(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ、説明する。なお、機能・作用が共通する機能を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0015】
<転写ロール>
本実施形態に係る転写ロールは、支持体と、前記支持体の外周面上に配置された発泡弾性層であって、ロール軸方向の両端部における気泡に比べ、ロール軸方向の中央部における気泡が前記発泡弾性層の厚さ方向に潰れた形状を有する発泡弾性層と、前記発泡弾性層の外周面を被覆し、ポリイミド又はポリアミドイミドを含む表面樹脂層と、を有する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る転写ロールの一例を概略的に示している。
図2は、本実施形態に係る転写ロールの軸方向に沿った断面を概略的に示している。本実施形態に係る転写ロール111は、
図1に示すように、例えば、円筒状又は円柱状の支持体112(シャフト)と、支持体112の外周面上に設けられた発泡弾性層113と、発泡弾性層113の外周面上に設けられた表面樹脂層114と、を有するロール部材である。
図2に示すように、本実施形態に係る転写ロール111の発泡弾性層113に含まれる気泡は、ロール軸方向の両端部における気泡115Aに比べ、ロール軸方向の中央部における気泡115Bが発泡弾性層の厚さ方向に潰れた形状を有する。なお、「発泡弾性層の厚さ方向に潰れた形状」とは、発泡弾性層に含まれる気泡において、発泡弾性層の厚さ方向の長さをX、ロール軸方向の長さをYとしたときに、X<Yの関係にあることを意味し、X/Yの値が小さいほど発泡弾性層の厚さ方向により潰れた形状であることを意味する。
上記構成を有する本実施形態に係る転写ロール111を用いることで、転写ムラの発生が抑制される。その理由は以下のように推測される。
【0017】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる転写ロールは、転写ロールに対向して配置されているロールや像保持体等の対向部材からの荷重を受けるニップ時に支持部材(シャフト)が撓むことによりロール軸方向で荷重分布が発生し、それによりロール軸方向での転写ムラやクリーニング不良が生じる場合がある。
【0018】
例えば、転写ロールの外周面に付着したトナーが記録媒体に再転写することを抑制するため、転写ロールにはクリーニング性能が要求される。転写ロールのクリーニング性能を向上させる手段として、例えば、発泡弾性層を樹脂製の管状部材(樹脂チューブ)で被覆する手段がある。しかし、外径がロール軸方向で同じ形状(ストレート形状)の発泡弾性層に対して樹脂チューブを被覆すると、トナー画像を記録媒体に転写する時のニップ荷重が端部に集中してロール軸方向での分布が大きくなり、転写電流の均一性が低下することで転写ムラが発生すると考えられる。
【0019】
例えば、発泡弾性層の外周面をロール軸方向の両端部における外径よりも中央部における外径が長くなる形状(クラウン形状)に加工することでニップ荷重の均一性を向上させることできる。しかし、クラウン形状の発泡弾性層をクラウン形状の樹脂チューブで被覆することは困難である。
また、例えば二次転写ロールにおいてトナーの付着を防止するためにブレードを接触させてクリーニングを行う構成とする場合、クラウン形状の転写ロールを採用すると、軸方向全体にわたってクリーニングブレードと接触させることが困難でありクリーニング不良が生じ易い。
【0020】
一方、本実施形態に係る転写ロール111は、発泡弾性層113に含まれる気泡が、ロール軸方向の両端部に位置する気泡よりも中央部に位置する気泡の方が厚さ方向に潰れた形状を有するため、両端部では発泡弾性層が変形し易く、ニップ荷重が掛かりにくくなり、逆に中央部では変形しにくく、ニップ荷重が掛かり易くなる。そのため、本実施形態に係る転写ロールは、軸方向におけるニップ荷重の均一性が高い分布になる。そのため、本実施形態に係る転写ロール111は、軸方向における転写電流の均一性が高く、濃度ムラが抑制された良好な画像形成に寄与する。
さらに、表面樹脂層がポリイミド又はポリアミドイミドを含むことで、発泡弾性層による反発力によって変形し難く、発泡弾性層を厚さ方向に圧縮することができ、また、高いクリーニング性能及びひび割れ(クラック)耐性を有し、長時間使用しても安定的に良好な画質形成に寄与すると考えられる。
以下、本実施形態に係る転写ロールについてさらに詳細に説明する。
【0021】
(支持体)
支持体112は、ロール部材の電極及び支持部材として機能する部材である。
支持体112としては、例えば、鉄(快削鋼等)、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属の部材が挙げられる。
支持体112としては、例えば、外側の面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂やセラミック部材)、導電剤の分散された部材(例えば樹脂やセラミック部材)等も挙げられる。
支持体112は、中空状の部材(筒状部材)であってもよいし、非中空状の部材であってもよい。
