特許第6520425号(P6520425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520425
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】機器用弾性シールド部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20190520BHJP
   H01R 13/6581 20110101ALI20190520BHJP
【FI】
   H01R13/52 301B
   H01R13/6581
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-115598(P2015-115598)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-4680(P2017-4680A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】直野 英夫
【審査官】 山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−243101(JP,A)
【文献】 特開平03−104195(JP,A)
【文献】 特開平10−224073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40 −13/72
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気機器を構成する導電性の第1シールドケースと第2電気機器を構成する第2シールドケースとに対し全周に亘って液密状に弾性接触する防水機能部品と、
前記第1シールドケースと前記第2シールドケースとに導通可能に接触するシールド機能部品とを備え、
前記防水機能部品と前記シールド機能部品とを一体化した形態であり、前記第1シールドケースと前記第2シールドケースとの間において前記第1シールドケースと前記第2シールドケースが互いに平行に対向する対向空間内に配されて、前記第1電気機器と前記第2電気機器を接続する導電路を全周に亘って包囲するようになっており、
前記シールド機能部品の少なくとも一部が、前記防水機能部品に形成した収容空間又は収容溝内に収容されており、
前記収容空間と前記収容溝が、前記防水機能部品のうち前記第1シールドケースと前記前記第2シールドケースとの対向方向において前記第1シールドケースと対向する面及び前記第2シールドケースと対向する面を凹ませた形態である機器用弾性シールド部材。
【請求項2】
前記シールド機能部品が、前記収容凹部内又は前記収容溝内において弾性変形可能である請求項1記載の機器用弾性シールド部材。
【請求項3】
前記防水機能部品と前記シールド機能部品がインサート成形によって一体化されている請求項1又は請求項2記載の機器用弾性シールド部材。
【請求項4】
前記シールド機能部品が、前記第1シールドケースと前記第2シールドケースに対し弾性変形した状態で当接可能な弾性接触片を有している請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の機器用弾性シールド部材。
【請求項5】
前記シールド機能部品が、前記防水機能部品を弾性変形させるように姿勢を変化させた状態で前記第1シールドケース及び前記第2シールドケースに接触するようになっている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の機器用弾性シールド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器用弾性シールド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車やハイブリッド自動車において、インバータ装置とモータを、ワイヤハーネスを使用せずに直結型のコネクタによって接続する技術が開示されている。上記文献に記載されたコネクタは、インバータ装置及びモータをそれぞれ個別の金属製筐体に収容し、各金属製筐体にそれぞれコネクタを固定した構成となっている。そして、インバータ装置をモータの近くに配置した状態で、双方のコネクタ同士を嵌合接続している。これにより、インバータ装置とモータを含む装置全体の小型が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−280913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車やハイブリッド自動車では、走行中の振動に起因する干渉を回避するために、インバータ装置とモータを隙間を空けて配置する必要がある。ところが、インバータ装置とモータを離間させると、インバータ装置側の端子金具やモータ側の端子金具が露出するため、その端子金具を流れる電流に重畳するノイズが外部へ漏れ出してしまう。また、インバータ装置とモータが、被水の虞がある位置に配置される場合には、端子金具への被水対策が必要となる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ノイズ対策機能と防水対策機能を兼ね備えた機器用弾性シールド部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
