(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1押圧部材及び前記第2押圧部材の少なくとも一方には、前記第1押圧部材及び前記第2押圧部材の前記第1方向の相対変位を許容しつつ、前記回転軸芯方向の相対変位、及び前記第1方向と前記回転軸芯方向とに直交する第2方向の相対変位を規制する案内部が形成され、
前記第1押圧部材及び前記第2押圧部材の少なくとも一方における前記回転軸芯の周方向を向く側面が前記規制部を兼ねている請求項1記載のクラッチ装置。
前記第2押圧部材は、前記第1押圧部材と同一部材であって、前記第1押圧部材とは逆向きの姿勢で前記第1押圧部材に組み合わされてなる請求項2記載のクラッチ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来のクラッチ装置では、押圧部材が保持部材のケース部に収容されていることから、作業者が予め組み付け治具を押圧部材と保持部材との間に装着して、第1当接部と第2当接部とを第1方向において離間させておいてから、第1当接部と第2当接部との間に被制動部を挿入する必要がある。その結果、このクラッチ装置では、組み付け作業の簡素化が難しいという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、組み付け作業の簡素化を実現できるクラッチ装置及びアクチュエータを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のクラッチ装置は、ベース部材と、
前記ベース部材に対して回転軸芯周りに回転可能に支持され、駆動源に回転駆動される第1回転体と、
前記ベース部材に対して前記回転軸芯周りに回転可能に支持され、前記第1回転体に隣接する第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転する接続状態と、前記第1回転体とは無関係に前記第2回転体が回転可能な遮断状態とを切り替える切替手段とを備え、
前記切替手段は、前記回転軸芯を中心とする円筒形状に形成された被制動部を有する第1可動体と、
前記第2回転体に係合及び離反可能に前記第1可動体に支持された第2可動体と、
前記ベース部材に設けられ、前記被制動部に所定の摩擦力を付与して、前記第1回転体に対する前記第1可動体の回り遅れを生じさせることにより、前記第2可動体を前記第2回転体に係合させる制動部材とを有するクラッチ装置であって、
前記制動部材は、前記回転軸芯に直交する第1方向の一方側から前記被制動部に当接する第1当接部と、前記被制動部に対して前記第1方向の他方側に位置
する第1バネ受け部とを有する第1押圧部材と、
前記第1方向の他方側から前記被制動部に当接する第2当接部と、前記被制動部に対して前記第1方向の
一方側に位置する第2バネ受け部とを有する第2押圧部材と、
前記
第2当接部と前記第1バネ受け部との間に設けられ、前記第2当接部と前記第1バネ受け部とを前記第1方向において離間させるように付勢する第1付勢バネと、を有し、
前記切替手段は、前記ベース部材又は前記制動部材に設けられ、前記第1押圧部材及び前記第2押圧部材の前記回転軸芯周りの回動を規制する規制部を有し、
前記第1押圧部材には、前記制動部材における前記第1方向の他方側で露出し、前記第1方向の一方側に向けて押圧されることが可能な第1被押圧部が形成され、
前記第2押圧部材には、前記制動部材における前記第1方向の一方側で露出し、前記第1方向の他方側に向けて押圧されることが可能な第2被押圧部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のクラッチ装置では、組み付け作業時、第1押圧部材の第1被押圧部と、第2押圧部材の第2被押圧部とを単に接近させれば、第1当接部と第2当接部とが第1方向において離間する。このため、第1当接部と第2当接部との間に被制動部を容易に挿入することができる。つまり、このクラッチ装置では、予め組み付け治具を押圧部材と保持部材との間に装着する作業や、作業のための組み付け治具が不要となる。
【0013】
したがって、本発明のクラッチ装置では、組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0014】
第1押圧部材及び第2押圧部材の少なくとも一方には、第1押圧部材及び第2押圧部材の第1方向の相対変位を許容しつつ、回転軸芯方向の相対変位、及び第1方向と回転軸芯方向とに直交する第2方向の相対変位を規制する案内部が形成されていることが望ましい。そして、第1押圧部材及び第2押圧部材の少なくとも一方における回転軸芯の周方向を向く側面が規制部を兼ねていることが望ましい。この構成によれば、第1、2押圧部材を収容するケースを別途用意する必要がなくなるため、部品点数を削減できる。その結果、このクラッチ装置では、製造コストを低廉化できる。
【0015】
第2押圧部材は、第1押圧部材と同一部材であることが望ましい。そして、第2押圧部材は、第1押圧部材とは逆向きの姿勢で第1押圧部材に組み合わされることが望ましい。この構成によれば、第1、2押圧部材について部品を共通化できるので、部品点数を一層削減できる。また、第1、2押圧部材が樹脂成形品である場合、その金型費用を削減できる。その結果、このクラッチ装置では、製造コストを一層低廉化できる。
【0016】
第1押圧部材には、回転軸芯方向において貫通し、かつ第1方向に延びる長穴が貫設されていることが望ましい。長穴の内周面のうちの第1方向の一方側に位置する内壁面には、第1当接部が形成されていることが望ましい。長穴の内周面のうちの第1方向の他方側に位置する内壁面には、第1バネ受け部と、案内部の一部を構成する受け部とが形成されていることが望ましい。第1押圧部材における第1方向の一方側には、回転軸芯方向において第1方向の他方側よりも段状に薄くされて案内部の一部を構成する摺接部と、第1当接部よりも第1方向の一方側に突出して案内部の一部を構成する突出部とが形成されていることが望ましい。
