(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムを支持する支持体とを前記支持体が前記ガラスフィルムから食み出すように積層して、ガラスフィルムを含む積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体に製造関連処理を施す製造関連処理工程と、
前記製造関連処理工程の後、前記支持体から前記ガラスフィルムを剥離する剥離工程とを備えたガラスフィルムの製造方法において、
前記剥離工程は、前記支持体から前記ガラスフィルムの一部を剥離させて、前記ガラスフィルムをその全面にわたって剥離する際の起点となる剥離起点部を作製する剥離起点部作製工程と、前記剥離起点部を起点として前記支持体からの前記ガラスフィルムの剥離を進行させる剥離進行工程とを有し、
前記剥離起点部作製工程は、
前記ガラスフィルムから食み出した前記支持体のコーナー部に前記支持体を支持する第一支点を設けると共に、前記第一支点から離れた位置に前記積層体を支持する第二支点を設ける支点形成工程と、
前記第一支点と前記第二支点との間に外力付与部材で外力の作用点を設け、これにより前記支持体の側に凹部が生じるように前記積層体の一部を凹状に変形させる凹状変形工程、及び
前記積層体の一部が凹状に変形している間に、前記ガラスフィルムと前記支持体との間に挿入部材を挿入することで、前記ガラスフィルムの一部を剥離させる挿入工程とを有することを特徴とするガラスフィルムの製造方法。
前記支持体が上側で前記ガラスフィルムが下側となるように、前記積層体を載置台に載置し、かつ前記支持体の少なくともコーナー部を前記載置台の載置面から食み出させて、前記載置面の端部で前記第二支点を設ける請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
前記外力付与部材として吸着部材を使用し、前記第一支点と前記第二支点との間を前記吸着部材で前記ガラスフィルムの側から吸着し、前記吸着部材を前記支持体から遠ざかる向きに移動させる請求項1〜3の何れかに記載のガラスフィルムの製造方法。
前記外力付与部材として押圧部材を使用し、前記第一支点と前記第二支点との間を前記押圧部材で前記支持体の側から前記ガラスフィルムの側に向けて押圧する請求項1〜3の何れかに記載のガラスフィルムの製造方法。
前記積層体の一部が前記凹状に変形している間に、前記支持体の側に生じる前記凹部の最大深さ寸法を1mm以上でかつ5mm以下に設定した請求項1〜7の何れかに記載のガラスフィルムの製造方法。
前記ガラスフィルムと前記支持体との間に挿入を開始してからの前記挿入部材の移動距離を5mm以上でかつ50mm以下に設定した請求項1〜8の何れかに記載のガラスフィルムの製造方法。
前記支持体は板状ガラスであって、前記板状ガラスと前記ガラスフィルムとを直接密着させることにより前記積層体を形成する請求項1〜9の何れかに記載のガラスフィルムの製造方法。
ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムを支持する支持体とを前記支持体が前記ガラスフィルムから食み出すように積層して、前記ガラスフィルムを含む積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体の前記ガラスフィルムに電子デバイス要素を取付けて支持体付き電子デバイスを形成する取付け工程と、
前記取付け工程の後、前記支持体付き電子デバイスの前記支持体から前記ガラスフィルムを含む電子デバイスを剥離する剥離工程とを備えたガラスフィルムを含む電子デバイスの製造方法において、
前記剥離工程は、前記支持体から前記ガラスフィルムの一部を剥離させて、前記ガラスフィルムをその全面にわたって剥離する際の起点となる剥離起点部を作製する剥離起点部作製工程と、前記剥離起点部を起点として前記支持体からの前記電子デバイスの剥離を進行させる剥離進行工程とを有し、
前記剥離起点部作製工程は、
前記ガラスフィルムから食み出した前記支持体のコーナー部に前記支持体を支持する第一支点を設けると共に、前記第一支点から離れた位置に前記電子デバイスを支持する第二支点を設ける支点形成工程と、
前記第一支点と前記第二支点との間に外力付与部材で外力の作用点を設け、これにより前記支持体の側に凹部が生じるように前記積層体の一部を凹状に変形させる凹状変形工程、及び
前記積層体の一部が凹状に変形している間に、前記ガラスフィルムと前記支持体との間に挿入部材を挿入することで、前記ガラスフィルムの一部を剥離させる挿入工程とを有することを特徴とするガラスフィルムを含む電子デバイスの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、省スペース化の観点から、従来普及していたCRT型ディスプレイに替わり、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが普及している。そして、これらのフラットパネルディスプレイにおいては、更なる薄型化が求められている。
【0003】
特に、有機ELディスプレイや有機EL照明には、その厚み寸法が非常に小さい(薄い)ことを利用して、折り畳んだり、巻き取ったりできるといった機能を持たせ得る。これにより、持ち運びが容易になるだけでなく、従来の平面状態に加えて曲面状態での使用が可能になるため、様々な用途への活用が期待されている。従って、これらの電子デバイスに使用されるガラス基板やカバーガラスには、更なる可撓性の向上が要求されている。
【0004】
ガラス基板に可撓性を付与するには、ガラス基板を薄肉化するのが有効である。ここで、例えば特許文献1には、厚み寸法200μm以下のガラスフィルムが提案されており、これにより、曲面状態での使用が可能な程度の高い可撓性をガラス基板に付与可能としている。
【0005】
一方、フラットパネルディスプレイや太陽電池等の電子デバイスに使用されるガラス基板には、二次加工や洗浄など、様々な電子デバイス製造関連の処理が施される。ところが、これら電子デバイスに使用されるガラス基板を薄肉化すると、ガラスが脆性材料であるため、多少の応力変化によっても破損に至る場合が生じ、電子デバイス製造関連処理を行う際に、取扱いが非常に困難になるといった問題がある。加えて、厚み寸法200μm以下のガラスフィルムは可撓性に富むため、各種製造関連処理を施す際に位置決めを行うことが難しい(例えばパターニング時にずれが生じる)といった問題もある。
【0006】
上記問題に関し、例えば特許文献2に示すように、ガラスフィルムと、このガラスフィルムを支持する支持ガラスとを積層して互いに固定してなる積層体が提案されている。この積層体に対して各種製造関連処理を施すようにすれば、単体では強度や剛性に乏しいガラスフィルムを用いた場合であっても、支持ガラスが補強材として作用するため、各処理の際に積層体として位置決めを容易に行うことができる。また、処理終了後に、支持ガラスをガラスフィルムから剥離させることにより、所要の処理が施されたガラスフィルムのみを最終的に取得することが可能となる。さらにいえば、ガラスフィルムを含む積層体の厚み寸法を、従来(既存)のガラス基板の厚み寸法と同一にすることで、従来のガラス基板用の製造ラインを電子デバイス用製造ラインとして使用(共用)できるメリットが期待できる。
【0007】
一方、各種製造関連処理の中には、透明な導電膜の成膜処理や、封止処理など、加熱を伴うものもある。上述した構造の積層体に加熱を伴う処理を施した場合、直接的に又は樹脂層や無機薄膜層等を介して間接的に密着した状態にある支持ガラスとガラスフィルムとの固定力が増すため、支持ガラスからガラスフィルムを剥離することが困難になる、といった問題が生じる。
【0008】
上記問題を解決するため、例えば特許文献3には、ガラス基板に、支持ガラス基板に固定された易剥離性を有する樹脂層が密着している支持体付き電子デバイスから、支持ガラス基板及び樹脂層からなる支持体を剥離するに際し、支持体の樹脂層とガラス基板との界面にナイフを挿入して、ガラス基板を含む電子デバイスから支持体を剥離する方法が提案されている。
