(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面は、前記中心軸の周方向に断続的に設けられた複数の着色領域を有する固有情報識別用の第2ベルト領域を更に含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両同士の衝突を回避するために、後に続く車両が先行する車両の走行速度を把握することは有効である。ミリ波センサを使用する方式、及びレーダセンサを使用する方式は、車両の走行速度を推定可能である。安価な単眼カメラを使って、車両の走行速度を推定できる技術の案出が望まれる。
【0005】
本発明の態様は、車両に搭載されたカメラで取得された画像を用いて先行する車両の速度が推定され、車両同士の衝突を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。また、本発明の態様は、衝突を抑制できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、表面を有し、中心軸を中心に回転可能な空気入りタイヤであって、前記表面は、ゴムの表面を含む地色領域と、前記中心軸の周方向に断続的に設けられた複数の着色領域を有する速度測定用の第1ベルト領域と、を含む空気入りタイヤが提供される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、断続的に設けられた複数の着色領域を有する速度測定用の第1ベルト領域が設けられる。後続車両のカメラは、所定のフレームレートで空気入りタイヤの画像を取得する。そのため、そのフレームレートと、各フレームレートにおいて取得された第1ベルト領域の画像とに基づいて、自車両に装着されている空気入りタイヤの回転速度が推定される。空気入りタイヤの回転速度が推定されることにより、自車両の走行速度が推定される。これにより、後続車両が自車両に衝突することが抑制される。
【0008】
本発明の第1の態様において、可視光に対する前記着色領域の反射率は、前記地色領域の反射率よりも高くてもよい。
【0009】
これにより、着色領域は高い認識率でカメラに認識される。例えば、夜間の降雨時においても、着色領域は高い認識率でカメラに認識される。反射率は、JIS K−7375に規定の方法で測定した「全光線反射率」とする。
【0010】
本発明の第1の態様において、ショルダー部を備え、前記第1ベルト領域は、前記ショルダー部の表面に設けられてもよい。
【0011】
これにより、第1ベルト領域の着色領域と路面との接触が抑制される。そのため、着色領域は長持ちする。また、自車両に空気入りタイヤが装着された場合、真後方(just behind)の後続車両のカメラのみならず、右後方(right behind)の後続車両のカメラ、及び左後方(left behind)の後続車両のカメラにも、自車両の空気入りタイヤは高い認識率で認識される。
【0012】
本発明の第1の態様において、前記周方向に関して、複数の前記着色領域の寸法は、それぞれ異なってもよい。
【0013】
これにより、空気入りタイヤが高速で回転しても、第1ベルト領域は、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。
【0014】
本発明の第1の態様において、前記表面は、前記中心軸の周方向に断続的に設けられた複数の着色領域を有する固有情報識別用の第2ベルト領域を更に含んでもよい。
【0015】
これにより、バーコードとして機能する第2ベルト領域の画像がカメラに取得されることにより、自車両に装着された空気入りタイヤの固有情報が後続車両に認識される。
【0016】
本発明の第1の態様において、前記表面は、前記中心軸の周方向に設けられた着色領域を有する画像認識用の第3ベルト領域を更に含んでもよい。
【0017】
これにより、自車両に装着された空気入りタイヤの認識率の低下が抑制され、後続車両が自車両に衝突することが抑制される。画像認識用の第3ベルト領域の着色領域は、高い認識率で画像認識を実施可能な色で着色される。第3ベルト領域が設けられているので、後続車両のカメラによる、自車両に装着された空気入りタイヤの認識率の低下が抑制される。これにより、後続車両が自車両に衝突することが抑制される。また、第3ベルト領域の着色領域は、周方向に設けられる。そのため、空気入りタイヤが装着された自車両の走行中においても、自車両の空気入りタイヤの第3ベルト領域の着色領域は、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。また、空気入りタイヤは、路面と接触する。換言すれば、路面と空気入りタイヤとの距離は短い。空気入りタイヤが路面に近い位置に配置されるので、濡れた路面に投影された空気入りタイヤの画像がカメラに取得されても、その路面に投影された空気入りタイヤの画像に基づく自車両と後続車両との距離の推定結果の誤差は抑制される。これにより、自車両に装着された空気入りタイヤの認識率の低下が抑制され、後続車両が自車両に衝突することが抑制される。
【0018】
なお、画像認識とは、カメラで取得された空気入りタイヤの画像の構造を分析して特徴点を抽出し、空気入りタイヤの認識を行うことをいう。認識率とは、カメラが空気入りタイヤの複数の画像を取得した場合、「(全画像数−誤認識数)/全画像数」で示される値をいう。画像認識は、画像特徴の抽出、及び画像特徴と空気入りタイヤとの対応(パターン・マッチング)等の処理を含む。
【0019】
本発明の第1の態様において、前記中心軸と平行な方向に関して、前記第1ベルト領域の着色領域の寸法は、5mm以上でもよい。
【0020】
これにより、自車両の空気入りタイヤは、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。
【0021】
本発明の第1の態様において、前記着色領域は、前記ゴムに塗布された塗料の表面を含んでもよい。
【0022】
これにより、材料の選択の自由度が向上し、望みの反射率、望みの明度、及び地色領域に対する望みのコントラストを有する着色領域が容易に設けられる。
【0023】
本発明の第1の態様において、前記塗料は、蛍光塗料を含んでもよい。
【0024】
これにより、夜間又は降雨時においても、自車両の空気入りタイヤは、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。
【0025】
本発明の第1の態様において、前記塗料は、再帰性反射材料を含んでもよい。
【0026】
