(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の欠陥検査装置は、飲料などの内容物を充填可能な容器を被検査物とし、内容物の漏洩の原因となるピンホールやクラックなどの欠陥部(リーク)が被検査物に存在するか否かを検査する装置である。また、本発明の欠陥検査装置は、被検査物の表面のうち他の部材と接触する部分又は当該被検査物の表面同士が接触する部分を接触表面部としたときに、接触表面部と当該被検査物の外側の空間とを連通又は接触させるための通気性確保手段を備えたことを特徴としている。
以下、本発明の欠陥検査装置及び欠陥検査方法の具体的な実施形態について、
図1〜
図24を参照して説明する。
【0015】
[欠陥検査装置及び欠陥検査方法の第一実施形態]
(I)欠陥検査装置
本実施形態の欠陥検査装置は、被検査物の内部の圧力を外部の圧力よりも高くしたときに、被検査物の内部から欠陥部を通って外部に漏れ出た気体を検知することで、欠陥部の有無を検出するものである。
図1に示すように、本実施形態の欠陥検査装置10Aは、チャンバ11、気体供給手段12、吸着手段13、排気手段14、気体検出手段20、折込部用通気性確保手段30、表面用通気性確保手段40を備えている。
【0016】
ここで、チャンバ11は、直方体状の箱体であって、内部には、被検査物50を収納可能な大きさを有する中空の収納空間111が形成されている。
このチャンバ11は、直方体状の下半部を形成するチャンバ本体112と上半部を形成するチャンバ蓋113を有し、これらチャンバ本体112とチャンバ蓋113は、分離可能となっている。
チャンバ本体112は、上面部に開口を有する浅底でトレイ状の部材であって、開口が上向きとなるように、所定の水平面(例えば、当該チャンバ11を収納するための筐体の内部の底面など)に載置固定されている。
チャンバ蓋113は、下面部に開口を有する浅底でトレイ状の部材であって、開口が下を向いた状態で、開口をチャンバ本体112の上面部の開口に対向させながら、チャンバ蓋113をチャンバ本体112の上に載置することにより、これらチャンバ本体112とチャンバ蓋113との間に中空の収納空間111を形成するようになっている。
【0017】
チャンバ蓋113の上方には、チャンバ蓋113を上昇又は下降させるためのチャンバ開閉手段114が備えられている。
チャンバ開閉手段114は、例えば、エアシリンダなどで構成することができ、エアシリンダの軸の端部にチャンバ蓋113の上面部を接続し、この軸を昇降させることにより、チャンバ蓋113を上昇又は下降させる。
【0018】
チャンバ本体112は、矩形板状の底部115と、底部115の周縁から上方に向かって立設された側壁117とを有している。
また、チャンバ蓋113は、矩形板状の上板部116と、上板部116の周縁から下方に向かって立設された側壁118とを有している。
チャンバ本体112の側壁117の上面とチャンバ蓋113の側壁118の下面との一方又は双方には、チャンバ11の内部を密封状態にするための気密性保持部材119が配置されている。気密性保持部材119には、例えば、パッキンなどを用いることができる。
このような気密性保持部材119が配置されていることにより、チャンバ本体112の上にチャンバ蓋113を載置した状態、例えば、
図1に示す状態においては、チャンバ11の内部の収納空間111を密封状態に保つことができる。
【0019】
チャンバ11の収納空間111には、被検査物50が収納される。
被検査物50は、飲料、食料品、化粧品、化学製品などを内容物として充填可能な容器である。ただし、本実施形態においては、容器の代表例としてパウチ51を被検査物50とする。
パウチ51は、ポリプロピレンやポリエステルなどの合成樹脂で形成されたフィルムとアルミ箔とを積層加工(ラミネート加工)し、この加工で得られたラミネートシート(シート56)を袋状に形成した容器である。
【0020】
パウチ51は、種々の形状のものが市販されている。
代表的なものとして、例えば、矩形状の二枚のシート56を積層するように重ね合わせ、縁部を所定の幅で熱溶着したもの(平袋)がある。
また、二枚のシート56を重ね合わせるとともに、これら二枚のシート56の内部に向かって「く」の字状に折り曲げられた折り込み部53aが底部52に設けられたスタンディングパウチ51aがある(
図27(i)、
図2参照)。折り込み部53aは、二枚のシート56の端部同士をつなぐ襠(まち)として機能する凹部である。スタンディングパウチ51aは、折り込み部53aが設けられた底部52を広げることにより、自立可能となる。
さらに、パウチ51には、折り込み部53bが側部54に設けられたガセット(gusset)パウチ51bがある(
図27(ii)参照)。ガセットパウチ51bは、凹部である折り込み部53bが設けられた側部54を広げることにより、内容積を増やすことができる。
また、パウチ51には、スパウト57を設けたものがある(
図27(ii)参照)。スパウト57は、硬質プラスチックなどで形成された円筒形状の成形品である。スパウト57は、通常、パウチ51の上縁部58の中央部分に設けられており、内容物を充填するときの注入口や内容物を吸い込むときの吸入口として機能する。
【0021】
このように、パウチ51は、形状で分類したときに、平袋、スタンディングパウチ51a、ガセットパウチ51bなどの種類があり、さらにスパウト57を設けたものもある。本実施形態の欠陥検査装置10Aは、それらいずれのパウチ51についても被検査物50とすることができる。
ただし、欠陥検査装置10Aを用いて検査を行うとき、パウチ51は、
図2に示すように、上縁部58にスパウト57を設けず、かつ、上縁部58に熱溶着を施さずに(あるいは、上縁部58の右端部と左端部のみを熱溶着し)、上部開口59を設けた状態にして、チャンバ11の内部に収納(セット)される。
【0022】
気体供給手段12は、被検査物50の内部に検査用の気体を供給するための陽圧手段である。
気体供給手段12は、気体供給源121と、供給管122と、気体供給ノズル123と、ノズル駆動手段124と、バルブ125と、付勢部材126とを備えている。
気体供給源121は、清浄な空気を所定の気圧まで圧縮して供給する。気体供給源121には、例えば、オイルレスコンプレッサーや送風機などを用いることができる。なお、清浄な空気とは、フィルターなどにより、ほこり等が除去された空気をいう。
供給管122は、気体供給源121から供給された気体をチャンバ11の内部に収納された被検査物50へ送るための配管である。
【0023】
気体供給ノズル123は、供給管122を通って送られてきた気体を被検査物50の内部へ送り込むためのものである。
この気体供給ノズル123は、チャンバ11の外部であって側壁117、118の近傍に設けられている。
また、気体供給ノズル123には、気体を通すための貫通孔が穿設されている。貫通孔の一方の端部開口は、供給管122に接続されており、他方の端部開口は、チャンバ11に向かって開放している。
さらに、気体供給ノズル123には、チャンバ11に対向する面に管状部127が突設されている。管状部127は、内部に貫通孔が穿設されており、被検査物50の上部開口59に差し込まれることで、供給管122から送られてきた気体を被検査物50の内部へ供給する。
【0024】
ノズル駆動手段124は、気体供給ノズル123をチャンバ11に向かう方向、あるいは、チャンバ11から離間する方向へ移動させる。ノズル駆動手段124には、例えば、エアシリンダなどを用いることができる。
バルブ125は、供給管122の途中又は端部に設けられており、供給管122の内部を流れる気体の流れを制御する。
付勢部材126は、気体供給ノズル123を上方へ付勢する。付勢部材126には、例えば、コイルばねなどを用いることができる。
【0025】
吸着手段13は、チャンバ11の収納空間111に収納された被検査物50の上部開口59を開閉する。
この吸着手段13は、貫通孔131、132と、真空ホース(図示せず)と、真空ポンプ(図示せず)を備えている。
貫通孔131は、チャンバ本体112の側壁117a(チャンバ本体112の底部115の上にパウチ51を載置したときにパウチ51の上縁部58が載置される側壁117a)において、側壁117aの上面から下面に向かって穿設された孔である。
貫通孔132は、チャンバ蓋113の側壁118a(チャンバ蓋113の側壁118のうち、チャンバ本体112の側壁117aの上方に位置する側壁118a)において、側壁118aの下面から上面に向かって穿設された孔である。
真空ポンプは、真空ホースにより、チャンバ本体112の貫通孔131の内部と、チャンバ蓋113の貫通孔132の内部とに接続され、それぞれの貫通孔131、132の内部を真空状態にする。
【0026】
このような構成を備えた吸着手段13は、具体的には、次のような手順で使用される。
