタキシャル基板であって、
図1に示されるように、基板11と、核生成層12と、バッファ層13と、電子供給層15と、保護層16とを備える。
【0023】
基板11は、結晶成長用の基板であり、例えばSiC基板、Si基板、サファイア基板といった異種基板である。一例では、基板11は半絶縁性のSiCからなる。基板11は、主面11a及び裏面11bを有し、主面11aを半導体成長面として提供する。
【0024】
核生成層12は、基板11の主面11a上に形成された層であり、SiCなどの異種基板上に窒化物半導体を成長させる際に結晶性を高めるための層である。核生成層12は、窒化物半導体を主に含み、一例ではアンドープAlNからなる。核生成層12の厚さは、10nm〜50nmであり、一例では15nmである。
【0025】
バッファ層13は、基板11上(本実施形態では核生成層12上)にエピタキシャル成長した層である。バッファ層13は、窒化物半導体を主に含み、一例ではアンドープGaN層を含む。バッファ層13の厚さは、0.5μm〜2μmであり、一例では1.0μmである。なお、この半導体基板1AからHEMTが作製されると、バッファ層13の表面13a付近には、チャネル領域14が形成される。チャネル領域14は、バッファ層13と電子供給層15との界面に2次元電子ガス(2DEG)が生じることにより形成される。
【0026】
電子供給層15は、バッファ層13の表面13a上にエピタキシャル成長した層である。電子供給層15の厚さは、例えば10〜50nmであり、一例では24nmである。電子供給層15は、窒化物半導体を主に含み、一例ではアンドープAlGaNからなる。電子供給層15がアンドープAlGaNからなるとき、Gaに対するAlの組成比は例えば0.20である。
【0027】
保護層16は、電子供給層15上にエピタキシャル成長した、いわゆるキャップ層である。保護層16は、電子供給層15、バッファ層13及び核生成層12を保護する。保護層16の厚さは、2nm〜10nmであり、一例では5nmである。保護層16は、窒化物半導体を主に含み、一例ではアンドープGaNからなる。
【0028】
図2は、本実施形態による半導体基板1Aを用いて作製される、高電子移動度トランジスタ(HEMT)2Aの構成を示す断面図である。
図2に示されるように、このHEMT2Aは、基板11と、核生成層12と、バッファ層13と、電子供給層15と、保護層16と、ソース電極21と、ドレイン電極22と、ゲート電極23と、保護膜24とを備える。なお、基板11、核生成層12、バッファ層13、電子供給層15、及び保護層16に関し、以下に記述する事項を除く構成は、前述した半導体基板1Aと同様である。
【0029】
ソース電極21及びドレイン電極22は、保護層16の一部が除去された部分に設けられている。つまり、ソース電極21及びドレイン電極22は、電子供給層15の表面15a上に設けられている。ソース電極21及びドレイン電極22は、オーミック電極であり、例えばチタン(Ti)層とアルミニウム(Al)層との積層構造を有する。この場合、電子供給層15とチタン層とが接触する。アルミニウム層は、膜厚方向においてチタン層によって挟まれていてもよい。
【0030】
ゲート電極23は、保護層16上であって、ソース電極21とドレイン電極22との間に設けられている。ゲート電極23は、例えばニッケル(Ni)層と金(Au)層との積層構造を有する。ゲート電極23は、電子供給層15の表面15a上に設けられてもよい。
【0031】
保護膜24は、保護層16、ソース電極21、ドレイン電極22、及びゲート電極23を覆うように設けられており、これらを保護する。保護膜24は、例えば窒化ケイ素(SiN)膜である。
【0032】
なお、ソース電極21及びドレイン電極22よりも外側に位置する電子供給層15及びバッファ層13には、例えばAr等のイオンが注入されることにより、素子分離用のアイソレーション領域26が形成されている。
【0033】
以上の構成を備える本実施形態の半導体基板1A及びHEMT2Aの製造方法について説明する。
図3は、この製造方法の各工程を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、核生成層12、バッファ層13、電子供給層15、及び保護層16をMOVPE法により成長させる。
