(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、モータの回転軸と平行な方向を「回転軸方向」、モータの回転軸に直交する方向を「径方向」、モータの回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。
【0012】
また、本願では、支柱のネジ穴の中心軸に沿う方向を「中心軸方向」と称する。以下の実施形態では、「回転軸方向」と「中心軸方向」とは、互いに略平行である。また、第1プレートに対して第2プレート側を中心軸方向上側とし、第2プレートに対して第1プレート側を中心軸方向下側とする。ただし、この上側および下側の定義により、本発明に係るケーシングおよび送風機の使用時の向きを限定する意図はない。また、回転軸方向と中心軸方向とは、互いに非平行であってよい。
【0013】
<1.送風機の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る送風機1の縦断面図である。この送風機1は、ノート型パソコンやタブレット型パソコン等の電子機器に搭載され、内部冷却用の気流を発生させるために使用される。ただし、本発明の送風機は、冷却以外の目的で、気流を発生させる用途に使用されてもよい。また、本発明の送風機は、パソコン以外の家電製品、自動車等の輸送機器、医療機器等の用途に使用されてもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の送風機1は、ケーシング10、モータ20、およびインペラ50を有する。
【0015】
ケーシング10は、モータ20の回転部40とインペラ50とを内部に収容する筐体である。ケーシング10は、第1プレートの一例であるベースプレート11、第2プレートの一例であるカバー12、側壁13、および支柱14を有する。ベースプレート11およびカバー12は、平らな金属板を、例えば打ち抜き加工またはプレス加工することによって、形成される。ベースプレート11は、回転軸91に対して垂直に配置される。カバー12は、ベースプレート11よりも上側において、ベースプレート11と略平行に配置される。ベースプレート11の上面と、カバー12の下面とは、互いに対向する。ベースプレート11およびカバー12の材料には、例えば、アルミニウム合金や亜鉛めっき鋼板が用いられる。
【0016】
カバー12は、ケーシング10内へ気体を取り込むための通気孔121を有する。通気孔121は、モータ20およびインペラ50の上方において、カバー12を回転軸方向に貫通する。また、通気孔121は、平面視において円形であり、モータ20の回転軸91と略同軸に配置される。
【0017】
側壁13および支柱14は、樹脂の射出成型により、ベースプレート11上に形成される。側壁13は、ベースプレート11から上側へ向けて延びるとともに、ベースプレート11の端縁部に沿って広がる。支柱14は、ベースプレート11の端縁部の付近において、ベースプレート11の上面から上側へ向けて延びる。側壁13および支柱14の上面は、カバー12の下面に接触する。また、支柱14は、ネジ15によって、カバー12に固定される。
【0018】
モータ20は、駆動電流に応じてトルクを発生させ、インペラ50を回転させる。モータ20は、静止部30と回転部40とを有する。静止部30は、ケーシング10に対して相対的に静止する。回転部40は、静止部30に対して回転可能に支持される。
【0019】
本実施形態の静止部30は、ホルダ31、ステータ32、および静止軸受部33を有する。
【0020】
ホルダ31は、樹脂の射出成型により、ベースプレート11上に形成される。ベースプレート11は、回転軸91と同軸に配置された第1貫通孔61を有する。ホルダ31は、第1貫通孔61の周縁部付近から上側へ向けて延びる筒状部71と、第1貫通孔61内において環状に広がる底板部72と、を有する。筒状部71および底板部72は、回転軸91を円環状に取り囲む。
【0021】
ステータ32は、ステータコア81と複数のコイル82とを有する。ステータコア81には、例えば、積層鋼板が用いられる。ステータコア81は、円環状のコアバック811と、複数のティース812とを有する。コアバック811は、ホルダ31の筒状部71の外周面に、例えば接着剤で固定される。複数のティース812は、コアバック811から径方向外側へ向けて、放射状に延びる。コイル82は、ティース812に巻かれた導線により構成される。複数のティース812および複数のコイル82は、回転軸91の周りにおいて、周方向に略等間隔に配列される。
【0022】