【0009】
また、上記問題を解決するために、例えば特許文献4には、支持ガラスがガラスフィルムから食み出して積層され、支持ガラスの端辺に薄肉部が設けられ、ガラスフィルムの端辺の少なくとも一部が、薄肉部上で支持ガラスから離れているガラスフィルム積層体が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3に記載の如く、ガラスフィルムと支持体との間にナイフを差し込むことで剥離を開始させようとする場合には、ナイフを差し込む位置をその都度検出し、検出結果に基づいてナイフを移動させる必要がある。そのため、必要な機構が複雑化する。また、ガラスフィルムと支持体とがその端部に至るまで相互に密着している場合には、ガラスフィルムと支持体との界面にナイフを差し込む隙間がなく、界面にナイフを強い力で押し込む必要が生じる。このようにナイフを界面に押し込んだ場合、ガラスフィルムに作用した押し込み力により、ガラスフィルムの端部が破損するおそれがある。
【0012】
一方、特許文献4では、支持ガラスの端部に薄肉部を設けて、この薄肉部上でガラスフィルムの端辺の一部が支持ガラスから離れるように構成しているため、ガラスフィルムを容易に把持することができ、ガラスフィルムを破損させることなく比較的容易に剥離させることが可能と思われる。しかしながら、この方法だと、予め支持ガラスの一部に特殊な加工を施す必要が生じ、加工コストが嵩む。また、電子デバイスの製造関連処理の中には薬液などの溶媒を用いるものもあり、積層体の状態でガラスフィルムと支持ガラスとの間に隙間が存在すると、溶媒が当該隙間に浸入して固着することにより、支持ガラスからガラスフィルムを剥離する際にガラスフィルムが破損する、などの問題があるため、適用できる範囲が限られる、といった問題がある。
【0013】
以上の事情に鑑み、本明細書では、製造関連処理の種類によらず、簡易にかつ低コストに支持体からガラスフィルムを剥離することを、本発明により解決すべき第一の技術的課題とする。
【0014】
また、以上の事情に鑑み、本明細書では、製造関連処理の種類によらず、簡易にかつ低コストに支持体からガラスフィルムを含む電子デバイスを剥離することを、本発明により解決すべき第二の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記第一の技術的課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムの製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、ガラスフィルムと、ガラスフィルムを支持する支持体とを支持体がガラスフィルムから食み出すように積層して、ガラスフィルムを含む積層体を形成する積層体形成工程と、積層体に対して製造関連処理を施す製造関連処理工程と、製造関連処理工程の後、支持体からガラスフィルムを剥離する剥離工程とを備えたガラスフィルムの製造方法において、剥離工程は、支持体からガラスフィルムの一部を剥離させて、ガラスフィルムをその全面にわたって剥離する際の起点となる剥離起点部を作製する剥離起点部作製工程と、剥離起点部を起点として支持体からのガラスフィルムの剥離を進行させる剥離進行工程とを有し、剥離起点部作製工程は、ガラスフィルムから食み出した支持体のコーナー部に支持体を支持する第一支点を設けると共に、第一支点から離れた位置に積層体を支持する第二支点を設ける支点形成工程と、第一支点と第二支点との間に外力付与部材で外力の作用点を設け、これにより支持体の側に凹部が生じるように積層体の一部を凹状に変形させる凹状変形工程、及び積層体の一部が凹状に変形している間に、ガラスフィルムと支持体との間に挿入部材を挿入することで、ガラスフィルムの一部を剥離する挿入工程とを有する点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「製造関連処理」には、ガラスフィルムに直接何らかの加工を施す処理はもちろん、他部材の取付けや、ガラスフィルム表面の洗浄など、間接的にガラスフィルム又はガラスフィルムを含むデバイスを最終製品(出荷状態)に近づけるための処理を広く含むものとする。
【0016】
本発明では、ガラスフィルムから食み出した支持体のコーナー部に第一支点を設けると共に、第一支点から離れた位置に第二支点を設け、かつこれら双方の支点間に外力の作用点を設けることで、積層体の一部を凹状に変形させるようにしたので、上記積層体の一部を従来に比べて大きな曲率で変形させることができる。よって、支持体とガラスフィルムとの間の曲率の違いに起因して生じるせん断力を高めることができ、その後の挿入工程で、容易に支持体からガラスフィルムの一部を剥離させることが可能となる。また、支持体の側に凹部が生じるように積層体の一部を凹状に変形させることで、積層体の凹状変形時、ガラスフィルムよりも肉厚に形成し易い(厚み寸法の制約が少ない)支持体の側に大きな曲げ応力(圧縮応力)が作用する。よって、ガラスフィルムと支持体に過度な負荷が作用する事態を回避して、ガラスフィルム及び支持体の破損を防止することが可能となる。また、積層体の一部を凹状に変形させた後に挿入部材を支持体とガラスフィルムとの間に挿入するようにしたので、挿入部材を挿入している間に積層体の変形量を増大させずに済む。従って、これによってもガラスフィルムと支持体に過度な負荷が作用する事態を回避して、剥離起点部の作製の際にガラスフィルムと支持体が破損することを防止することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、支持体が上側でガラスフィルムが下側となるように、積層体を載置台に載置し、かつ支持体の少なくともコーナー部を載置台の載置面から食み出させて、載置面の端部で第二支点を設けるものであってもよい。
【0018】
このように第二支点を設けるようにすれば、積層体を載置台に載置するだけで、容易に第二支点を設けることができる。また、載置面の端部形状を変更するだけで、第二支点の形態を調整することができる。従って、上述した積層体の一部の凹状変形を比較的容易に制御することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、挿入部材で第一支点を設けるものであってもよい。
【0020】
このように第一支点を設けるようにすれば、載置面の端部で第二支点を設ける場合と同様、容易に第一支点を設けることができる。また、挿入工程において、挿入部材それ自体が第一支点の形成部材として機能するので、挿入開始後の挿入部材の移動に伴い、第一支点の位置も剥離の進行方向に移行する。よって、挿入部材の挿入態様を一定の状態に保って、剥離起点部の形成動作を円滑に行うことが可能となる。もちろん、挿入部材を第一支点の形成部材と兼用することで、部品点数の削減にもつながるため、設備コストの面においても好適である。
【0021】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、外力付与部材として吸着部材を使用し、第一支点と第二支点との間を吸着部材でガラスフィルムの側から吸着し、吸着部材を支持体から遠ざかる向きに移動させるものであってもよい。
【0022】
あるいは、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、外力付与部材として押圧部材を使用し、第一支点と第二支点との間を押圧部材で支持体の側からガラスフィルムの側に向けて押圧するものであってもよい。
【0023】