チャンバ11の収納空間111には、被検査物50が収納される。このとき、被検査物50であるパウチ51の上縁部58は、チャンバ本体112の側壁117aとチャンバ蓋113の側壁118aとの間に挟み込まれた状態とする。つまり、チャンバ本体112の側壁117aに形成された貫通孔131の上部開口と、チャンバ蓋113の側壁118aに形成された貫通孔132の下部開口との間に、パウチ51の上縁部58が位置するようにする。
そして、真空ポンプを駆動させて貫通孔131、132の内部を真空状態にすると、パウチ51を構成する二枚のシート56のうち、下側に位置するシート56aの上縁部58がチャンバ本体112の貫通孔131の上部開口に真空吸着され、上側に位置するシート56bの上縁部58がチャンバ蓋113の貫通孔132の下部開口に真空吸着される。
【0027】
次いで、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を上方へ移動させると、パウチ51の上側シート56bの上縁部58がチャンバ蓋113の貫通孔132に真空吸着した状態で持ち上がる。一方、パウチ51の下側シート56aの上縁部58は、チャンバ本体112の貫通孔131に真空吸着した状態で固定される。これにより、パウチ51は、上部開口59が開いた状態となる。
【0028】
続いて、パウチ51の上部開口59に対して気体供給ノズル123の管状部127を挿入する。そして、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を下降させる。これにより、パウチ51の上側シート56bの上縁部58がチャンバ蓋113の貫通孔132に真空吸着された状態で下降し、パウチ51の上部開口59が、気体供給ノズル123の管状部127を挟み込んだ状態で閉口する。
【0029】
排気手段14は、チャンバ11の収納空間111にある気体を外部へ逃がすためのものである。
例えば、チャンバ11の収納空間111に収納された被検査物50が陽圧となって膨張したときに、排気手段14は、チャンバ11の収納空間111にある気体を外部へ逃がす。
【0030】
気体検出手段20は、被検査物50の内部に封入された気体が欠陥部を通って外部に漏洩したことを検出する手段である。
気体検出手段20には、種々の装置を用いることができるが、一例として、漏洩した気体の量を測定する気体検出装置21を用いることができる。
気体検出装置21は、
図3に示すように、チャンバ11の収納空間111に連通している検出気体収納部211と、検出気体収納部211に連通している気体検出部212とを備えている。
【0031】
気体検出装置21は、次のように動作する。被検査物50の内部に封入されている気体が被検査物50の欠陥部から外部へ漏洩すると、チャンバ11の収納空間111の内部の気体が、検出気体収納部211へ移動する。このとき、被検査物50の欠陥部から漏洩した気体の量と、チャンバ11の収納空間111から検出気体収納部211へ移動する気体の量は同じである。
次いで、チャンバ11の収納空間111から移動してきた気体が検出気体収納部211に収納されると、検出気体収納部211の内部の気体が、気体検出部212へ移動する。このとき、チャンバ11の収納空間111から検出気体収納部211へ移動してきた気体の量と、検出気体収納部211から気体検出部212へ移動する気体の量は同じである。
そして、気体検出部212において、気体が移動してきたことを検知する。検知には、例えば、圧力計や流量計などを用いることができる。これにより、被検査物50に欠陥部があることを検出できる。
なお、気体検出部212には、検出気体収納部211から移動してきた気体を検知すると電気信号を出力する信号出力手段(図示せず)と、出力された電気信号を入力して、被検査物50における欠陥部の有無を判定するコンピュータなどからなる判定手段(図示せず)とを備えることができる。
【0032】
また、気体検出装置21においては、被検査物50の欠陥部から気体が漏洩すると、漏洩した気体の量に応じて、かつ、気体が漏洩した直後に、チャンバ11の収納空間111の中の気体が検出気体収納部211へ移動する。実際には、チャンバ11の収納空間111の中の気体が、チャンバ11と検出気体収納部211とを接続するチューブ213の内部に進入し、チューブ213の内部の気体が、検出気体収納部211の内部に流入する。
さらに、チューブ213の内部の気体が検出気体収納部211の内部に流入すると、検出気体収納部211の内部の気体が、検出気体収納部211と気体検出部212とを接続するチューブ214の内部に進入し、チューブ214の内部の気体が、気体検出部212の内部に流入する。
これら気体の移動は、瞬時に行われるので、短時間で検査結果を得ることができる。
【0033】
折込部用通気性確保手段30は、チャンバ11の収納空間111に収納された被検査物50の折り込み部53a、53bの表面を、被検査物50の外側にある空間(チャンバ11の収納空間111)に連通又は接触させるための通気性確保手段である。
折込部用通気性確保手段30は、通気性確保部材31と、部材駆動手段32とを備えている。
【0034】
通気性確保部材31は、被検査物50の折り込み部53a、53bに対して外側から押し当てられる部材であって、次の三つの機能を有している。
第一の機能は、折り込み部53a、53bを広げる機能である。
第二の機能は、折り込み部53a、53bの表面とチャンバ11の内部の収納空間111とを連通又は接触させる機能である。
第三の機能は、折り込み部53a、53bが外側へ膨出してバックリングと呼ばれる変形が生じる事態を防止する機能である。
【0035】
第一の機能は、チャンバ11の収納空間111に収納された被検査物50が気体の封入によって膨張し、折り込み部53a、53bが折り目55の周囲で重なり合って密着した状態(すなわち、被検査物50の表面のうち折り込み部53a、53bの表面同士が接触した状態)となっている場合において(
図28(i)参照)、重なり合った部分を接触表面部としたときに、接触表面部である重なり部分の間隙に通気性確保部材31を挿入することで、折り込み部53a、53bを押し広げる機能である。
【0036】
この機能により、折り込み部53a、53bに存在する欠陥部を検出できるようにする。
例えば、通気性確保部材31を押し当てておらず、折り込み部53a、53bの折り目55の周囲が重なり合って密着している状態では、重なり合っている部分である接触表面部がチャンバ11の収納空間111に露出していないため、接触表面部に欠陥部があったとしても、被検査物50の内部に封入された気体が欠陥部を通って外部の収納空間111に漏洩しないので、気体検出手段20が漏洩を検知できず、欠陥部を検出することができない。
これに対し、通気性確保部材31を押し当てて折り込み部53a、53bを広げた状態では、被検査物50の内部に封入された気体が、折り込み部53a、53bに存在する欠陥部を通って外部の収納空間111に漏洩可能となる。これにより、気体検出手段20は、漏洩を検知することで、欠陥部を検出できる。
【0037】
ただし、通気性確保部材31の表面が凹凸のほとんど無い平坦な面であった場合、通気性確保部材31を折り込み部53a、53bに押し当てると、折り込み部53a、53bに存在する欠陥部に対しても通気性確保部材31が押し当てられるので、欠陥部が外側から閉塞される。特に、被検査物50の内部には加圧気体が封入されており、内圧が高い陽圧状態となっていることから、内圧によって被検査物50の折り込み部53a、53bが通気性確保部材31の表面に向かって押圧されることで、通気性確保部材31による欠陥部の閉塞状態が保持される。
そうすると、通気性確保部材31が折り込み部53a、53bを押し広げたとしても、折り込み部53a、53bに存在する欠陥部を通って加圧気体が外部の収納空間111に漏洩しなくなるので、気体検出手段20が欠陥部を検出できなくなる。
【0038】
そこで、通気性確保部材31には、上述した第二の機能を備えることとした。すなわち、折り込み部53a、53bの表面とチャンバ11の収納空間111とを連通又は接触させる機能を、通気性確保部材31に備えることとした。
この機能を実現するための具体的な構成として、通気性確保部材31は、通気部33を有している。
通気部33は、通気性確保部材31が折り込み部53a、53bを押し広げている状態において、折り込み部53a、53bの表面とチャンバ11の収納空間111とを通気可能に連通させ、あるいは、それらを直接接触させるものである。
【0039】
通気部33の具体例としては、例えば、
図4、
図5に示すように、板状の通気性確保部材31の表面に形成された複数の溝部331がある。
溝部331は、通気性確保部材31の表面を平面視したときに線状又は曲線状に形成された凹状部分である。
溝部331は、通気性確保部材31の表面において複数形成されている。これら複数の溝部331は、平行に配置されていてもよく、あるいは、平行でなくてもよい。平行でない場合、複数の溝部331同士は、交差していてもよく、あるいは、交差していなくてもよい。交差している場合、交差する箇所は、複数箇所であってもよく、あるいは、一箇所であってもよい。一箇所の場合、複数の溝部331は、一点から放射状に延びた形状としてもよい。