静止軸受部33は、ホルダ31に支持される。静止軸受部33は、略円筒状のスリーブ331を有する。スリーブ331の内側には、回転軸91に沿って上下に延びるシャフト部41の一部が収容される。スリーブ331の内周面と、シャフト部41の外周面とは、僅かな隙間を介して、径方向に対向する。また、スリーブ331の内周面と、シャフト部41の外周面との間には、潤滑液が介在する。これにより、流体動圧軸受が構成される。回転部40は、静止軸受部33によって、回転可能に支持される。潤滑液には、例えば、ポリオールエステル系オイルや、ジエステル系オイルが使用される。ただし、流体動圧軸受に代えて、滑り軸受等の他方式の軸受が用いられていてもよい。
【0023】
本実施形態の回転部40は、上述したシャフト部41と、ロータ部42と、遠心型のインペラ部43とを有する。
【0024】
ロータ部42は、ロータホルダ421、ヨーク422、およびマグネット423を有する。ロータホルダ421は、シャフト部41の上部から径方向外側へ広がるとともに、ステータ32よりも径方向外側において、回転軸方向下側へ向けて略円筒状に延びる。ヨーク422は、円環状の磁性体である。ヨーク422は、ステータ32の径方向外側において、ロータホルダ421に固定される。マグネット423は、ヨーク422の内周面に固定される。
【0025】
インペラ部43は、複数の羽根431を有する。各羽根431は、ロータ部42の外周面から、径方向外側へ向けて延びる。複数の羽根431は、ベースプレート11の上側かつカバー12の下側に配置される。また、複数の羽根431は、周方向に等間隔に配置される。
【0026】
本実施形態では、シャフト部41、ロータ部42、およびインペラ部43が、一体の部品である。ただし、シャフト部41、ロータ部42、およびインペラ部43は、それぞれ、別々の部品であってもよい。例えば、ロータ部とシャフト部とを、別々の部品とし、ロータ部の中央に設けられた貫通孔に、シャフト部の上部を接着または圧入によって、固定してもよい。また、シャフト部41、ロータ部42、およびインペラ部43の各々が、さらに複数の部材によって構成されていてもよい。
【0027】
ステータ32のコイル82に駆動電流を供給すると、ステータコア81の複数のティース812に、磁束が発生する。そして、ティース812とマグネット423との間の磁束の作用により、周方向のトルクが生じる。その結果、インペラ部43を含む回転部40が、回転軸91を中心として回転する。インペラ部43が回転すると、ケーシング10の上方の空間から通気孔121を通ってケーシング10の内部へ、気体が取り込まれる。また、ケーシング10内に取り込まれた気体は、インペラ部43による遠心力を受け、ケーシング10内の風洞16から、ケーシング10の側方へ排出される。
【0028】
<2.支柱付近の構造について>
続いて、支柱14付近の構造について、より詳細に説明する。
図2は支柱14付近におけるケーシング10の部分縦断面図である。
図3は、支柱14付近におけるベースプレート11の部分斜視図である。
図4は、支柱14付近におけるベースプレート11の部分上面図である。
図5は、支柱14付近におけるケーシング10の部分下面図である。なお、
図3および
図4では、支柱14の形状が二点鎖線で示されている。
【0029】
図2〜
図5に示すように、本実施形態のベースプレート11は、平板部60と、第2貫通孔62と、爪部63とを有する。平板部60は、中心軸方向に対して垂直に広がる。
図3〜
図5に示すように、平板部60の隅には、平面視において略角状の端縁601が存在する。第2貫通孔62は、当該端縁601の付近において、平板部60を中心軸方向に貫通する。本実施形態においては、第2貫通孔62は、平面視において、略直角二等辺三角形状であることが好ましい。平板部60の第2貫通孔62を構成する周縁部のうち、直角二等辺三角形の一対の等辺に相当する縁621は、平板部60の端縁601を挟む二辺と、それぞれ平行に配置される。
【0030】
本実施形態のベースプレート11は、平面視において、第2貫通孔62の領域内に、爪部63を1つのみ有する。爪部63は、平板部60の第2貫通孔62を構成する周縁部のうち、直角二等辺三角形の底辺に相当する縁622から、平面視における第2貫通孔62の領域内へ向けて、かつ、平板部60に対して中心軸方向上側へ向けて、斜めに延びる。ベースプレート11の製造時には、平板部60の当該縁622から、直角二等辺三角形の底辺と対向する頂点側へ向けて延びる金属片が、プレス加工によって塑性変形し、中心軸方向上側へ立ち上げられる。そして、立ち上げられた当該金属片が、爪部63となる。