第1電気機器を構成する導電性の第1シールドケースと第2電気機器を構成する第2シールドケースとに対し全周に亘って液密状に弾性接触する防水機能部品と、
前記第1シールドケースと前記第2シールドケースとに導通可能に接触するシールド機能部品とを備え、
前記防水機能部品と前記シールド機能部品とを一体化した形態であり、前記第1シールドケースと前記第2シールドケースとの間において前記第1シールドケースと前記第2シールドケースが互いに平行に対向する対向空間内に配されて、前記第1電気機器と前記第2電気機器を接続する導電路を全周に亘って包囲するようになっており、
前記シールド機能部品の少なくとも一部が、前記防水機能部品に形成した収容空間又は収容溝内に収容されており、
前記収容空間と前記収容溝が、前記防水機能部品のうち前記第1シールドケースと前記前記第2シールドケースとの対向方向において前記第1シールドケースと対向する面及び前記第2シールドケースと対向する面を凹ませた形態であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
防水機能部品は、第1シールドケースと第2シールドケースに液密状に密着した状態で、導電路を全周に亘って包囲するので、導電路に水分が付着することを防止する。また、シールド機能部品は、第1シールドケースと第2シールドケースに導通可能に接触した状態で、導電路を全周に亘って包囲するので、導電路を流れる電流に重畳するノイズが漏出することを防止する。機器用弾性シールド部材は、防水機能部品とシール部機能部品を一体化させた形態となっているので、組付け時の作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1参考例1の機器用弾性シールド部材をモータ(第1電気機器)に取り付けた状態をあらわす断面図
図2】モータにインバータ装置を嵌合した状態をあらわす断面図
図3参考例1の機器用弾性シールド部材の平面図
図4実施例1の機器用弾性シールド部材の平面図
図5図4のA−A線断面図
図6実施例1において機器用弾性シールド部材を第1シールドケースと第2シールドケースの間に取り付けた状態をあらわすA−A線相当断面図
図7実施例2の機器用弾性シールド部材の断面図
図8実施例3の機器用弾性シールド部材の断面図
図9実施例4の機器用弾性シールド部材の断面図
図10実施例5の機器用弾性シールド部材の平面図
図11図10のB−B線断面図
図12図10のC−C線断面図
図13実施例5において機器用弾性シールド部材をモータケースとインバータケースとの間に取り付けた状態をあらわすC−C線相当断面図
図14実施例6の機器用弾性シールド部材の平面図
図15図14のD−D線断面図
図16図14のE−E線断面図
図17実施例6において機器用弾性シールド部材をモータケースとインバータケースとの間に取り付けた状態をあらわすE−E線相当断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(a)本発明は、前記防水機能部品と前記シールド機能部品が、互いに別々に成形され、前記防水機能部品と前記シールド機能部品には、互いに嵌合することで前記防水機能部品と前記シールド機能部品を組付け状態に保持する嵌合部が形成されていてもよい。
この構成によれば、双方の嵌合部同士を嵌合させることにより、防水機能部品とシールド機能部品を組み付け状態に確実に保持することができる。防水機能部品とシールド機能部品をインサート成形によって一体化させる場合に比べると、防水機能部品を成形するための金型の構造を簡素化することができる。
【0010】
(b)本発明は、前記防水機能部品と前記シールド機能部品がインサート成形によって一体化されていてもよい。
この構成によれば、別体部品として成形された防水機能部品とシールド機能部品を組み付ける場合に比べると、防水機能部品とシールド機能部品の形状を簡素化することができる。
【0011】
(c)本発明は、前記シールド機能部品が、前記第1シールドケースと前記第2シールドケースに対し弾性変形した状態で当接可能な弾性接触片を有していてもよい。
この構成によれば、弾性接触片の弾性復元力により、シールド機能部品と両シールドケースを確実に接触させることができる。
【0012】
(d)本発明は、前記シールド機能部品が、前記防水機能部品を弾性変形させるように姿勢を変化させた状態で前記第1シールドケース及び前記第2シールドケースに接触するようになっていてもよい。