上述のように第一支点と第二支点との間を吸着した後に支持体から遠ざかる向きに吸着部材を移動することで、あるいは、第一支点と第二支点との間を押圧部材で支持体の側からガラスフィルムの側に向けて押圧することで、ガラスフィルムや支持体に過度な負荷を与えることなく、積層体の一部を凹状に変形させるのに適した位置(例えば、第一支点と第二支点との中間地点)に、ガラスフィルムの厚み方向で支持体から遠ざかる向きの外力の作用点を設けることができる。従って、積層体の凹状変形を安定的に発生させることが可能となる。特に、積層体の一部を吸着部材で吸着した後に、この吸着部材を支持体から遠ざかる向きに移動させる(吸着部材で積層体を引張る)ことで凹状に変形させるのであれば、支持体の側に生じる凹部に外力付与部材が居続ける事態を回避できる。そのため、挿入部材の挿入開始後、ガラスフィルムが凹状に変形した状態を保ちつつも、挿入部材と外力付与部材とが干渉する事態を回避して、剥離起点部が形成されるまでの間、挿入部材をスムーズに挿入することが可能となる。また、支持体の側に凹部が生じるように積層体の一部を凹状に変形させることで、支持体及びガラスフィルムには凹状に変形する前の平坦な状態に戻ろうとする向きの反力(復元力)が作用する。そのため、吸着部材でガラスフィルムの側を吸着している場合には、ガラスフィルムに生じた復元力が吸着部材による下方への引張り力で相殺され、結果的には支持体の側にのみ上述した復元力が作用する状態となる。よって、例えば載置面で積層体を平坦に支持すると共に、積層体の一部を凹状に変形させた状態で、ガラスフィルムと支持体との間への挿入部材の挿入を開始した後、挿入部材を載置面の平面方向に沿って移動させる場合には、挿入部材を積層体の平坦に支持された部位と平行な方向にスライドさせることができ、剥離起点部の作製動作を円滑に行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、挿入部材として楔状部材を使用し、楔状部材の挿入方向と楔状部材の刃先方向とが成す角を20°以上でかつ45°以下に設定して、好ましくは20°以上でかつ30°以下に設定して、楔状部材をガラスフィルムと支持体との間に挿入するものであってもよい。
【0025】
上述のように挿入部材として楔状部材を使用する場合、楔状部材の刃先形状と挿入方向との関係を定めることで、ガラスフィルムと支持体とに過度な負荷を掛けることなく楔状部材を挿入して、剥離起点部の作製動作を円滑に行うことが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、第一支点から第二支点までの最短距離を、30mm以上でかつ200mm以下に設定したものであってもよく、好ましくは30mm以上でかつ150mm以下に設定したものであってもよく、より好ましくは50mm以上でかつ100mm以下に設定したものであってもよい。なお、上述の如く載置面の端部で第二支点を設ける場合など、第二支点が複数存在する場合には、複数ある第二支点のうち、第一支点との距離が最短となる第二支点と第一支点との直線距離を「第一支点から第二支点までの最短距離」として取り扱うものとする。
【0027】
このように、凹状変形の対象となる積層体のいわば支点間距離を設定した状態で、積層体の一部を凹状に変形させることで、挿入部材によるガラスフィルムの剥離をそのコーナー部から効果的かつ安定的に開始することが可能となる。すなわち、あまりに支点間距離が長いと、凹状変形による剥離開始力(復元力)をコーナー部に十分に付与することができず、またあまりに支点間距離が短いと、凹状変形により過度な力が作用してガラスフィルムの破損を招くおそれが高まるためである。
【0028】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、積層体の一部が凹状に変形している間に、支持体の側に生じる凹部の最大深さ寸法を1mm以上でかつ5mm以下に設定したものであってもよく、好ましくは2mm以上でかつ4mm以下に設定したものであってもよい。
【0029】
このように、積層体の一部に対する凹状変形の度合いを設定することによっても、挿入部材の挿入動作によるガラスフィルムの剥離をそのコーナー部から効果的かつ安定的に開始することが可能となる。すなわち、あまりに凹状変形の度合いが小さいと(凹部の最大深さ寸法が小さいと)、凹状変形による剥離開始力(復元力)をコーナー部に十分に付与することができずに挿入部材を円滑に挿入することが難しいためである。あるいは、あまりに凹状変形の度合いが大きいと(最大深さ寸法が大きいと)、ガラスフィルムの破損を招くおそれがあるためである。
【0030】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、ガラスフィルムと支持体との間に挿入を開始してからの挿入部材の移動距離を5mm以上でかつ50mm以下としたものであってもよく、好ましくは10mm以上でかつ30mm以下としたものであってもよい。
【0031】
このように、挿入部材が挿入動作を開始してからの移動距離を設定することによっても、ガラスフィルムと支持体に過度な負荷を掛けることなく挿入部材を挿入して、剥離起点部の作製動作を円滑に行うことが可能となる。
【0032】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、支持体が、板状ガラスであってもよい。また、この場合、板状ガラスとガラスフィルムとを直接密着させることで積層体を形成するものであってもよい。
【0033】
このように支持体を板状ガラスとすることで、面精度に優れた支持体を低コストに製造できる。また、このように面精度に優れた板状ガラスとガラスフィルムとを直接密着させることで、ガラスフィルムを位置ずれなく支持体に固定できつつも、本発明により確実かつ安全にガラスフィルムを支持体としての板状ガラスから剥離させることが可能となる。
【0034】
また、前記第二の技術的課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムを含む電子デバイスの製造方法によって達成される。すなわち、この製造方法は、ガラスフィルムと、ガラスフィルムを支持する支持体とを支持体がガラスフィルムから食み出すように積層して、ガラスフィルムを含む積層体を形成する積層体形成工程と、積層体のガラスフィルムに電子デバイス要素を取付けて支持体付き電子デバイスを形成する取付け工程と、取付け工程の後、支持体付き電子デバイスの支持体からガラスフィルムを含む電子デバイスを剥離する剥離工程とを備えた電子デバイスの製造方法において、剥離工程は、支持体からガラスフィルムの一部を剥離させて、ガラスフィルムをその全面にわたって剥離する際の起点となる剥離起点部を作製する剥離起点部作製工程と、剥離起点部を起点として支持体からの電子デバイスの剥離を進行させる剥離進行工程とを有し、剥離起点部作製工程は、ガラスフィルムから食み出した支持体のコーナー部に支持体を支持する第一支点を設けると共に、第一支点から離れた位置に電子デバイスを支持する第二支点を設ける支点形成工程と、第一支点と第二支点との間に外力付与部材で外力の作用点を設け、これにより支持体の側に凹部が生じるように積層体の一部を凹状に変形させる凹状変形工程、及び積層体の一部が凹状に変形している間に、ガラスフィルムと支持体との間に挿入部材を挿入することで、ガラスフィルムの一部を剥離させる挿入工程とを有する点をもって特徴付けられる。
【0035】
