特許第6519946号(P6519946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 荒川化学工業株式会社の特許一覧

特許6519946紫外線硬化型コーティング剤組成物及びその硬化膜
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519946
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】紫外線硬化型コーティング剤組成物及びその硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/07 20060101AFI20190520BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20190520BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20190520BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C09D183/07
   C09D4/02
   C09D7/63
   C08F290/06
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-103653(P2015-103653)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-216623(P2016-216623A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年1月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柏木 宏章
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇之
(72)【発明者】
【氏名】田中 諒
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−045504(JP,A)
【文献】 特開平11−077878(JP,A)
【文献】 特開2006−152278(JP,A)
【文献】 特開2014−141666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、RとRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれかを示す。lは1〜300の整数、mは1〜50の整数、nは1〜50の整数を示す。)
で表わされる片末端に水酸基を含有するポリシロキサン系化合物(a1)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体及びイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体の群から選択される1種以上であるイソシアネート基を平均3つ以上有するポリイソシアネート系化合物(a2)並びにペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの群から選択される1種以上である(メタ)アクリロイル基を平均3〜20有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)を反応させてなるポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A]、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートの群から選択される1種以上である1分子あたり平均3〜20のアクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さないアクリレート化合物[B]、及び光重合開始剤2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[C2]を[A]、[B]、及び[C2]の合計を100重量%としたときに[A]:[B]:[C2]=0.1〜5.0重量%:75〜95重量%:4.9〜20重量%で含有する紫外線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング剤組成物から形成される硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードなどのリライタブルカードの用途や、建装材用、食品包装のパッケージ用、光学製品用途で用いることができる、優れた薄膜・高速硬化性を持ち、かつ滑り性、防汚性に優れた紫外線硬化型コーティング剤組成物及びその硬化膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クレジットカードやキャッシュカード等の金融分野、駅の自動改札や高速道路の自動料金徴収等の交通分野、会員証や登録証等の身分証明の分野をはじめとする様々な分野において、ICカード、ICタグ、ICシート等のICチップが搭載された情報認識媒体が利用されている。特に、ラジオ波による無線技術を利用した非接触型の情報認識技術(RFID(Radio Frequency Identification)と称される)に対する期待が高まっており、この技術を利用したRFIDカード、RFIDタグ、RFIDシート等の情報認識媒体の利用も拡大されつつある。
【0003】
これらICカード、ICシート等のリライタブルカードの表面には紫外線硬化型樹脂が保護層としての使用を提案されている(特許文献1〜3)。しかし、サーマルヘッドで削られた滓がサーマルヘッドに付着し、このことが原因して画像の形成や消去が不十分となるといった問題を生じることもあった。そのため、形成した保護層に硬化性シリコーン樹脂やシリコーン変性樹脂を使用し、滑り性を付与してヘッド滓の付着防止が検討されていた(特許文献4〜7)。
【0004】
しかしながら、硬化性シリコーン樹脂やシリコーン変性樹脂は、硬化膜を作成するまでに数時間〜数日必要となり、コストメリットが少ない。
【0005】
また紫外線硬化性を持ったシリコーン樹脂組成物は過去提案されている(特許文献8、9)が、高速で硬化するには硬化性が不十分であった。
【0006】
さらに、紫外線硬化性樹脂組成物は、低コスト化のため、より使用量を減らし、薄膜で使用するという試みが行われている。しかし通常数μm以上であれば硬化出来るが、1μm未満の薄膜硬化膜の場合、酸素による重合阻害の影響を強く受け、高速硬化では硬化膜を作ることが難しいという問題があった。
