特許第6520375号(P6520375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520375
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】溶融ガラス移送装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/42 20060101AFI20190520BHJP
   C03B 5/033 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C03B5/42
   C03B5/033
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-100078(P2015-100078)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-216275(P2016-216275A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】櫻林 達
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−126433(JP,A)
【文献】 特開2006−278094(JP,A)
【文献】 特開昭63−182221(JP,A)
【文献】 特開2013−199385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B1/00−5/44
C03B8/00−8/04
C03B19/12−20/00
C03B7/00−7/22
C03B9/00−17/06
C03B19/00−19/10
C03B21/00−21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向端部にフランジを有する少なくとも2つの白金製又は白金合金製の管材を備え、
前記フランジ同士を向き合わせて並設された前記各管材にて溶融ガラスを流通させる流路が構成されており、
前記各管材の前記フランジ同士の間には、前記各管材の間の電気的絶縁を図るための絶縁層が設けられ
前記絶縁層として、絶縁性を有する材質からなる繊維集合体を備えていることを特徴とする溶融ガラス移送装置。
【請求項2】
前記繊維集合体は、繊維状耐火物を編み込んだクロス状部材、繊維状耐火物を抄造したペーパー状部材、及び繊維状耐火物を圧縮成形したブランケット状部材のいずれかよりなることを特徴とする請求項に記載の溶融ガラス移送装置。
【請求項3】
前記管材の前記フランジの間には、前記流路を流通する溶融ガラスの流入を促進するガラス流入促進部が形成され、
前記絶縁層として、前記ガラス流入促進部に流入して冷却固化されたガラスを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融ガラス移送装置。
【請求項4】
前記ガラス流入促進部が、前記管材の筒部から前記フランジへと移行する屈曲部位に形成されたテーパ部を含むことを特徴とする請求項に記載の溶融ガラス移送装置。
【請求項5】
前記ガラス流入促進部が、前記管材の筒部から前記フランジへと移行する屈曲部位に形成された段差部を含むことを特徴とする請求項に記載の溶融ガラス移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に溶融ガラスを流通させる白金又は白金合金からなる管材を有する溶融ガラス移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスリボン等のガラス物品の成形の際、ガラス溶融炉でガラス原料を溶融して得られた溶融ガラスは、清澄工程や撹拌工程等の各種工程を経て成形部へ供給される。このとき、ガラス溶融炉内の溶融ガラスは、所定の流路を流通して成形部まで移送されるが、その流路としては、例えば特許文献1に開示されるように、耐熱性や耐酸化性を確保する観点から、白金や白金合金等からなる管材を用いるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−216535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような溶融ガラス移送装置では、白金又は白金合金からなる管材に電流を流すことで生じる抵抗加熱(ジュール熱)によって、管材内を流れる溶融ガラスの温度、ひいては流量の調節が可能である。
【0005】