【0040】
また、複数の溝部331が線状で平行に配置されている場合、これら溝部331の長手方向は、
図4に示すように、通気性確保部材31の幅方向であってもよく、あるいは、
図5に示すように、通気性確保部材31の長手方向(部材駆動手段32によって通気性確保部材31が移動する方向と同じ方向)であってもよい。さらに、溝部331の長手方向は、通気性確保部材31の上面端辺に対して斜め方向であってもよい。
さらに、溝部331の断面形状は、例えば、
図4、
図5に示すように、V字状とすることができる。ただし、溝部331の断面形状は、V字状に限るものではなく、例えば、U字状や凵の字状などであってもよい。
【0041】
通気部33の他の具体例としては、例えば、
図6に示すように、多孔質の材料で形成された通気性確保部材31の細孔332が挙げられる。
また、通気部33のさらに他の具体例としては、例えば、
図7に示すように、板状の基部333の側面に突設された複数の棒状部334の各間に位置する棒状部間空間部335が挙げられる。
さらに、通気部33の他の具体例としては、例えば、サンドブラストによって通気性確保部材31の表面を加工したときの表面の凹凸形状のうちの凹部が挙げられる。
また、通気部33の他の具体例としては、例えば、通気性確保部材31の表面に梨地加工を施したときの梨地である凹凸形状の凹部が挙げられる。
【0042】
これらの形状のうちのいずれかの形状を有する通気部33を備えた通気性確保部材31は、被検査物50の折り込み部53a、53bを押し広げるとともに、折り込み部53a、53bに存在する欠陥部を通って漏洩してきた気体を、通気部33を通って、チャンバ11の収納空間111へ排出することができる。
具体的に、通気部33は、次のように機能する。
通気性確保部材31は、被検査物50の折り込み部53a、53bを押し広げるときに、折り込み部53a、53bの外側面に接触する。ただし、通気性確保部材31は、通気部33を備えているために、通気性確保部材31の表面の全体が折り込み部53a、53bの外側面に接触するのではなく、通気部33が形成されていない部分のみが接触し、通気部33が形成されている部分は接触しないようになる。
また、
図4〜
図7に示すように、通気性確保部材31の表面においては、通気部33が密に、あるいは、広い範囲で形成されている。このため、通気性確保部材31の表面のうち、通気部33が形成されていないごく一部のみが、折り込み部53a、53bの外側面に接触するようになる。
そうすると、折り込み部53a、53bの外側面においては、通気性確保部材31に接触している面積が小さくなる。よって、折り込み部53a、53bに存在する欠陥部が通気性確保部材31によって閉塞される可能性が非常に小さくなる。
これにより、被検査物50の内部に封入された加圧気体が欠陥部を通って外部に漏洩可能となり、漏洩した気体がチャンバ11の収納空間111に移動可能となる。よって、気体検出手段20は、漏洩を検知でき、欠陥部を検出できる。
【0043】
なお、
図7に示す棒状部334は、断面が六角形に形成されているが、六角形に限るものではなく、四角形や円形など、任意の形状に形成することができる。
また、
図7においては、棒状部334の数を五本としているが、五本に限るものではなく、任意の数だけ設けることができる。
さらに、棒状部334は、周面の全体が被検査物50の折り込み部53a、53bに接触するのではなく、六角形状の斜面部など、折り込み部53a、53bに接触しない箇所がある。この箇所は、折り込み部53a、53bに接触しないので、通気部33として機能する。
加えて、棒状部334の周面において周方向に溝部を設け、当該溝部を通気部33とすることもできる。
【0044】
また、通気部33は、折り込み部53a、53bの表面とチャンバ11の収納空間111とを連通又は接触させるものであるが、連通と接触は、次の点で相違する。
例えば、通気性確保部材31の介在によって折り込み部53a、53bの表面とチャンバ11の収納空間111とが離間しており、通気部33がそれら折り込み部53a、53bの表面と収納空間111とを通気可能につなげているとき、通気部33は、それらを連通させている。一方、通気部33の一例として
図7に示した棒状部間空間部335のように、チャンバ11の収納空間111との境界が必ずしも明確でなく、収納空間111の一部と捉えることが可能な通気部33については、当該通気部33が折り込み部53a、53bの表面に接触することにより、折り込み部53a、53bの表面と収納空間111とを直接接触させている。
つまり、通気部33が収納空間111の一部と捉えられない場合には、連通という表現を用い、一方、通気部33が収納空間111の一部と捉えられる場合には、接触という表現を用いる。ただし、いずれの場合においても、通気部33は、折り込み部53a、53bの表面とチャンバ11の収納空間111とを通気可能につなげる役割を果たすものである。
【0045】
さらに、通気性確保部材31は、第三の機能を備えている。第三の機能とは、パウチ51の折り込み部53a、53bが外側へ膨出してバックリングと呼ばれる変形が生じる事態を防止する機能をいう。
チャンバ11の収納空間111に収納されたパウチ51の内部に気体が封入されて陽圧になると、折り込み部53a、53bが外側へ膨出してバックリングと呼ばれる変形が生じることがある。
そこで、折り込み部53a、53bに対して外側から通気性確保部材31を押し当てることにより、折り込み部53a、53bの膨出を抑制し、バックリングの発生を防止するものである。
そして、このようにバックリングの発生を防止できることから、パウチ51の内部の気圧を所望の気圧にまで高めることができ、欠陥部から外部へ漏洩する気体の量を十分確保できる。これにより、気体検出手段20は、欠陥部での漏洩を確実に検知できる。よって、欠陥検査の精度を高めることができる。
【0046】
なお、
図1においては、通気性確保部材31が、被検査物50の底部52に設けられた折り込み部53aに対向する位置に配置されている。ただし、折り込み部53bが側部54に設けられたガセットパウチ51bを被検査物50とする場合には、折り込み部53bに対向する位置に、通気性確保部材31を配置させる。
【0047】
部材駆動手段32は、通気性確保部材31をチャンバ11に向かう方向、あるいは、チャンバ11から離間する方向へ移動させる。
部材駆動手段32には、例えば、エアシリンダなどを用いることができる。
【0048】
表面用通気性確保手段40は、チャンバ11の内部に収納された被検査物50の表面を、被検査物50の外側にあるチャンバ11の収納空間111に連通又は接触させるための通気性確保手段である。
表面用通気性確保手段40は、チャンバ11の内側面のうち被検査物50の下側シート56aの表面又は上側シート56bの表面が接触する部分に設けられている。具体的には、例えば、被検査物50が載置されるチャンバ本体112の底部115の上面に、表面用通気性確保手段40が設けられている。また、気体の封入によって膨張した被検査物50の表面が接触する部分、例えば、チャンバ蓋113の上板部116の下面に、表面用通気性確保手段40が設けられている。
なお、
図1に示す表面用通気性確保手段40は、チャンバ11とは別体で、板状又はシート状に形成された部材である。この表面用通気性確保手段40は、チャンバ本体112の底部115の上面とチャンバ蓋113の上板部116の下面のそれぞれに配置されている。ただし、チャンバ本体112の底部115の上面に設けられる表面用通気性確保手段40は、チャンバ本体112の一部として、底部115の上面に直接形成されていてもよい。また、チャンバ蓋113の上板部116の下面に設けられる表面用通気性確保手段40は、チャンバ蓋113の一部として、上板部116の下面に直接形成されていてもよい。
【0049】
これら表面用通気性確保手段40は、少なくとも被検査物50が接触する面である被検査物接触面41に、通気部42が形成されている。
通気部42は、表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41に被検査物50の表面が接触している状態において、被検査物50の表面のうち被検査物接触面41に接触している部分を接触表面部としたときに、接触表面部とチャンバ11の収納空間111とを連通又は接触させるためのものである。
【0050】
通気部42の具体例としては、例えば、
図8に示すように、板状又はシート状の表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41に形成された複数の溝部43が挙げられる。
溝部43は、被検査物接触面41を平面視したときに、直線状又は曲線状に形成された凹状部分である。
溝部43は、被検査物接触面41において複数形成されている。これら複数の溝部43は、平行に配置されていてもよく、あるいは、平行でなくてもよい。平行でない場合、複数の溝部43同士は、交差していてもよく、あるいは、交差していなくてもよい。交差している場合、交差する箇所は、複数箇所であってもよく、あるいは、一箇所であってもよい。一箇所の場合、複数の溝部43は、一点から放射状に延びた形状としてもよい。
