(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としてのインテークマニホールド(インマニ)について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。なお、以下の説明における「上流」,「下流」とは、吸気流や排気流の流通方向を基準とした方向を意味する。
【0014】
[1.エンジン]
本実施形態のインマニ1は、
図1に示すデュアルループEGRシステムを具備したエンジン30に適用される。
図1中には、エンジン30に設けられる四つのシリンダのうち、一つを例示する。このエンジン30は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。シリンダの頂面を形成するシリンダヘッドの内部には、各シリンダに接続された吸気ポート31及び排気ポート32が設けられ、それぞれのポート開口に吸気弁,排気弁が設けられる。吸気ポート31における上流側の端部開口部は、シリンダヘッドの側面において外部に開放される。
【0015】
吸気ポート31の端部開口部よりも上流側には、水冷式のインタークーラー10を内蔵したインマニ1(I/C内蔵インマニ)が取り付けられる。本実施形態のインマニ1は、シリンダヘッドの側面に対して直付けされ、吸気ポート31の端部開口部を覆うように取り付けられる。以下、シリンダヘッドの側面において、吸気ポート31の端部開口部が列設された方向のことを「ポート並設方向L」と呼ぶ。ポート並設方向Lは、四気筒エンジンの場合、四つのシリンダが並ぶ方向(シリンダ列方向)と同一であり、エンジン30のクランク軸中心に平行な方向である。
【0016】
エンジン30には、排気圧を利用して作動するターボチャージャー33(過給機)が設けられる。ターボチャージャー33は、タービン及びコンプレッサの回転軸が軸受を介して連結された構造を持ち、タービンが排気系に介装されるとともにコンプレッサが吸気系に介装される。吸気系には、吸気流の上流側から順に、エアクリーナー34(フィルター),低圧スロットル弁35,ターボチャージャー33,高圧スロットル弁36が設けられ、高圧スロットル弁36の直下流にインマニ1が配置される。また、排気系には、排気流の上流側から順に、ターボチャージャー33,排気浄化装置37が設けられる。排気浄化装置37には、ディーゼル酸化触媒やNOx還元触媒,DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)などが内蔵される。
【0017】
このエンジン30には、排気の一部を吸気側に再循環させるための二系統のEGR通路、すなわち、高圧EGR通路38,低圧EGR通路39が設けられる。高圧EGR通路38は、ターボチャージャー33よりもシリンダに近い位置で吸気系と排気系とを連通するEGR通路である。一方、低圧EGR通路39は、排気系におけるターボチャージャー33のタービンよりも下流側と、吸気系におけるターボチャージャー33のコンプレッサよりも上流側とを連通するEGR通路である。高圧EGR通路38には、高圧EGR弁40が介装され、低圧EGR通路39には、低圧EGR弁41,EGRクーラー42,EGRフィルター43が介装される。本実施形態の高圧EGR通路38は、エンジン30のエキマニとインマニ1とを接続するように設けられ、インタークーラー10の下流側へとEGRガスを供給する。
【0018】
インタークーラー10は、エンジン30に導入される過給空気(吸気)を冷却する水冷式の冷却装置であり、例えばエンジン冷却水を冷媒とした冷却回路44上に介装される。この冷却回路44はエンジン30を冷却するための回路とは別設されたものであり、インタークーラー10用のラジエーター45やポンプ46が介装されてなる。ポンプ46を作動させて冷媒を循環させることで、ラジエーター45で冷却された冷媒がインタークーラー10のコア20に供給され、コア20の内部を通過する吸気がその冷媒によって冷却される。
【0019】
[2.I/C内蔵インマニ]
インマニ1の外観を
図2に例示し、A−A断面で切断したインマニ1の分解斜視図を
図3に示すとともに、B−B断面で切断したインマニ1の縦断面図を