また、上記特許文献1の溶融ガラス移送装置では、溶融ガラスの流路が複数の管材で形成されている。このような構成では、各管材に流す電流を個別に制御することで、溶融ガラスの流路における各管材に対応する区間毎の温度調節が可能となり、流路を流れる溶融ガラスのより好適な温度制御を実現できるが、その場合、各管材間の電気的絶縁を如何にして確保するかが課題となる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、溶融ガラスの流路を構成する複数の管材毎の温度調節を可能とすべく、各管材間を電気的に絶縁することができる溶融ガラス移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する溶融ガラス移送装置は、軸方向端部にフランジを有する少なくとも2つの白金製又は白金合金製の管材を備え、前記フランジ同士を向き合わせて並設された前記各管材にて溶融ガラスを流通させる流路が構成されており、前記各管材の前記フランジ同士の間には、前記各管材の間の電気的絶縁を図るための絶縁層が設けられている。
【0008】
この構成によれば、互いに向き合う各管材のフランジの間に絶縁層が設けられ、その絶縁層によって各管材間の電気的絶縁が図られる。このため、管材毎に流す電流の制御が可能となり、その結果、管材毎の温度調節が可能となる。
【0009】
上記溶融ガラス移送装置において、前記絶縁層として、絶縁性を有する材質からなる繊維集合体を備えることが好ましい。
この構成によれば、繊維集合体よりなる絶縁層によって、各管材間の電気的絶縁を図ることができる。また、繊維集合体の持つ弾性によって各管材の伸縮変形が許容されるため、管材の変形破損や位置ずれ等を抑制することができる。
【0010】
上記溶融ガラス移送装置において、前記繊維集合体は、繊維状耐火物を編み込んだクロス状部材、繊維状耐火物を抄造したペーパー状部材、及び繊維状耐火物を圧縮成形したブランケット状部材のいずれかよりなることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、繊維集合体が、繊維状耐火物を編み込んだクロス状部材、繊維状耐火物を抄造したペーパー状部材、及び繊維状耐火物を圧縮成形したブランケット状部材のいずれかよりなり、それらは軽量であり、また柔軟性が高い。そのため、繊維集合体を各管材のフランジ間に組み付ける際の施工性を向上させることができる。また、前記クロス状部材、ペーパー状部材及びブランケット状部材は比較的安価で製造可能であるため、溶融ガラス移送装置の製造コストの低減に寄与できる。
【0012】
上記溶融ガラス移送装置において、前記管材の前記フランジの間には、前記流路を流通する溶融ガラスの流入を促進するガラス流入促進部が形成され、前記絶縁層として、前記ガラス流入促進部に流入して冷却固化されたガラスを備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、フランジ形状による対応で溶融ガラスをフランジ間に引き込み、そのフランジ間で固化したガラスが各管材間の絶縁層を形成するため、各管材間を絶縁するための部材を特段必要とせず、製造コストの削減に貢献できる。
【0014】
上記溶融ガラス移送装置において、前記ガラス流入促進部が、前記管材の筒部から前記フランジへと移行する屈曲部位に形成されたテーパ部を含むことが好ましい。
この構成によれば、ガラス流入促進部が管材の筒部からフランジへと移行する屈曲部位に形成されたテーパ部を含むため、管材内を流れる溶融ガラスをガラス流入促進部に好適に流入させることが可能となる。
【0015】
上記溶融ガラス移送装置において、前記ガラス流入促進部が、前記管材の筒部から前記フランジへと移行する屈曲部位に形成された段差部を含むことが好ましい。
この構成によれば、ガラス流入促進部が管材の筒部からフランジへと移行する屈曲部位に形成された段差部を含むため、管材内を流れる溶融ガラスをガラス流入促進部に好適に流入させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の溶融ガラス移送装置によれば、溶融ガラスの流路を構成する複数の管材毎の温度調節を可能とすべく、各管材間を電気的に絶縁することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における溶融ガラス移送装置の概略構成図である。
図2】同形態の溶融ガラス移送装置の製造方法を説明するための説明図である。
図3】同形態の溶融ガラス移送装置の製造方法を説明するための模式図である。
図4】別例の溶融ガラス移送装置の製造方法を説明するための説明図である。
図5】別例の溶融ガラス移送装置における管材同士の境界部分を示す模式図である。
