(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の増幅部は、ソース接地回路と、容量とを含み、前記状態検出部は、前記ソース接地回路を構成するトランジスタのゲートと前記容量とが接続するノードに印加される前記第1の出力電圧の上昇度合いにもとづいて、前記状態の発生を検出することを特徴とする請求項1記載の増幅装置。
前記状態検出部は、前記第1の出力電圧と、所定電圧値とを比較し、前記第1の出力電圧が前記所定電圧値よりも高い場合は、前記状態を検出したことを示す検出信号を出力する比較部と、
前記検出信号にもとづいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチング制御部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の増幅装置。
前記スロープ電圧発生部は、前記検出信号を受信することで駆動し、前記入力電圧が高電位レベルの場合は0ボルトを出力し、前記入力電圧が低電位レベルの場合は時間経過と共に0ボルトから徐々に上昇する前記スロープ電圧を発生することを特徴とする請求項5記載の増幅装置。
前記増幅装置から前記負のオフセット電圧が出力されるようにあらかじめ設定しておいてから、前記負のオフセット電圧を段階的に上昇させて前記正のオフセット電圧に補正することを特徴とする請求項10記載のオフセット電圧補正方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は増幅装置の構成例を示す図である。第1の実施の形態の増幅装置1は、片電源(例えば、正極性電源)で動作する装置であって、増幅部1a−1(第1の増幅部)、増幅部1a−2(第2の増幅部)、状態検出部1bおよびオフセット電圧補正部1cを備える。
【0013】
増幅部1a−1は、差動対トランジスタを有して入力電圧の差を増幅する。増幅部1a−2は、増幅部1a−1の出力電圧V1(第1の出力電圧)を増幅する。
状態検出部1bは、オフセット電圧と入力電圧との関係において、ある特定の条件下では、他の条件と比べて遅延時間が大きくなるような状態を検出する。
図1に示すグラフgは、状態検出部1bで検出される当該状態を示している。縦軸は電圧、横軸は時間である。
【0014】
具体的に、状態検出部1bは、負のオフセット電圧Voffset(−)が発生し、かつ増幅部1a−1の入力電圧VINの低電位レベル(以下、Lレベル)が、負のオフセット電圧の絶対値|Voffset(−)|より低くなる状態を検出する(|α|はαの絶対値)。
【0015】
なお、負のオフセット電圧とは、増幅部1a−2の出力電圧V2(第2の出力電圧)を、入力電圧VINよりも低くするオフセット電圧のことである。
オフセット電圧補正部1cは、当該状態が検出された場合は、負のオフセット電圧Voffset(−)を、正のオフセット電圧にするための補正制御を行う。なお、正のオフセット電圧とは、出力電圧V2を入力電圧VINよりも高くするオフセット電圧のことである。
【0016】
このように、増幅装置1は、グラフgに示すような状態を検出した場合には、負のオフセット電圧を正のオフセット電圧に補正する。これにより、入力電圧VINの立ち上がりから出力電圧V2の立ち上がりまでの遅延時間τを短縮化することが可能になる。
【0017】
ここで、オフセット電圧について説明する。オフセット電圧は、差動対トランジスタを形成する互いのトランジスタの電流駆動能力の不均衡によって生じるものである。また、飽和領域において、トランジスタを流れる電流(ドレイン電流)Idは、以下の式で算出される。
【0018】
Id=(1/2)・μ・Cox・(W/L)・(Vgs−Vth)
2・・・(1)
μは半導体中の電子の移動度、Coxは単位面積あたりのゲート酸化膜容量、W/Lはアスペクト比、Vgsはゲート・ソース間電圧、Vthは閾値電圧である。なお、Wはゲート幅(チャネル幅)、Lはゲート長(チャネル長)である。
【0019】
式(1)に示すように、トランジスタの電流算出式は、複数のパラメータを含むので、どのパラメータの差異によっても流れる電流に違いが生じてオフセット電圧が発生するといえる。ただし、これらパラメータの中でも特に、閾値電圧の差異がオフセット電圧の発生要因に大きく影響を与えるものである。
【0020】
なお、閾値電圧とは、ドレイン電流が流れ始めるゲート・ソース間電圧のことである。差動対トランジスタを形成するトランジスタそれぞれの閾値電圧が異なれば、互いのトランジスタを流れる電流も異なるので電流駆動能力に不均衡が生じ、オフセット電圧が発生することになる。
【0021】
(解決すべき課題)
次に本技術の詳細を説明する前に、解決すべき課題について
図2〜
図8を用いて説明する。まず、一般的なオペアンプ回路の構成および動作について説明する。
【0022】
図2はオペアンプ回路の構成例を示す図である。オペアンプ回路100は、入力段となる差動増幅回路101と、出力段となるソース接地回路102とを含む2ステージ(2段増幅)の回路構成になっている。
【0023】
差動増幅回路101は、PMOS(P−Channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタM11〜M13およびNMOS(N−Channel MOS)トランジスタM14、M15を含む。
【0024】
また、ソース接地回路102は、PMOSトランジスタM16、NMOSトランジスタM17、抵抗R11およびコンデンサC11を含む。なお、コンデンサC11は、オペアンプ回路100の入出力間の位相差を補償して、フィードバックループの発振を抑制するための位相補償用コンデンサである。
【0025】
端子および素子間の接続関係を記すと、電源端子VCCは、トランジスタM11のソースと、トランジスタM16のソースと接続する。バイアス端子Biasは、トランジスタM11のゲートと、トランジスタM16のゲートと接続する。
