(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520181
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
H02M7/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-27098(P2015-27098)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-152630(P2016-152630A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】中西 芳徳
【審査官】
白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−271954(JP,A)
【文献】
実開昭52−098310(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00〜 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される交流電圧を整流し、整流電圧を生成する整流回路と、
前記整流電圧が第1の所定電位未満で、前記整流回路からの前記整流電圧を出力基準電圧生成回路に供給する制御回路と、
前記整流電圧が供給され、前記整流電圧を第2の所定電位以下に制限する制限素子を有し、前記整流電圧を前記第2の所定電位以下に制限した出力基準電圧を生成する前記出力基準電圧生成回路と、
前記出力基準電圧が供給され、前記出力基準電圧を増幅した出力電圧を生成する出力回路と、
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記出力基準電圧生成回路は、
前記制御回路からの前記整流電圧が供給され、前記整流電圧を充電する充電素子をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記制限素子は、前記制御回路からの前記整流電圧が前記第2の所定電位以上でオンの状態となることで、前記出力基準電圧を前記第2の所定電位以下に制限することを特徴とする請求項1又は2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記出力回路は、
ベースが、第2バイポーラトランジスタのエミッタに接続され、コレクタが、前記整流回路の出力と前記第2バイポーラトランジスタのコレクタとに接続され、エミッタが、前記出力回路の出力である、npn型の第1バイポーラトランジスタと、
ベースが、前記出力基準電圧生成回路に接続され、コレクタが、前記整流回路の出力と前記第1バイポーラトランジスタのコレクタとに接続され、エミッタが、前記第1バイポーラトランジスタのベースに接続された、npn型の前記第2バイポーラトランジスタと、
を有し、
前記第2バイポーラトランジスタのベースに、前記出力基準電圧が出力されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項5】
前記制限素子は、一端が、第1抵抗を介して、前記整流回路の出力に接続され、他端が、接地電位に接続され、
前記充電素子は、一端が、第2抵抗を介して、前記制限素子の一端に接続され、他端が、接地電位に接続され、
前記第2抵抗と前記充電素子の一端とが前記出力回路に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項6】
前記制限素子は、第1ツェナーダイオードであり、一端がカソードであり、他端がアノードであることを特徴とする請求項5に記載の電源回路。
【請求項7】
前記充電素子は、コンデンサであることを特徴とする請求項5又は6に記載の電源回路。
【請求項8】
前記制御回路は、
カソードが、第3抵抗と第4抵抗とを介して、前記整流回路の出力に接続され、アノードが、接地電位に接続され、前記整流回路からの前記整流電圧が前記第1の所定電位以上でオンの状態となる第2ツェナーダイオードと、
ベースが、前記第3抵抗と前記第2ツェナーダイオードのカソードとの間に接続され、エミッタが、前記第3抵抗と前記第4抵抗との間に接続され、コレクタが、第5抵抗を介して、接地電位に接続された、pnp型の第3バイポーラトランジスタと、
ベースが、前記第3バイポーラトランジスタと前記第5抵抗との間に接続され、エミッタが、接地電位に接続され、コレクタが、前記第1抵抗と前記制限素子との間に接続された、npn型の第4バイポーラトランジスタと、
を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される交流電圧に基づいて直流電圧を生成する電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アンプ装置等のオーディオ機器において、入力される交流電圧に基づいて、直流電圧を生成する電源回路が使用されている。電源回路において、高い交流電圧から、直接、低い直流電圧を生成すると、その電位差分と電流との積が損失となる。このため、
