(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520462
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置および運転計画作成方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20190520BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20190520BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20190520BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J13/00 301A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-128271(P2015-128271)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-11968(P2017-11968A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】星 靖之
(72)【発明者】
【氏名】奥野 義道
(72)【発明者】
【氏名】林 孝則
【審査官】
辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−143364(JP,A)
【文献】
特開2004−274851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型エネルギーシステムを構成する設備である複数の分散型エネルギー設備を有した各需要地毎に、個別に設置された需要地エネルギーマネジメントシステムと、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムを階層上位で統括する統括エネルギーマネジメントシステムとを備え、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムは、当該需要地の分散型エネルギー設備の仕様情報を管理する仕様情報管理機能と、最適運転計画作成機能と、各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を管理するコスト管理機能と、当該需要地の予測負荷を示す需要予測情報を管理する機能と、統括エネルギーマネジメントシステムから通知された運用計画に基づいて運用を実行する機能とを備え、
前記統括エネルギーマネジメントシステムは、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステム内の分散型エネルギー設備の仕様情報を管理する仕様管理部と、
前記各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を管理するコスト管理部と、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られた全ての需要地の需要予測情報を集約して合成需要予測値を作成し、管理する需要予測管理部と、
コスト管理部で管理するエネルギーコストを鑑み、仕様管理部で管理する仕様情報に基づいて、需要予測管理部で作成された合成需要予測値を満たす分散型エネルギー設備の運転組み合わせとなる、分散型エネルギー設備の全体運用計画およびエネルギー融通計画を含んだ統括運用計画を作成し、該統括運用計画から需要地エネルギーマネジメントシステム毎の出力計画を取り出して各需要地エネルギーマネジメントシステムへ運用計画として通知する統括運用計画作成部と、
前記運用計画に沿った運用が各需要地エネルギーマネジメントシステムにおいてなされているかを監視し、前記運用計画に対して運用実績がある一定以上逸脱した場合、統括運用計画の再作成を統括運用計画作成部に指示する状態監視部と、を備え、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムの仕様情報管理機能は、一つの需要地内の分散型エネルギー設備全体をバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)とみなし、時間に対するエネルギー推移を示す負荷曲線を入力として前記最適運転計画作成機能を用いて運転計画を作成し、作成した運転計画から設定時間単位毎の効率を計算し、当該需要地エネルギーマネジメントシステムが管理する分散型エネルギー設備全体の効率曲線を求めることによって、バーチャルパワープラントの仕様情報を作成して管理する機能を有し、
前記統括エネルギーマネジメントシステムの仕様管理部は、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られた前記バーチャルパワープラントの仕様情報を管理し、
前記統括エネルギーマネジメントシステムのコスト管理部は、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られたエネルギーコストの情報を管理することを特徴とする分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置。
【請求項2】