【特許文献1】特開平06−8626号公報
【特許文献2】特開平06−344672号公報
【特許文献3】特開平08−11433号公報
【特許文献4】特開2005−212362号公報
【特許文献5】特開2005−53124号公報
【特許文献6】特開平05−38881号公報
【特許文献7】特開2013−121677号公報
【特許文献8】特開2006−045504号公報
【特許文献9】特開2003−192751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、滑り性に優れ、かつ通常の紫外線硬化型樹脂よりも優れた薄膜硬化と高速硬化が可能であり、さらに耐汚染性及びセロハンテープ剥離性も良好な紫外線硬化型コーティング剤組成物及びその硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、紫外線硬化型コーティング剤組成物の構成成分として、特定のポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A]と、特定の(メタ)アクリレート系化合物[B]並びに特定の光重合開始剤[C1]及び/又は[C2]を有し、かつそれらを特定の組成比率にすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、片末端に水酸基を含有するポリシロキサン系化合物(a1)、イソシアネート基を平均3つ以上有するポリイソシアネート系化合物(a2)並びに(メタ)アクリロイル基を平均3つ以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)を反応させてなるポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A]、1分子あたり平均3〜20のアクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さないアクリレート化合物[B]、及び光重合開始剤−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]及び/又は2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[C2]を含有する紫外線硬化型コーティング剤組成物である(本発明1)。
【0010】
本発明2は、本発明1のアクリレート化合物[B]がペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートの群から選択される1種以上である請求項1記載の紫外線硬化型コーティング剤組成物。
【0011】
本発明3は、本発明1又は2において[A]:[B]:[C1]及び/又は[C2]=0.1〜5.0重量%:75〜95重量%:4.9〜20重量%である紫外線硬化型コーティング剤組成物である。
【0012】
本発明4は、本発明1〜3いずれかの紫外線硬化型コーティング剤組成物から形成される硬化膜である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた薄膜・高速硬化性を有しかつ滑り性に優れた硬化膜を得ることができる。このような硬化膜はICカードなどのリライタブルカードの用途での紫外線硬化型コーティング組成物として有用である。また、耐汚染性やセロハンテープ剥離性も有するため、建装材用、食品包装のパッケージ用、光学製品用などの表面コーティング剤としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、片末端に水酸基を含有するポリシロキサン系化合物(a1)(以下、「(a1)成分」という)、イソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート系化合物(a2)(以下、「(a2)成分」という)並びに(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)(以下、「(a3)成分」という)を反応させてなるポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A](以下、「(A)成分」という)、1分子あたり平均3〜20のアクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さないアクリレート化合物[B](以下、「(B)成分」という)及び光重合開始剤−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1](以下、「(C1)成分」という)及び/又は2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[C2](以下、「(C2)成分」という)を含有する紫外線硬化型コーティング剤組成物である。
【0015】
上記[A]成分は、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を反応させて得られる。
【0016】
上記(a1)成分は、1分子中に水酸基と、オルガノポリシロキサン単位を下記一般式(1)、(2)で示される化合物である。本成分を用いることにより、硬化膜に滑り性、耐汚染性、セロハンテープ剥離性を付与することができる。
【0017】
【化1】
(一般式(1)中、RとRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれかを示す。lは1〜300の整数、mは1〜50の整数、nは1〜50の整数を示す。)
【0018】
【化2】
(一般式(2)中、RとRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基のいずれかを示す。lは1〜300の整数、mは1〜50の整数、nは1〜50の整数、Rは、少なくとも2以上の−(CH−OHであり、その他は水素原子、メチル基及び−(CH−OHのいずれであってもよい。qは1〜50の整数、rは1〜50の整数を示す。)
【0019】
上記lは、滑り性・硬化性の点で好ましくは5〜120であり、より好ましくは9〜60である。上記mは、硬化性の点で好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。上記nは、硬化性の点で好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。上記qは、硬化性の点で好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。上記rは、硬化性の点で好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
