(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)植物油脂と、(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、(C)炭素数6〜14のラクトン類と、(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有し、
前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.005〜1.0質量部、前記(C)を0.000025〜0.01質量部、前記(D)を0.0000005〜0.00075質量部含有することを特徴とする、油脂含有乳風味飲料。
前記(B)が、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の油脂含有乳風味飲料。
前記(C)が、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−トリデカラクトン、γ−テトラデカラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、及びδ−テトラデカラクトンからなる群より選択される1種以上であり、
前記(D)が、アセトイン、ジアセチル、2、3−ペンタジオン、2、3−ヘキサジオン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、及び2−トリデカノンからなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の油脂含有乳風味飲料。
100質量部の(A)植物油脂に対して、0.005〜1.0質量部の(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上を含有する油脂含有飲料に、さらに、
前記(A)100質量部に対して、0.000025〜0.01質量部の(C)炭素数6〜14のラクトン類と、0.0000005〜0.00075質量部の(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有させることを特徴とする、油脂含有乳風味飲料の苦味低減方法。
100質量部の(A)植物油脂に対して、0.005〜1.0質量部の(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、0.000025〜0.01質量部の(C)炭素数6〜14のラクトン類と、0.0000005〜0.00075質量部の(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有させることを特徴とする、油脂含有乳風味飲料の製造方法。
前記(B)が、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される1種以上であり、
前記(C)が、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−トリデカラクトン、γ−テトラデカラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、及びδ−テトラデカラクトンからなる群より選択される1種以上であり、
前記(D)が、アセトイン、ジアセチル、2、3−ペンタジオン、2、3−ヘキサジオン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、及び2−トリデカノンからなる群より選択される1種以上である、請求項9に記載の嗜好性飲料用組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1等に記載されているように、植物油脂に脂肪酸を含有させることにより、乳風味を有する組成物とすることができる。しかしながら、脂肪酸類や油脂加水分解物は、特有の苦味を有しているため、脂肪酸等を含有させた植物油脂を飲食品に配合すると、乳風味だけではなく、苦味も付与されてしまう場合がある。植物油脂に対する脂肪酸等の含有量を低下させることにより、飲食品に苦味が付与されることは防止できるものの、付与される乳風味も不充分となる。なお、特許文献1に記載の香料組成物では、脂肪酸類等に加えてラクトン類等を併用しているが、単にこれらを併用した香味料組成物では、脂肪酸類等由来の苦味を抑えて充分な乳風味を付与することは困難である。
【0007】
本発明は、脂肪酸類又は油脂加水分解物を含有するにもかかわらず、苦味が非常に少なく、乳風味が良好な油脂含有組成物、当該油脂含有組成物を用いた嗜好性飲料用組成物、油脂含有乳風味飲食品の製造方法、及び乳風味組成物の苦味低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、植物油脂に、脂肪酸類及び/又は油脂加水分解物と、ラクトン類と、ケトン類とを含有させることにより、乳風味を付与することができること、脂肪酸類等は苦味を有するが、脂肪酸類等とラクトン類とケトン類の含有量を特定の範囲内に調整することにより、脂肪酸類等由来の苦味を抑えつつ、乳風味をより高められることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
[1]本発明の第一の態様に係る油脂含有乳風味
飲料は、(A)植物油脂と、(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、(C)炭素数6〜14のラクトン類と、(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有し、前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.005〜1.0質量部、前記(C)を0.000025〜0.01質量部、前記(D)を0.0000005〜0.00075質量部含有することを特徴とする。
[2]前記[1]の油脂含有乳風味