前記統括運用計画作成部は、各需要地の需要予測情報が示す予測負荷と、統括運用計画の中の当該需要地に関する出力計画が示す出力エネルギーとの差分をエネルギー融通量として、エネルギー融通計画を作成することを特徴とする請求項1に記載の分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置。
【請求項3】
分散型エネルギーシステムを構成する設備である複数の分散型エネルギー設備を有した各需要地毎に、個別に設置された需要地エネルギーマネジメントシステムと、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムを階層上位で統括する統括エネルギーマネジメントシステムとを備えた分散型エネルギーシステムの運転計画作成方法であって、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムは、当該需要地の分散型エネルギー設備の仕様情報を管理する仕様情報管理機能と、最適運転計画作成機能と、各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を管理するコスト管理機能と、を備え、
統括エネルギーマネジメントシステムの仕様管理部が、各需要地エネルギーマネジメントシステム内の分散型エネルギー設備の仕様情報を設定して管理する仕様管理ステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムのコスト管理部が、前記各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を設定して管理するコスト管理ステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの需要予測管理部が、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから全ての需要地の予測負荷を示す需要予測情報を収集して合成需要予測値を作成し、管理する需要予測管理ステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの統括運用計画作成部が、コスト管理部で管理するエネルギーコストを鑑み、仕様管理部で管理する仕様情報に基づいて、需要予測管理部で作成された合成需要予測値を満たす分散型エネルギー設備の運転組み合わせとなる、分散型エネルギー設備の全体運用計画およびエネルギー融通計画を含んだ統括運用計画を作成するステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの統括運用計画作成部が、前記作成された統括運用計画から需要地エネルギーマネジメントシステム毎の出力計画を取り出して各需要地エネルギーマネジメントシステムへ運用計画として通知するステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの状態監視部が、前記運用計画に沿った運用が各需要地エネルギーマネジメントシステムにおいてなされているかを監視し、前記運用計画に対して運用実績がある一定以上逸脱した場合、統括運用計画の再作成を統括運用計画作成部に指示する状態監視ステップと、を備え、
前記仕様管理ステップは、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られた仕様情報を設定して管理し、
前記コスト管理ステップは、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られたエネルギーコストの情報を設定して管理し、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムが、当該需要地内の分散型エネルギー設備全体をバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)とみなし、時間に対するエネルギー推移を示す負荷曲線を入力として前記最適運転計画作成機能を用いて運転計画を作成し、作成した運転計画から設定時間単位毎の効率を計算し、当該需要地エネルギーマネジメントシステムが管理する分散型エネルギー設備全体の効率曲線を求めることによって、バーチャルパワープラントの仕様情報を作成するステップを有し、
前記仕様管理ステップは、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから前記バーチャルパワープラントの仕様情報を収集する処理を含んでいることを特徴とする分散型エネルギーシステムの運転計画作成方法。
【請求項4】
前記統括運用計画を作成するステップは、各需要地の需要予測情報が示す予測負荷と、統括運用計画の中の当該需要地に関する出力計画が示す出力エネルギーとの差分をエネルギー融通量として、エネルギー融通計画を作成する処理を含んでいることを特徴とする請求項3に記載の分散型エネルギーシステムの運転計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー需要に応じた分散電源の運転計画作成において、複数需要地全体での効率的な全体運用を実現する運転計画作成に関し、分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型エネルギーシステムを構成する設備としては、発生器(発電機、ボイラーなど)、蓄積器(蓄電池、蓄熱槽など)、変換器(冷凍機など)、自然電源(太陽光、風力など)などが挙げられる。以降、分散型エネルギーシステムを構成する設備を分散型エネルギー設備と称する。これら分散型エネルギー設備を使用してエネルギー需要量に対して適切な出力を行うための運転計画(最適運転計画を含む)を作成するシステム、すなわち運転計画作成システムは、従来、非特許文献1〜4および特許文献1に記載のものが提案されていた。