図4に示す。インマニ1の内部構造は、インタークーラー10が装着される中央部51と、その上流側の部位である上流部52と、その下流側の部位である下流部53と、EGRガスを吸気系に導入するための流路となるEGR通路部4との四部位に大別される。
【0020】
中央部51は、インタークーラー10のコア20が収容される箱状の部位である。中央部51の上面には、コア20が挿入される開口部2がほぼ矩形に穿孔され、その外周には平面状の縁部3が設けられる。本実施形態のコア20は、ポート並設方向Lの寸法が最も大きい直方体状に形成され、その上面55及び下面58は閉塞される。また、他の四面のうち、最も面積の大きい二面が吸気の流入面56及び流出面57とされる。流入面56から流出面57へと向かう方向が、吸気の流通方向Fとなる。
図3,
図4中に吸気の流通方向Fを太矢印で示す。なお、流通方向Fに対して水平面内で垂直な方向が、コア20の内部での冷媒の流通方向となる。
【0021】
コア20は、その下面58が流入面56から流出面57に向かって下り勾配となるように取り付けられる。つまり、流入面56が上流部52に対してやや上向きに面し、流出面57が下流部53に対してやや下向きに面するように、インマニ1の中央部51の内部に固定される。これにより、インタークーラー10の内部で発生しうる結露水が流出面57から下流部53へと移動しやすくなり、水分の凍結によるコア20の目詰まりや破損が抑制される。
【0022】
上流部52は、高圧スロットル弁36を通過した吸気の流れを屈曲させながらインタークーラー10のコア20に導入する部位である。この上流部52には、例えば吸気通路やスロットルボディが取り付けられる。上流部52へと流入する吸気の流通方向Gは、吸気流がコア20の流入面56に向かって直進しないように、少なくとも上記の流通方向Fに対して非平行に設定される。本実施形態の上流部52は、
図3に示すように、インタークーラー10の下方から上方に向かって吸気を流入させる構造となっている。
【0023】
EGR通路部4は、インタークーラー10の下流側にEGRガスを供給する筒状の部位である。このEGR通路部4は、インマニ1の上面視で流通方向Fと交わる方向に向かって延設される。本実施形態のEGR通路部4の延設方向は、ポート並設方向Lに対して平行に設定される。これにより、EGR通路部4の内部を流通するEGRガスの流通方向Eは、
図3に示すように吸気の流通方向Fに対してほぼ垂直となる。
【0024】
下流部53は、コア20の流出面57から流出した吸気とEGRガスとを混合しながら各吸気ポート31に供給する部位である。
図4に示すように、下流部53の底面63は、コア20の流出面57からやや下方に向かって下り勾配に形成される。吸気とEGRガスとの混合気は、下流部53でポート並設方向Lに広がりつつ各吸気ポート31へと流入し、エンジン30の吸気弁の開放状態に応じて各シリンダの内部へと導入される。なお、シリンダヘッドの側面に穿孔されている吸気ポート31の端部開口部の数は、複数である。したがって、端部開口部の数や位置に合わせて、下流部53を分岐させた形状としてもよい。
【0025】
また、下流部53には、インマニ1をエンジン30のシリンダヘッドに締結固定するための固定部66が設けられる。固定部66には、締結固定具と螺合するネジ穴67が形成される。この締結固定具の締結対象であるシリンダヘッドの側面にも、ネジ穴67と同様の螺合穴が形成される。螺合穴は、吸気ポート31の端部開口部よりも上方と下方とに別れて列設される。また、これに対応するように、インマニ1側の固定部66も、吸気の出口部分を挟んで上方と下方とに列設される。
【0026】
図3に示すように、上下二列に配置された固定部66のうち下方の固定部66は、下流部53の外側(すなわち、インマニ1の外側)に配置される。これに対し、上方の固定部66は、吸気が流通する下流部53の内部に配置される。上方の固定部66の位置は、エンジン30の気筒間部に設定される。本実施形態における固定部66の位置は、1番気筒と2番気筒との間、及び、3番気筒と4番気筒との間に設定される。
【0027】