【0017】
この場合、第2押圧部材が第1押圧部材とは逆向きの姿勢で第1押圧部材に組み合わされることにより、第1押圧部材に係る第1当接部が第2押圧部材に係る第2当接部として機能し、第1押圧部材に係る受け部と第2押圧部材に係る突出部とが係合し、第1押圧部材に係る突出部と第2押圧部材に係る受け部とが係合し、第1押圧部材に係る摺接部と第2押圧部材に係る摺接部とが摺接可能に当接する。
【0018】
ここで、摺接部が回転軸芯方向において段状に薄く形成され、第1押圧部材に係る摺接部と第2押圧部材に係る摺接部とが当接することにより、互いに組み合わされた第1、2押圧部材の回転軸芯方向の厚みを小さくできる。また、簡素な受け部、摺接部及び突出部によって構成された案内部により、第1押圧部材及び第2押圧部材について、第1方向の相対変位を許容しつつ、回転軸芯方向の相対変位、及び第2方向の相対変位を確実に規制することができる。
【0019】
制動部材は、
第1当接部と第2バネ受け部との間に設けられ、第1当接部と第2バネ受け部とを第1方向において離間されるように付勢する第2付勢バネをさらに有していることが望ましい。
【0020】
このクラッチ装置では、制動部材は、第1当接部と第2当接部とが第1付勢バネと第2付勢バネとに付勢されて被制動部を挟みながら押圧することにより、被制動部に所定の摩擦力を付与し、第1回転体に対する第1可動体の回り遅れを生じさせる。つまり、このクラッチ装置では、並列関係にある2個の第1、2付勢バネによって、第1可動体に所定の摩擦力を付与することから、従来のクラッチ装置における1個の付勢バネと比較して、第1、2付勢バネを小型化できる。例えば、第1、2付勢バネが圧縮コイルバネであれば、バネ線径を細くでき、巻き径も小さくできる。
【0021】
そして、第1付勢バネは、被制動部に対して第1方向の他方側に位置し、第2付勢バネは、被制動部に対して第1方向の一方側に位置している。つまり、第1付勢バネと第2付勢バネとは、回転軸芯方向において重ならない。その結果、このクラッチ装置では、回転軸芯方向において、制動部材を薄型化でき、ひいてはクラッチ装置の薄型化を実現できる。
【0022】
本発明のアクチュエータは、ベース部材に固定される駆動源と、上記のクラッチ装置と、第2回転体の回転に伴って動作する出力部とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明のアクチュエータは、上記のクラッチ装置が奏する作用効果により、組み付け作業の簡素化を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のクラッチ装置及びアクチュエータによれば、組み付け作業の簡素化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(実施例)
図1及び
図2に示すように、実施例のクラッチ装置10及びアクチュエータ1は、本発明のクラッチ装置及びアクチュエータの具体的態様の一例である。なお、クラッチ装置10及びアクチュエータ1が使用される際の姿勢は適用対象に応じて適宜設定されるが、本実施例では、便宜的に、上下方向、前後方向及び左右方向を以下のように規定して、制動部材60等を含む各構成要素の説明を行う。すなわち、アクチュエータ1の下側ハウジング2Aの底部側(
図1における紙面奥側)を下側と規定し、その反対側(
図1における紙面手前)を上側と規定し、
図1における紙面下側を左側と規定し、
図1における紙面上側を右側と規定し、
図1における紙面左側を前側と規定し、
図1における紙面右側を後側と規定する。そして、
図2以降の各図に示す上下方向、前後方向及び左右方向は、全て
図1に対応して表示する。
【0028】
図1及び
図2に示すように、実施例のクラッチ装置10は、アクチュエータ1の一部を構成している。図示は省略するが、アクチュエータ1は、例えば車両に搭載されて、車両用開閉体(例えば、ドア)のラッチ解除用に用いられる。但し、本発明によるクラッチ装置は、以下の事例に限らず、自動車ドアのラッチ施錠用、或いは、ドアロック装置のロッキングレバーを施錠側又は解除側に操作する各アクチュエーターを含めた、多種の用途に用いることが可能であることは言うまでもない。以下、アクチュエータ1の各構成要素について説明する。
【0029】
アクチュエータ1は、上面側(
図1の紙面手前側)が開放された箱形状である下側ハウジング2Aと、下側ハウジング2Aの開放された面を覆う蓋形状である上側ハウジング2B(
図2参照)とを備えている。
図1では、上側ハウジング2Bの図示を省略しているが、上側ハウジング2Bは、下側ハウジング2Aの紙面手前側に位置している。下側ハウジング2A及び上側ハウジング2Bは、本発明の「ベース部材」の一例である。
【0030】
図1に示すように、下側ハウジング2A及び上側ハウジング2Bにより区画された閉空間内には、電動モータ9、クラッチ装置10及び出力部8が収容されている。電動モータ9は、本発明の「駆動源」の一例である。
【0031】
電動モータ9は、下側ハウジング2Aの前側の内壁面に隣接するように固定されている。電動モータ9の駆動軸には、ウォームギヤ9Aが一体回転可能に固定されている。下側ハウジング2Aにおいて電動モータ9の近傍には、コネクタ5が設けられている。電動モータ9は、コネクタ5を介して、外部に設けられた図示しないコントローラと電気的に接続される。本実施例では、電動モータ9は、車両用開閉体の施錠又は開錠の際、コントローラに制御されて回転又は停止する。
【0032】
図1及び
図2に示すように、クラッチ装置10は、下側ハウジング2A、上側ハウジング2B、第1回転体110、第2回転体120及び切替手段20を備えている。
【0033】
下側ハウジング2A及び上側ハウジング2Bには、それらに両端が支持された支持軸3が設けられている。支持軸3は、上下方向に延びる円柱軸体である。支持軸3の軸芯を回転軸芯Cとする。
【0034】
図2及び