【0022】
(発泡弾性層)
発泡弾性層113は、支持体112の外周面に配置され、ロール軸方向の両端部における気泡に比べ、ロール軸方向の中央部における気泡が前記発泡弾性層の厚さ方向に潰れた形状を有する。
本実施形態における発泡弾性層113の軸方向の中央部は、発泡弾性層113の軸方向の長さを100%とした場合に、両末端(端面)の中間地点を中心とした幅20%の部位を、発泡弾性層113の両端部は、発泡弾性層113の各末端(端面)からそれぞれ中央部に向けて幅10%の部位を意味する。
【0023】
発泡弾性層113に含まれる気泡の形状は、発泡弾性層113を厚さ方向(径方向)に切断した切断面における気泡に由来する空洞(気泡115を構成していた部分)の形状を観察して対比することができる。具体的には、転写ロールを軸方向に切断し、発泡弾性層に存在する100個の空洞について、それぞれマイクロスコープを用いて厚さ方向の長さXと軸方向の長さYを測定し、X/Yを求める。ロール軸方向の中央部又は端部においてそれぞれ100個の空洞についてX/Yを求め、各部位におけるX/Yの平均値を比較することで、ロール軸方向の両端部における気泡に比べ、ロール軸方向の中央部における気泡が発泡弾性層の厚さ方向に潰れた形状を有するか否か判断することができる。
【0024】
発泡弾性層113は、例えば、ゴム材料(弾性材料)と発泡剤、必要に応じて、導電剤と、その他の添加剤と、を含む材料によって形成される。
【0025】
ゴム材料(弾性材料)としては、例えば、少なくとも化学構造中に二重結合を有する、所謂、弾性材料が挙げられる。
具体的には、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらを混合したゴムが挙げられる。
これらのゴム材料の中でも、ポリウレタン、ECO、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、及びこれらを混合したゴムが好適に挙げられる。
【0026】
発泡剤としては、ベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
【0027】
これらの発泡剤の中でも、発泡制御のし易さを考慮すると、ベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボンアミドが望ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
発泡剤の形態としては、特に制限はなく、粒子状、液状、カプセル状等の中から目的に応じて選択される。
【0029】
導電剤は、ゴム材料の導電性が低い場合やゴム材料が導電性を有しない場合など、必要に応じて用いる。導電剤としては、電子導電剤とイオン導電剤とが挙げられる。
【0030】
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。
ここで、カーボンブラックとして具体的には、オリオンエンジニアドカーボンズ社製の「スペシャルブラック350」、「スペシャルブラック100」、「スペシャルブラック250」、「スペシャルブラック5」、「スペシャルブラック4」、「スペシャルブラック4A」、「スペシャルブラック550」、「スペシャルブラック6」、「カラーブラックFW200」、「カラーブラックFW2」、「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、「MOGUL−L」、「REGAL400R」等が挙げられる。
電子導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることがよく、望ましくは15質量部以上25質量部以下である。
【0031】
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
イオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオン導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることがよく、望ましくは0.5質量部以上3.0質量部以下である。
【0032】
その他の添加剤としては、例えば、発泡助剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)などの通常弾性層に添加され得る材料が挙げられる。
【0033】
発泡弾性層113の体積抵抗率は、画質の観点から、常用対数値で6(LogΩ・cm)以上8(LogΩ・cm)以下が望ましく、6.5(LogΩ・cm)以上7.5(LogΩ・cm)以下がより望ましい。発泡弾性層113の体積抵抗率は、例えば、配合する導電剤の種類および量で調整される。
【0034】
発泡弾性層113の厚さは、例えば、2mm以上20mm以下であり、望ましくは2mm以上15mm以下である。2mm未満の場合、肉厚が薄いことによるリークが生じる場合があり、15mmを超える場合、製造時の加硫・発泡工程で変形が大きくなり過ぎ、割れる場合がある。
【0035】
(表面樹脂層)