【0020】
上記(a1)成分の数平均分子量としては特に限定されないが、100〜20,000であることが好ましい。ここで数平均分子量とは、水酸基価からの換算値である(数平均分子量=56110÷水酸基価(mgKOH/g)×1分子当たりの水酸基数)。数平均分子量を100以上とすることで、硬化膜に滑り性、耐汚染性及びセロハンテープ剥離性を優れたものとすることができ、20,000以下とすることで、硬化膜を固まりやすくすることができる。
【0021】
上記の水酸基価の定量は、例えばJIS K 1557に準拠して測定することが出来る。
【0022】
上記(a1)成分の具体例としては、X−22−170DX(信越シリコーン(株)社製)、X−22−4015(信越シリコーン(株)社製)、サイラプレーンFM−0411(JNC(株)社製)、サイラプレーンFM−0421(JNC(株)社製)、サイラプレーンFM−0425(JNC(株)社製)、サイラプレーンFM−DA11(JNC(株)社製) 、サイラプレーンFM−DA21(JNC(株)社製)、サイラプレーンFM− DA26(JNC(株)社製)等の商品が挙げられる。
【0023】
上記(a2)成分としては、平均3つ以上有するポリイソシアネート系化合物であれば、特に限定されることなく、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられる。3つ以上のイソシアネート基を持つことで、(a2)と(a1)のみの反応物や(a2)と(a3)のみの反応物などの未反応の低分子量成分を少なくすることができ、硬化膜のブリード低下を実現している。さらにイソシアネート当量(g/eq)が200以下であることが好ましい。これにより、ブリード低下によりつながる。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの多量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)等が挙げられる。
【0024】
上記のイソシアネート当量の定量は、例えばJIS K 7301に準拠して測定することが出来る。
【0025】
上記(a3)成分としては、特に限定されないが、水酸基価が250mgKOH/g以下が好ましい。これにより一分子中のアクリロイル基の濃度を高めることができる。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。これら成分を用いることで、硬化膜の薄膜硬化性を付与することができる。2つ以下しかアクリロイル基を持たない場合には、硬化性が不足し、薄膜硬化性が低下してしまう。
【0026】
上記(A)成分の合成方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば、上記(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分を、無溶剤または、トルエンなどの非アルコール系有機溶媒中、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7、オクチル酸第一スズ、ジオクチル酸鉛、ジオクチル酸ビスマス、トリオクチル酸ビスマス、トリネオデカン酸ビスマス、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレートなどより選ばれる触媒存在下で、通常、反応温度60〜90℃程度で反応させればよい。
【0027】
上記(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の使用割合としては、(a1)成分の水酸基/(a2)成分のイソシアネート基/(a3)成分の水酸基のモル比が1〜2.25/1〜1.25/1〜2.25であることが好ましい。
【0028】
上記[A]成分の1分子当たりの平均アクリロイル基数は、薄膜硬化性及び高速硬化性を良好とする点で5〜20であることが好ましい。より好ましくは5〜10である。
【0029】
上記[B]成分は、1分子あたり平均3〜20のアクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さないアクリレート化合物であれば特に限定されない。これらは、1分子あたり平均3〜20のアクリロイル基を含有することにより、酸素による硬化阻害を受けやすい薄膜であっても優れた硬化性を得ることができる。ウレタン結合を有するアクリレート化合物は、光重合反応性が[B]成分と比べ劣ることにより、本発明の効果を奏しない。薄膜硬化製及び高速硬化性がより良好となる点で好ましくは、1分子あたり平均アクリロイル数は5〜20のアクリレート系化合物である。より好ましくは1分子あたり平均アクリロイル数が5〜10のアクリレート化合物である。さらに好ましい具体的な[B]成分は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート及びトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートの群から選択される1種以上のアクリレート系化合物である。
【0030】
本発明で用いられる光重合開始剤[C1]・[C2]としては、光重合開始剤ヒドロキシ1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]及び/又は2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[C2]を含有していることが必要である。[C1]の具体例としてはBASF社Irgacure907、DKSHジャパン社製LUNACURE907が挙げられる。[C2]の具体例としてはBASF社製Irgacure127が挙げられる。これらを用いることにより硬化性が向上し、薄膜・高速でも硬化することができる硬化膜を得ることができる。
【0031】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、更に、光重合開始剤の助剤としてトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0032】
本発明の紫外線硬化型コーティング剤組成物は、[A]成分、[B]成分、[C1]成分及び/又は[C2]成分を所望の割合によって混合することで製造することが出来る。各成分の混合方法及び添加順序については、特段の限定はされない。