この構成によれば、防水機能部品の弾性復元力により、シールド機能部品と両シールドケースを確実に接触させることができる。
【0013】
参考例1
以下、本発明の参考例1について図1図3を参照して説明する。本参考例1の機器用弾性シールド部材10は、電気自動車やハイブリッド自動車等のような電力を利用して走行する車両に設けられ、モータ100(請求項に記載の第1電気機器)と、インバータ装置200(請求項に記載の第2電気機器)との間に介装される複合機能部材である。
【0014】
モータ100は、通電により回転駆動力を発生する原動機本体(図示省略)と、原動機本体を包囲する導電性(金属製)のモータケース101(請求項に記載の第1シールドケース)と、原動機本体と導通可能に接続された複数の第1端子金具102(請求項に記載の導電路)とを備えている。モータケース101を構成する水平な上面壁には、モータケース101の内外を連通させる第1開口部103が形成されている。
【0015】
第1開口部103には、合成樹脂製の第1端子台104が固定されている。第1端子台104は、端子保持部105と、端子保持部105から上方へ突出したフード部106とを備えている。フード部106は、第1開口部103を貫通してモータケース101の上方へ突出している。第1端子台104には、複数の第1端子金具102がインサート成形により取り付けられている。第1端子金具102は、端子保持部105に図示しないボルトで固定される基端部107と、基端部107から上向きに突出してフード部106内に収容されるタブ108とを備えた雄形の端子である。タブ108は、フード部106と同様、モータケース101の上面(上面壁)よりも上方(モータケース101の外部)へ突出している。
【0016】
インバータ装置200は、直流電力を交流電力に変換するための電源回路(図示省略)と、電源回路を包囲する導電性(金属製)のインバータケース201(請求項に記載の第2シールドケース)と、電源回路と導通可能に接続された複数の第2端子金具202(請求項に記載の導電路)とを備えている。インバータケース201を構成する水平な下面壁には、インバータケース201の内外を連通させる第2開口部203が形成されている。第2開口部203には、合成樹脂製の第2端子台204が固定されている。第2端子台204は、インバータケース201の下方へ突出する端子収容部205を有する。端子収容部205内には、雌形の第2端子金具202が収容されている。第2端子金具202は、端子収容部205と同様、インバータケース201の下面(下面壁)よりも下方(インバータケース201の外部)へ突出している。
【0017】
インバータ装置200はモータ100の上方に配され、端子収容部205がフード部106内に嵌合されるとともに、複数の第1端子金具102のタブ108が、端子収容部205内に進入して複数の第2端子金具202と個別に導通可能に接続されている。この第1端子金具102と第2端子金具202を介すことにより、モータ100とインバータ装置200が導通可能に接続されている。また、モータケース101の上面壁とインバータケース201の下面壁は、比較的狭い対向空間300を明けて、直接、接触しないように上下に対向する位置関係となっている。
【0018】
このようにモータケース101とインバータケース201との間に対向空間300を空けるのは、走行中の振動に起因する干渉を回避するためである。ところが、モータケース101(モータ100)とインバータケース201(インバータ装置200)を離間させたことにより、モータ100側の第1端子金具102がモータケース101の外部(対向空間300)に配置され、インバータ装置200側の第2端子金具202がインバータケース201の外部(対向空間300)に配置されることになる。このような配置では、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズが外部へ漏れ出してしまう。また、モータ100とインバータ装置200が、被水の虞がある位置に搭載される場合には、両端子金具102,202への被水対策が必要となる。
【0019】
そこで、本参考例1では、モータケース101とインバータケース201との間の対向空間300に機器用弾性シールド部材10を介在させている。以下、その構成を説明する。機器用弾性シールド部材10は、1つの防水機能部品11と、二対のシールド機能部品13とから構成されている。防水機能部品11とシールド機能部品13は、夫々、別々に製造された部品である。
【0020】
防水機能部品11は、ゴム製であり、図3に示すように、平面視形状は略方形の枠状(リング状)をなしている。防水機能部品11は、前後方向及び左右方向に直線状に長く延びた二対の直線状シール部11Sと、直線状シール部11Sの端部同士を滑らかに繋ぐ略四半円弧形をなす4つの弧状シール部11Rとから構成されている。図1,2に示すように、二対の直線状シール部11Sには、夫々、上下一対の嵌合溝12(請求項に記載の嵌合部)が形成されている。