【0034】
まず、基板11に対して薬品により表面洗浄処理を行ったのち、基板11を、MOCVD装置の反応室内のサセプタに設置する(工程S1)。次に、反応室内圧力を例えば100Torr(13.3kPa)に設定し、基板11の温度が例えば1140℃になるように基板11を加熱する。そして、水素ガスを流しながら、当該温度を所定時間(例えば20分間)保持する(工程S2)。
【0035】
続いて、基板11の温度を所定温度(例えば1100℃)まで下げたのち、III族原料ガスとして例えばTMA(トリメチルアルミニウム)をキャリアガスとともに反応室に供給し、同時に、V族原料ガスとしてアンモニアガスを反応室に供給する。キャリアガスは、例えば水素ガスである。これにより、AlN核生成層12が基板11上に成長する(核生成層形成工程S3)。この工程では、アンモニアガスを供給するための供給ラインに微量の窒素ガス(N
2ガス)を添加し、アンモニアガスと共に反応室内に供給する。このとき、アンモニアガス及び窒素ガスを、MOCVD装置の共通の配管を通じて反応室内に供給するとよい。
【0036】
続いて、III族原料ガスとして例えばTMG(トリメチルガリウム)をキャリアガスとともに反応室に供給し、同時に、V族原料ガスとしてアンモニアガスを反応室に供給する。キャリアガスは、例えば水素ガスである。これにより、GaNバッファ層13が核生成層12上にエピタキシャル成長する(バッファ層形成工程S4)。この工程では、GaNバッファ層13の成長速度が例えば240ピコメートル/秒になるように、基板11の温度及び原料ガスの流量を設定するとよい。さらに、この工程においても、アンモニアガスを供給するための供給ラインに微量の窒素ガス(N
2ガス)を添加し、MOCVD装置の共通の配管を通じて反応室内に供給する。なお、一実施例では、基板11の温度を1060℃とし、TMG流量を53sccmとし、アンモニア流量を20slmとし、圧力を100Torrとする。そして、窒素ガスの添加量を、アンモニアガスの流量に対して10〜100ppm、一実施例では40ppmとする。
【0037】
続いて、III族原料ガスとして例えばTMG及びTMAをキャリアガスとともに反応室に供給し、同時に、V族原料ガスとしてアンモニアガスを反応室に供給する。キャリアガスは、例えば水素ガスである。これにより、AlGaN電子供給層15がバッファ層13上にエピタキシャル成長する(電子供給層形成工程S5)。この工程では、基板11の温度をバッファ層形成工程S4と同じ温度(1060℃)のまま維持する。また、この工程においても、アンモニアガスを供給するための供給ラインに微量の窒素ガス(N
2ガス)を添加し、アンモニアガスと共に反応室内に供給する。アンモニアガスに対する窒素ガスの添加量は、バッファ層形成工程S4と同じである。例えば、窒素ガスは、アンモニアガスと同時に供給する。
【0038】
続いて、基板11の温度を電子供給層形成工程S5と同じ温度(1060℃)のまま維持しつつ、III族原料ガスとして例えばTMGをキャリアガスとともに反応室に供給し、同時に、V族原料ガスとしてアンモニアガスを反応室に供給する。これにより、GaN保護層16がエピタキシャル成長する(保護層形成工程S6)。この工程においても、アンモニアガスを供給するための供給ラインに微量の窒素ガス(N
2ガス)を添加し、アンモニアガスと共に反応室内に供給する。アンモニアガスに対する窒素ガスの添加量は、バッファ層形成工程S4と同じである。
【0039】
以上の工程により、本実施形態の半導体基板1Aが作製される。続いて、HEMT2Aを作製するために、保護層16をエッチングすることにより開口を形成し、該開口から露出した電子供給層15の表面15aからイオン注入を行うことにより、アイソレーション領域26を形成する(工程S7)。続いて、保護層16を更にエッチングして開口を拡げたのち、該開口内における電子供給層15上にソース電極21とドレイン電極22を形成する。そして、保護層16上にゲート電極23を形成する(工程S8)。その後、保護膜24を形成して保護層16、ソース電極21、ドレイン電極22、及びゲート電極23を覆う(工程S9)。これらの工程を経て、HEMT2Aが完成する。
【0040】