また、この固定部66に締結固定具を取り付けるための作業用開口部68が、上流部52に設けられる。作業用開口部68の位置は、
図4に示すように、固定部66から固定面に対する垂線を延ばした位置に設定される。なお、インマニ1は、インタークーラー10が装着される前にシリンダヘッドに対して締結固定される。その後、作業用開口部68は、
図2に示すように蓋部材69で密閉される。
【0028】
[2−1.インタークーラー]
インタークーラー10の構造について詳述する。
図3に示すように、インタークーラー10には、コア20の上面55に蝋付けされたフランジ11が設けられるとともに、フランジ11とは別体の天板12が設けられる。フランジ11は、コア20の上面55よりも大きな寸法の金属板であり、コア20が開口部2に挿入されたときに開口部2の縁部3における外表面に(面一に)接触して固定される大きさに形成される。このフランジ11は、コア20の上面55に沿って、その上面55から外側に向かって面状に延出するように取付けられる。また、フランジ11の外周部には、ボルトや長ネジなどの締結固定具59を挿通するための孔60が穿孔される。フランジ11は、コア20の内部を流通する冷媒によって冷却されうる。
【0029】
天板12は、フランジ11とほぼ同一の大きさを持ち、かつ、フランジ11よりも板厚の大きな金属板である。天板12の外周部にも、締結固定具59を挿通するための孔60が穿孔される。また、これらの孔60に対応するように、開口部2の縁部3にも締結固定具59が固定されるネジ穴61が設けられる。締結固定具59をフランジ11,天板12の孔60に挿通させた状態でネジ穴61に螺合させることで、開口部2がフランジ11,天板12によって閉塞され、フランジ11が縁部3の外表面に対して固定されるとともに、インタークーラー10がインマニ1に固定される。本実施形態では、フランジ11と開口部2の縁部3との間に金属製のガスケット14を挟装した状態で、インタークーラー10が取り付けられる。ガスケット14は、フランジ11よりも板厚の大きな天板12でフランジ11を介して押さえつけて取り付けられるため、ガスケット14のシール面圧を向上させることが可能となる。なお、天板12の板厚は、インタークーラー10の固定強度や締結圧に応じて設定することができる。
【0030】
本実施形態の天板12は、開口部2を正面から見た(開口部2へコア20を挿入する方向で見た)ときに、EGR通路部4と重合する大きさに形成される。つまり、天板12の一辺は、EGR通路部4を部分的に被覆する大きさを有するものとされる。逆にいえば、EGR通路部4は、天板12の直下方を通過するように配置される。また、フランジ11も同様であり、インタークーラー10の上面視でEGR通路部4と重合する大きさに形成される。本実施形態の開口部2の縁部3は、EGR通路部4を構成する壁体の一部として機能する。これにより、EGR通路部4の内部を通過するEGRガスは、フランジ11,天板12を介してインタークーラー10のコア20によって冷却されうる。
【0031】
天板12の上面は平面形状となっており、バキュームパイプ48とソレノイドバルブ49とが取り付けられる。バキュームパイプ48は、ターボチャージャー33のアクチュエータや制動倍力装置のマスターバックに導入される負圧の供給経路であり、ソレノイドバルブ49はその供給経路上に介装された電磁開閉弁である。バキュームパイプ48の一端には空気を吸引するバキュームポンプが設けられ、他端側にはターボチャージャー33や制動倍力装置が接続される。ターボチャージャー33は、圧力差を利用してタービンの可変ノズルを駆動し、過給圧を変更する機能を持つ。また、制動倍力装置は、負圧を利用してブレーキペダルの踏力を倍増させる機能を持つ。このように、バキュームパイプ48,ソレノイドバルブ49を天板12の表面に取り付けることで、負圧供給経路内の空気を間接的に冷却することが可能となり、コストをかけずにターボチャージャー33,制動倍力装置の制御性を改善できる。
【0032】