図6】別例の溶融ガラス移送装置における管材同士の境界部分を示す模式図である。
図7】別例の溶融ガラス移送装置における管材同士の境界部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、溶融ガラス移送装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の溶融ガラス移送装置10は、ガラスリボン等のガラス物品を製造する製造装置に用いられ、ガラス溶融炉Mでガラス原料を溶融させて得られた溶融ガラスを例えば成形部へ移送するためのものである。溶融ガラス移送装置10から成形部に移送された溶融ガラスは、該成形部にてガラスリボン等のガラス物品に成形される。
【0019】
溶融ガラス移送装置10は、溶融ガラスが流通される流路Fを構成する第1及び第2の管材11,12を備えている。第1及び第2の管材11,12は共に白金又は白金合金にて形成されている。第1及び第2の管材11,12は円筒状をなし、第1の管材11の軸方向両端部にはフランジ11a,11bがそれぞれ形成され、第2の管材12の軸方向両端部にはフランジ12a,12bがそれぞれ形成されている。本実施形態では、第1の管材11の各フランジ11a,11bは、第1の管材11の軸線に対して垂直な平板状をなしている。第2の管材12の各フランジ12a,12bも同様に、第2の管材12の軸線に対して垂直な平板状をなしている。そして、第1の管材11の一方のフランジ11bと第2の管材12の一方のフランジ12aとをそれらの板面同士が略平行となるように向かい合わせて、第1及び第2の管材11,12が軸方向に並設されている。
【0020】
これらフランジ11b,12aの間には、第1の管材11と第2の管材12との間の電気絶縁を図るための絶縁層13が介装されている。なお、フランジ11b,12a同士は、図示しないボルト等によって電気的絶縁を確保しつつ互いに固定されている。
【0021】
本実施形態では、絶縁層13は、アルミナやシリカ等の耐火性材料からなるシート状の繊維集合体にて構成されている。より具体的には、絶縁層13としては、繊維状耐火物を編み込んだクロス状部材や、繊維状耐火物を抄造したペーパー状部材、繊維状耐火物を圧縮成形したブランケット状部材等を用いることができる。絶縁層13には、第1及び第2の管材11,12の内径以上の径の貫通孔13aが流路Fに対応して形成されている。なお、貫通孔13aの径は、第1及び第2の管材11,12の内径と略同一であることがより好ましい。
【0022】
この絶縁層13の厚み(フランジ11b,12aの間隔)は、第1及び第2の管材11,12の間の絶縁性を高めることを考えた場合には、1mm以上に設定することが好ましく、絶縁層13が介装されたフランジ11b,12a間からの溶融ガラスの漏れにくさを考えた場合には、100mm以下に設定することが好ましい。つまり、絶縁層13の厚みは、絶縁性と溶融ガラスの漏れにくさの両方を考慮して、1mm〜100mm以下に設定されることが好ましい。また、絶縁層13の厚みのより好ましい設定範囲は1.5〜10mmであり、さらに好ましい設定範囲は2〜5mmである。
【0023】
上記溶融ガラス移送装置10では、第1及び第2の管材11,12に電流を流すことで生じる抵抗加熱(ジュール熱)によって、それらの内側を流れる溶融ガラスの温度調節(流量調節)が可能となっている。電源14からの電流は、制御回路15にて制御されるリレー16を介して第1及び第2の管材11,12に供給され、該リレー16によって第1及び第2の管材11,12に対して個別に、且つ選択的に電流を供給可能とされている。なお、リレー16からの接続線は、第1及び第2の管材11,12の各フランジ11a,11b,12a,12bに接続されている。
【0024】
次に、フランジ11b,12a間への絶縁層13の組み付け方法について説明する。
図2に示すように、まず、各管材11,12に電流を流して該管材11,12を加熱する加熱工程S1を行う。この加熱工程S1によって、各管材11,12が膨張し、該膨張によって各管材11,12の軸方向の長さが長くなる。
【0025】
次に、図2及び図3に示すように、第1の管材11のフランジ11bと第2の管材12のフランジ12aとで絶縁層13を挟み込む挟み込み工程S2を行う。挟み込み工程S2では、まず、ガラス溶融炉M側のガラス供給口に第1の管材11のフランジ11a側の開口を突き合わせ、その後、各管材11,12のフランジ11b,12aにて絶縁層13が挟み込まれる。このとき、各管材11,12の端部の各開口11c,12cと絶縁層13の貫通孔13aとが対応するように、絶縁層13がフランジ11b,12aに挟み込まれる。また、このとき、フランジ11b,12aと絶縁層13とは隙間無く当接される。なお、この挟み込み工程S2の前に、絶縁層13をフランジ11b,12aのいずれかの板面に仮固定することが好ましい。
