特許第6520504号(P6520504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520504
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】アークホーン及び配電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/16 20060101AFI20190520BHJP
   H02B 1/20 20060101ALI20190520BHJP
   H01T 4/14 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   H02B1/16 Z
   H02B1/20 Z
   H01T4/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-139844(P2015-139844)
(22)【出願日】2015年7月13日
(65)【公開番号】特開2017-22029(P2017-22029A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 岳
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−038315(JP,A)
【文献】 特開2011−055672(JP,A)
【文献】 特開2014−236519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 − 1/38
H02B 1/46 − 13/08
H01T 1/00 − 4/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面矩形状の平板で構成される複数の電源導体のそれぞれの一面に取り付けられる、隣接する前記電源導体間に発生するアークをアーク駆動経路の途中で停滞させるアークホーンであって、
前記電源導体の一面に取り付けられる取付部と、該取付部に取り付けられた導電性のアーク駆動部とを備え、
該アーク駆動部は、前記取付部から前記電源導体の一面に対して傾斜するように延びる傾斜部と、該傾斜部から延び、前記取付部を取り付ける側の前記電源導体のエッジ部分及び前記取付部を取り付ける側と反対側の前記電源導体のエッジ部分の双方を前記電源導体の両側方から覆う一対の延長部とを備えていることを特徴とするアークホーン。
【請求項2】
前記一対の延長部は、前記取付部を取り付ける側と反対側の前記電源導体の他面を覆う連結部で連結されていることを特徴とする請求項1に記載のアークホーン。
【請求項3】
前記アーク駆動部の前記傾斜部及び前記一対の延長部の側面に、前記アークを駆動するエッジ部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアークホーン。
【請求項4】
断面矩形状の平板で構成される複数の電源導体と、該複数の電源導体のそれぞれの一面に取付けられる請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のアークホーンとを備えていることを特徴とする配電盤。
【請求項5】
前記複数の電源導体のそれぞれの両側面に、前記一対の延長部を通す一対の切欠きを形成したことを特徴とする請求項4に記載の配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する電源導体間に発生するアークをアーク駆動経路の途中で停滞させるためのアークホーン及びそのアークホーンを備えた配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤において、万一隣接する電源導体間で短絡が生じた場合、隣接する電源導体間でアークが発生する。この場合、アークに流れる電流と電源導体に流れる電流とが作る磁界によってアークは電源側とは逆方向側(負荷側)に電磁力(ローレンツ力)の影響で駆動する。その際、アークはその発生エネルギーで周囲にある電気機器などを破損・焼損させ、さらにアークが配電盤の筐体に接触した場合には、筐体が破損し、高温のガスが配電盤内から配電盤外に放出し、重大な事故となることがある。そこで、このアークを制御・鎮静させることが望まれ、配電盤において、隣接する電源導体間に発生するアークをアーク駆動経路の途中で停滞させるためにアークホーン(補助導体)を電源導体に設けることが提案されている。
【0003】
従来のこの種のアークホーンを備えた配電盤として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