【0003】
従来の運転計画作成システムによる運転計画作成の概略を
図5に示す。
図5において、11は過去の運転計画及び運転実績を設備の運転パターンとして管理する過去設備運転パターン管理部である。
【0004】
12は、各設備の出力量・効率などの仕様情報を管理する設備仕様情報管理部である。
【0005】
13は、各設備の負荷量を予測し管理する負荷量予測部である。
【0006】
14は、過去設備運転パターン管理部11、設備仕様情報管理部12などの情報を元に、負荷量予測部13で予測される負荷量を満たすように一日分の運転計画を作成し、設備運転パターン15として出力する運転計画作成部である。
【0007】
このとき、各設備の運転計画は、現在稼働中の設備との整合性も考慮し作成する。
【0008】
ここで記述する運転計画作成システムは、一般的には当該需要地内のエネルギー需給制御を実施するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System;以下EMSと称することもある)の一部として動作する場合もある。本明細書では、運転計画作成システムとEMSは同システムとして扱うものとする。
【0009】
前述のEMSが複数の需要地に各々設置してある場合において、ある需要地での電力等のエネルギー不足時、その不足分を他の需要地から融通し管理するシステムは、例えば特許文献2に記載のものが提案されている。
【0010】
ここで、複数の需要地に点在するEMSが管理する需要地として、需要地1から需要地5まで存在する場合を想定する。特許文献2に示すように、需要地1のEMSが管理する需要地内での供給エネルギー量が需要エネルギー量を下回る場合において、まず需要地2のEMSへエネルギー融通を依頼する。需要地2での余剰エネルギーが需要地1の不足エネルギー分をカバーできない場合は、更に需要地3のEMSへ再度電力融通依頼を実施する。最終的に全需要地での分散電源余剰電力で不足エネルギー分がカバーできない場合、その不足相当分については系統電力等の公共エネルギーから賄う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「マイクログリッド電源最適運転計画」、明電時報 通巻314号 2007 No.3、pp.6−10
【非特許文献2】「マイクログリッド制御システムの開発」、明電時報 通巻309号 2006 No.4、pp.9−12
【非特許文献3】「配電系統と分散型電源への最適化技術の適用」、明電時報 通巻309号 2006 No.4、pp.71−74
【非特許文献4】「マイクログリッド電源最適化計画」、明電時報 通巻309号 2006 No.4、pp.62−65
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−130550号公報
【特許文献2】特開2013−247792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2に示すようなエネルギー融通方式において、複数の需要地(個別のEMSが管理するエネルギー需要地)間でのエネルギー融通には、次の問題点がある。
【0014】
(1)ある需要地におけるエネルギー需要不足分のカバーを他需要地へ順次依頼する方式であるため、運用上それが効率的(例:創エネルギーコスト等の費用削減効果の有無、設備稼働率の平準化等)とは言えない。例えば対象エネルギーを電力とし100kW不足するとした場合、従来方式では需要地2でこの不足分がカバーできる場合はそれを実施する。しかし需要地2では80kWしかカバーできない場合、不足する分を需要地3から融通することとなる。しかし、各需要地の分散電源発電コストを考慮した場合、需要地2からは30kW、需要地3からは70kWを融通した方が良い場合もある。
【0015】
(2)需要地間でエネルギーを融通する場合、分散型エネルギー設備によるエネルギー創出コスト(系統からの買電等の公共エネルギーの購入も含んだコスト)に加え融通に伴う費用が別途必要となる場合がある。そのため、場合によっては分散型エネルギー設備による創エネルギーの融通に頼らず、電力の場合は系統から買電した方が経済的にも環境負荷的(CO
2排出量)にも効率的な場合がある。
【0016】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、効率的なエネルギー融通を可能とした運転計画を作成することができる分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置および運転計画作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための請求項1に記載の分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置は、分散型エネルギーシステムを構成する設備である複数の分散型エネルギー設備を有した各需要地毎に、個別に設置された需要地エネルギーマネジメントシステムと、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムを階層上位で統括する統括エネルギーマネジメントシステムとを備え、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムは、
