(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向のうち
図1の左右方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0011】
また、特に断りのない限り、以下の説明においては、上下方向(Z軸方向)に延びる中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、上下方向(Z軸方向)は、中心軸Jの軸方向に相当する。
【0012】
なお、本明細書において、上下方向に延びる、とは、厳密に上下方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、上下方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち上下方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0013】
図1は、本実施形態のモータ1を示す断面図である。
図1に示すように、モータ1は、シャフト10と、ロータ部20と、ブラケット50と、上側軸受部(軸受部)41と、下側軸受部42と、ステータ部30と、位置決め部材70と、回路基板60と、を備える。
シャフト10とロータ部20とは互いに固定され、一体となって中心軸Jの周りを回転する。また、ブラケット50、ステータ部30、位置決め部材70および回路基板60は、互いに固定されている。ブラケット50は、上側軸受部41および下側軸受部42を保持する。ブラケット50は、上側軸受部41および下側軸受部42を介して、シャフト10を支持する。
モータ1は、外部装置から入力される駆動電流がステータ部30に供給されることで、ステータ部30に磁場を発生させ、この磁場によってロータ部20およびシャフト10を中心軸J周りに回転させる。
以下、各部品について詳細に説明する。
【0014】
[シャフト]
図1に示すように、シャフト10は、上下方向(Z軸方向)に延びる中心軸Jに沿って配置された円柱状の軸である。シャフト10の中心は、中心軸Jに一致する。シャフト10は、上側軸受部41および下側軸受部42を介してブラケット50に回転可能に支持されている。
【0015】
[ロータ部]
ロータ部20は、シャフト10に固定され、シャフト10とともに中心軸Jを中心として回転する。ロータ部20は、筒状のロータホルダ24と、ロータホルダ24の内周面24cに固定されたロータマグネット25と、ロータハブ26とを有している。
【0016】
ロータホルダ24は、上下方向に延びる円筒形状の筒部24aと筒部24a上端から径方向内側に延びる天板部24bを有する。天板部24bの中央には、上下方向に貫通する中央孔24dが設けられている。
【0017】
ロータマグネット25は、筒部24aの内周面24cに接着固定されてロータホルダ24に保持されている。ロータマグネット25は、ロータホルダ24の周方向に異なる磁極を配列する永久磁石である。
【0018】
ロータハブ26は、天板部24bの中央孔24dの内周面とシャフト10との間に位置し、ロータホルダ24とシャフト10とを互いに固定する。
【0019】
[ブラケット]
ブラケット50は、筒部51と、筒部51の外周面51bから径方向外側に広がるベース部53とを有する。筒部51は、中心軸Jに沿って延びる円筒形状を有する。筒部51は、シャフト10の外周面を囲む。筒部51の外周面51bには、ベース部53より上側において段差部52が設けられている。段差部52は、上側を向く段差面52aを有する。
【0020】
筒部51は、内周面51aの上下方向中程に、径方向内側に突出して内径を狭める内側突出部51cを有する。筒部51の内周面51aにおいて、内側突出部51cの上側には上側軸受部41が保持され、内側突出部51cの下側には下側軸受部42が保持される。
【0021】
ベース部53は、筒部51の外周面51bから径方向外側に広がる。ベース部53は、回路基板60を下面60a側から支持する。ベース部53の上面には、下側に延びるベース穴54が設けられている。ベース穴54には、後段において説明する位置決め部材70の下側突起72が挿入される。
【0022】
[上側軸受部および下側軸受部]