図7に示すように、交流電圧が全波整流された整流電圧の低い部分(斜線部分)を取り出し、目的とする低い直流電圧を生成する電源回路がある(例えば、特許文献1参照。)。
図8は、従来の電源回路の回路構成を示す図である。電源回路101は、ダイオードD101、D102、D104、ツェナーダイオードD103、バイポーラトランジスタQ101、Q102、抵抗R101〜R105、R107、コンデンサC101を備える。
【0003】
ダイオードD101、D102は、交流電圧源V101、V102に接続されている。ダイオードD101、D102は、整流回路102を構成する。ツェナーダイオードD103は、抵抗R107を介して、カソードが、ダイオードD101、D102のカソード(整流回路102の出力)に接続されている。ツェナーダイオードD103は、アノードが接地されている。抵抗R101は、一端が、ダイオードD101、D102のカソード(整流回路102の出力)に接続されている。抵抗R101は、他端が、抵抗R102の一端に接続されている。抵抗R102は、一端が、抵抗R101の他端に接続されている。抵抗R102は、他端が、接地されている。抵抗R101、R102は、整流回路102からの整流電圧を分圧する。
【0004】
バイポーラトランジスタQ101は、pnp型、すなわち、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以下(ローレベル)でオンの状態となるバイポーラトランジスタである。バイポーラトランジスタQ101は、ベースが、ダイオードD104を介して、抵抗R101と抵抗R102との間に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ101は、エミッタが、抵抗R107とツェナーダイオードD103のカソードとの間に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ101は、コレクタが、抵抗R105を介して、接地されている。
【0005】
バイポーラトランジスタQ102は、npn型、すなわち、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上(ハイレベル)でオンの状態となるバイポーラトランジスタである。バイポーラトランジスタQ101は、ベースが、抵抗R104を介して、バイポーラトランジスタQ101のコレクタと抵抗R105との間に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ102は、エミッタが、コンデンサC101の一端に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ102は、コレクタが、ダイオードD101、D102のカソード(整流回路102の出力)に接続されている。
【0006】
コンデンサC101は、一端が、バイポーラトランジスタQ102のエミッタに接続されている。また、コンデンサC101は、他端が、接地されている。コンデンサC101は、平滑用のコンデンサである。負荷R106は、一端が、バイポーラトランジスタQ102のエミッタに接続されている。負荷R106は、他端が、接地されている。
【0007】
このような電源回路101において、整流回路102は、交流電圧源V101、V102からの交流電圧を全波整流する。全波整流された整流電圧を抵抗R101、R102で分圧した電圧(閾値電圧)の電位が、ツェナーダイオードD103のツェナー電圧(限度電圧)未満である場合、バイポーラトランジスタQ101は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以下であるため、オンの状態である。従って、バイポーラトランジスタQ102のベースには、ツェナーダイオードD103のツェナー電圧からバイポーラトランジスタQ101の飽和電圧を引いた電圧(出力基準電圧)が供給される。これにより、バイポーラトランジスタQ102は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上であるため、オンの状態である。ここで、バイポーラトランジスタQ102は、エミッタフォロワとなっている。このため、バイポーラトランジスタQ102のエミッタの電圧は、ベースの電圧、すなわち、整流電圧を抵抗R107、R105で分圧した電圧(出力基準電圧)に応じた電圧となる。コンデンサC101は、バイポーラトランジスタQ102のエミッタの電圧を平滑し、直流電圧(出力電圧)としている。
【0008】