飲料においては、前記(B)が、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[3]前記[1]又は[2]の油脂含有乳風味
飲料においては、前記(C)が、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−トリデカラクトン、γ−テトラデカラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、及びδ−テトラデカラクトンからなる群より選択される1種以上であり、前記(D)が、アセトイン、ジアセチル、2、3−ペンタジオン、2、3−ヘキサジオン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、及び2−トリデカノンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[4]本発明の第二の態様に係る油脂含有乳風味
飲料の苦味低減方法は、100質量部の(A)植物油脂に対して、0.005〜1.0質量部の(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上を含有する油脂含有
飲料に、さらに、前記(A)100質量部に対して、0.000025〜0.01質量部の(C)炭素数6〜14のラクトン類と、0.0000005〜0.00075質量部の(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有させることを特徴とする。
[5]本発明の第三の態様に係
る油脂含有乳風味
飲料の製造方法は、100質量部の(A)植物油脂に対して、0.005〜1.0質量部の(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、0.000025〜0.01質量部の(C)炭素数6〜14のラクトン類と、0.0000005〜0.00075質量部の(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有させることを特徴とする。
[6]前記[
5]の油脂含有乳風味
飲料の製造方法においては
、前記(B)の含有量を1〜200質量ppm、前記(C)の含有量を0.005〜2質量ppm、前記(D)の含有量を0.1〜150質量ppbとすることが好ましい。
[
7]前記[
5]又は[
6]の油脂含有乳風味
飲料の製造方法においては、原料として、さらに、乳原料及びクリーミングパウダーからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましい。
[
8]前記[
5]
〜[7]のいずれかの油脂含有乳風味
飲料の製造方法においては、
前記(B)が、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される1種以上であり、前記(C)が、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−トリデカラクトン、γ−テトラデカラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、及びδ−テトラデカラクトンからなる群より選択される1種以上であり、前記(D)が、アセトイン、ジアセチル、2、3−ペンタジオン、2、3−ヘキサジオン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、及び2−トリデカノンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[9]本発明の第
四の態様に係る嗜好性飲料用組成物は、原料として、(A)植物油脂と、(B)炭素数8〜20の脂肪酸類と、(C)炭素数6〜14のラクトン類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、(D)炭素数4〜13のケトン類と、(E)乳原料及びクリーミングパウダーからなる群より選択される1種以上と、(F)嗜好性飲料の可溶性固形分と、を含有し、前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.005〜1.0質量部、前記(C)を0.000025〜0.01質量部、前記(D)を0.0000005〜0.00075質量部含有することを特徴とする。
[10]前記[9]の嗜好性飲料用組成物としては、前記(B)が、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される1種以上であり、前記(C)が、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−トリデカラクトン、γ−テトラデカラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、及びδ−テトラデカラクトンからなる群より選択される1種以上であり、前記(D)が、アセトイン、ジアセチル、2、3−ペンタジオン、2、3−ヘキサジオン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、及び2−トリデカノンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[11]前記[9]又は[10]の嗜好性飲料用組成物としては、前記嗜好性飲料が、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、又は抹茶飲料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、植物油脂に、脂肪酸類及び/又は油脂加水分解物とラクトン類とケトン類とをそれぞれ特定の範囲内の配合量で含有させることにより、苦味を抑えつつ、乳風味が高い、乳脂代替物として非常に優れた油脂含有乳風味組成物、及び当該組成物を用いた飲食品やその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<油脂含有乳風味組成物、乳風味組成物の苦味低減方法>