上側軸受部41および下側軸受部42は、ブラケット50に対してシャフト10を回転可能に支持する。上側軸受部41および下側軸受部42は、径方向において筒部51の内周面51aとシャフト10の外周面との間に位置する。
【0023】
[回路基板]
回路基板60は、各種電子部品を実装してモータ駆動回路を構成する。回路基板60は、上下方向においてステータ部30とブラケット50のベース部53との間に位置する。回路基板60には、板面を上下方向に貫通する貫通孔61が設けられている。貫通孔61には、後段において説明する位置決め部材70の下側突起72が挿入される。
【0024】
[ステータ部]
ステータ部30は、筒部51の外周面51bを径方向から囲む。ステータ部30は、ステータコア34とコイル35とを有する。コイル35は、ステータコア34にコイル線Cが巻かれることで構成される。すなわち、ステータ部30は、コイル線Cを有する。
【0025】
図2は、ステータ部30の平面模式図である。なお本明細書おいて、
図2に示すようにステータコア34を上側から見たときの一方および他方の周方向の向きを時計回り方向Dcwおよび反時計回り方向Dccwとして各部を説明する。
図2に示すように、ステータコア34は、環状のコアバック32およびコアバック32の径方向外側に延びるティースT(T1〜T12)を有する。12個のティース31には、それぞれコイル線Cが巻き付けられコイル35を構成する。コイル線Cの巻線構成については、後段において詳しく説明する。なお、
図2において、コイル35同士の間に引き回されるコイル線Cの渡り線は、省略されている。
【0026】
コアバック32の内周面32aには、径方向内側に突出する3つの凸部33が設けられている。それぞれの凸部33は、周方向等間隔に配置されている。凸部33の径方向内端33cは、上下方向から見て筒部51の外周面51bに沿った円弧形状を有している。
図1に示すように、凸部33の径方向内端33cは、筒部51の外周面51bに接触する。凸部33には、上下方向に貫通する貫通孔36が設けられている。貫通孔36には、後段において説明する位置決め部材70の上側突起71が挿入される。
【0027】
ティースTは、周方向に均等な間隔で12個並んでいる。
図2に示すように本明細書では、各ティースTを反時計回り方向Dccwの順に第1のティースT1、第2のティースT2、・・・、第12のティースT12と呼ぶ。各ティースTは、コアバック32から径方向外側に延びるティース基部31aと、ティース基部31aの径方向外側端部に位置するティース先端部31bと、を有する。ティース先端部31bは、ティース基部31aに対し周方向に幅広な形状を有する。
【0028】
隣り合う前記ティースの間には、それぞれスロットS1〜S12が設けられている。それぞれのスロットS1〜S12は、周方向に隣り合う2つのティースTの側面と、コアバック32の外周面とにより囲まれた領域である。本明細書では、
図2に示すようにステータコア34を上側から見て、第12のティースT12と第1のティースT1との間に位置するスロットを第1のスロットS1と呼ぶ。また、第1のスロットS1から反時計回り方向Dccwに各スロットを第2のスロットS2、第3のスロットS3、・・・、第12のスロットS12と呼ぶ。
【0029】
図1に示すように、ステータコア34の表面には、コイル35との絶縁を確保する絶縁被膜39が設けられている。絶縁被膜39は、ステータコア34の表面のうち少なくともコイル35と接触する部分に設けられていればよい。絶縁被膜39は、例えばステータコア34の外面に施された紛体塗装である。なお、ステータ部30は、絶縁被膜39に代えて、樹脂材料からなるインシュレータを有していてもよい。
【0030】
[位置決め部材]
図1に示すように、位置決め部材70は、上下方向においてステータ部30と回路基板60との間に位置する。位置決め部材70は、中心軸Jを囲む環状の本体部73と、本体部73から上側に延びる複数の上側突起71と、本体部73から下側に延びる複数の下側突起72とを有する。上側突起71は、ステータコア34の貫通孔36に挿入される。下側突起72は、回路基板60に設けられた貫通孔61およびベース部53に設けられたベース穴54に挿入される。これにより、位置決め部材70は、ステータコア34、回路基板60およびブラケット50の周方向の位置決めを行う。
【0031】
[巻線構成]
次に、コイル線C(C1〜C3)の巻線構成について説明する。