なお、全波整流された整流電圧を抵抗R101、R102で分圧した電圧(閾値電圧)の電位が、ツェナーダイオードD103のツェナー電圧(限度電圧)以上の場合、ツェナーダイオードD103がオンの状態となる。このため、バイポーラトランジスタQ101は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以下とならず、オフの状態である。また、バイポーラトランジスタQ102は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上とならず、オフの状態である。従って、負荷R106には、直流電圧(出力電圧)が供給されない。
【0009】
図9は、従来の電源回路による出力電圧等を示したグラフである。縦軸は、電圧[V]、横軸は、時間[msec]を示している。
図9(a)は、整流電圧V(in)、閾値電圧V(det)、限度電圧V(ref)を示している。
図9(a)に示すように、閾値電圧V(det)は、整流電圧V(in)の半分の値となっている。
図9(b)は、出力基準電圧V(vol)を示している。
図9(c)は、出力電圧V(out)を示している。
図9(a)に示すように、閾値電圧V(det)が限度電圧V(ref)未満である場合に、
図9(b)に示すように、出力基準電圧が生成されている。ここで、出力基準電圧が生成されている時間、すなわち、電圧を取り出している時間を、「流通角」という。整流電圧を分圧する抵抗R101、R102の比率を変更し、バイポーラトランジスタQ101がオン、オフする電圧を調整することで、流通角を大きくすることができる。また、ツェナーダイオードD103のツェナー電圧、すなわち、限度電圧を高くすることで、流通角を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−186494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図10は、従来の電源回路において、流通角を変化させた場合の出力基準電圧を示したグラフである。
図10に示すように、流通角を大きくすると、出力基準電圧(波高値)が高くなる。ここで、負荷が軽いと、出力基準電圧が高くなりすぎ、また、負荷が重いと、出力基準電圧のリップルが大きくなる。従って、従来の電源回路では、出力電圧を生成するための出力基準電圧のリップルが大きいという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、出力電圧を生成するための出力基準電圧のリップルを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明の電源回路は、入力される交流電圧を整流し、整流電圧を生成する整流回路と、前記整流電圧が第1の所定電位未満で、
前記整流回路からの前記整流電圧を
出力基準電圧生成回路に供給する制御回路と、前記整流電圧が供給され、前記整流電圧を第2の所定電位以下に制限する制限素子を有し、前記整流電圧を前記第2の所定電位
以下に制限した出力基準電圧を生成する
前記出力基準電圧生成回路と、前記出力基準電圧が供給され、前記出力基準電圧
を増幅した出力電圧を生成する出力回路と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、出力基準電圧生成回路は、制限素子により整流電圧を第2の所定電位
以下に制限し、整流電圧を第2の所定電位未満に制限した出力基準電圧を生成する。従って、出力基準電圧は、第2の所定電位
以下に制限され、出力基準電圧が高くなりすぎることがないため、出力基準電圧のリップルが低減される。
【0015】
第2の発明の電源回路は、第1の発明の電源回路において、前記出力基準電圧生成回路は、
前記制御回路からの前記整流電圧が供給され、前記整流電圧を充電する充電素子をさらに
有することを特徴とする。
【0017】
第3の発明の電源回路は、第1又は第2の発明の電源回路において、前記制限素子は、
前記制御回路からの前記整流電圧が前記第2の所定電位以上でオンの状態となることで、前記出力基準電圧を前記第2の所定電位
以下に制限することを特徴とする。
【0018】
第4の発明の電源回路は、第1〜第3の発明のいずれかの電源回路において、前記出力回路は、ベースが、第2バイポーラトランジスタのエミッタに接続され、コレクタが、前記整流回路の出力と前記第2バイポーラトランジスタのコレクタとに接続され、エミッタが、前記出力回路の出力である、npn型の第1バイポーラトランジスタと、ベースが、前記出力基準電圧生成回路に接続され、コレクタが、前記整流回路の出力と前記第1バイポーラトランジスタのコレクタとに接続され、エミッタが、前記第1バイポーラトランジスタのベースに接続された、npn型の前記第2バイポーラトランジスタと、を有
し、前記第2バイポーラトランジスタのベースに、前記出力基準電圧が出力されることを特徴とする。
【0019】