【0026】
トランジスタM11のドレインは、トランジスタM12のソースと、トランジスタM13のソースと接続する。正極側の入力端子IN+は、トランジスタM13のゲートに接続し、負極側の入力端子IN−は、トランジスタM12のゲートに接続する。
【0027】
出力端子OUTは、トランジスタM16のドレイン、抵抗R11の一端およびトランジスタM17のドレインに接続する。抵抗R11の他端は、コンデンサC11の一端に接続し、コンデンサC11の他端は、トランジスタM13のドレイン、トランジスタM15のドレインおよびトランジスタM17のゲートに接続し、トランジスタM17のソースは、GNDに接続する。
【0028】
トランジスタM12のドレインは、トランジスタM14のドレイン、トランジスタM14のゲートおよびトランジスタM15のゲートに接続する。トランジスタM14のソースは、GNDに接続し、トランジスタM15のソースは、GNDに接続する。
【0029】
このようなオペアンプ回路100は、ボルテージフォロアとして使用することができる。ボルテージフォロアとは、入力の電圧と出力の電圧とが等しくなるように動作する回路である。以下、ボルテージフォロアを例に挙げて、オペアンプ回路100の回路系が安定するまでの動作について説明する。
【0030】
図3はボルテージフォロアの構成例を示す図である。ボルテージフォロア110において、
図2の構成と異なる箇所は、入力端子IN−は無く、トランジスタM12のゲートが、出力端子OUT、トランジスタM16のドレイン、抵抗R11の一端およびトランジスタM17のドレインに接続している点である。その他の構成は
図2と同じである。
【0031】
ここで、入力端子IN+に入力する電圧(以下、入力電圧VIN)よりも、出力端子OUTから出力される電圧(以下、出力電圧VOUT)が低い場合について考える(VIN>VOUT)。
【0032】
このとき、差動対のPMOSトランジスタM12、M13のゲート・ソース間電圧においては、トランジスタM13のゲート・ソース間電圧Vgs
(M13)よりも、トランジスタM12のゲート・ソース間電圧Vgs
(M12)の方が高くなり、Vgs
(M12)>Vgs
(M13)となる。
【0033】
また、式(1)からもわかるように、ゲート・ソース間電圧が高いほどドレイン電流が多く流れるので、トランジスタM12を流れる電流I
(M12)は、トランジスタM13を流れる電流I
(M13)よりも大きい(I
(M12)>I
(M13))。
【0034】
一方、トランジスタM12に縦続接続しているトランジスタM14は、ダイオード接続(ドレインとゲートとが接続)しているトランジスタなので、トランジスタM12を流れる電流I
(M12)は、トランジスタM14にも流れる。
【0035】
すなわち、トランジスタM12を流れる電流I
(M12)と、トランジスタM14を流れる電流I
(M14)とは等しい(I
(M12)=I
(M14))。
一方、トランジスタM14、M15のゲートは同電位であり、トランジスタM14、M15のソースは同電位のため、トランジスタM14、M15双方のゲート・ソース間電圧Vgsが等しく、トランジスタM14、M15には等しい電流が流れる。
【0036】
すなわち、トランジスタM14を流れる電流I
(M14)と、トランジスタM15を流れる電流I
(M15)とは等しくなる(I
(M14)=I
(M15))。以上をまとめると、I
(M12)=I
(M14)=I
(M15)>I
(M13)となる。
【0037】
この場合、ノードAに着目すると、ノードAに流れ込む電流I
(M13)よりも、ノードAから流れ出る電流I
(M15)の方が大きくなるという状態になっている。このため、ノードAの電圧(トランジスタM17のゲート電圧)は、低下することになる。
【0038】
ノードAの電圧が低下すると、トランジスタM17のゲートに印加される電圧が低下するので、トランジスタM17に流れる電流I
(M17)は減少する。一方、M16は定電流源として動作している。
【0039】
トランジスタM17に流れる電流I
(M17)が減少することで、出力端子OUTのノードは流れ込む電流よりも流れ出る電流の方が少なくなる。これより、出力端子OUTからの出力電圧VOUTは上昇することになる。
【0040】
出力電圧VOUTが上昇し、出力電圧VOUTと入力電圧VINとが等しくなったところで、差動対トランジスタM12、M13のゲート・ソース間電圧Vgsは双方等しくなる。
【0041】
そして、トランジスタM12に流れる電流I
(M12)と、トランジスタM13に流れる電流I
(M13)とが等しくなって、ノードAの電圧低下が止まり、系は安定する。このとき、(入力電圧VIN)=(出力電圧VOUT)であり、ボルテージフォロア110の本来の機能が正常に動作していることになる。
【0042】
上記ではボルテージフォロア110で説明したが、オペアンプ回路100の機能も同様であって、オペアンプ回路100においても、ノードAの電圧が安定するように、すなわち、トランジスタM12に流れる電流I
(M12)と、トランジスタM13に流れる電流I
(M13)とが等しくなるようにフィードバックがかかる。
【0043】
次にオペアンプ回路100の問題点について、上記と同様にオペアンプ回路100をボルテージフォロアとして動作させた場合を例にして説明する。
図3に示したボルテージフォロア110において、製造バラツキ等の原因によって、差動対トランジスタM12、M13の特性として閾値電圧に違いが生じているとする。
【0044】
(状態A)トランジスタM13の閾値電圧Vth
(M13)がトランジスタM12の閾値電圧Vth
(M12)よりΔVth(>0)[V]高く、入力電圧がΔVthよりも高い場合について。
【0045】
トランジスタM12、M13の基準とする閾値電圧をVth0とすれば、|Vth