特許文献1に示す配電盤においては、電源からの3相の電源分岐導体のそれぞれにアークホーン(補助導体)を取り付けている。それぞれのアークホーンは、空間を介して対応配置しているとともに、それぞれの先端は電源側から負荷側に向かって傾斜している。そして、隣接する電源分岐導体間に発生したアークは、電磁力により電源側に近い1点からアークホーンの先端部に駆動されて停滞し、アークにより周囲の電気機器が破損することを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−38315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の特許文献1に示す配電盤にあっては、以下の問題点があった。
即ち、特許文献1に示した配電盤において、アークホーンが取り付けられている電源分岐導体は断面形状が矩形の平板で構成され、アークホーンはその平板の一面に取付けられている。一方、隣接する平板状の電源導体間に発生するアークの足(陰極点、陽極点)は、その駆動に際し電界が集中する導体のエッジ部分を走行する。このため、アークの足がアークホーン取付け側の電源分岐導体のエッジ部分を走行する場合には、アークがアークホーンに導かれてその先端部で停滞する。これに対し、アークの足がアークホーン取付け側と反対側の電源分岐導体のエッジ部分を走行する場合には、アークがアークホーンに導かれず、電源分岐導体の負荷側への駆動が継続してしまい、アークにより周囲の電気機器が破損してしまうおそれがあった。
【0006】
従って、本発明はこの従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、隣接する電源導体間にアークが発生した場合に、アークの足が、アークホーン取付け側の電源導体のエッジ部分及びアークホーン取付け側と反対側の電源導体のエッジ部分のいずれを駆動する場合でも、アークをアーク発生場所に対して負荷側に取り付けたアークホーンの先端に容易、確実に導くことができるアークホーン及び配電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るアークホーンは、断面矩形状の平板で構成される複数の電源導体のそれぞれの一面に取り付けられる、隣接する前記電源導体間に発生するアークをアーク駆動経路の途中で停滞させるアークホーンであって、前記電源導体の一面に取り付けられる取付部と、該取付部に取り付けられた導電性のアーク駆動部とを備え、該アーク駆動部は、前記取付部から前記電源導体の一面に対して傾斜するように延びる傾斜部と、該傾斜部から延び、前記取付部を取り付ける側の前記電源導体のエッジ部分及び前記取付部を取り付ける側と反対側の前記電源導体のエッジ部分の双方を前記電源導体の両側方から覆う一対の延長部とを備えていることを要旨とする。
また、本発明の別の態様に係る配電盤は、断面矩形状の平板で構成される複数の電源導体と、該複数の電源導体のそれぞれの一面に取付けられる前述のアークホーンとを備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアークホーン及び配電盤によれば、隣接する電源導体間にアークが発生した場合に、アークの足が、アークホーン取付け側の電源導体のエッジ部分及びアークホーン取付け側と反対側の電源導体のエッジ部分のいずれを駆動する場合でも、アークをアーク発生場所に対して負荷側に取り付けたアークホーンの先端に容易、確実に導くことができるアークホーン及び配電盤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るアークホーンを備えた配電盤の概略説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るアークホーンの右側面図である。
図3図2に示すアークホーンの正面斜め上方から見た斜視図である。
図4図2に示すアークホーンを電源導体に取り付けた状態の斜視図である。
図5図2に示すアークホーンを隣接する2つの電源導体のそれぞれに取り付けたものと配電盤の筐体との位置関係を概略的に示す図である。
図6図5に概略的に示された図において、アークの駆動を説明するための図である。但し、図6においては、隣接する2つの電源導体及びそれらに取り付けたアークホーンのうち片側の電源導体及びアークホーンのみを示している。
図7】本発明の第2実施形態に係るアークホーンの右側面図である。
図8図7に示すアークホーンの正面斜め上方から見た斜視図である。
図9図7に示すアークホーンを電源導体に取り付けた状態の斜視図である。
図10図7に示すアークホーンを隣接する2つの電源導体のそれぞれに取り付けたものと配電盤の筐体との位置関係を概略的に示す図である。