本発明に係る油脂含有乳風味組成物(以下、「本発明に係る乳風味組成物」ということがある。)は、(A)植物油脂と、(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、(C)炭素数6〜14のラクトン類と、(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有する。植物油脂に、脂肪酸類及び/又は油脂加水分解物と、ラクトン類と、ケトン類を組み合わせて含有させることにより、植物油脂を主原料とするにもかかわらず乳風味を有する組成物を得ることができる。
【0012】
成分(A)の植物油脂としては、食用油であれば特に限定されず、天然油であってもよく、加工油であってもよく、合成油であってもよい。当該食用油としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油(ココナッツオイル)、硬化ヤシ油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、大豆油、こめ油、サフラワー油(ベニバナ油)、綿実油、ひまわり油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。これらの植物油脂のうち、特にパーム油、パーム核油、ヤシ油、硬化ヤシ油、菜種油、又は中鎖脂肪酸トリグリセリドが好ましく用いられる。また、成分(A)の植物油脂としては、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
成分(B)の脂肪酸類は、炭素数8〜20である。当該脂肪酸類としては、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、炭化水素基部分が、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。当該脂肪酸類としては、具体的には、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、パルミトレイン酸(9−ヘキサデセン酸)、ヘプタデカン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、11−オクタデセン酸、リノール酸(cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸)、(9,12,15)−リノレン酸(9,12,15−オクタデカントリエン酸)、γ−リノレン酸(6,9,12−オクタデカトリエン酸)、9,11,13−オクタデカトリエン酸、アラキジン酸(エイコサン酸)、エイコセン酸、アラキドン酸(5,8,11−エイコサテトラエン酸)、及びエイコサペンタエン酸が挙げられる。
【0014】
成分(B)の油脂加水分解物は、乳脂、牛脂、豚脂又は魚油等の動物性油脂の加水分解物であってもよく、植物油脂の加水分解物であってもよい。当該植物油脂としては、成分(A)で挙げられたものと同様のものが挙げられる。油脂の加水分解方法としては、加水分解酵素による分解であってもよく、酸処理又はアルカリ処理による加水分解であってもよい。当該加水分解酵素としては、動物由来リパーゼであってもよく、微生物由来リパーゼであってもよい。
【0015】
成分(B)としては、1種又は2種以上の脂肪酸類を用いてもよく、1種又は2種以上の油脂加水分解物を用いてもよく、1種又は2種以上の脂肪酸類と1種又は2種以上の油脂加水分解物を併用してもよい。本発明において用いられる成分(B)としては、1種又は2種以上の脂肪酸類が好ましく、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸からなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。中でも、炭素数12〜18の脂肪酸類であることが好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0016】
成分(C)のラクトン類は、炭素数6〜14である。当該ラクトン類としては、5員環ラクトン又は6員環ラクトンが好ましく、具体的には、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、7−デセン−4−オリド、3−メチル−4−デセン−4−オリド、3−メチル−5−デセン−4−オリド、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−トリデカラクトン、γ−テトラデカラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、2−オクテン−5−オリド、4−メチル−5−オクタノリド、δ−ノナラクトン、2−ノネン−5−オリド、4−メチル−5−ノナノリド、δ−デカラクトン、2−デセン−5−オリド、4−メチル−5−デカノリド、δ−ウンデカラクトン、2−ウンデセン−5−オリド、4−メチル−5−ウンデカノリド、δ−ドデカラクトン、2−ドデセン−5−オリド、4−メチル−5−ドデカノリド、δ−トリデカラクトン、及びδ−テトラデカラクトンが挙げられる。
【0017】
成分(C)としては、1種のラクトンを用いてもよく、2種類以上のラクトンを組み合わせて用いてもよい。本発明において用いられる成分(C)としては、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−トリデカラクトン、γ−テトラデカラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、及びδ−テトラデカラクトンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。中でも、炭素数8〜12のラクトン類であることが好ましく、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、及びδ−ドデカラクトンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0018】
