特許第6519938号(P6519938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519938
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】真空遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/662 20060101AFI20190520BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   H01H33/662 R
   H01H33/662 G
   H01H33/662 J
   H02B13/035 301G
   H02B13/035 331
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-211455(P2014-211455)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-81697(P2016-81697A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋▲崎▼ 俊夫
【審査官】 北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4749495(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60−33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側導体と可動側導体とを備え、絶縁操作棒を介して操作器により可動側導体を移動させることで開閉される真空遮断器において、真空遮断器の投入位置にて、可動側導体の端部に設けられた接続リンクと、絶縁操作棒の端部に設けられた駆動レバーとが、真空遮断器の中心線上一直線に配置されたことを特徴とする真空遮断器。
【請求項2】
固定側導体と可動側導体とを備え、絶縁操作棒を介して操作器により
可動側導体を移動させることで開閉される真空遮断器において、
真空遮断器の中心線と直交する長孔が設けられた駆動板が可動側導体の端部に設けられ、
真空遮断器の投入位置にて、
絶縁操作棒に取り付けられた駆動レバーおよび駆動レバーに取り付けられて長孔に挿入されたローラーのそれぞれの中心を通って延びる中心軸が、真空遮断器の中心線と並行に配置されたことを特徴とする真空遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置(以下、GISと記載する)に用いられる真空遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術について図5および図6を用いて説明する。図5に示すように、真空遮断器1は、絶縁筒2内に可動側導体6が収納されており、ベローズ7によって内部を真空に保ったまま、可動側導体6が動作できる構造になっている。可動側導体6の端部には駆動金物15が取り付けられている。そして、駆動金物15には接続リンク16の一端が接続ピン17によって回転自在に取り付けられている。接続リンク16の他端は駆動レバー18に駆動ピン19を介して回転自在に取り付けられている。そして、駆動レバー18は絶縁操作棒20に固定されている。
【0003】
図6に示すように、駆動レバー18が取り付けられている絶縁操作棒20は真空遮断器1の中心より左側に設けられている。図は投入状態を示しており、駆動レバー18が15度程度時計方向に回転することで、真空遮断器は遮断状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4749495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空遮断器内部の温度は主回路の通電によって温度上昇し、高い場合には導体の温度が100°Cを超える場合がある。このような場合、導体と近接している部材も温度上昇し、部位によっては100°C近辺にまで達することになる。真空遮断器を動作させるための絶縁操作棒は、高温になりやすい可動導体に近い場所に設けられており、熱の影響を受けやすい。そのため絶縁操作棒は、比較的高温に耐えることのできるエポキシモールド品あるいはFRP等の絶縁物で製作されることが多い。
【0006】
しかし、それらの絶縁物が高温にさらされた場合、軟化あるいは伸縮することになり、絶縁操作棒自体の変形等により、真空遮断器の接点の荷重が変化する可能性がある。特に、真空遮断器の投入状態では、接点が保持されるために大きな荷重が接点に作用することになる。したがって絶縁操作棒自体が変形すれば、接点の圧力が変化する可能性が高い。また、高温・高荷重の状態が続くと、絶縁操作棒の永久変形が生じることも考えられる。図6に示すような従来例では、真空遮断器の投入状態において絶縁操作棒に捩じれの応力が常に加わっている。
【0007】