天板12の内部には、ヒーターとして機能する発熱部材47(例えば、電力供給を受けて発熱するニクロム線やペルチェ素子)が配索される。発熱部材47は、例えば極寒冷環境でエンジン30を始動させる際に通電され、インタークーラー10のフランジ11やコア20を昇温させるように機能する。これにより、冷態始動時におけるフランジ11の過冷却が抑制されるとともに、水分の凍結によるコア20の目詰まり,破損が抑制される。
【0033】
図5に示すように、天板12の表面のうち、フランジ11との接触面である裏面62には、その周囲よりも凹んだ形状に凹設された凹部64と、溝状に凹設された溝部65(例えば、凹みを線状に連設してなる部位)とが設けられる。これらの凹部64,溝部65は、フランジ11と天板12との締結圧を確保しつつ摩擦抵抗を小さくするための構造であり、フランジ11の熱膨張及び熱収縮による変形を吸収するように機能する。凹部64はおもに天板12の中央部付近に設けられ、その外側に溝部65が配置される。溝部65の配列方向は、天板12の中央部から外側に向かう方向に設定される。このように、天板12の表面に凹部64や溝部65を設けることで、フランジ11の温度変化によるわずかな変形(熱ひずみ)が許容され、フランジ11に亀裂や破断が発生する可能性が減少する。なお、具体的な凹部64,溝部65の形状や配置については、フランジ11の温度変化に伴う内部応力の分布状態に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
[2−2.EGR通路部]
EGR通路部4の構造について詳述する。
図3に示すように、EGR通路部4は開口部2に隣接して設けられ、縁部3の内表面に沿って配置される。すなわち、EGR通路部4はインタークーラー10のコア20に隣接配置される。EGR通路部4の延設方向は、吸気の流通方向Fに対して垂直な方向である。これにより、EGR通路部4の内部におけるEGRガスの流通方向Eは、吸気の流通方向Fに対して垂直な方向となり、コア20の流出面57に対してほぼ平行となる。したがって、コア20の流出面57から流出する吸気流に対し、上面視で幅方向に満遍なくEGRガスが導入することが可能となり、吸気とEGRガスとの混合性が向上する。
【0035】
EGR通路部4の水平断面形状を
図6,
図7に例示する。EGR通路部4には、延設部15と偏向部16とが設けられる。延設部15は、吸気の流通方向Fに対して垂直な方向へと直線状に延設された部位である。延設部15の水平断面形状は、EGR通路部4の奥へ進むに連れて流路が狭まる形状に形成される。また、延設部15には、EGRガスをコア20の下流側へと流出させるスリット5(EGR開口部)が設けられる。スリット5は、EGRガスの流通方向Eに延在する細長形状の開口部であり、延設部15の内部において吸気の流通方向Fの上流寄り(すなわち、コア20により近い位置)に配置される。
【0036】
偏向部16は、EGR通路部4へ流入するEGRガスの入口に配置された部位であり、EGRガスの流れを延設部15の延設方向(すなわち、EGRガスの流通方向E)に交差する方向へと偏向させる機能を持つ。偏向部16の流路形状は、
図6,
図7に示すように、上面視でスリット5を避けるようにクランク状に屈曲した形状(換言すれば、S字型にカーブした形状)とされる。本実施形態では、スリット5が流通方向Fの上流寄りに配置されるのに対し、EGRガスは流通方向Fの下流寄り(すなわち、コア20からより遠い位置)へと導入されるように、偏向部16の流路形状が設定される。これにより、EGRガスの流れが、延設部15の内部においてスリット5とは反対側に偏りやすくなり、EGRガスが延設部15の奥まで行き届きやすくなる。
【0037】
EGR通路部4の断面形状は、
図8に示すように、開口部2の縁部3を上底とした台形形状に形成される。すなわち、EGR通路部4の断面形状は、縁部3,第一壁面17,第二壁面18,第三壁面19で囲まれた台形形状に準えることができる。
第一壁面17は、下方に向かって開口部2から離れるほど、コア20からも離れるように傾斜した形状に形成された部位である。第一壁面17には、コア20の内部のうち開口部2に近い部分を通過した吸気が衝突しうる。また、第一壁面17に衝突した吸気は、第一壁面17の表面に沿って斜め下方に向かって流通する。