図3に示すように、第1回転体110は、第1円盤部111と第1円筒部112と外歯119とを有する。第1円盤部111の中心部には、回転軸芯Cと同軸の回転軸穴113が形成されている。第1円盤部111における回転軸穴113から径外方向に離間する位置には、略角柱状の角度規制部114が上方に向けて突出するように形成されている。角度規制部114は、後述する第1可動体210の第1回転体110に対する回動角度を制限するためのものである。第1円筒部112は、第1円盤部111の外周縁に形成され、回転軸芯Cと同軸に2段に延在している。外歯119は、第1円筒部112の外周面に形成されている。
【0035】
図2に示すように、回転軸穴113に後述する第1可動体210の被制動部211を挿入し、第1可動体210の軸穴214に支持軸3を挿入することにより、第1回転体110は、下側ハウジング2A及び上側ハウジング2Bに対して、回転軸芯C周りに回転可能に支持されている。
【0036】
図1に示すように、外歯119は、ウォームギヤ9Aと噛み合っている。第1回転体110は、ウォームギヤ9A及び外歯119を介して、電動モータ9に回転駆動される。電動モータ9は、第1回転体110を正方向(
図1の紙面に向かって時計回り。以下、同様。)に回転させるようにコントローラに制御される。すなわち、コントローラと電動モータ9とが正しく配線されていれば、電動モータ9が第1回転体110を逆方向(
図1の紙面に向かって反時計回り。以下、同様。)に回転させることはない。
【0037】
図2及び
図3に示すように、第2回転体120は、第1回転体110に隣接するように設けられている。第2回転体120は、第2円盤部121と第2円筒部122と被係合部124と伝達ギヤ129とを有する。第2円盤部121の中心部には、回転軸芯Cと同軸の回転軸穴123が形成されている。第2円盤部121は、第1円盤部111に対して上方に間隔をおいて対向している。第2円筒部122は、第2円盤部121の外周縁に形成され、回転軸芯Cと同軸に第1円筒部112の内周面側に向かって下方に延在している。
図1及び
図2に示すように、被係合部124は、第2円筒部122の内周面に複数形成され、その内周面から回転軸芯Cの径内方向に突出している。伝達ギヤ129は、回転軸芯Cと同軸に第2円盤部121の上側に突出し、その外周縁に外歯が形成されている。
【0038】
図1に示すように、各被係合部124は、平面視した場合、略三角形状に突出している。各被係合部124の正方向を向く面は、回転軸芯Cの円周方向に対して僅かに傾斜して長く延びている。その一方、各被係合部124の逆方向を向く面は、回転軸芯Cの径内方向に短く延びている。各被係合部124をこのような形状とすることにより、後述する第2可動体220の爪部223が各被係合部124の逆方向を向く面に係合することが可能となっている。
【0039】
図2に示すように、回転軸穴123に支持軸3を挿入することにより、第2回転体120も、下側ハウジング2A及び上側ハウジング2Bに対して、回転軸芯C周りに回転可能に支持されている。
【0040】
図2及び
図3に示すように、切替手段20は、下側ハウジング2Aと上側ハウジング2Bとの間に設けられている。切替手段20は、第1可動体210、第2可動体220、ねじりコイルばね50及び制動部材60を有している。
【0041】
第1可動体210、第2可動体220及びねじりコイルばね50は、第1回転体110と第2回転体120との間に設けられている。より具体的には、第1可動体210、第2可動体220及びねじりコイルばね50は、第1円盤部111、第1円筒部112、第2円盤部121及び第2円筒部122により区画される内部空間100に設けられている。
【0042】
図2〜
図4に示すように、第1可動体210は、回転軸芯Cを囲む扇形状とされている。第1可動体210は、第1円盤部111に上方から隣接する状態で内部空間100内に収容されている。第1可動体210には、被制動部211と凸部213と軸穴214とが形成されている。被制動部211は、回転軸芯Cを中心とする円筒形状に形成され、下方に突出している。凸部213は、回転軸芯Cと同軸であり、被制動部211の上側に突出している。軸穴214は、被制動部211から凸部213まで支持軸3を挿通させる。
【0043】
図2及び
図5に示すように、被制動部211が回転軸穴113に挿入され、軸穴214に支持軸3が挿入された状態では、第1可動体210は、回転軸芯C周りに回動可能に支持されている。但し、第1可動体210は、扇形状部分の正方向を向く端面210Aが角度規制部114に当て止まるか、又は逆方向を向く端面210Bが後述する第2可動体220のストッパ224を介して角度規制部114に当て止まることにより、第1回転体110に対する回動角度が制限される。
【0044】
図5及び
図12に示すように、第1可動体210の端面210Aが角度規制部114に当て止まる位置は、第1可動体210の第1回転体110に対する「初期位置」である。その一方、
図14に示すように、第1可動体210が初期位置から第1回転体110に対して逆方向に相対回転して、第1可動体210の端面210Bがストッパ224を介して角度規制部114に当て止まる位置は、第1可動体210が第1回転体110に対して「初期位置」から所定角度αだけ回動した位置である。すなわち、第1可動体210は、第1回転体110に対して回動角度が初期位置から所定角度αまでの間に制限されつつ回転軸芯C周りに回動可能に支持されている。なお、所定角度αは、後述する爪部223が偏心軸芯H周りに回動して回転軸芯Cに対して接近又は離反する際の変位量を充分に確保するため、45°〜180°の範囲内とすることがより好ましい。本実施例では所定角度αは、約90°である。
【0045】
図4及び
図5に示すように、第1可動体210の上面側には、軸穴214と間隔をおいて偏心軸穴212が凹設されている。偏心軸穴212は、回転軸芯Cから偏心した偏心軸芯Hを形成している。
【0046】