表面樹脂層114は、発泡弾性層113の外周面を被覆し、ポリイミド又はポリアミドイミドを含んで構成されている。
表面樹脂層として、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを用いた場合、トナーの付着が抑制され、高いクリーニング性能が得られるが、PFAチューブは柔らかく、発泡弾性層113の外周面に被覆した場合、発泡弾性層113の反発力によって変形し易く、発泡弾性層に含まれる気泡を厚さ方向に潰れた形状にすることが困難である。
一方、本実施形態における表面樹脂層114はポリイミド又はポリアミドイミドを含むことで、強度が高く、発泡弾性層113による反発力を受けても表面樹脂層114の伸びが抑制され、軸方向中央部において発泡弾性層113に含まれる気泡を厚さ方向に潰れた形状に保つことができる。
【0036】
表面樹脂層114に含まれる樹脂材料としては、強度、耐熱性、寸法安定性の観点から、ポリイミドが特に望ましい。
なお、表面樹脂層114は、ポリイミド又はポリアミドイミド以外の樹脂を含んでもよいが、表面樹脂層114に含まれる樹脂のうち、ポリイミド又はポリアミドイミドの含有量が最も多いことが好ましく、50質量%以上がポリイミド又はポリアミドイミドであることがより好ましい。
【0037】
表面樹脂層114の厚さは、例えば、0.02mm以上0.2mm以下の範囲であり、望ましくは0.02mm以上0.01mm以下の範囲である。表面樹脂層114の厚さが0.02mm以上であれば、内側の発泡弾性層による反発力を受けても破断等が生じ難く、また、金属ブレードによる表面のクリーニングの際にめくれなどが発生することが抑制される。表面樹脂層114の厚さは、渦電流式の膜厚計(フィッシャー社製MP30)を用いて測定される。
【0038】
表面樹脂層114は導電剤を含むことができる。
表面樹脂層114に含まれる導電剤としては、電子導電剤とイオン導電剤とが挙げられる。
【0039】
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。
ここで、カーボンブラックとして具体的には、オリオンエンジニアドカーボンズ社製の「スペシャルブラック350」、「スペシャルブラック100」、「スペシャルブラック250」、「スペシャルブラック5」、「スペシャルブラック4」、「スペシャルブラック4A」、「スペシャルブラック550」、「スペシャルブラック6」、「カラーブラックFW200」、「カラーブラックFW2」、「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、「MOGUL−L」、「REGAL400R」等が挙げられる。
電子導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
イオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
表面樹脂層114としては、例えば、ポリイミドを主成分(主成分とは、表面樹脂層中のポリイミドの含有量が50質量%を超えることを指す。)とし、導電剤としてカーボンブラックなどの導電性粒子を分散させた表面樹脂層が、機械的強度の強さや弾性率に優れることなどから、特に好適に用いられる。
【0042】
(転写ロールの製造方法)
次に、本実施形態に係る転写ロール111の製造方法を説明する。
【0043】
本実施形態に係る転写ロールの製造方法は特に限定されず、例えば、発泡弾性層の形成については、弾性材料、発泡剤、さらに必要に応じて導電剤等の添加剤を含むゴム組成物を押し出機に投じて、円筒状又は円柱状の芯金(支持体)の外周面に筒状のゴム組成物層を押し出し成形し、加熱により加硫及び発泡させて発泡弾性層を形成する方法が挙げられる。
一方、表面樹脂層については、例えば、ポリイミド又はポリアミドイミドを含む塗布液を筒状の芯体に塗布して形成する方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、らせん塗布法が挙げられる。
【0044】
そして、支持体の外周面に形成した発泡弾性層を表面樹脂層(樹脂チューブ)で被覆することにより転写ロールが得られる。このような方法によって転写ロールを製造する際、本実施形態では、発泡弾性層と表面樹脂層をそれぞれ成形し、表面樹脂層によって発泡弾性層を被覆して締め付けることで、発泡弾性層に含まれるロール軸方向の両端部における気泡に比べ、中央部における気泡が発泡弾性層の厚さ方向に潰れた形状となるように製造すればよい。なお、発泡弾性層を表面樹脂層によって被覆することで、表面樹脂層は発泡弾性層による反発力を受けるが、表面樹脂層はポリイミド又はポリアミドイミドを含むため、発泡弾性層による反発力を受けても伸びにくく、ロール軸方向の中央部における発泡弾性層内の気泡を厚さ方向に潰れた形状に保つことができる。
【0045】
発泡弾性層の外周形状としては、ロール軸方向において径が均等である形状(ストレート形状)、又は、ロール軸方向の中央部の径がロール軸方向の両端部の径よりも大きい形状(クラウン形状)が挙げられる。ロール軸方向におけるニップ荷重の均一性を高める観点から、発泡弾性層の外周形状はクラウン形状であることが好ましい。