また、線状又は曲線状の溝部43の長さは、長い方がよく、特に、線状等の一方の端部が表面用通気性確保手段40の一の端辺に達し、線状等の他方の端部が当該表面用通気性確保手段40における他の端辺に達していることが望ましい。このような長さとすることにより、膨張した被検査物50の表面によって溝部43のすべてが覆い隠されることがなくなるので、被検査物50の表面とチャンバ11の収納空間111とを連通させることができ、被検査物50の欠陥部から漏洩した気体を気体検出手段20にて検出させることができる。
【0051】
さらに、
図8に示す溝部43は、断面形状がV字状となっているが、V字状に限るものではなく、例えば、凵の字状であってもよく(
図9参照)、あるいは、U字状などであってもよい。
また、複数の溝部43の各間には突状部分44が形成されるが(
図8、
図9参照)、突状部分44の断面形状は、
図8に示すように三角形状であってもよく、あるいは、
図9に示すように矩形状であってもよい。また、突状部分44の断面形状は、例えば、台形状、多角形状、半円形状、アーチ型などであってもよい。ただし、表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41と被検査物50の表面との接触面積をできる限り小さくすることが好ましいことから、突状部分44の突状先端部の形状は、∧の字状あるいは半円形状であることが望ましい。
【0052】
また、通気部42の他の具体例としては、例えば、
図10に示すように、表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41に、放物線状に突出した凸部45を複数形成し、これら複数の凸部45の各間に位置する凹状部46を通気部42とすることができる。
さらに、通気部42の他の具体例としては、例えば、
図11に示すように、多孔質の材料で形成された表面用通気性確保手段40の細孔47が挙げられる。
また、通気部42の他の具体例としては、例えば、サンドブラストによって表面用通気性確保手段40の表面を加工したときの表面の凹凸形状のうちの凹部が挙げられる。
さらに、通気部42の他の具体例としては、例えば、表面用通気性確保手段40の表面に梨地加工を施したときの梨地である凹凸形状の凹部が挙げられる。
なお、通気部42が溝部43や凹状部46などである場合、これら通気部42の幅や深さは、通気部42に接触した被検査物50の表面が当該通気部42に進入する程度に応じて決めるのが望ましい。すなわち、チャンバ11の内部に収納された被検査物50に気体が封入されて膨張し、被検査物50の表面が表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41に接触して通気部42の内部へ進入しようとしたときに、通気部42の内側面と被検査物50の表面との間に空間が確保されるような程度で、一つの通気部42の幅や深さを決めるのが望ましい。
【0053】
これらの形状のうちのいずれかの形状を有する通気部42を備えた表面用通気性確保手段40は、被検査物50の表面に存在する欠陥部を通って外部に漏洩してきた気体を、通気部42を通して、チャンバ11の収納空間111へ排出することができる。
具体的に、通気部42は、次のように機能する。
チャンバ11の収納空間111に収納された被検査物50は、下側シート56aの表面が、チャンバ本体112の底部115の上面に配置された表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41に接触する。また、被検査物50の内部に気体が封入されると、被検査物50が膨張し、表面がチャンバ蓋113の上板部116の下面に配置された表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41に接触する。ここで、これら表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41には通気部42が形成されているため、被検査物50の表面の全体に被検査物接触面41が接触するのではなく、通気部42が形成されている部分では、被検査物50の表面に接触しないようになる。
しかも、
図8〜
図11に示すように、被検査物接触面41においては、複数の通気部42が密に、かつ、広い範囲で形成されている。これにより、被検査物接触面41のうち、通気部42が形成されていないごく一部のみが、被検査物50の表面に接触するようになる。
そうすると、被検査物50の表面においては、被検査物接触面41に接触している面積が小さくなることから、被検査物50の表面に存在する欠陥部が表面用通気性確保手段40によって閉塞される可能性が非常に小さくなる。
このため、欠陥部を通って加圧気体が外部に漏洩可能となり、気体がチャンバ11の収納空間111に移動可能となることから、気体検出手段20は、欠陥部での漏洩を検知でき、欠陥部を検出できる。
【0054】
(II)欠陥検査方法
次に、本実施形態の欠陥検査方法について、
図12〜
図21を参照して説明する。
本実施形態の欠陥検査方法は、上記の構成を備えた欠陥検査装置10Aを用いて、被検査物50における欠陥部の有無を検査する方法である。
なお、
図12〜
図21においては、説明の便宜上、気体供給手段12と気体検出手段20の図示を省略してある。
また、この欠陥検査方法においては、スタンディングパウチ51aを被検査物50とした場合について説明する。
【0055】
まず、チャンバ11の収納空間111に被検査物50であるスタンディングパウチ51aが収納されていない状態の欠陥検査装置10Aを用意する。
このとき、チャンバ本体112の上には、チャンバ蓋113が載置されているものとする。
【0056】
次に、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を上方へ移動させる。これにより、チャンバ蓋113がチャンバ本体112から離間して上方へ持ち上がり、チャンバ11の収納空間111が当該チャンバ11の外部と連通し、チャンバ本体112の内部がオープンな状態となる。
また、チャンバ蓋113が上方へ持ち上がることにより、気体供給手段12の気体供給ノズル123がチャンバ蓋113から受けていた下方向への押圧が解除される。このため、気体供給ノズル123は、付勢部材126による付勢により、所定の高さだけ上方へ持ち上がる。
【0057】
次いで、ノズル駆動手段124を駆動させることにより、気体供給ノズル123をチャンバ11から離間する方向(水平方向)へ移動させる。
続いて、部材駆動手段32を駆動させることにより、折込部用通気性確保手段30の通気性確保部材31をチャンバ11から離間する方向(水平方向)へ移動させる。
これらの工程を経ることにより、チャンバ本体112の上方には、気体供給ノズル123と通気性確保部材31が位置しておらず、かつ、チャンバ蓋113がチャンバ本体112から距離を置いて上方に位置するようになる。これにより、チャンバ本体112の底部115の上方が開放した状態となる(
図12参照)。
【0058】
チャンバ本体112の底部115の上面上には、表面用通気性確保手段40が付設されている。表面用通気性確保手段40の上面である被検査物接触面41の上に、被検査物50が載置される。
このとき、被検査物50であるスタンディングパウチ51a(以下、単にパウチ51という)を水平状態に保ち、パウチ51を構成する二枚のシート56のうち下側に位置するシート56を下側シート56aとしたときに、下側シート56aの表面が表面用通気性確保手段40の被検査物接触面41に対向した状態で、当該パウチ51が被検査物接触面41の上に載置される。
また、パウチ51の上縁部58は、チャンバ本体112の側壁117a(側壁117のうち、気体供給ノズル123に近い方の側壁117a)の上面上に載置される。このとき、チャンバ本体112の側壁117aに穿設されている貫通孔131の上部開口が、パウチ51の上縁部58によって閉塞されるようにする。
【0059】
次いで、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を下方へ移動させる(
図13参照)。これにより、チャンバ本体112の上にチャンバ蓋113が載置される。
続いて、吸着手段13の真空ポンプ(図示せず)を駆動させる。これにより、チャンバ本体112の貫通孔131の内部が真空状態となり、パウチ51の下側シート56aの上縁部58が真空吸着される。また、チャンバ蓋113の貫通孔132の内部が真空状態となり、パウチ51の上側シート56bの上縁部58が真空吸着される。
ここで、チャンバ本体112の側壁117aの上面には、パウチ51の下側シート56aの上縁部58と気体供給ノズル123の管状部127の下半部が収まる形状の凹部16aが形成されている(
図14参照)。また、チャンバ蓋113の側壁118aの下面には、パウチ51の上側シート56bの上縁部58と気体供給ノズル123の管状部127の上半部が収まる形状の凹部16bが形成されている。