【0026】
次に、図2に示すように、前記ボルト等によってフランジ11b,12a同士を固定する固定工程S3を行う。これにより、第1及び第2の管材11,12が互いに固定され、各管材11,12の内側に溶融ガラスが流通する流路Fが構成される。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。
各管材11,12に流す電流値を制御回路15及びリレー16によって管材11,12毎に制御することで、各管材11,12内(流路F)を流通する溶融ガラスの温度を好適に調節可能となる。そして、溶融ガラスの温度を調節することで、流路Fを流通する溶融ガラスの流量の調節が可能となっている。この電流による管材11,12の個別の加熱は、フランジ11b,12a間に介在する絶縁層13によって第1及び第2の管材11,12間の電気的絶縁性が確保されていることで可能となっている。
【0028】
また、本実施形態では、各管材11,12及び絶縁層13の組み付けの際、加熱工程S1で各管材11,12を加熱膨張させた後、挟み込み工程S2で各管材11,12のフランジ11b,12aで絶縁層13を挟み込むようにしている。このため、各管材11,12の軸方向への線膨張を考慮して隙間を設けつつ各管材11,12を配置するといった処置が不要となり、各管材11,12及び絶縁層13の組み付けが容易となる。
【0029】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)溶融ガラスの流路Fを構成する各管材11,12は、それらのフランジ11b,12a同士を向き合わせて並設され、該フランジ11b,12aの間には、各管材11,12の間の電気的絶縁を図るための絶縁層13が設けられる。これにより、絶縁層13によって各管材11,12間の電気的絶縁が図られるため、各管材11,12に流す電流を個別に制御することが可能となり、その結果、管材11,12毎の温度調節が可能となる。
【0030】
(2)絶縁層13は、絶縁性を有する材質からなる繊維集合体であり、その繊維集合体よりなる絶縁層13によって、各管材11,12間の電気的絶縁を図ることができる。また、繊維集合体で構成されている絶縁層13を所定以上の厚さで構成した場合、適度な弾性を有するため、各管材11,12の伸縮変形を許容するスペーサとしても絶縁層13を機能させることができる。すなわち、管材11,12の変形破損や位置ずれ等を抑制できる。なお、この繊維集合体に用いる材料としては、耐火性に優れたアルミナやシリカ等を用いることが好ましい。
【0031】
(3)絶縁層13を構成する繊維集合体は、繊維状耐火物を編み込んだクロス状部材、繊維状耐火物を抄造したペーパー状部材、及び繊維状耐火物を圧縮成形したブランケット状部材のいずれかよりなることが好ましい。これらクロス状部材、ペーパー状部材及びブランケット状部材は軽量であり、また柔軟性が高いため、絶縁層13(繊維集合体)を各管材11,12のフランジ11b,12a間に組み付ける際の施工性を向上させることができる。また、クロス状部材、ペーパー状部材及びブランケット状部材は比較的安価で製造可能であるため、溶融ガラス移送装置10の製造コストの低減に寄与できる。
【0032】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
図4に示すように、各管材11,12及び絶縁層13の組み付けにおいて、各管材11,12のフランジ11b,12aで絶縁層13を挟み込む挟み込み工程S11の後に、各管材11,12を加熱する加熱工程S12を行ってもよい。この場合、挟み込み工程S11において、フランジ11b,12aの間や、第1の管材11のフランジ11aとガラス溶融炉M側の前記ガラス供給口との間等に、各管材11,12の軸方向への線膨張分を考慮した隙間を設けることが好ましい。また、この場合、挟み込み工程S11後の加熱工程S12では、各管材11,12の軸方向への線膨張によって絶縁層13がフランジ11b,12aにて圧縮されるが、その圧縮後の絶縁層13の厚みは、各管材11,12間の絶縁性を高めることを考えた場合には、1mm以上に設定することが好ましい。また、フランジ11b,12a間からの溶融ガラスの漏れにくさを考えた場合には、圧縮後の絶縁層13の厚みを10mm以下に設定することが好ましい。更に、加熱工程S12時の各管材11,12の軸方向への線膨張の許容性を考えた場合には、圧縮後の絶縁層13の厚みを5mm以上に設定することが好ましい。つまり、挟み込み工程S11の後に加熱工程S12を行う場合には、圧縮後の絶縁層13の厚みは、絶縁性、溶融ガラスの漏れにくさ、及び線膨張の許容性の全てを考慮して、5mm以上、10mm以下に設定されることが好ましい。