(M13)|=|Vth0|+|ΔVth|、|Vth
(M12)|=|Vth0|)となる。この場合、式(1)からもわかるように、閾値電圧の低い方がドレイン電流は多く流れる。
【0046】
したがって、I
(M12)>I
(M13)となり、上述のように、ノードAの電圧は低下するから、出力端子OUTからの出力電圧VOUTは上昇する。
このとき、入力端子IN+に電圧VIN1が入力すると、VOUT=VIN1+ΔVthと表せ、電圧VIN1がΔVthより高い場合、VOUT=VIN1+ΔVth(>0)である。
【0047】
この例では、+ΔVthの正のオフセット電圧が発生している。ただし、状態Aでは、VOUT>0であるから、正常にフィードバックがかかり、差動対トランジスタM12、M13に流れる電流が等しくなって、ノードAの電圧は安定する。
【0048】
(状態B)トランジスタM13の閾値電圧Vth
(M13)がトランジスタM12の閾値電圧Vth
(M12)よりΔVth(>0)[V]高く、入力電圧がΔVthよりも低い場合について。
【0049】
この場合、出力端子OUTからの出力電圧VOUTは上昇する。このとき、入力端子IN+に電圧VIN2が入力すると、VOUT=VIN2+ΔVthと表せ、電圧VIN2がΔVthより低い場合、VOUT=VIN2+ΔVth(>0)である。
【0050】
状態Bの場合も、+ΔVthの正のオフセット電圧が発生し、VOUT>0であるから、正常にフィードバックがかかり、差動対トランジスタM12、M13に流れる電流が等しく、ノードAの電圧は安定している。
【0051】
(状態C)トランジスタM12の閾値電圧Vth
(M12)がトランジスタM13の閾値電圧Vth
(M13)よりΔVth(>0)[V]高く、入力電圧がΔVthよりも高い場合について。
【0052】
トランジスタM12、M13の基準とする閾値電圧をVth0とすれば、|Vth
(M12)|=|Vth0|+|ΔVth|、|Vth
(M13)|=|Vth0|)となる。この場合、I
(M13)>I
(M12)となり、ノードAに流れ込む電流の方が、流れ出る電流よりも大きいのでノードAの電圧は増加し、出力端子OUTからの出力電圧VOUTは低下する。
【0053】
このとき、入力端子IN+に電圧VIN1が入力すると、VOUT=VIN1−ΔVthと表せ、電圧VIN1がΔVthより高い場合は、VOUT=VIN1−ΔVth(>0)である。
【0054】
このように状態Cでは、−ΔVthの負のオフセット電圧が発生するが、VOUT>0であるから、正常にフィードバックがかかり、差動対トランジスタM12、M13に流れる電流が等しく、ノードAの電圧は安定している。
【0055】
(状態D)トランジスタM12の閾値電圧Vth
(M12)がトランジスタM13の閾値電圧Vth
(M13)よりΔVth(>0)[V]高く、入力電圧がΔVthよりも低い場合について。
【0056】
この場合、出力端子OUTからの出力電圧VOUTは低下する。このとき、入力端子IN+に電圧VIN2が入力すると、VOUT=VIN2−ΔVthと表せ、電圧VIN2がΔVthより低い場合は、VOUT=VIN2−ΔVth(<0)である。
【0057】
したがって、VOUT<0となるが、ボルテージフォロア110は、正の片電源回路であるから、負電圧は出力することができない。
このため、フィードバックが正常に機能せず、差動対トランジスタM12、M13をそれぞれ流れる電流は不均衡の状態が続き、トランジスタM13を流れる電流I
(M13)は、トランジスタM12を流れる電流I
(M12)よりも大きくなる(I
(M13)>I
(M12))。
【0058】
すると、トランジスタM13を流れる電流I
(M13)は、トランジスタM15を流れる電流I
(M15)よりも大きくなるので(I
(M13)>I
(M15))、ノードAでは、流れ出る電流(I
(M15))よりも流れ込む電流(I
(M13))の方が大きくなり、この状態が解消されないために、ノードAの電圧が上昇して電源電圧近傍まで上昇してしまう。
【0059】
このような状態Dのときに、入力電圧が急峻に立ち上がって、入力電圧がΔVthよりも高くなると、ノードAの電圧は電源電圧レベルから低下して元に戻ろうとする。このとき、
図3に示すコンデンサC11に電荷が充電されているために放電に時間がかかり、出力電圧の立ち上がりに大きな遅延が発生することになる。
【0060】
次に出力電圧の遅延について
図4〜
図8を用いて説明する。
図4は出力電圧の遅延時間の大小関係を記したテーブルを示す図である。テーブルT1は、上述した状態A〜状態Dの内容をテーブル化してまとめたものであり、入力電圧Lレベルと、オフセット電圧Voffsetとの項目を有する。
【0061】
さらに、入力電圧Lレベルは、“|Voffset|より高い”および“|Voffset|より低い”の属性を有し、オフセット電圧Voffsetは、“正”および“負”の属性を有する。
(状態A)オフセット電圧Voffsetが正であり、入力電圧のLレベルが正のオフセット電圧Voffsetの絶対値より高い場合は、入力電圧に対する出力電圧の遅延時間は小さく遅延小である。
【0062】
(状態B)オフセット電圧Voffsetが正であり、入力電圧のLレベルが正のオフセット電圧Voffsetの絶対値より低い場合は、入力電圧に対する出力電圧の遅延時間は小さく遅延小である。
【0063】
(状態C)オフセット電圧Voffsetが負であり、入力電圧のLレベルが負のオフセット電圧Voffsetの絶対値より高い場合は、入力電圧に対する出力電圧の遅延時間は小さく遅延小である。
【0064】
(状態D)オフセット電圧Voffsetが負であり、入力電圧のLレベルが負のオフセット電圧Voffsetの絶対値より低い場合は、入力電圧に対する出力電圧の遅延時間は大きく遅延大である。
【0065】
図5〜