そして、チャンバ本体112の凹部16aにおいてパウチ51の下側シート56aの上縁部58が収まる部分のうち、気体供給ノズル123の管状部127の下半部が収まる部分の近傍(
図14においては、気体供給ノズル123の管状部127の下半部が収まる部分の右側方及び左側方)には、貫通孔131の上面開口が形成されている。また、チャンバ蓋113の凹部16bにおいてパウチ51の上側シート56bの上縁部58が収まる部分のうち、気体供給ノズル123の管状部127の上半部が収まる部分の近傍(
図14においては、気体供給ノズル123の管状部127の上半部が収まる部分の右側方及び左側方)には、貫通孔132の下面開口が形成されている。さらに、チャンバ本体112の凹部16aのうち気体供給ノズル123の管状部127の下半部が収まる部分と、チャンバ蓋113の凹部16bのうち気体供給ノズル123の管状部127の上半部が収まる部分とで形成される、ほぼ円形状の開口を第一開口16cとする。
【0060】
そして、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を上昇させる(
図15参照)。これにより、チャンバ蓋113がチャンバ本体112から離間して上方へ持ち上がる。
このとき、パウチ51の下側シート56aの上縁部58は、チャンバ本体112の貫通孔131に真空吸着されているので、上方へは移動せず、チャンバ本体112の側壁117aの上面上に固定される。
一方、パウチ51の上側シート56bの上縁部58は、チャンバ蓋113の貫通孔132に真空吸着されているので、チャンバ蓋113の上昇に伴って、上方へ移動する。
これにより、パウチ51の下側シート56aの上縁部58と上側シート56bの上縁部58が離間して、パウチ51の上部開口59が大きく開いた状態となる。
【0061】
次いで、ノズル駆動手段124を駆動させることにより、気体供給ノズル123をチャンバ11に近づける方向(水平方向)へ移動させる(
図16参照)。これにより、気体供給ノズル123に形成された管状部127がパウチ51の上部開口59の内部に挿入される。
【0062】
続いて、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を下降させる(
図17参照)。
このとき、チャンバ蓋113の下降に伴って当該チャンバ蓋113の側壁118aも下降するが、側壁118aの下方には気体供給ノズル123の管状部127が位置していることから、側壁118aは、気体供給ノズル123の管状部127を押し下げながら下降する。これにより、気体供給ノズル123の全体が、付勢部材126による上方向への付勢の方向とは反対の方向である下方へ押し下げられる。
【0063】
下降したチャンバ蓋113は、チャンバ本体112の上に載置される。
そして、気体供給ノズル123の管状部127は、パウチ51の上部開口59の内部に挿入された状態で、パウチ51の下側シート56aの上縁部58と上側シート56bの上縁部58との間に挟み込まれる。また、パウチ51の下側シート56aの上縁部58と上側シート56bの上縁部58は、チャンバ本体112の側壁117aの上面とチャンバ蓋113の側壁118aの下面との間に挟まれた状態となる。
【0064】
さらに、気体供給ノズル123の管状部127が挿入されたパウチ51の上部開口59が閉塞することで、当該パウチ51が密封状態となる。
ただし、ここでは、チャンバ本体112に対してチャンバ蓋113を完全に閉鎖せず、パウチ51を密封状態で保持できる程度に閉鎖する。これは、パウチ51の内部に気体を供給可能とするとともに、その後に折込部用通気性確保手段30の通気性確保部材31をチャンバ11の収納空間111に進入させるためである。
このようなチャンバ蓋113の閉鎖を実現するため、チャンバ本体112の側壁117の上面に設けられた気密性保持部材119(パッキン)とチャンバ蓋113の側壁118の下面に設けられた気密性保持部材119(パッキン)の潰ししろを厚くしておくとよい。
【0065】
次いで、気体供給手段12のバルブ125(
図1参照)を開にするなどして、気体供給源121から排出された加圧気体を、気体供給ノズル123の管状部127を通して、パウチ51の内部に供給する(
図18参照)。
これにより、パウチ51は、陽圧となって膨張する。
また、パウチ51は、膨張に伴って、折り込み部53aの端部(折り込み部53aと下側シート56aとの繋がり部分と、折り込み部53aと上側シート56bとの繋がり部分)が上下方向に広がって、開いた状態となる。そして、これら折り込み部53aと下側シート56aとの繋がり部分と、折り込み部53aと上側シート56bとの繋がり部分との距離を、通気性確保部材31の厚み(上下方向の高さ)よりも高くしておく。
【0066】
続いて、部材駆動手段32を駆動させることにより、折込部用通気性確保手段30の通気性確保部材31をチャンバ11に近づける方向(水平方向)へ移動させる(
図19参照)。そして、チャンバ11の側壁117、118の間に形成された、通気性確保部材31を通すための第二開口16d(
図18、
図20参照)に通気性確保部材31を通して、収納空間111へ進入させる。さらに、通気性確保部材31を、重なり合った折り込み部53aの合間に進入させ、折り込み部53aの外側面に接触させた状態で配置する接触工程を行う。
これにより、折り込み部53aは、重なり合って密着していた外側面同士が離間して押し広げられた状態となる。
【0067】
そして、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を下方向へ押圧し、チャンバ本体112に対してチャンバ蓋113を完全に閉鎖させる。このとき、チャンバ本体112の気密性保持部材119とチャンバ蓋113の気密性保持部材119とを潰して、チャンバ11を密封状態にする。
【0068】
さらに、気体供給源121(
図1参照)から排出された加圧気体を、気体供給ノズル123の管状部127を通して、パウチ51の内部にさらに供給する陽圧工程を行う(
図21参照)。
これにより、パウチ51に欠陥部があるときは、パウチ51の内部に供給された気体が欠陥部を通ってチャンバ11の収納空間111へ漏洩する。
また、パウチ51の折り込み部53aに欠陥部があるときは、パウチ51の内部に供給された気体が、欠陥部を通り、折込部用通気性確保手段30の通気性確保部材31の通気部33を通って、チャンバ11の収納空間111へ漏洩する。
【0069】
さらに、内部が陽圧となったパウチ51においては、下側シート56aの表面がチャンバ本体112に設けられた表面用通気性確保手段40の上面に接しており、また、上側シート56bの表面がチャンバ蓋113に設けられた表面用通気性確保手段40の下面に接する。
これにより、パウチ51の下側シート56a及び上側シート56bにおいて表面用通気性確保手段40に接触している部分を接触表面部とした場合において、接触表面部に欠陥部があるときは、パウチ51の内部に供給された気体が、欠陥部を通り、表面用通気性確保手段40の通気部42を通って、チャンバ11の収納空間111へ漏洩する。
そして、気体検出手段20は、漏洩を検知し、パウチ51に欠陥部があることを検出する検出工程を行う。
【0070】
このように、本実施形態の欠陥検査方法を実施することにより、被検査物50における欠陥部の有無を検査することができる。
また、チャンバ11の収納空間111に収納された被検査物50であるパウチ51の内部に気体を封入したときに、パウチ51の折り込み部53aが折り目55の周囲で重なり合って密着することがあるが、折り込み部53aの密着部分である接触表面部の外側から折込部用通気性確保手段30の通気性確保部材31を押し当てることにより、折り込み部53aを押し広げることができる。
そして、折り込み部53aに欠陥部がある場合でも、通気性確保部材31に通気部33が形成されているため、欠陥部から外部へ漏洩してきた気体が通気部33を通ってチャンバ11の収納空間111に排出されることから、欠陥部での漏洩を気体検出手段20によって検知できる。
【0071】
さらに、パウチ51の下側シート56a又は上側シート56bにおいて表面用通気性確保手段40と接触する接触表面部に欠陥部がある場合でも、表面用通気性確保手段40に通気部42が形成されているため、欠陥部から外部へ漏洩してきた気体が通気部42を通ってチャンバ11の収納空間111に排出されることから、欠陥部での漏洩を気体検出手段20によって検知できる。
【0072】
しかも、パウチ51の折り込み部53aに対しては、外側から通気性確保部材31が押し当てられるため、パウチ51が陽圧になっても、折り込み部53aが外側へ膨出せず、バックリングと呼ばれる変形が生じない。このため、パウチ51の内部の気圧を所望の気圧にまで高めることができ、欠陥部から漏洩する気体の量を十分確保できるので、気体検出手段20が漏洩を確実に検知でき、これにより欠陥検査の精度を高めることができる。