なお、発泡弾性層の外周形状は、芯体の外周面に筒状に形成したゴム組成物層を加硫及び発泡させた後、サンドペーパー等によって研磨加工を施すことでストレート形状又はクラウン形状に成形することができる。
【0046】
一方、表面樹脂層の外周形状としては、ロール軸方向において外径が均等である形状(ストレート形状)又はロール軸方向の中央部の外径がロール軸方向の両端部の外径よりも小さい形状(フレア形状)が挙げられる。ロール軸方向におけるニップ荷重の均一性を高める観点から、発泡弾性層の外周形状はフレア形状であることが好ましい。
そして、発泡弾性層の形状と表面樹脂層の形状との組み合わせとしては、例えば以下の(A)乃至(C)の3パターンが挙げられる。
【0047】
(A)クラウン形状の発泡弾性層とストレート形状の表面樹脂層との組み合わせ
図3に示すように、支持体112の外周面上にクラウン形状の発泡弾性層113Aを形成する。支持体112の外周面上にクラウン形状の発泡弾性層113Aを作製する方法は特に限定されず、例えば、支持体112の外周面上にストレート形状の発泡弾性層を形成した後、サンドペーパー等によって外周面を研磨することで発泡弾性層をクラウン形状に成形することができる。
【0048】
次いで、クラウン形状の発泡弾性層113Aの外周面を、ポリイミド又はポリアミドイミドを含むストレート形状の表面樹脂層(樹脂チューブ)で被覆する。これにより、発泡弾性層113はロール軸方向の両端部よりも中央部において厚さ方向に強く加圧され、
図2に示すようにロール軸方向の両端部における気泡115Aに比べ、ロール軸方向の中央部における気泡115Bが発泡弾性層113の厚さ方向に潰れた形状となる。この場合、転写ロール111の外周形状は、
図2に示すようなストレート形状となるが、ニップ部では支持体112の両端部から対向部材に対して荷重が掛けられたときに発泡弾性層113の両端部での反発力は小さく、
図4に示すようなフレア形状となる。
【0049】
(B)クラウン形状の発泡弾性層とフレア形状の表面樹脂層との組み合わせ
図5は、
図3に示すようなクラウン形状の発泡弾性層113Aの外周面を、フレア形状の表面樹脂層214で被覆して転写ロール211を製造した場合のロール軸方向における断面を概略的に示している。
図3に示すようなクラウン形状の発泡弾性層113Aの外周面を、ポリイミド又はポリアミドイミドを含むフレア形状の表面樹脂層(樹脂チューブ)214で被覆することで、発泡弾性層113はロール軸方向の両端部よりも中央部において厚さ方向により強く加圧される。これにより、ロール軸方向の両端部における気泡115Aに比べ、ロール軸方向の中央部における気泡115Cが発泡弾性層113の厚さ方向により強く加圧され、より潰れた形状となる。この場合、転写ロール211の外周形状はフレア形状となり、また、ニップ部では、発泡弾性層の両端部での反発力は小さく、
図2に示す転写ロール111と同様、
図4に示すようなフレア形状となる。
【0050】
なお、ポリイミド又はポリアミドイミドを含むフレア形状の表面樹脂層(樹脂チューブ)を作製する方法は特に限定されない。例えば、焼成の際に収縮率が異なる2種類のポリイミド前駆体溶液を用意し、まず、焼成時の収縮率が小さい第1のポリイミド前駆体溶液を円筒状の金型の外周面に塗布して乾燥及び焼成して第1のポリイミド層を形成した後、焼成時の収縮率が大きい第2のポリイミド前駆体溶液を第1のポリイミド層上に塗布して乾燥及び焼成して第2のポリイミド層を形成する。これにより、外周面側の収縮率が内周面側の収縮率に比べて大きく、幅方向(ロール軸方向)の両端部の外径(周長)が中央部の外径(周長)より大きいフレア形状のポリイミドチューブを作製することができる。
また、外周面が予めフレア形状である金型にポリイミド前駆体溶液又はポリアミドイミド溶液を塗布して塗膜を硬化させることでフレア形状のチューブを作製してもよい。
【0051】
(C)ストレート形状の発泡弾性層とフレア形状の表面樹脂層との組み合わせ
ストレート形状の発泡弾性層の外周面をフレア形状の表面樹脂層で被覆して転写ロールを製造してもよい。
図6に示すように、支持体の外周面上にストレート形状の発泡弾性層213Aを形成し、ストレート形状の発泡弾性層213Aの外周面を、
図7に示すようにポリイミド又はポリアミドイミドを含むフレア形状の表面樹脂層(樹脂チューブ)214で被覆することで、発泡弾性層213はロール軸方向の両端部よりも中央部において厚さ方向に強く加圧される。このように製造された転写ロール311は、ロール軸方向の両端部における気泡115Aに比べ、ロール軸方向の中央部における気泡115Dが発泡弾性層213の厚さ方向に潰れた形状となる。この場合、転写ロール311の外周形状はフレア形状となるが、ロール軸方向の中央部における気泡115Dは、
図5に示すフレア形状の転写ロール211の中央部における気泡115Cほどは厚さ方向に潰されていない。そのため、ニップ部では、
図8に示すように中央部においてより加圧されたフレア形状となる。
【0052】