図8は入力電圧に対する出力電圧の遅延時間を示す図である。縦軸は電圧、横軸は時間である。上述した状態A〜状態Dを図式化したものである。
図5は状態Aでの入出力電圧の波形を示している。オフセット電圧Voffsetが正であり、入力電圧VINのLレベルがオフセット電圧Voffsetの絶対値よりも高い場合である。このとき、出力電圧VOUTは、入力電圧VINの立ち上がりに対して、遅延時間τ1要して立ち上がっている。
【0066】
図6は状態Bでの入出力電圧の波形を示している。オフセット電圧Voffsetが正であり、入力電圧VINのLレベルがオフセット電圧Voffsetの絶対値よりも低い場合である。このとき、出力電圧VOUTは、入力電圧VINの立ち上がりに対して、遅延時間τ2要して立ち上がっている。
【0067】
図7は状態Cでの入出力電圧の波形を示している。オフセット電圧Voffsetが負であり、入力電圧VINのLレベルがオフセット電圧Voffsetの絶対値よりも高い場合である。このとき、出力電圧VOUTは、入力電圧VINの立ち上がりに対して、遅延時間τ3要して立ち上がっている。
【0068】
図8は状態Dでの入出力電圧の波形を示している。オフセット電圧Voffsetが負であり、入力電圧VINのLレベルがオフセット電圧Voffsetの絶対値よりも低い場合である。このとき、出力電圧VOUTは、入力電圧VINの立ち上がりに対して、遅延時間τ4要して立ち上がっている。
【0069】
なお、
図8において、本来は、オフセット電圧の低下の分、出力電圧VOUTはレベルL(−)まで下がるようにフィードバックがかかるが、実際は片電源動作になっているので負電圧は出力できず、区間t0の間の出力は0Vとなる。
【0070】
ここで、遅延時間τ1〜τ4の中で、遅延時間τ4が最も大きな遅延時間になっている。この理由は上述したように、状態Dでは、フィードバックが正常に機能せず、ノードAに流れ込む電流と、流れ出る電流との均衡がとれず、ノードAの電圧が電源電圧まで上昇してしまう。
【0071】
このとき、入力電圧がオフセット電圧よりも高くなると、ノードAの電圧は電源電圧レベルから低下して元に戻ろうとするが、コンデンサC11には電荷が充電されているために放電に時間がかかるので、出力電圧の立ち上がりに大きな遅延が発生してしまうのである。
【0072】
このように、従来のオペアンプ回路では、ある特定の条件下では、出力電圧が立ち上がるまでの遅延時間が大きくなるという問題があった。このような現象が生じると、例えば、高速応答が必要なアプリケーションを駆動する装置に、当該オペアンプ回路が使用されている場合、ある条件では大きな遅延が発生してしまうなどの不都合が生じ、品質および信頼性の低下を招くことになる。
【0073】
本技術はこのような点に鑑みてなされたものであり、オフセット電圧と入力電圧との関係に起因する、出力電圧の遅延時間の短縮化を図った増幅装置およびオフセット電圧補正方法を提供するものである。
【0074】
(第2の実施の形態)
次に本技術の増幅装置について詳しく説明する。
図9、
図10は増幅装置の構成例を示す図である。第2の実施の形態の増幅装置10は、アンプ回路11−1、11−2、基準電圧発生回路12−1、12−2、コンパレータ回路13−1、13−2、スロープ電圧発生回路14、ラッチ回路15、スイッチ回路16、オフセット電圧補正回路17を備える。
【0075】
なお、
図1の構成要素との対応関係は、増幅部1a−1は、アンプ回路11−1の機能に対応し、増幅部1a−2は、アンプ回路11−2の機能に対応する。また、状態検出部1bは、基準電圧発生回路12−1、12−2、コンパレータ回路13−1、13−2、スロープ電圧発生回路14およびラッチ回路15の機能に対応する。さらに、オフセット電圧補正部1cは、スイッチ回路16と、オフセット電圧補正回路17との機能に対応する。
【0076】
一方、基準電圧発生回路12−1と、コンパレータ回路13−1とは、比較部に該当し、スロープ電圧発生回路14、基準電圧発生回路12−2、コンパレータ回路13−2およびラッチ回路15は、スイッチング制御部に該当する。さらに、コンパレータ回路13−2およびラッチ回路15は、スイッチ駆動部に該当する。
【0077】
アンプ回路11−1は、差動対PMOSトランジスタM2、M3、電流源のPMOSトランジスタM1および能動負荷であるNMOSトランジスタM4、M5を含み、入力端子IN+、IN−から入力する2つの入力信号の電圧差を増幅する。
【0078】
アンプ回路11−2は、PMOSトランジスタM6、NMOSトランジスタM7、位相補償用コンデンサC1および抵抗R1を含み、アンプ回路11−1の出力電圧を増幅する。
【0079】
基準電圧発生回路12−1は、PMOSトランジスタM10と、NMOSトランジスタM21とを含み、通常動作時のアンプ回路11−2の入力電圧よりも高い基準電圧値を出力する。
【0080】
コンパレータ回路13−1は、コンパレータU1と、インバータIC1とを含み、アンプ回路11−2の入力電圧と、基準電圧発生回路12−1が出力する基準電圧とを比較する。そして、アンプ回路11−2の入力電圧の方が基準電圧より高い場合は、Lレベルを出力し、それ以外の場合は高電位レベル(以下、Hレベル)を出力する。
【0081】
スロープ電圧発生回路14は、PMOSトランジスタM24、NMOSトランジスタM25およびコンデンサC2を含む。スロープ電圧発生回路14は、コンパレータ回路13−1の出力信号を入力とし、コンパレータ回路13−1の出力電圧がHレベルのときは、0[V]を出力し、Lレベルのときは、時間と共に電圧が0[V]から徐々に上昇するスロープ電圧を発生する。
【0082】
基準電圧発生回路12−2は、抵抗R2、R3、R4を含み、電源電圧を抵抗分圧して得られる基準電圧を発生する。