このように、支持体付き電子デバイスの支持体からガラスフィルムを含む電子デバイスを剥離するに際しても、本発明では、ガラスフィルムから食み出した支持体のコーナー部に第一支点を設けると共に、第一支点から離れた位置に第二支点を設け、かつこれら双方の支点間に外力の作用点を設けることで、積層体の一部を凹状に変形させるようにしたので、上記積層体の一部を従来に比べて大きな曲率で変形させることができる。よって、支持体とガラスフィルムとの間の曲率の違いに起因して生じるせん断力を高めることができ、その後の挿入工程で、容易に支持体からガラスフィルムの一部を剥離させることが可能となる。また、支持体の側に凹部が生じるように積層体の一部を凹状に変形させることで、積層体の凹状変形時、ガラスフィルムよりも肉厚に形成し易い(厚み寸法の制約が少ない)支持体の側に大きな曲げ応力(圧縮応力)が作用する。よって、ガラスフィルムと支持体に過度な負荷が作用する事態を回避して、ガラスフィルム及び支持体の破損を防止することが可能となる。また、積層体の一部を凹状に変形させた後に挿入部材を支持体とガラスフィルムとの間に挿入するようにしたので、挿入部材を挿入している間に積層体の変形量を増大させずに済む。よって、これによってもガラスフィルムと支持体に過度な負荷が作用する事態を回避して、剥離起点部の作製の際にガラスフィルムと支持体が破損することを防止することが可能となる。以上より、本発明によれば、ガラスフィルム等に過度な負荷を掛けることなく、ガラスフィルムを含む電子デバイスと支持体とを安全に分離することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
以上に述べたように、本発明によれば、製造関連処理の種類によらず、簡易にかつ低コストに支持体からガラスフィルムを剥離することが可能となる。
【0037】
また、以上に述べたように、本発明によれば、製造関連処理の種類によらず、簡易にかつ低コストに支持体からガラスフィルムを含む電子デバイスを剥離することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係るガラスフィルムを含む電子デバイスの製造方法の第一実施形態を、
図1〜
図16を参照して説明する。なお、本実施形態では、電子デバイスとしての有機ELパネルを製造する際に、支持体が付いた状態の有機ELパネルを、ガラスフィルムと支持体との剥離により、有機ELパネルと支持体とに分離する場合を例にとって以下説明する。
【0040】
本発明の一実施形態に係る電子デバイスの製造方法は、
図1に示すように、ガラスフィルムを含む積層体を形成する積層体形成工程S1と、ガラスフィルムへの加熱を伴ってガラスフィルムに電子デバイス要素を取付けて支持体付き電子デバイスを形成する取付け工程S2と、支持体付き電子デバイスの支持体からガラスフィルムを含む電子デバイスを剥離する剥離工程S3とを備える。
【0041】
また、剥離工程S3は、
図2に示すように、支持体からガラスフィルムの一部を剥離させて、ガラスフィルムをその全面にわたって剥離する際の起点となる剥離起点部を作製する剥離起点部作製工程S31と、剥離起点部を起点として支持体からの電子デバイスの剥離を進行させる剥離進行工程S32とを有し、このうち剥離起点部作製工程S31は、
図3に示すように、ガラスフィルムから食み出した支持体のコーナー部に支持体を支持する第一支点を設けると共に、第一支点から離れた位置に電子デバイスを支持する第二支点を設ける支点形成工程S311と、支持体の側に凹部が生じるように積層体の一部を凹状に変形させる凹状変形工程S312、及びガラスフィルムと支持体との間に挿入部材を挿入することで、ガラスフィルムの一部を剥離させる挿入工程S313とを有する。以下、各工程を詳細に説明する。
【0042】
(S1)積層体形成工程
まず、
図4に示すように、支持体1上にガラスフィルム2を積層して積層体3を形成する。
【0043】
ここで、ガラスフィルム2は、例えばケイ酸塩ガラス、シリカガラスなどで形成され、好ましくはホウ珪酸ガラスで形成され、より好ましくは無アルカリガラスで形成される。ガラスフィルム2にアルカリ成分が含まれていると、表面において陽イオンの脱落が発生し、いわゆるソーダ吹きの現象が起こり得る。その場合、ガラスフィルム2に構造的に粗となる部分が生じるため、このガラスフィルム2を湾曲(凹状変形を含む)させた状態で使用していると、経年劣化により粗となった部分を起点として破損を招くおそれがある。以上の理由より、非平坦状態でガラスフィルム2を使用する可能性がある場合、無アルカリガラスでガラスフィルム2を形成するのが好適である。
【0044】
なお、ここでいう無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスを指し、具体的には、アルカリ成分が3000ppm以下のガラスを指す。もちろん、上述した理由による経年劣化を少しでも防止又は軽減する観点からは、1000ppm以下のガラスが好ましく、500ppm以下のガラスがより好ましく、300ppm以下のガラスがさらに好ましい。
【0045】
ガラスフィルム2の厚み寸法は、300μm以下に設定され、好ましくは200μm以下に設定され、より好ましくは100μm以下に設定される。厚み寸法の下限値については特段の制約なく設定可能であるが、成形後の取り扱い性(支持体1との積層時、あるいは剥離時など)などを考慮すると、1μm以上、好ましくは5μm以上に設定されるのがよい。
【0046】
支持体1は、本実施形態では板状ガラスであって、ガラスフィルム2と同様、ケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス等、公知のガラスで形成される。ただし、加熱を伴う電子デバイスの製造関連処理(本実施形態では取付け工程S2)において、熱膨張の差に起因するガラスフィルム2の不要な変形や破損を可及的に防止する観点から、30℃〜380℃の間における支持体1とガラスフィルム2との線膨張係数の差が、5×10
-7/℃以内となるよう、ガラスの種類を選択するのがよい。この場合、同一種類のガラスで支持体1とガラスフィルム2を形成することが好ましい。
【0047】
支持体1の厚み寸法は、ガラスフィルム2の取り扱い性を向上させ得る限りにおいて特に制限はなく、ガラスフィルム2の厚み寸法と同一レベル又はそれ以上に設定される。具体的には、支持体1の厚み寸法は、300μm以上に設定され、好ましくは400μm以上に設定される。厚み寸法の上限値については特段の制約なく設定可能であるが、後述する支持体1の曲げ(凹状変形)に耐え得る程度の厚み寸法に留めておくのが好ましい。具体的には1000μm以下に設定されるのがよく、好ましくは700μm以下に設定されるのがよい。あるいは500μm以下に設定されるものでもよい。
【0048】
また、これら支持体1とガラスフィルム2は、ダウンドロー法など公知の成形方法で成形され、好ましくはオーバーフローダウンドロー法で成形される。また、フロート法やスロットダウンドロー法、ロールアウト法、アップドロー法などによって成形することも可能である。なお、必要に応じて二次加工を施して(リドローによりガラス一次成形体を引き伸ばして)、100μm未満の厚み寸法に設定することも可能である。
【0049】
積層体3を構成した状態において、支持体1とガラスフィルム2とは相互に、剥離可能な程度に固定されている。固定手段としては任意の手段が採用可能であり、本実施形態では、支持体1としての板状ガラスとガラスフィルム2とを、接着剤などを介在させることなく直接密着させることにより、相互固定を実現している。
【0050】
この際、ガラスフィルム2の支持体1の側の表面2a(
図4でいえば下側の表面)の表面粗さRaと、支持体1のガラスフィルム2の側の表面1a(
図4でいえば上側の表面)の表面粗さRaは共に2.0nm以下に設定される。各表面1a,2aの表面粗さRaを上述した範囲に設定することで、支持体1とガラスフィルム2とを位置ずれなく相互に固定した状態で積層する(積層体3を形成する)ことが可能となる。もちろん、密着性向上の観点からは、1.0nm以下とするのが好ましく、0.2nm以下とするのがより好ましい。
【0051】
一方、ガラスフィルム2の支持体1とは反対側の表面2bの表面粗さRaの大きさは特に限定されないが、後述する取付け工程S2において、成膜等の電子デバイス関連処理を施す対象面となることから、その表面粗さRaは2.0nm以下であることが好ましく、1.0nm以下であることがより好ましく、0.2nm以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、ガラスフィルム2の端部を保護する観点から、ガラスフィルム2と支持体1とを積層した状態において、支持体1がガラスフィルム2から食み出している(