成分(D)のケトン類は、炭素数4〜13である。当該ケトン類としては、アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン)、ジアセチル(2、3−ブタンジオン)、2、3−ペンタジオン、2、3−ヘキサジオン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、1−オクテン−3−オン、2−ノナノン、3−ノナノン、8−ノネン−2−オン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、及び3−トリデカノンが挙げられる。
【0019】
成分(D)としては、1種のケトンを用いてもよく、2種類以上のケトンを組み合わせて用いてもよい。本発明において用いられる成分(D)としては、アセトイン、ジアセチル、2、3−ペンタジオン、2、3−ヘキサジオン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、及び2−トリデカノンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。中でも、炭素数7〜11のケトン類であることが好ましく、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、及び2−ウンデカノンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0020】
本発明に係る乳風味組成物は、成分(A)100質量部に対して、成分(B)を0.005〜1.0質量部、成分(C)を0.000025〜0.01質量部(0.25〜100質量ppm)、成分(D)を0.0000005〜0.00075質量部(0.005〜7.5質量ppm)含有する。植物油脂に対して、脂肪酸類等とラクトン類とケトン類を、含有量比が特定の範囲内となるように配合することにより、脂肪酸類等に由来する苦味を抑制しつつ、乳風味に非常に優れた乳風味組成物を得ることができる。
【0021】
言い換えると、成分(A)の植物油脂と、成分(B)の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上とを含有する油脂含有乳風味組成物において、さらに、成分(C)のラクトン類と成分(D)のケトン類を含有させ、かつそれぞれの含有割合を、100質量部の成分(A)に対して、成分(B)の含有量を0.005〜1.0質量部とし、成分(C)の含有量を0.000025〜0.01質量部とし、成分(D)の含有量を0.0000005〜0.00075質量部とすることにより、乳風味をさらに向上させつつ、成分(B)の脂肪酸類等に由来する苦味を低減させることができる。
【0022】
本発明に係る乳風味組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.025〜0.75質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。
本発明に係る乳風味組成物における成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.00025〜0.0075質量部(2.5〜75質量ppm)が好ましく、0.0005〜0.005質量部(5〜50質量ppm)がより好ましい。
本発明に係る乳風味組成物における成分(D)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.00001〜0.0005質量部(0.1〜5質量ppm)が好ましく、0.000025〜0.00025質量部(0.25〜2.5質量ppm)がより好ましい。
【0023】
本発明に係る乳風味組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、成分(A)〜(D)以外のその他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、例えば、甘味料、香料(但し、成分(C)及び成分(D)は除く。)、賦形剤、結合剤、流動性改良剤(固結防止剤)、酸化防止剤、pH調整剤、乳化剤等が挙げられる。
【0024】
甘味料としては、砂糖、ショ糖、オリゴ糖、ブドウ糖、果糖等の糖類、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等の高甘味度甘味料、ステビア等が挙げられる。
【0025】
賦形剤や結合剤としては、デキストリン等の澱粉分解物、麦芽糖、トレハロース等の糖類、難消化性デキストリン等の食物繊維、カゼイン等のタンパク質等が挙げられる。中でも、インスタント紅茶用組成物やインスタントコーヒー用組成物に汎用されているデキストリンが好ましい。なお、賦形剤や結合剤は、造粒時の担体としても用いられる。
流動性改良剤としては、微粒酸化ケイ素、第三リン酸カルシウム等の加工用製剤が用いられてもよい。
【0026】
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が挙げられる。
【0027】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸。グルコン酸等の有機酸や、リン酸等の無機酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、二酸化炭素等が挙げられる。
【0028】