第二壁面18は、台形形状の下底に相当する部位であり、吸気の流通方向Fに沿った形状に形成される。また、第二壁面18には、上述のスリット5が形成される。
第三壁面19は、台形形状の斜辺に相当する部位であり、第一壁面17よりも吸気の流通方向Fの下流側において、第一壁面17に対向して配置される。
【0038】
延設部15の内部には、スリット5に沿ってEGRガスの流れに乱れを生成する第一膨出部6が膨出して設けられる。この第一膨出部6は、インタークーラー10を中央部51に装着するための締結固定具59が固定されるネジ穴61の周囲を、拡径方向に補強してなる筒状のボスの一部分である。またこのボスのうち、EGR通路部4の外側にはみ出た部分を第二膨出部7と呼ぶ。第二膨出部7は、吸気の流れに乱れを生成するように機能する。第一膨出部6,第二膨出部7の配設位置は、
図8に示すように、締結固定具59の取付位置に対応する。なお、締結固定具59は、開口部2を囲むように配置されており、コア20の下流側だけでなく、コア20の上流側にも配設されている。
図3に示すように、コア20の上流側に配設されるボスのことも、第二膨出部7と呼ぶ。
【0039】
図8に示すように、スリット5よりも吸気の流通方向Fの上流側には、第二壁面18から下方に向かって突設された剥離部8が設けられる。剥離部8は、吸気流を第二壁面18から剥離させる機能を持つ部位であり、例えば第一壁面17の表面に沿って流れてきた吸気流を、そのまま斜め下方へと直進させるように作用する。剥離部8の断面形状は、少なくとも第二壁面18から吸気通路の内側に向かって突出した形状とされる。また、好ましくは、第一壁面17をそのまま延長した斜面を持つ形状とされる。これにより、剥離部8よりも下流側に位置するスリット5の近傍における圧力がやや減少し、EGR通路部4内のEGRガスがスリット5から下方へと吸い込まれやすくなる。また、スリット5の近傍で吸気流の渦が生じやすくなり、EGRガスと吸気との混合性が向上する。
【0040】
図3に示すように、剥離部8は、スリット5の縁に沿ってEGRガスの流通方向Eに延設される。すなわち、剥離部8の延設方向は、吸気の流通方向Fに交差する方向(本実施形態では垂直方向)である。剥離部8は、上面視で吸気が流通する領域のほぼ全幅に渡って形成される。ただし、作業用開口部68からこれに対応する固定部66に至る範囲には、締結固定具を取り付けるための工具が挿入されうるため、工具と剥離部8との干渉を防止するための凹み部9が剥離部8に設けられる。すなわち、
図3に示すように、下流部53の内部に配置される固定部66から固定面に対する垂線を延ばし、垂線と剥離部8とが干渉しないように、第二壁面18からの突設寸法を部分的に小さくすることで凹み部9を形成する。これにより、吸気流に乱れが生じやすくなり、EGRガスと吸気との混合性が向上する。
【0041】
[3.作用]
[3−1.インタークーラー]
上記のインマニ1に内蔵されるインタークーラー10のフランジ11は、コア20を流通する冷媒によって冷却されやすく、比較的低温になる。一方、このインマニ1はエンジン30のシリンダヘッドに取付けられることから、エンジン30で発生する熱の影響も受けやすく、フランジ11のうちシリンダヘッドに近い部分が比較的高温になる。このような熱的不均衡によってフランジ11の内部で局所的な熱膨張や熱収縮が生じ、フランジ11の亀裂,破断が発生しやすい環境となってしまう。特に、上記のインマニ1ではEGR通路部4がインタークーラー10のコア20に隣接配置されるため、EGR通路部4の直上部に位置するフランジ11が高温になりやすく、局所的な熱膨張が発生しやすい。
【0042】
このような課題に対し、上記のインマニ1では、
図3に示すように、インタークーラー10の天板12がコア20に蝋付けされるフランジ11とは別体に設けられ、天板12とフランジ11とが重ね合わされた状態で開口部2の上に締結固定される。これにより、たとえフランジ11の温度が局所的に低温あるいは高温になったとしても、フランジ11が天板12に対して相対的に変形,移動することが許容されやすくなる。
【0043】
また、上記の天板12の裏面62には、