当該需要地の分散型エネルギー設備の仕様情報を管理する仕様情報管理機能と、最適運転計画作成機能と、各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を管理するコスト管理機能と、当該需要地の予測負荷を示す需要予測情報を管理する機能と、統括エネルギーマネジメントシステムから通知された運用計画に基づいて運用を実行する機能とを備え、
前記統括エネルギーマネジメントシステムは、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステム内の分散型エネルギー設備の仕様情報を管理する仕様管理部と、
前記各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を管理するコスト管理部と、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られた全ての需要地の需要予測情報を集約して合成需要予測値を作成し、管理する需要予測管理部と、
コスト管理部で管理するエネルギーコストを鑑み、仕様管理部で管理する仕様情報に基づいて、需要予測管理部で作成された合成需要予測値を満たす分散型エネルギー設備の運転組み合わせとなる、分散型エネルギー設備の全体運用計画およびエネルギー融通計画を含んだ統括運用計画を作成し、該統括運用計画から需要地エネルギーマネジメントシステム毎の出力計画を取り出して各需要地エネルギーマネジメントシステムへ運用計画として通知する統括運用計画作成部と、
前記運用計画に沿った運用が各需要地エネルギーマネジメントシステムにおいてなされているかを監視し、前記運用計画に対して運用実績がある一定以上逸脱した場合、統括運用計画の再作成を統括運用計画作成部に指示する状態監視部と、
を備え、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムの仕様情報管理機能は、一つの需要地内の分散型エネルギー設備全体をバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)とみなし、時間に対するエネルギー推移を示す負荷曲線を入力として前記最適運転計画作成機能を用いて運転計画を作成し、作成した運転計画から設定時間単位毎の効率を計算し、当該需要地エネルギーマネジメントシステムが管理する分散型エネルギー設備全体の効率曲線を求めることによって、バーチャルパワープラントの仕様情報を作成して管理する機能を有し、
前記統括エネルギーマネジメントシステムの仕様管理部は、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られた前記バーチャルパワープラントの仕様情報を管理し、
前記統括エネルギーマネジメントシステムのコスト管理部は、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られたエネルギーコストの情報を管理することを特徴としている。
【0019】
また、
請求項3に記載の分散型エネルギーシステムの運転計画作成方法は、分散型エネルギーシステムを構成する設備である複数の分散型エネルギー設備を有した各需要地毎に、個別に設置された需要地エネルギーマネジメントシステムと、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムを階層上位で統括する統括エネルギーマネジメントシステムとを備えた分散型エネルギーシステムの運転計画作成方法であって、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムは、当該需要地の分散型エネルギー設備の仕様情報を管理する仕様情報管理機能と、最適運転計画作成機能と、各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を管理するコスト管理機能と、を備え、
統括エネルギーマネジメントシステムの仕様管理部が、各需要地エネルギーマネジメントシステム内の分散型エネルギー設備の仕様情報を設定して管理する仕様管理ステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムのコスト管理部が、前記各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を設定して管理するコスト管理ステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの需要予測管理部が、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから全ての需要地の予測負荷を示す需要予測情報を収集して合成需要予測値を作成し、管理する需要予測管理ステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの統括運用計画作成部が、コスト管理部で管理するエネルギーコストを鑑み、仕様管理部で管理する仕様情報に基づいて、需要予測管理部で作成された合成需要予測値を満たす分散型エネルギー設備の運転組み合わせとなる、分散型エネルギー設備の全体運用計画およびエネルギー融通計画を含んだ統括運用計画を作成するステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの統括運用計画作成部が、前記作成された統括運用計画から需要地エネルギーマネジメントシステム毎の出力計画を取り出して各需要地エネルギーマネジメントシステムへ運用計画として通知するステップと、