また、チャンバ11は、被検査物50の全体を収容するため、被検査物50の全体に対して、欠陥部の有無を検査できる。
【0073】
なお、本実施形態の欠陥検査方法においては、スタンディングパウチ51aを被検査物50とした場合について説明したが、被検査物50は、スタンディングパウチ51aに限るものではなく、ガセットパウチ51bや平袋のパウチ51であってもよい。
【0074】
(III)気体検出手段
図1に示した欠陥検査装置10Aは、
図3に示した構成を有する気体検出装置21を気体検出手段20として備えている。
ただし、気体検出手段20は、気体検出装置21に限るものではなく、例えば、
図22に示した構成を有する光学的検出手段22を用いることができる。
【0075】
(光学的検出手段)
光学的検出手段22は、検出気体収納部211から押し出された気体を、シュリーレン法を用いて検出する手段である。
具体的に、光学的検出手段22は、光源221と、第一レンズ222と、第二レンズ223と、ノズル224と、ナイフエッジ225と、観察手段226とを備えている。
光源221は、光を出射する。
第一レンズ222は、光源221からの光を平行光束にする。
第二レンズ223は、平行光束を集光する。
ノズル224は、検出気体収納部211から押し出された気体を検出用気体として平行光束へ送る。
ナイフエッジ225は、光源像を部分的に遮る。
観察手段226は、光源像を結像し、平行光束における屈折の分布を観察する。
このような構成を備えた光学的検出手段22を気体検出手段20として用いることにより、検出気体収納部211から押し出された気体を、平行光束における屈折率の分布として可視化し、精度よく検出することができる。
【0076】
ここで、検出用気体は、光学的検出手段22の内部の雰囲気と屈折率が異なる気体を用いるものとする。
【0077】
また、検出用気体は、温調されることによって、光学的検出手段22の内部の雰囲気と屈折率が異なるようにするとよい。
温調は、ヒータなどの加熱手段、あるいは、ペルチェ装置や水冷装置などの冷却手段を、検出気体収納部211に設けることで実現できる。
温調することにより、検出用気体の屈折率と光学的検出手段22の内部の雰囲気の屈折率との差を容易に大きくすることができるので、検出性能を向上させることができる。
また、例えば、被検査物50の内部に供給される気体と、チャンバ11の収納空間111の気体と、検出気体収納部211の内部の気体は、いずれも空気を用いることができる。空気とすることにより、ヘリウムなどの高価な気体を使用しなくても済むので、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
なお、光学的検出手段22は、シュリーレン法を行う構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、シャドウグラフ法やマッハツェンダー法などを行う構成としてもよい。
【0078】
(ダイアフラム)
検出気体収納部211には、仕切り部材として、ダイアフラムを設けることができる。
ダイアフラムは、検出気体収納部211を上流側と下流側とに分ける仕切り用の板材であって、可撓性を有するものである。ダイアフラムは、チャンバ11の収納空間111からの気体が検出気体収納部211の上流側に流入すると、ほぼ同じ容積に応じて下流側に変形する。
ダイアフラムを設けることにより、検出気体収納部211及び気体検出部212に封入させる気体とチャンバ11の収納空間111の気体とを異ならせることができる。例えば、前者の気体を二酸化炭素とし、後者の気体を通常の空気とすることができる。
これら二酸化炭素と空気は、ダイアフラムによって仕切られるので、検出気体収納部211の内部で二酸化炭素の濃度が低下せず、屈折率が変動するといった不具合を回避することができる。
【0079】
また、ダイアフラムを設けることにより、検出気体収納部211及び気体検出部212に封入されている気体とチャンバ11の収納空間111の気体とが異なる場合であっても、混ざり合うことを防止できる。よって、気体の選定の自由度を大きくすることができ、使い勝手などを向上させることができる。
なお、仕切り部材としては、ダイアフラムの他にも、例えば、蛇腹状のシート(図示せず)などを用いてもよい。
【0080】
(IV)実施例
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0081】
(IV-1)実施例1
欠陥検査装置として、
図1に示した構成を備える欠陥検査装置10Aを用意した。
また、気体検出手段20としては、
図22に示した構成を備える光学的検出手段22(シュレーリン装置)を用いた。
【0082】
折込部用通気性確保手段30の通気性確保部材31には、厚さ5mmのアルミニウム製の板材(アルミ A5052P(JIS規格 H4000))を用いた。
この通気性確保部材31を二枚用意した。二枚のうちの一枚は、表面に通気部33を加工せず、表面の粗さを算術平均粗さRa=0.2μmとした。他の一枚は、表面に梨地加工を施し、梨地である凹凸形状の凹部を通気部33とし、表面の粗さをRa=10μmとした。
チャンバ本体112の底部115の上面上に設けられた表面用通気性確保手段40の上面とチャンバ蓋113の上板部116の下面に設けられた表面用通気性確保手段40の下面との間隔は、7mmとした。
【0083】
被検査物50は、サンプルとして、スタンディングパウチ51aを用意した。
また、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aには、疑似不良として、直径が100μmのピンホールを一箇所に形成した。
【0084】
これら欠陥検査装置10Aと被検査物50とを用意した後、前述した「(II)欠陥検査方法」の内容で、実験を行った。
また、次の三つの場合について、それぞれ実験を行った。
(i)通気性確保部材31をスタンディングパウチ51aの折り込み部53aに押し込まなかった場合(
図23に示す「通気性確保部材31の押し込み無し」)
(ii)表面の粗さがRa=0.2μmである通気性確保部材31をスタンディングパウチ51aの折り込み部53aに押し込んだ場合(
図23に示す「通気性確保部材31の押し込み有り(表面未加工 Ra=0.2μm)」)
(iii)表面の粗さがRa=10μmである通気性確保部材31をスタンディングパウチ51aの折り込み部53aに押し込んだ場合(
図23に示す「通気性確保部材31の押し込み有り(表面梨地加工 Ra=10μm)」)
これら(i)〜(iii)のいずれにおいても、気体供給手段12から被検査物50の内部に供給される気体を空気とし、圧力を10kPaとした。
【0085】
実験の結果を
図23に示す。
同図に示すように、(i)の場合は、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに存在する欠陥部(ピンホール)が、検出されなかった。
これは、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aにおいて、折り目55の周囲が積層して密着し、積層した折り込み部53aにおいてピンホールが閉塞し、スタンディングパウチ51aの内部に封入された気体がピンホールから漏洩できない状態となったためであると考えられる。
【0086】
(ii)の場合も、欠陥部(ピンホール)が、検出されなかった。
これは、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに通気性確保部材31が押し込まれたために、折り目55の周囲を広げることができ、折り込み部53a同士の密着を解消できたものの、折り込まれた通気性確保部材31の表面の粗さが細かいことから、通気性確保部材31の表面と折り込み部53aの表面とが密着し、通気性確保部材31の表面によってピンホールが閉塞し、スタンディングパウチ51aの内部に封入された気体がピンホールから外部に漏洩できない状態となったためであると考えられる。
【0087】
(iii)の場合は、欠陥部(ピンホール)が検出された。
これは、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに通気性確保部材31を押し込むことで、折り目55の周囲の密着状態を解消するとともに、押し込まれた通気性確保部材31の表面の粗さが粗いために、通気性確保部材31の表面が凹凸形状をなし、凹凸形状のうちの凹状部分が通気部33となって折り込み部53aの表面と密着しないことで、ピンホールの閉塞を回避し、スタンディングパウチ51aの内部に封入された気体がピンホールを通って外部の収納空間111に漏洩できたためであると考えられる。
【0088】
(IV-2)実施例2
欠陥検査装置として、
図1に示した構成を備える欠陥検査装置10Aを用意した。また、気体検出手段20としては、
図22に示した構成を備える光学的検出手段22(シュレーリン装置)を用いた。
チャンバ本体112の底部115の上面上に設けられた表面用通気性確保手段40の上面とチャンバ蓋113の上板部116の下面に設けられた表面用通気性確保手段40の下面との間隔は、7mmとした。