乳化剤としては、例えば、モノグリセライド、ジグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリンエステル等のグリセリン脂肪酸エステル系乳化剤;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル系乳化剤;プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールオレエート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル系乳化剤;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等のシュガーエステル系乳化剤;レシチン、レシチン酵素分解物等のレシチン系乳化剤等が挙げられる。なお、乳化剤の中には、前記成分(B)を含有しているものもある。本発明に係る乳風味組成物が、乳化剤を含む場合、前記成分(B)には乳化剤由来のものも含まれる。
【0029】
本発明に係る乳風味組成物は、成分(A)〜(D)に加えて、乳原料やクリーミングパウダー(クリームの代用として、紅茶、コーヒー等の嗜好性飲料に添加される粉末)を含有していることも好ましい。
【0030】
乳原料としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、牛乳、低脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、乳糖、生クリーム、バター、クリームチーズ等が挙げられる。
【0031】
クリーミングパウダーは、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、コーン油、綿実油、ナタネ油、乳脂、牛脂、豚脂等の食用油脂;シヨ糖、グルコース、澱粉加水分解物等の糖質;カゼインナトリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、脱脂粉乳、乳化剤等のその他の原料等を、望まれる品質特性に応じて選択し、水に分散し、均質化し、乾燥することによって製造できる。本発明に係る乳風味組成物が含有するクリーミングパウダーとしては、植物性油脂と、コーンシロップ等の澱粉加水分解物と、乳タンパク質とを少なくとも含むものが好ましく、乳脂肪分と乳タンパク質とを少なくとも含むものであってもよい。
【0032】
クリーミングパウダーは、例えば、食用油脂をはじめとする原料を水中で混合し、次いで乳化機等で水中油型乳化液(O/Wエマルション)とした後、水分を除去することによって製造することができる。水分を除去する方法としては、噴霧乾燥、噴霧凍結、凍結乾燥、凍結粉砕、押し出し造粒法等、任意の方法を選択して行うことができる。得られたクリーミングパウダーは、必要に応じて、分級、造粒及び粉砕等を行ってもよい。
【0033】
本発明に係る乳風味組成物は、例えば、成分(A)〜(D)、及び必要に応じてその他の成分を適宜混合することにより製造できる。これらの原料を混合する順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を一度に混合してもよく、各原料を順次混合してもよい。本発明に係る乳風味組成物に成分(A)〜(D)を含有させるための原料としては、精製又は粗精製されたものを用いてもよく、これらのうち1種又は2種以上を含有する食品素材若しくは各種添加剤を用いてもよい。例えば、成分(B)としては、精製又は粗精製された脂肪酸類等を原料としてもよく、脂肪酸類等を主成分とする乳化剤等を原料として用いることもできる。また、成分(C)及び(D)としては、精製又は粗精製されたラクトン類やケトン類を原料としてもよく、これらを含有する香料等を原料として用いてもよい。
【0034】
本発明に係る乳風味組成物は、植物油脂を主原料としながら、乳風味に優れており、乳脂の代替品として特に好適である。本発明に係る乳風味組成物を原料とすることにより、乳脂を含有しない、又は乳脂の含有量を低減させたにもかかわらず、乳風味の強い飲食品を製造することができる。
【0035】
<油脂含有乳風味飲食品の製造方法>
本発明に係る油脂含有乳風味飲食品の製造方法は、100質量部の(A)植物油脂に対して、0.005〜1.0質量部の(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、0.000025〜0.01質量部の(C)炭素数6〜14のラクトン類と、0.0000005〜0.00075質量部の(D)炭素数4〜13のケトン類とを含有させることを特徴とする。成分(A)〜(D)は、本発明に係る乳風味組成物が含有する前記成分(A)〜(D)にそれぞれ相当する。
【0036】
本発明に係る油脂含有乳風味飲食品の製造方法において、最終的に製造される油脂含有乳風味飲食品中の成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.025〜0.75質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。同様に、成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.00025〜0.0075質量部(2.5〜75質量ppm)が好ましく、0.0005〜0.005質量部(5〜50質量ppm)がより好ましく、成分(D)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.00001〜0.0005質量部(0.1〜5質量ppm)が好ましく、0.000025〜0.00025質量部(0.25〜2.5質量ppm)がより好ましい。
【0037】
本発明に係る油脂含有乳風味飲食品の製造方法において、最終的に製造される油脂含有乳風味飲食品中の成分(B)の含有量は、1〜200質量ppmが好ましく、5〜150質量ppmがより好ましく、10〜100質量ppmがさらに好ましい。同様に、最終的に製造される油脂含有乳風味飲食品中の成分(C)の含有量は、0.005〜2質量ppmが好ましく、0.05〜1.5質量ppmがより好ましく、0.1〜1質量ppmがさらに好ましい。最終的に製造される油脂含有乳風味飲食品中の成分(D)の含有量は、0.1〜150質量ppbが好ましく、2〜100質量ppbがより好ましく、5〜50質量ppbがさらに好ましい。