【0031】
このように、平面視において第2貫通孔62の領域内に形成される爪部63を1つのみとすると、同じ領域内に複数の爪部を形成する場合よりも、爪部63の幅を広くし、かつ、爪部63の長さを長くすることができる。
【0032】
支柱14は、第2貫通孔62を含むベースプレート11の一部分から、上側へ向けて、略円柱状に延びる。支柱14の内部には、ネジ穴140が設けられている。本実施形態のネジ穴140は、支柱14の上端面に開口を有し、支柱14の上端面から中心軸方向下側へ向けて延びる。ネジ穴140は、支柱14の下面までは貫通しない。ただし、ネジ穴140の中心軸方向の長さを長くするために、ネジ穴140が支柱14を貫通していてもよい。ネジ穴140は、平面視において略円形である。ケーシング10の組み立て時には、支柱14のネジ穴140に、カバー12を固定するためのネジ15が取り付けられる。
【0033】
なお、支柱の形状は、略円柱状には限られない。例えば、支柱の外形が多角柱状であってもよい。
【0034】
支柱14は、金型内にベースプレート11の一部分を配置し、金型内のキャビティに樹脂を射出して固化させる、いわゆるアウトサート成型により得られる。アウトサート成型時には、支柱14を構成する樹脂の一部が、第2貫通孔62内に流し込まれる。このため、成型された支柱14の一部は、第2貫通孔62内に位置する。第2貫通孔62は、ネジ穴140の中心軸92と同軸の真円ではない。また、本実施形態では、第2貫通孔62の全体が、樹脂によって満たされる。したがって、支柱14の一部が、ベースプレート11の第2貫通孔62を構成する周縁部に、接触する。このように、支柱14の一部を第2貫通孔62内に配置すれば、支柱14に中心軸92周りの力が加わったときに、ベースプレート11の第2貫通孔62を構成する周縁部から支柱14に対して、反力が作用する。これにより、支柱14の中心軸92周りの回転が、抑制される。
【0035】
また、ベースプレート11の爪部63は、支柱14を構成する樹脂に覆われる。このため、爪部63の中心軸92を中心とする回転方向の両端部には、樹脂が接触する。これにより、支柱14の中心軸92周りの回転が、より防止される。
【0036】
支柱14のネジ穴140に、ネジ15を回転させながら挿入するときには、支柱14に対して、中心軸92を中心とする回転方向の負荷がかかる。しかしながら、本実施形態の支柱14は、上述のように、第2貫通孔62および爪部63と係合する。このようにすれば、ベースプレート11に対する支柱14の回転方向の固定強度が高められる。その結果、ネジ15とともに支柱14が回転することが、防止される。
【0037】
また、支柱14を構成する樹脂の一部は、爪部63の中心軸方向下側に位置する。このため、爪部63の斜め下側を向く面に、樹脂が接触する。これにより、支柱14に中心軸方向上側への力が加わったときに、支柱14の一部が爪部63から中心軸方向下側への反力を受ける。その結果、支柱14の中心軸方向上側への抜けが防止される。このように、本実施形態の爪部63は、支柱14の中心軸92周りの回転を防止する機能と、支柱14の中心軸方向上側への抜けを防止する機能と、の双方を有する。
【0038】
特に、本実施形態の爪部63は、第2貫通孔62の縁622から、垂直ではなく、斜め上側に立ち上げられている。このようにすれば、爪部63自体の形状に凹凸を設けなくても、支柱14を構成する樹脂の一部が、爪部63の中心軸方向下側に配置される。したがって、爪部63の形状を複雑化することなく、支柱14の中心軸方向上側への抜けを防止できる。
【0039】
平板部60に対する爪部63の立ち上げ角度θは、0度よりも大きく、かつ、90度よりも小さい、任意の角度とすればよい。ただし、角度θが90度に近づくほど、支柱14の中心軸方向上側への抜けを抑制する効果が小さくなる。一方、角度θが小さすぎると、平面視において爪部63が占める面積が大きくなる。狭小なスペースで、かつ、支柱14の抜けを防止するためには、角度θを、例えば、45度よりも大きくかつ75度未満とすることが好ましい。また、角度θを、50度よりも大きくかつ70度未満とすれば、より好ましい。
【0040】
本実施形態の支柱14は、ネジ穴140を有するため、部分的に中心軸方向に延びる略円筒形状となっている。そして、
図3および