コンパレータ回路13−2は、コンパレータU2、U3を含み、スロープ電圧発生回路14から出力されるスロープ電圧と、基準電圧発生回路12−2から出力される基準電圧とを比較する。そして、スロープ電圧の方が基準電圧より高い場合は、Hレベルを出力し、それ以外の場合はLレベルを出力する。
【0083】
ラッチ回路15は、SRフリップフロップIC2、IC3を含み、コンパレータ回路13−2の出力をラッチ(保持)する。
スイッチ回路16は、スイッチであるNMOSトランジスタM22、M23を含み、ラッチ回路15の出力がHレベルのときにオンして導通する。
【0084】
オフセット電圧補正回路17は、負荷素子であるNMOSトランジスタM8、M9を含み、スイッチ回路16のGND側に接続され、スイッチ回路16がオンするとアンプ回路11−1のオフセット電圧を正側に移行するように働いて、オフセット電圧を補正する。
【0085】
次に増幅装置10の各素子の接続構成を記す。電源端子VCCは、トランジスタM1のソース、抵抗R2の一端、トランジスタM24のソース、トランジスタM10のソースおよびトランジスタM6のソースに接続する。
【0086】
バイアス端子Biasは、トランジスタM1のゲート、トランジスタM24のゲート、トランジスタM10のゲートおよびトランジスタM6のゲートに接続する。
入力端子IN+は、トランジスタM3のゲートに接続し、入力端子IN−は、トランジスタM2のゲートに接続し、トランジスタM1のドレインは、トランジスタM2、M3のソースに接続する。
【0087】
トランジスタM2のドレインは、トランジスタM4のドレイン、トランジスタM4のゲート、トランジスタM5のゲート、トランジスタM8のゲートおよびトランジスタM9のゲートに接続する。トランジスタM4、M5のソースは、GNDに接続する。
【0088】
トランジスタM3のドレインは、トランジスタM5のドレイン、トランジスタM22のドレイン、トランジスタM23のドレイン、コンパレータU1の入力端子(+)、コンデンサC1の一端およびトランジスタM7のゲートに接続する。
【0089】
トランジスタM22のゲートは、SRフリップフロップIC2の非反転出力端子(Q)に接続し、トランジスタM23のゲートは、SRフリップフロップIC3の非反転出力端子(Q)に接続する。
【0090】
トランジスタM22のソースは、トランジスタM8のドレインに接続し、トランジスタM23のソースは、トランジスタM9のドレインに接続し、トランジスタM8、M9のソースは、GNDに接続する。
【0091】
SRフリップフロップIC2のセット入力端子(S)は、コンパレータU2の出力端子に接続し、SRフリップフロップIC3のセット入力端子(S)は、コンパレータU3の出力端子に接続する。SRフリップフロップIC2、IC3のリセット入力端子(R)は、リセット端子POR(Power On Reset)に接続する。
【0092】
コンパレータU2、U3の入力端子(+)は、トランジスタM24のドレイン、トランジスタM25のドレインおよびコンデンサC2の一端に接続し、コンデンサC2の他端はGNDに接続する。
【0093】
コンパレータU2の入力端子(−)は、抵抗R3の一端と、抵抗R4の一端と接続し、コンパレータU3の入力端子(−)は、抵抗R2の他端と、抵抗R3の他端と接続し、抵抗R4の他端は、GNDに接続する。
【0094】
トランジスタM25のゲートは、インバータIC1の出力端子に接続し、トランジスタM25のソースは、GNDに接続する。インバータIC1の入力端子は、コンパレータU1の出力端子に接続する。
【0095】
コンパレータU1の入力端子(−)は、トランジスタM10のドレイン、トランジスタM21のドレインおよびトランジスタM21のゲートに接続し、トランジスタM21のソースは、GNDに接続する。
【0096】
出力端子OUTは、トランジスタM6のドレイン、トランジスタM7のドレインおよび抵抗R1の一端に接続し、抵抗R1の他端は、コンデンサC1の他端に接続する。トランジスタM7のソースは、GNDに接続する。
【0097】
次に全体動作について説明する。上述したように、負のオフセット電圧が発生し、入力電圧のLレベルが負のオフセット電圧の絶対値よりも低くなる状態Dのときには、ノードBの電圧(トランジスタM7のゲート電圧)が電源電圧近くまで上昇する。
【0098】
本技術では、この現象を利用して、状態Dのときには負のオフセット電圧が正のオフセット電圧になるように自動的に補正することで、状態Dの場合に生じる遅延時間の増大を抑制して、遅延時間を短縮化させる。
【0099】
その場合、まず、差動対トランジスタの一方の側の能動負荷に対して、能動負荷の電流駆動能力を増加させるような負荷素子を1つまたは複数個接続する。
図9の例では、差動対トランジスタM3に接続している能動負荷であるトランジスタM5に対して並列に、スイッチ回路16内のトランジスタM22、M23を接続する。
【0100】
そして、トランジスタM5の電流駆動能力を増加させるために、トランジスタM8、M9の2つを、スイッチ回路16内のトランジスタM22、M23に接続している。
ここで、状態Dのとき(負のオフセット電圧が生じて、入力電圧のLレベルが負のオフセット電圧の絶対値よりも低くなるとき)、ノードBの電圧が上昇する。この場合、ノードBの電圧がノードCの基準電圧を超えると、それをトリガにして、トランジスタM3に接続する能動負荷の電流駆動能力を増加させる負荷素子であるトランジスタM8、M9を1つ1つオンさせていくような制御を行う。
【0101】
トランジスタM3に接続する能動負荷の電流駆動能力が増加して、負のオフセット電圧が正のオフセット電圧になった時点で、ノードBの電圧は通常の値に戻るため、トランジスタM3に接続する能動負荷の電流駆動能力の増加も停止する。
【0102】
また、トランジスタM3に接続する能動負荷の電流駆動能力を増加させるための信号は、ラッチ回路15によりラッチしているので、電源電圧が印加されている間は本状態が保持されることになる。