【0089】
折込部用通気性確保手段30の通気性確保部材31には、厚さ5mmのアルミニウム製の板材(アルミ A5052P(JIS規格 H4000))を用いた。
この通気性確保部材31を四枚用意した。四枚のうちの一枚は、表面に通気部33を加工せず、表面の粗さを算術平均粗さRa=0.2μmとした。他の一枚は、表面にサンドブラスト加工を施し、表面の粗さをRa=1.4μmとし、表面の凹凸形状の凹部を通気部33とした。また、他の一枚は、エッチングによる梨地加工を表面に施し、表面の粗さをRa=4.6μmとし、梨地である凹凸形状の凹部を通気部33とした。さらに、他の一枚は、エッチングによる梨地加工を表面に施し、表面の粗さをRa=10μmとし、梨地である凹凸形状の凹部を通気部33とした。
なお、四枚の通気性確保部材31のそれぞれの表面粗さは、株式会社東京精密製の表面粗さ・輪郭形状測定機(サーフコム2000SD3(サーフコムは登録商標))を用いて測定した。
【0090】
被検査物50は、サンプルとして、スタンディングパウチ51aを用意した。
また、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aには、疑似不良として、直径が100μmのピンホールを一箇所に形成した。
【0091】
これら欠陥検査装置10Aと被検査物50とを用意した後、前述した「(II)欠陥検査方法」の内容で、実験を行った。
また、この実験では、上述した四枚の通気性確保部材31を予め用意しておき、一枚ずつ欠陥検査装置10Aに取り付けて当該実験を行った。そして、四枚の通気性確保部材31のそれぞれについて欠陥部(ピンホール)を検出できたか否かを検証した。
なお、四枚の通気性確保部材31のいずれを用いる場合においても、気体供給手段12から被検査物50の内部に供給される気体を空気とし、圧力を10kPaとした。
【0092】
実験の結果を
図24に示す。
同図(i)に示すように、表面粗さRa=0.2μmの通気性確保部材31を用いた場合は、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに存在する欠陥部(ピンホール)が、検出されなかった。
これは、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに通気性確保部材31が押し込まれたために、折り目55の周囲を広げることができ、折り込み部53a同士の密着を解消できたものの、折り込まれた通気性確保部材31の表面の粗さが細かいことから、通気性確保部材31の表面と折り込み部53aの表面とが密着し、通気性確保部材31の表面によってピンホールが閉塞し、スタンディングパウチ51aの内部に封入された気体がピンホールから外部に漏洩できない状態となったためであると考えられる。
【0093】
一方、同図(ii)〜(iv)に示すように、表面粗さRa=1.4μm、Ra=4.6μm、Ra=10μmの通気性確保部材31をそれぞれ用いた場合は、いずれも欠陥部(ピンホール)が検出された。
これは、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに通気性確保部材31を押し込むことで、折り目55の周囲の密着状態を解消するとともに、押し込まれた通気性確保部材31の表面の粗さが粗いために、通気性確保部材31の表面が凹凸形状をなし、凹凸形状のうちの凹状部分が通気部33となって折り込み部53aの表面と密着しないことで、ピンホールの閉塞を回避し、スタンディングパウチ51aの内部に封入された気体がピンホールを通って外部の収納空間111に漏洩できたためであると考えられる。
この実験の結果から、通気性確保部材31の表面粗さは、少なくともRa=1.4μm以上あればよいことがわかった。
【0094】
[欠陥検査装置及び欠陥検査方法の第二実施形態]
次に、本発明の欠陥検査装置及び欠陥検査方法の第二の実施形態について、
図25を参照して説明する。
同図は、本実施形態の欠陥検査装置の構成を示す正面図である。
本実施形態は、第一実施形態と比較して、被検査物が相違するとともに、被検査物の相違にもとづく欠陥検査装置の構成が相違する。すなわち、第一実施形態では、被検査物が、上縁部に開口を有するパウチであったのに対し、本実施形態では、被検査物が、上縁部を含むすべての縁部を熱溶着した密封パウチである点で相違する。また、第一実施形態では、欠陥検査装置が、気体供給手段を備えた構成であったのに対し、本実施形態では、欠陥検査装置が、チャンバの収納空間を真空にするための真空手段を備えており、気体供給手段を備えていない点で相違する。さらに、気体検出手段には圧力計やヘリウムリークディテクタを用いることができる。ヘリウムリークディテクタを用いる場合、密封パウチの内部に予めヘリウムを充填しておく。他の構成要素は第一実施形態と同様である。
したがって、
図25において、
図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0095】
図25に示すように、本実施形態の欠陥検査装置10Bは、チャンバ11、排気手段14、気体検出手段20、折込部用通気性確保手段30、表面用通気性確保手段40、真空手段15を備えている。
ここで、真空手段15は、チャンバ11の収納空間111を真空状態にすることで相対的に被検査物50の内部を陽圧にするための陽圧手段である。
真空手段15は、真空ポンプ151と、真空配管152と、バルブ153とを備えている。
真空ポンプ151は、真空配管152によりチャンバ11の収納空間111に接続されており、収納空間111の内部を真空状態する。
バルブ153は、真空配管152の途中又は端部に設けられており、真空ポンプ151による収納空間111の内部の気体の排出を制御する。
【0096】
折込部用通気性確保手段30は、チャンバ11の収納空間111に収納された被検査物50の折り込み部53a、53bの表面を、被検査物50の外側にある空間(チャンバ11の収納空間111)に連通又は接触させるための通気性確保手段である。
折込部用通気性確保手段30は、通気性確保部材31を備えている。通気性確保部材31は、チャンバ本体112の側壁117に固定されている。つまり、折込部用通気性確保手段30は、部材駆動手段を備えていない。これは、チャンバ11の収納空間111を真空状態にした後に、真空状態を保持しながら、収納空間111に通気性確保部材31を進入させることが困難だからである。
【0097】
欠陥検査装置10Bを用いて行われる欠陥検査の対象は、すべての縁部が熱溶着によってシールされた密封パウチ51cである。
密封パウチ51cは、平袋、スタンディングパウチ51a、ガセットパウチ51bのいずれであってもよい。また、スパウト57が取り付けられているものであってもよく、あるいは、取り付けられていないものであってもよい。
【0098】
欠陥検査装置10Bを用いて行われる欠陥検査方法は、次の手順で実行される。
なお、ここでは、スタンディングパウチ51aを密封パウチ51cとしたものを被検査物50とする。
【0099】
チャンバ11の収納空間111に被検査物50が収納されていない状態の欠陥検査装置10Bを用意する。
このとき、チャンバ本体112の上には、チャンバ蓋113が載置されているものとする。
チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を上昇させる。これにより、チャンバ蓋113がチャンバ本体112から離間して上方へ持ち上がり、チャンバ11の収納空間111が当該チャンバ11の外部と連通し、チャンバ本体112の内部が露出したオープンな状態となる。
【0100】
次いで、チャンバ本体112の底部115の上面上に設けられた表面用通気性確保手段40の上に、被検査物50(密封パウチ51cであるスタンディングパウチ51a)を載置する。
このとき、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに対して通気性確保部材31を挿入した状態で、スタンディングパウチ51aを表面用通気性確保手段40の上に載置する。これにより、通気性確保部材31がスタンディングパウチ51aの折り込み部53aに接触した状態で配置される(接触工程)。
【0101】
続いて、チャンバ開閉手段114を駆動させてチャンバ蓋113を下降させる。これにより、チャンバ本体112の上にチャンバ蓋113が載置される。そして、チャンバ11の収納空間111が密封状態となる。
【0102】
そして、真空手段15の真空ポンプ151を駆動させる。これにより、チャンバ本体112の収納空間111が真空状態となり(陽圧工程)、スタンディングパウチ51aが膨張する。
このとき、スタンディングパウチ51aの下側シート56aの表面がチャンバ本体112の表面用通気性確保手段40の上面に接しており、また、スタンディングパウチ51aの上側シート56bの表面がチャンバ蓋113の表面用通気性確保手段40の下面に接する。