また、真空遮断器は、一般的に内部が真空、外部が大気圧といった環境で使用されることを前提として、可動導体側に設けられているベローズは設計されている。真空遮断器の外部圧力すなわちベローズ内側の圧力を高くした場合、ベローズ内外の圧力差が大きくなるため、ベローズの内部応力が高くなると共に、伸縮による応力変動が加わるためにベローズの寿命が短くなる。開閉寿命を考慮した場合、ベローズ自身を補強することは技術的に困難である。真空遮断器をGISに適用するに際して、高圧の絶縁ガスの容器内に収納した場合、ベローズ内外の圧力差がますます大きくなる。ベローズの補強等を行わずにそのまま使用した場合、上昇した最大応力の繰り返しにより動作寿命回数が極端に少なくなってしまう。寿命を延ばすためには、最大応力の値を低くすることが不可欠である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固定側導体と可動側導体とを備え、絶縁操作棒を介して操作器により可動側導体を移動させることで開閉される真空遮断器において、真空遮断器の投入位置で、可動側導体の端部に設けられた接続リンクと、絶縁操作棒の端部に設けられた駆動レバーとが、真空遮断器の中心線上一直線に配置されたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、固定側導体と可動側導体とを備え、絶縁操作棒を介して操作器により可動側導体を移動させることで開閉される真空遮断器において、真空遮断器の投入位置で、絶縁操作棒の端部に設けられた駆動レバーの中心軸が、真空遮断器の中心線上と並行に配置されたことを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明は、絶縁筒内に固定側導体と可動側導体とを備え、可動側導体に取り付けられたベローズによって前記絶縁筒が密閉され、開閉動作時のベローズ内の圧力を調整するピストンを備えた真空遮断器において、開動作時のベローズ内の圧力を逃がすための逆止弁を前記ピストンに設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
真空遮断器投入時の接点荷重の反力を機構部ケースに設けられた軸受け部や、駆動板およびローラーで受けることになるので、絶縁操作棒に過大な荷重が常時作用することはない。したがって、投入状態(通電時)の比較的高い温度でも絶縁操作棒が変形によって可動部が変位することはない。また、軟化による強度低下で絶縁操作棒が破損するような事態が生じることもない。可動部の変位が生じないため、真空遮断器の接点荷重が変化することがない。したがって、真空遮断器の安定した通電性能を確保することができる。
【0012】
真空遮断器の開閉動作時にベローズ内側の圧力を低減、あるいは上昇を防止することができるので、ベローズの開閉寿命を延ばすことができる。また、GIS内部でのガス区分が不要となるので、ガス圧管理が1系統で済むので気密性能も含めてGISの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る投入状態の真空遮断器を示す断面図である。
図2図1における真空遮断器の断面図であり、(a)は遮断状態を示し、(b)は投入状態を示している。
図3】本発明に係る他の実施例の断面図であり、(a)は遮断状態を示し、(b)は投入状態を示している。
図4】本発明に係る他の実施例の断面図であり、遮断状態の真空遮断器を示す断面図である。
図5】従来技術の平面図であり、投入状態の真空遮断器を示す断面図である。
図6図5の右側面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図1を用いて説明する。真空遮断器1は、セラミクスやガラスで作られた絶縁筒2の一端に固定側接続導体3が取り付けられ、他端には端部蓋4を介して可動側接続導体5が気密に取り付けられている。固定側接続導体3と可動側接続導体5には、それぞれ絶縁支持物および固定金具を介してGIS内部に設けられた取付板に固定されている。
【0015】
固定側接続導体3と可動側接続導体5には、それぞれ導体接続端子部が設けられており、導体(図示せず)と接続されている。絶縁筒2の内部には、固定側電極と可動側電極が収納されている。固定側電極は固定側導体を介して固定側接続導体3に取り付けられている。
【0016】
可動側電極は可動側導体6の一端に取り付けられており、可動側導体6の他端にはベローズ7の一端が気密に取り付けられている。ベローズ7の他端は端部蓋4の一端に気密に取り付けられている。端部蓋4の他端は絶縁筒2に気密に取り付けられている。このような密閉構造にすることで絶縁筒2の内部を真空状態に保つことができる。
【0017】
ベローズ7の周囲にはベローズカバー8が設けられている。ベローズカバー8は、固定側電極と可動側電極の接離によって発生したゴミがベローズ7の襞の間に侵入するのを防止している。
【0018】
可動側導体6と端部蓋4との間には隙間が設けられており、可動側接続導体5に設けられた通気孔Aを通じて、ベローズ7の内側の圧力を外部(GIS内部)と同じにすることができる。可動側導体6の他端は可動側接続導体5から導出され、ピストン保持金具9が取り付けられている。ピストン保持金具9は、その位置調節が容易に行えるようにねじ込み式となっている。
【0019】
ピストン10は、中心部に穴があけられた円盤状のピストン部と筒状のスカート部で構成されており、スカート部の外径はピストン部の外径よりも小さくなっている。ピストン部の中心部の穴は、ピストン保持金具9が貫通するようになっている。さらに、ピストン部には中心部の穴の外側に通気孔Bが複数設けられており、その通気孔Bを塞ぐようにリング状の逆止弁11が設けられている。逆止弁11を支えるように逆止弁保持ばね12がピストン10のスカート部に挿入され、後述する機構部ケース13によって逆止弁保持ばね12が支持されている。
【0020】
筒状の機構部ケース13が、ピストン10を覆うようにして可動側接続導体5に取り付けられている。機構部ケース13の内面がピストン10の外周部に接触し、可動側電極が固定側電極から接離することに伴って摺動する。さらに、機構部ケース13には通気孔Cが複数設けられている。
【0021】