【0103】
このように、一度でも状態Dになれば、オフセット電圧補正の制御が働いて、負のオフセット電圧が正のオフセット電圧に補正される。負から正へオフセット電圧を補正することは、ノードBの電圧を低下させて、ノードBの電圧が電源電圧まで上昇してしまうことを抑制することになる。このため、コンデンサに充電される電荷も減少し、放電時間が早まるので、遅延時間を短縮化することが可能になる。
【0104】
次にタイミングチャートも参照しながら動作についてさらに詳しく説明する。
図11は増幅装置の動作を示すタイミングチャートである。縦軸は電圧、横軸は時間である。入力電圧、オフセット電圧および
図9、
図10に示すノードB〜Iにおける電圧の時間変化を示している。
【0105】
グラフg1は、入力電圧の波形を示し、グラフg2は、ノードB、Cの電圧波形を示している。グラフg3は、ノードDの電圧波形を示し、グラフg4は、ノードE、F、Gの電圧波形を示す。さらに、グラフg5は、ノードH、Iの電圧波形を示し、グラフg6は、オフセット電圧Voffsetの波形を示す。
【0106】
〔1〕まず、増幅装置10において、負のオフセット電圧が生じ、入力電圧のLレベルが負のオフセット電圧の絶対値よりも低くなる状態Dになったとする。例えば、負のオフセット電圧が生じているときに、入力電圧が0[V]になったとする(時刻t1)。このとき、ノードBの電圧が電源電圧レベルまで上昇し始める(時刻t1)。
【0107】
なお、ノードBは、アンプ回路11−2のソース接地回路を構成するトランジスタM7のゲートと、コンデンサC1の一端との接続点であり、このノードBに印加される電圧の上昇度合いにもとづいて、状態Dの発生が検出されることになる。
【0108】
〔2〕コンパレータ回路13−1内のコンパレータU1の入力端子(+)には、ノードBの電圧が印加し、コンパレータU1の入力端子(−)には、ノードCの電圧が印加している。ノードCの電圧(所定電圧値)は、コンパレータU1で比較するための基準電圧となり、ノードBの電圧よりも若干高めの電圧に設定してある。
【0109】
なお、ノードCの電圧をノードBの電圧より高めに設定するには、トランジスタM6、M10を同一サイズとし、トランジスタM7の電流駆動能力よりもトランジスタM21の電流駆動能力を小さくすればよい。
【0110】
例えば、トランジスタM21のアスペクト比をトランジスタM7のそれよりも小さくすれば、トランジスタM11の電流駆動能力は、トランジスタM7の電流駆動能力よりも小さくなる。
【0111】
〔3〕状態Dになって、ノードBの電圧が上昇し、ノードCの電圧よりも高くなると(時刻t2)、コンパレータU1はHレベルを出力するので、コンパレータ回路13−1の出力であるノードDの電圧は、Lレベル(検出信号)となる(時刻t2)。
【0112】
〔4〕ノードDの電圧がLレベルになると、スロープ電圧発生回路14が駆動する。スロープ電圧発生回路14の動作としては、まず、コンパレータ回路13−1の出力がLレベルになると、スロープ電圧発生回路14内のトランジスタM25がオフする。
【0113】
また、スロープ電圧発生回路14内のトランジスタM24は、定電流源として動作しているため、トランジスタM25がオフになると、スロープ電圧発生回路14内のコンデンサC2に電流が流れて電荷が滞留し始める。したがって、スロープ電圧発生回路14の出力であるノードEの電圧は、一定の傾きで上昇し始める(時刻t2)。
【0114】
なお、スロープ電圧は、入力電圧がHレベルの場合は0ボルトを出力し、入力電圧がLレベルの場合は時間経過と共に0ボルトから徐々に上昇する電圧である。
〔5〕コンパレータ回路13−2内のコンパレータU2の入力端子(+)には、ノードEのスロープ電圧が印加し、コンパレータU2の入力端子(−)には、ノードGの電圧(第1の基準電圧)が印加している。
【0115】
ノードGの電圧は、コンパレータU2で比較するための基準電圧となり、電源電圧を抵抗R2、R3、R4で分圧した一定電圧である。電源電圧をVcc、ノードGの出力電圧をVgとすれば、Vg=(R4・Vcc)/(R2+R3+R4)である。
【0116】
〔6〕ここで、第1のスイッチング制御として、ノードEのスロープ電圧が上昇して、ノードGの電圧よりも高くなると(時刻t3)、コンパレータ回路13−2内のコンパレータU2はHレベル(所定レベル信号)を出力する。
【0117】
〔7〕コンパレータU2の出力は、ラッチ回路15内のSRフリップフロップIC2のセット端子(S)に接続している。したがって、SRフリップフロップIC2のセット端子(S)にHレベルが入力すると、Hレベルがセットされ、非反転出力端子(Q)からHレベルの信号がラッチ出力する。
【0118】
すなわち、ノードEの電圧がノードGの基準電圧を超えると、ノードHの電圧がHレベルになる(時刻t3)。
なお、SRフリップフロップIC2のリセット端子(R)には、パワーオンリセット端子(POR)が接続しているので、SRフリップフロップIC2は、電源投入時やマニュアル操作時にパワーオンリセットされて、初期状態はリセット状態になる。
【0119】
〔8〕ノードHがHレベルになると、スイッチ回路16内のトランジスタM22がオンする。
〔9〕トランジスタM22がオンすると、トランジスタM3からトランジスタM5へ流れていた電流がトランジスタM22を介して、トランジスタM8(第1の負荷素子)にも流れる。したがって、差動対トランジスタM3に接続されている能動素子は、トランジスタM5の他にトランジスタM8が追加される形となり、トランジスタM3に接続する能動負荷の電流駆動能力が高まることになる。
【0120】
〔10〕トランジスタM3に接続する能動素子が増加し、トランジスタM3のGND側の電流駆動能力が高まると、PMOSトランジスタM3のソースからドレインへ流れる電流量が増え、トランジスタM3のドレイン電圧は低下する(または、トランジスタM3に接続する能動負荷の電流駆動能力が上がることになるので、トランジスタM5のドレイン電圧は低下する)。