これにより、自車両の空気入りタイヤは、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。
【0027】
本発明の第1の態様において、着色料を含有する着色ゴムを含み、前記着色領域は、前記着色ゴムの表面を含んでもよい。
【0028】
これにより、着色領域を有する空気入りタイヤが容易に製造される。
【0029】
本発明の第2の態様に従えば、複数の車輪と、複数の前記車輪のうち、少なくとも最後尾の前記車輪に装着される第1の態様の空気入りタイヤと、を備える車両が提供される。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、最後尾の車輪に空気入りタイヤが装着された車両(自車両)は、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。そのため、自車両の走行速度が後続車両に円滑に把握される。したがって、自車両が後続車両に衝突されることが抑制される。
【0031】
本発明の第2の態様において、最後尾の前記車輪に装着された前記空気入りタイヤを照明する照明装置を備えてもよい。
【0032】
これにより、例えば夜間においても、自車両の空気入りタイヤは、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。
【発明の効果】
【0033】
本発明の態様によれば、車両に搭載されたカメラで取得された画像を用いて先行する車両の速度が推定され、車両同士の衝突を抑制できる空気入りタイヤが提供される。また、本発明の態様によれば、衝突を抑制できる車両が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0036】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0037】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の一例を示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の一部を拡大した断面図である。以下の説明においては、空気入りタイヤ1を適宜、タイヤ1、と称する。
【0038】
タイヤ1は、中心軸(回転軸)AXを中心に回転可能である。
図1及び
図2はそれぞれ、タイヤ1の中心軸AXを通る子午断面を示す。タイヤ1の中心軸AXは、タイヤ1の赤道面CLと直交する。
【0039】
本実施形態においては、タイヤ1の中心軸AXとY軸とが平行である。すなわち、本実施形態において、中心軸AXと平行な方向は、Y軸方向である。Y軸方向は、タイヤ1の幅方向又は車幅方向である。赤道面CLは、Y軸方向に関してタイヤ1の中心を通る。θY方向は、タイヤ1(中心軸AX)の回転方向である。X軸方向及びZ軸方向は、中心軸AXに対する放射方向である。タイヤ1が走行(転動)する路面(地面)は、XY平面とほぼ平行である。
【0040】
以下の説明においては、タイヤ1(中心軸AX)の回転方向を適宜、周方向、と称し、中心軸AXに対する放射方向を適宜、径方向と称し、中心軸AXと平行な方向を適宜、幅方向、と称する。
【0041】
タイヤ1は、カーカス部2と、ベルト層3と、ベルトカバー4と、ビード部5と、トレッド部10と、サイドウォール部9とを備えている。トレッド部10は、トレッドゴム6を含む。サイドウォール部9は、サイドウォールゴム8を含む。カーカス部2、ベルト層3、及びベルトカバー4のそれぞれは、コードを含む。コードは、補強材である。コードを、ワイヤと称してもよい。カーカス部2、ベルト層3、及びベルトカバー4のような補強材を含む層をそれぞれ、コード層と称してもよいし、補強材層と称してもよい。
【0042】
カーカス部2は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材である。カーカス部2は、コードを含む。カーカス部2のコードを、カーカスコードと称してもよい。カーカス部2は、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス部2は、ビード部5に支持される。ビード部5は、Y軸方向に関してカーカス部2の一側及び他側のそれぞれに配置される。カーカス部2は、ビード部5において折り返される。カーカス部2は、有機繊維のカーカスコードと、そのカーカスコードを覆うゴムとを含む。なお、カーカス部2は、ポリエステルのカーカスコードを含んでもよいし、ナイロンのカーカスコードを含んでもよいし、アラミドのカーカスコードを含んでもよいし、レーヨンのカーカスコードを含んでもよい。
【0043】
ベルト層3は、タイヤ1の形状を保持する強度部材である。ベルト層3は、コードを含む。ベルト層3のコードを、ベルトコードと称してもよい。ベルト層3は、カーカス部2とトレッドゴム6との間に配置される。ベルト層3は、例えばスチールなどの金属繊維のベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルト層3は、有機繊維のベルトコードを含んでもよい。本実施形態において、ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのコードと第2ベルトプライ3Bのコードとが交差するように積層される。
【0044】
ベルトカバー4は、ベルト層3を保護し、補強する強度部材である。ベルトカバー4は、コードを含む。ベルトカバー4のコードを、カバーコードと称してもよい。ベルトカバー4は、タイヤ1の中心軸AXに対してベルト層3の外側に配置される。ベルトカバー4は、例えばスチールなどの金属繊維のカバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルトカバー4は、有機繊維のカバーコードを含んでもよい。
【0045】
ビード部5は、カーカス部2の両端を固定する強度部材である。ビード部5は、タイヤ1をリムに固定させる。ビード部5は、スチールワイヤの束である。なお、ビード部5が、炭素鋼の束でもよい。
【0046】
トレッドゴム6は、カーカス部2を保護する。トレッドゴム6は、トレッド部10と、トレッド部10に設けられた複数の溝20とを有する。トレッド部10は、路面と接触する接地部を含む。トレッド部10は、溝20の間に配置される陸部を含む。
【0047】
サイドウォールゴム8は、カーカス部2を保護する。サイドウォールゴム8は、Y軸方向に関してトレッドゴム6の一側及び他側のそれぞれに配置される。サイドウォールゴム8は、Y軸方向に関してトレッド部10の一側及び他側のそれぞれに配置されるサイドウォール部9を有する。
【0048】
