(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520208
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】電動バルブアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/05 20060101AFI20190520BHJP
F16K 31/44 20060101ALI20190520BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
F16K31/05
F16K31/44 H
F16H1/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-37775(P2015-37775)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160969(P2016-160969A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228419
【氏名又は名称】日本ギア工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100119312
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 栄松
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 博志
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−006483(JP,A)
【文献】
実公昭46−008741(JP,Y1)
【文献】
特開2005−214275(JP,A)
【文献】
特開2004−045854(JP,A)
【文献】
実開昭64−027584(JP,U)
【文献】
実開昭62−080081(JP,U)
【文献】
実開昭48−109347(JP,U)
【文献】
実公昭37−022969(JP,Y1)
【文献】
米国特許第04361308(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00 − 31/05
F16K 31/44 − 31/62
F16H 1/00 − 1/26
F16D 49/00 − 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パートターン弁を駆動する減速機の入力側に取り付けられ、モータの回転をウォームとウォームホイールにより減速して前記減速機を駆動する電動バルブアクチュエータであって、
前記減速機のウォーム歯車にセルフロック機能を持たせる一方、前記電動バルブアクチュエータのウォーム歯車にセルフロック機能を持たせず、
前記ウォームホイールの内側にドライブスリーブを設けるとともに該ドライブスリーブの内側に前記減速機と連結する出力軸を設け、
前記ドライブスリーブ又は前記出力軸にクラッチの一端側を設け、該クラッチの他端側に手動ハンドルを設け、
前記クラッチは前記モータの起動により遮断状態となり、前記モータの停止により接続状態とされ、
前記モータが停止しているときに前記手動ハンドルを回転するだけでバルブを開閉できることを特徴とする電動バルブアクチュエータ。
【請求項2】
前記ウォームの条数は2以上であってリード角が自動締り角度より大きいことを特徴とする請求項1記載の電動バルブアクチュエータ。
【請求項3】
前記手動ハンドルの軸芯に延長軸を接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の電動バルブアクチュエータ。
【請求項4】
前記手動ハンドルにチェーンスプロケットを設け、該チェーンスプロケットにチェーンを巻き付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電動バルブアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機側から離れた場所から手動でバルブを操作することが可能な電動バルブアクチュエータ(以下、単にアクチュエータともいう。)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータは、電動モードと手動モードの双方で駆動可能な構成とされている。そのため、電動モードと手動モードを切り替えるクラッチが設けられ、該クラッチには電動モードから手動モードへと切り替える手動レバーが備えられている。一方、手動モードから電動モードへの切り替えは、電動モータが起動することで自動的に行われるようになっている。
