【文献】
梅田 実 他,積層有機感光体における電荷発生層/電荷輸送層界面の構造,電子写真学会誌,日本,電子写真学会,1996年,35巻、第2号,p.110−115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0014】
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、「感光体」と称することがある)は、導電性基体を備え、導電性基体上に単層型の感光層を有する正帯電有機感光体(以下、「単層型感光体」と称することがある)である。
そして、単層型の感光層(以下、単に「感光層」と称することがある)は、結着樹脂と、電荷発生材料と、正孔輸送材料と、電子輸送材料と、を含んでいる。さらに、電荷発生材料は、感光層中の含有量が0.5質量%以上2.0質量%未満であり、膜厚方向における分布が下記(1)式を満たすように構成されている。
式(1) 30≦a/b
式(1)中、aは、前記感光層の膜厚の表面側から1/3までの領域における単位断面積当たりの電荷発生材料の個数、bは、前記感光層の膜厚の導電性基体側から2/3までの領域における単位断面積当たりの電荷発生材料の個数を表す。ただし、bは0である場合を含む。
なお、単層型の感光層とは、電荷発生能と共に、正孔輸送性及び電子輸送性を持つ感光層である。
【0015】
本実施形態に係る電子写真感光体において、電荷発生材料の「感光層中の含有量」とは、感光層全体に対する含有量を示す。
「感光層の膜厚の表面側から1/3までの領域」とは、感光層の膜厚において、感光層の最表面側から導電性基体に向かって、膜厚の1/3までの領域のことを示す。
「感光層の膜厚の導電性基体側から2/3までの領域」とは、感光層の膜厚において、導電性基体側から最表面側に向かって、膜厚の2/3までの領域のことを示す。つまり、感光層の最表面側から導電性基体に向かって、膜厚の1/3までの領域を除く領域のことを示す。
「単位断面積当たりの電荷発生材料の個数」とは、感光層の膜厚の断面を観察したときの断面に存在する電荷発生材料の個数を、平方マイクロメートル(μm
2)当たりの個数として表したものである。
【0016】
ここで、従来、電子写真感光体としては、製造コスト等の観点から単層型感光体が望ましい。
単層型感光体は、その単層型の感光層内に、電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する構成であり、帯電の機能と光感度発現の機能とを同一層内で行う。一方、積層型の感光層を有する有機感光体(以下「積層型感光体」と称する)は帯電の機能と光感度発現の機能とを機能別に特化させることができる。そのため、単層型感光体は、原理上、帯電性および光感度の点で、積層型感光体と同等以上の特性を得ることは難しい。
【0017】
これに対して、本実施形態に係る電子写真感光体では、上記構成、つまり、感光層の膜厚方向における電荷発生材料の分布を制御することにより、高帯電性を有し、かつ高感度の電子写真感光体が得られる。この理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0018】
単層型感光体において、帯電性は暗条件において、感光層内で余分な電荷(熱励起キャリア)を発生させないことが望ましい。感光層内で熱励起キャリアの発生を抑制するには、電荷発生材料の含有量を低減することで確保しやすくなる。
【0019】
光感度を得るためには、十分な電荷発生量と、正孔輸送能と、電子輸送能が必要である。例えば、電荷発生材料の含有量を増加させると(例えば、2.0質量%以上)、光感度は向上しやすい。しかしながら、電荷発生材料の含有量を増加させすぎると帯電性が低下しやすくなるため、電荷発生材料の含有量は少ないほうが望ましい。一方、電荷発生材料の含有量を低減させすぎると、光感度は低下しやすくなる。例えば、電荷発生材料の感光層中の含有量が0.5質量%以上2.0質量%未満である場合には、高帯電性と高感度とを両立した感光体は得られ難い。
【0020】
一般に知られている最も電子輸送能の高い電子輸送材料の輸送能は、正孔輸送材料の正孔輸送能の数十分の一であるため、感光層において、正孔輸送能よりも電子輸送能の方が低い。そのため、単層型感光体において、光感度の性能をより向上させるには、電子の輸送距離をより短くすることがよいと考えられる。
単層型感光体において、感光層に光が照射されると、電荷発生材料は光を吸収して電荷を発生するため、感光層の表面側の領域で、より電荷が発生しやすい。そして、電荷が発生しやすくなると、電子の輸送距離を短くし得る。電子の輸送距離を短くすることは、電子輸送能が向上し、光感度が向上し得ると考えられる。
【0021】
そのため、本実施形態に係る電子写真感光体では、単層型の感光層の表面側の領域に、電荷発生材料を偏在させることで、電荷発生材料の光感度発現の機能をより有効に発揮し得るようになる。すなわち、単層型の感光層に含有する電荷発生材料のうち、感光層の表面側から1/3までの領域における含有量を増加させることにより、単層型の感光層全体の電荷発生材料の含有量が0.5質量%以上2.0質量%未満であっても、高帯電性を有し、かつ高感度の電子写真感光体が得られると推測される。
なお、本実施形態に係る電子写真感光体により、高帯電性を有し、かつ高感度の電子写真感光体が得られるため、長期の使用においても電気的特性の変化が抑制され得る。
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る電子写真感光体を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体10の一部の断面を概略的に示している。
図1に示した電子写真感光体10は、例えば、導電性基体3を備え、導電性基体3上に、下引層1及び単層型の感光層2がこの順で設けられて構成されている。
なお、下引層1は、必要に応じて設けられる層である。即ち、単層型の感光層2は、導電性基体3上に直接設けられていてもよく、下引層1を介して設けられてもよい。
また、必要に応じてその他の層を設けてもよい。具体的には、例えば、必要に応じて、単層型の感光層2上に保護層を設けてもよい。
【0023】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0024】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が10
13Ωcm未満であることをいう。
【0025】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0026】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0027】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0028】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0029】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0030】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0031】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0032】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0033】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10
2Ωcm以上10
11Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0034】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m
2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0035】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0036】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0037】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0038】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0041】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0042】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0043】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0044】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0045】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0046】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0047】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0048】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0049】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0050】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0051】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0052】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0053】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0055】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0056】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0057】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0058】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0059】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0060】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0061】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0062】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0063】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0064】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0065】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0066】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0067】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0068】
(単層型の感光層)
本実施形態の単層型の感光層は、単層型の感光層に含有する電荷発生材料のうち、感光層の膜厚方向の表面側の領域に偏在している。そして、感光層の膜厚方向における電荷発生材料の分布を表す式が、30≦a/bの関係を満たすように構成されている。
【0069】
ここで、本実施形態の単層型の感光層において、電荷発生材料の存在量が多い表面側の領域と、電荷発生材料の存在量が少ない導電性基体側の領域との境界には、明確な界面が形成されるものではない。また、bが0である場合、電荷発生材料が存在する表面側の領域と、電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域とが存在することになる。この場合にも同様に、両者の領域の境界には、明確な界面が形成されるものではない。
【0070】
なお、一般的に知られている積層型の感光層には、電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷発生材料を含有しない電荷輸送層とが形成されており、両層の境界には明確な界面が形成されている。さらに、電荷発生層に用いる結着樹脂と電荷輸送層に用いる結着樹脂とは異なる場合が多く、両層の区別は明確である。
一方で、本実施形態の単層型の感光層は、上記のとおり、bが0である場合でも、電荷発生材料が存在する表面側の領域と、電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域との境界が曖昧である。したがって、本実施形態の単層型の感光層と、従来の積層型の感光層とは、明確に区別されるものである。
【0071】
単層型の感光層は、30≦a/bの関係を満足するように構成されていれば、その態様は特に限定されるものではない。例えば、以下のような態様が挙げられる。
bが0である場合、感光層の表面側から1/4までの領域にのみ電荷発生材料が存在し、感光層の導電性基体側から膜厚の3/4までの領域には電荷発生材料が存在しない態様;感光層の表面側から1/3までの領域にのみ電荷発生材料が存在し、感光層の導電性基体側から膜厚の2/3までの領域には電荷発生材料が存在しない態様;感光層の表面側から1/2までの領域にのみ電荷発生材料が存在し、感光層の導電性基体側から膜厚の1/2までの領域には電荷発生材料が存在しない態様;などが挙げられる。
bが0を超える場合(つまり、感光層全体に電荷発生材料が存在する場合)、感光層の表面側から1/2までの領域には電荷発生材料の存在量が多く、感光層の導電性基体側から膜厚の1/2までの領域には、表面側から1/2までの領域に比べて、電荷発生材料の存在量が少ない態様;感光層の表面側から1/3までの領域には電荷発生材料の存在量が多く、感光層の導電性基体側から膜厚の2/3までの領域には、表面側から1/3までの領域に比べて、電荷発生材料の存在量が少ない態様;感光層の表面側から1/3までの領域には電荷発生材料の存在量が多く、感光層の膜厚方向において、導電性基体側に向かって、段階的に電荷発生材料の存在量が減少するように形成した態様;などが挙げられる。
これらの態様の中でも、電荷発生材料の光感度発現の機能をより有効に発揮させる点で、bが0である場合の態様が好ましい。
【0072】
感光層の膜厚方向における電荷発生材料の分布を表す式であるa/bは、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた画像から画像処理を行うことにより、aおよびbを測定し、この測定結果から、a/bを算出する。