本実施形態において、タイヤ外径はODである。タイヤリム径はRDである。タイヤ総幅はSWである。トレッド接地幅はWである。トレッド展開幅はTDWである。
【0049】
タイヤ外径ODとは、規定リムにタイヤ1を装着して、タイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で、タイヤ1に荷重を加えないときの、タイヤ1の直径をいう。
【0050】
タイヤリム径RDとは、タイヤ1に適合するホイールのリム径をいう。タイヤリム径RDは、タイヤ内径と等しい。
【0051】
タイヤ総幅SWとは、タイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で、タイヤ1に荷重を加えないときの、中心軸AXと平行な方向に関するタイヤ1の最大の寸法をいう。すなわち、タイヤ総幅SWとは、トレッドゴム6の+Y側に配置されたサイドウォール部9の最も+Y側の部位と、−Y側に配置されたサイドウォール部9の最も−Y側の部位との距離をいう。サイドウォール部9の表面にそのサイドウォール部9の表面から突出する構造物が設けられている場合、タイヤ総幅SWとは、その構造物を含むY軸方向に関するタイヤ1の最大の寸法をいう。サイドウォール部9の表面から突出する構造物は、サイドウォール部9においてサイドウォールゴム8の少なくとも一部によって形成された文字、マーク、及び模様の少なくとも一つを含む。
【0052】
本実施形態において、トレッド接地幅Wとは、タイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに測定されるタイヤ1の中心軸AXと平行な方向に関する接地幅の最大値をいう。
【0053】
本実施形態において、トレッド展開幅TDWとは、タイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で、荷重を加えないときの、タイヤ1のトレッド部10の展開図における両端の直線距離をいう。
【0054】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。但し、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、このタイヤが組まれる純正ホイールを用いる。
【0055】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両に表示された空気圧とする。
【0056】
「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤ1が乗用車である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両の車検証記載の前後軸重をそれぞれタイヤの数で除して求めた輪荷重とする。
【0057】
図3は、タイヤ1のトレッド部10の一例を示す図である。
図4は、
図3のB部分を拡大した図である。
図2、
図3、及び
図4に示すように、タイヤ1は、トレッド部10を有する。トレッド部10は、センター部11と、Y軸方向に関してセンター部11の両側に配置されたショルダー部12とを含む。
【0058】
タイヤ1は、トレッド部10に設けられた溝20を有する。溝20は、タイヤ1の周方向に延びる主溝21と、少なくとも一部がタイヤ1の幅方向に延びるラグ溝(横溝)22と、を含む。溝20の周囲に、陸部が設けられる。陸部は、溝20と、その溝20に隣り合う溝20との間に設けられる。トレッド部10は、複数の陸部を含む。
【0059】
主溝21は、タイヤ1の周方向に設けられる。主溝21の少なくとも一部は、トレッド部10のセンター部11に設けられる。主溝21は、内部にトレッドウェアインジケータを有する。トレッドウェアインジケータは、摩耗末期を示す。主溝21は、4.0mm以上の幅を有し、5.0mm以上の深さを有してもよい。
図2及び
図3に示す例において、タイヤ1は、4つの主溝21を有する。
【0060】
ラグ溝22の少なくとも一部は、タイヤ1の幅方向に設けられる。ラグ溝22の少なくとも一部は、トレッド部10のショルダー部12に設けられる。ショルダー部12は、幅方向(Y軸方向)に関してセンター部11の一側(+Y側)及び他側(−Y側)のそれぞれに配置される。ラグ溝22は、1.5mm以上の幅を有する。ラグ溝22は、4.0mm以上の深さを有してもよく、部分的に4.0mm未満の深さを有していてもよい。
【0061】
本実施形態においては、タイヤ1の表面の少なくとも一部に着色領域7が設けられる。本実施形態において、タイヤ1の表面は、トレッド部10の表面、及びサイドウォール部9の表面を含む。トレッド部10の表面は、センター部11の表面、ショルダー部12の表面、及び溝20の内面を含む。
【0062】
着色領域7は、タイヤ1の表面の一部に設けられる。着色領域7以外のタイヤ1の表面は、地色領域13である。地色領域13の色は、着色領域7に対する下地の色である。地色領域13は、トレッドゴム6及びサイドウォールゴム8を含むタイヤ1のゴムの表面を含む。地色領域13の色は、そのゴムの色である。タイヤ1の表面は、ゴムの表面を含む地色領域13と、地色領域13の色とは異なる色の着色領域7と、を含む。ゴムのようなタイヤ1の下地が着色されることによって、着色領域7が形成される。
【0063】
本実施形態において、着色領域7は、中心軸AX(タイヤ1)の周方向に断続的に複数設けられる。以下の説明においては、中心軸AXの周方向に断続的に設けられた複数の着色領域7を有するベルト領域を適宜、第1ベルト領域31、と称する。
【0064】
第1ベルト領域31は、中心軸AXの周方向に断続的に設けられた複数の着色領域7を有する速度測定用のベルト領域である。
【0065】
着色領域7は、画像認識用の領域である。カメラによってタイヤ1の画像が取得される。着色領域7の色は、カメラが高い認識率で画像認識を実施可能な色である。
【0066】
なお、画像認識とは、カメラで取得されたタイヤ1の画像の構造を分析して特徴点を抽出し、タイヤ1の認識を行うことをいう。認識率とは、カメラがタイヤ1の複数の画像を取得した場合、「(全画像数−誤認識数)/全画像数」で示される値をいう。画像認識は、画像特徴の抽出、及び画像特徴とタイヤ1との対応(パターン・マッチング)等の処理を含む。
【0067】
可視光に対する着色領域7の反射率は、可視光に対する地色領域13の反射率よりも高い。地色領域13の色彩は、黒色である。着色領域7の色彩は、例えば、黄色、ベージュ色、茶色、赤色、緑色、青色、灰色、及び白色の少なくとも一つである。なお、ここでいうタイヤ1の表面(着色領域7又は地色領域13)の反射率とは、色彩拡散面の反射率をいう。本実施形態において、反射率は、JIS K−7375に規定の方法で測定した「全光線反射率」とする。