図4に示すように、爪部63の先端部は、ネジ穴140の周囲に沿って、略円弧状に形成されている。すなわち、爪部63の先端部は、支柱14の円筒形状の部分と略同心の円弧形状を有する。このようにすれば、爪部63の先端部が、ネジ穴140の内側または支柱14の外側へ露出することを抑制し、かつ、爪部63の先端部の幅を広くとることができる。したがって、爪部63と支柱14との接触面積を、増加させることができる。その結果、爪部63による支柱14の回り止めおよび抜け止めの効果を、より高めることができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、爪部63の先端部だけではなく、爪部63の全体が、ネジ穴140の周囲に沿って、略円弧状に形成されている。すなわち、爪部63の全体が、支柱14の円筒形状の部分と略同軸の円弧形状を有する。このようにすれば、ネジ穴140の内側および支柱14の外側への爪部63の露出を抑制し、かつ、爪部63の全体の幅を、広くできる。したがって、爪部63と支柱14との接触面積を、より増加させることができる。その結果、爪部63による支柱14の回り止めおよび抜け止めの効果を、より高めることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、ネジ穴140の中心軸92が、支柱14の中心よりもやや端縁601側に偏った位置に設けられている。すなわち、ネジ穴140の中心軸92が、爪部63とは反対側に偏在している。このようにすれば、支柱14内において、爪部63を配置する領域を広くとることができる。したがって、爪部63がネジ穴140の内側または支柱14の外側へ露出することを抑制し、かつ、爪部63の幅を、より広くとることができる。したがって、爪部63と支柱14との接触面積を、より増加させることができる。その結果、爪部63による支柱14の回り止めおよび抜け止めの効果を、より高めることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ネジ穴140の下端部付近の一部と、爪部63の先端付近の一部とが、同一の高さ位置に配置される。すなわち、ネジ穴140の少なくとも一部と、爪部63の少なくとも一部とが、中心軸方向の同一位置に配置される。ネジ穴140にネジ15を回転させながら挿入すると、ネジ穴140が押し広げられることによって、ネジ穴140の周囲の樹脂が圧縮される。ネジ穴140と爪部63との間に位置する樹脂には、ネジ15が取り付けられることによって、爪部63側への応力がはたらく。これにより、支柱14のネジ穴140の周囲の樹脂は、爪部63へ押し付けられる。その結果、爪部63による支柱14の回り止めおよび抜け止めの効果が、より高められる。
【0044】
特に、本実施形態では、セルフタップネジが用いられる。すなわち、本実施形態のネジ穴140には、雌ねじが形成されていない。ネジ15をネジ穴140に取り付けると、ネジ穴140の周囲の樹脂は、より爪部63へ押し付けられる。これにより、爪部63による支柱14の回り止めおよび抜け止めの効果が、より高められる。ただし、ネジ穴140に雌ネジが形成し、当該雌ネジに沿ってネジ15を回転させつつ挿入してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、第2貫通孔62は、爪部63の基端部の両側に、一対の切り欠き623を有する。一対の切り欠き623は、それぞれ、爪部63の基端部よりも中心軸92から離れる方向へ凹み、かつ、平板部60を中心軸方向に貫通する。このように、爪部63の両側に一対の切り欠き623を設ければ、ベースプレート11から爪部63を立ち上げるときに、爪部63の基端部付近におけるベースプレート11の歪みを低減できる。
【0046】
また、本実施形態では、第2貫通孔62が、ベースプレート11の端縁601付近に配置される。このため、ベースプレート11のうち、第2貫通孔62よりも端縁601側の部分と、第2貫通孔62よりも中央側の部分とを比較すると、後者の方が剛性が高い。本実施形態では、平板部60の第2貫通孔62を構成する周縁部のうち、剛性の高い中央側の縁622から延びる金属片が、縁622から立ち上げられて、爪部63となる。このため、爪部63が第2貫通孔62の端縁601側の縁621から延びる場合よりも、爪部63の強度を高めることができる。また、爪部63の立ち上げによるベースプレート11の歪みを低減できる。
【0047】
<3.アウトサート成型について>
図6は、支柱14のアウトサート成型時の様子を示した図である。支柱14をアウトサート成型により作製するときには、まず、固定金型101、可動金型102、およびベースプレート11を用意する。ベースプレート11には、予めプレス加工等によって、第2貫通孔62および爪部63が形成されている。
【0048】