また、第1可動体210の上面側には、溝部215と第1係止部216と第2係止部217とが形成されている。溝部215は、軸穴214と偏心軸穴212とを円環状に囲んでいる。第1係止部216は、溝部215と偏心軸穴212とを連通させるように形成されたスリットである。第2係止部217は、軸穴214及び偏心軸穴212を挟んで第1係止部216とは反対側に位置している。第2係止部217は、上方に突出して上端側が幅方向に張り出している。
【0047】
溝部215と第1係止部216と第2係止部217とは、
図3に示すねじりコイルばね50を保持するものである。ねじりコイルばね50は、付勢力を蓄えるように捻られた状態で、
図5に示すように溝部215内に収容される。この状態で、ねじりコイルばね50の径内方向に折り曲げられた一端50Aは第1係止部216に係止され、径外方向に折り曲げられた他端50Bは第2係止部217に係止される。これにより、ねじりコイルばね50は、付勢力を蓄えた状態で第1可動体210に保持されて、内部空間100に収容される。クラッチ装置10の組付時には、ねじりコイルばね50の他端50Bと角度規制部114との間に、後述するストッパ224が介在し、ねじりコイルばね50の他端50Bがストッパ224の正方向を向く面である第3係止部225に当接する。これにより、ねじりコイルばね50は、第1可動体210を初期位置に向かって正方向に付勢する。
【0048】
図6は、クラッチ装置10の各構成要素のうち、第1円盤部111より下側に位置するものを図示している。
図2及び
図6に示すように、第1可動体210の被制動部211は、第1回転体110の回転軸穴113から下方に突出し、下側ハウジング2Aの底部に凹設された収容部2C内に延在している。
【0049】
図2に示すように、第2可動体220は、内部空間100において、第2回転体120に係合及び離反可能に第1可動体210に支持されている。
図3及び
図7に示すように、第2可動体220は、回転軸芯Cに直交する平面に沿う平板形状とされた平板部221を有する。平板部221には、偏心ピン222と、ストッパ224と、爪部223とが形成されている。偏心ピン222は、平板部221の略中央から下方に突出する円柱軸体である。ストッパ224は、平板部221の偏心ピン222から離れた外周縁側から下方に突出する略角柱体である。爪部223は、平板部221の偏心軸芯H及びストッパ224から離れた外周縁側から径外方向に突出する略三角突起である。
【0050】
図12〜
図14に示すように、この偏心ピン222が偏心軸穴212に挿入されることにより、第2可動体220は、第1可動体210に対して偏心軸芯H周りに回動可能に支持される。平板部221には、偏心軸芯Hを囲む円弧状のスリット226が形成されている。スリット226により、第2可動体220は、偏心軸芯H周りの回動時に支持軸3及び凸部213との干渉を回避できる。
【0051】
図5及び
図7に示すように、ストッパ224は、組付時において、第2係止部217に係止されたねじりコイルばね50の他端50Bと、角度規制部114との間に突出する。そして、ストッパ224の正方向を向く面は、第3係止部225とされている。第3係止部225は、第2可動体220が偏心軸芯H周りに回動する際、
図13及び
図14に示すように、ねじりコイルばね50の他端50Bを係止して、ねじりコイルばね50の付勢力に抗しつつ、ねじりコイルばね50をさらにねじるようになっている。この際、ねじりコイルばね50の他端50Bは、第2係止部217から離れる。
【0052】
図2及び
図6に示すように、制動部材60は、下側ハウジング2Aの収容部2Cに収容されている。収容部2Cは、下側ハウジング2Aの底部から下向きに凹む有底穴である。
図6に示すように、収容部2Cは、前後方向に長く、左右方向に短い略矩形状とされている。
【0053】
以下の説明において、制動部材60の形状等について上下方向、前後方向及び左右方向を用いる場合、収容部2Cに収容された制動部材60の姿勢を基準とする。上下方向は、本発明の「回転軸芯方向」の一例である。前後方向は、本発明の「第1方向」の一例である。左右方向は、本発明の「第2方向」の一例である。前側は、本実施例の「第1方向の一方側」の一例であり、後側は、本実施例の「第1方向の他方側」の一例である。
【0054】
図3、
図6及び
図8〜
図11に示すように、制動部材60は、第1押圧部材160、第2押圧部材260、第1付勢バネ270及び第2付勢バネ170を有している。
【0055】
図8〜
図10に示すように、第1押圧部材160は、樹脂成形品である。第1押圧部材160には、上下方向において貫通し、かつ前後方向に延びる長穴160Hが貫設されている。長穴160Hの内周面のうちの前側に位置する内壁面には、半円筒面である第1当接部161が形成されている。長穴160Hの内周面のうちの後側に位置する内壁面には、略柱状の第1バネ受け部162が前向きに突出するように形成されている。
【0056】
また、第1押圧部材160には、案内部163が形成されている。案内部163は、受け部164と摺接部165と突出部166とにより構成されている。
【0057】
受け部164は、長穴160Hの内周面のうちの後側に位置する内壁面に下側から隣接して設けられ、長穴160Hの後側部分を左右方向において狭くするように突出している。
【0058】
摺接部165は、第1押圧部材160の前側部分に形成されている。摺接部165は、上下方向において第1押圧部材160の後側部分よりも段状に薄くされている。換言すると、第1押圧部材160の上面は平坦であり、第1押圧部材160の下面における摺接部165よりも後側に位置する領域は、摺接部165よりも下側に膨出している。
【0059】
突出部166は、第1押圧部材160の前端部に形成されている。突出部166は、第1当接部161より前側の位置で摺接部165から下向きに延びた後、二股に分かれて前向きに突出している。突出部166の二股部分の中央には、略柱状の第3バネ受け部169が前向きに突出するように形成されている。
【0060】