図2に示すように、ステータ部30は、ステータコア34に巻かれる3本のコイル線(第1のコイル線C1、第2のコイル線C2および第3のコイル線C3)を有する。
図3は、コイル線Cが構成する三相回路6を示す模式図である。コイル線C1〜C3は、第1のコイル線C1を第1相とし、第2のコイル線C2を第2相とし、第3のコイル線C3を第3相として、スター結線された二並列の三相回路6を構成する。
【0032】
図2および
図3に示すように、三相回路6は、3つの相用端子(第1の相用端子M1、第2の相用端子M2および第3の相用端子M3)と、3つの中性点用端子(第1の中性点用端子N1、第2の中性点用端子N2および第3の中性点用端子N3)と、を有する。
相用端子M1〜M3および中性点用端子N1〜N3は、それぞれ回路基板60に接続される。回路基板と相用端子M1〜M3および中性点用端子N1〜N3との接続は、接続端子部品を介して接続しても、直接的に半田付けしてもよい。相用端子M1〜M3には、回路基板60を介して駆動電流が供給される。また、
図3に示すように、中性点用端子N1〜N3は、回路基板60において、短絡回路部69により互いに短絡されて、回路基板60上に中性点NPを構成する。
【0033】
図4は、第1のコイル線C1の巻線構成を示すステータ部30の平面図である。また、
図5は、第1のコイル線C1、第2のコイル線C2および第3のコイル線C3の巻線構成を示す模式図である。
ここで、巻線構成とは、1つのコイル線Cの巻線パターン、すなわち巻き始めおよび巻き終りの位置、コイル線Cの引き回される方向、コイル線Cが通過する位置、並びにティースTへの巻き方向のパターンを意味する。巻線構成は、ステータコア34にコイル線Cを巻き付けるための巻線機80のノズル81(後段で説明する
図6参照)の先端が通過する経路と言い換えることができる。以下の説明で、ティースTに対するコイル線Cの巻き方向を右巻きおよび左巻きとして説明する。右巻きとは、ティースTの先端側から観察してコイル線Cを時計回りに巻き付ける巻き方向を意味し、左巻きとは、ティースTの先端側から観察してコイル線Cを反時計回りに巻き付ける巻き方向を意味する。
【0034】
図4および
図5に示すように、第1のコイル線(第1相のコイル線)C1は、巻き始め部C1aからステータコア34に巻かれ、巻き終り部C1bでステータコア34から引き出される。巻き始め部C1aは、第4のスロットS4に位置する。また、巻き終り部C1bは、第12のスロットS12に位置する。巻き始め部C1aが配置される第4のスロットS4に対し、巻き終り部C1bが配置される第12のスロットS12は、周方向時計回り方向Dcwに120°回転した位置に設けられている。
【0035】
第1のコイル線C1は、巻き始め部C1aが位置する第4のスロットS4から反時計回り方向Dccwに引き回され、第4のティースT4の上側を通過して第5のティースT5に巻き付けられてコイル35を構成する。第5のティースT5において、第1のコイル線C1は、右巻きに巻き付けられる。
【0036】
さらに第1のコイル線C1は、隣り合う第6のティースT6に引き回され巻き付けられてコイル35を構成する。第6のティースT6において、第1のコイル線C1は、左巻きに巻き付けられる。
【0037】
さらに第1のコイル線C1は、反時計回り方向Dccwに引き回され第2のスロットS2においてステータコア34から一旦引き出される。第6のティースT6から第2のスロットS2の間で、コイル線C1は、第5のティースT5、第4のティースT4、第3のティースT3および第2のティースT2の下側と上側とを交互に通過する。このように、コイル線C(C1〜C3)は、コイル35同士の間で引き回される渡り線37が、コイル35同士の間にあるティースTの上面および下面を交互に通過する。これにより、コイル線Cが、ティースTにより巻き掛けられて、コイル線Cがコアバック32の内径より内側に張り出すことがない。
【0038】
第2のスロットS2においてステータコア34から引き出された第1のコイル線C1は、ステータコア34の第2のスロットS2に戻されてループ状の中間引き出し部C1cを構成する。中間引き出し部C1cにおいて、ステータコア34から引き出された部分と再度ステータコア34に戻された部分とは、互いに撚り合わされる。また、中間引き出し部C1cは、第1の相用端子M1となる。
【0039】