【0068】
なお、JIS Z 8721−1993に示されているように、マンセル明度が高いと、反射率が高くなる。したがって、着色領域7の色彩と地色領域13の色彩とが同一で、明度(マンセル明度)が異なってもよい。すなわち、可視光に対する着色領域7の反射率が地色領域13の反射率よりも高くなるように、地色領域13の明度に対して着色領域7の明度が調整されてもよい。
【0069】
可視光に対する着色領域7の反射率が、可視光に対する地色領域13の反射率よりも高いので、着色領域7はカメラに高い認識率で認識される。
【0070】
図3及び
図4に示すように、本実施形態において、第1ベルト領域31は、ショルダー部12の表面に設けられる。
【0071】
ショルダー部12の表面は、Y軸方向に関してトレッド部10の接地領域の端部(接地端部)60と、Y軸方向に関して接地端部60の外側に配置されているラグ溝22の終端部70との間のタイヤ1の表面を含む。以下の説明においては、ショルダー部12の表面のうち、接地端部60と終端部70との間の領域を適宜、ショルダー領域AR、と称する。
【0072】
本実施形態において、着色領域7を含む第1ベルト領域31は、ショルダー領域ARに設けられる。着色領域7は、ショルダー領域ARにおいて、周方向に断続的に設けられる。
【0073】
なお、接地端部60とは、トレッド接地幅Wのエッジ部をいう。上述したように、トレッド接地幅Wとは、タイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに測定される中心軸AXと平行な方向に関する接地幅の最大値をいう。
【0074】
ショルダー部12(ショルダー領域AR)は、Y軸方向に関してセンター部11の両側に配置される。第1ベルト領域31は、センター部11の両側のショルダー部12に設けられてもよいし、いずれか一方のショルダー部12に設けられてもよい。
【0075】
図5は、トレッド部10を周方向に展開した展開図である。
図5は、2つのショルダー領域ARのうち、一方のショルダー領域ARに着色領域7(第1ベルト領域31)が設けられている例を示す。
【0076】
図5に示す例では、4つの着色領域7が、周方向に断続的に設けられる。周方向に関して、複数の着色領域7の寸法Laは、等しい。隣り合う着色領域7の間にブランク領域25が設けられる。ブランク領域25は、地色領域13を含む。複数のブランク領域25が、周方向に断続的に設けられる。周方向に関して、複数のブランク領域25の寸法Lbは、等しい。
【0077】
図6は、トレッド部10を周方向に展開した展開図である。
図6は、2つのショルダー領域ARのうち、一方のショルダー領域ARに着色領域7(第1ベルト領域31)が設けられている例を示す。
【0078】
図6は、第1ベルト領域31の別の例を示す。
図6に示す例では、4つの着色領域7が、周方向に断続的に設けられる。周方向に関して、複数の着色領域7の寸法Laは、それぞれ異なる。隣り合う着色領域7の間にブランク領域25が設けられる。周方向に関して、複数のブランク領域25の寸法Lbは、それぞれ異なる。
【0079】
図7及び
図8は、第1ベルト領域31の別の例を示す。
図7及び
図8に示す例では、第1ベルト領域31の着色領域7は、ショルダー部12のみならず、センター部11にも設けられる。複数の着色領域7は、タイヤ1の周方向及び幅方向のそれぞれに配置される。
図7に示す例では、第1ベルト領域31は、タイヤ1の幅方向に関する着色領域7の位置が幅方向に関して一側から他側に徐々に変化するグループ31Aを2つ有する。
図8に示す例では、第1ベルト領域31は、タイヤ1の幅方向に関する着色領域7の位置が幅方向に関して一側から他側に徐々に変化するグループ31Aと、他側から一側に徐々に変化するグループ31Bとを有する。
【0080】
本実施形態において、Y軸方向に関して、第1ベルト領域31の着色領域7の寸法は、5mm以上である。Y軸方向に関して、第1ベルト領域31の着色領域7の寸法は、7mm以上でもよい。
【0081】
本実施形態において、着色領域7は、下地であるゴムに塗布された塗料の表面を含む。すなわち、本実施形態においては、下地であるタイヤ1のゴムの表面に塗料が塗布されることによって、着色領域7が設けられる。本実施形態においては、トレッドゴム6の表面のうち、ショルダー部12に相当する領域に塗料が塗布される。これにより、ショルダー部12に着色領域7が設けられる。
【0082】
本実施形態においては、可視光に対する反射率がゴム(トレッドゴム6)よりも高い塗料が塗布される。可視光に対する反射率がゴムよりも高くなるように、塗料の色彩又はマンセル明度が選択される。
【0083】
なお、塗料が、蛍光塗料でもよい。蛍光塗料とは、蛍光体を顔料とした塗料をいう。蛍光塗料に含有される蛍光体は、紫外線に刺激されて蛍光を発する。
【0084】
なお、塗料が、夜光塗料でもよい。夜光塗料とは、可視光線又は紫外線以下の短波長の電磁波を受け、そのエネルギーを可視光線に変化させる性質をもつ蛍光体又はリン光体を主要顔料とする塗料をいう。夜光塗料は、蓄光型塗料でもよいし、発光型塗料でもよい。
【0085】
なお、塗料が、拡散性材料を含んでもよい。拡散性材料は、金属微粒子又はガラス微粒子を含む。
【0086】
なお、塗料が、再帰性反射材料を含んでもよい。すなわち、塗料が、所謂、再帰反射塗料でもよい。再帰性反射材料は、表面の一部に反射膜が形成されている球状で透明な反射ビーズを含む透明な樹脂層からなる。
【0087】
図9は、第1ベルト領域31を有するタイヤ1が装着された車両100の一例を示す図である。
図9は、車両100を後方から見た図である。
図9に示すように、車両100は、車体14と、車体14の後部14Rに配置されたテールランプ18と、タイヤ1と、を有する。
【0088】
車両100は、複数の車輪を有する。本実施形態において、車両100は、4つの車輪を有する四輪自動車である。車両100は、前輪と後輪とを有する。
図9に示すように、タイヤ1は、少なくとも最後尾の車輪(本例では後輪)に装着される。
【0089】
本実施形態に係るタイヤ1は、路面を先行する車両(自車両)100に装着される。その車両100の後に続く車両(後続車両)は、自車両100との衝突(追突)を回避するための衝突回避システムを有する。後続車両には、自車両100の画像を取得するカメラが搭載されている。カメラは、自車両100の画像を取得する。後続車両の衝突回避システムは、カメラで取得された自車両100の画像から、自車両100の走行速度を推定する。