統括エネルギーマネジメントシステムの状態監視部が、前記運用計画に沿った運用が各需要地エネルギーマネジメントシステムにおいてなされているかを監視し、前記運用計画に対して運用実績がある一定以上逸脱した場合、統括運用計画の再作成を統括運用計画作成部に指示する状態監視ステップと、
を備え、
前記仕様管理ステップは、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られた仕様情報を設定して管理し、
前記コスト管理ステップは、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから得られたエネルギーコストの情報を設定して管理し、
前記各需要地エネルギーマネジメントシステムが、当該需要地内の分散型エネルギー設備全体をバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)とみなし、時間に対するエネルギー推移を示す負荷曲線を入力として前記最適運転計画作成機能を用いて運転計画を作成し、作成した運転計画から設定時間単位毎の効率を計算し、当該需要地エネルギーマネジメントシステムが管理する分散型エネルギー設備全体の効率曲線を求めることによって、バーチャルパワープラントの仕様情報を作成するステップを有し、
前記仕様管理ステップは、前記各需要地エネルギーマネジメントシステムから前記バーチャルパワープラントの仕様情報を収集する処理を含んでいることを特徴としている。
【0021】
上記構成によれば、複数の需要地間に跨って全体で経済的な運転を実現することができる運転計画が得られ、これによって効率的なエネルギー融通が可能となり、総合的なエネルギーコストを削減することができる。
【0024】
また、バーチャルパワープラントと見なした一需要地内の分散型エネルギー設備全体の仕様情報を容易に得ることができる。
【0025】
また、
請求項2に記載の分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置は、
請求項1において、前記統括運用計画作成部は、各需要地の需要予測情報が示す予測負荷と、統括運用計画の中の当該需要地に関する出力計画が示す出力エネルギーとの差分をエネルギー融通量として、エネルギー融通計画を作成することを特徴としている。
【0026】
また、
請求項4に記載の分散型エネルギーシステムの運転計画作成方法は、
請求項3において、前記統括運用計画を作成するステップは、各需要地の需要予測情報が示す予測負荷と、統括運用計画の中の当該需要地に関する出力計画が示す出力エネルギーとの差分をエネルギー融通量として、エネルギー融通計画を作成する処理を含んでいることを特徴としている。
【0027】
上記構成によれば、統括運用計画の中の当該需要地に関する出力計画とリンクした効率的なエネルギー融通計画を作成することができる。
【発明の効果】
【0028】
(1)請求項
1〜4に記載の発明によれば、複数の需要地間に跨って全体で経済的な運転を実現することができる運転計画が得られる。これによって効率的なエネルギー融通が可能となり、総合的なエネルギーコストを削減することができる。
また、バーチャルパワープラントと見なした一需要地内の分散型エネルギー設備全体の仕様情報を容易に得ることができる。
(2)請求項2、4に記載の発明によれば、統括運用計画の中の当該需要地に関する出力計画とリンクした効率的なエネルギー融通計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】本発明の実施形態例の要部構成を示すブロック図。
【
図3】本発明の実施形態例における各需要地の予測負荷情報とその合成の様子を表わす説明図。
【
図4】本発明の実施形態例におけるエネルギー融通量の概略を示す説明図。
【
図5】従来の分散型エネルギーシステムにおける運転計画作成の流れを説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。本実施形態例では、
図1に示すように、複数需要地に個別に設置される需要地エネルギーマネジメントシステム(以下、需要地EMSと称する)を、階層上位で統括する統括エネルギーマネジメントシステム(以下統括EMSと称する)を設け、各需要地EMSを跨る全体を見通しての効率的な運転計画を作成する運転計画作成装置を構成した。
【0031】
図1において、需要地1〜3には、各需要地内のエネルギー需給制御を実施する需要地EMS101〜103が各個別に設置されている。DER1〜3は各需要地1〜3各々に存在する分散型エネルギー設備のうち分散電源(Distributed Energy Resources)を示している。
【0032】
200は、需要地EMS101〜103を階層上位で統括する統括EMSである。統括EMS200と需要地EMS101〜103はネットワークにより接続され、各種情報の授受が行われる。尚、複数の需要地EMSの個数は3個に限るものではない。需要地EMS101〜103は、次のような処理を実行する機能を各々備えている。
【0033】