具体的には、測定対象となる感光体から感光層を剥がし取り、小片を切り出してエポキシ樹脂に包埋・固化させ、ミクロトームにより切片を調製して、aおよびbの測定用試料とする。そして、SEMの装置としてJSM−6700F/JED−2300F(日本電子社製)を用い、上記測定用試料を3箇所観察して、aおよびbを測定する(3箇所平均値でa、b算出)。
なお、上記のSEM画像の観察は、感光層の導電性基体の表面と平行な方向の距離として、40μmの範囲で行う。
【0073】
単層型の感光層の膜厚は、望ましくは5μm以上60μm以下、より望ましくは10μm以上50μm以下の範囲に設定される。
【0074】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
これらの結着樹脂の中でも、特に、感光層の成膜性の観点から、例えば、粘度平均分子量30000以上80000以下のポリカーボネート樹脂がよい。
感光層の全固形分に対する結着樹脂の含有量は、35質量%以上60質量%以下、望ましくは20質量%以上35質量%以下である。
【0075】
−電荷発生材料−
電荷発生材料としては、特に制限はないが、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、感光体の高感度化の観点から、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよく、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がさらに望ましい。
【0076】
特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、例えば、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより優れた分散性が得られる観点から望ましい。このように、分光吸収スペクトルの最大ピーク波長を従来のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料よりも短波長側にシフトさせることにより、顔料粒子の結晶配列が好適に制御された微細なヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料となり、電子写真感光体の材料として用いた場合に、優れた分散性と、十分な感度、帯電性及び暗減衰特性とが得られ易くなる。
【0077】
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが望ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが望ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより望ましく、一方、BET比表面積が45m
2/g以上であることが望ましく、50m
2/g以上であることがより望ましく、55m
2/g以上120m
2/g以下であることが特に望ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
ここで、平均粒径が0.20μmより大きい場合、又は比表面積が45m
2/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成される傾向がある。さらに、分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それにより画質欠陥を生じ易くなることがある。
【0078】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが望ましく、1.0μm以下であることがより望ましく、より望ましくは0.3μm以下である。かかる最大粒径が上記範囲を超えると、黒点が発生しやすい傾向にある。
【0079】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、感光体が蛍光灯などに暴露されたことに起因する濃度ムラを抑制する観点から、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積が45m
2/g以上であることが望ましい。
【0080】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、及び28.3°に回折ピークを有するV型であることが望ましい。
【0081】
また、クロロガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、電子写真感光体材料として優れた感度が得られる、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.5°、及び28.3°に回折ピークを有するものであることが望ましい。
クロロガリウムフタロシアニン顔料の好適な分光吸収スペクトルの最大ピーク波長、平均粒径、最大粒径、及び比表面積は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と同様である。
【0082】
電荷発生材料の感光層中の含有量は、感光層全体に対して、0.5質量%以上2.0質量%未満である。電荷発生材料の含有量をこの範囲とすることで、高帯電性を有し、かつ高感度の感光体が得られる。また、電荷発生材料の感光層中の含有量は、感光層全体に対して、0.7質量%以上1.7質量%以下であることが望ましく、0.9質量%以上1.5質量%以下であることがより望ましい。
【0083】
また、電荷発生材料の含有量は、結着樹脂に対して、例えば、0.05質量%以上30質量%以下がよく、望ましくは1質量%以上15質量%以下、より望ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0084】
−正孔輸送材料−
正孔輸送材料としては、特に制限はないが、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体;1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体;トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物;N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体;4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体;2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体;6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体;p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体;エナミン誘導体;N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等;上記した化合物で構成される基を主鎖又は側鎖に有する重合体;などが挙げられる。これらの正孔輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
これらの中でも、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0087】
構造式(a−1)中、Ar
T1、Ar
T2、及びAr
T3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、−C
6H
4−C(R