【0033】
・上記実施形態では、絶縁層13を繊維集合体としたが、フランジ11b,12a間の電気的絶縁を図れるものであれば、繊維集合体以外のものに変更してもよい。
例えば、図5に示すように、各管材11,12のフランジ11b,12aの間に、流路Fを流通する溶融ガラスの流入を促進するガラス流入促進部20を形成し、そのガラス流入促進部20に流入して冷却固化されたガラス栓21を絶縁層として構成してもよい。
【0034】
同図に示す例では、各管材11,12の筒部(本体部分)からフランジ11b,12aへと移行する屈曲部位にテーパ部11d,12dが形成されている。各テーパ部11d,12dは、フランジ11b,12aの内周縁部の全周に亘って形成され、軸方向外側に向かって拡径する傾斜状をなしている。また、フランジ11b,12aにおいて、テーパ部11d,12dの外周側には平坦部23が形成されている。平坦部23は、第1及び第2の管材11,12の軸線に対して垂直な平板状をなしている。フランジ11bの平坦部23とフランジ12aの平坦部23とは、互いに略平行となるように構成されるとともに、所定間隔だけ空けて互いに対向している。なお、フランジ11b,12a同士は、上記実施形態と同様に、図示しないボルト等によって電気的絶縁を確保しつつ互いに固定されている。
【0035】
このような構成では、各管材11,12のフランジ11b,12aが互いに対向する組み付け状態において、フランジ11b,12aの各テーパ部11d,12dの対向間隔が外周側に向かって狭くなるように構成されている。つまり、各テーパ部11d,12dの対向間隔は内周側で広くなっているため、流路Fを流れる溶融ガラスが各テーパ部11d,12dの間に容易に流入可能となっている。即ち、同例では、各テーパ部11d,12dによって流路Fを流通する溶融ガラスの流入を促進するガラス流入促進部20が形成されている。
【0036】
上記のように構成された溶融ガラス移送装置10では、第1及び第2の管材11,12にて形成される流路Fに溶融ガラスを流通させると、その溶融ガラスがフランジ11b,12aの各テーパ部11d,12dの間(即ち、ガラス流入促進部20)に流入する。各テーパ部11d,12dの間に流入した溶融ガラスは、外周側に向かうにつれて冷却され、各テーパ部11d,12dの間で固化されてガラス栓21となる。なお、各テーパ部11d,12dの間に流入した溶融ガラスは、各テーパ部11d,12dの対向間隔が外周側ほど狭くなっていることで流入抵抗が増加することから、フランジ11b,12aの間においてテーパ部11d,12d(ガラス流入促進部20)よりも外周側に侵入しにくくなっている。また、各テーパ部11d,12dは、フランジ11b,12aの内周縁部の全周に亘って形成されているため、その各テーパ部11d,12d内で固化されたガラス栓21も周方向の全体に亘って形成される。
【0037】
このような構成によれば、フランジ11b,12aの各テーパ部11d,12dの間(ガラス流入促進部20)に、各管材11,12の間の電気的絶縁を図る絶縁層としてのガラス栓21が形成されるため、各管材11,12に流す電流を個別に制御することが可能となり、その結果、管材11,12毎の温度調節が可能となる。また、フランジ11b,12aの形状による対応で溶融ガラスをフランジ11b,12a間に引き込み、そのフランジ11b,12a間で固化したガラス栓21が各管材11,12間の絶縁層を構成するため、各管材11,12間を絶縁するための特段の部材を必要とせず、製造コストの削減に貢献できる。また、フランジ11b,12a間がガラス栓21にて閉塞されるため、流路Fを流れる溶融ガラスがフランジ11b,12a間から外部に漏れ出すことを抑制することができる。また、ガラス流入促進部20が、管材11,12の筒部からフランジ11b,12aへと移行する屈曲部位に形成されたテーパ部11d,12dを含むため、管材11,12内を流れる溶融ガラスをガラス流入促進部20に好適に流入させることが可能となっている。
【0038】
なお、図5の例において、図6に示すように、フランジ11b,12aの各平坦部23の間に上記実施形態の絶縁層13(絶縁性を有する材質からなる繊維集合体)を介装してもよい。これにより、フランジ11b,12a間の絶縁性をより確実に確保することができる。また、繊維集合体に溶融ガラスが染み込んで成る複合材によって絶縁層を構成してもよい。
【0039】