【0033】
[A]成分、[B]成分、[C1]成分及び/又は[C2]成分をを含有する紫外線硬化型コーティング剤組成物は、その組成比が[A]:[B]:[C1]及び/又は[C2]=0.1〜5.0重量%:75〜90重量%:4.9〜20重量%であることが好ましい。これにより、薄膜でも硬化することができる硬化膜を得ることができる。より好ましくは、[C1]及び/又は[C2]成分は10重量%以上である。
【0034】
かくして本発明のポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A]、(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレート系化合物[B]並びに光重合開始剤[C1]及び/又は[C2]を含有する紫外線硬化型コーティング剤組成物が得られる。
【0035】
この組成物は必要に応じて、有機溶剤を配合し、粘度を調整して使用することも可能である。かかる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらは1 種又は2 種以上組み合わせて使用することもできる。
【0036】
紫外線照射により硬化させる方法としては、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極ランプ、LEDランプ等を用いて、50〜100mJ/cm程度照射すればよい。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0037】
また、本発明のコーティング剤組成物は、さらに、必要に応じてレベリング剤や消泡剤、スリップ剤、光増感剤等の各種添加剤を配合することもできる。
【0038】
本発明のコーティング剤組成物を用いて物品表面にコーティング層(硬化膜)を形成させる方法としては、物品表面にコーティング剤組成物を公知の方法で塗布して乾燥させた後に、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることにより行う。コーティング剤組成物の塗布方法としては、例えばバーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。なお、塗布量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の重量が0.1〜20g/mになる範囲である。
【0039】
本発明のコーティング剤組成物を使用してコーティング層が形成可能な物品(基材)としては、特に制限はなく、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等が挙げられる。
【0040】
本発明の紫外線硬化型コーティング剤組成物から形成される硬化膜もまた本発明の1つである。これにより、本発明の硬化膜の膜厚を1μm未満とすることができるので、コストを削減することが可能となる。本発明によれば、さらにこのような薄膜硬化膜を高速硬化により形成することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。なお、各例中、部及び%は特記しない限り全て重量基準である。
【0042】
(合成例1)(ポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A−1]の合成)
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体100部、オクチル酸スズ0.3部、ポリシロキサン化合物(a1)(一般式(1)R=ブチル基、R=メチル基、l=10、m=3、n=2)182部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート347部、酢酸エチル部629部を仕込んだ後、約1時間かけて、系内の温度を約70度に昇温した。次いで、同温度において、反応系を3時間保持し、イソシアネート基が消失したこと確認した後、冷却して、紫外線硬化型のウレタンアクリレートオリゴマー[A−1]得た。
【0043】
(合成例2)(ポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A−2]の合成)
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体100部、オクチル酸スズ0.2部、ポリシロキサン化合物(a1)(一般式(1)R=ブチル基、R=メチル基、l=10、m=3、n=2)157部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート300部、酢酸エチル部557部を仕込んだ後、約1時間かけて、系内の温度を約70度に昇温した。次いで、同温度において、反応系を3時間保持し、イソシアネート基が消失したこと確認した後、冷却して、紫外線硬化型のウレタンアクリレートオリゴマー[A−2]得た。
【0044】
(合成例3)(ポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体[A−3]の合成)
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体100部、オクチル酸スズ0.1部、ポリシロキサン化合物(a1)(一般式(1)R=ブチル基、R=メチル基、l=10、m=3、n=2)157部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(アクリロイル基が1つ)40部、酢酸エチル297部を仕込んだ後、約1時間かけて、系内の温度を約70度に昇温した。次いで、同温度において、反応系を3時間保持し、イソシアネート基が消失したこと確認した後、冷却して、紫外線硬化型のウレタンアクリレートオリゴマー[A−3]得た。
【0045】
(合成例4)(ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の合成)
温度計、攪拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体77.1部とジブチルスズジラウレート0.10部、メチルエチルケトン500部を仕込み、60℃以下でジペンタエリスリトールペンタアクリレート422.9部、2,6−ジ−tert−ブチルクレゾール0.4部を約1時間で滴下し、60℃で反応を継続し、イソシアネート基が消失した時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を得た。