さらに、第1押圧部材160には、規制部167と第1被押圧部168とが形成されている。
【0061】
規制部167は、第1押圧部材160の左側面及び右側面である。規制部167は、制動部材60が収容部2Cに収容された状態で、収容部2Cの内壁面に当接することによって、第1押圧部材160の回転軸芯C周りの回動を規制する。
【0062】
第1被押圧部168は、第1押圧部材160の後面である。第1被押圧部168は、制動部材60の後側に露出しており、制動部材60が収容部2Cに収容されていない状態で、作業者の指先によって前向きに押圧されることが可能となっている。
【0063】
第2押圧部材260は、第1押圧部材160と同一形状の樹脂成形品である。第2押圧部材260は、第1押圧部材160とは逆向きの姿勢で第1押圧部材160に組み合わされる。これにより、第1押圧部材160に係る第1当接部161が第2押圧部材260に係る第2当接部261として機能し、第1押圧部材160に係る第1バネ受け部162が第2押圧部材260に係る第2バネ受け部262として機能し、第1押圧部材160に係る第3バネ受け部169が第2押圧部材260に係る第4バネ受け部269として機能する。また、第1押圧部材160に係る規制部167が第2押圧部材260に係る規制部267として機能し、第1押圧部材160に係る第1被押圧部168が第2押圧部材260に係る第2被押圧部268として機能する。さらに、第1押圧部材160に係る受け部164と第2押圧部材260に係る突出部266とが係合し、第1押圧部材160に係る突出部166と第2押圧部材260に係る受け部264とが係合し、第1押圧部材160に係る摺接部165と第2押圧部材260に係る摺接部265とが摺接可能に当接する。
【0064】
具体的には、第2押圧部材260には、上下方向において貫通し、かつ前後方向に延びる長穴260Hが貫設されている。長穴260Hの内周面のうちの後側に位置する内壁面には、半円筒面である第2当接部261が形成されている。長穴260Hの内周面のうちの前側に位置する内壁面には、略柱状の第2バネ受け部262が後向きに突出するように形成されている。
【0065】
また、第2押圧部材260には、案内部263が形成されている。案内部263は、受け部264と摺接部265と突出部266とにより構成されている。
【0066】
受け部264は、長穴260Hの内周面のうちの前側に位置する内壁面に下側から隣接して設けられ、長穴260Hの前側部分を左右方向において狭くするように突出している。
【0067】
摺接部265は、第2押圧部材260の後側部分に形成されている。摺接部265は、上下方向において第2押圧部材260の前側部分よりも段状に薄くされている。換言すると、第2押圧部材260の下面は平坦であり、第2押圧部材260の上面における摺接部265よりも前側に位置する領域は、摺接部265よりも上側に膨出している。
【0068】
突出部266は、第2押圧部材260の後端部に形成されている。突出部266は、第2当接部261より後側の位置で摺接部265から上向きに延びた後、二股に分かれて後向きに突出している。突出部266の二股部分の中央には、略柱状の第4バネ受け部269が後向きに突出するように形成されている。
【0069】
さらに、第2押圧部材260には、規制部267と第2被押圧部268とが形成されている。
【0070】
規制部267は、第2押圧部材260の左側面及び右側面である。規制部267は、制動部材60が収容部2Cに収容された状態で、収容部2Cの内壁面に当接することによって、第2押圧部材260の回転軸芯C周りの回動を規制する。
【0071】
第2被押圧部268は、第2押圧部材260の前面である。第2被押圧部268は、制動部材60の前側に露出しており、制動部材60が収容部2Cに収容されていない状態で、作業者の指先によって後向きに押圧されることが可能となっている。
【0072】
第1押圧部材160と第2押圧部材260とが組み合わされると、第1押圧部材160の突出部166は、第2押圧部材260の受け部264の下面と当接した状態になり、第2押圧部材260の突出部266は、第1押圧部材160の受け部164の上面と当接した状態になる。同時に、第1押圧部材160の摺動部165と、第2押圧部材260の摺動部265とが当接した状態になる。
【0073】
また、第1押圧部材160と第2押圧部材260とが組み合わされると、第1押圧部材160の突出部166の左側面及び右側面が第2押圧部材260の長穴260Hの内壁面と当接した状態になり、第2押圧部材260の突出部266の左側面及び右側面が第1押圧部材160における長穴160Hの内壁面に当接した状態になる。
【0074】
こうして、案内部163、263は、第1押圧部材160及び第2押圧部材260の前後方向の相対変位を許容しつつ、上下方向の相対変位及び左右方向の相対変位を規制する。
【0075】
第1付勢バネ270は、第2当接部261側から後向きに突出する第4バネ受け部269と、第1バネ受け部162との間に設けられている。第1付勢バネ270は、第2当接部261と第1バネ受け部162とを前後方向において離間させるように付勢する。第2付勢バネ170は、第1当接部161側から前向きに突出する第3バネ受け部169と、第2バネ受け部262との間に設けられている。第2付勢バネ170は、第1当接部161と第2バネ受け部262とを前後方向において離間させるように付勢する。つまり、第1付勢バネ270と第2付勢バネ170とは、並列関係にある。
【0076】
第1可動体210の被制動部211は、制動部材60の第1当接部161と第2当接部261との間に、以下のようにして組み付けられる。