図11図10に概略的に示された図において、アークの駆動を説明するための図である。但し、図11においては、隣接する2つの電源導体及びそれらに取り付けたアークホーンのうち片側の電源導体及びアークホーンのみを示している。
図12】参考例のアークホーンを電源導体に取り付けた状態の斜視図である。
図13図12に示すアークホーンを隣接する2つの電源導体のそれぞれに取り付けたものと配電盤の筐体との位置関係を概略的に示す図である。
図14図13に概略的に示された図において、アークホーンを取り付けた側の電源導体のエッジ部分をアークが駆動する場合を説明するための図である。但し、図14においては、隣接する2つの電源導体及びそれらに取り付けたアークホーンのうち片側の電源導体及びアークホーンのみを示している。
図15図13に概略的に示された図において、アークホーンを取り付けた側と反対側の電源導体のエッジ部分をアークが駆動する場合を説明するための図である。但し、図15においては、隣接する2つの電源導体及びそれらに取り付けたアークホーンのうち片側の電源導体及びアークホーンのみを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るアークホーンは、図1に示す配電盤に備えられている。配電盤1は、筐体1aの内部に仕切板2A、2Bを取り付けて遮断器室A、母線室B、ケーブル室Cを備えている。母線室Bの天井側の仕切板2Aには、3つの碍子4a,4b,4cが取り付けられ、各碍子4a,4b,4cには、3相を構成する各相の電源導体3a,3b,3cが取り付けられている。そして、各相の電源導体3a,3b,3cには、それぞれ電源分岐導体5が接続されている。各電源分岐導体5は、仕切板2Aに取り付けられた各電源側断路部6に接続されている。また、仕切板2Aには、3つの負荷側断路部8が取り付けられている。遮断器室A内には、真空遮断器7が配置され、真空遮断器7は、遮断器室A内で移動して各電源側断路部6及び各負荷側断路部8と電気的に開閉する。
【0011】
また、3つの負荷側断路部8のそれぞれには、電源導体9が接続される。3つの電源導体9は、ケーブル室C内において並行に配置されており、各電源導体9は、仕切板2Bに取り付けられた複数の碍子10に取り付けられるとともに、カレントトランス11を貫通してケーブル12に接続される。ケーブル12は、ケーブル室Cより配電盤1の外に引き出されて、例えばモータなどの負荷に接続される。ここで、各電源導体9は、負荷側断路部8から水平に延びた後、第1屈曲部9aを経て上方に延び、更に第2屈曲部9bを経て筐体1aに向かって水平に延びる。そして、各電源導体9の第1屈曲部9a近傍の水平部分及び第2屈曲部9b近傍の水平部分には、それぞれアークホーン20が取り付けられている。
【0012】
なお、各電源導体9は、アーシングスイッチ13を介してバスバー14を経て接地可能となっている。
ここで、各電源導体9の第1屈曲部9a近傍の水平部分に取り付けられたアークホーン20と各電源導体9の第2屈曲部9b近傍の水平部分に取り付けられたアークホーン20は、構成が同一であるため、以後、各電源導体9の第2屈曲部9b近傍の水平部分に取り付けられたアークホーン20について説明する。
このアークホーン20は、隣接する電源導体9間に発生するアークをアーク駆動経路の途中で停滞させるものであり、図4及び図5に示すように、一面(図4及び図5においては上面)91及び一面と反対側の他面(下面)92を有する断面矩形状の平板で構成される複数(本実施形態にあっては3つ,図4においては1つ、図5においては2つのみ図示)の電源導体9のそれぞれの一面91に取り付けられる。
【0013】
各アークホーン20は、図2乃至図4に示すように、各電源導体9の一面91に取り付けられる取付部21と、取付部21に取り付けられた導電性のアーク駆動部22とを備えている。
ここで、取付部21は、電源導体9の幅よりもやや細い幅を有する矩形状の基板部21aと、基板部21aの短辺から延びる、基板部21aよりも幅の細い矩形状の狭幅板部21bとを有する板部材である。取付部21は、金属板を加工することによって一体に形成される。そして、取付部21の基板部21a及び狭幅板部21bには、取付部21を電源導体9に取り付けるための取付ボルト27のねじ軸が挿通される複数のボルト用挿通孔21dが上下に貫通するように形成されている。取付部21は、基板部21aが電源側に、狭幅板部21bが負荷側となるように、電源導体9の一面91に取り付けられる。
【0014】