T4)=C(R
T5)(R
T6)、又は−C
6H
4−CH=CH−CH=C(R
T7)(R
T8)を示す。R
T4、R
T5、R
T6、R
T7、及びR
T8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0089】
構造式(a−2)中、R
T91及びR
T92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。R
T101、R
T102、R
T111及びR
T112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、−C(R
T12)=C(R
T13)(R
T14)、又は−CH=CH−CH=C(R
T15)(R
T16)を示し、R
T12、R
T13、R
T14、R
T15及びR
T16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0090】
ここで、構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C
6H
4−CH=CH−CH=C(R
T7)(R
T8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R
T15)(R
T16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0091】
構造式(a−1)で示される化合物、及び構造式(a−2)で示される化合物の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0095】
正孔輸送材料の含有量は、例えば、結着樹脂に対して10質量%以上98質量%以下がよく、望ましくは60質量%以上95質量%以下、より望ましくは70質量%以上90質量%以下である。
【0096】
−電子輸送材料−
電子輸送材料としては、特に制限はないが、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、9−ジシアノメチレン−9−フルオレノン−4−カルボン酸オクチル、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’−ジ−tert−ペンチル-ジナフトキノン等のジナフトキノン化合物;3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルジフェノキノン、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;上記した化合物で構成される基を主鎖又は側鎖に有する重合体;などが挙げられる。これらの電子輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
これらの中でも、下記構造式(b−1)で示されるフルオレノン化合物、下記構造式(b−2)で示されるジフェノキノン化合物、及び下記構造式(b−3)で示されるジナフトキノン化合物を用いることが好ましい。
【0099】
構造式(b−1)中、R
111、及びR
112は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R
113は、アルキル基、−L
114−O−R
115、アリール基、又はアラルキル基を表す。n1、及びn2は各々独立に0以上3以下の整数を示す。L
114は、アルキレン基を示し、R
115は、アルキル基を示す。
【0100】
構造式(b−1)中、R
111、及びR
112が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0101】
構造式(b−1)中、R
111、及びR
112が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下(好ましくは1以上3以下)のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0102】
構造式(b−1)中、R
111、及びR
112が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下(好ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0103】
構造式(b−1)中、R
111、及びR
112が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
構造式(b−1)中、R
111、及びR
112が示すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニル基が望ましい。
【0104】
構造式(b−1)中、R
113が示すアルキル基としては、例えば、炭素数1以上10以下(好ましくは炭素数5以上10以下)の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上10以下(好ましくは炭素数5以上10以下)の分岐状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1以上10以下の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
炭素数3以上10以下の分岐状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
【0105】
構造式(b−1)中、R
113が示す−L
114−O−R
115で示される基としては、L
114は、アルキレン基を示し、R
115は、アルキル基を示す。
L
114が示すアルキレン基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上12以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基等が挙げられる。
R
115が示すアルキル基としては、上記R
111、及びR
112が示すアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0106】
構造式(b−1)中、R
113が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。
なお、構造式(b−1)中、R
113がアリール基である場合、アリール基がさらにアルキル基で置換されていることが、溶解性の観点で好ましい。アリール基に置換されるアルキル基としては、R
111、及びR
112が示すアルキル基と同様の基が挙げられる。また、さらにアルキル基で置換されたアリール基の具体例としては、上記メチルフェニル基及びジメチルフェニル基のほか、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0107】
構造式(b−1)中、R
113が示すアラルキル基としては、−R
116−Arで示される基が挙げられる。但し、R
116は、アルキレン基を示す、Arは、アリール基を示す。
R
116が示すアルキレン基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上12以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基等が挙げられる。
Arが示すアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基エチルフェニル基等が挙げられる。
【0108】
構造式(b−1)中、R
113が示すアラルキル基として具体的には、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0109】