【0021】
シールド機能部品13は、金属板材を曲げ加工して成形された単一部品である。各シールド機能部品13は、夫々、板面を上下方向に向けた基板部14と、基板部14の上下両端縁から略直角に延出した上下一対の接触板部15とを備えている。基板部14は、上下両接触板部15同士を接近させるような形態で弾性的に湾曲変形し得るようになっている。シールド機能部品13には、上側の接触板部15の延出端縁から下方へ略直角に突出する嵌合リブ16(請求項に記載の嵌合部)と、下側の接触板部15の延出端縁から上方へ略直角に突出する嵌合リブ16(請求項に記載の嵌合部)が形成されている。
【0022】
シールド機能部品13は、基板部14を直線状シール部11Sの内側面に密着させるとともに、上下両嵌合リブ16を直線状シール部11Sの嵌合溝12に嵌合させることにより、防水機能部品11に組み付けられている。嵌合溝12と嵌合リブ16の係止により、防水機能部品11とシールド機能部品13は、組付け状態に保持されて一体化されている。そして、モータ100にインバータ装置200を接続する前の状態では、図1に示すように、機器用弾性シールド部材10は、第1開口部103の開口領域と複数の第1端子金具102の配置領域を一括して包囲するように配され、モータケース101の上面壁の上面(外面)に載置されている。
【0023】
モータ100にインバータ装置200を接続したときの対向空間300の上下寸法、つまりモータケース101の上面とインバータケース201の下面との上下間隔は、防水機能部品11が弾性変形していない自由状態における防水機能部品11及びシールド機能部品13の上下寸法より小さく設定されている。したがって、モータ100にインバータ装置200を接続すると、ゴム製の防水機能部品11が上下に圧縮されて弾性変形し、防水機能部品11の下面と上面が、夫々、全周に亘り、モータケース101の上面とインバータケース201の下面に対し弾性的に且つ液密状に密着する。
【0024】
これにより、機器用弾性シールド部材10と両ケース101,201とによって区画された封止空間301が構成される。この封止空間301は対向空間300の一部であり、封止空間301内には、第1端子金具102と第2端子金具202の接続部分が収容される。この封止空間301は、防水機能部品11によって浸水しないようにシールされているので、封止空間301内の両端子金具102,202は防水状態に保たれる。
【0025】
また、機器用弾性シールド部材10には、その直線状シール部11Sの内周面に沿ってシールド機能部品13が取付けられている。シールド機能部品13は、機器用弾性シールド部材10の全周のうち弧状シール部11R以外の大部分の領域に配されている。つまり、4つのシールド機能部品13は、対向空間300における両端子金具102,202の接続部分をほぼ全周に亘って包囲する。そして、シールド機能部品13の上下両接触板部15は、両ケース101,201に接触している。ここで、基板部14は、両ケース101,201に押されて湾曲状に弾性変形させられているので、この基板部14の弾性復元力により両接触板部15は、弾性的に両ケース101,201に当接する。したがって、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズは、機器用弾性シールド部材10(封止空間301)の外部へ漏れ出す虞がない。
【0026】
本参考例1の機器用弾性シールド部材10は、ノイズ対策機能と防水対策機能を兼ね備えたものであって、モータ100を構成する導電性のモータケース101と、インバータ装置200を構成するインバータケース201との間の対向空間300に配されて、モータ100とインバータ装置200を接続する第1端子金具102及び第2端子金具202を全周に亘って包囲する。そして、機器用弾性シールド部材10は、モータケース101とインバータケース201に対し全周に亘って液密状に弾性接触する防水機能部品11と、モータケース101とインバータケース201に導通可能に接触するシールド機能部品13とを一体化した形態である。
【0027】
防水機能部品11は、モータケース101とインバータケース201に液密状に密着した状態で、両端子金具102,202を全周に亘って包囲するので、両端子金具102,202に水分が付着することや、モータケース101の内部やインバータケース201の内部への浸水を防止する。また、シールド機能部品13は、モータケース101とインバータケース201に導通可能に接触した状態で、両端子金具102,202を全周に亘って包囲するので、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズが漏出することを防止する。機器用弾性シールド部材10は、防水機能部品11とシールド機能部品13を一体化させた形態となっているので、組付け時の作業性に優れている。