また、アーク駆動部22は、取付部21から電源導体9の一面91に対して傾斜するように延びる傾斜部23を備えている。傾斜部23は、取付部21の狭幅板部21bから幅方向に突出する基板部21aの負荷側端部において接合部21cで接合されて電源導体9の一面91、即ち取付部21の上面に対して傾斜するように延びる。傾斜部23の電源導体9の一面91及び取付部21の上面に対する傾斜は、負荷側が立ち上がるような傾斜で、その傾斜角度は、約45°に設定されている。傾斜部23は、矩形状の傾斜部本体23aと、傾斜部本体23aの幅方向両端から延び、取付部21の狭幅板部21bから幅方向に突出する基板部21aの後端部において接合部21cで接合される一対の脚部23b、23cとを備えている。
【0015】
また、アーク駆動部22は、傾斜部23の一対の脚部23b、23cの端部から電源導体9の一面91に対して直交する方向(下方)に延びる一対の延長部24、24(図2乃至図5においては一方の延長部24のみ図示)を備えている。これら一対の延長部24、24は、図4に示すように、取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a及び取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aの双方を電源導体9の両側方から覆う。図2乃至図5に示す例においては、各電源導体9のそれぞれの両側面に、一対の延長部24,24を通す一対の切欠き93が形成してあり、一対の延長部24、24は、取付部21を取り付ける側の切欠き93のエッジ部分91aa及び取付部21を取り付ける側と反対側の切欠き93のエッジ部分92aaの双方を覆っている。
【0016】
また、アーク駆動部22において、一対の延長部24、24は、それらの端部において、取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9の他面92を覆う連結部26で連結されている。
更に、アーク駆動部22の傾斜部23及び一対の延長部24、24の側面には、アーク100(図6参照)を駆動するエッジ部25が設けられている。エッジ部25は、各延長部24の端部(下端部)から傾斜部23の端部(上端部)に至るまで延びている。
このように構成されたアークホーン20を電源導体9に取り付ける際には、電源導体9の負荷側端部からアークホーン20の連結部26と取付部21との間の隙間に電源導体9を挿通する形でアークホーン20をスライドさせて1対の延長部24、24を切欠き93のところに位置させ、取付ボルト27及びナット28により取付部21及び電源導体9を抱き締めすればよい。この際に、取付部21は、基板部21aが電源側に、狭幅板部21bが負荷側となるように、電源導体9の一面91に取り付けられる。なお、図示はしないが、電源導体9には、取付ボルト27が挿通される貫通孔が形成されている。
【0017】
次に、図6を参照して、電源導体9に取り付けたアークホーン20の作用について説明する。
配電盤1において、万一隣接する電源導体9間で短絡が生じた場合、隣接する電源導体9間でアーク100が発生する。この場合、アーク100に流れる電流と電源導体9に流れる電流とが作る磁界によってアーク100は電源側とは逆方向側(負荷側)に電磁力(ローレンツ力)の影響で駆動する。
ここで、アーク100が取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aを駆動する場合、アーク100の足(陽極点、陰極点)は、電源導体9の電源側のエッジ部分92aから切欠き93のエッジ部分92aaを経てアークホーン20の延長部24、傾斜部23のアーク駆動経路Aを駆動して傾斜部23の先端に至り、アーク100の足が傾斜部23の先端一端部23Aに固定される。そして、アーク100は徐々に先端一端部23Aと反対側の傾斜部23の先端他端部23B側に広がっていき、その足が先端他端部23Bに固定される。このため、アーク100は筐体1aに接触せず、筐体1aが破損して高温のガスが配電盤1内から配電盤1外に放出するおそれを回避することができる。なお、アークホーン20の電源導体9に対する取付位置は、アーク100が広がっても、筐体1aに到達しない位置に設定されている。
【0018】
一方、アーク100が取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91aを駆動する場合、図示はしないが、アーク100の足は、電源導体9の電源側のエッジ部分91aから切欠き93のエッジ部分91aaを経てアークホーン20の延長部24、傾斜部23のアーク駆動経路を駆動して傾斜部23の先端に至り、アーク100の足が傾斜部23の先端一端部23Aに固定される。そして、アーク100は徐々に先端一端部23Aと反対側の傾斜部23の先端他端部23B側に広がっていき、その足が先端他端部23Bに固定される。このため、アーク100は筐体1aに接触しない。
【0019】