構造式(b−1)で表される電子輸送材料として、高感度化等の観点から、特に、R
113が示すアラルキル基、又は炭素数5以上10以下の分岐状のアルキル基を示す電子輸送材料が好ましく、R
111、及びR
112が各々独立に、ハロゲン原子、又はアルキル基を示し、R
113がアラルキル基、又は炭素数5以上10以下の分岐状のアルキル基を示す電子輸送材料が好ましい。また、同様の観点で、−CO(=O)−R
113は、2位または4位の位置に置換していることがさらに好ましく、4位の位置に置換していることが特に好ましい。
【0110】
以下、構造式(b−1)で表される電子輸送材料の例示化合物を示すが、これに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(b−1−番号)と以下表記する。具体的には、例えば、「例示化合物(b−1−15)」と以下表記する。
【0112】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
「番号−」は、フルオレン環の番号の位置に置換する置換基を表す。例えば、「1−Cl」は、フルオレン環の1位に置換するCl(塩素原子)を、4−CO(=O)−R
113は、フルオレン環の4位に置換する−CO(=O)−R
113を、それぞれ表す。
また、「1〜3−」は、1位〜3位のすべての位置に置換基が置換していることを、「5−8−」は5位〜8位のすべての位置に置換基が置換していることを、それぞれ表す。
「Ph」はフェニル基を表す。
【0114】
構造式(b−2)中、R
221、R
222、R
223、及びR
224は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示す。
【0115】
構造式(b−2)中、R
221、R
222、R
223、及びR
224が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0116】
構造式(b−2)中、R
221、R
222、R
223、及びR
224が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0117】
構造式(b−2)中、R
221、R
222、R
223、及びR
224が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下(好ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0118】
構造式(b−2)中、R
221、R
222、R
223、及びR
224が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
構造式(b−2)中、R
221、R
222、R
223、及びR
224が示すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0119】
以下、構造式(b−2)で表される電子輸送材料の例示化合物を示すが、これに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(b−2−番号)と以下表記する。具体的には、例えば、「例示化合物(b−2−1)」と以下表記する。
【0121】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
「t−Bu」は、tert−ブチル基を、「i−Pr」はイソプロピル基を、「Me」はメチル基を、「MeO」はメトキシ基を、「Ph」はフェニル基を、それぞれ表す。
【0123】
構造式(b−3)中、R
331、R
332、R
333、及びR
334は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示す。
【0124】
構造式(b−3)中、R
331、R
332、R
333、及びR
334が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0125】
構造式(b−3)中、R
331、R
332、R
333、及びR
334が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上6以下(好ましくは1以上5以下)のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
【0126】
構造式(b−3)中、R
331、R
332、R
333、及びR
334が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下(好ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0127】
構造式(b−3)中、R
331、R
332、R
333、及びR
334が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
構造式(b−3)中、R
331、R
332、R
333、及びR
334が示すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0128】
以下、構造式(b−3)で表される電子輸送材料の例示化合物を示すが、これに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(b−3−番号)と以下表記する。具体的には、例えば、「例示化合物(b−3−1)」と以下表記する。
【0130】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
「t−Pen」は、tert−ペンチル基を、「t−Bu」は、tert−ブチル基を、「i−Pr」はイソプロピル基を、「Me」はメチル基を、「MeO」はメトキシ基を、「Ph」はフェニル基を、それぞれ表す。
【0131】
電子輸送材料の含有量は、例えば、結着樹脂に対して4質量%以上70質量%以下がよく、望ましくは8質量%以上50質量%以下、より望ましくは10質量%以上30質量%以下である。
なお、電子輸送材料は、高感度化の観点から、電荷発生材料が存在する領域に含有していることが好ましい。また、感光層中に、電荷発生材料の存在が無い領域を形成する場合、この領域に電子輸送材料を含有させてもよいが、電子輸送材料を含有させなくてもよい。つまり、電荷発生材料を含む領域には、結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を含み、電荷発生材料を含まない領域には、結着樹脂、及び正孔輸送材料を含む(すなわち、電荷発生材料と電子輸送材料とを含まない)感光層を形成してもよい。
【0132】
−正孔輸送材料と電子輸送材料との質量比−
正孔輸送材料と電子輸送材料との比率は、質量比(正孔輸送材料/電子輸送材料)で、50/50以上90/10以下が望ましく、より望ましくは60/40以上80/20以下である。
【0133】
−その他添加剤−
単層型の感光層には、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の周知のその他添加剤を含んでいてもよい。また、単層型の感光層が表面層となる場合、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル等を含んでいてもよい。
【0134】
(単層型の感光層の形成)
本実施形態の単層型の感光層を形成する方法について説明する。