第1のコイル線C1は、中間引き出し部C1cから第1のティースT1の上側および第12のティースT12の下側を通過して、第11のティースT11に巻き付けられてコイル35を構成する。第11のティースT11において、第1のコイル線C1は、右巻きに巻き付けられる。
【0040】
さらに第1のコイル線C1は、隣り合う第12のティースT12に引き回され巻き付けられてコイル35を構成する。第12のティースT12において、第1のコイル線C1は、左巻きに巻き付けられる。
【0041】
さらに、第1のコイル線C1は、第12のスロットS12においてステータコア34から引き出され、巻き終り部C1bを構成する。
以上の巻線構成により第1のコイル線C1は、ステータコア34に巻かれている。
【0042】
ここで、第1のコイル線C1により構成される4つのコイル35のうち、第1のコイル線C1が右巻きのコイルを右巻きコイル35aと呼び、左巻きのコイルを左巻きコイル35bと呼ぶ。右巻きコイル35aと左巻きコイル35bとは、互いに隣り合って配置されている。すなわち、第1のコイル線C1は、互いに隣り合うティースTに異なる巻き方向に巻き付けられて右巻きコイル35aおよび左巻きコイル35bを構成する。隣接するコイル35には、逆方向の磁極を発生させる必要がある。
図3に示すように、三相回路6において相用端子M1と中性点用端子N1との間(又は相用端子M1と中性点用端子N3との間)に位置するコイルには、同方向に電流が流れる。したがって、第1のコイル線C1が構成する4つのコイル35のうち隣接するコイルには、同方向の電流が流れる。これらのコイルを逆向きに巻くことで極性を逆転させることができ、三相二並列のステータ部30を構成できる。
【0043】
図5に示すように、第1のコイル線C1、第2のコイル線C2および第3のコイル線C3は、周方向に120°回転させた位置で互いに共通の巻線構成を有する。
【0044】
第2のコイル線(第2相のコイル線)C2は、巻き始め部C2aが第12のスロットS12に位置し、巻き終り部C2bが巻き始め部C2aから周方向時計回り方向Dcwに120°回転した第8のスロットS8に位置する。第2のコイル線C2は、巻き始め部C2aから巻き終り部C2bへの経路中で第1のティースT1、第2のティースT2、第7のティースT7および第8のティースT8にこの順でそれぞれ右巻き、左巻き、右巻き、左巻きで巻き付けられコイル35を構成する。また、第2のコイル線C2には、巻き始め部C2aから巻き終り部C2bへの経路中にステータコア34から引き出された中間引き出し部C2cが設けられる。中間引き出し部C2cは、第10のスロットS10に位置する。中間引き出し部C2cにおいて、引き出されたコイル線C2は、撚り合わされて第2の相用端子M2となる。
【0045】
第3のコイル線(第3相のコイル線)C3は、巻き始め部C3aが第8のスロットS8に位置し、巻き終り部C3bが巻き始め部C3aから周方向時計回り方向Dcwに120°回転した第4のスロットS4に位置する。第3のコイル線C3は、巻き始め部C3aから巻き終り部C3bへの経路中で第9のティースT9、第10のティースT10、第3のティースT3および第4のティースT4にこの順でそれぞれ右巻き、左巻き、右巻き、左巻きで巻き付けられコイル35を構成する。また、第3のコイル線C3には、巻き始め部C3aから巻き終り部C3bへの経路中にステータコア34から引き出された中間引き出し部C3cが設けられる。また、中間引き出し部C3cは、第6のスロットS6に位置する。中間引き出し部C3cにおいて、引き出されたコイル線C3は、撚り合わされて第3の相用端子M3となる。
【0046】
図2および
図5に示すように、第1のコイル線C1の巻き終り部C1bと第2のコイル線C2の巻き始め部C2aとは、ともに第12のスロットS12に引き出される。第12のスロットS12において巻き終り部C1bと巻き始め部C2aとは、撚り合わされて接続され第1の中性点用端子N1を構成する。
同様に、第2のコイル線C2の巻き終り部C2bと第3のコイル線C3の巻き始め部C3aとは、ともに第8のスロットS8に引き出される。第8のスロットS8において巻き終り部C2bと巻き始め部C3aとは、撚り合わされて接続され第2の中性点用端子N2を構成する。