【0090】
本実施形態においては、自車両100に装着されるタイヤ1に第1ベルト領域31が設けられている。第1ベルト領域31は、周方向(タイヤ1の回転方向)に断続的に設けられた複数の着色領域7を有する。後続車両のカメラは、所定のフレームレート(所定の周期)で、自車両100のタイヤ1の画像を取得する。走行(転動)するタイヤ1の画像がカメラに取得される場合、各フレームレートにおいて取得される第1ベルト領域31の画像は異なる。すなわち、走行(転動)するタイヤ1の画像がカメラに取得される場合、第1のフレームレートにおいて取得される、カメラの視野領域における第1ベルト領域31の着色領域7の位置(又はカメラの視野領域に占める着色領域の位置及び面積)と、第1のフレームレートの次の第2のフレームレートにおいて取得される、カメラの視野領域における第1ベルト領域31の着色領域7の位置(又はカメラの視野領域に占める着色領域の位置及び面積)とは、異なる。
【0091】
そのため、画像を取得するフレームレート(周期)と、各フレームレートにおいて取得された第1ベルト領域31の画像とに基づいて、自車両100に装着されているタイヤ1の回転速度が推定される。タイヤ1の回転速度が推定されることにより、自車両100の走行速度が推定される。このように、本実施形態において、自車両100に装着されているタイヤ1の第1ベルト領域31は、後続車両200のカメラ(単眼カメラ)によって、タイヤ1の回転速度及び自車両100の走行速度が測定(推定)されるための、速度測定用(速度推定用)のベルト領域として機能する。
【0092】
以上説明したように、本実施形態によれば、断続的に設けられた複数の着色領域7を有する速度測定用の第1ベルト領域31がタイヤ1に設けられる。後続車両のカメラは、所定のフレームレートでタイヤ1の画像を取得する。そのため、そのフレームレートと、各フレームレートにおいて取得された第1ベルト領域31の画像とに基づいて、自車両100に装着されているタイヤ1の回転速度が推定される。タイヤ1の回転速度が推定されることにより、自車両100の走行速度が推定される。これにより、後続車両が自車両100に衝突することが抑制される。
【0093】
また、本実施形態によれば、可視光に対する着色領域7の反射率は、地色領域13の反射率よりも高い。これにより、着色領域7は高い認識率でカメラに認識される。例えば、夜間の降雨時においても、着色領域7は高い認識率でカメラに認識される。
【0094】
また、本実施形態によれば、第1ベルト領域31は、タイヤ1のショルダー部12の表面に設けられる。これにより、第1ベルト領域31の着色領域7と路面との接触が抑制される。そのため、着色領域7は長持ちする。また、自車両100にタイヤ1が装着された場合、真後方(just behind)の後続車両のカメラのみならず、右後方(right behind)の後続車両のカメラ、及び左後方(left behind)の後続車両のカメラにも、自車両の空気入りタイヤは高い認識率で認識される。
【0095】
また、
図6に示したように、周方向に関して、複数の着色領域7の寸法Laは、それぞれ異なってもよい。複数の着色領域7が不等長及び不等間隔で配置されることにより、タイヤ1が高速で回転しても、後続車両のカメラは、第1ベルト領域31の画像に基づいて、タイヤ1の回転速度を精度良く推定することができる。
【0096】
また、
図7及び
図8に示したように、周方向のみならず、幅方向に関しても、着色領域7の位置が異なるようにそれら複数の着色領域7が配置されることにより、タイヤ1が高速で回転しても、第1のフレームレートの画像と、第2のフレームレートの画像との違いが生じやすくなる。そのため、タイヤ1が高速で回転しても、後続車両のカメラは、第1ベルト領域31の画像に基づいて、タイヤ1の回転速度を精度良く推定することができる。特に、
図8に示すように、グループ31Aとグループ31Bとを有する場合、よりタイヤ1の高速回転に対応することができる。
【0097】
また、本実施形態においては、本発明の第1の態様において、中心軸と平行な方向に関して、第1ベルト領域の着色領域の寸法は、5mm以上でもよい。
【0098】
これにより、自車両の空気入りタイヤは、後続車両のカメラに高い認識率で認識される。
【0099】
また、本実施形態においては、着色領域7は、タイヤ1の下地であるゴムに塗布された塗料の表面を含む。タイヤ1の下地であるゴムは、トレッドゴム6及びサイドウォールゴム8の一方又は両方を含む。これにより、材料の選択の自由度が高められる。そのため、例えば、望みの反射率の着色領域7、望みの色彩の着色領域7、望みの明度の着色領域7、及び地色領域13に対する望みのコントラストを有する着色領域7を容易に設けることができる。
【0100】
本実施形態において、塗料は、蛍光塗料を含んでもよい。これにより、夜間又は降雨時においても、後続車両200のカメラ201は、自車両100のタイヤ1を高い認識率で認識することができる。
【0101】
本実施形態において、塗料は、再帰性反射材料を含んでもよい。これにより、後続車両200のカメラ201は、自車両100のタイヤ1を高い認識率で認識することができる。
【0102】
なお、本実施形態においては、第1ベルト領域31の着色領域7が、ショルダー部12に設けられることとした。例えば、主溝21の内面に、第1ベルト領域31の着色領域7が設けられてもよい。こうすることによっても、第1ベルト領域31の着色領域7が路面に接触することが抑制され、着色領域7を長持ちさせることができる。
【0103】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0104】
図10は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を示す図である。
図10は、タイヤ1のトレッド部10の展開図を示す。本実施形態において、タイヤ1の表面は、中心軸AXの周方向に断続的に設けられた複数の着色領域7を有する固有情報識別用の第2ベルト領域32を更に含む。
【0105】
図10に示す例では、第2ベルト領域32は、ショルダー部12(ショルダー領域AR)に設けられる。なお、第2ベルト領域32が、センター部11に設けられてもよい。
【0106】
第2ベルト領域32の複数の着色領域7によって、識別パターンが形成される。タイヤ1に設けられている第2ベルト領域32は、そのタイヤ1の固有情報を含む。複数の着色領域7を含む第2ベルト領域32は、バーコードとして機能する。
【0107】