単層型の感光層を形成する方法は、特に限定されない。例えば、導電性基体上に、又は、下引層を形成する場合は、導電性基体上に設けられた下引層上に、単層型の感光層を形成する。一例としては、電荷発生材料を含有する感光層形成用塗布液を準備する工程、導電性基体上に、感光層形成用塗布液を塗布して塗膜を形成する工程、塗膜を加熱乾燥して単層型の感光層を形成する感光層形成工程を含む方法が挙げられる。
また、感光層形成用塗布液を準備する工程には、電荷発生材料を含有する第1の感光層形成用塗布液を準備する工程、第1の感光層形成用塗布液よりも少ない量で電荷発生材料を含有する(含有しない場合も含む)第2の感光層形成用塗布液を準備する工程を含む。
さらに、塗膜形成工程には、導電性基体上に、第2の感光層形成用塗布液および第1の感光層塗布液を塗布して、第2の塗膜と第1の塗膜とを形成する塗膜形成工程を含む。より具体的には、導電性基体上に、第2の感光層形成用塗布液を塗布して第2の塗膜を形成する第2の塗膜形成工程と、第2の塗膜上に、第1の感光層塗布液を塗布して第1の塗膜を形成する第1の塗膜形成工程を含む。
以下、単層型の感光層を形成する具体的な方法について説明する。
【0135】
−感光層形成用塗布液準備工程−
まず、感光層形成用塗布液を準備する。例えば、電荷発生材料等の各成分を溶剤に加えた第1の感光層形成用塗布液と、第1の感光層形成用塗布液に含有する量よりも少ない量で電荷発生材料を含有する第2の感光層形成用塗布液とを準備する。ただし、感光層の導電性基体側に電荷発生材料を存在しない領域を形成させる場合、第2の感光層形成用塗布液には、電荷発生材料を含有しない塗布液を準備する。また、感光層の膜厚方向に対して、電荷発生材料の含有量を段階的に減少させて傾斜を持たせる場合には、電荷発生材料の含有量が、第1の感光層形成用塗布液よりも少なく、第2の感光層形成用塗布液よりも多い、第3の感光層形成用塗布液を準備してもよい。
なお、例えば、第2の感光層形成用塗布液に電荷発生材料を含まない場合、結着樹脂と、電子輸送材料と、正孔輸送材料とを含む第2の感光層形成用塗布液を調整してもよく、結着樹脂と正孔輸送材料とを含む第2の感光層形成用塗布液(つまり、電荷発生材料と電子輸送材料とを含まない塗布液)を準備してもよい。
【0136】
各感光層形成用塗布液は、上記成分を溶剤に加えて調製される。
上記の各感光層形成用塗布液に用いる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン、メチルエチルケトン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類;2-メチルペンタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素;等の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独又は2種以上混合して用いる。
【0137】
また、感光層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機;攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機;等が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式;高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式;などが挙げられる。
【0138】
−塗膜形成工程−
次に、導電性基体上に感光層形成用塗布液を塗布して塗膜を形成する。例えば、導電性基体上に、第2の感光層形成用塗布液を塗布して第2の塗膜を形成した後、第2の塗膜上に、第1の感光層形成用塗布液を塗布して第1の塗膜を形成する。
なお、上記の第3の感光層形成用塗布液を用いて第3の塗膜を形成する場合には、第1の塗膜を形成する前に、第2の塗膜上に、上記の第3の感光層塗布液を塗布して第3の塗膜を形成する第3の塗膜形成工程を含む。この場合、感光層の膜厚方向に対して、第1の塗膜から第2の塗膜に向かって、電荷発生材料の含有量が段階的に減少する塗膜が形成され得る。
【0139】
第2の感光層形成用塗布液を塗布する方法、及び第1の感光層形成用塗布液を塗布する方法としては特に限定されない。例えば、インクジェット塗布法、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、リング塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の方法が挙げられる。感光層の形成効率を考慮すると、第2の感光層形成用塗布液を塗布する方法と、第1の感光層形成用塗布液を塗布する方法とは、同じ塗布方法を採用することが望ましい。
【0140】
ただし、例えば、浸漬塗布法による成膜方法では、第2の塗膜上に、第1の感光層形成用塗布液を塗布する際に、第1の感光層形成用塗布液と第2の塗膜成分との全体が混ざり合うことがある。その結果として、感光層の表面側に電荷発生材料が偏在される構成の感光層が形成され難くなる場合がある。
そこで、感光層の表面側に電荷発生材料を偏在する感光層を形成するためには、第1の感光層形成用塗布液と第2の塗膜成分との全体が混ざり合わない塗布方法を採用することが望ましい。このような塗布方法としては、例えば、インクジェット塗布法、スプレー塗布法などの方法が挙げられる。これらの塗布方法のうち、感光層を効率的に形成する観点から、インクジェット塗布法を採用することが好ましい。
なお、これらの方法によって、電荷発生材料の存在量が少ない導電性基体側の領域との境界には、明確な界面が存在しない単層型の感光層が形成され得る。
【0141】
次に、単層型の感光層の形成方法として好ましい塗布方法の一例である、インクジェット塗布法について説明する。
図2及び
図3はインクジェット塗布法によって塗膜を形成する方法の一例を概略的に示している。
図2(B)に示すように、液滴吐出部200を導電性基体206の軸に対して傾斜させて設置している。そして、液滴吐出部200の各ノズル202から噴射された感光層形成用塗布液は、導電性基体206の表面に着弾した後、隣り合う液滴204同士が接して塗布される。つまり、
図2(A)に示すように、噴射した直後の液滴の大きさは、点線で示すようにノズル径と同程度であるが、導電性基体206の表面に着弾した後は実線に示すように拡がって隣り合う液滴と接触して塗膜を形成する。
【0142】
具体的には、
図3に示すように、導電性基体206の軸を水平に回転させる装置に装着する。次に、導電性基体206に感光層形成用塗布液の液滴を噴射するように、第1の液滴吐出部200A、第2の液滴吐出部200B、第3の液滴吐出部200Cを配置し、各液滴吐出部200A〜200Cに、感光層形成用塗布液を充填する。この状態で、導電性基体206を回転させ、各液滴吐出部200A〜200Cに備えるノズル202から感光層形成用塗布液を噴射する。そして、
図3の矢印の方向に向かって、導電性基体206の一方の端部から反対側の端部まで、第1の液滴吐出部200A、第2の液滴吐出部200B、第3の液滴吐出部200Cを水平に移動させて塗膜を形成する。
【0143】
例えば、第1の液滴吐出部200Aに、電荷発生材料等を含む第1の感光層形成用塗布液を充填し、第2の液滴吐出部200Bに、第1の感光層形成用塗布液よりも少ない量で電荷発生材料を含有する(又は、含有しない)第2の感光層形成用塗布液を充填する(この場合、第3の液滴吐出部200Cは使用しない)。
または、第1の液滴吐出部200Aに、電荷発生材料等を含む第1の感光層形成用塗布液を充填し、第2の液滴吐出部200Bおよび第3の液滴吐出部200Cに、第1の感光層形成用塗布液よりも少ない量で電荷発生材料を含有する(又は、含有しない)第2の感光層形成用塗布液を充填する。
そして、上記のように塗膜を形成することで、電荷発生層の含有量が少ない導電性基体側の領域と、電荷発生層の含有量が多い表面側の領域とを有する単層型の感光層が形成される。