図4)。この場合、支持体1のガラスフィルム2からの食み出し量は、例えば0.5mm以上でかつ10mm以下に設定され、好ましくは3mm以上でかつ5mm以下に設定される。上述のように支持体1の食み出し量を小さく(最大でも10mm程度に)することで、相対的に大面積のガラスフィルム2を全面で効率よく支持することができる。
【0053】
本実施形態では、
図5に示すように、支持体1とガラスフィルム2が共に矩形状をなしている。また、この支持体1上にガラスフィルム2を積層してなる積層体3の全周縁において、支持体1がガラスフィルム2から食み出ており、これにより支持体1のコーナー部4において支持体1がガラスフィルム2から食み出ている。なお、本実施形態では積層体3の4辺縁全てにおいて、支持体1がガラスフィルム2から食み出ている形態を例示したが、もちろん、3辺縁ないし1辺縁で支持体1がガラスフィルム2から食み出ている形態を採ることも可能である。この場合、食み出ていない側の辺縁では、ガラスフィルム2の端面と支持体1の端面とが一致していることが望ましい。
【0054】
なお、上記した積層体3の形成に際して、減圧下で積層作業を行うようにしてもよい。これにより、ガラスフィルム2を支持体1上に積層した際にガラスフィルム2と支持体1との間に生じる(残存する)気泡を低減もしくは消失させることが可能となる。
【0055】
(S2)取付け工程
上述のようにガラスフィルム2を含む積層体3を形成した後、この積層体3に対して加熱を伴う電子デバイスの製造関連処理、具体的には、電子デバイス要素としての有機EL素子5の取付けを行う。これにより、
図6に示すように、積層体3の一部をなすガラスフィルム2の支持体1とは反対側の表面2b上に有機EL素子5が形成される。そして、カバーガラス6を有機EL素子5上に載置して、カバーガラス6の周縁をガラスフィルム2に固定することで、有機EL素子5を封止する。これにより、電子デバイスとしての有機ELパネル7に支持体1が固定された状態の支持体付き有機ELパネル8が形成される。
【0056】
ここで、カバーガラス6の厚み寸法は、例えば300μm以下に設定され、好ましくは200μm以下に設定され、より好ましくは100μm以下に設定される。このように、カバーガラス6の厚み寸法を設定することで、カバーガラス6に適当な可撓性をもたせることが可能となる。
【0057】
また、ガラスフィルム2上への有機EL素子5の取付け態様は任意であり、例えばガラスフィルム2の支持体1とは反対側の表面2b上、CVD法やスパッタリング等の公知の成膜方法により、陽極層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極層などを順に成膜形成することで有機EL素子5を形成するようにしてもよい(詳細な図示は省略)。また、カバーガラス6のガラスフィルム2への固定手段についても任意であり、例えば公知のレーザー封止技術を用いてカバーガラス6をガラスフィルム2に固定するようにしてもよい。この場合、CVD法やスパッタリング等による成膜処理が、加熱を伴う電子デバイス(有機ELパネル7)の製造関連処理に該当する。従って、上述のように有機EL素子5をガラスフィルム2の支持体1と反対側の表面2b上に形成することで、ガラスフィルム2が加熱される。また、この加熱に起因してガラスフィルム2と支持体1との間に新たな結合が形成され、積層時(積層体3を形成した際)に比べて、ガラスフィルム2と支持体1との固定力が高まる。
【0058】
なお、
図6に示す形態では、カバーガラス6とガラスフィルム2とを直接固定しているが、適宜公知のガラスフリットやスペーサ等(図示は省略)を利用してカバーガラス6をガラスフィルム2に接着固定してもよい。あるいは、カバーガラス6に対して支持体1を設けてもよく(図示は省略)、支持体1からカバーガラス6を剥離する際に、本発明を適用することも可能である。
【0059】
(S3)剥離工程
このようにして、支持体付き有機ELパネル8を形成した後、支持体付き有機ELパネル8の支持体1からガラスフィルム2を含む有機ELパネル7を剥離する(
図1)。
図7は、上記剥離を行うための剥離装置10の平面図を示している。この剥離装置10は、剥離起点部作製装置11と、剥離進行装置12とを具備するもので、剥離起点部作製装置11は、支持体付き有機ELパネル8を載置可能な載置台13と、凹状変形の対象となる積層体3の一部(本実施形態では食み出し領域3a)に凹状の変形を付与するための凹状変形付与部14と、挿入機構15とを備える。なお、
図7以降においては、支持体付き有機ELパネル8に含まれる有機EL素子5及びカバーガラス6の図示を省略している。
【0060】
載置台13は例えば定盤で構成され、積層体3を含む支持体付き有機ELパネル8を平坦な載置面16で支持可能とする。本実施形態では、載置面16とガラスフィルム2の表面とが当接するように、すなわち
図8に示すように、支持体1が上側、ガラスフィルム2が下側となるように、積層体3を載置面16上に載置することで、積層体3を含む支持体付き有機ELパネル8を支持可能としている。よって、図示は省略しているが、本実施形態のように、ガラスフィルム2上に有機EL素子5及びカバーガラス6を取付けている場合、載置面16を、有機EL素子5及びカバーガラス6を支持可能な形状にするのがよい。もちろん、載置面16を、ガラスフィルム2(本実施形態ではカバーガラス6)と支持体1の一方又は双方の周縁部のみを支持可能な形状としてもよい。なお、後述する剥離進行装置12による剥離進行工程S32のために、載置台13の載置面16に吸着穴を設けて、ガラスフィルム2(を含む有機ELパネル7)を載置面16に吸着可能に構成することも可能である。
【0061】
凹状変形付与部14は、本実施形態では、載置面16と、積層体3の載置面16から食み出した支持体1のコーナー部4に、支持体1を支持する第一支点P1を設ける第一支点形成部材17と、積層体3の食み出し領域3aに外力を付与する外力付与部材18とで構成される。
【0062】
本実施形態では、載置面16は全体として支持すべき積層体3(支持体付き有機ELパネル8)に準じた形状、すなわち矩形状をなし、かつその一つの角部を欠落させた形状をなす。これにより、載置面16上に支持体付き有機ELパネル8を載置した状態では、支持体付き有機ELパネル8の一つのコーナー部4を除く全ての領域が載置面16で支持されると共に、コーナー部4を含む一部の領域が食み出た状態となる(
図7の左下を参照)。よって、この場合、コーナー部4が食み出した側の載置面16の端部16aが、第一支点P1から離れた位置に支持体付き有機ELパネル8を支持する第二支点P2を設ける第二支点形成部材となる。
【0063】
第一支点形成部材17は、支持体付き有機ELパネル8を構成する積層体3のコーナー部4を支持可能とするもので、本実施形態では、後述する挿入部材(楔状部材19)を第一支点形成部材17としている。また、支持体1がガラスフィルム2から食み出た状態で積層体3を構成する場合(
図5を参照)、第一支点形成部材17は、コーナー部4において、ガラスフィルム2から食み出した支持体1のガラスフィルム2側の表面1aを支持可能としている。言い換えると、第一支点形成部材17は、支持体1のコーナー部4に、支持体1を支持する第一支点P1を設けるようになっている。
【0064】
外力付与部材18は、第一支点形成部材17で形成される第一支点P1と、第二支点形成部材としての載置面16の端部16aで形成される第二支点P2との間に配設される。本実施形態では、外力付与部材18は、ガラスフィルム2の支持体1と反対側の表面2b(実際には、図示を省略するカバーガラス6の表面)に吸着可能な吸着部材20と、吸着部材20を載置面16の法線方向、すなわち載置面16上に載置した積層体3の厚み方向aに沿って昇降可能な昇降部材21とで構成される。