図11に示すように、作業者が第1押圧部材160の第1被押圧部168と、第2押圧部材260の第2被押圧部268とを指先で摘んで、第1付勢バネ270及び第2付勢バネ170の付勢力に抗しつつ、第1被押圧部168と第2被押圧部268とを矢印D1、D2で示す方向に押圧する。すると、第1押圧部材160と第2押圧部材260と前後方向において相対変位し、第1被押圧部168と第2被押圧部268とが前後方向において接近する一方、第1当接部161と第2当接部261とが前後方向において離間する。その結果、第1当接部161と第2当接部261との間に形成される空間が被制動部211の外径よりも大きくなるので、矢印D3で示すように、被制動部211を第1当接部161と第2当接部261との間に容易に挿入することができる。
【0077】
その後、作業者が第1被押圧部168と第2被押圧部268とを矢印D1、D2で示す方向に押圧することを止めると、第1当接部161と第2当接部261とは、第1付勢バネ270と第2付勢バネ170とに付勢されて接近する。その結果、第1当接部161が前側から被制動部211に当接し、第2当接部261が後側から被制動部211に当接して、被制動部211を挟みながら押圧する状態となる。
【0078】
このような制動部材60は、被制動部211に所定の摩擦力を付与して、被制動部211の回転軸芯C周りの回転を制動する。この際、規制部167、267は、収容部2Cの内壁面に当接して、第1押圧部材160及び第2押圧部材260の回転軸芯C周りの回動を規制する。
【0079】
ここで、制動部材60が第1可動体210に付与する所定の摩擦力は、ねじりコイルばね50の付勢力より大きくされる一方、電動モータ9から伝達される回転駆動力よりも小さくされている。このため、制動部材60は、第1可動体210の端面210Bがストッパ224を介して角度規制部114に当て止まるまでは、第1可動体210の回転軸芯C周りの回転を抑制する。その結果、第1可動体210が第1回転体110に対して回り遅れる。そして、端面210Bがストッパ224を介して角度規制部114に当て止まった後は、制動部材60は、電動モータ9から伝達される回転駆動力に負けて、被制動部211との間に滑りを生じる。その結果、第1可動体210は、第1回転体110とともに回転軸芯C周りに回転する。
【0080】
切替手段20は、クラッチ装置10において、以下のようにして接続状態と遮断状態とを切り替える。接続状態では、第1回転体110と第2回転体120とが一体回転し、遮断状態では、第1回転体110とは無関係に第2回転体120が回転可能である。
【0081】
図12は、第1回転体110が停止した状態を示している。第1可動体210及び第1回転体110の相対位置関係に着目した場合、第1可動体210は、第1回転体110に対して初期位置にある。なお、第1回転体110は、電動モータ9の回転に伴って、
図12〜
図14に示す姿勢だけでなく、回転軸芯C周りに任意の姿勢をとり得る。
【0082】
この場合、ストッパ224と角度規制部114との間に小さなガタが確保され、第3係止部225とねじりコイルばね50の他端50Bとの間にも小さなガタが確保されている。第1回転体110が第1可動体210に対して正方向に回動しようとすると、第3係止部225がねじりコイルばね50の他端50Bを押して、ねじりコイルばね50をさらに捻ろうとする。この際、ねじりコイルばね50に蓄えられた付勢力により、ねじりコイルばね50の他端50Bは、第3係止部225を第1可動体210に対して逆方向に付勢する。言い換えれば、第1係止部216に係止されたねじりコイルばね50の一端50Aは、第1可動体210を初期位置に向かって正方向に付勢する。この状態では、爪部223は、回転軸芯Cに近づいて、被係合部124から離反している。その結果、第1回転体110と第2回転体120との間には、電動モータ9からの回転駆動力を伝達する経路が無くなり、第1回転体110とは無関係に第2回転体120が回転可能な遮断状態となる。なお、第2回転体120は、
図12〜
図14の紙面手前側に位置しているので、二点鎖線で図示する。
【0083】
図13及び
図14は、電動モータ9に回転駆動されて第1回転体110が
図12に示す状態から正方向に回転する状態を示している。第1可動体210及び第1回転体110の相対位置関係に着目した場合、
図13は、第1可動体210が第1回転体110に対して初期位置から逆方向に所定角度αまで回動する途中の状態を示し、
図14は、第1可動体210が第1回転体110に対して初期位置から逆方向に所定角度αまで回動した状態を示している。
【0084】
上述した通り、制動部材60は、第1可動体210の端面210Bがストッパ224を介して角度規制部114に当て止まるまで、すなわち、第1可動体210が第1回転体110に対して初期位置から逆方向に所定角度αまで回動するまでは、第1可動体210の回転軸芯C周りの回転を抑制する。このため、第1可動体210は、
図12に示す状態から
図14に示す状態に移行するまでの間、第1回転体110に対して回り遅れる。そして、
図14に示すように、端面210Bがストッパ224を介して角度規制部114に当て止まった後は、制動部材60は、電動モータ9から伝達される回転駆動力に負けて、第1可動体210の被制動部211との間に滑りを生じる。その結果、第1可動体210は第1回転体110とともに回転軸芯C周りに正方向に回転する。
【0085】
図13に示す状態(
図12に示す状態から
図14に示す状態に移行する途中の状態)では、ストッパ224が角度規制部114に当接されて正方向に押される一方、制動部材60が第1可動体210の回転軸芯C周りの回転を抑制する。このため、第2可動体220が偏心軸芯H周りに正方向に回動する。この際、ストッパ224は、角度規制部114に接したまま滑ることにより、第2可動体220の姿勢を決める。このため、爪部223は、ストッパ224に案内されて、回転軸芯Cから離れて被係合部124に接近する。
【0086】
そして、
図14に示す状態まで移行すると、第2可動体220がさらに偏心軸芯H周りに正方向に回動する。このため、爪部223が回転軸芯Cからさらに離れて、被係合部124に係合する。その結果、第1回転体110と第2回転体120との間には、電動モータ9からの回転駆動力を伝達する経路が形成され、第1回転体110と第2回転体120とが正方向に一体回転可能な接続状態となる。そして、第2回転体120は、第1回転体110、第1可動体210及び第2可動体220とともに回転軸芯C周りに正方向に回転する。