図5に示すように、凹部64,溝部65が凹設される。これらの凹部64,溝部65は、フランジ11の熱膨張及び熱収縮による変形を吸収するように機能する。したがって、フランジ11が天板12に対して相対的に変形,移動することがより確実に許容される。また、フランジ11と天板12との締結圧を過度に低下させることなく摩擦抵抗が減少するため、インタークーラー10の固定強度も確保される。
【0044】
さらに、上記の天板12は、上面視でEGR通路部4と重合する形状に形成される。つまり、EGR通路部4の内部を流通するEGRガスが、天板12を介してインタークーラー10に冷却されることになる。これにより、EGRガスの体積がより小さくなり、体積効率が改善される。また、エンジン30の燃焼温度が低下することから、窒素酸化物の生成量が削減される。
【0045】
[3−2.EGR通路部]
上記のインマニ1に設けられるEGR通路部4には、
図6に示すように、EGRガスを直線的に流通させる延設部15と、EGRガスを屈曲させながら流通させる偏向部16とが設けられる。偏向部16は、EGRガスの流れをスリット5のない一側寄りに偏らせるように機能する。また、第三壁面19が偏向部16から延設部15の奥に延びるにしたがって、対向する第一壁面17に対して接近するように設けられ、EGR通路部4(延設部15)の奥へ進むに連れて流路が狭まる形状に形成されている。これにより、
図9(A)に示すように、EGRガスが延設部15の奥まで行き届きやすくなり、スリット5のあらゆる部位から均等にEGRガスが流出するようになる。したがって、EGRガスと吸気との混合性が改善される。
【0046】
延設部15の内側には第一膨出部6が設けられ、EGRガスの流れに乱れが生成される。例えば、
図9(B)に示すように、EGRガスが第一膨出部6の近傍を流通すると、第一膨出部6よりもEGRガスの下流側に渦状の乱れが発生する。これにより、乱れを含むEGRガスの流れがスリット5を通過することになり、EGRガスと吸気との混合性が改善される。なお、本実施例では第一壁面17に設けられた第一膨出部6の間の位置で第一壁面17に対向する第三壁面19上に、延設部15の流路が狭まる始点が形成されている。
【0047】
スリット5よりも吸気の流通方向Fの上流側には、剥離部8が設けられる。これにより、
図9(C)中に白矢印で示すように、第一壁面17の表面を流通した吸気の流れが第二壁面18から剥離し、EGR通路部4内のEGRガスがスリット5から下方へと吸い込まれやすくなるとともに、剥離部8よりも吸気の下流側に渦状の乱れが生じる。これにより、乱れを含む吸気の流れがEGRガスと混ざり合うことになり、EGRガスと吸気との混合性がさらに改善される。
【0048】
また、
図3に示すように、剥離部8には第二壁面18からの突設寸法が周囲よりも小さい凹み部9が設けられる。つまり、
図9(C)中に破線白矢印で示すように、第一壁面17の表面を流通した吸気の流れの一部は、第二壁面18に沿って(すなわち、吸気の流通方向Fに向かって)流通する。一方、凹み部9が設けられていない部分ではこのような吸気の流れが阻害される。これにより、
図9(A)中に白矢印で示すように、凹み部9の両側に渦状の乱れが発生する。したがって、EGRガスと吸気との混合性がさらに改善される。
【0049】
[4.効果]
(1)フランジ11とは別体の天板12を用いてインタークーラー10をインマニ1に固定することで、フランジ11の温度変化によるわずかな変形(熱ひずみ)を許容しつつ、所望の締結圧に対応する剛性,厚みの天板12を使用することができる。したがって、インタークーラー10の固定強度を確保しつつ、フランジ11に亀裂,破断が生じるような事態を回避することができ、過剰にコストをかけることなく製品品質を向上させることができる。
【0050】
(2)天板12に凹部64,溝部65を設けることで、フランジ11を天板12に対して相対的に変形,移動しやすくすることができ、フランジ11の熱膨張及び熱収縮による変形をより効率的に吸収することができる。また、フランジ11と天板12との締結圧を過度に低下させることなく摩擦抵抗を減少させることができ、インタークーラー10の固定強度をより確実に確保することができる。
【0051】