本実施形態に係る転写ロールを上記(A)〜(C)のいずれのパターンで製造するにせよ、支持体112の軸方向に発泡密度の分布を有する発泡弾性層を予め形成する必要はなく、軸方向に気泡が均等に分布した発泡弾性層113A,213Aを形成した上で本実施形態に係る転写ロールを比較的簡便に製造することができる。
なお、本実施形態に係る転写ロールを上記(A)〜(C)のいずれのパターンで製造した場合、ニップ部における形状は
図4又は
図8に示すようなフレア形状となり、ロール軸方向において均一性が高いニップ荷重が得られる。ニップ荷重の均一性をより高める観点から、ニップ部で
図8に示すフレア形状が得られるように、(A)クラウン形状の発泡弾性層とストレート形状の表面樹脂層との組み合わせ(
図2)、又は、(B)クラウン形状の発泡弾性層とフレア形状の表面樹脂層との組み合わせ(
図5)が好ましい。
【0053】
一方、転写ロールは、ロール軸方向の中央部における外径(周長)よりも両端部における外径(周長)を大きくすることで、中央部よりも両端部における周速が速くなり、転写時において紙等の記録媒体のシワの発生を抑制することができる。そのため、転写時における記録媒体のシワの発生を抑制する観点から、転写ロールの外周形状はフレア形状、すなわち、(B)クラウン形状の発泡弾性層とフレア形状の表面樹脂層との組み合わせ(
図5)、又は、(C)ストレート形状の発泡弾性層とフレア形状の表面樹脂層との組み合わせ(
図7)が好ましい。
【0054】
なお、本実施形態に係る転写ロール111は上記構成に限られず、例えば、
図1に示す構成の転写ロール111において、支持体112と発泡弾性層113との間、又は、発泡弾性層113と表面樹脂層114との間に接着層等の中間層を有する構成であってもよい。また、発泡弾性層113と表面樹脂層114との間に抵抗調整層又は移行防止層を有する構成であってもよい。
【0055】
<画像形成装置、プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、転写ロールを備える画像形成装置であり、当該転写ロールとして、前述した本実施形態に係る転写ロールを適用する。
具体的には、例えば、本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前述した本実施形態に係る転写ロールを有し、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備える。
【0056】
転写手段においては、例えば、転写ロールを単独で備える記録媒体への直接転写方式の構成、又は、像保持体の表面に形成されたトナー像が転写される中間転写体と像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に転写する1次転写ロールと中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体に転写する2次転写ロールとを備える中間転写方式の構成が挙げられる。
直接転写方式の構成では、像保持体に対向して配置された転写ロールとして本実施形態に係る転写ロールを備える。
また、中間転写方式の構成では、1次転写ロール及び2次転写ロールの少なくともいずれか一方の転写ロールとして本実施形態に係る転写ロールを備える。
【0057】
本実施形態に係る画像形成装置としては、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を直接、記録媒体に転写する画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次1次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像装置を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置のいずれのものであってもよい。
【0058】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、前述した本実施形態に係る転写ロールを有し、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段を備え、画像形成装置に着脱される構成を有する。また、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、像保持体、像保持体を帯電する帯電手段、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段、及び像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段から選ばれる少なくとも1種の手段を備えてもよい。
【0059】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。
図9は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0060】