後続車両のカメラは、第2ベルト領域32の画像を取得して、タイヤ1の固有情報を取得する。後続車両のカメラは、バーコードリーダとして機能する。
【0108】
タイヤ1の固有情報は、タイヤ1の外径、タイヤ1の周長、及びタイヤ1の種類の少なくとも一つを含む。タイヤ1の種類は、スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤ、ウインタータイヤ、及びサマータイヤの種別を含む。なお、第2ベルト領域32は、車両100の全長及び全幅など、車両100の固有情報を含んでもよい。
【0109】
後続車両のカメラは、第1ベルト領域31の画像及び第2ベルト領域32の画像を取得する。第1ベルト領域31の画像に基づいて、タイヤ1の回転速度が推定される。第2ベルト領域32の画像に基づいて、タイヤ1の外径又は周長に関する情報が取得されることにより、タイヤ1の回転速度と、タイヤ1の外径又は周長とに基づいて、車両100の走行速度をより正確に推定することができる。
【0110】
以上説明したように、本実施形態によれば、バーコードとして機能する第2ベルト領域32の画像が後続車両のカメラに取得されることにより、自車両100に装着されたタイヤ1の固有情報が後続車両に認識される。
【0111】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0112】
図11は、本実施形態に係るタイヤ1が装着された車両100を後方から見た図である。本実施形態において、タイヤ1の表面は、中心軸AXの周方向に設けられた着色領域7を有する画像認識用の第3ベルト領域33を更に含む。
【0113】
第3ベルト領域33の着色領域7は、画像認識用の領域である。カメラによってタイヤ1の画像が取得される。着色領域7の色は、カメラが高い認識率で画像認識を実施可能な色である。
【0114】
なお、画像認識とは、カメラで取得されたタイヤ1の画像の構造を分析して特徴点を抽出し、タイヤ1の認識を行うことをいう。認識率とは、カメラがタイヤ1の複数の画像を取得した場合、「(全画像数−誤認識数)/全画像数」で示される値をいう。画像認識は、画像特徴の抽出、及び画像特徴とタイヤ1との対応(パターン・マッチング)等の処理を含む。
【0115】
可視光に対する着色領域7の反射率は、可視光に対する地色領域13の反射率よりも高い。可視光に対する着色領域7の反射率が、可視光に対する地色領域13の反射率よりも高いので、着色領域7はカメラに高い認識率で認識される。本実施形態において、反射率は、JIS K−7375に規定の方法で測定した「全光線反射率」とする。
【0116】
本実施形態において、着色領域7は、周方向に設けられる。着色領域7は、中心軸AXの周囲に配置される。換言すれば、着色領域7は、途切れることなく、周方向に連続的に設けられる。なお、着色領域7は、中心軸AXの周囲の一部に配置されてもよい。
【0117】
本実施形態において、第3ベルト領域33は、ショルダー部12の表面に設けられる。なお、
図11に示す例では、第1ベルト領域31の少なくとも一部は、センター部11に設けられる。
【0118】
図12は、路面を先行する車両(自車両)100と、その車両100の後に続く車両(後続車両)200との関係の一例を示す模式図である。
図12は、比較例に係る図である。後続車両200は、自車両100との衝突(追突)を回避するための衝突回避システムを有する。後続車両200には、自車両100の画像を取得するカメラ201が搭載されている。後続車両200の衝突回避システムは、カメラ201で取得された自車両100の画像から、自車両100の特徴点を抽出し、その抽出した特徴点に基づいて、自車両100と後続車両200との距離を推定する。
【0119】
図12は、自車両100のテールランプ18が自車両100の特徴点として抽出される例を示す。高さ方向に関して、テールランプ18の位置と路面の位置とは離れている。
【0120】
自車両100のテールランプ18の実際の画像(実像)IMaが、後続車両200のカメラ201に取得される。これにより、後続車両200の衝突回避システムは、自車両100を認識して、自車両100と後続車両200との距離を推定することができる。
【0121】
自車両100のテールランプ18が特徴点として抽出される場合、例えば降雨時において、カメラ201による自車両100の認識率が低下する可能性がある。
図12に示すように、高さ方向に関して、テールランプ18は路面から離れている。自車両100のテールランプ18が特徴点として抽出される場合、降雨により路面が濡れていると、路面に投影されたテールランプ18の画像IMbが、カメラ201に取得される可能性が高くなる。テールランプ18の実際の画像IMaではなく、路面に投影されたテールランプ18の画像IMbに基づいて自車両100と後続車両200との距離が推定されると、推定結果の信頼性が低下する可能性がある。特に、夜間の降雨時においては、カメラ201による自車両100の認識率は著しく低下する可能性がある。
【0122】
すなわち、高さ方向に関して路面との距離が大きい部位が特徴点として抽出されると、その特徴点(本例ではテールランプ18)からカメラ201までの画像IMaの光路長と、画像IMbの光路長との差が大きくなる。その結果、自車両100と後続車両200との距離の推定結果の信頼性が低下する可能性がある。
【0123】
図13は、本実施形態に係るタイヤ1を装着した自車両100と、カメラ201が搭載された後続車両200との関係の一例を示す模式図である。
図13は、自車両100のタイヤ1が自車両100の特徴点として抽出される例を示す。タイヤ1は、路面と接触する。高さ方向に関して、タイヤ1の位置と路面の位置との距離は短い。
【0124】
自車両100のタイヤ1の実際の画像IMaが、後続車両200のカメラ201に取得される。これにより、後続車両200の衝突回避システムは、自車両100を認識して、自車両100と後続車両200との距離を推定することができる。
【0125】
図13に示すように、高さ方向に関して、タイヤ1は路面と接触する。自車両100のタイヤ1を特徴点として抽出する場合、例えば降雨により濡れた路面に投影されたタイヤ1の画像IMbがカメラ201に取得されても、その路面に投影されたタイヤ1の画像IMbに基づく自車両100と後続車両200との距離の推定結果の誤差は抑制される。
【0126】
すなわち、高さ方向に関して路面との距離が大きい部位が特徴点として抽出されると、その特徴点(本例ではテールランプ18)からカメラ201までの画像IMaの光路長と、画像IMbの光路長との差が大きくなり、かつ、カメラ201からの俯角が変わるため、画像全体における特徴点の位置が変化する。その結果、自車両100と後続車両200との距離の推定結果の信頼性は画像認識の方式によらず低下する可能性がある。