(1)当該需要地の分散型エネルギー設備の仕様情報を管理する機能。これには、分散電源DER1〜DER3の仕様情報を個別に管理する場合と、一需要地をバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant;以下VPPと称する)とみなして管理する場合とがある。尚VPPとは、常用・非常用を問わず、複数の分散電源を通信ネットワークでまとめて制御・管理するシステムである。
【0034】
(2)非特許文献1〜4および特許文献1に記載の最適運転計画作成機能を有し、一需要地をVPPとみなした場合に、最適運転計画作成機能を用いてその需要地における運転計画を作成し、作成した運転計画に基づいて後述の処理を行ってVPPの仕様情報作成し管理する。
【0035】
(3)分散型エネルギー設備の創エネルギー費用、公共エネルギー料金(電力料金、ガス料金等)等のエネルギーコストを管理する機能。
【0036】
(4)当該需要地の予測負荷を示す需要予測情報(予測負荷情報)を管理する機能。
【0037】
(5)統括EMS200の、後述する統括運用計画作成部によって作成され、通知された運用計画に基いて分散型エネルギー設備の運用を実行する機能。
【0038】
統括EMS200の機能ブロックを
図2に示す。
【0039】
図2において、201は、需要地EMS101〜103が管理する分散型エネルギー設備の仕様情報を管理するDER仕様管理部(仕様管理部)である。この仕様情報の管理は、需要地の分散電源(DER1〜DER3)を個別に管理する、又は一需要地をVPPとみなして管理する、のいずれであってもよい。
【0040】
また、前記仕様情報の設定は、事前に統括EMS200のDER仕様管理部201に設定する静的設定か、又は統括EMS200の動作時に動的に需要地EMS101〜103から収集し、DER仕様管理部201に設定する動的設定のいずれの設定方法を用いてもよい。
【0041】
202は、各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギー料金(電力料金、ガス料金等の公共エネルギーの購入費用)、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用等、創エネルギーに係る費用(エネルギーコストの情報)を管理するコスト管理部である。
【0042】
このエネルギー融通費用を始めとする創エネルギーに係る費用の設定は、事前に統括EMS200のコスト管理部202に設定する静的設定か、又は各需要地EMS101〜103から動的に収集し、コスト管理部202に設定する動的設定のいずれの設定方法を用いてもよい。
【0043】
203は、各需要地EMS101〜103が管理するすべての需要地内の需要予測情報(予測負荷情報)を集約し、各需要地1〜3に跨る統括的な合成需要予測値(合成予測負荷情報)を作成し、管理する需要予測管理部である。
【0044】
204は、コスト管理部202で管理するエネルギーコストを鑑み、DER仕様管理部201で管理する仕様情報に基づいて、需要予測管理部203で作成された合成需要予測値を満たす分散型エネルギー設備の運転組み合わせとなる、分散型エネルギー設備の全体運用計画およびエネルギー融通計画を含んだ統括運用計画を作成し、各需要地EMS101〜103へ担当運用計画を割り振る統括運用計画作成部である。
【0045】
この割り振りは、作成した全体運用計画結果から、需要地EMS毎の出力計画を取り出し、各需要地EMS101〜103へ運用計画としてエネルギー融通計画と共に通知する。需要地間でのエネルギー融通については、全体運用計画作成前に需要地EMS101〜103から収集した当所の予測負荷情報が示す予測負荷と、前述した作成後の全体運用計画の中の当該需要地に関する出力計画が示す出力エネルギーとの差分をエネルギー融通量と定義し、エネルギー融通計画が作成される。また、統括運用計画を策定する目的関数は、統括運用計画作成部204に設定される。
【0046】
205は、統括運用計画作成部204で作成した運用計画に基いた(運用計画に沿った)運用がなされているかを監視し、運用計画に対して運用実績がある一定以上逸脱した場合、統括運用計画の再作成を統括運用計画作成部204に指示する状態監視部である。
【0047】
前記統括EMS200は、例えばコンピュータにより構成され、通常のコンピュータのハードウェアリソース、例えばROM、RAM、CPU、入力装置、出力装置、通信インターフェース、ハードディスク、記録媒体およびその駆動装置を備えている。
【0048】
このハードウェアリソースとソフトウェアリソース(OS、アプリケーションなど)との協働の結果、統括EMS200は、前述したDER仕様管理部201、コスト管理部202、需要予測管理部203、統括運用計画作成部204および状態監視部205の各処理機能を実装する。
【0049】
次に、
図1、
図2のように構成された分散型エネルギーシステムの運転計画作成装置の動作の一例を説明する。
【0050】
(1)統括EMS200は需要地EMS101〜103を統括し、需要地全体でのエネルギー最適配分を実現するものである。
【0051】
(2)統括EMS200のDER仕様管理部201は、各需要地EMS101〜103が管理する分散型エネルギー設備の仕様情報を設定し、管理する。前記仕様情報は、DER1〜DER3個別の仕様情報か、又は一つの需要地EMSが管理する需要地全体をVPPと見なした場合はその仕様情報であり、その設定は事前にDER仕様管理部201に設定されるか、又は統括EMS200の動作時に需要地EMS101〜103から収集して設定される。