本発明では、第1バイポーラトランジスタと第2バイポーラトランジスタとが、ダーリントン接続されている。また、第2バイポーラトランジスタは、ベースが、出力基準電圧生成回路に接続されている。また、第1バイポーラトランジスタは、エミッタが、出力回路の出力である。従って、出力電圧に対する、出力基準電圧、すなわち、第2バイポーラトランジスタのベースの電流の割合を小さくすることができるため、出力基準電圧のリップルがさらに低減される。
【0020】
第5の発明の電源回路は、第
2の発明
の電源回路において、前記制限素子は、一端が、第1抵抗を介して、前記整流回路の出力に接続され、他端が、接地電位に接続され、前記充電素子は、一端が、第2抵抗を介して、前記制限素子の一端に接続され、他端が、接地電位に接続され、前記第2抵抗と前記充電素子の一端とが前記出力回路に接続されていることを特徴とする。
【0021】
第6の発明の電源回路は、第5の発明の電源回路において、前記制限素子は、第1ツェナーダイオードであり、一端がカソードであり、他端がアノードであることを特徴とする。
【0022】
第7の発明の電源回路は、第5又は第6の発明のいずれかの電源回路において、前記充電素子は、コンデンサであることを特徴とする。
【0023】
第8の発明の電源回路は、第5〜第7の発明のいずれかの電源回路において、前記制御回路は、カソードが、第3抵抗と第4抵抗とを介して、前記整流回路の出力に接続され、アノードが、接地電位に接続され、
前記整流回路からの前記整流電圧が前記第1の所定電位以上でオンの状態となる第2ツェナーダイオードと、ベースが、前記第3抵抗と前記第2ツェナーダイオードのカソードとの間に接続され、エミッタが、前記第3抵抗と前記第4抵抗との間に接続され、コレクタが、第5抵抗を介して、接地電位に接続された、pnp型の第3バイポーラトランジスタと、ベースが、前記第3バイポーラトランジスタと前記第5抵抗との間に接続され、エミッタが、接地電位に接続され、コレクタが、前記第1抵抗と前記制限素子との間に接続された、npn型の第4バイポーラトランジスタと、を有することを特徴とする。
【0024】
本発明では、第2ツェナーダイオードは、整流電圧が第1の所定電位未満でオフの状態である。第2ツェナーダイオードがオフである場合、第3バイポーラトランジスタは、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以下とならないため、オフの状態である。第4バイポーラトランジスタは、ベースが、第3バイポーラトランジスタのコレクタと第5抵抗との間に接続されているため、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上とならず、オフの状態である。従って、制御回路は、整流回路からの整流電圧を、第1抵抗を介して、出力基準電圧生成回路に供給する。
【0025】
また、第2ツェナーダイオードは、整流電圧が第1の所定電位以上でオンの状態である。第3バイポーラトランジスタは、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以下となり、オンの状態となる。第4バイポーラトランジスタは、ベースが、第3バイポーラトランジスタのコレクタと第5抵抗との間に接続されているため、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上となり、オンの状態である。従って、整流回路からの整流電圧が、第1抵抗を介して、第4バイポーラトランジスタに流れるため、整流電圧は、出力基準電圧生成回路に供給されない。すなわち、制御回路は、整流回路からの整流電圧を出力基準電圧生成回路に供給しない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、出力電圧を生成するための出力基準電圧のリップルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る電源回路の回路構成を示す図である。
【
図2】ツェナーダイオードによって第2の所定電位未満に制限された出力基準電圧を示すグラフである。
【
図3】整流電圧にコンデンサに充電された電圧が加えられた出力基準電圧を示すグラフである。
【
図4】整流電圧にコンデンサに充電された電圧が加えられ、且つ、第2の所定電位未満に制限された出力基準電圧を示すグラフである。
【
図5】電源回路による出力電圧等を示したグラフである。
【
図6】従来の電源回路による出力電圧等を示したグラフである。
【
図9】従来の電源回路による出力電圧等を示したグラフである。
【
図10】従来の電源回路において、流通角を変化させた場合の出力基準電圧を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電源回路の回路構成を示す図である。電源回路1は、入力される交流電圧に基づいて直流電圧を生成し、負荷R6に供給する。
図1に示すように、電源回路1は、整流回路2、制御回路3、出力基準電圧生成回路4、出力回路5を備える。