また、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aにおいては、通気性確保部材31が挿入されているため、折り目55の周囲が重ならず、広がった状態となる。
【0103】
さらに、真空手段15の真空ポンプ151を駆動させて、収納空間111の圧力(真空度)を所定の圧力にまで低下させた後、バルブ153を閉にする。これにより、スタンディングパウチ51aに欠陥部がある場合、陽圧となったスタンディングパウチ51aの内部の気体が、欠陥部から外部の収納空間111へ漏洩する。
この漏洩を気体検出手段20が検出することにより、スタンディングパウチ51aに欠陥部があることを検出できる(検出工程)。
【0104】
また、スタンディングパウチ51aが陽圧により膨張して折り込み部53aの折り目55の周囲が密着するときの当該密着部分である接触表面部に欠陥部がある場合でも、接触表面部に通気性確保部材31が接触して配置され、折り込み部53a同士が密着しないため、スタンディングパウチ51aの内部の気体が、欠陥部を通って外部に漏洩可能となる。そして、配置された通気性確保部材31には、通気部33が形成されているため、欠陥部から外部へ漏洩してきた気体が通気部33を通ってチャンバ11の収納空間111に排出される。これにより、欠陥部での漏洩を気体検出手段20によって検知できる。
【0105】
さらに、スタンディングパウチ51aの下側シート56a又は上側シート56bに欠陥部がある場合でも、表面用通気性確保手段40に通気部42が形成されているため、欠陥部から外部へ漏洩してきた気体が通気部42を通ってチャンバ11の収納空間111に排出されるので、欠陥部での漏洩を気体検出手段20によって検知できる。
しかも、スタンディングパウチ51aの折り込み部53aに対しては、外側から通気性確保部材31が押し当てられるため、チャンバ11の収納空間111が真空状態になったとしても、折り込み部53aが外側へ膨出せず、バックリングと呼ばれる変形が生じない。これにより、パウチ51の内部の陽圧状態を維持することができ、欠陥部から漏洩する気体の量を十分確保できるので、気体検出手段20が欠陥部での漏洩を確実に検知でき、よって、欠陥検査の精度を高めることができる。
【0106】
なお、本実施形態の欠陥検査方法においては、スタンディングパウチ51aを被検査物50とした場合について説明したが、被検査物50は、スタンディングパウチ51aに限るものではなく、ガセットパウチ51bや平袋のパウチ51であってもよい。
【0107】
[欠陥検査装置及び欠陥検査方法の第三実施形態]
次に、本発明の欠陥検査装置及び欠陥検査方法の第三の実施形態について、
図26を参照して説明する。
同図は、本実施形態の欠陥検査装置の構成を示す正面図である。
本実施形態は、第一実施形態と比較して、被検査物が相違するとともに、被検査物の相違にもとづいて欠陥検査装置の構成が相違する。すなわち、第一実施形態では、被検査物がパウチであったのに対し、本実施形態では、被検査物がカップ状容器である。また、第一実施形態では、欠陥検査装置がパウチを被検査物として検査可能な構成を備えていたのに対し、本実施形態では、欠陥検査装置が、カップ状容器を被検査物として検査可能な構成を備えている点で相違する。他の構成要素は第一実施形態と同様である。
したがって、
図26において、
図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0108】
図26に示すように、本実施形態の欠陥検査装置10Cは、チャンバ11、気体供給手段12、気体検出手段20、底部用通気性確保手段60を備えている。
ここで、チャンバ11は、中空で直方体状の箱体であって、被検査物50であるカップ状の紙容器70を収納可能な形状に形成されている。
気体供給手段12は、チャンバ11に収納された紙容器70の内部に対して気体を供給する。
【0109】
底部用通気性確保手段60は、チャンバ11の内部底面と紙容器70の底部71の下面との間に設けられる板状の部材である。
底部用通気性確保手段60は、紙容器70の底部71におけるバックリングの発生又は外側への変形を防止する機能と、紙容器70の底部71の下面を紙容器70の外側にある収納空間111に連通又は接触させる機能とを備えている。
前者の機能は、底部用通気性確保手段60の上面が紙容器70の底部71の下面に接触すること、及び、底部用通気性確保手段60の上面のうち紙容器70の底部71の下面に接触する部分が水平であることにより、発揮される。
すなわち、紙容器70は、内部に気体が封入されると、紙容器70の内部に向かって凹んだ形状の凹部である底部71が下方へ向かって膨出しようとするが、下方には底部用通気性確保手段60が配置されており、しかも、底部71の下面が底部用通気性確保手段60に接触していることから、底部71は、下方へ膨出することができない。
また、底部用通気性確保手段60の上面のうち紙容器70の底部71の下面に接触する部分が水平であるため、底部用通気性確保手段60の上面に接している底部71も水平に保たれる。
これらにより、底部用通気性確保手段60は、紙容器70の底部71におけるバックリングの発生又は外側への変形を防止する機能を発揮できる。
【0110】
後者の機能は、底部用通気性確保手段60が通気部61を備えることにより、発揮される。
通気部61は、紙容器70の底部71の下面を紙容器70の外側にある収納空間111に連通又は接触させるための形状に形成された部分である。
通気部61の形状は、第一実施形態における折込部用通気性確保手段30の通気部33の形状(例えば、
図4〜
図7に示された通気部33の形状)と同様の形状とすることができる。
紙容器70の底部71の下方に底部用通気性確保手段60を配置したとき、紙容器70の底部71の下面は、他の部材(底部用通気性確保手段60)と接触する接触表面部となる。
そうすると、底部71にピンホールなどの欠陥部があるときに、底部用通気性確保手段60の上面が欠陥部を閉塞し、当該紙容器70の内部に封入された気体が欠陥部を通って外部に漏洩することができず、気体検出手段20が欠陥部での漏洩を検出できない。
そこで、底部用通気性確保手段60に通気部61を備えることとした。
これにより、紙容器70の底部71の下面が通気部61を通って紙容器70の外側にある収納空間111に通気可能に連通するので、当該紙容器70の内部に封入された気体が欠陥部を通って外部に漏洩することができ、気体が通気部61を通ってチャンバ11の収納空間111に排出されるので、気体検出手段20が欠陥部での漏洩を検出できる。
【0111】
なお、本実施形態の欠陥検査方法、すなわち、欠陥検査装置10Cを用いて被検査物50の欠陥部の有無を検査する方法は、第一実施形態の欠陥検査方法と同様であるため、ここでの説明は、省略する。
【0112】
このように、本実施形態の欠陥検査装置及び欠陥検査方法によれば、被検査物50が紙容器70の場合でも、紙容器70における欠陥部の有無を検査できる。
また、紙容器70の底部71に欠陥部がある場合でも、底部用通気性確保手段60に通気部61が形成されているため、欠陥部から外部へ漏洩してきた気体が通気部61を通ってチャンバ11の収納空間111に排出されるので、欠陥部での漏洩を気体検出手段20によって検知できる。
【0113】
さらに、紙容器70の底部71に対しては、下方から底部用通気性確保手段60が押し当てられるため、紙容器70の内部に気体が供給された場合でも、底部71が外側へ膨出せず、バックリングと呼ばれる変形が生じない。これにより、紙容器70の内部の陽圧状態を維持することができ、欠陥部から漏洩する気体の量を十分確保できるので、気体検出手段20が欠陥部での漏洩を確実に検知でき、よって欠陥検査の精度を高めることができる。
【0114】
以上、本発明の欠陥検査装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る欠陥検査装置は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明の欠陥検査装置が検査の対象とする被検査物は、多様な形状に対応できる。形状に特に制限はないが、例えば、フィルム状、コップ状、カップ状、筒状、袋状などがある。また、被検査物を構成する材料としては、例えば、プラスチック、紙、金属などがある。さらに、用途としては、タンク、フィルム、蓋、容器などがあり、特に、空容器に用いることが好適である。
【0115】
また、気体供給手段の代わりに、被検査物内に液化窒素を滴下する手段と、被検査物の上部開口を挟むようにして閉じる閉止手段とを設けることができる。これにより、密閉状態の被検査物の内部で液化窒素が気化し、被検査物の内部を陽圧とすることができる。
さらに、上述した各実施形態においては、被検査物の欠陥部からの気体の漏洩を検知する欠陥検査装置について説明したが、本発明は、このような検知を行う欠陥検査装置への適用に限るものではなく、例えば、特許文献1、2に開示されている検査装置、すなわち、被検査物の内圧を測定し、この内圧の低下を検知する検査装置などに対しても適用できる。