【0144】
なお、例えば、前述した第3の感光層形成用塗布液を使用する場合には、第3の液滴吐出部200Cに、第2の感光層形成用塗布液を充填し、第2の液滴吐出部200Bに、前述の第3の感光層形成用塗布液を充填し、第1液滴吐出部200Aに、電荷発生材料等を含む第1の感光層形成用塗布液を充填して塗膜を形成することもできる。
さらに、保護層を形成する場合、第3の液滴吐出部200Cに第2の感光層形成用塗布液を充填し、第2の液滴吐出部200Bに第1の感光層形成用塗布液を充填し、第1液滴吐出部200Aに、保護層形成用塗布液を充填して、感光層を設け、さらに、保護層を設けることもできる。
【0145】
なお、上記では、各液滴吐出部200A〜200Cに、感光層形成用塗布液を充填する例を主に挙げたが、これらの例に限定されるものではない。また、
図3では、液滴吐出部として、第1の液滴吐出部200A〜第3の液滴吐出部200Cの3基の液滴吐出部を設置する例を示したが、この例に限定されるものではない。液滴吐出部の数は、感光層中で電荷発生材料を偏在できれば、感光層の膜厚や、液滴の噴射量等に応じて設ければよい。
【0146】
上記のインクジェット塗布法により、感光層形成用塗布液の液滴を液滴吐出部200のノズル202から噴射する量としては、特に限定されないが、例えば、1pl以上50pl以下が挙げられる。
【0147】
インクジェット塗布法による液滴の噴射方式としては、例えば、連続型、間欠型(ピエゾ式、サーマル式、静電式など)の方式が用いられ、特に限定されないが、ピエゾ式(ピエゾ素子(圧電素子)を用いた方式)の連続型および間欠型が望ましい。特に、膜厚の薄膜化や、廃液量を低減する観点から、ピエゾ素子を用いた間欠型の方式がより望ましい。
【0148】
−感光層形成工程−
塗膜形成工程で形成した塗膜を熱風乾燥等の方法により加熱乾燥して、本実施形態の単層型の感光層が形成される。塗膜を乾燥条件としては、塗膜が乾燥硬化できれば、特に制限されず、例えば、溶剤の種類等によって設定され得る。具体的には、例えば、乾燥温度として、100℃以上170℃以下の範囲、乾燥時間として、10分以上120分以下の範囲が挙げられる。
【0149】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0150】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0151】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、−OH、−OR[但し、Rはアルキル基を示す]、−NH
2、−SH、−COOH、−SiR
Q13−Qn(OR
Q2)
Qn[但し、R
Q1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R
Q2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1〜3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0152】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0153】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0154】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0155】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0156】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0157】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0158】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0159】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0160】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0161】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0162】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0163】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0164】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0165】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0166】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図4に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0167】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0168】
なお、
図4には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0169】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0170】
−帯電装置−
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0171】
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0172】
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0173】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0174】
−クリーニング装置−
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0175】
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0176】
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0177】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図5に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0178】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体7の周囲であって、転写装置40よりも電子写真感光体7の回転方向下流側でクリーニング装置13よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、クリーニング装置13よりも電子写真感光体の回転方向下流側で帯電装置8よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、電子写真感光体7の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
【0179】
また、本実施形態に係る画像形成装置100は、上記構成に限られず、周知の構成、例えば、電子写真感光体7に形成したトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例】