【0121】
トランジスタM3のドレイン電圧は、ノードBの電圧であるから、ノードBの電圧は下降することになり、出力電圧VOUTは上昇し始めるので、オフセット電圧が正側に補正されていく(時刻t3)。
【0122】
〔11〕オフセット電圧補正回路17内の1段目のトランジスタM8が駆動しても、オフセット電圧が正にならないとする。この場合、スロープ電圧発生回路14の出力であるノードEのスロープ電圧は上昇し続けている。
【0123】
〔12〕コンパレータ回路13−2内のコンパレータU3の入力端子(+)には、ノードEのスロープ電圧が印加し、コンパレータU3の入力端子(−)には、ノードFの電圧(第2の基準電圧)が印加している。
【0124】
ノードFの電圧は、コンパレータU3で比較するための基準電圧となり、電源電圧を抵抗R2、R3、R4で分圧した一定電圧である。ノードFの出力電圧をVfとすれば、Vf=((R3+R4)・Vcc)/(R2+R3+R4)である(Vf>Vgである)。
【0125】
〔13〕ここで、第2のスイッチング制御として、ノードEのスロープ電圧が上昇して、ノードFの電圧よりも高くなると(時刻t4)、コンパレータ回路13−2内のコンパレータU3は、Hレベル(所定レベル信号)を出力する。
【0126】
〔14〕コンパレータU3の出力は、ラッチ回路15内のSRフリップフロップIC3のセット端子(S)に接続している。したがって、SRフリップフロップIC3のセット端子(S)にHレベルが入力すると、Hレベルがセットされ、非反転出力端子(Q)からHレベルの信号がラッチ出力する。
【0127】
すなわち、ノードEのスロープ電圧がノードFの基準電圧を超えると、ノードIの電圧がHレベルになる(時刻t4)。
なお、SRフリップフロップIC3も、電源投入時やマニュアル操作時にパワーオンリセットされて、初期状態はリセット状態である。
【0128】
〔15〕ノードIがHレベルになると、スイッチ回路16内のトランジスタM23がオンする。
〔16〕トランジスタM23がオンすると、トランジスタM3からトランジスタM5、M8へ流れていた電流が、トランジスタM23を介してトランジスタM9(第2の負荷素子)にも流れる。
【0129】
したがって、差動対トランジスタM3に接続されている能動素子は、トランジスタM5、M8の他にトランジスタM9がさらに追加される形となり、トランジスタM3に接続される能動負荷の電流駆動能力が高まることになる。
【0130】
〔17〕トランジスタM3に接続する能動素子がさらに増加し、トランジスタM3のGND側の電流駆動能力がさらに高まると、PMOSトランジスタM3のドレイン電圧はさらに下がる。トランジスタM3のドレイン電圧は、ノードBの電圧であるから、ノードBの電圧は下降することになり、出力電圧VOUTはさらに上昇し、オフセット電圧が正側に上昇するように補正されていく(時刻t4)。
【0131】
〔18〕オフセット電圧が正になった時点で、上昇していたノードBの電圧は下降し始め、通常状態に戻り始める(時刻t4)。
〔19〕ノードBの電圧が通常状態になると、ノードBの電圧よりもノードCの電圧の方が高くなる(時刻t5)。したがって、コンパレータ回路13−1の出力であるノードDは、Hレベルとなり、スロープ電圧発生回路14の駆動を停止する。
【0132】
すなわち、スロープ電圧発生回路14内のトランジスタM25はオンするので、トランジスタM24を流れる電流はトランジスタM25側に流れ、コンデンサC2の電荷滞留がなくなり、ノードEの電圧が下降する(時刻t5)。
【0133】
以上説明したように、増幅装置10によれば、負のオフセット電圧が発生し、かつ入力電圧のLレベルが負のオフセット電圧の絶対値より低くなる状態を検出すると、負のオフセット電圧を正のオフセット電圧に補正する構成とした。
【0134】
これにより、オフセット電圧と入力電圧との関係に起因する、出力電圧の遅延時間の短縮化を図ることが可能になる。また、特定の状態にのみ遅延時間が増大するという現象の発生を無くすことができるので、遅延時間のばらつきを抑制することも可能になり、品質および信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0135】
また、上記のように、増幅装置10では、負のオフセット電圧を段階的に上昇させて、正のオフセット電圧に移行させている。上記の例では、オフセット電圧補正を2段で構成した例を示したが、一般化するとオフセット電圧補正をN段(N=1、2、3、4、…)で構成することができる。なお、N=1でもよいが、Nは2以上が好ましい。負のオフセット電圧を段階的に上昇させる理由は、オフセット電圧が製造ばらつきなどにより製品ごと異なる場合があるためである。
【0136】
オフセット電圧補正を複数段で構成することで、細かいステップ幅で制御することができるので、負のオフセット電圧から正のオフセット電圧へ微細に精度よく補正することが可能になる。よって、製造ばらつきなどにより製品間でオフセット電圧がばらついても補正された正のオフセット電圧の製品間のばらつきを低減することができる。
【0137】
さらにまた、増幅装置10から負のオフセット電圧が出力されるようにあらかじめ設定しておいてから、負のオフセット電圧を段階的に上昇させて正のオフセット電圧に補正してもよい。これにより、さらに、製品間のオフセット電圧のばらつき低減することが可能になる。
【0138】
なお、負のオフセット電圧が出力されるようにあらかじめ設定する方法としては、例えば、M4のゲート幅W/ゲート長Lを、M5のゲート幅W/ゲート長Lよりも大きくしておく方法がある。
【0139】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、増幅装置10の一部である、コンパレータ回路13−1の出力によってスイッチ回路16を駆動するまでのスイッチング制御部を、ディジタル回路のスイッチング駆動回路で置き換えたものである。