【0038】
本発明に係る油脂含有乳風味飲食品の製造方法においては、用いる原料や配合比を調節することにより、製品中の成分(A)〜(D)の含有割合が所定の範囲内となるようにする。当該製造方法においては、原料として、成分(A)〜(D)を全て含有する原料を用いてもよく、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)をそれぞれ単独で原料として用いてもよく、成分(A)〜(D)のうちの2種以上を含有する原料を用いてもよい。例えば、本発明に係る乳風味組成物を原料として用いることも好ましい。
【0039】
本発明に係る油脂含有乳風味飲食品の製造方法において、製造される油脂含有乳風味飲食品としては、植物油脂を含有し、かつ乳風味を有するものであれば特に限定されるものではなく、食品であってもよく、飲料であってもよい。特に、強い乳風味が好ましいとされる乳製品や乳製品を原料とする飲食品が好ましい。当該飲食品としては、例えば、乳原料及びクリーミングパウダーからなる群より選択される1種以上を原料として含有する飲食品が挙げられる。乳原料及びクリーミングパウダーとしては、本発明に係る乳風味組成物が含有していてもよいその他の成分で挙げられたものを用いることができる。
【0040】
具体的には、油脂含有乳風味食品としては、マーガリン、ファットスプレッド等が挙げられる。また、油脂含有乳風味飲料としては、乳原料やクリーミングパウダーを含有する嗜好性飲料や果汁飲料等が挙げられる。なお、「嗜好性飲料」とは、紅茶、緑茶、ウーロン茶等の茶飲料、ハーブティー、コーヒー、ココア、又はこれらの混合飲料を意味する。ハーブティーの原料としては、ハイビスカス、ローズヒップ、ペパーミント、カモミール、レモングラス、レモンバーム、ラベンダー等が挙げられる。本発明においては、油脂含有乳風味飲食品が、嗜好性飲料であることが好ましく、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、又は抹茶飲料であって乳原料やクリーミングパウダーを含有するものがより好ましい。
【0041】
<嗜好性飲料用組成物>
本発明に係る嗜好性飲料用組成物(以下、「本発明に係る飲料用組成物」)は、原料として、(A)植物油脂と、(B)炭素数8〜20の脂肪酸類及び油脂加水分解物からなる群より選択される1種以上と、(C)炭素数6〜14のラクトン類と、(D)炭素数4〜13のケトン類と、(E)乳原料及びクリーミングパウダーからなる群より選択される1種以上と、(F)嗜好性飲料の可溶性固形分と、を含有し、前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.005〜1.0質量部、前記(C)を0.000025〜0.01質量部、前記(D)を0.0000005〜0.00075質量部含有することを特徴とする。
【0042】
成分(A)〜(D)は、本発明に係る乳風味組成物が含有する前記成分(A)〜(D)にそれぞれ相当する。本発明に係る飲料用組成物中の成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.025〜0.75質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。同様に、成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.00025〜0.0075質量部(2.5〜75質量ppm)が好ましく、0.0005〜0.005質量部(5〜50質量ppm)がより好ましく、成分(D)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.00001〜0.0005質量部(0.1〜5質量ppm)が好ましく、0.000025〜0.00025質量部(0.25〜2.5質量ppm)がより好ましい。本発明に係る飲料用組成物が乳化剤を含む場合、成分(B)には乳化剤由来のものも含まれる。
【0043】
成分(E)の乳原料及びクリーミングパウダーとしては、本発明に係る乳風味組成物が含有していてもよいその他の成分で挙げられたものを用いることができる。本発明に係る飲料用組成物としては、成分(E)として、乳原料のみを含有するものであってもよく、クリーミングパウダーのみを含有するものであってもよく、乳原料とクリーミングパウダーの両方を含有するものであってもよい。本発明に係る乳風味組成物としては、成分(E)として、脱脂粉乳を含有するものが好ましい。
【0044】
成分(F)の嗜好性飲料の可溶性固形分は、茶葉やコーヒー豆等の嗜好性原料から抽出された可溶性の固形分であり、粉末であってもよく、水溶液であってもよい。保存安定性が良好であるため、本発明に係る飲料用組成物としては、粉末の可溶性固形分を原料とすることが好ましい。粉末の可溶性固形分としては、具体的には、インスタント紅茶粉末、インスタント緑茶粉末、インスタントウーロン茶粉末、インスタントハーブティー粉末、インスタントコーヒー粉末、ココアパウダー、及びこれらのうちの2種類以上の混合粉末等が挙げられる。
【0045】
粉末又は水溶系である嗜好性飲料の可溶性固形分は、常法により製造することができ、また、市販されているものを用いてもよい。例えば、茶飲料の粉末状の可溶性固形分は、紅茶葉、緑茶葉(生茶葉)、ウーロン茶葉等の茶葉から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。また、インスタントコーヒー粉末は、焙煎したコーヒー豆から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。インスタントハーブティー粉末は、ハーブの原料から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。茶葉やコーヒー豆等の嗜好性飲料の原料としては、一般的に嗜好性飲料に使用されているものを用いることができる。得られた抽出物の乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、茶葉やコーヒー豆からの抽出物は、乾燥前に、必要に応じて濃縮してもよい。当該濃縮方法としては、熱濃縮方法、冷凍濃縮方法、逆浸透膜や限外濾過膜等を用いた膜濃縮方法等の汎用されている濃縮方法により行うことができる。