第3のコイル線C3の巻き終り部C3bと第1のコイル線C1の巻き始め部C1aとは、ともに第4のスロットS4に引き出される。第4のスロットS4において巻き終り部C3bと巻き始め部C1aとは、撚り合わされて接続され第3の中性点用端子N3を構成する。
【0047】
本実施形態によれば、互いに異なるコイル線Cの巻き始め部C1a、C2a、C3aと巻き終り部C1b、C2b、C3bとが、同一のスロットに位置してそれぞれ中性点用端子N1〜N3を構成する。したがって、ステータ部30から延びる接続端子(中性点用端子N1〜N3および相用端子M1〜M3)を少なく(6本に)する三相二並列のステータ部30を構成できる。接続端子(中性点用端子N1〜N3および相用端子M1〜M3)は、回路基板60に接続されるため、その本数を少なくすることで製造工程を簡素化できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、各コイル線C1〜C3の中間引き出し部C1c、C2c、C3cが、互いに120°回転したスロットに設けられている。したがって、各相用端子M1〜M3は、周方向に120°回転した位置に設けられる。また、本実施形態によれば、各コイル線C1〜C3の巻き始め部C1a、C2a、C3aと巻き終り部C1b、C2b、C3bとが、周方向に120°回転した位置に設けられる。したがって、各中性点用端子N1〜N3も、周方向に120°回転した位置に設けられる。すなわち、ステータ部30は、相用端子M1〜M3および中性点用端子N1〜N3が、それぞれ周方向に120°間隔で延び出て中心軸を中心とする回転対称な構造となる。相用端子M1〜M3は、何れの相をU相、V相、W相としても良いため、ステータ部30は、120°間隔のいずれの向きであっても、モータ1に組み付けることができる。このため、本実施形態のモータ1によれば、組立工程においてステータ部30の取付角度の確認作業に要する時間を短縮できる。
【0049】
また、本実施形態のモータ1によれば、三相直列の三相回路を構成するステータ部530(
図8参照)を採用するモータと部品を共通化できる。
図8は、三相直列のステータ部530を示す図である。また、
図9は、ステータ部530に巻かれる3本のコイル線C51、C52、C53が構成する三相回路506の模式図である。なお、
図8において、コイル535同士の間に引き回されるコイル線C51〜53の渡り線は、省略されている。
【0050】
図8に示すように、三相直列のステータ部530は、12個のティースT1〜T12を有するステータコア534と、ステータコア534にコイル線C51〜C53を巻き付けて構成されたコイル535と、を有する。ステータ部530は、各コイル線C51〜C53の一方の端部(例えば巻き出し部)同士を撚り合わせた中性点NPを有している。また、ステータ部530は、各コイル線C51〜C53の他方の端部(例えば巻き終り部)としての相用端子M51〜M53を有する。相用端子M51〜M53は、互いに120°回転した位置に設けられている。
【0051】
本実施形態のステータ部30の相用端子M1〜M3は、
図8に示す三相直列の三相回路を構成するステータ部530と同様の位置(互いに120°回転した位置)に設けられている。したがって、本実施形態のモータ1は、ステータ部30に代えて三相直列のステータ部530を取り付けても、ステータ部30の相用端子M1〜M3と同じ位置に相用端子M51〜M53を配置でき、ステータ部30、530から回路基板60への接続構造を共通とすることができる。すなわち、特性の異なる複数種類のモータのステータ部以外の部品を共通化してコスト削減を図ることができる。なお、ステータ部30に代えてステータ部530を用いる場合、中性点NPは、各コイル線C51〜C53の端部同士が互いに短絡されているため、回路基板60に接続する必要は無い。
【0052】
また、本実施形態のモータ1によれば、
図5に示すように、第1のコイル線C1、第2のコイル線C2、第3のコイル線C3は、周方向に120°ずらしたスロットに巻き始め部を配置した共通の巻線構成を有する。これにより、コイル線C1〜C3の巻線工程に要する時間を短縮できる。
本実施形態において、巻線工程は、巻線機80により行う。
図6は、巻線機80の一部および巻線機80によりコイル線C1〜C3が巻き付けられるステータコア34を示す斜視図である。