【0127】
更に、本実施形態においては、タイヤ1は、画像認識用の着色領域7を有する。着色領域7は、高い認識率で画像認識を実施可能な色で着色され、周方向に連続的に設けられている。そのため、タイヤ1が装着された自車両100が走行しても、回転するタイヤ1の着色領域7は、後続車両200のカメラ201に高い認識率で認識される。
【0128】
以上説明したように、本実施形態によれば、タイヤ1に画像認識用の第3ベルト領域33が設けられるので、後続車両200のカメラ201による、自車両100に装着されたタイヤ1の認識率の低下が抑制される。これにより、自車両100と後続車両200との距離の推定が精度良く行われる。したがって、後続車両200が自車両100に衝突することが抑制される。
【0129】
また、本実施形態においては、第3ベルト領域33の着色領域7は、周方向に設けられる。そのため、自車両100に装着されたタイヤ1が走行(転動)しても、後続車両200のカメラ201は、着色領域7を高い認識率で認識することができる。
【0130】
また、タイヤ1は、路面と接触する。換言すれば、路面とタイヤ1との距離は短い。タイヤ1が路面に近い位置に配置されるので、例えば降雨により濡れた路面に投影されたタイヤ1の画像IMbがカメラ201に取得されても、その路面に投影されたタイヤ1の画像に基づく自車両100と後続車両200との距離の推定結果の誤差は抑制される。これにより、自車両100に装着されたタイヤ1の認識率の低下が抑制され、後続車両200が自車両100に衝突することが抑制される。
【0131】
また、本実施形態においては、可視光に対する着色領域7の反射率は、可視光に対する地色領域13の反射率よりも高い。これにより、カメラ201は着色領域7を高い認識率で認識することができる。例えば、夜間の降雨時においても、カメラ201は着色領域7を高い認識率で認識することができる。
【0132】
また、本実施形態においては、第3ベルト領域33の着色領域7は、ショルダー部12の表面に設けられる。これにより、第3ベルト領域33の着色領域7と路面との接触が抑制され、着色領域7を長持ちさせることができる。また、自車両100にタイヤ1が装着された場合、真後方(just behind)の後続車両200のカメラ201のみならず、右後方(right behind)の後続車両200のカメラ201、及び左後方(left behind)の後続車両200のカメラ201も、自車両100のタイヤ1を高い認識率で認識することができる。
【0133】
なお、上述の各実施形態においては、下地であるゴムに塗料が塗布されることによって着色領域7が形成されることとした。ゴムの一部が着色されていてもよい。すなわち、着色されたゴム層によって、着色領域7が形成されてもよい。着色されたゴム層は、着色料を含有する着色ゴムを含む。タイヤ1が、着色料を含有する着色ゴムを含み、着色領域7が、着色ゴムの表面を含むことにより、着色領域7を有するタイヤ1を容易に製造することができる。
【0134】
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0135】
図14は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を示す図である。
図14は、タイヤ1のトレッド部10の展開図を示す。
図14に示すように、本実施形態において、タイヤ1の表面は、中心軸AXの周方向に断続的に設けられた複数の着色領域7を有する速度測定用の第1ベルト領域31と、中心軸AXの周方向に断続的に設けられた複数の着色領域7を有する固有情報識別用の第2ベルト領域32と、中心軸AXの周方向に設けられた着色領域7を有する画像認識用の第3ベルト領域33と、を含む。
【0136】
図14に示す例では、タイヤ1が車両に装着された状態で、第1ベルト領域31は、車両の内側に配置される。第3ベルト領域33は、車両の外側に配置される。第2ベルト領域32は、幅方向に関して第1ベルト領域31と第3ベルト領域33との間に配置される。
【0137】
第1ベルト領域31は、一方のショルダー部12(ショルダー領域AR)に設けられる。第2ベルト領域32は、センター部11に設けられる。第3ベルト領域33は、他方のショルダー部12(ショルダー領域AR)に設けられる。
【0138】
本実施形態において、ショルダー部12のうち、第1ベルト領域31が配置されるタイヤ1の表面は、平坦面である。第1ベルト領域31が配置されるタイヤ1の表面に、溝20(ラグ溝22)は設けられていない。
【0139】
本実施形態において、ショルダー部12のうち、第3ベルト領域33が配置されるタイヤ1の表面は、平坦面である。第3ベルト領域33が配置されるタイヤ1の表面に、溝20(ラグ溝22)は設けられていない。
【0140】
本実施形態において、センター部11のうち、第2ベルト領域32が配置されるタイヤ1の表面は、平坦面である。第2ベルト領域32が配置されるタイヤ1の表面に、溝20(ラグ溝22)は設けられていない。
【0141】
着色領域7が設けられるタイヤ1の表面が平坦面なので、着色領域7は円滑に形成される。
【0142】
第2ベルト領域32が保有するタイヤ1の固有情報は、タイヤ1の周長データを含んでもよい。後続車両は、第2ベルト領域32からタイヤ1の周長データを取得し、第1ベルト領域31からタイヤ1の回転速度データを取得することにより、それら周長データと回転速度データとに基づいて、先行する自車両の走行速度をより正確に算出することができる。
【0143】
第2ベルト領域32が保有するタイヤ1の固有情報は、タイヤ1の幅寸法を示す幅データを含んでもよい。後続車両は、第2ベルト領域32からタイヤ1の幅データを取得し、その幅データに基づいて、画像から取得したタイヤ1の大きさを校正することにより、画像データから、正しいタイヤ1の寸法データを取得することができる。
【0144】
第2ベルト領域32が保有するタイヤ1の固有情報は、そのタイヤ1が装着されている車両(自車両)の全幅の寸法を示す全幅データを含んでもよい。後続車両は、第2ベルト領域32から車両の全幅データを取得し、その全幅データに基づいて、画像から取得した車両の大きさ及びタイヤ1の大きさを校正することにより、画像データから、正しい車両の寸法データ及び正しいタイヤ1の寸法データを取得することができる。
【0145】
<第5実施形態>
第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0146】