また、図5の例では、フランジ11b,12aに形成したテーパ部11d,12dによってガラス流入促進部20が形成されたが、これ以外に例えば、図7に示すような、フランジ11b,12aにそれぞれ形成した段差部11e,12eによってガラス流入促進部20を形成してもよい。フランジ11b,12aは、段差部11e,12e間においては平坦部23よりも対向間隔が広く構成されている。このような構成によっても、上記の図5の例と同様の効果を得ることができる。また、この構成では、ガラス流入促進部20が、管材11,12の筒部からフランジ11b,12aへと移行する屈曲部位に形成された段差部11e,12eを含むため、管材11,12内を流れる溶融ガラスをガラス流入促進部20に好適に流入させることが可能となっている。
【0040】
また、図5図7を組合せて、段差部の一部のみをテーパ状(傾斜面)とした形状でガラス流入促進部20を構成してもよい。
また、図5の例では、フランジ11b,12aの両方にテーパ部11d,12dをそれぞれ形成したが、これに特に限定されるものではなく、フランジ11b,12aのいずれか一方のみにテーパ部を形成し、他方のフランジ11b,12aを上記実施形態のようなテーパ部の無い平板状としてもよい。また、図5の例では、フランジ11b,12aは、テーパ部11d,12dの外周側に平坦部23を有しているが、この平坦部23を省略した形状としてもよい。
【0041】
・上記実施形態の加熱工程S1では、電流を流すことで各管材11,12を加熱するが、それ以外の手段によって各管材11,12を加熱してもよい。
・上記実施形態では、特に言及していないが、第1及び第2の管材11,12を同軸上に配置してもよく、また、それ以外に、第1の管材11に対して第2の管材12を傾斜させて配置してもよい。なお、第1の管材11に対して第2の管材12を傾斜させて配置する場合においても、フランジ11b,12a同士を略平行に構成することが好ましい。
【0042】
・溶融ガラス移送装置10の流路Fを構成する管材11,12の個数は上記実施形態の2つに限定されるものではなく、構成に応じて3つ以上に変更してもよい。
・上記実施形態では特に言及していないが、管材11,12間だけでなく、管材11,12と接続される他の設備との間にさらに絶縁層13を設けてもよい。例えば、ガラス溶融炉Mと管材11との間にさらに絶縁層13を設けてもよいし、管材12と下流設備(図示せず)との間にさらに絶縁層13を設けてもよい。
【0043】
・上記実施形態のガラス物品の製造工程においてガラス溶融炉Mから成形部までに任意の工程を設けてもよい。例えば、溶融ガラスを加熱して脱泡する清澄部や、溶融ガラスを撹拌する撹拌部等の工程をさらに設け、これらの工程間において溶融ガラス移送装置10を任意に配置可能である。また、上記実施形態の溶融ガラス移送装置10は、ガラス物品の製造装置におけるガラス溶融炉Mと成形部との間以外の箇所に用いるガラス移送装置に適用してもよい。例えば、複数の溶融炉を備えるガラス物品の製造装置において、各溶融炉間で溶融ガラスを移送する装置として、本発明の溶融ガラス移送装置を用いてもよい。
【0044】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記ガラス流入促進部は、互いに対向する前記各管材の前記フランジにおいて対向間隔が外周側ほど狭まるように形成されたテーパ部にて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の溶融ガラス移送装置。
【0045】
この構成によれば、ガラス流入促進部を構成するテーパ部では、フランジの対向間隔が外周側ほど狭いことから溶融ガラスの流入抵抗が外周側ほど増加する。このため、フランジの間においてガラス流入促進部よりも外周側に溶融ガラスを侵入しにくくすることが可能となる。
【0046】
(ロ)請求項2の溶融ガラス移送装置を製造する製造方法であって、
前記各管材を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記各管材の前記フランジの間に前記絶縁層を挟み込む挟み込み工程と、を備えたことを特徴とする溶融ガラス移送装置の製造方法。
【0047】
この構成によれば、各管材の線膨張を考慮して隙間を設けつつ各管材を配置するといった処置が不要となり、各管材及び絶縁層の組み付けが容易となる。
【符号の説明】
【0048】
10…溶融ガラス移送装置、11…第1の管材、12…第2の管材、11a,11b,12a,12b…フランジ、11d,12d…テーパ部、11e,12e…段差部、13…絶縁層、20…ガラス流入促進部、21…絶縁層としてのガラス栓、F…流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7