【0003】
各種プラントに設置された後のアクチュエータは、通常は電動モードで駆動され、手動モードが必要となるのは、プラントの定期点検時や駆動電源喪失時などに限られる。そのような手動モードが必要となる場合には、操作員がアクチュエータの設置されている機側まで足を運んで、クラッチを切り替える手動レバーを操作して手動モードに切り替えた後、手動ハンドルを回転させてバルブを開閉させている。
【0004】
プラントには数多くのアクチュエータが設置されており、その中には極めて高い操作信頼性が求められる用途もある。また、災害等の発生により駆動電源が喪失し、加えて設置環境によってはアクチュエータの機側へ接近することが困難なこともある。そのような場合に備え、機側から離れた場所から手動ハンドルを回すことができるように対策を講じている。たとえば、高所に設置されるアクチュエータでは手動ハンドルにチェーンスプロケットを取付け、該チェーンスプロケットに掛けたチェーンで機側以外から手動ハンドルを回せるようにしている。また、手動ハンドルの軸芯に延長軸を取付け可能とし、機側から離れた場所からでも手動ハンドルを回せるようにしている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
しかし、そのように機側から離れた場所から手動ハンドルを回すことができるよう対策を講じても、手動レバーを操作して電動モードから手動モードへ切り替えることができなければ、手動ハンドルを回してバルブを開閉することはできない。アクチュエータは通常時において電動モードとなっているからである。
【0006】
ここで、アクチュエータは、大小各種のバルブに対応すべく異なるサイズの製品がシリーズ化されている。シリーズ化されたアクチュエータの減速機構には大小を問わずウォーム歯車が採用されているが、小型バルブ駆動用と大型バルブ駆動用とでは、手動ハンドルの回転をドライブスリーブに伝達する機構が異なっている。
【0007】
大型バルブ駆動用のアクチュエータでは、大きな駆動トルクが必要になることから、手動ハンドルの回転はウォーム歯車で減速してバルブを駆動するように構成されている。そのため手動モードから電動モードへと切り替えるクラッチはウォーム軸系に設けられ、手動レバーを操作することにより、モータ軸系とウォーム軸系の連結が解除されるようになっている。また、クラッチがウォーム軸系に設けられることから、手動モードから電動モードへの切り替えを行うクラッチに、手動ハンドルを回し始めるとクラッチが自動的に解除(デクラッチ)される機能を付加することが比較的容易であり、大型バルブ駆動用のアクチュエータでは、準標準的に自動デクラッチ機能が用意されている。
【0008】
そのため、自動デクラッチ機能を備えた大型バルブ駆動用アクチュエータでは、手動レバーを操作しなくとも手動ハンドルを回し始めると、モータ側と手動ハンドル側が切り離され、手動ハンドルを回すことによりバルブを開閉できる。また、手動モードから電動モードへ移行する際は、モータが回転し始めると手動ハンドルは自動的に切り離されるようになっている。
【0009】
一方、小型バルブ駆動用のアクチュエータでは小さな駆動トルクしか要求されないことから、手動ハンドルはウォームホイールの内側に設けられるドライブスリーブを回転させるように構成されている。そのため電動モードと手動モードとを切り替えるクラッチはウォームホイール系に設けられ、手動レバーを操作することにより、ウォームホイールとドライブスリーブとの結合が解除されるようになっている。このようにクラッチをウォームホイール系に設けたことに伴い、デクラッチ機能を付加すると構造が複雑化することから、小型バルブ駆動用のアクチュエータでは、自動デクラッチ機能を備えたアクチュエータは市販されていない。
【0010】
その結果、市販されている小型バルブ駆動用のアクチュエータでは、手動モードへ移行する際には必ず手動レバーを操作する必要があった。そのため、機側から離れた場所から手動ハンドルを回すことができるよう対策を講じても、手動レバーを操作して電動モードから手動モードへ切り替えることができず、機側から離れた場所で手動ハンドルを回してバルブを開閉することはできなかった。なお、手動モードから電動モードへ移行する際は、モータが回転し始めると自動的に手動ハンドルは切り離されるようにされている。かかる点において、小型バルブ駆動用アクチュエータと大型バルブ駆動用アクチュエータとで異なることはない。
【0011】