【0065】
挿入機構15は、本実施形態では、挿入部材としての楔状部材19と、楔状部材19を載置台13の載置面16と平行な方向、すなわち載置面16上に載置した状態の積層体3の平面に沿った方向にスライド可能とするスライド部材22とで構成される。本実施形態では、楔状部材19が、支持体1のコーナー部4の頂部と外力付与部材18の仮想中心線とを通過する向き(言い換えると、ガラスフィルム2の対角線に沿った向き)にスライドするよう構成されている(
図7を参照)。
【0066】
また、楔状部材19の刃先方向cと、スライド部材22による楔状部材19の挿入方向bとが成す角(以下、楔角度とも称する。)θが20°以上でかつ45°以下となるように、好ましくは20°以上でかつ30°以下となるように、楔状部材19の姿勢及びスライド部材22のスライド方向が設定される。
【0067】
次に、上記構成の剥離起点部作製装置11を用いた剥離起点部の作製動作の一例を、
図7〜
図13に基づき説明する。
【0068】
(S31)剥離起点部作製工程
まず、
図7及び
図8に示すように、支持体付き有機ELパネル8を載置台13の載置面16上に載置すると共に、支持体付き有機ELパネル8の一部をなす積層体3の載置面16から食み出したコーナー部4(すなわち支持体1のコーナー部4)を支持可能な位置に、第一支点形成部材17としての楔状部材19を配置する。これにより、積層体3を含む支持体付き有機ELパネル8が載置面16と楔状部材19とで支持された状態となる。具体的には、コーナー部4の頂部において支持体1とガラスフィルム2との間に刃先19aが当接する位置に楔状部材19が配置されており、これにより楔状部材19の刃先19aと支持体1との当接点を第一支点P1、載置面16の端部16aとガラスフィルム2(本実施形態では図示を省略するカバーガラス6)との多数の当接点(すなわち本実施形態では当接線)をそれぞれ第二支点P2として、積層体3を含む支持体付き有機ELパネル8は支持された状態となっている(支点形成工程S311)。また、上述のように支持体付き有機ELパネル8を支持した状態では、自重による食み出し領域3aの変形への影響を除き、支持体付き有機ELパネル8は全体として平坦に支持されている。
【0069】
また、この際、第一支点形成部材17によるコーナー部4の支持位置(すなわち第一支点P1)から、載置面16の端部16aによる支持体付き有機ELパネル8の支持位置(すなわち第二支点P2)までの最短距離(
図7)は、例えば30mm以上でかつ200mm以下に設定され、好ましくは30mm以上でかつ150mm以下に設定され、より好ましくは50mm以上でかつ100mm以下に設定される。本図示例の如く載置面16の形状が設定され、かつ支持体付き有機ELパネル8が載置された状態では、第一支点形成部材17による支持体1の支持位置(
図7に示す第一支点P1)から、載置面16の端部16a上に設けられる複数の第二支点P2のうち端部16aの長手方向中央に位置する第二支点P2(
図7)までの直線距離が、上述の最短距離として、30mm以上でかつ200mm以下に設定される。
【0070】
次に、積層体3を含む支持体付き有機ELパネル8を第一支点P1及び第二支点P2で下方から支持した状態で、昇降部材21により吸着部材20を矢印aの方向に沿って上昇させて、吸着部材20を積層体3の下側に位置するガラスフィルム2の表面2b(本実施形態では図示を省略するカバーガラス6の表面)に当接させる(
図9)。そして、この状態から吸引等により吸着部材20をガラスフィルム2の表面2bに吸着させる。ガラスフィルム2を吸着した段階では、積層体3を含む支持体付き有機ELパネル8は依然として平坦に支持された状態を保っている。
【0071】
このようにガラスフィルム2を吸着した後、
図10に示すように、昇降部材21により吸着部材20を矢印aの方向に沿って下降させ、支持体付き有機ELパネル8のうち載置面16から食み出した領域に下方への引張り力Fを付与する。言い換えると、第一支点形成部材17(本実施形態では楔状部材19)による第一支点P1と、載置面16の端部16aによる第二支点P2との間に引張り力Fの作用点を設ける。これにより、支持体1の側に凹部3cが生じるように、積層体3の一部となる食み出し領域3aを凹状に変形させる(凹状変形工程S312)。本実施形態では、食み出し領域3aの略重心となる位置(
図7)に下方への引張り力Fを付与することで、支持体1の側から平面視した場合に円状をなす凹部3cが生じるように、食み出し領域3aを凹状に変形させている。
【0072】
また、上述のように食み出し領域3aを凹状に変形させた状態において、支持体1の側に生じる凹部3cの最大深さ寸法dは1mm以上でかつ5mm以下に設定され、好ましくは2mm以上でかつ4mm以下に設定される。なお、この際の食み出し領域3aの最大凹状変形量(支持体1の表面1bのうち、凹状変形前の状態から最もガラスフィルム2の側に変形した位置における厚み方向aの変形量)は、例えば載置面16及び第一支点形成部材17による支持位置と、食み出し領域3aの形状及び面積、及び吸着部材20の吸着位置からの矢印aの向きに沿った下降量H1とで調整される。本実施形態に係る構成を採る場合、最大深さ寸法dは、外力付与部材18(吸着部材20)の下降量H1に略等しい。すなわち、吸着部材20の下降量H1は1mm以上でかつ5mm以下に設定され、好ましくは2mm以上でかつ4mm以下に設定される。
【0073】
そして、積層体3の一部となる食み出し領域3aが凹状に変形している間に、スライド部材22の駆動により楔状部材19の矢印bの方向に沿った向きの移動を開始し、楔状部材19の刃先19aを、食み出し領域3aのコーナー部4の頂部に位置する支持体1とガラスフィルム2との間に挿入する(ここでは押し当てる)。これにより、
図11に示すように、支持体1の下側の表面1aと密着状態にあるガラスフィルム2の上側の表面2aがその端部2a1から、支持体1の表面1aに対して剥離し始める。そして、
図11に示す状態から、スライド部材22を駆動させて、楔状部材19をさらに矢印bの方向に沿って移動させる(スライドさせる)ことで、ガラスフィルム2の剥離領域が拡大していく(
図12)。
【0074】
この際、支持体1及びガラスフィルム2には、凹状に変形する前の状態(
図12中、二点鎖線で示す状態)に戻ろうとする向きの反力(復元力f1,f2)がそれぞれ生じる。そのため、吸着部材20でガラスフィルム2の側を吸着している場合には、ガラスフィルム2に生じた復元力f2が吸着部材20による下方への引張り力Fで相殺され、実質的には支持体1の側にのみ上述した復元力f1が作用する状態となる。従って、このことによっても、ガラスフィルム2の支持体1からの剥離領域が拡大し、例えば
図13に示すように、支持体1がほぼ凹状に変形する前の状態に戻った段階では、支持体1とガラスフィルム2との間に、ガラスフィルム2をその全面にわたって剥離する際の起点となる剥離起点部9が形成される(挿入工程S313)。
【0075】
(S32)剥離進行工程
このようにして剥離起点部9を作製した後、支持体1の側もしくはガラスフィルム2の側を図示しない吸着パッド等で把持して一方を他方から離反する向きに引張ることにより、あるいは水等の流体を剥離起点部9に向けて吹き付けることにより、支持体1からガラスフィルム2をその全面にわたって剥離する。
【0076】
本実施形態では、例えば
図7及び
図14に示すように、複数の吸着パッド23と、各吸着パッド23を独立して上下方向aに駆動可能な駆動部24とを有する剥離進行装置12を用いて、ガラスフィルム2の剥離を進行させる。具体的には、
図7に示すように、支持体1の上側に複数の吸着パッド23を配置した状態から、各吸着パッド23を駆動部24により下方に移動させて、各吸着パッド23で支持体1の上側の表面1bを吸着する(