巻線機80は、3つのノズル81とステータコア保持装置(図示略)とを有する。3つのノズル81は、先端部81aからコイル線C1〜C3のうち何れかをそれぞれ繰り出す。また、3つのノズル81の先端部81aは、それぞれ対向するティースT(T1〜T12)のティース基部31aの外周面の周囲を移動可能である。これにより、各ノズル81は、は対向するティースTのティース基部31aにコイル線C(C1〜C3)を巻き付けることができる。ステータコア保持装置は、例えばステータコア34の内周面を保持する。また、ステータコア保持装置は、ステータコア34を、中心軸Jを中心として第1の方向D1又は第2の方向D2に沿って回転させることができる。これにより、ステータコア保持装置は、ステータコア34の任意のティースTをノズル81に対向させることができる。巻線機80は、ステータコア保持装置による回転動作と、ノズル81による巻き付け動作とを同期して行うことで、複数のティースTに順にコイル線Cを巻き付けることができる。
【0053】
3つのコイル線C1〜C3は、共通の巻線構成を有するため、巻線機80は、ステータコア保持装置による回転動作を共通として、3つのノズル81でそれぞれステータコア34に同時にコイル線C1〜C3を巻き付けることができる。すなわち、本実施形態のモータ1の製造方法は、3本のコイル線C1〜C3をステータコア34に同時に巻き付ける巻線工程を含む。これにより、巻線工程に要する時間を短縮することが可能となる。
【0054】
[変形例1]
次に、上述したモータ1に採用可能な、変形例1のステータ部130について説明する。
図7は、ステータ部130の平面模式図である。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
ステータ部130は、上述した実施形態のステータ部30と比較して、第1のコイル線C1、第2のコイル線C2および第3のコイル線C3の代わりに各コイル線の端部同士が連続して繋がる一本のコイル線C10を用いている点が主に異なる。
図5に示すように、上述した実施形態において、3本のコイル線C1〜C3のうち1つのコイル線の巻き終り部C1b〜C3bは、他のコイル線の巻き始め部C1a〜C3aと同一のスロットに位置する。したがって、同一スロットに位置する巻き終り部C1b〜C3bと巻き始め部C1a〜C3aとが連続した1本のコイル線C10を用いて同等の三相回路6を構成できる。
【0056】
図7に示すように、コイル線C10の巻き始め部C10aは、第4のスロットS4に位置する。コイル線C10は、上述した実施形態の第1のコイル線C1と同様に、複数のコイル35と中間引き出し部としての第1の相用端子M1とを構成して、第12のスロットS12から引き出される。さらにコイル線C10は、第12のスロットで再度ステータコア34に戻され撚り合わされ第1の相用端子M1を構成する。コイル線C10は、以下同様に、上述した実施形態の第2のコイル線C2および第3のコイル線C3と同様の経路を経て、巻き終り部C10bとして第4のスロットS4から引き出される。コイル線C10の巻き始め部C10aと巻き終り部C10bとは、同一のスロットに位置するため、互いに撚り合わされて、第3の中性点用端子N3を構成する。
【0057】
本変形例のステータ部130によれば、1本のコイル線C10で、スター結線された二並列の三相回路を構成することができる。このため、上述の実施形態のステータ部30と比較して、第1の中性点用端子N1および第2の中性点用端子N2におけるコイル線の端部同士の接続工程を省略でき、製造工程を簡素化できる。
【0058】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0059】
例えば、上述した実施形態のモータ1は、ステータコア34のコアバック32に対してティースが径方向外側に延びるアウターロータ型モータであるが、インナーロータ型のモータであっても、同様の巻線方法を採用することができる。
また、上述した実施形態のステータ部30は12スロットであり、三相回路6は三相二直二並列である。しかしながら、このような形態に限ることはなく、例えば、ステータ部を6スロットとして、三相一直二並列としてもよく、ステータ部を24スロットとして三相四直二並列としてもよい。
また、上述した実施形態のステータ部30は、三相回路において同一の相のコイル同士が、互いに隣り合う。しかしながら、このような形態に限ることはなく、隣り合うコイル同士が互いに異なる相となるコイル配置としてもよい。