【0029】
(整流回路)
整流回路2は、入力される交流電圧を整流し、整流電圧を生成する。整流回路2は、ダイオードD1、D2を有する。ダイオードD1は、アノードが、交流電圧源V1に接続されている。ダイオードD2は、アノードが、交流電圧源V2に接続されている。ダイオードD1、D2のカソードが、整流回路2の出力となっている。
【0030】
(制御回路)
制御回路3は、整流電圧が第1の所定電位未満で整流電圧を供給する。制御回路3は、ツェナーダイオードD3、バイポーラトランジスタQ1、Q2、抵抗R2〜R4を有する。ツェナーダイオードD3(第2ツェナーダイオード)は、カソードが、抵抗R2(第3抵抗)と抵抗R3(第4抵抗)とを介して、整流回路2の出力に接続されている。また、ツェナーダイオードD3は、アノードが、接地電位に接続されている。
【0031】
バイポーラトランジスタQ1(第3バイポーラトランジスタ)は、pnp型、すなわち、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定の電位以下(ローレベル)でオンの状態となるバイポーラトランジスタである。バイポーラトランジスタQ1は、ベースが、抵抗R3の他端と、ツェナーダイオードD3のカソードと、の間に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ1は、エミッタが、抵抗R2の他端と、抵抗R3の一端と、の間に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ1は、抵抗R4(第5抵抗)を介して、接地電位に接続されている。
【0032】
バイポーラトランジスタQ2(第4バイポーラトランジスタ)は、npn型、すなわち、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定の電位以上(ハイレベル)でオンの状態となるバイポーラトランジスタである。バイポーラトランジスタQ2は、ベースが、バイポーラトランジスタQ1のコレクタと、抵抗R4の一端と、の間(バイポーラトランジスタQ1の出力)に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ2は、エミッタが、接地電位に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ2は、コレクタが、抵抗R5(第1抵抗)と、後述する出力基準電圧生成回路4のツェナーダイオードD4(第1ツェナーダイオード)のカソードと、の間に接続されている。
【0033】
抵抗R2は、一端が、整流回路2の出力に接続されている。また、抵抗R2は、他端が、抵抗R3の一端に接続されている。抵抗R3は、一端が、抵抗R2の他端に接続されている。また、抵抗R3は、他端が、ツェナーダイオードD3のカソードに接続されている。抵抗R4は、一端が、バイポーラトランジスタQ1のコレクタに接続されている。また、抵抗R4は、他端が、接地されている。
【0034】
(出力基準電圧生成回路)
出力基準電圧生成回路4は、整流電圧を第2の所定電位
以下に制限した出力基準電圧を生成する。また、出力基準電圧生成回路4は、整流電圧にコンデンサC1に充電された電圧を加えた出力基準電圧として出力する。出力基準電圧生成回路4は、ツェナーダイオードD4、コンデンサC1を有する。ツェナーダイオードD4(制限素子、第1ツェナーダイオード)は、整流電圧が供給され、整流電圧を第2の所定電位以下に制限する。ツェナーダイオードD4は、カソードが、抵抗R5(第1抵抗)を介して、整流回路2の出力に続されている。また、ツェナーダイオードD4は、アノードが、接地電位に接続されている。ツェナーダイオードD4は、整流電圧が供給され、整流電圧が第2の所定電位、すなわち、ツェナー電圧以上である場合に、オンの状態となることで、出力基準電圧を第2の所定電位
以下に制限する。
【0035】
図2は、ツェナーダイオードD4によって第2の所定電位
以下に制限された出力基準電圧を示すグラフである。ツェナーダイオードD4がない従来の電源回路では、流通角を大きくすると、破線で示すように、出力基準電圧が高くなる。本実施形態では、上述のように、整流電圧が第2の所定電位、すなわち、ツェナー電圧以上である場合に、ツェナーダイオードD4がオンの状態となることで、出力基準電圧は、第2の所定電位
以下に制限される。従って、出力基準電圧は、流通角を広げても、第2の所定電位
以下に制限され、第2の所定電位
よりも大きくなることはない。
【0036】
コンデンサC1(充電素子)は、ツェナーダイオードD4で制限された整流電圧が供給され、整流電圧を充電する。コンデンサC1は、一端が、抵抗R7(第2抵抗)を介して、ツェナーダイオードD4のカソードに接続されている。また、コンデンサC1は、他端が、接地電位に接続されている。ツェナーダイオードD4とコンデンサC1とは、並列に接続されている。抵抗R7とコンデンサC1の一端とは、後述する出力回路5に接続されている。