図9に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに特定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0061】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が配置されている。中間転写ベルト20は、
図9における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に張力が付与されて巻回され、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるように、画像形成装置用の転写ユニットを構成している。
なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に特定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0062】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配置されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yを代表させて説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0063】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を特定の電位に帯電させる帯電ロール2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ロール5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを、クリーニングブレードにて除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
なお、1次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0064】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V以上−800V以下程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10
6Ωcm以下)の基材上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0065】
静電荷像は、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って特定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0066】
現像装置4Y内には、例えば、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き特定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が特定の1次転写位置へ搬送される。
【0067】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写部へ搬送されると、1次転写ロール5Yに特定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0068】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ロール5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0069】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ロール(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。なお、2次転写ロール26の外周面には、弾性材料で構成されたクリーンングブレード27が接触しており、中間転写ベルト20から記録媒体Pに転写されずに2次転写ロール26の外周面に付着したトナーが除去される。
【0070】
一方、記録媒体Pが供給機構を介して2次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接している隙間に特定のタイミングで給紙され、特定の2次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0071】
この後、記録媒体Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録媒体P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録媒体Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0072】
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録媒体Pに転写する構成となっているが、本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録媒体Pに転写される構造であってもよい。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下において「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0074】
[実施例1]
<クラウン形状の発泡弾性層+ストレート形状のポリイミドチューブ>
(発泡弾性層の作製)
イオン導電性ロールとして、φ12mmの金属シャフト上に、イソシアネートとポリオールとを重合させたウレタン層をロール状に成形し、加熱により加硫及び発泡させることでφ22mmの発泡ウレタン層を形成した。なお、発泡剤としては、ベンゼンスルホニルヒドラジドを用いた。その後、発泡ウレタン層の外周面に研磨加工を施すことにより、両端部の外径がφ20mmであり、中央部の外径が両端部の外径よりも100μm大きいクラウン形状を有する発泡弾性層(軸方向長さ:210mm)を作製した。
【0075】
(ポリイミドチューブの作製)
表面層形成用のポリイミド樹脂として、溶剤可溶型のポリイミド樹脂:東洋紡(株)製:バイロマックスHR16NN(固形分:18質量%、溶剤:メチル−2ピロリドン)、導電剤としてカーボンブラックを樹脂成分100質量部あたり25質量部添加し、分散機を用いて分散を行ない、塗液を得た。この塗液を外径φ20mmのアルミニウム製パイプの外面に塗布し、乾燥及び焼成して厚さ100μmのストレート形状を有するポリイミドチューブ(φ20mm)を作製した。
【0076】
上記のように作製したポリイミドチューブ内に、金属シャフト上に形成した発泡弾性層を挿入した。これにより、クラウン形状の発泡弾性層の外周面がストレート形状のポリイミドチューブ(表面樹脂層)によって被覆された2層構造の転写ロールを得た。
【0077】
[実施例2]
<クラウン形状の発泡弾性層+フレア形状のポリイミドチューブ>
(発泡弾性層の作製)
イオン導電性ロールとして、φ12mmの金属シャフト上に、イソシアネートとポリオールとを重合させたウレタン層をロール状に成形し、加熱により加硫及び発泡させることでφ22mmの発泡ウレタン層を形成した。その後、発泡ウレタン層の外周面に研磨加工を施すことにより、両端部の外径がφ20mmであり、中央部の外径が両端部の外径よりも100μm大きいクラウン形状を有する発泡弾性層(軸方向長さ:210mm)を作製した。
【0078】
(ポリイミドチューブの作製)
表面層形成用のポリイミド樹脂として、溶剤可溶型のポリイミド樹脂:東洋紡(株)製:バイロマックスHR16NN(固形分18質量%、溶剤:メチル−2ピロリドン)、導電剤としてカーボンブラックを樹脂成分100質量部あたり25質量部添加し、分散機を用いて分散を行ない、塗液1を得た。
塗液1と同様の成分を含む材料にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、固形分5質量%)を加えて分散した塗液2を得た。
【0079】
塗液1を外径φ20mmのアルミニウム製パイプの外面に塗布して乾燥及び焼成して厚さ50μmの層を形成した後、その上に塗液2を同様に塗布し、乾燥及び焼成して総厚100μmポリイミドチューブ(両端部の外径:φ20mm)を作製した。得られたポリイミドチューブは、ロール軸方向の中央部の外径がロール軸方向の両端部の外径よりも300μm小さい形状(フレア形状)であった。
【0080】
上記のように作製したポリイミドチューブ内に、金属シャフト上に形成した発泡弾性層を挿入した。これにより、クラウン形状の発泡弾性層の外周面がフレア形状のポリイミドチューブ(表面樹脂層)によって被覆された2層構造の転写ロールを得た。
【0081】
[実施例3]
<ストレート形状の発泡弾性層+フレア形状のポリイミドチューブ>
(発泡弾性層の作製)
イオン導電性ロールとして、φ12mmの金属シャフト上に、イソシアネートとポリオールとを重合させたウレタン層をロール状に成形し、加熱により加硫及び発泡させることでφ22mmの発泡ウレタン層を形成した。その後、発泡ウレタン層の外周面に研磨加工を施すことによりストレート形状を有するφ20mmの発泡弾性層(軸方向長さ:210mm)を作製した。
【0082】
(ポリイミドチューブの作製)
表面層形成用のポリイミド樹脂として、溶剤可溶型のポリイミド樹脂:東洋紡(株)製:バイロマックスHR16NN(固形分18質量%、溶剤:メチル−2ピロリドン)、導電剤としてカーボンブラックを樹脂成分100質量部あたり25質量部添加し、分散機を用いて分散を行ない、塗液1を得た。
塗液1と同様の成分を含む材料にPTFE(固形分5質量%)を加えて分散した塗液2を得た。
【0083】
塗液1を外径φ20mmのアルミニウム製パイプの外面に塗布して乾燥及び焼成して厚さ50μmの層を形成した後、その上に塗液2を同様に塗布し、乾燥及び焼成して総厚100μmポリイミドチューブ(両端部の外径:φ20mm)を作製した。得られたポリイミドチューブは、ロール軸方向の中央部の外径がロール軸方向の両端部の外径よりも300μm小さい形状(フレア形状)であった。
【0084】
上記のように作製したポリイミドチューブ内に、金属シャフト上に形成した発泡弾性層を挿入した。これにより、ストレート形状の発泡弾性層の外周面がフレア形状のポリイミドチューブ(表面樹脂層)によって被覆された2層構造の転写ロールを得た。