【0052】
(3)ここで、需要地全体をVPPと見なした場合の仕様情報作成方法の一例(例えば、エネルギーは電力の場合)を次に示す。
【0053】
(3−1)需要地EMS101〜103において、エネルギー発生容量である0kWから契約電力kWまでを直線で変化する負荷曲線を用意する(例えば24時間を48分割して30分毎に変化する負荷曲線)。
【0054】
(3−2)用意した負荷曲線を各需要地EMSの運転計画作成の入力とし、需要地EMSが備えている運転計画作成機能を用いて、その需要地における運転計画を作成する。
【0055】
(3−3)作成した運転計画から、ある時間単位(例えば30分刻み)毎の効率(円/kW)を計算する。
【0056】
(3−4)以上により、0kWから契約電力kWの需要地EMSが管理する分散型エネルギー設備全体の効率曲線を求め、これによってVPPの仕様情報を作成し、管理する。
【0057】
(4)統括EMS200のコスト管理部202は、各需要地間のエネルギー融通に係る費用、公共エネルギーの購入費用、分散型エネルギー設備の創エネルギー費用を含むエネルギーコストの情報を管理する。
【0058】
前記エネルギーコストの情報は、事前に統括EMS200へ静的設定するか、又は各需要地EMS101〜103から収集し、動的設定するかのいずれであってもよい。
【0059】
(5)需要地EMS101〜103は、当該EMSが管理する需要地の予測負荷情報(需要予測情報)を統括EMS200へ通知する。
【0060】
(6)統括EMS200の需要予測管理部203は、各需要地EMS101〜103から全ての需要地の予測負荷情報を収集して合成予測負荷情報(合成需要予測値)を作成する。
【0061】
図3に、需要地別予測負荷情報と合成予測負荷情報の例を示す。
図3は、4つの需要地からの予測負荷情報を合成した例を示している。
【0062】
(7)統括EMS200の統括運用計画作成部204は、コスト管理部202で管理するエネルギーコストを鑑み、DER仕様管理部201で管理する仕様情報に基づいて、需要予測管理部203で作成された合成需要予測値(合成予測負荷情報)を満たす分散型エネルギー設備の運転組み合わせとなる、分散型エネルギー設備の全体運用計画およびエネルギー融通計画を含んだ統括運用計画を作成する。
【0063】
この統括運用計画は、例えば非特許文献3に記載された最適化技術を用いて作成される。すなわち、統括運用計画作成部204に設定される、統括運用計画策定のための目的関数を、例えば計画期間全体における運転費用の和とし、その目的関数が最小となる解を最適解に決定する手法により作成する。
【0064】
これによって、需要地毎のエネルギー供給コスト及び需要地間のエネルギー融通コストの全体が削減される(例えば最小となる)統括運用計画が作成される。
【0065】
(8)統括EMS200は、作成した全体運用計画結果から、需要地EMS毎の出力計画を取り出し、各需要地EMS101〜103へ運用計画としてエネルギー融通計画と共に通知する。需要地間でのエネルギー融通については、全体運用計画作成前に需要地EMS101〜103から収集した当所の予測負荷情報が示す予測負荷と、前述した作成後の全体運用計画の中の当該需要地に関する出力計画が示す出力エネルギーとの差分をエネルギー融通量と定義し、エネルギー融通計画が作成される。
【0066】
例えばエネルギー融通量を説明する
図4において、+ΔPで示す部分は、元の予測負荷情報(実線)よりも出力計画(破線)が上回っており、その分が他の需要地へのエネルギー融通分となる。
【0067】
また−ΔPで示す部分は、元の予測負荷情報(実線)よりも出力計画(破線)が下回っており、その分が他の需要地からのエネルギー融通分となる。
【0068】
尚、本実施形態例では、エネルギー融通における融通元と融通先の需要地は同数としている。すなわち融通元:融通先=N:Nで取り扱う。
【0069】
(9)各需要地EMS101〜103では、統括EMS200から通知された出力計画(運用計画)に従って分散型エネルギー設備の運転を実施する。
【0070】
(10)統括EMS200の状態監視部205は、前記運用計画に沿った運用が各需要地EMS101〜103においてなされているかを監視し、前記運用計画に対して運用実績がある一定以上逸脱した場合、統括運用計画の再作成を統括運用計画作成部204に指示する。
【0071】
以上のように、本実施形態例によれば、統括EMS200による複数需要地間に跨る全体エネルギー管理により、以下の効果が期待できる。
【0072】
(1)複数需要地に跨り横断的に運用計画を作成するため、需要地EMS単位では困難であった統合的な運用計画(例えば需要地1では運用コストが増大するが、需要地2では大幅に削減することが可能となり、総合的にはエネルギーコストを削減可能な運用計画)を作成することが可能となる。
【0073】
(2)ある需要地から他の需要地へエネルギー融通を実施する場合、融通に係るコストまで含めて運用計画を作成するため、需要地毎にコスト的に適切量を割り当て、地域全体で総合コストに優れた運用計画を作成することが可能となる。これによって全体で経済的な運転を実現することができる。
【符号の説明】
【0074】
101〜103…需要地EMS
200…統括EMS
201…DER仕様管理部
202…コスト管理部
203…需要予測管理部
204…統括運用計画作成部
205…状態監視部
DER…分散電源