図14)。然る後、
図15に示すように、剥離起点部9の側から吸着パッド23を順に上昇させていくことで、ガラスフィルム2の支持体1からの剥離がその対角線に沿って進行する。これにより、ガラスフィルム2がその全面にわたって支持体1から剥離され、支持体付き有機ELパネル8が、ガラスフィルム2を含む有機ELパネル7と支持体1とに分離される(
図16)。
【0077】
このように、支持体付き有機ELパネル8の支持体1からガラスフィルム2を含む電子デバイスとしての有機ELパネル7を剥離するに際し、本発明では、ガラスフィルム2から食み出した支持体1のコーナー部4に第一支点P1を設けると共に、第一支点P1から離れた位置に第二支点P2を設け、かつこれら双方の支点P1,P2間に外力(引張り力F)の作用点を設けることで、食み出し領域3aを凹状に変形させるようにした。これによれば、積層体3の一部としての食み出し領域3aを従来に比べて大きな曲率で変形させることができる。よって、支持体1とガラスフィルム2との間の曲率の違いに起因して生じるせん断力を高めることができ、その後の挿入工程S313で、容易に支持体1からガラスフィルム2の一部を剥離させることが可能となる。また、支持体1の側に凹部3cが生じるように積層体3の一部を凹状に変形させることで、積層体3の凹状変形時、ガラスフィルム2よりも肉厚に形成し易い(厚み寸法の制約が少ない)支持体1の側に大きな曲げ応力(圧縮応力)が作用する。よって、ガラスフィルム2と支持体1に過度な負荷が作用する事態を回避して、ガラスフィルム2及び支持体1の破損を防止することが可能となる。また、積層体3の一部を凹状に変形させた後に楔状部材19を支持体1とガラスフィルム2との間に挿入するようにしたので、楔状部材19を挿入している間に積層体3の変形量を増大させずに済む。よって、これによってもガラスフィルム2と支持体1に過度な負荷が作用する事態を回避して、剥離起点部9の作製の際にガラスフィルム2と支持体1が破損することを防止することが可能となる。以上より、本発明によれば、ガラスフィルム2や有機EL素子5、支持体1などに過度な負荷を掛けることなく、支持体付き有機ELパネル8を、ガラスフィルム2を含む有機ELパネル7と支持体1とを安全に分離することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、楔状部材19で第一支点P1を設けるようにしたので、食み出し領域3aの凹状変形開始時(
図10)、楔状部材19が食み出し領域3aの第一支点形成部材17として機能する一方、凹状に変形した状態においては、楔状部材19が既にガラスフィルム2と支持体1との間に当接した状態になっている(
図10)。そのため、そのまま楔状部材19を挿入方向bに移動(スライド)させるだけで、ガラスフィルム2と支持体1との間に楔状部材19を挿入することができ、容易かつ確実に剥離起点部9を作製することが可能となる。また、楔状部材19自体が第一支点形成部材17として機能していることから、楔状部材19の挿入動作に伴い、楔状部材19による食み出し領域3aの支持位置、すなわち第一支点P1も剥離の進行方向、すなわち積層体3の平面に沿った方向の中央側に移行する。よって、楔状部材19の挿入態様を一定の状態に保って、剥離起点部9の作製動作を円滑に行うことが可能となる。
【0079】
特に、この場合、積層体3の食み出し領域3aをガラスフィルム2の側から吸着部材20で吸着した後、食み出し領域3aを下方に引張って凹状に変形させることで、支持体1の側に生じる凹部3cに外力付与部材18が居続ける事態を回避できる。そのため、楔状部材19の挿入開始後、ガラスフィルム2が凹状に変形した状態を保ちつつも、楔状部材19と外力付与部材18とが干渉する事態を回避して、ガラスフィルム2と支持体1とが安全かつ確実に剥離可能な位置、すなわち剥離起点部9が形成されるまでの間、楔状部材19の挿入動作を円滑に進めることが可能となる。また、上述のように支持体1の側に凹部3cが生じるように食み出し領域3aを凹状に変形させた場合には、支持体1及びガラスフィルム2には凹状に変形する前の平坦な状態に戻ろうとする向きの復元力f1,f2が作用する。そのため、吸着部材20でガラスフィルム2の側を吸着している場合には、ガラスフィルム2に生じた復元力f2が吸着部材20による下方への引張り力Fで相殺され、実質的には支持体1の側にのみ上述した復元力f1が作用する状態となる。よって、楔状部材19の挿入動作をより円滑に行うことができ、剥離起点部9を安全かつ容易に作製することが可能となる。
【0080】
以上、本発明に係るガラスフィルムを含む電子デバイスの製造方法の一実施形態(第一実施形態)を説明したが、この製造方法は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0081】
図17は、本発明の第二実施形態に係る剥離起点部作製装置25の要部断面図(
図7に示す剥離装置10のA−A要部断面図と同じ箇所の断面図)を示している。この剥離起点部作製装置25は、吸着部材20及び昇降部材21を、積層体3の上方、すなわち支持体1の側に配置してなる。他の構成については第一実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0082】
上記構成の剥離起点部作製装置25を用いた剥離起点部9の作製動作(剥離起点部作製工程S31)の一例は、
図17〜
図20に示す通りである。
【0083】
まず
図17に示すように、支持体付き有機ELパネル8を載置台13の載置面16上に載置すると共に、支持体付き有機ELパネル8の一部をなす積層体3の載置面16から食み出したコーナー部4を支持する位置に、楔状部材19を配置する。これにより、積層体3を含む支持体付き有機ELパネル8が載置面16と楔状部材19とで支持された状態となる。本実施形態では、コーナー部4の頂部において支持体1とガラスフィルム2との間に刃先19aが当接する位置に楔状部材19が配置されており、これにより楔状部材19の刃先19aとコーナー部4との当接点、及び載置面16の端部16aとコーナー部4との当接点をそれぞれ第一支点P1、第二支点P2として、支持体付き有機ELパネル8は支持された状態となっている。また、上述のように支持体付き有機ELパネル8を支持した状態では、自重による変形の影響を除き、支持体付き有機ELパネル8は全体として平坦に支持されている。
【0084】
次に、昇降部材21により吸着部材20を
図16に示す位置から矢印aの方向に沿って下降させて、
図18に示すように、吸着部材20を積層体3の上側に位置する支持体1の表面1bに当接させる。そして、この状態から引き続き吸着部材20を矢印aの方向に沿って下降させ、積層体3に下方への押圧力Gを付与する。これにより、
図19に示すように、第一支点形成部材17により設けられた第一支点P1と載置面16の端部16aにより設けられた第二支点P2との間に押圧力Gの作用点を設けて、支持体1の側に凹部3cが生じるように、食み出し領域3aを凹状に変形させる。
【0085】
そして、食み出し領域3aを凹状に変形させた状態から、スライド部材22の駆動により楔状部材19の矢印bの方向に沿った向きの移動を開始し、楔状部材19の刃先を、コーナー部4の頂部に位置する支持体1とガラスフィルム2との間に当接させる(例えば押し当てる)。これにより、
図20に示すように、支持体1とガラスフィルム2との間に向けた楔状部材19の挿入が開始され、ある程度までガラスフィルム2の端部2a1からの剥離領域が拡大することで、
図13に示す如き剥離起点部9が作製される(剥離起点部作製工程S31)。
【0086】