【0028】
また、防水機能部品11とシールド機能部品13が、互いに別々に成形され、防水機能部品11とシールド機能部品13には、互いに嵌合することで防水機能部品11とシールド機能部品13を組付け状態に保持する嵌合部(嵌合溝12と嵌合リブ16)が形成されている。この構成によれば、嵌合溝12と嵌合リブ16を嵌合させることにより、防水機能部品11とシールド機能部品13を組み付け状態に確実に保持することができる。また、防水機能部品11とシールド機能部品13をインサート成形によって一体化させる場合に比べると、防水機能部品11を成形するための金型の構造を簡素化することができる。
【0029】
実施例1
次に、本発明を具体化した実施例1について図4図6を参照して説明する。本実施例1の機器用弾性シールド部材20は、1つの防水機能部品21と、1つのシールド機能部品23とから構成されている。尚、上記参考例1と同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0030】
防水機能部品21は、ゴム製であり、図4に示すように、平面視形状は略方形の枠状(リング状)をなしている。防水機能部品21は、前後方向及び左右方向に直線状に長く延びた二対の直線状シール部21Sと、前後方向の直線状シール部21Sの端部と左右方向の直線状シール部21Sの端部を滑らかに繋ぐ略四半円弧形をなす4つの弧状シール部21Rとから構成されている。各直線状シール部21Sには、夫々、上面(インバータケース201との対向面)から下面(モータケース101との対向面)へ貫通した形態の複数の収容空間22が形成されている。
【0031】
シールド機能部品23は、細長い金属線材を曲げ加工して成形された単一部品である。シールド機能部品23は、複数のコイル状接触部24と、隣り合うコイル状接触部24同士を繋ぐ複数の線状連結部25を、交互に且つ直列状に並ぶように配した形態である。各コイル状接触部24は、夫々、収容空間22内に配されている。線状連結部25は、防水機能部品21のうち隣り合う収容空間22を区画する壁部26内に埋設されている。このシールド機能部品23は、防水機能部品21を金型(図示省略)で成形する工程でインサート成形により防水機能部品21と一体化されている。インサート成形によって一体化したので、別体部品として成形された防水機能部品とシールド機能部品を組み付ける場合に比べると、防水機能部品21とシールド機能部品23の形状を簡素化できる。
【0032】
モータ100にインバータ装置200を接続すると、図6に示すように、機器用弾性シールド部材20がモータケース101の上面とインバータケース201の下面との間で挟み付けられる。これにより、ゴム製の防水機能部品21が上下に圧縮されて弾性変形し、防水機能部品21の下面と上面が、夫々、全周に亘り、モータケース101の上面とインバータケース201の下面に対し弾性的に且つ液密状に密着する。この防水機能部品21により、両端子金具102,202が収容されている封止空間301内を防水することができる。また、シールド機能部品23のコイル状接触部24が、上下に潰れるように弾性変形させられ、その弾性復元力により、コイル状接触部24の上下両端部が、両ケース101,201に対し弾性的に接触する。このシールド機能部品23により、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズの機器用弾性シールド部材20(封止空間301)外への漏出が防止される。
【0033】
実施例2
次に、本発明を具体化した実施例2について図7を参照して説明する。本実施例2の機器用弾性シールド部材30は、1つの防水機能部品31と、複数のシールド機能部品35とから構成されている。尚、上記参考例1と同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0034】
防水機能部品31は、ゴム製であり、参考例1と同様、平面視形状は略方形の枠状(リング状)をなしている。防水機能部品31には、その下面(モータケースとの対向面)を凹ませた形態の複数の下部収容空間32が、周方向に適宜間隔を空けて形成されている。同じく防水機能部品31には、その上面(インバータケースとの対向面)のうち下部収容空間32と対応する領域を凹ませた形態の複数の上部収容空間33が形成されている。上部収容空間33と下部収容区間は、隔壁部34で区画されている。
【0035】
シールド機能部品35は、対称形状の一対の金属板材から構成されている。シールド機能部品35は、金属板材のうち上下方向中央部同士を溶接等で固着した基部36と、基部36から上方へ弧状に延出する一対の上部弾性接触片37(請求項に記載の弾性接触片)と、基部36から下方へ弧状に延出する一対の下部弾性接触片38(請求項に記載の弾性接触片)とから構成されている。複数のシールド機能部品35は、インサート成形により、基部36を隔壁部34内に埋設させた状態で防水機能部品31と一体化されている。上部弾性接触片37は、上部収容空間33内に収容され、下部弾性接触片38は、下部収容空間32内に収容される。