【0087】
また、この際、第2可動体220が第1可動体210の軸芯H周りの回動に伴って、第3係止部225がねじりコイルばね50の付勢力を蓄えるように、ねじりコイルばね50の他端50Bを正方向にねじる。このため、接続状態では、ねじりコイルばね50に、第1可動体210を初期位置まで復帰させることが可能な強い付勢力が蓄えられる。
【0088】
次に、電動モータ9の回転が停止して、それまで正方向に回転していた第1回転体110が停止した場合、例えば
図14に示す状態で第1回転体110が停止した場合、被制動部211に電動モータ9の回転駆動力が作用しなくなるので、制動部材60が再び第1可動体210の回転軸芯C周りの回転を抑制する。そうすると、
図13に示すように、ねじりコイルばね50に蓄えられた強い付勢力が第1回転体110を押し戻すように作用して、第1回転体110を逆方向に回転させる。
【0089】
図13に示す状態(
図14に示す状態から
図12に示す状態に移行する途中の状態)では、ストッパ224もねじりコイルばね50の他端50Bに押されて角度規制部114に当接したまま逆方向に押し戻される一方、制動部材60が第1可動体210の回転軸芯C周りの回転を抑制する。このため、第2可動体220が偏心軸芯H周りに逆方向に回動する。この際も、ストッパ224は、角度規制部114に接したまま滑ることにより、第2可動体220の姿勢を決める。このため、爪部223は、ストッパ224に案内されて、回転軸芯Cに近づいて被係合部124から離反する。
【0090】
そして、
図12に示す状態まで移行すると、第2可動体220がさらに偏心軸芯H周りに逆方向に回動し、第1可動体210が第1回転体110に対して初期位置に復帰する。このため、爪部223が回転軸芯Cにさらに近づいて、被係合部124からさらに離反する。その結果、第1回転体110と第2回転体120とが遮断状態となる。
【0091】
一方、電動モータ9の誤動作(例えば、電動モータ9の誤配線)により、第1回転体110が
図12に示す状態から逆方向に回転する場合、角度規制部114が第1可動体210の端面210Aに当接するので、電動モータ9の回転駆動力が角度規制部114を介して第1可動体210に伝達される。このため、制動部材60は、電動モータ9から伝達される回転駆動力に負けて、被制動部211との間に滑りを生じる。その結果、第1可動体210は第1回転体110とともに回転軸芯C周りに逆方向に回転する。この際、ストッパ224もねじりコイルばね50の他端50Bに押されて角度規制部114に当接したままの状態が維持されるので、第2可動体220は偏心軸芯H周りに回動せず、爪部223が被係合部124から離反したままとなる。その結果、第1回転体110と第2回転体120とは、遮断状態が継続される。
【0092】
次に、出力部8について説明する。
図1に示すように、出力部8は、大径の第1出力ギヤ8Aと、小径の第2出力ギヤ8Bと、扇型の第3出力ギヤ8Cと、伝達軸8Dとを備える。第1出力ギヤ8A及び第2出力ギヤ8Bは同軸構成の一体品である。第1出力ギヤ8A及び第2出力ギヤ8Bは、支持軸3と間隔をおいて下側ハウジング2A及び上側ハウジング2Bに両端支持された支持軸4に回転可能に支持されている。第1出力ギヤ8Aは、伝達ギヤ129と噛み合っている。第1出力ギヤ8Aの下側に位置する第2出力ギヤ8Bは第3出力ギヤ8Cと噛み合っている。
【0093】
第3出力ギヤ8Cは、伝達軸8Dの一端に結合されている。伝達軸8Dの中間部は下側ハウジング2Aに回転可能に支持されている。そして、伝達軸8Dの他端は、下側ハウジング2Aの外側に突出しており、作動アーム7と結合されている。
【0094】
すなわち、第2回転体120が回転すれば、伝達ギヤ129、第1出力ギヤ8A、第2出力ギヤ8B、第3出力ギヤ8C及び伝達軸8Dを介して作動アーム7にその回転が伝達されて、作動アーム7が伝達軸8D周りに揺動する。逆に、作動アーム7が伝達軸8Dに揺動すれば、伝達軸8D、第3出力ギヤ8C、第2出力ギヤ8B、第1出力ギヤ8A及び伝達ギヤ129を介して第2回転体120にその揺動が伝達されて、第2回転体120が回転軸芯C周りに回転する。
【0095】
上記構成である実施例のクラッチ装置10が適用されたアクチュエータ1は、以下の通り、動作する。
【0096】
コントローラに制御されて電動モータ9が停止した状態では、第1回転体110も停止する。この状態では、上述したように、切替手段20が第1回転体110と第2回転体120とを遮断状態に切り替えるので、第2回転体120は第1回転体110とは無関係に回転可能となる。その結果、作動アーム7は、電動モータ9とは無関係に伝達軸8D周りに揺動可能となる。
【0097】
その一方、コントローラに制御されて電動モータ9が回転すると、第1回転体110が正方向に回転駆動される。そうすると、上述したように、切替手段20が第1回転体110と第2回転体120とを接続状態に切り替えるので、第2回転体120が第1回転体110とともに正方向に回転する。その結果、作動アーム7にその回転が伝達されて、作動アーム7が伝達軸8D周りに正方向に揺動する。
【0098】
その後、電動モータ9が停止すれば、切替手段20が再び第1回転体110と第2回転体120とを遮断状態に切り替えるので、作動アーム7は、電動モータ9とは無関係に伝達軸8D周りに揺動可能となる。
【0099】
なお、作動アーム7を
図1に示す状態に復帰させるリターンスプリング(図示せず)を作動アーム7に装着してもよい。この場合、電動モータ9の回転に伴って作動アーム7が
図1に示す位置から正方向に揺動した後、電動モータ9の回転が停止すると、リターンスプリングに付勢されて、作動アーム7が電動モータ9とは無関係に、
図1に示す位置に早期に復帰できる。
【0100】