【0140】
図12はスイッチング駆動回路の構成例を示す図である。なお、
図12の例では、オフセット電圧補正を4段で構成した例を示している。スイッチング駆動回路20は、シフトレジスタを構成するフリップフロップFF1〜FF4と、発振器21とを含む。
【0141】
また、スイッチ回路16aは、NMOSトランジスタM16−1〜M16−4を含み、オフセット電圧補正回路17aは、NMOSトランジスタM17−1〜M17−4を含む。
【0142】
接続関係を記すと、フリップフロップFF1〜FF4のクロック端子には、発振器21の出力が接続する。フリップフロップFF1の入力端子(D)には、
図10のコンパレータ回路13−1の出力(インバータIC1の出力)を反転した信号が接続する。
【0143】
フリップフロップFF1の出力端子(Q)は、フリップフロップFF2の入力端子(D)と、トランジスタM16−1のゲートと接続する。フリップフロップFF2の出力端子(Q)は、フリップフロップFF3の入力端子(D)と、トランジスタM16−2のゲートと接続する。
【0144】
フリップフロップFF3の出力端子(Q)は、フリップフロップFF4の入力端子(D)と、トランジスタM16−3のゲートと接続する。フリップフロップFF4の出力端子(Q)は、トランジスタM16−4のゲートに接続する。
【0145】
トランジスタM16−1〜M16−4の各ドレインは、
図10のノードBに接続する。トランジスタM16−1のソースは、トランジスタM17−1のドレインに接続し、トランジスタM16−2のソースは、トランジスタM17−2のドレインに接続する。
【0146】
トランジスタM16−3のソースは、トランジスタM17−3のドレインに接続し、トランジスタM16−4のソースは、トランジスタM17−4のドレインに接続する。トランジスタM17−1〜M17−4の各ゲートは、
図9のノードJに接続し、トランジスタM17−1〜M17−4の各ソースは、GNDに接続する。
【0147】
図13はスイッチング駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。クロックCKは、発振器21の出力信号である。信号D1〜D4(レベルシフト信号)はそれぞれ、フリップフロップFF1〜FF4の出力信号である。イネーブル信号ENは、コンパレータ回路13−1の出力信号である。
【0148】
〔S0〕オフセット電圧が負で、入力電圧のLレベルが負のオフセット電圧の絶対値よりも低くなる状態(D)になると、イネーブル信号ENがHレベルになる。
〔S1〕フリップフロップFF1は、クロックCKの立ち上がりで、Hレベルのイネーブル信号ENをラッチして、Hレベルの信号D1を出力する。信号D1がHレベルになるので、スイッチ回路16a内のトランジスタM16−1がオンする。
【0149】
すると、
図9のトランジスタM3のドレイン電流は、
図9のトランジスタM5の他に、オフセット電圧補正回路17a内のトランジスタM17−1にも流れる。これにより、上述したようにノードBの電圧は下降し始めるので、オフセット電圧が正側に上昇するように補正される。
【0150】
〔S2〕フリップフロップFF2は、クロックCKの立ち上がりで、フリップフロップFF1からのHレベルの出力信号D1をラッチして、Hレベルの信号D2を出力する。信号D2がHレベルになるので、スイッチ回路16a内のトランジスタM16−2がオンする。
【0151】
すると、
図9のトランジスタM3のドレイン電流は、
図9のトランジスタM5と、オフセット電圧補正回路17a内のトランジスタM17−1との他に、オフセット電圧補正回路17a内のトランジスタM17−2にも流れる。これにより、上述したようにノードBの電圧はさらに下降し始めるので、オフセット電圧の正側補正がステップS1の状態からさらに促進される。
【0152】
〔S3〕フリップフロップFF3は、クロックCKの立ち上がりで、フリップフロップFF2からのHレベルの出力信号D2をラッチして、Hレベルの信号D3を出力する。信号D3がHレベルになるので、スイッチ回路16a内のトランジスタM16−3がオンする。
【0153】
すると、
図9のトランジスタM3のドレイン電流は、
図9のトランジスタM5と、オフセット電圧補正回路17a内のトランジスタM17−1、M17−2との他に、オフセット電圧補正回路17a内のトランジスタM17−3にも流れる。これにより、オフセット電圧の正側補正がステップS2の状態からさらに促進される。
【0154】
〔S4〕フリップフロップFF4は、クロックCKの立ち上がりで、フリップフロップFF3からのHレベルの出力信号D3をラッチして、Hレベルの信号D4を出力する。信号D4がHレベルになるので、スイッチ回路16a内のトランジスタM16−4がオンする。
【0155】
すると、
図9のトランジスタM3のドレイン電流は、
図9のトランジスタM5と、オフセット電圧補正回路17a内のトランジスタM17−1〜M17−3との他に、オフセット電圧補正回路17a内のトランジスタM17−4にも流れる。これにより、オフセット電圧の正側補正がステップS3の状態からさらに促進される。
【0156】
オフセット電圧が正になり、イネーブル信号ENがLになると同時にクロックCKの動作を停止(L固定)させる。
このように、増幅装置10の一部に対してディジタル回路を使用して構成することもできる。なお、上記のスイッチング駆動回路20は、シフトレジスタで構成した例を示したが、カウンタで構成してもよいし、PLD(Programmable Logic Device)等を利用することも可能である。
【0157】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。