ここで、バルブには仕切弁や玉型弁のようにステムの往復動作により開閉するバルブと、蝶型弁やボール弁のようにステムが略90度回転することにより開閉するパートターン形式のバルブがある。ステムの往復動作により開閉する仕切弁等を駆動するアクチュエータにおいては、アクチュエータのドライブスリーブが概ね数十回転することでバルブを開閉することになる。他方、蝶型弁等のパートターン形式のバルブにおいては、極めて大きな減速比が必要になることからアクチュエータをバルブ上に直接設置することができず、バルブ上に補助減速機としてのウォーム減速機を取付け、このウォーム減速機を介してアクチュエータを取り付けている。結果的にパートターン形式のバルブにおいては、2段階のウォーム歯車でモータの回転を減速することになる。
【0012】
補助減速機に内蔵されるウォーム歯車は大トルクを伝達する必要があることから、相対的に大型のウォーム歯車となるが、補助減速機に取り付けられるアクチュエータに用いられるウォーム歯車は、補助減速機の減速比の分だけトルクが小さくなり、大型のパートターン形式のバルブに取り付けられるアクチュエータであっても比較的小型なもので足りる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Electric Actuators for industrial automation、独AUMA社 Products Brochure No.Y006.065 Page61、[オンライン]、[2015年2月2日検索]、インターネット:<URL: http:// 1424999127574_0>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来、パートターン形式のバルブに補助減速機を介して取り付けられるアクチュエータであっても、自動デクラッチ機能が要求される仕様の場合、バルブの開閉に必要なトルクが小さいときでも大型のアクチュエータを選択していた。自動デクラッチ機能を備えた小型のアクチュエータが市販されていない事情による。
【0015】
しかし、このような大型のアクチュエータの選択はアクチュエータが高価格になるという問題だけでなく、アクチュエータの重量が増加することにより配管強度が不足するという問題を生ずる。
【0016】
特に既設プラントの改修工事などにおいて配管強度の不足は大きな問題となる。大型のアクチュエータは重量が大きく、既存の配管ライン上に取り付けると、配管強度が不足する場合が生じることもある。また、配管ラインが密なプラントでは配管を支持する補強を施すことも容易でない。
【0017】
そこで、本発明は自動デクラッチ機能を要することなく、機側から離れた場所から手動ハンドルを回すだけでバルブを操作でき、重量増加を来たさないアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、パートターン弁を駆動する減速機の入力側に取り付けられ、モータの回転をウォームとウォームホイールにより減速して前記減速機を駆動する電動バルブアクチュエータであって、
前記減速機のウォーム歯車にセルフロック機能を持たせる一方、前記電動バルブアクチュエータのウォーム歯車にセルフロック機能を持たせず、前記ウォームホイールの内側にドライブスリーブを設けるとともに該ドライブスリーブの内側に前記減速機と連結する出力軸を設け、前記ドライブスリーブ又は前記出力軸にクラッチの一端側を設け、該クラッチの他端側に手動ハンドルを設け、前記クラッチは前記モータの起動により遮断状態となり、前記モータの停止により接続状態とされ、前記モータが停止しているときに前記手動ハンドルを回転するだけでバルブを開閉できることを特徴とする電動バルブアクチュエータである。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の電動バルブアクチュエータにおいて、前記ウォームの条数は2以上であってリード角が自動締り角度より大きいことを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電動バルブアクチュエータにおいて、前記手動ハンドルの軸芯に延長軸を接続したことを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の電動バルブアクチュエータにおいて、前記手動ハンドルにチェーンスプロケットを設け、該チェーンスプロケットにチェーンを巻き付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、クラッチの接続と遮断を切り替える手動レバーを必要としない電動バルブアクチュエータを実現できる。そのことにより、手動レバーの切り替え操作が不要になる。また、アクチュエータの重量が増加しないため、既存プラントの改修工事においてアクチュエータを取り付ける場合であっても、配管ラインの補強を必要としない。したがって、改修費用を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について