【0036】
モータ100とインバータ装置200を接続すると、機器用弾性シールド部材30がモータケース101の上面とインバータケース201の下面との間で挟み付けられる。これにより、防水機能部品31の下面と上面が、夫々、全周に亘り、モータケース101の上面とインバータケース201の下面に対し弾性的に且つ液密状に密着し、両端子金具102,202を収容する封止空間301内が防水状態に保持される。また、複数のシールド機能部品35は、夫々、その上下両弾性接触片37,38を両ケース101,201に接触させる。このとき、両弾性接触片37,38は弾性変形させられるので、それ自身の弾性復元力により両ケース101,201に対して弾性的に且つ確実に当接する。このシールド機能部品35により、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズの機器用弾性シールド部材30(封止空間)外への漏出が防止される。
【0037】
実施例3
次に、本発明を具体化した実施例3について図8を参照して説明する。本実施例3の機器用弾性シールド部材40は、1つの防水機能部品41と、複数のシールド機能部品45とから構成されている。尚、上記参考例1と同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0038】
防水機能部品41は、ゴム製であり、参考例1と同様、平面視形状は略方形の枠状(リング状)をなしている。防水機能部品41には、その下面(モータケースとの対向面)を凹ませた形態の複数の下部収容空間42が、周方向に適宜間隔を空けて形成されている。同じく防水機能部品41には、その上面(インバータケースとの対向面)のうち下部収容空間42と対応する領域を凹ませた形態の複数の上部収容空間43が形成されている。上部収容空間43と下部収容区間は、隔壁部44で区画されている。
【0039】
シールド機能部品45は、軸線を上下方向に向けたコイル46と、コイル46の上下両端部に溶接等により導通可能に固着された上下一対の接触板47とから構成されている。上側の接触板47には上方へ突出するエンボス状の接点部48が形成され、下側の接触板47には下方へ突出するエンボス状の接点部48が形成されている。複数のシールド機能部品45は、インサート成形により、コイル46の上下方向中央部を隔壁部44内に埋設させた状態で防水機能部品41と一体化されている。コイル46の上端部は上部収容空間43内に収容され、コイル46の下端部は下部収容空間42内に収容される。
【0040】
モータ100とインバータ装置200を接続すると、機器用弾性シールド部材40がモータケース101の上面とインバータケース201の下面との間で挟み付けられる。これにより、防水機能部品41の下面と上面が、夫々、全周に亘り、モータケース101の上面とインバータケース201の下面に対し弾性的に且つ液密状に密着し、両端子金具102,202を収容する封止空間301内が防水状態に保持される。また、複数のシールド機能部品45は、夫々、その上下両接触板47の接点部48を両ケース101,201に接触させる。このとき、コイル46が上下に潰されるように弾性変形させられるので、その弾性復元力により両接触板47は、両ケース101,201に対して弾性的に且つ確実に当接する。このシールド機能部品45により、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズの機器用弾性シールド部材40(封止空間)外への漏出が防止される。
【0041】
実施例4
次に、本発明を具体化した実施例4について図9を参照して説明する。本実施例4の機器用弾性シールド部材50は、1つの防水機能部品51と、複数のシールド機能部品56とから構成されている。尚、上記参考例1と同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0042】
防水機能部品51は、ゴム製であり、参考例1と同様、平面視形状は略方形の枠状(リング状)をなしている。防水機能部品51には、その下面(モータケースとの対向面)を凹ませた形態の複数の下部収容空間52が、周方向に適宜間隔を空けて形成されている。同じく防水機能部品51には、その上面(インバータケースとの対向面)のうち下部収容空間52と対応する領域を凹ませた形態の複数の上部収容空間53が形成されている。上部収容空間53と下部収容区間は、隔壁部54で区画されている。隔壁部54には、上下両収容空間52,53を連通させる連通孔55が形成されている。
【0043】