【0037】
図3は、整流電圧にコンデンサC1に充電された電圧が加えられた出力基準電圧を示すグラフである。コンデンサC1がない従来の電源回路では、流通角を大きくすると、破線で示すように、リップルが大きくなる。本実施形態では、上述のように、整流電圧にコンデンサC1に充電された電圧が加えられることにより、出力基準電圧の電位は、コンデンサC1によってホールドされる。
【0038】
図4は、整流電圧にコンデンサC1に充電された電圧が加えられ、且つ、第2の所定電位
以下に制限された出力基準電圧を示すグラフである。図示するように、従来に比べて、出力基準電圧のリップルが低減されている。
【0039】
(出力回路)
出力回路5は、出力基準電圧が供給され、出力基準電圧に基づいて、出力電圧を生成する。出力回路5は、バイポーラトランジスタQ3、Q4を有する。バイポーラトランジスタQ3(第1バイポーラトランジスタ)は、npn型のバイポーラトランジスタである。バイポーラトランジスタQ3は、ベースが、バイポーラトランジスタQ4のベースに接続されている。また、バイポーラトランジスタQ3は、コレクタが、整流回路2の出力とバイポーラトランジスタQ4のコレクタとに接続されている。また、バイポーラトランジスタQ4は、エミッタが、出力回路5の出力である。
【0040】
バイポーラトランジスタQ4(第2バイポーラトランジスタ)は、npn型のバイポーラトランジスタである。バイポーラトランジスタQ4は、ベースが、出力基準電圧生成回路4に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ4は、コレクタが、整流回路2の出力とバイポーラトランジスタQ3のコレクタとに接続されている。また、バイポーラトランジスタQ4は、エミッタが、バイポーラトランジスタQ3のベースに接続されている。このように、バイポーラトランジスタQ3とバイポーラトランジスタQ4とは、ダーリントン接続されている。
【0041】
(出力電圧を負荷に供給する場合の電源回路の動作)
整流回路2からの整流電圧が、第1の所定電位、すなわち、ツェナーダイオードD3のツェナー電圧未満である場合、ツェナーダイオードD3は、オフの状態である。ツェナーダイオードD3がオフの状態である場合、バイポーラトランジスタQ1は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以下とならないため、オフの状態である。バイポーラトランジスタQ2は、ベースが、バイポーラトランジスタQ1のコレクタと抵抗R4との間に接続されているため、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上とならず、オフの状態である。従って、制御回路3は、整流回路2からの整流電圧を、抵抗R5を介して、出力基準電圧生成回路4に供給する。
【0042】
出力基準電圧生成回路4は、整流電圧が供給されると、整流電圧にコンデンサC1に充電された電圧を加え、且つ、第2の所定電位
以下に制限した出力基準電圧を生成する。出力回路5において、バイポーラトランジスタQ4は、出力基準電圧によって、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上となる。また、バイポーラトランジスタQ4が能動の状態となることにより、バイポーラトランジスタQ3は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上となり、能動の状態となる。出力回路5の出力は、バイポーラトランジスタQ3のエミッタであるから、出力回路5は、バイポーラトランジスタQ4のベースの電圧、すなわち、出力基準電圧に応じた出力電圧を生成する。
【0043】
(出力電圧を負荷に供給しない場合の電源回路の動作)
整流回路2からの整流電圧が、第1の所定電位、すなわち、ツェナーダイオードD3のツェナー電圧以上である場合、ツェナーダイオードD3は、オンの状態である。ツェナーダイオードD3がオンの状態である場合、バイポーラトランジスタQ1は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以下となり、オンの状態である。バイポーラトランジスタQ2は、ベースが、バイポーラトランジスタQ1のコレクタと抵抗R4との間に接続されているため、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上となり、オンの状態である。従って、整流回路2からの整流電圧が、抵抗R5を介して、バイポーラトランジスタQ2に流れるため、整流電圧は、出力基準電圧生成回路4に供給されない。すなわち、制御回路3は、整流回路2からの整流電圧を出力基準電圧生成回路4に供給しない。
【0044】