【0085】
[比較例1]
<ストレート形状の発泡弾性層+ストレート形状のポリイミドチューブ>
(発泡弾性層の作製)
イオン導電性ロールとして、φ12mmの金属シャフト上に、イソシアネートとポリオールとを重合させたウレタン層をロール状に成形し、加硫及び発泡させることでφ22mmの発泡ウレタン層を形成した。その後、発泡ウレタン層の外周面に研磨加工を施すことによりストレート形状を有するφ20mmの発泡弾性層を作製した。
【0086】
(ポリイミドチューブの作製)
表面層形成用のポリイミド樹脂として、溶剤可溶型のポリイミド樹脂:東洋紡(株)製:バイロマックスHR16NN(固形分18質量%、溶剤:メチル−2ピロリドン)、導電剤としてカーボンブラックを樹脂成分100質量部あたり25質量部添加し、分散機を用いて分散を行ない、塗液を得た。
この塗液を外径φ20mmのアルミニウム製パイプの外面に塗布し、乾燥及び焼成して厚さ100μmのストレート形状を有するポリイミドチューブ(φ20mm)を作製した。
【0087】
上記のように作製したポリイミドチューブ内に、金属シャフト上に形成した発泡弾性層を挿入した。これにより、ストレート形状の発泡弾性層の外周面がストレート形状のポリイミドチューブ(表面樹脂層)によって被覆された2層構造の転写ロールを得た。
【0088】
[参考例1]
イオン導電性ロールとして、φ12mmの金属シャフト上にイソシアネートとポリオールとを重合させたウレタン層をロール状に成形し、加硫及び発泡させることでφ22mmの発泡ウレタン層を形成した。その後、発泡ウレタン層の外周面に研磨加工を施すことにより、両端部の外径がφ20mmであり、中央部の外径が両端部の外径よりも100μm大きいクラウン形状を有する発泡弾性層を作製する。これを転写ロールとした。
【0089】
[評価]
各例で作製した転写ロールを、それぞれ2次転写ロールとして、富士ゼロックス社製の画像形成装置、DocuCentre−II C6500の改造機に搭載した。
この画像形成装置を用いて、常温下でそれぞれ初期と300万枚プリントを行った後の画質評価および用紙裏汚れ評価を実施した。
【0090】
<転写ムラ>
上記各例で製造した転写ロールを、それぞれ2次転写ロールとして富士ゼロックス社製の画像形成装置、DocuCentre−II C6500改造機に搭載した。
この画像形成装置をそれぞれ用い、記録媒体としてA4サイズの用紙を用い、K色の濃度30%の画質濃度でプリントを行い、ロール軸方向の濃度ムラを評価した。10枚目の画像(初期画像)と300万枚目の画像(経時画像)について、それぞれ目視による官能評価により濃度ムラを確認し、下記基準によって評価した。
A:ロール軸方向における濃度ムラが認められない。
B:濃度ムラが軽微に発生するが、目視ではほとんど確認できない。
C:濃度ムラが目視で確認できるレベルで発生。
【0091】
<紙しわ>
上記プリントした初期と経時で各10枚(初期:1枚目〜10枚目の用紙と、経時:2999990枚目〜3000000枚目にプリントした用紙について紙しわの発生を評価した。
A:紙しわの発生なし。
B:紙しわの発生あり。
【0092】
<クリーニング不良>
上記紙しわで評価した用紙について、用紙裏面側のトナーによる汚れ(用紙裏汚れ)を評価した。評価指標は以下の通りである。
A:用紙裏面側トナー汚れがほぼ発生しない。
B:用紙裏面側トナー汚れが軽微に発生するが、目視ではほとんど確認できない。
C:用紙裏面側トナー汚れが発生。
【0093】
<発泡弾性層内の気泡形状>
上記の各評価を行った後、画像形成装置から転写ロールを取り出し、発泡弾性層を軸方向に沿って切断し、発泡弾性層の軸方向の端部(各末端(端面)から中央部に向けて幅20mmの部位)及び中央部(両末端(端面)の中間地点を中心とした幅100mmの部位)における空洞(気泡箇所に相当)の形状についてマイクロスコープを用いて厚さ方向の長さXと軸方向の長さYを測定し、X/Yを求めた。各部位においてそれぞれ100個の空洞についてX/Yを求めて平均値を算出し、気泡形状を評価した。
実施例1乃至実施例3で製造した転写ロールの発泡弾性層に含まれる気泡の形状は、軸方向の両端部におけるX/Yよりも中央部におけるX/Yが小さく、中央部の方が厚さ方向に潰れた形状であった。
一方、比較例1で製造した転写ロールの発泡弾性層に含まれる気泡の形状は、軸方向の両端部におけるX/Yと中央部におけるX/Yとが同じであった。
【0094】
各例で作製した転写ロールの発泡弾性層及び表面樹脂層(ポリイミドチューブ)の主な構成と、評価結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、実施例では、比較例に比べ、軸方向における濃度ムラの発生が抑制された。なお、参考例1でも軸方向における濃度ムラの発生が抑制されたが、クラウン形状の発泡弾性層がポリイミドチューブによって被覆されてなく、ブレードによるクリーニングが不十分であるため、発泡弾性層の外周面に付着したトナーが用紙の裏面に再付着して用紙裏汚れが発生したと考えられる。