シールド機能部品56は、編組線からなる弾性支持体57と、弾性支持体57の上下両端部に溶接等により導通可能に固着された上下一対の接触板58とから構成されている。両接触板58は、連通孔55の内径よりも外径の大きい円板状をなしている。上側の接触板58には上方へ突出するエンボス状の接点部59が形成され、下側の接触板58には下方へ突出するエンボス状の接点部59が形成されている。複数のシールド機能部品56は、防水機能部品51とは別個に製造されたものである。
【0044】
シールド機能部品56を防水機能部品51に組み付ける際には、隔壁部54を弾性変形させながら連通孔55を拡開させ、その拡げた連通孔55に、一方の接触板58を通過させる。接触板58を通過させた後は、連通孔55の拡開を解除する。これにより、連通孔55に弾性支持体57が貫通した状態で、シールド機能部品56が防水機能部品51に一体化される。弾性支持体57の上端部は上部収容空間53内に収容され、弾性支持体57の下端部は下部収容空間52内に収容される。
【0045】
モータ100とインバータ装置200を接続すると、機器用弾性シールド部材50がモータケース101の上面とインバータケース201の下面との間で挟み付けられる。これにより、防水機能部品51の下面と上面が、夫々、全周に亘り、モータケース101の上面とインバータケース201の下面に対し弾性的に且つ液密状に密着し、両端子金具102,202を収容する封止空間301内が防水状態に保持される。また、複数のシールド機能部品56は、夫々、その上下両接触板58の接点部59を両ケース101,201に接触させる。このとき、弾性支持体57が湾曲するように弾性変形させられるので、その弾性復元力により両接触板58は、両ケース101,201に対して弾性的に且つ確実に当接する。このシールド機能部品56により、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズの機器用弾性シールド部材50(封止空間)外への漏出が防止される。
【0046】
実施例5
次に、本発明を具体化した実施例5について図10図13を参照して説明する。本実施例5の機器用弾性シールド部材60は、1つの防水機能部品61と、複数のシールド機能部品65とから構成されている。尚、上記参考例1と同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0047】
防水機能部品61は、ゴム製であり、図10に示すように、平面視形状は略方形の枠状(リング状)をなしている。図11〜13に示すように、防水機能部品61には、その下面(モータケースとの対向面)を全周に亘って凹ませた形態の1本の下部収容溝62が形成されている。同じく防水機能部品61には、その上面(インバータケースとの対向面)を全周に亘って凹ませた形態の1本の上部収容溝63が形成されている。上部収容溝63と下部収容溝62は、隔壁部64で区画されている。
【0048】
シールド機能部品65は、略平板状をなす金属板材からなる。シールド機能部品65は、その板面を上下方向(モータケース101とインバータケース201が対向する方向)及び水平方向の両方向に対して斜めをなす姿勢で、インサート成形により防水機能部品61と一体化されている。シールド機能部品65の上下方向における中央部が、隔壁部64内に埋設されて固着されている。シールド機能部品65の上端部は、上部収容溝63内に収容され、シールド機能部品65の下端部は下部収容溝62内に収容されている。
【0049】
モータ100とインバータ装置200を接続すると、機器用弾性シールド部材60がモータケース101の上面とインバータケース201の下面との間で挟み付けられる。これにより、防水機能部品61の下面と上面が、夫々、全周に亘り、モータケース101の上面とインバータケース201の下面に対し弾性的に且つ液密状に密着し、両端子金具102,202を収容する封止空間301内が防水状態に保持される。
【0050】
また、複数のシールド機能部品65は、夫々、その上端縁をインバータケース201の下面に当接させるとともに、下端縁をモータケース101の上面に当接させる。このとき、図13に示すように、シールド機能部品65は両ケース101,201の間に挟まれて上下に押圧されるので、水平方向を基準とするシールド機能部品65の傾斜角度が小さくなる。そして、シールド機能部品65の上下方向中央部は隔壁部64に固着されているので、シールド機能部品65の姿勢の傾き(変化)に伴い、隔壁部64が波打つように弾性変形させられる。
【0051】
つまり、シールド機能部品65は、防水機能部品61の隔壁部64を弾性変形させるように姿勢を変化させた状態で両ケース101,201に接触する。したがって、隔壁部64の弾性復元力により、シールド機能部品65の上下両端縁は、両ケース101,201に対して弾性的に且つ確実に当接する。このシールド機能部品65により、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズの機器用弾性シールド部材60(封止空間)外への漏出が防止される。