次に、固定金型101の上にベースプレート11を配置し、ベースプレート11の上面に可動金型102を接触させる。固定金型101と可動金型102とは、ベースプレート11の第2貫通孔62を挟んで、上下に配置される。その結果、固定金型101、可動金型102、およびベースプレート11により、閉鎖された内部空間であるキャビティ103が形成される。
【0049】
続いて、キャビティ103に、溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、固定金型101に設けられたゲート104から、キャビティ103へ射出される。ゲート104の開口は、ベースプレート11の第2貫通孔62内に位置する。射出された溶融樹脂は、第2貫通孔62から上方へ広がり、キャビティ103全体に行き渡る。
【0050】
キャビティ103に溶融樹脂が行き渡ると、次に、溶融樹脂を冷却して固化させる。キャビティ103の溶融樹脂は、固化されることにより、支柱14となる。また、溶融樹脂の固化と同時に、ベースプレート11と支柱14とが、互いに固定される。その後、ゲート104内の樹脂を破断するとともに、可動金型102を上方へ移動させて、固定金型101と可動金型102とを開く。そして、ベースプレート11および支柱14を離型させる。
【0051】
図2に示すように、成型後の支柱14の下面は、ベースプレート11の第2貫通孔62内に位置する。また、
図2および
図5に示すように、支柱14は、当該下面に、射出成型時のゲート104の痕跡であるゲート痕141を有する。ゲート痕141は、環状の凹部142と、凹部142の内側に位置する破断痕143と、を有する。凹部142および破断痕143は、ベースプレート11の平板部60の下面よりも、上側に位置する。このため、平板部60の下面よりも下側に、樹脂が突出しない。
【0052】
また、本実施形態では、ゲート痕141の一部と、爪部63の一部とが、中心軸方向に重なる。このように、ゲート痕141の少なくとも一部を、爪部63と中心軸方向に重なるようにすれば、平面視において、ゲート痕141および爪部63の占める面積を低減できる。したがって、狭小な第2貫通孔62の領域内に、ゲート痕141と爪部63とを、ともに配置できる。
【0053】
<4.第2貫通孔の形状と爪部の向きとの関係について>
図7は、平面視において二等辺三角形の第2貫通孔62Aを、単純化して示した図である。上記の実施形態は、この
図7の例に近い。
図7のように、第2貫通孔62Aが略二等辺三角形の場合、一対の等辺に相当する縁621Aから第2貫通孔62Aの内側へ向けて延びる垂直二等分線を、第2貫通孔62Aの内縁によって切断して得られる線分L1よりも、二等辺三角形の底辺に相当する縁622Aから対向する頂点側へ向けて延びる垂直二等分線を、第2貫通孔62の内縁によって切断して得られる線分L2の方が、長い。
【0054】
すなわち、
図7の例では、第2貫通孔62Aの内側で最も長い長径がとれる方向は、底辺に相当する縁622Aから対向する頂点へ向かう方向となる。つまり、線分L2の方向が、最も長い長径がとれる方向となる。この場合、当該方向に延びる金属片630Aを、平板部60Aの第2貫通孔62Aを構成する縁622Aから立ち上げて爪部とすれば、爪部を長くできる。したがって、ベースプレートの狭小な部位においても、爪部による支柱の回り止めおよび抜け止めの効果を、高めることができる。
【0055】
以下、
図8および
図9の例においても同様に、様々な形状の第2貫通孔において、爪部の寸法を最も長くできる方向に、金属片を作成する。第2貫通孔の形状は、四角形および円形に限らず、多角形や複数の円形が重なった形状であってもよい。つまり、ベースプレートの形状に合わせて、第2貫通孔の形状を選択できる。
【0056】
図8は、平面視において長方形の第2貫通孔62Bを、単純化して示した図である。
図8のように、第2貫通孔62Bが略長方形の場合、一方の長辺に相当する縁621Bから他方の長辺に相当する縁621Bへ向けて延びる垂直二等分線を、第2貫通孔62Bの内縁によって切断して得られる線分L3よりも、一方の短辺に相当する縁622Bから他方の短辺に相当する縁622Bへ向けて延びる垂直二等分線を、第2貫通孔62Bの内縁によって切断して得られる線分L4の方が、長い。
【0057】
すなわち、
図8の例では、第2貫通孔62Bの内側で最も長い長径がとれる方向は、一方の短辺に相当する縁622Bから他方の短辺に相当する縁622Bへ向かう方向となる。つまり、線分L4の方向が、最も長い長径がとれる方向となる。この場合、当該方向に延びる金属片630Bを、平板部60Bの第2貫通孔62Bを構成する縁622Bから立ち上げて爪部とすれば、爪部を長くとることができる。したがって、ベースプレートの狭小な部位においても、爪部による支柱の回り止めおよび抜け止めの効果を、高めることができる。