図1〜
図3に基づいて説明する。これらの図は、本発明の構成を説明するための略図であり、発明の説明に関係しない部材は省略している。
図1は、パートターン形式のバルブ1に取り付けた補助減速機2の入力軸3に、軸継手4を介してアクチュエータ5の出力軸6を取り付けた全体構成を示す平面図である。なお、軸継手4は必須ではなく、補助減速機2の入力軸3とアクチュエータ5の出力軸6を一体として構成してもよいが、本実施例では組立容易性を考慮して軸継手4を用いている。
【0025】
アクチュエータ5には、ウォーム7とウォームホイール8が組み込まれている。ウォーム7はモータ9により駆動される。モータ9はアクチュエータ5のハウジングに取り付けられている。また、ウォーム7は図示していない複数の軸受を介してハウジング内に組み込まれている。
【0026】
ウォーム7と噛み合うウォームホイール8の内側には、ドライブスリーブ10が設けられ、ウォームホイール8とドライブスリーブ10とは、一体として回転するよう強固に固着されている。ドライブスリーブ10の内側には補助減速機2の入力軸3と連結する出力軸6が設けられ、出力軸6はドライブスリーブ10により回転されるようになっている。また、ドライブスリーブ10は図示していない複数の軸受を介してハウジング内に組み込まれている。
【0027】
ドライブスリーブ10には、クラッチ11の一端側12が設けられている。また、クラッチ11の他端側13には、手動ハンドル14が設けられている。このクラッチ11はモータ9が起動し始めると遮断状態となり、モータ9が停止すると接続状態となるよう構成されている。このような機能を有するクラッチ11は、アクチュエータ5において周知技術に属するものであることから説明を省略する。また、クラッチ11には接続/遮断を操作する手動レバーは備えられていない。
【0028】
ここで、ドライブスリーブ10と出力軸6は、製作容易性および組立容易性を考慮して別部品として構成されているが、機能的には一体として同期回転するものである。したがって、クラッチ11の一端側12をドライブスリーブ10ではなく出力軸6に設けることもできる。さらに、軸継手4を省略して補助減速機2の入力軸3とアクチュエータ5の出力軸6を一体とし、クラッチ11および手動ハンドル14を補助減速機2の入力軸3の軸端側(
図1の左端)に設けることもできる。
【0029】
補助減速機2はパートターン弁1のステムおよび弁箱に取り付けられる。パートターン弁1は、弁体が略90度回転することによって全閉・全開を行うものであり、補助減速機2には大きな減速比を簡単な構成で実現できるウォーム減速機が用いられる。また、ある程度以上の減速比を有するウォーム歯車には自動締り(セルフロック)という特徴的機能があることから、外付けブレーキ等を用いることなく弁体の位置を保持できるという利点がある。かかる事情からパートターン弁の補助減速機にはウォーム歯車が好適である。
【0030】
補助減速機2の入力側にアクチュエータ5が取り付けられている。したがって、パートターン弁1はモータ9の回転を2段階のウォーム歯車機構により減速して駆動されることになる。仮に補助減速機の減速比を1/60、アクチュエータの減速比を1/25とすれば、簡単な構成で減速比1/1500を実現できる。モータが毎分1500回転する仕様であれば、1分間でバルブを全開または全閉できることになる。
【0031】
ここで、ウォーム歯車のセルフロック機能は動力伝達系の1箇所に存在すれば十分であり、動力伝達系に複数のウォーム歯車を用いている場合、すべてのウォーム歯車にセルフロック機能を持たせる必要はない。本実施例では装置全体の小型化を考慮し、補助減速機2のウォーム歯車にセルフロック機能を持たせる一方、アクチュエータ5のウォーム歯車にはセルフロック機能を持たせていない。
【0032】
もっとも、セルフロック機能を有さないウォーム歯車を組み込んだアクチュエータは何ら新規なものではない。また、ウォーム歯車がセルフロック機能を有するか否かはウォームのリード角、噛み合う歯面の表面仕上げ程度に起因する摩擦係数、歯面間のすべり速度、潤滑剤の特性、設置場所の振動の有無等の影響を受け、一概には言えないものである。
【0033】