【0046】
本発明に係る飲料用組成物においては、望まれる品質特性によってその他の原料をさらに用いることができる。当該その他の原料としては、インスタント紅茶飲料やインスタントコーヒー飲料等に配合可能な成分が挙げられる。具体的には、甘味料、香料(但し、成分(C)及び成分(D)は除く。)、賦形剤、結合剤、流動性改良剤(固結防止剤)、酸化防止剤、pH調整剤、乳化剤等が挙げられる。甘味料、賦形剤、結合剤、流動性改良剤、酸化防止剤、pH調整剤、乳化剤としては、本発明に係る乳風味組成物が含有していてもよいその他の成分で挙げられたものを用いることができる。さらに、必要に応じて着色料を添加して色調を調整することもできる。また、必要に応じて、茶類やハーブ、コーヒー等を抽出することなく微粉砕したものを混ぜてもよい。
【0047】
本発明に係る飲料用組成物は、成分(A)〜(E)と、必要に応じてその他の原料とを、混合することによって製造される。混合の順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を同時に混合してもよく、順次混合させてもよい。また、成分(A)〜(E)はそれぞれ別個に原料として配合してもよく、予め、成分(A)〜(D)のみを混合した混合物を調製しておき、当該混合物と、成分(E)と成分(F)と必要に応じてその他の原料とを、混合してもよい。特に、本発明に係る飲料用組成物に成分(B)〜(D)を含有させるための原料としては、精製又は粗精製されたものを用いてもよく、これらのうち1種又は2種以上を含有する食品素材若しくは各種添加剤を用いてもよい。
【0048】
全ての原料が粉末の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、粉末の飲料用組成物が製造される。一方で、全ての原料が液状の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、液状の飲料用組成物が製造される。
【0049】
粉末原料と液状の原料を用いる場合、粉末の原料を全て予め混合し、得られた混合粉末に、液状の原料の混合液を噴霧して乾燥させることによって、粉末の飲料用組成物が製造される。例えば、本発明に係る飲料用組成物は、水、アルコール類、グリセリン類、又はこれらの混合溶媒に溶解させたデキストリンを、固形状の原料を全て混合した混合物の造粒時噴霧した後、得られた造粒物を乾燥させることによって製造できる。逆に、液状の原料の混合液に、粉末の原料を溶解又は分散させることによって、液状の飲料用組成物が製造される。
【0050】
本発明に係る飲料用組成物中の成分(B)の含有量は、水に溶解させて調製された嗜好性飲料中の成分(B)の含有量が、好ましくは1〜200質量ppm、より好ましくは5〜150質量ppm、さらに好ましくは10〜100質量ppmとなるように調整されていることが好ましい。同様に、本発明に係る飲料用組成物中の成分(C)の含有量は、水に溶解させて調製された嗜好性飲料中の成分(C)の含有量が、好ましくは0.005〜2質量ppm、より好ましくは0.05〜1.5質量ppm、さらに好ましくは0.1〜1質量ppmとなるように調整されていることが好ましい。本発明に係る飲料用組成物中の成分(D)の含有量は、水に溶解させて調製された嗜好性飲料中の成分(D)の含有量が、好ましくは0.1〜150質量ppb、より好ましくは2〜100質量ppb、さらに好ましくは5〜50質量ppbとなるように調整されていることが好ましい。
【実施例】
【0051】
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、特に記載がない限り、「%」は「質量%」、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
【0052】
また、以降の実施例等において、飲料の乳(ミルク)風味、苦味の強さ、及び総合評価は、表1に記載の基準(5点評価)で評価した。苦味の強さは、スコア(評点)が低いほどよいとした。
【0053】
【表1】
【0054】
[実施例1〜5、比較例1〜5]
脂肪分としてココナッツオイルのみを含有するミルクコーヒー飲料に、表2〜3に示すように脂肪酸類、ラクトン類、及びケトン類を含有させ、乳風味と苦味に対する影響を調べた。脂肪酸類としてはラウリン酸(C12(炭素数12))、ミリスチン酸(C14)、又はステアリン酸(C18)を、ラクトン類としてはδ−オクタラクトン(C8)、δ−デカラクトン(C10)、又はγ−ドデカラクトン(C12)を、ケトン類としては2−ヘプタノン(C7)、2−ノナノン(C9)、又は2−ウンデカノン(C11)を、それぞれ用いた。具体的には、まず、表2〜3の処方でミルクコーヒー飲料を調製した。表2〜3中、インスタントコーヒー粉末は市販品(商品名:〈マキシム〉、味の素ゼネラルフーヅ(株)製)である。また、表2及び3中、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
調製された実施例1〜5及び比較例1〜5のミルクコーヒー飲料について、3名のパネルにより、乳風味と苦味を評価した。各パネルの評価結果を、各飲料中のココナッツオイル(植物油脂)と脂肪酸類とラクトン類とケトン類の配合量比([植物油脂]/「脂肪酸類」/「ラクトン類」/「ケトン類」)と共に表4及び5に示す。なお、総合評価は、3名のパネルによる総合評価を示す。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