ピストン保持金物9の突起部分には接点加圧用ばね14が挿入されている。また、接点加圧用ばね14にはリング状の皿ばねが複数用いられている。接点加圧用ばね14は、固定側電極と可動側電極が接触している状態、すなわち投入状態で電極を一定の圧力で接触させるために用いられる。
【0022】
駆動金物15の一端がピストン10のスカート部に嵌め込まれるように取り付けられており、接点加圧用ばね14がピストンのスカート部内から脱落することを防止している。駆動金物15の他端には切り込みが設けられており、その切り込みに接続リンク16が差し込まれ、接続ピン17によって回転自在に取り付けられている。
【0023】
接続リンク16には、駆動レバー18に取り付けられた駆動ピン19が挿入されている。駆動レバー18は、操作器(図示せず)から導出された絶縁操作棒20の先端に取り付けられており、絶縁操作棒20は機構部ケース13に設けられた軸受け21によって回転自在に支持されている。駆動金物15・接続リンク16・駆動レバー18等の機構部分は、電界緩和シールド22によって覆われている。
【0024】
図2を用いて、駆動レバー18の動作について説明する。図2の(a)は遮断状態を示しており、(b)は投入状態を示している。駆動レバー18はダルマ形の形状をしており、大径部側が絶縁操作棒20に取り付けられており、小径部側に駆動ピン19を介して接続リンク16が取り付けられている。図2(a)に示すように、遮断状態では駆動レバー18の小径部は真空遮断器1の中心線上より左側に位置している。この遮断状態から絶縁操作棒20が時計方向に90度回転し、図2(b)に示す投入状態となる。
【0025】
図2(b)の投入状態で示されるように、絶縁操作棒・駆動レバー・駆動ピン・接続リンク・駆動金物が真空遮断器の中心の一直線上に位置している。投入状態ではこのような機器構成となるので、真空遮断器の接点荷重の反力は機構部ケース13に設けられた軸受け21で受けることになり、絶縁操作棒に過大な捩じれの荷重が作用することはない。
【0026】
他の実施例について図3を用いて説明する。図3の例では、図1および図2の実施例の駆動金物15の代わりに、長孔が設けられた駆動板23が取り付けられている。絶縁操作棒は、真空遮断器の中心線上ではなく、右位置に少しずらして設けられている。絶縁操作棒には駆動レバー18が取り付けられており、駆動レバー18にローラー24が取り付けられている。ローラー24は駆動板23の長孔に挿入されている。
【0027】
図3(b)の投入状態で示されるように、絶縁操作棒に取り付けられた駆動レバー18および駆動レバー18に取り付けられたローラー24の中心軸が、真空遮断器の中心線と並行に配置されるように構成されている。投入状態ではこのような機器構成となるので、真空遮断器の接点荷重の反力を、駆動板およびローラーで受けることになり、絶縁操作棒に過大な捩じれの荷重が作用することはない。また、投入状態において、絶縁操作棒に取り付けられた駆動レバーおよび駆動レバーに取り付けられたローラーの中心軸を真空遮断器の中心線上に配置しても構わない。
【0028】
次に、図1を用いて各通気孔の機能について説明する。投入状態(可動側電極が固定側電極と接触している状態)から遮断状態(可動側電極が固定側電極と離れている状態)になると、ベローズ7が押し縮められ、ベローズ内の容積が減少し、圧力が上昇する。上昇した圧力は、可動側導体6と端部蓋4との間に設けられた隙間を通り、可動側接続導体に設けられた通気孔Aを通過する。ピストン10も遮断位置となっているので、ピストン上部の空間も広くなっており、圧力上昇が緩和される。
【0029】
遮断状態から投入状態に移行する場合、ピストン10が押し上げられ、ピストン上部の圧力が上昇する。それに伴い、通気孔Aを通じてベローズ内の圧力も上昇する。ベローズ内の容積よりもピストン上部の容積が大きいため、ベローズ内の圧力は非常に高いものとなってしまう。この圧力を、ピストン部に設けられた通気孔Bから逃がし、さらに機構部ケース13に設けられた通気孔Cから外部に逃がすことができる。さらに、通気孔Bには逆止弁11が設けられており、遮断状態から投入状態に移行するときのみ、ベローズ内の圧力上昇を緩和できるようになっている。
【0030】
次に、図4を用いて通気孔の他の実施例について説明する。通気孔Aとピストン10との間に空間が設けられている。この空間に、通気孔Aからの通路を塞ぐように、リング状の補助逆止弁25が設けられている。補助逆止弁25は、補助逆止弁保持ばね26を介して補助逆止弁保持ばね押え27によって支持されている。
【0031】
遮断状態から投入状態に移行する場合、ピストン10によって空間内の圧力が上昇する。真空遮断器が収納されているGIS内部の絶縁媒体の圧力が比較的高い場合、補助逆止弁25が無ければ空間内で急上昇した圧力が通路および通気孔Aを通り、ベローズ内の圧力を急上昇させることになる。空間内に補助逆止弁25を設けることで、ベローズへの衝撃的な圧力上昇を防止することができる。補助逆止弁25は通路を簡易に塞いでいるだけなので徐々にベローズ内の圧力が復旧する。
【符号の説明】
【0032】
1 真空遮断器
2 絶縁筒
3 固定側接続導体
4 端部蓋
5 可動側接続導体
6 可動側導体
7 ベローズ
8 ベローズカバー
9 ピストン保持金具
10 ピストン
11 逆止弁
12 逆止弁保持ばね
13 機構部ケース
14 接点加圧用ばね
15 駆動金物
16 接続リンク
17 接続ピン
18 駆動レバー
19 駆動ピン
20 絶縁操作棒
21 軸受け
22 電界緩和シールド
23 駆動板
24 ローラー
25 補助逆止弁
26 補助逆止弁保持ばね
27 補助逆止弁保持ばね押え
図1
図2
図3
図4
図5
図6