そして、剥離起点部9を作製した後、図示は省略するが、例えば支持体1の側もしくはガラスフィルム2の側を図示しない吸着パッド等で把持して一方を他方から離反する向きに引張ることで、あるいは水等の流体を剥離起点部9に向けて吹き付けることで、支持体1からガラスフィルム2をその全面にわたって剥離する。これにより、支持体付き有機ELパネル8が、ガラスフィルム2を含む有機ELパネル7と支持体1とに分離される(剥離進行工程S32)。もちろん、この際、例えば図示は省略するが、吸着部材20と干渉しない位置で、支持体1を上側から吸着可能な
図14の如き剥離進行装置12を用いて、支持体1を剥離起点部9の側から引張り上げることによって、ガラスフィルム2をその全面にわたって支持体1から剥離するようにしてもよい。
【0087】
このように、食み出し領域3aを矢印aの方向、すなわち平坦な状態で載置面16上に載置した積層体3の厚み方向に沿って支持体1の側から下方に押圧することによっても、ガラスフィルム2や支持体1に過度な負荷を掛けることなく、安定的に食み出し領域3aを凹状に変形させることが可能となる。従って、食み出し領域3aを従来に比べて大きな曲率で変形させることができ、上述の如く曲率の差に起因したせん断力でもって、比較的容易に支持体1とガラスフィルム2との間に剥離起点部9を作製することが可能となる。
【0088】
なお、本実施形態のように、支持体1の側から押圧力Gを付与する場合であれば、吸着部材20に限る必要はない。例えば先端が球状をなす棒状部材など、支持体1及びガラスフィルム2に破損等の不具合を与えない限りにおいて、任意形状及び構成の押圧部材を用いてもよい。
【0089】
また、外力(引張り力F、押圧力G)の作用点に関し、上記実施形態では、コーナー部4における支持体付き有機ELパネル8の支持位置(楔状部材19の刃先19aと支持体1との当接位置)と、載置面16の端部16aとの中間位置に引張り力F又は押圧力Gの作用点を設けた場合を例示したが、もちろんこれ以外の位置に作用点を設けてもよい。例えばよりコーナー部4の端部に支持体1とガラスフィルム2との間に互いに離反する向きの力が生じるよう、吸着部材20と支持体1又はガラスフィルム2との接点、すなわち引張り力F又は押圧力Gの作用点を端部16aよりもコーナー部4に近い側に設けるようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、積層体3の厚み方向aに沿った向きに下方への引張り力F又は押圧力Gを食み出し領域3aに付与する場合を例示したが、これ以外の態様で外力を付与することにより、食み出し領域3aを凹状に変形させてもよい。例えば図示は省略するが、食み出し領域3aにおいて支持体1のコーナー部を矢印bの方向よりもやや下方に向けて押圧することで、支持体1の側に凹部3cが生じるように食み出し領域3aを凹状に変形させてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、載置面16として、その一つの角部を欠落させた形状としたものを用いた場合を例示したが、もちろんこれ以外の形状をなす載置面16を用いて支持体1とガラスフィルム2との剥離を図ることも可能である。
図21はその一例(第三実施形態)に係る剥離起点部作製装置26の平面図を示している。この剥離起点部作製装置26は、
図7に示す載置面16の端部16aの両端から支持すべき積層体3(支持体付き有機ELパネル8)の辺縁に沿って延長する延長支持部27を載置面16と一体的に設けたものである。この構成によれば、支持体付き有機ELパネル8を、載置面16と第一支点形成部材17としての楔状部材19、及び延長支持部27とで支持しながら、これら載置面16と楔状部材19、及び延長支持部27との間の食み出し領域3aを凹状に変形させることができる。従って、上述した一連の剥離起点部9の作製動作をより安定的に実施することが可能となる。
【0092】
また、第一支点形成部材17に関し、上記実施形態では、第一支点形成部材17を楔状部材19として支持体1のコーナー部4に配設した場合を例示したが、もちろんこれ以外の構成を採ることも可能である。例えば図示は省略するが、第一支点形成部材17が楔状部材19の押し込み動作を阻害しない範囲内で、第一支点形成部材17を楔状部材19とは別個に設けてコーナー部4の頂部以外の領域を支持し、楔状部材19をコーナー部4の頂部に当接させた形態を採ることも可能である。
【0093】
また、第二支点P2の形成態様に関し、上記実施形態では、載置面16の端部16aで複数の第二支点P2を連続的に設けた場合を例示したが、もちろんこれ以外の態様を採ることも可能である。例えば図示は省略するが、載置面以外の支持部材(ローラなど)で支持体付き有機ELパネル8を支持すると共に、支持体1のコーナー部4を第一支点形成部材17で支持し、第一支点P1から離れた位置で、上記載置面以外の支持部材とは別個に第二支点形成部材を設けることも可能である。以上より、任意の部材で支持体付き有機ELパネル8の任意の位置に第二支点P2を設けることが可能である。また、第二支点P2の数も任意であり、一又は複数の第二支点P2を設けることが可能である。
【0094】
また、楔状部材19の挿入方向に関し、上記実施形態では、スライド部材22により楔状部材19を、平坦状態の積層体3の平面方向に沿った向きにスライドさせる形態を例示したが、もちろんこれ以外の挿入態様を採ることも可能である。例えば剥離起点部9が形成された後の食み出し領域3aの変形態様(剥離進行時の変形態様)に応じて、楔状部材19の移動方向を変更する構成を採ってもかまわない。
【0095】
また、上記実施形態では、剥離起点部作製装置11と剥離進行装置12とで、載置台13(の載置面16)を共用する場合を例示したが、もちろん剥離装置10はこの例には限られない。剥離起点部作製装置11と剥離進行装置12とを完全別個に製作して、一旦剥離起点部9を作製した支持体付き有機ELパネル8を剥離進行装置12の吸着面上に載置して、剥離進行工程S32を実施するようにしてもかまわない。
【0096】
また、上記実施形態では、支持体1として板状ガラスを採用し、かつこの支持体1とガラスフィルム2とを直接密着で相互に固定した場合を例示したが、もちろんこれ以外の手段でガラスフィルム2と支持体1とを固定してなる積層体3に対しても本発明を適用することは可能である。例えば、アクリル粘着層、シリコーン薄膜層、無機薄膜層(ITO、酸化物、金属、カーボン)など非ガラス材からなる層と板状ガラスとで支持体1を構成し、非ガラス材層とガラスフィルム2を密着させてなる積層体(図示は省略)に対しても本発明を適用することが可能である。
【0097】
また、以上の説明では、電子デバイスとして有機ELパネル7を製造する場合を例示したが、もちろんこれ以外の電子デバイスの製造方法に対しても本発明を適用することが可能である。
図22はその一例に係る支持体付き液晶パネル28の断面図を示している。このパネル28は、最終製品としての液晶パネル29の両側に一対の支持体1,1を固定してなるもので、例えば以下のようにして形成される。すなわち、まずそれぞれ支持体1とガラスフィルム2とを積層してなる一対の積層体3,3を形成する(積層体形成工程S1)。然る後、一方の積層体3のガラスフィルム2の表面2b上に、図示しない液晶を封入するための空間を区画形成するスペーサ30を形成し、このスペーサ30上に他方の積層体3のガラスフィルム2を固定する(取付け工程S2)。このようにして支持体付き液晶パネル28を形成した後、上述した剥離方法で支持体1を一枚ずつ剥離し(剥離工程S3)、1枚の支持体付き液晶パネル28を、2枚の支持体1,1と、1枚の液晶パネル29とに分離する。よって、液晶パネル29を製造する場合にあっても本発明を適用して、ガラスフィルム2を破損させることなく、安全かつ容易に支持体付き液晶パネル28を、支持体1と液晶パネル29とに分離させることが可能となる。
【0098】
もちろん、ガラスフィルム2自体を最終製品として取得(製造)する場合においても、本発明に係るガラスフィルムの製造方法を適用することにより、ガラスフィルム2を破損させることなく、安全かつ容易に支持体1からガラスフィルム2を剥離することが可能となる。