このように、第1実施形態に係るアークホーン20によれば、アーク駆動部22は、取付部21から電源導体9の一面91に対して傾斜するように延びる傾斜部23と、傾斜部23から延び、取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a(91aa)及び取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92a(92aa)の双方を電源導体9の両側方から覆う一対の延長部24、24とを備えている。このため、隣接する電源導体9間にアーク100が発生した場合に、アーク100の足が、アークホーン20を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a及びアークホーン20を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aのいずれを駆動する場合でも、アークホーン20の延長部24から傾斜部23を駆動し、傾斜部23の先端に至るので、アーク100をアーク発生場所に対して負荷側に取り付けたアークホーン20の先端に容易、確実に導くことができ、アーク100が筐体1aに接触せず、筐体1aが破損して高温のガスが配電盤1内から配電盤1外に放出するおそれを回避することができる。
【0020】
また、第1実施形態に係るアークホーン20によれば、一対の延長部24、24は、取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9の他面92を覆う連結部26で連結されている。このため、電源導体9の他面92側をアーク100の足が駆動する場合でも、アーク100の足は、連結部26から延長部24、傾斜部23を駆動し、傾斜部23の先端に至るので、アーク100をアークホーン20の先端に容易、確実に導くことができる。
更に、第1実施形態に係るアークホーン20によれば、アーク駆動部22の傾斜部23及び一対の延長部24、24の側面に、アーク100を駆動するエッジ部25を設けてある。このため、アーク100の足が、アークホーン20の延長部24から傾斜部23を駆動して傾斜部23の先端に至る際に、アーク100の足はエッジ部25上を駆動する。これにより、アーク100をアークホーン20の先端により容易に導くことができる。
【0021】
また、第1実施形態に係るアークホーン20を備えた配電盤1によれば、複数(この実施形態の場合3つ)の電源導体9のそれぞれの両側面に、一対の延長部24、24を通す一対の切欠き93、93を形成してある。この理由は、切欠き93を形成しないストレート形状の電源導体9の両側面から一対の延長部24、24でエッジ部分91a及び92aを覆った場合には、隣接して並行に配置された電源導体9に取り付けたアークホーン20の延長部24との間の距離が短くなり、極間の耐電圧が低下する懸念がある。このため、アークホーン20の延長部24を設置する付近の電源導体9に延長部24用の逃げとなる切欠き93を形成した。これにより、極間の絶縁距離を維持することが可能となり、耐電圧の低下を防止することができる。このように、切欠き93を電源導体9に形成すると、その部分の電源導体9の断面積が小さくなり、電流集中により発熱する危険性が心配される。しかし、アークホーン20の延長部24を含めた部分も導体として使用することができるので、アークホーン20の断面積と切欠き93があるところの電源導体9の断面積の合計がストレート形状の電源導体9の断面積よりも多ければ、電流集中を防止することができる。
【0022】
次に、アークホーン20に一対の延長部24、24を設けない参考例について図12乃至図15を参照して説明する。図12乃至図15において、図2乃至図6と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図12乃至図15に示すアークホーン20は、図2乃至図6に示すアークホーン20と同様に、各電源導体9の一面91に取り付けられる取付部21と、取付部21に取り付けられたアーク駆動部22とを備えている。このアークホーン20は、導電性金属板を加工することにより一体に形成されている。
【0023】
ここで、取付部21は、電源導体9の幅とほぼ同一の幅を有する矩形状に形成された板部材であり、取付部21を電源導体9に取り付けるための取付ボルト27のねじ軸が挿通される複数のボルト用挿通孔(図示せず)が上下に貫通するように形成されている。アークホーン20を電源導体9の一面91に取り付ける際には、取付部21を電源導体9の一面91上に載置し、複数の取付ボルト27及びナット28により取付部21及び電源導体9を抱き締めすればよい。なお、図示はしないが、電源導体9には、取付ボルト27が挿通される貫通孔が形成されている。
【0024】