【0052】
実施例6
次に、本発明を具体化した実施例6について図14図17を参照して説明する。本実施例6の機器用弾性シールド部材70は、1つの防水機能部品71と、複数のシールド機能部品75とから構成されている。尚、上記参考例1と同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0053】
防水機能部品71は、ゴム製であり、図14に示すように、平面視形状は略方形の枠状(リング状)をなしている。図15〜17に示すように、防水機能部品71には、その下面(モータケースとの対向面)を全周に亘って凹ませた形態の1本の下部収容溝72が形成されている。同じく防水機能部品71には、その上面(インバータケースとの対向面)を全周に亘って凹ませた形態の1本の上部収容溝73が形成されている。上部収容溝73と下部収容溝72は、隔壁部74で区画されている。
【0054】
シールド機能部品75は、金属板材を曲げ加工して成形された単一部品である。シールド機能部品75は、折返部76と、折返部76から下方へ延出する一対の脚部77と、両脚部77の下端から斜め下方へ片持ち状に延出した形態の一対の弾性接触片78とから構成されている。一対の弾性接触片78は、上下方向(モータケース101とインバータケース201の対向方向)及び水平方向の両方向に対して斜めをなしている。一対の弾性接触片78は、その対向間隔が下方に向かって次第に拡大するような形態となっている。
【0055】
シールド機能部品75は、インサート成形により防水機能部品71と一体化されている。脚部77の下端側領域は、隔壁部74内に埋設されて固着されている。脚部77の上端部と折返部76は上部収容溝73内に収容され、一対の弾性接触片78は下部収容溝72内に収容されている。
【0056】
モータ100とインバータ装置200を接続すると、機器用弾性シールド部材70がモータケース101の上面とインバータケース201の下面との間で挟み付けられる。これにより、防水機能部品71の下面と上面が、夫々、全周に亘り、モータケース101の上面とインバータケース201の下面に対し弾性的に且つ液密状に密着し、両端子金具102,202を収容する封止空間301内が防水状態に保持される。
【0057】
また、複数のシールド機能部品75は、夫々、その上端の折返部76をインバータケース201の下面に当接させるとともに、弾性接触片78の下端縁をモータケース101の上面に当接させる。このとき、シールド機能部品75は両ケース101,201の間に挟まれて上下に押圧させるので、図17に示すように、一対の脚部77が折返部76を支点として拡開するように変位するとともに、一対の弾性接触片78が、水平方向を基準とする傾斜角度を小さくするように姿勢を傾ける。両脚部77の下端側領域は隔壁部74に固着されているので、シールド機能部品75の変形と姿勢の傾きに伴い、隔壁部74が波打つように弾性変形させられる。
【0058】
つまり、シールド機能部品75は、防水機能部品71の隔壁部74を弾性変形させるように姿勢を変化させた状態で両ケース101,201に接触する。したがって、隔壁部74の弾性復元力により、シールド機能部品75の上下両端縁は、両ケース101,201に対して弾性的に且つ確実に当接する。このシールド機能部品75により、両端子金具102,202を流れる電流に重畳するノイズの機器用弾性シールド部材70(封止空間)外への漏出が防止される。
【0059】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1〜6では、電気機器がインバータ装置とモータである場合について説明したが、本発明は、電気機器がインバータ装置及びモータとは異なる機器である場合にも適用できる。
(2)上記実施例1〜6では、第1端子金具と第2端子金具の両方が対向空間内に配されるようにしたが、これに限らず、対向空間内には、第1端子金具と第2端子金具のうちいずれか一方の端子金具のみが配されるものであってもよい。この場合、対向空間内に配された端子金具は、相手側のシールドケース内に進入して相手側の端子金具と接続する。
【符号の説明】
【0060】
10,20,30,40,50,60,70…機器用弾性シールド部材
11,21,31,41,51,61,71…防水機能部品
12…嵌合溝(嵌合部)
13,23,35,45,56,65,75…シールド機能部品
16…嵌合リブ(嵌合部)
37…上部弾性接触片(弾性接触片)
38…下部弾性接触片(弾性接触片)
78…弾性接触片
100…モータ(第1電気機器)
101…モータケース(第1シールドケース)
102…第1端子金具(導電路)
200…インバータ装置(第2電気機器)
201…インバータケース(第2シールドケース)
202…第2端子金具(導電路)
300…対向空間
図1
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