(3)インタークーラー10のコア20に隣接する位置にEGR通路部4を配置することで、EGR通路部4の内部を流通するEGRガスをインタークーラー10で冷却することができ、装置構成を簡素化することができる。
(4)また、開口部2を正面(コア20の挿入方向)から見たときにEGR通路部4と天板12とが重合するように、EGR通路部4と天板12との位置関係を設定することで、EGR通路部4の壁体の一部である縁部3を天板12で冷却することができ、EGRガスの冷却性能を高めることができる。
【0052】
(5)延設部15の内部に第一膨出部6を設けることで、EGR通路部4の内部を流通するEGRガスの流れに乱れを生成することができ、EGRガスと吸気との混合性を高めることができる。また、この第一膨出部6は、インタークーラー10をインマニ1に取り付けるためのネジ穴61の周囲を拡径方向に補強したボスである。このような既存のボスに乱流の生成機能を付与することで、新たな部材を追加せずに混合性と冷却性を高めることができ、製品コストを低減させることができる。
【0053】
(6)
図3に示すように、吸気通路内に第二膨出部7を設けることで、吸気の流れに乱れを発生させることができ、EGRガスと吸気との混合性を高めることができる。また、第一膨出部6の場合と同様に、既存のボスを利用して第二膨出部7の機能を実現することで、新たな部材を追加せずに混合性を高めることができ、製品コストを低減させることができる。
【0054】
(7)
図3に示すように、ガスケット14を介してインタークーラー10をインマニ1
に締結固定することで、締結力を均一にすることができ、開口部2の密閉性を高めることができる。また、例えば樹脂製のシール部材を使用した場合と比較して、縁部3に対するフランジ11の相対変形や相対移動を許容しやすくすることができ、熱ひずみの吸収性能を高めることができる。
【0055】
(8)フランジ11よりも大きな板厚を有する天板12を用いることで、締結圧を均一に分散させることができ、フランジ11の熱膨張及び熱収縮による変形をより効率的に吸収することができる。また、締結圧がばらつきにくくなることから、インタークーラー10をより確実に固定することができ、過剰にコストをかけることなく製品品質を向上させることができる。さらに、フランジ11よりも板厚の大きな天板12で用いてガスケット14を押さえつけることで、ガスケット14のシール面圧を向上させることができる。
【0056】
(9)
図2に示すように、天板12の上にバキュームパイプ48を配設することで、バキュームパイプ48内の空気を冷却することができる。これにより、バキュームパイプ48が接続される装置(ターボチャージャー33のアクチュエータや制動倍力装置のマスターバック)の作動状態を安定させることができる。また、バキュームパイプ48内の空気の体積が小さくなることから、ターボチャージャー33や制動倍力装置を作動させるための負圧を小さくする(減圧量を削減する)ことができるというメリットもある。
【0057】
(10)上記の天板12には、ヒーターとして機能する発熱部材47が内蔵される。これにより、水分の凍結によるコア20の目詰まり,破損を防止することができる。また、発熱部材47での発熱量を調節することで、コア20の冷却効率を増減させることができ、インタークーラー10の制御性を向上させることができる。なお、インタークーラー10の冷却効率は、コア20を流通する冷媒の流速,流量を調整することでも変更可能であるが、発熱部材47を併用すれば、より迅速にコア20の冷却効率を変化させることができ、制御性を向上させることができる。
【0058】
[5.変形例]
上述の実施形態では、ディーゼル式のエンジン30に取り付けられたインマニ1を例示したが、エンジン30の種類はこれに限定されない。エンジン30のEGRシステムについても本件に必須の要素ではなく、適宜省略することができる。また、エンジン30を基準としたインマニ1の取り付け角度は、任意に設定可能である。上述の実施形態では、インタークーラー10のコア20の下面58が水平面に対して傾斜して設けられているが、インマニ1自体を水平面に対して傾斜させてもよいし、エンジン30を水平面に対して傾斜させてもよい。