この結果、ミルクコーヒー飲料中の脂肪酸類の含有量が1〜200ppmであり、ラクトン類の含有量が0.005〜2ppmであり、ケトン類の含有量が0.1〜150ppbである実施例1〜5では、苦味がさほど気にならない程度に抑えられている上に乳風味が強く、非常に良好であった。特に、脂肪酸類が5〜150ppmであり、ラクトン類が0.05〜1.5ppmであり、ケトン類が2.5〜75ppbである実施例3〜5では、苦味は僅かであり、乳風味はかなり良好であった。これに対して、これら3成分のうちの2成分のみしか含有していない比較例4及び5は、苦味は感じられるものの乳風味はあまり感じられなかった。また、これらの3成分を全て含有するものの、各含有量が実施例1よりもいずれもやや少ない比較例2では、乳風味はほとんど向上しておらず、各含有量が実施例2よりもいずれもやや多い比較例3では、乳風味は向上しているものの、苦味が非常に強かった。
【0061】
[実施例6〜12]
表6に示す処方で脂肪分としてココナッツオイルのみを含有するミルクコーヒー飲料を調製し、実施例1等と同様にして乳風味と苦味を評価した。表6中、インスタントコーヒー粉末は表1と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
調製された実施例6〜12のミルクコーヒー飲料について、各パネルの評価結果を、各飲料中のココナッツオイル(植物油脂)と脂肪酸類とラクトン類とケトン類の配合量比([植物油脂]/「脂肪酸類」/「ラクトン類」/「ケトン類」)と共に表7に示す。なお、総合評価は、3名のパネルによる総合評価を示す。この結果、いずれのミルクコーヒー飲料も、苦味は僅かであり、乳風味はかなり良好であった。
【0065】
[実施例13〜15、比較例6〜8]
表8に示す処方で脂肪分としてココナッツオイルのみを含有するココア飲料、紅茶飲料、及び抹茶飲料を調製し、実施例1等と同様にして乳風味と苦味を評価した。表8中、ココアパウダーは、市販品(商品名:〈純ココア〉、森永製菓(株)製)であり、抹茶パウダーは、市販品(商品名:〈宇治抹茶〉、共栄製茶(株)製)である。また、紅茶は、市販品(商品名:〈こく味のある紅茶〉、三井農林(株)製)の茶葉70gに95℃の湯を500mL注ぎ、5分間抽出し、Brix分を固形分として調整したものである。表8中、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】
【0068】
調製された実施例13〜15及び比較例6〜8の飲料について、各パネルの評価結果を、各飲料中のココナッツオイル(植物油脂)と脂肪酸類とラクトン類とケトン類の配合量比([植物油脂]/「脂肪酸類」/「ラクトン類」/「ケトン類」)と共に表9に示す。なお、総合評価は、3名のパネルによる総合評価を示す。この結果、ココナッツオイル100質量部に対して、脂肪酸類を0.25質量部、ラクトン類を0.0025質量部、ケトン類を0.000125質量部含有する実施例13〜15の飲料においては、いずれも苦味がさほど気にならない程度に抑えられている上に乳風味が強く、非常に良好であった。これに対して、これら3成分をいずれも含有していない比較例6〜8の飲料では、苦味は弱いものの乳風味はあまり感じられなかった。
【0069】
[実施例16〜18、比較例9〜11]
表10に示す処方で脂肪分として硬化ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、又は水添パーム核油のみを含有するミルクコーヒー飲料を調製し、実施例1等と同様にして乳風味と苦味を評価した。表10中、インスタントコーヒー粉末は表1と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】
【0072】
調製された実施例16〜18、比較例9〜11のミルクコーヒー飲料について、各パネルの評価結果を、各飲料中の植物油脂と脂肪酸類とラクトン類とケトン類の配合量比([植物油脂]/「脂肪酸類」/「ラクトン類」/「ケトン類」)と共に表11に示す。なお、総合評価は、3名のパネルによる総合評価を示す。この結果、ココナッツオイルを用いた場合と同様に、硬化ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及び水添パーム核油を使用したミルクコーヒー飲料においても、植物油脂100質量部に対して、脂肪酸類を0.25質量部、ラクトン類を0.0025質量部、ケトン類を0.000125質量部含有する実施例16〜18の飲料においては、いずれも苦味がさほど気にならない程度に抑えられている上に乳風味が強く、非常に良好であった。これに対して、これら3成分をいずれも含有していない比較例9〜11の飲料では、苦味は弱いものの乳風味はあまり感じられなかった。
【0073】
[実施例19、比較例12]
表12に示す処方で、脂肪分を32%含有するクリーミングパウダーを含有するミルクコーヒー飲料を調製し、実施例1等と同様にして乳風味と苦味を評価した。表12中、インスタントコーヒー粉末は表1と同じであり、クリーミングパウダーは市販品(商品名:〈マリーム〉、味の素ゼネラルフーヅ(株)製)である。単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0074】
【表12】
【0075】
【表13】
【0076】
調製された実施例19、比較例12のミルクコーヒー飲料について、各パネルの評価結果を、各飲料中の植物油脂と脂肪酸類とラクトン類とケトン類の配合量比([植物油脂]/「脂肪酸類」/「ラクトン類」/「ケトン類」)と共に表13に示す。なお、総合評価は、3名のパネルによる総合評価を示す。この結果、ココナッツオイルを用いた場合と同様に、脂肪分を含有するクリーミングパウダーを使用したミルクコーヒー飲料においても、植物油脂100質量部に対して、脂肪酸類を0.25質量部、ラクトン類を0.0025質量部、ケトン類を0.000125質量部含有する実施例19の飲料においては、苦味がさほど気にならない程度に抑えられている上に乳風味が強く、非常に良好であった。これに対して、これら3成分をいずれも含有していない比較例12の飲料では、苦味は弱いものの乳風味はあまり感じられなかった。