しかし、複数の因子の影響を受けて一概に言えないとしても、ウォーム歯車がセルフロック機能を有する凡その限界値は、当業者であれば想定し得る。例えば減速比なら40以上、リード角は5度前後という具合である。また、摩擦係数にしても歯車材料が決まれば想定できるし、金属材料の組み合わせであれば概ね0.15程度で実務上問題になるようなことはない。したがって、セルフロック機能を有さないウォーム歯車を用いたアクチュエータを実現することに困難性はない。
【0034】
本発明の特徴的構成の一つは、本来モータの動力で駆動される大型のバルブを、非常時において人力で動作可能とする点にある。個人差はあるにしろ、人力には限界がある。人力で手動操作するにはアクチュエータの動力伝達効率が良好であることが重要である。このような観点から、ウォーム歯車の効率向上にもっとも大きな影響を及ぼす因子であるウォームのリード角を略17度以上とし、このリード角を実現すべくウォームの条数も複数としている。このような諸元を有するウォーム歯車は、セルフロック機能を持たないことは言うまでもないが、ウォーム歯車としては動力伝達効率が高いという特徴がある。
【0035】
本実施例では、アクチュエータ5に組み込むウォーム7の条数を4とし、リード角にして約17度を確保するとともに、ウォームホイール8の歯数を50とした。すなわち、減速比は1/12.5となる。また、ウォーム7はクロムモリブデン鋼を用いた歯面研削仕上げとし、ウォームホイール8の材料にはアルミ/黄銅系合金を用いた。さらに、補助減速機2には減速比1/60のウォーム減速機を用い、潤滑はアクチュエータ5および補助減速機2ともグリース潤滑とした。その結果、本実施例における全体の動力伝達効率は約20%に達した。
【0036】
約20%という伝達効率は数値だけから判断すると低いという印象を受けるであろうが、2段階のウォーム歯車を用い、しかも動力伝達系としてセルフロック機能を備えていることを考慮すれば高いということができる。この高い伝達効率の実現により、自動デクラッチ機能を有さないアクチュエータを、人力により手動ハンドルを回してバルブを開閉動作させることが可能となった。
【0037】
なお、本実施例ではウォーム7の条数を4としたことから、アクチュエータ5の減速比は制約を受ける。その結果、パートターン弁1の開閉に必要となる極めて大きな減速比を2段階のウォーム歯車減速だけで実現することが困難になる場合もある。しかし、そのような場合、モータ9とウォーム7との間に前段減速機構を設ければよい。高速回転領域での減速であり、小型のヘリカルギアで簡単に実現できる。そのような構成としても、費用およびスペースとも限定的な影響を受けるに留まる。
【0038】
次に、本発明の作用について簡単に説明する。アクチュエータ5が通常の運転モードである電動モードに設定されている状態で、停電等により電動モードでは運転できなくなる状態を想定する。この状態ではアクチュエータ5を手動モードで操作するほかないことになる。しかし、バルブの設置されている場所によっては、操作員がアクチュエータ5の機側へ近づくことが困難なこともある。そのような事情を考慮してアクチュエータ5の手動ハンドル14には機側以外からも操作可能なように、チェーンスプロケット(図示省略)が取付けられ、該チェーンスプロケットに掛けたチェーンで手動ハンドルを回せるようにされている。また、手動ハンドルの軸芯に延長軸を取付けることが可能な構成とし、機側以外の場所から延長軸を介して手動ハンドルを回せるようにすることもある。
【0039】
上記のような状態において従来技術のアクチュエータでは、操作員が機側に近づき、手動レバーを操作して電動モードから手動モードへと切り替えない限り、アクチュエータを手動操作することができなかった。しかし、本発明に係るアクチュエータ5であれば、電動モードから手動モードへの切り替えが不要となり、手動ハンドル14を回すだけでパートターン弁1を開閉操作できる。また、アクチュエータのサイズ選定において、バルブの駆動トルクを基準にアクチュエータを選定できることから、必要以上に大型のアクチュエータを選定する必要がなくなる。このことはアクチュエータ自体のコスト低減に寄与する。さらに、既設プラントの改修工事において、アクチュエータが大型化して重量が増加することを回避できるので、配管ラインの補強を必要としない。したがって、改修費用の抑制にも寄与できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る電動バルブアクチュエータは、高い操作信頼性が求められるプラントのパートターン弁に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 パートターン弁
2 減速機(補助減速機)
5 アクチュエータ
6 出力軸
7 ウォーム
8 ウォームホイール
9 モータ
10 ドライブスリーブ
11 クラッチ
14 手動ハンドル