また、アーク駆動部22は、取付部21から電源導体9の一面91に対して傾斜するように延びる傾斜部23を備えている。傾斜部23は、略矩形状の板部材で取付部21と一体に形成されている。そして、傾斜部23の電源導体9の一面91及び取付部21の上面に対する傾斜は、負荷側が立ち上がるような傾斜で、その傾斜角度は、約45°に設定されている。アーク駆動部22には、第1実施形態のアークホーン20のように、一対の延長部は設けられていない。
このように構成された参考例のアークホーン20の作用について、図14及び図15を参照して説明する。
【0025】
先ず、図14に示すように、アーク100が取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91aを駆動する場合、アーク100の足は、電源導体9の電源側のエッジ部分91aからアークホーン20の取付部21の上側エッジ部分を経てアークホーン20の傾斜部23の上側エッジ部分のアーク駆動経路Aを駆動して傾斜部23の先端に至り、アーク100の足が傾斜部23の先端一端部23Aに固定される。そして、アーク100は徐々に先端一端部23Aと反対側の傾斜部23の先端他端部23B側に広がっていき、その足が先端他端部23Bに固定される。このため、アーク100は筐体1aに接触しない。
【0026】
一方、図15に示すように、アーク100が取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aを駆動する場合、アーク100の足は、電源導体9の電源側のエッジ部分92aから電源導体9の負荷側のエッジ部分92aの端部に至るアーク駆動経路Bを駆動し、アーク100の足が電源導体9の先端一端部9Aに固定される。そして、アーク100は徐々に先端一端部9Aと反対側の電源導体9の先端他端部23B側に広がっていき、その足が先端他端部23Bに固定される。この際に、アーク100は筐体1aに接触し、筐体1aが破損して高温のガスが配電盤1内から配電盤1外に放出する。
【0027】
このように、アークホーン20に一対の延長部24、24を設けない参考例のアークホーン20の場合は、アーク100が取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aを駆動する場合には、アークホーン20にアーク100が導かれず、アーク100の電源導体9における駆動が継続し、筐体1aに接触してしまう不都合がある。
これに対して、第1実施形態に係るアークホーン20の場合には、前述したように、アーク駆動部22は、取付部21から電源導体9の一面91に対して傾斜するように延びる傾斜部23と、傾斜部23から延び、取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a(91aa)及び取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92a(92aa)の双方を電源導体9の両側方から覆う一対の延長部24、24とを備えている。このため、隣接する電源導体9間にアーク100が発生した場合に、アーク100の足が、アークホーン20を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a及びアークホーン20を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aのいずれを駆動する場合でも、アークホーン20の延長部24から傾斜部23を駆動し、傾斜部23の先端に至るので、アーク100をアーク発生場所に対して負荷側に取り付けたアークホーン20の先端に容易、確実に導くことができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るアークホーンについて、図7乃至図11を参照して説明する。図7乃至図11において、図2乃至図6における部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
第2実施形態に係るアークホーンは、図7乃至図11に示されており、このアークホーン20は、基本構成は図2乃至図6に示すアークホーン20と同様であるが、一対の延長部24、24のそれぞれの形状が異なっている。なお、この第2実施形態に係るアークホーン20も、図1に示す配電盤1において、各電源導体9の第1屈曲部9a近傍の水平部分及び各電源導体9の第2屈曲部9b近傍の水平部分に取り付けられる。
【0029】