【0046】
(塗工液の調製)
上記合成により得られた各紫外線硬化型コーティング剤組成物を使用して塗料化し、塗工液を調製した。
【0047】
(実施例1)
合成例1で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体2部にジペンタエリスリトールペンタアクリレート93部、ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0048】
(実施例2)
合成例1で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体2部にジペンタエリスリトールペンタアクリレート93部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[C2]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0049】
(実施例3)
合成例2で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体2部にジペンタエリスリトールペンタアクリレート93部、−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0050】
(実施例4)
合成例2で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体2部にジペンタエリスリトールペンタアクリレート93部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン[C2]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0051】
(比較例1)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート95部に、ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0052】
(比較例2)
合成例1で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体95部に、−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0053】
(比較例3)
合成例1で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体部にジペンタエリスリトールペンタアクリレート93部、ダロキュア1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0054】
(比較例4)
合成例1で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体部にジペンタエリスリトールペンタアクリレート93部、イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0055】
(比較例5)
合成例3で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体2部にジペンタエリスリトールペンタアクリレート93部、ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0056】
(比較例6)
合成例1で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体2部に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート93部、ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0057】
(比較例7)
合成例1で得られたポリシロキサン含有ポリイソシアネート系誘導体2部に合成例4で得られたウレタン(メタ)アクリレート系化合物93部、ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[C1]5部を配合し、不揮発分が25%になるようメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合した。
【0058】
(硬化膜の評価)
上記により得られた塗料を用いて下記の方法で基材表面硬化被膜を形成させてその評価試験を行った。その結果を表1に示す。厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーター#2(膜厚0.5μm)で塗布し、80℃の循風乾燥機中で1分間乾燥し、その後、高圧水銀灯120W/cm(1灯)、照射距離25cm、ベルトスピード43m/minの条件で積算照射量30mJ/cm2で硬化膜を形成した。
【0059】
<外観>
硬化膜の外観をレベリング性(平滑性)、ゆず肌、ピンホールについての不具合の有無を目視にて評価した。
○=平滑であり、ゆず肌、ピンホールなどの不具合がない。
×=平滑でなく、ゆず肌、ピンホールなどの不具合がある。
【0060】
<硬化性>
メチルエチルケトンを浸みこませた綿棒を硬化膜にこすりつけ50往復させ、硬化膜変化の有無を目視で確認した。
○=試験前と比べ、硬化膜の変化が無い。
×=硬化膜に白化が見られる。
××=硬化膜が剥がれる。
【0061】
<滑り性>
JIS−K−7125に準じ静摩擦係数を測定した。
【0062】
<耐汚染性>
油性マジックインキ(Hi−Mckee 黒 ゼブラ(株)社製)を用い、硬化塗膜に線状に油性マジックインキを塗布、5分間乾燥させた後キムワイプで拭き取り、拭き取り性を評価した。
○=拭き取り跡が無い
×=拭き取り不可
【0063】
<セロハンテープ剥離性>
セロハンテープ(エルパックLP−24 ニチバン(株)社製)を用い、硬化塗膜にセロハンテープを貼り付け5分放置した後剥がし、剥離性を評価した。
○=容易に剥離
×=剥離が重く剥がれにくい
【0064】
【表1】
*:硬化膜成分が硬化していなかったため、測定することが出来なかった。
【0065】
表1中の記号は以下の通りである。
DPPA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
D.1173:ダロキュア1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)
Irg.184:イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)