出力基準電圧生成回路4は、整流電圧が供給されない場合、出力基準電圧を生成しない。このため、出力回路5において、バイポーラトランジスタQ4は、出力基準電圧によって、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上とならず、オフの状態となる。また、バイポーラトランジスタQ4がオフの状態となることにより、バイポーラトランジスタQ3は、ベースの電圧が、エミッタの電圧に対して、所定電位以上とならず、オフの状態となる。従って、出力回路5は、出力電圧を生成しない。
【0045】
図5は、電源回路1による出力電圧等を示したグラフである。縦軸は、電圧[V]、横軸は、時間[msec]を示している。負荷は、10kΩである。
図5(a)は、整流電圧V(in)、ツェナーダイオードD4のツェナー電圧V(ref)を示している。
図5(b)は、出力基準電圧V(vol)を示している。
図5(c)は、出力電圧V(out)を示している。なお、出力電圧V(out)は、平滑前の電圧である。
【0046】
図6は、従来の電源回路101による出力電圧等を示したグラフである。縦軸は、電圧[V]、横軸は、時間[msec]を示している。負荷は、10kΩである。
図6(a)は、整流電圧V(in)、閾値電圧V(det)、限度電圧V(ref)を示している。
図6(b)は、出力基準電圧V(vol)を示している。
図6(c)は、出力電圧V(out)を示している。なお、出力電圧V(out)は、平滑前の電圧である。
【0047】
図5及び
図6に示すように、電源回路1による出力基準電圧、及び、出力電圧のリップルは、従来の電源回路101による出力基準電圧、及び、出力電圧のリップルと比べて、低減されている。電源回路1による出力電圧のリップルは、750mVである。また、従来の電源回路101による出力電圧のリップルは、950mvである。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、出力基準電圧生成回路4は、ツェナーダイオードD4により整流電圧を第2の所定電位
以下に制限し、整流電圧を第2の所定電位
以下に制限した出力基準電圧を生成する。従って、出力基準電圧は、第2の所定電位
以下に制限され、出力基準電圧が高くなりすぎることがないため、出力基準電圧のリップルが低減される。
【0049】
また、本実施形態では、出力基準電圧は、ツェナーダイオードD4により第2の所定電位
以下に制限され、且つ、整流電圧にコンデンサC1に充電された電圧が加えられることで、リップルがさらに低減される。
【0050】
また、本実施形態では、バイポーラトランジスタQ3とバイポーラトランジスタQ4とが、ダーリントン接続されている。また、バイポーラトランジスタQ4は、ベースが、出力基準電圧生成回路4に接続されている。また、バイポーラトランジスタQ3は、エミッタが、出力回路5の出力である。従って、出力電圧に対する、出力基準電圧、すなわち、バイポーラトランジスタQ4のベースの電流の割合を小さくすることができるため、出力基準電圧のリップルがさらに低減される。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0052】
上述の実施形態においては、出力基準電圧生成回路4は、ツェナーダイオードD4、コンデンサC1を有している。これに限らず、出力基準電圧生成回路4は、ツェナーダイオードD4のみであってもよい。出力基準電圧生成回路4が、ツェナーダイオードD4のみで構成されていても、ツェナーダイオードD4により、出力基準電圧は、第2の所定電位
以下に制限される(
図2参照)。このため、出力基準電圧のリップルが低減されるという
効果を奏することができる。
【0053】
上述の実施形態においては、出力回路5は、バイポーラトランジスタQ3、Q4を有している。これに限らず、出力回路5は、バイポーラトランジスタQ3のみであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、入力される交流電圧に基づいて直流電圧を生成する電源回路に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0055】
1 電源回路
2 整流回路
3 制御回路
4 出力基準電圧生成回路
5 出力回路
C1 コンデンサ(充電素子)
D1 ダイオード
D2 ダイオード
D3 ツェナーダイオード(第2ツェナーダイオード)
D4 ツェナーダイオード(制限素子、第1ツェナーダイオード)
Q1 バイポーラトランジスタ(第3バイポーラトランジスタ)
Q2 バイポーラトランジスタ(第4バイポーラトランジスタ)
Q3 バイポーラトランジスタ(第1バイポーラトランジスタ)
Q4 バイポーラトランジスタ(第2バイポーラトランジスタ)
R2 抵抗(第3抵抗)
R3 抵抗(第4抵抗)
R4 抵抗(第5抵抗)
R5 抵抗(第1抵抗)
R6 負荷
R7 抵抗(第2抵抗)