また、電動モータ9の誤動作(例えば、電動モータ9の誤配線)により、第1回転体110が逆方向に回転駆動される場合でも、上述したように、切替手段20は、第1回転体110と第2回転体120とを遮断状態に維持する。このため、電動モータ9から作動アーム7に逆方向の回転駆動力が伝達されることはなく、アクチュエータ1の故障を防止できる。
【0101】
<作用効果>
実施例のクラッチ装置10では、
図11に示すように、組み付け作業時、第1押圧部材160の第1被押圧部168と、第2押圧部材260の第2被押圧部268とを指先で摘んで、第1被押圧部168と第2被押圧部268とを矢印D1、D2で示す方向に押圧することにより、第1当接部161と第2当接部261とが前後方向において離間する。その結果、第1当接部161と第2当接部261との間に形成される空間が被制動部211の外径よりも大きくなるので、矢印D3で示すように、被制動部211を第1当接部161と第2当接部261との間に容易に挿入することができる。つまり、このクラッチ装置10では、予め組み付け治具を押圧部材と保持部材との間に装着する作業や、作業のための組み付け治具が不要となる。
【0102】
したがって、実施例のクラッチ装置10では、組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0103】
また、このクラッチ装置10では、
図9〜
図10に示すように、第1押圧部材160及び第2押圧部材260に形成された案内部163、263は、第1押圧部材160及び第2押圧部材260の前後方向の相対変位を許容しつつ、上下方向の相対変位、及び左右方向の相対変位を規制する。そして、
図6に示すように、第1押圧部材160及び第2押圧部材260のそれぞれの左側面及び右側面が規制部167、267を兼ねている。これにより、このクラッチ装置10では、第1、2押圧部材160、260を収容するケースを別途用意する必要がなくなるため、部品点数を削減でき、その結果、製造コストを低廉化できる。
【0104】
さらに、このクラッチ装置10では、第2押圧部材260は、第1押圧部材160と同一部材である。そして、第2押圧部材260は、第1押圧部材160とは逆向きの姿勢で第1押圧部材160に組み合わされる。これにより、このクラッチ装置10では、第1、2押圧部材160、260について部品を共通化できるので、部品点数を一層削減できる。また、第1、2押圧部材160、260は樹脂成形品であるため、その金型費用も削減できる。その結果、このクラッチ装置10では、製造コストを一層低廉化できる。
【0105】
また、このクラッチ装置10では、第2押圧部材260が第1押圧部材160とは逆向きの姿勢で第1押圧部材160に組み合わされることにより、第1押圧部材160に係る受け部164と第2押圧部材260に係る突出部266とが係合し、第1押圧部材160に係る突出部166と第2押圧部材260に係る受け部264とが係合し、第1押圧部材160に係る摺接部165と第2押圧部材260に係る摺接部265とが摺接可能に当接する。
【0106】
ここで、第1押圧部材160に係る摺接部165と第2押圧部材260に係る摺接部265とがそれぞれ上下方向において段状に薄く形成され、それらの摺接部165、265が当接することにより、
図10及び
図11に示すように、互いに組み合わされた第1、2押圧部材160、260の上下方向の厚みを小さくできる。また、簡素な受け部164、264、摺接部165、265及び突出部166、266によって構成された案内部163、263により、第1押圧部材160及び第2押圧部材260について、前後方向の相対変位を許容しつつ、上下方向の相対変位、及び左右方向の相対変位を確実に規制することができる。
【0107】
さらに、このクラッチ装置10では、
図6に示すように、制動部材60は、第1当接部161と第2当接部261とが第1付勢バネ270と第2付勢バネ170とに付勢されて被制動部211を挟みながら押圧することにより、被制動部211に所定の摩擦力を付与し、
図13及び
図14に示すように、第1回転体110に対する第1可動体210の回り遅れを生じさせる。つまり、このクラッチ装置10では、並列関係にある2個の第1、2付勢バネ270、170によって、第1当接部161と第2当接部261とを接近させて被制動部211を締め上げるようにして第1可動体210に所定の摩擦力を付与することから、上記従来のクラッチ装置における1個の付勢バネと比較して、第1、2付勢バネ270、170を小型化できる。ここで、第1、2付勢バネ270、170は、同じ圧縮コイルバネであるので、バネ線径が細く、巻き径も小さいものを使用できる。
【0108】
また、
図8〜
図10に示すように、第1付勢バネ270は、被制動部211に対して後側に位置し、第2付勢バネ170は、被制動部211に対して前側に位置している。つまり、第1付勢バネ270と第2付勢バネ170とは、上下方向において重ならない。その結果、このクラッチ装置10では、回転軸芯方向において、制動部材60を薄型化でき、ひいてはクラッチ装置10の薄型化を実現できる。
【0109】
また、実施例のアクチュエータ1は、上記のクラッチ装置10を薄型化できるため、自身の薄型化を実現できる。
【0110】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0111】
例えば、制動部材がケースを有し、第1、2押圧部材及び第1、2付勢バネがケースに収容され、そのケースにおける回転軸芯の周方向を向く側面が規制部を兼ねていてもよい。また、実施例に係る制動部材60について、第2付勢バネ170を取り除き、第1付勢バネ270のみによって、被制動部211に所定の摩擦力を付与する構成とすることもできる。
【0112】
また、第1押圧部材及び第2押圧部材の一方が第1押圧部材及び第2押圧部材の他方と、第1、2付勢バネとを収容するケースを兼ねていてもよい。
【0113】
また、第1、2被押圧部は、第1、2押圧部材の端面であってもよいし、第1、2押圧部材から回転軸芯方向に突出する凸部であってもよい。