【0180】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0181】
[電子写真感光体の作製]
<実施例1>
結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万):50質量部と、表1に示す正孔輸送材料:40質量部とを、テトラヒドロフラン:250質量部と、トルエン:250質量部に溶解した感光層形成用塗布液Aを得た。
電荷発生材料としてCuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料:1.5質量部と、結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万):50質量部と、表1に示す電子輸送材料:11.5質量部と、表1に示す正孔輸送材料:37質量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン:250質量部と、トルエン:250質量部と、からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてダイノーミルにて4時間分散し、感光層形成用塗布液B1を得た。
【0182】
導電性基体(アルミニウム製)を
図3に示すような構成を有するインクジェット成膜装置に装着した。感光層形成用塗布液Aを液滴吐出部200Bに充填し、感光層形成用塗布液B1を液滴吐出部200Aに充填した(ただし、
図3の液滴吐出部200Cは使用していない)。液滴吐出部200Bおよび200Aに備えている各ノズル202から、充填した感光層形成用塗布液AおよびB1を導電性基体に向けて、以下の条件にて噴射した。
その後、140℃、30分の乾燥を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成し、実施例1の電子写真感光体(1)を作製した。
【0183】
上記のインクジェット成膜装置はポンプで塗布液を送液し、液滴吐出部にピエゾ素子を備え、ピエゾ素子を振動させることで液滴を作り、この液滴を連続で噴射した。装置構成と塗布条件は以下の通りである。なお、各液滴吐出部の装置構成は共通である。さらに、各例において、液滴吐出部200Bおよび200Aの各ノズルから塗布液が噴射される噴射条件は同じである。
【0184】
インクジェットノズルの内径;12.5μm
ノズルの配列/数;直列/7個
ノズル間距離;0.5mm
ノズルとドラムとの距離;1mm
チルト角;80°
ピエゾ素子の周波数;75kHz
プランジャーポンプの周波数;5.58Hz
ドラム回転数;715rpm
【0185】
<実施例2〜7、比較例3〜4>
表1に従って、電荷発生材料の量、電子輸送材料、正孔輸送材料、溶剤の種類を変更して調製した感光層形成用塗布液B2〜B6、及びC3を用いて感光層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7の電子写真感光体(2〜7)、比較例3の電子写真感光体(C3)及び比較例4の電子写真感光体(C4)を作製した。
【0186】
<比較例1>
電荷発生材料としてCuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料:1.5質量部と、結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万):50質量部と、表1に示す電子輸送材料 10質量部と、表1に示す正孔輸送材料:37質量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン:250質量部と、トルエン:50質量部と、からなる混合物を、分散処理前の感光層形成用塗布液と混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてダイノーミルにて4時間分散し、感光層形成用塗布液C1を得た。
【0187】
この感光層形成用塗布液C1を浸漬塗布法にて、導電性基体(アルミニウム基体)上に塗布し、140℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成し、比較例1の電子写真感光体(C1)を作製した。
【0188】
<比較例2>
電荷発生材料の量を変更して調製した感光層形成用塗布液C2を用いて感光層を形成したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体(C2)を作製した。
【0189】
[評価]
各例で得られた電子写真感光体について、以下の評価を行った。その結果を表に示す。
【0190】
−a/bの算出−
各例で得られた感光層について、既述の方法に従って、感光層の膜厚における電荷発生材料の分布を表す式a/bの値を算出した。結果を表2に示す。
【0191】
−感光体の感度の評価−
感光体の感度の評価は、+800Vに帯電させたときの半減露光量として評価した。具体的には、静電複写紙試験装置(エレクトロスタティックアナライザーEPA−8100、川口電機製作所社製)を用いて、20℃、40%RHの環境下、+800に帯電させた後、タングステンランプの光を、モノクロメーターを用いて800nmの単色光にし、感光体表面上で1μW/cm
2になるように調整して、照射した。
そして、帯電直後における感光体表面の表面電位V0(V)、感光体表面の光照射により表面電位が1/2×V0(V)となる半減露光量E
1/2(μJ/cm
2)を測定した。
なお、感光体の感度の評価基準は、0.2μJ/cm
2以下の半減露光量が得られたとき、高感度化されたと評価した。結果を表2に示す。
A(○):0.2μJ/cm
2 以下
B(×):0.2μJ/cm
2 超
【0192】
−感光体の帯電性の評価−
感光体の帯電性の評価は、暗条件下の直流IV測定により求めた電気伝導度σ[1/Ω・cm]で評価した。
帯電性評価用の測定試料は、感光体表面に金をスパッタして(3連電極面積0.92cm
2)作製した。金側をプラスとして電圧を段階的に印加し、そのときの電流値を測定し、27V/μmにおける電気伝導度を算出した。結果を表2に示す。
なお、感光体の帯電性の評価基準は、σが1.0×10
−13[1/Ω・cm]以下のとき帯電性が高いと評価した。
A(○):1.0×10
−13[1/Ω・cm] 以下
B(×):1.0×10
−13[1/Ω・cm] 超
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
【0195】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、電子写真感光体の感度、及び帯電性の評価について、良好な結果が得られたことが分かる。
【0196】
以下、表1、及び表2の略称の詳細について示す。
「IJ」:インクジェット塗布法
「CGM−1」:CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料
「ETM−1」:3,3’−ジ−tert−ペンチル−ジナフトキノン
「ETM−2」:3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン
「ETM−3」:9−ジシアノメチレン−9−フルオレノン−2−カルボン酸ベンジル
「HTM−1」:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
「HTM−2」:4−(2,2−ジフェニルエテニル)−N,N’−ビス(4−メチルフェニル)ベンゼンアミン
「THF」:テトラヒドロフラン
「Tol」:トルエン
「CPN」:シクロペンタノン