図15は、本実施形態に係る第2ベルト領域32の一例を模式的に示す図である。
図15に示すように、第2ベルト領域32は、中心軸AXの周方向に断続的に設けられた複数の着色領域7を有する第1の固有情報識別用の第2ベルト領域32Aと、中心軸AXに対する放射方向に関して第2ベルト領域32Aよりも内側に設けられ、中心軸AXの周方向に断続的に設けられた複数の着色領域7を有する第2の固有情報識別用の第2ベルト領域32Bと、を含む。第2ベルト領域32Aは、径方向に関して、第2ベルト領域32Bの外側に配置される。第2ベルト領域32Bは、トレッドゴム6に埋設される。第2ベルト領域32Aは、第1の固有情報を含む。第2ベルト領域32Bは、第1の固有情報とは異なる第2の固有情報を含む。
【0147】
トレッドゴム6の摩耗初期においては、タイヤ1の表面に第2ベルト領域32Aの着色領域7が配置される。後続車両のカメラにより、第2ベルト領域32Aの画像が取得される。後続車両のカメラは、第2ベルト領域32Aの画像を取得して、タイヤ1の第1の固有情報を取得する。トレッドゴム6の摩耗初期においては、第2ベルト領域32Bは、トレッドゴム6に埋設されている。したがって、トレッドゴム6の摩耗初期においては、後続車両のカメラは、第2ベルト領域32Aの画像を取得し、第2ベルト領域32Bの画像を取得しない。トレッドゴム6の摩耗初期においては、後続車両のカメラは、タイヤ1の第1の固有情報を取得し、タイヤ1の第2の固有情報を取得しない。
【0148】
タイヤ1の走行により、トレッドゴム6は摩耗する。トレッドゴム6の摩耗中期又は摩耗末期においては、第2ベルト領域32Aは消滅し、タイヤ1の表面に第2ベルト領域32Bの着色領域7が配置される。後続車両のカメラにより、第2ベルト領域32Bの画像が取得される。後続車両のカメラは、第2ベルト領域32Bの画像を取得して、タイヤ1の第2の固有情報を取得する。トレッドゴム6の摩耗中期又は摩耗末期においては、第2ベルト領域32Aは、消滅している。したがって、トレッドゴム6の摩耗中期又は摩耗末期においては、後続車両のカメラは、第2ベルト領域32Bの画像を取得し、第2ベルト領域32Aの画像を取得しない。トレッドゴム6の摩耗中期又は摩耗末期においては、後続車両のカメラは、タイヤ1の第2の固有情報を取得し、タイヤ1の第1の固有情報を取得しない。
【0149】
なお、第2ベルト領域32Bが保有するタイヤ1の固有情報は、トレッドゴム6の摩耗量を示す摩耗データを含んでもよい。
【0150】
以上説明したように、本実施形態によれば、トレッドゴム6の摩耗量に基づいて、後続車両のカメラに取得されるタイヤ1の固有情報を変化させることができる。これにより、後続車両200は、タイヤ1のトレッド部10の摩耗状態を把握することができる。
【0151】
<第6実施形態>
第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0152】
図16は、本実施形態に係る第1ベルト領域31の一例を示す図である。本実施形態においては、周方向に関する第1ベルト領域31の着色領域7の寸法La、及び周方向に関するブランク領域25の寸法Lbについて説明する。上述したように、ブランク領域25は、隣り合う着色領域7の間の地色領域13を含む。
【0153】
着色領域7の寸法La及びブランク領域25の寸法Lbは、タイヤ1の周方向の角度αに換算して、5[°]以上22.5[°]以下であることが好ましい。寸法La及び寸法Lbは、タイヤ1の外径OD(中心軸AXとトレッド部10の表面との距離)と、角度αとに基づいて、求めることができる。例えば、寸法La又は寸法Lbは、π×OD×(α/360)の演算を実施することによって、求めることができる。
【0154】
22.5[°]は、タイヤ1の1周長(円周)を8分割したときの1つの分割長に相当する。後続車両から一度に見える、周方向に関するタイヤ1の寸法は、タイヤ1の周方向の角度αに換算して、約45[°]程度である。すなわち、後続車両から一度に見えるタイヤ1の周方向の寸法は、π×OD×(45/360)である。そのため、寸法La及び寸法Lbが、22.5[°]に相当する寸法(π×OD×(22.5/360))よりも大きいと、後続車両のカメラは、断続的に設けられた複数の着色領域7(又はブランク領域25)を区別することができなくなる可能性がある。寸法La及び寸法Lbが、5[°]に相当する寸法(π×OD×(5/360))よりも小さいと、後続車両のカメラで取得される画像において、着色領域7及びブランク領域25の面積が小さすぎ、着色領域7とブランク領域25とで形成されるパターンを認識できくなる可能性がある。
【0155】
着色領域7の寸法La及びブランク領域25の寸法Lbが、タイヤ1の周方向の角度αに換算して、5[°]以上22.5[°]以下であることにより、後続車両のカメラは、着色領域7とブランク領域25とで形成されるパターンを良好に認識することができる。
【0156】
<第7実施形態>
第7実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0157】
図17は、本実施形態に係る車両100の一例を示す図である。
図17に示すように、本実施形態において、車両100は、最後尾の車輪に装着されたタイヤ1を照明する照明装置300を備える。例えば、夜間において、照明装置300によりタイヤ1が照明される。
【0158】
照明装置300は、車体14に支持される。照明装置300は、最後尾の車輪に装着されたタイヤ1よりも後方に配置される。照明装置300は、自車両100のタイヤ1と、後続車両200のカメラ201との間において、自車両100の車体14に支持される。照明装置300は、タイヤ1の後方から、そのタイヤ1を照明する。
【0159】
以上説明したように、照明装置300によりタイヤ1が照明されることによって、例えば夜間においても、後続車両200のカメラ201は、自車両100のタイヤ1を高い認識率で認識することができる。
【0160】
なお、上述の各実施形態においては、自車両100にタイヤ1が装着され、自車両100の後に続く後続車両200がカメラ201を含む衝突回避システムを有することとした。これにより、自車両100は、後続車両200に追突されることを抑制できる。
図18に示すように、自車両100に先行する先行車両100Fにタイヤ1が装着され、先行車両100Fの後に続く自車両100がカメラ101を含む衝突回避システムを有してもよい。これにより、自車両100は、先行車両100Fを高い認識率で認識でき、先行車両100Fに追突してしまうことを抑制できる。