各延長部24は、第1実施形態に係るアークホーン20の延長部24が傾斜部23の一対の脚部23b、23cの端部のそれぞれから電源導体9の一面91に対して直交する方向(下方)に延びるのに対し、傾斜部23の一対の脚部23b、23cの端部のそれぞれから真っ直ぐに延びている点で相違している。そして、一対の延長部24は、図9に示すように、取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a及び取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aの双方を電源導体9の両側方から覆う。図7乃至図11に示す例においては、各電源導体9のそれぞれの両側面に、一対の延長部24,24を通す一対の切欠き93が形成してあり、一対の延長部24、24は、取付部21を取り付ける側の切欠き93のエッジ部分91aa及び取付部21を取り付ける側と反対側の切欠き93のエッジ部分92aaの双方を覆っている。
【0030】
なお、第2実施形態に係るアークホーン20のアーク駆動部22において、一対の延長部24、24は、第1実施形態に係るアークホーン20の一対の延長部24、24と異なり、それらの端部において、取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9の他面92を覆う連結部26で連結されていない。
また、第2実施形態に係るアークホーン20のアーク駆動部22の傾斜部23及び一対の延長部24、24の側面には、第1実施形態に係るアークホーン20と同様に、アーク100(図11参照)を駆動するエッジ部25が設けられている。エッジ部25は、各延長部24の端部(下端部)から傾斜部23の端部(上端部)に至るまで延びている。
このように構成されたアークホーン20を電源導体9に取り付ける際には、電源導体9の一面91上に取付部21を、両延長部24が電源導体9の両切欠き93を通るように、載置する。そして、取付ボルト27及びナット28により取付部21及び電源導体9を抱き締めすればよい。この際に、取付部21は、基板部21aが電源側に、狭幅板部21bが負荷側となるように、電源導体9の一面91に取り付けられる。なお、図示はしないが、電源導体9には、取付ボルト27が挿通される貫通孔が形成されている。
【0031】
次に、図11を参照して、電源導体9に取り付けた第2実施形態に係るアークホーン20の作用について説明する。
配電盤1において、万一隣接する電源導体9間で短絡が生じた場合、隣接する電源導体9間でアーク100が発生する。この場合、アーク100に流れる電流と電源導体9に流れる電流とが作る磁界によってアーク100は電源側とは逆方向側(負荷側)に電磁力(ローレンツ力)の影響で駆動する。
ここで、アーク100が取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aを駆動する場合、図11に示すように、アーク100の足(陽極点、陰極点)は、電源導体9の電源側のエッジ部分92aから切欠き93のエッジ部分92aaを経てアークホーン20の延長部24、傾斜部23のアーク駆動経路Aを駆動して傾斜部23の先端に至り、アーク100の足が傾斜部23の先端一端部23Aに固定される。そして、アーク100は徐々に先端一端部23Aと反対側の傾斜部23の先端他端部23B側に広がっていき、その足が先端他端部23Bに固定される。このため、アーク100は筐体1aに接触せず、筐体1aが破損して高温のガスが配電盤1内から配電盤1外に放出するおそれを回避することができる。なお、アークホーン20の電源導体9に対する取付位置は、アーク100が広がっても、筐体1aに到達しない位置に設定されている。
【0032】
一方、アーク100が取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91aを駆動する場合、図示はしないが、アーク100の足は、電源導体9の電源側のエッジ部分91aから切欠き93のエッジ部分91aaを経てアークホーン20の延長部24、傾斜部23のアーク駆動経路を駆動して傾斜部23の先端に至り、アーク100の足が傾斜部23の先端一端部23Aに固定される。そして、アーク100は徐々に先端一端部23Aと反対側の傾斜部23の先端他端部23B側に広がっていき、その足が先端他端部23Bに固定される。このため、アーク100は筐体1aに接触しない。
【0033】