以上に説明した、本実施形態による半導体基板1A及びHEMT2Aの製造方法によって得られる効果について説明する。前述したように、窒化物半導体層を成長させる際、その成長速度は、原料ガスの反応による膜厚の増加と、昇華による膜厚の減少とのバランスによって定まる。ここで、
図4(a)は、GaN層の成長温度(℃)と成長速度(pm/s)との関係をプロットした例を表すグラフである。
図4(a)に示されるように、成長温度を上げると昇華による膜厚の減少量が大きくなり、結果として成長速度が低下する。逆に、成長温度を下げると原料ガスの反応による膜厚の増加が優位となり、成長速度が速くなる。
【0041】
しかし、成長速度を速くすると、成長途中の窒化物半導体に生じる結晶欠陥を埋め込むことが難しくなり、成長後の窒化物半導体における表面ピット密度が増加してしまう。
図4(b)は、GaN層の成長速度(pm/s)とピット密度(1/cm
2)との関係をプロットした例を示すグラフである。
図4(b)からも、傾向として、成長速度を速くすると表面ピット密度が増加することが理解される。従って、表面ピットの生成を抑えるためには、成長温度を上げて成長速度を遅くすることが望ましい。
【0042】
しかしながら、成長温度を上げて昇華作用を高めると、窒化物半導体の成長中に、GaNが解離して窒素が蒸発するため、窒素原子(N)が抜けることによる結晶欠陥が生じ易くなる。これにより、III族原子に対して窒素原子(N)が少なくなる、いわゆるストイキオメトリーからずれた結晶構造となり、結晶中にアクセプタが生じて、ピンチオフ時のリーク電流が増大してしまう。
【0043】
これに対し、本実施形態による半導体基板1A及びHEMT2Aの製造方法では、バッファ層13を成長させる工程において、アンモニアガスをN原料とするMOCVD法を用いるとともに該アンモニアガスに窒素ガスを添加している。このように、N原料であるアンモニアガスに窒素ガスを添加することにより、成長中の窒素原子(N)の蒸気圧を高くして、窒素原子(N)の抜けを低減することができる。従って、本実施形態によれば、窒化物半導体の成長面に形成される表面ピットを低減でき、また、結晶中のアクセプタの生成を抑えて、ピンチオフ時におけるリーク電流を低減することができる。
【0044】
図5は、GaN層の成長速度(pm/s)と、
図3に示されたHEMT2Aにおけるピンチオフ時のリーク電流(A/mm)との関係を示すグラフであって、プロットP1は本実施形態を示し、プロットP2は比較例としてアンモニアガスに窒素ガスを添加しない場合を示している。
図5に示されるように、比較例では、成長速度が遅くなるほどピンチオフ時のリーク電流が増大する傾向がある。これに対し、本実施形態では、比較例と較べて、成長速度が遅くなってもピンチオフ時のリーク電流が抑えられている。このように、本実施形態の製造方法によれば、成長速度を遅くすることで表面ピットの形成を抑制でき、また、成長速度を遅くしてもピンチオフ時のリーク電流を低減することができる。表面ピットの密度は、100個/cm
2以下であることが好ましい。
【0045】
また、本実施形態のように、アンモニアガス及び窒素ガスを、MOCVD装置の共通の配管を通じて反応室内に供給してもよい。これにより、基板表面近傍の窒素分圧をムラなく高めることができる。
【0046】
また、本実施形態のように、アンモニアガスの流量に対し、窒素ガスの添加量を10〜100ppmとしてもよい。このような微量の窒素ガスを添加することにより、窒化物半導体の結晶構造を保ちつつ、上述した窒素原子(N)の抜けを効果的に低減することができる。
【0047】
また、本実施形態のように、電子供給層15を成長させる工程において、アンモニアガスをN原料とするMOCVD法を用いるとともに該アンモニアガスに窒素ガスを添加してもよい。これにより、電子供給層15においても表面ピットを低減し、またピンチオフ時のリーク電流をより一層低減することができる。更に、保護層16を成長させる工程においても、N原料であるアンモニアガスに窒素ガスを添加してもよい。これにより、保護層16においても表面ピットを低減し、またピンチオフ時のリーク電流をより一層低減することができる。
【0048】
また、本実施形態のように、バッファ層13、電子供給層15、及び保護層16を成長させる工程において、キャリアガスとして水素ガスを供給してもよい。これにより、窒素ガスの添加による上記作用を効果的に得ることができる。