【0058】
図9は、平面視において楕円形の第2貫通孔62Cを、単純化して示した図である。
図9のように、第2貫通孔62Cが略楕円の場合、当該楕円を細かい線分の集合とみなすことができる。それらの各線分から第2貫通孔62Cの内側へ向けて延びる垂直二等分線を、第2貫通孔62Bの内縁によって切断して得られる線分のうち、最も長いものは、長軸方向に延びる線分L5となる。
【0059】
すなわち、
図9の例では、第2貫通孔62Cの内側で最も長い長径がとれる方向は、楕円の長軸方向となる。つまり、線分L5の方向が、最も長い長径がとれる方向となる。この場合、当該方向に延びる金属片630Cを、平板部60Cの第2貫通孔62Cを構成する縁から立ち上げて爪部とすれば、爪部を長くとることができる。したがって、ベースプレートの狭小な部位においても、爪部による支柱の回り止めおよび抜け止めの効果を、高めることができる。
【0060】
特に、ノート型パソコンやタブレット型パソコンに用いられる遠心型の送風機では、小型化の要求が極めて強く、かつ、ケーシング内の風洞を広く確保することが求められる。上記の各例のように、第2貫通孔の内側で最も長い長径がとれる方向に金属片を設け、当該金属片を立ち上げることにより爪部を形成すれば、平面視において狭小な第2貫通孔の領域内において、爪部を長くとることができる。したがって、爪部により支柱の固定強度を高めながら、ケーシングの内の風洞を広く確保することができる。なお、「長径」は、平面視において、第2貫通孔の縁から延びる垂直二等分線を、第2貫通孔の内縁によって切断して得られる線分のうち、最も長い線分とする。爪部は、平面視において、長径の一部を含む。
【0061】
<5.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0062】
図10は、変形例に係るベースプレート11Dの部分上面図である。
図10の例では、平板部60Dの第2貫通孔62Dを構成する縁から第2貫通孔62Dの内側へ向けて延びる金属片630Dを、垂直に立ち上げることにより、爪部63Dが形成される。したがって、
図10の爪部63Dは、平板部60Dに対して中心軸方向上側へ略垂直に延びる。このように、爪部63Dを垂直に立ち上げれば、平面視における爪部63Dの面積を、より減らすことができる。したがって、支柱の中心軸に直交する断面の大きさが小さく、支柱内に爪部63Dを収容するスペースがより狭い場合にも対応できる。
【0063】
また、
図10の例では、爪部63Dとなる金属片630Dが、幅狭部631Dと幅広部632Dとを含む。立ち上げ後の爪部63Dにおいて、幅広部632Dは、幅狭部631Dよりも、軸方向上側に位置する。また、幅狭部631Dの幅寸法を第1の幅寸法とし、幅広部632Dの幅寸法を第2の幅寸法とすると、第2の幅寸法は第1の幅寸法よりも大きい。このようにすれば、金属片630Dを立ち上げたときに、幅広部632Dの幅狭部631Dよりも突出した部分の下方に、支柱の少なくとも一部が配置される。これにより、支柱の上方への抜けが抑制される。
【0064】
爪部に、このような幅狭部と幅広部と設ければ、爪部を垂直に立ち上げた場合であっても、支柱の上方への抜けを防止できる。なお、
図10の爪部63Dは、幅狭部631Dに対して幅広部632Dが幅方向の両側に突出した、両翼の形状となっている。しかしながら、爪部は、幅狭部に対して幅広部が幅方向の一方のみに突出した、片翼の形状であってもよい。また、幅広部の位置は、必ずしも爪部の先端部付近でなくてもよい。また、1つの爪部に、幅狭部または幅広部が、2つ以上設けられていてもよい。また、斜めに立ち上げられる爪部に、このような幅狭部と幅広部とを設けてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、爪部の全体が、支柱内に位置していた。しかしながら、爪部は、部分的に支柱の外にはみ出していてもよい。すなわち、支柱は、爪部の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0066】
また、本発明のケーシングは、送風機以外の機器に用いられるものであってもよい。例えば、ハードディスクドライブのケーシングに、本発明を適用してもよい。
【0067】
また、ケーシングおよび送風機の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。