このように、第2実施形態に係るアークホーン20においても、アーク駆動部22は、取付部21から電源導体9の一面91に対して傾斜するように延びる傾斜部23と、傾斜部23から延び、取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a(91aa)及び取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92a(92aa)の双方を電源導体9の両側方から覆う一対の延長部24、24とを備えている。このため、隣接する電源導体9間にアーク100が発生した場合に、アーク100の足が、アークホーン20を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a及びアークホーン20を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aのいずれを駆動する場合でも、アークホーン20の延長部24から傾斜部23を駆動し、傾斜部23の先端に至るので、アーク100をアーク発生場所に対して負荷側に取り付けたアークホーン20の先端に容易、確実に導くことができ、アーク100が筐体1aに接触せず、筐体1aが破損して高温のガスが配電盤1内から配電盤1外に放出するおそれを回避することができる。
【0034】
また、第2実施形態に係るアークホーン20によれば、一対の延長部24、24は、傾斜部23の一対の脚部23b、23cの端部のそれぞれから真っ直ぐに延びている。つまり、各延長部24自身も負荷側が上となるように電源導体9の一面91に対して傾斜している。このため、アーク100の足が、アークホーン20を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a及びアークホーン20を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aのいずれを駆動する場合でも、延長部24に乗りやすく、アーク100の足を傾斜部23の先端に至るまで容易に駆動することができる。
【0035】
また、第2実施形態に係るアークホーン20においても、アーク駆動部22の傾斜部23及び一対の延長部24、24の側面に、アーク100を駆動するエッジ部25を設けてある。このため、アーク100の足が、アークホーン20の延長部24から傾斜部23を駆動して傾斜部23の先端に至る際に、アーク100の足はエッジ部25上を駆動する。これにより、アーク100をアークホーン20の先端により容易に導くことができる。
また、第2実施形態に係るアークホーン20を備えた配電盤1においても、複数(この実施形態の場合3つ)の電源導体9のそれぞれの両側面に、一対の延長部24、24を通す一対の切欠き93、93を形成してある。このため、極間の絶縁距離を維持することが可能となり、耐電圧の低下を防止することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、第1実施形態に係るアークホーン20及び第2実施形態に係るアークホーン20の双方において、取付部21とアーク駆動部22は別体で構成し、それぞれを接合しているが、取付部21及びアーク駆動部22を一体で構成してもよい。
また、第1実施形態に係るアークホーン20及び第2実施形態に係るアークホーン20の双方において、傾斜部23は、電源導体9の一面91に対して負荷側が上がる形で約45°の傾斜角度で傾斜しているが、電源導体9の一面91に対して負荷側が上がる形で傾斜していればよく、傾斜角度は約45°に限定されない。
【0037】
更に、第1実施形態に係るアークホーン20及び第2実施形態に係るアークホーン20の双方において、一対の延長部24、24及び傾斜部23の側面にエッジ部25を設ける必要は必ずしもない。
また、第1実施形態に係るアークホーン20を備えた配電盤1及び第2実施形態に係るアークホーン20を備えた配電盤1において、電源導体9のそれぞれの両側面に、一対の切欠き93を形成する必要は必ずしもない。この場合、一対の延長部24は、取付部21を取り付ける側の電源導体9のエッジ部分91a及び取付部21を取り付ける側と反対側の電源導体9のエッジ部分92aの双方を電源導体9の両側方から覆う。
【0038】
また、第1実施形態に係るアークホーン20において、一対の延長部24、24を連結する連結部26は必ずしも設ける必要はない。
また、第1実施形態及び第2実施形態に係るアークホーン20は、断面矩形状の平板で構成される複数の電源導体のそれぞれの一面に取り付けられて、隣接する電源導体間に発生するアークをアーク駆動経路の途中で停滞させるものであり、それが適用されるのは配電盤1のみならず、例えば、複数の電源導体が使用されるいわゆるバスダクトシステムと呼ばれる幹線配線システムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 配電盤
9 電源導体
20 アークホーン
21 取付部
22 アーク駆動部
23 傾斜部
24 延長部
25 エッジ部
26 連結部
91 電源導体の一面
91a エッジ部分
91b エッジ部分
92 電源導体の他面
93 切欠き
100 アーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図15