【0049】
なお、電子供給層15及び保護層16の厚さはnmオーダーであり、バッファ層13の厚さ(例えば1μm)と比べて格段に薄い。従って、リーク電流の殆どはバッファ層13に起因すると考えられるので、電子供給層15及び保護層16を成長させる各工程においては、窒素ガスの添加を省いてもよい。
【0050】
(第1変形例)
上記実施形態では電子供給層15及び保護層16を成長させる工程においてもアンモニアガスに窒素ガスを添加しているが、これらの工程では、窒素ガスの添加に代えて、電子供給層15及び保護層16にn型不純物をドープしてもよい。すなわち、電子供給層15及び保護層16をそれぞれ成長させる際に、n型のドーピングガス(例えばSiH
4)を供給する。なお、n型ドーピングガスの流量は、例えば不純物濃度が1.5×10
18(1/cm
3)となるように設定するとよい。
【0051】
このように、電子供給層15及び保護層16にn型不純物をドープすることによって、窒化物半導体の成長中に生じる結晶欠陥に起因するアクセプタをn型不純物によって補償することができる。従って、ピンチオフ時のリーク電流をより一層低減することができる。また、n型不純物が伝導キャリアとしても作用するので、シート抵抗を上記実施形態よりも低減することができる。その結果、HEMTにおける最大順電流(Ifmax)を増大させることができる。
【0052】
ここで、バッファ層13成長時に窒素ガスを添加しない比較例、上記実施形態、及び本変形例のHEMTを作製し、シート抵抗値、最大順電流(Ifmax)、及びピンチオフ時のリーク電流値を測定した。比較例のHEMTでは、シート抵抗値が530Ω/□、Ifmaxが760mA/mm、リーク電流値が5.0×10
-5A/mmであった。また、上記実施形態のHEMTでは、シート抵抗値が530Ω/□、Ifmaxが760mA/mm、リーク電流値が9.0×10
-6A/mmであった。これに対し、本変形例のHEMTでは、シート抵抗値が520Ω/□、Ifmaxが780mA/mm、リーク電流値が1.0×10
-5A/mmであった。このように、本変形例によれば、比較例と較べてピンチオフ時のリーク電流値を低減することができ、且つ、上記実施形態と較べてシート抵抗値を低減し、Ifmaxを増大させることができる。
【0053】
なお、バッファ層13に関しては、窒素を添加しない場合のアクセプタ密度は1.0×10
16(1/cm
3)以下と極めて低いが、このような微量のn型不純物をドープすることは難しい。従って、n型不純物のドープによるアクセプタ補償は困難である。同時に、不純物準位に起因するキャリア(電子)の充放電によるドリフト特性の悪化が懸念される。これに対し、バッファ層13の成長の際に窒素ガスをアンモニアガスに添加すれば、バッファ層13の成長表面からのN抜けによるアクセプタの生成そのものを抑えることができる。
【0054】
(第2変形例)
上記実施形態ではバッファ層13が単一の層(GaN層)から成るが、バッファ層は複数の層を含んでもよい。例えば、
図6に示されるように、半導体基板1Bは、上記実施形態のバッファ層13に代えて、第1の層17a及び第2の層17bを含むバッファ層17を備えても良い。第1の層17aは、核生成層12上にエピタキシャル成長した層であり、例えばAlGaNからなる。第1の層17aの厚さは例えば0.5μmであり、Gaに対するAl組成比は例えば0.05である。また、第2の層17bは、第1の層17a上にエピタキシャル成長した層であり、例えばGaNからなる。第2の層17bの厚さは例えば0.5μmである。
【0055】
本変形例によれば、バッファ層が単一層からなる場合と比較して、ピンチオフ時のリーク電流を更に抑制することができる。従って、ショートチャネル効果を抑制し、短ゲート化を実現することができる。
【0056】
本発明による半導体基板及び半導体装置の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では電子供給層上に保護層が設けられているが、本発明により製造される半導体基板及びHEMTは、保護層を備えていなくてもよい。また、バッファ層及び電子供給層を構成する窒化物半導体は、上記実施形態及び各変形例のものに限られず、様々な組み合わせの窒化物半導体を適用できる。