特許第6520555号(P6520555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520555
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/06 20060101AFI20190520BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20190520BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20190520BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20190520BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20190520BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20190520BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20190520BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   F02D29/06 D
   F02D41/02 330J
   F02D41/04 330L
   F02D29/06 QZHV
   B60K6/52
   B60K6/44
   B60K6/24
   B60K15/035 C
   F02M25/08 301K
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-161221(P2015-161221)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-40178(P2017-40178A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 琢矢
(72)【発明者】
【氏名】平野 重利
(72)【発明者】
【氏名】平尾 忠義
(72)【発明者】
【氏名】小熊 孝弘
【審査官】 丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−139751(JP,A)
【文献】 特開平08−308019(JP,A)
【文献】 特開2013−184643(JP,A)
【文献】 特開昭53−005317(JP,A)
【文献】 特開平09−184436(JP,A)
【文献】 特開2014−125083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 − 29/06
F02D 41/00 − 45/00
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、
前記内燃機関によって駆動される発電機と、
前記内燃機関を冷却する冷却水の温度が所定温度以上の場合に前記内燃機関の出力を制限する制限手段と、
燃料タンクの内圧が所定圧力以上の場合に前記燃料タンクの燃料蒸散ガスを前記内燃機関の運転中に前記内燃機関の吸気通路に放出する放出手段と、
前記放出手段による前記燃料蒸散ガスの放出する際の前記内燃機関の出力に対し前記制限手段による前記内燃機関の出力の制限を優先する優先手段と、
を備え、
前記内燃機関の運転は前記発電機で発電される発電量により制御され、
前記制限手段は前記内燃機関の出力を制限する際の第1の発電量を決定し、
前記放出手段は前記燃料タンク内の燃料蒸散ガスを吸気通路に放出する際の前記内燃機関運転出力となる第2の発電量を決定し、
前記優先手段は前記第1の発電量で前記内燃機関を制御している際に、前記第2の発電量での内燃機関の運転の要求があった場合に前記第1の発電量での内燃機関の運転を継続する
ことを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項2】
前記ハイブリッド自動車は前記発電機で発電した電力により前記ハイブリッド自動車の駆動輪を駆動可能な自動車であり、
前記ハイブリッド自動車は、前記駆動に必要な第3の発電量を算出する第1の算出手段を備え、
前記優先手段は前記第1の算出手段で算出された前記第3の発電量と前記第2の発電量とを比較し、発電量の大きな発電量で前記内燃機関の運転を行うこと
を特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項3】
前記ハイブリッド自動車は、
走行に必要な電力を蓄える駆動用バッテリーと、
前記ハイブリッド自動車の車室内の環境を調整する空調装置と、
前記駆動用バッテリーの充電に必要な第4の発電量を算出する第2の算出手段と、
前記空調装置に必要な第5の発電量を算出する第3の算出手段と、
を備え、
前記優先手段は前記第3から第5の発電量の和と前記第1の発電量とを比較して前記第1の発電量が小さい場合に前記第1の発電量を優先することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項4】
前記優先手段は前記第3から第5の発電量の和と前記第2の発電量とを比較して前記和が前記第2の発電量より大きいときは前記和の発電量を優先することを特徴とする請求項2または3に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項5】
前記第1の発電量は一定の発電量に決定され、
前記第2の発電量は前記第1の発電量よりも大きい一定の発電量に決定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド自動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクや吸気マニホールドから蒸発する炭化水素が光化学スモッグの一要因とされているため、燃料蒸散量が規制され、規制が順次強化されている。
例えば、特許文献1には、内燃機関の吸気通路と燃料タンクとを連通する連通路と、連通路内の燃料蒸散ガスを吸着するキャニスタと、連通路と吸気通路との連通を開閉する連通路開閉手段と、キャニスタを連通路へ開放又は封鎖するように開閉するタンク開封鎖手段と、燃料タンクの内圧を検出するタンク圧検出手段と、を備える燃料蒸散ガス排出抑止装置が開示されている。かかる燃料蒸散ガス排出抑止装置は、燃料タンクの内圧が所定圧力以上、且つ、連通路開閉手段を閉とした状態で、キャニスタ開封鎖手段を閉にしてキャニスタを封鎖するとともにタンク開封鎖手段を開にして燃料タンクを連通路へ開放した後、所定時間経過後に連通路開閉手段を開にして連通路と吸気通路とを連通させる。かかる燃料蒸散ガス排出抑止装置によれば、燃料タンク内の高圧の燃料蒸散ガスが連通路内に流入して燃料タンクと連通路の内圧を同一にしてからいわゆるパージを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−139751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関を有するハイブリッド自動車では、エンジンを冷却する冷却水が高温になると、オーバヒートを防止するために内燃機関を運転し、冷却水を循環させる必要がある。
これにより、特許文献1に開示された燃料蒸発抑止装置では、オーバヒートを防止するために内燃機関を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンクの内圧が所定圧力以上になると、キャニスタ開封鎖手段を閉にしてキャニスタを封止するとともにタンク開封鎖手段を開にして燃料タンクを連通路へ開放した後、所定時間経過後に連通路開閉手段を開にして連通路と吸気通路とを連通させる。この結果、特許文献1に開示された燃料蒸発抑止装置では、オーバヒートを防止するために内燃機関を運転し、冷却水を循環させた状態でもパージが実行される。したがって、パージが早期に終了するように内燃機関の負荷が高負荷に設定されていると、内燃機関がオーバヒートする可能性が高くなる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、オーバヒートを防止するために内燃機関を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンクの内圧が所定圧力以上になった場合でも、内燃機関がオーバヒートする可能性を低減することができるハイブリッド自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るハイブリッド自動車の制御装置は、内燃機関を有するハイブリッド自動車の制御装置であって、前記内燃機関を冷却する冷却水の温度が所定温度以上の場合に前記内燃機関の出力を制限する制限手段と、燃料タンクの内圧が所定圧力以上の場合に前記燃料タンクの燃料蒸散ガスを前記内燃機関の運転中に前記内燃機関の吸気通路に放出する放出手段と、前記放出手段による前記燃料蒸散ガスの放出する際の前記内燃機関の出力に対し前記制限手段による前記内燃機関の出力の制限を優先する優先手段と、を備える。
【0007】
上記(1)の構成によれば、放出手段による燃料蒸散ガスの放出する際の前記内燃機関の出力に対し制限手段による内燃機関の出力の制限を優先する優先手段を備えるので、冷却水の温度が所定温度以上で、且つ、燃料タンクの内圧が所定圧力以上の場合に、放出手段による燃料蒸散ガスの放出する際の前記内燃機関の出力に対し制限手段による内燃機関の出力の制限を優先する。これにより、内燃機関のオーバヒートを防止するために内燃機関を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンクの内圧が所定圧力以上になった場合でも、内燃機関がオーバヒートする可能性を低減することができる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記ハイブリッド自動車は前記内燃機関によって駆動される発電機を備え、前記内燃機関の運転は前記発電機で発電される発電量により制御され、前記制限手段は前記内燃機関の出力を制限する際の第1の発電量を決定し、前記放出手段は前記燃料タンク内の燃料蒸散ガスを吸気通路に放出する際の前記内燃機関を運転出力となる第2の発電量を決定し、前記優先手段は前記第1の発電量(制限時発電量)で前記内燃機関を制御している際に、前記第2の発電量(放出時発電量)での内燃機関の運転の要求があった場合に前記第1の発電量(制限時発電量)での内燃機関の運転を継続する。
上記(2)の構成によれば、第1の発電量(制限時発電量)で内燃機関を制御している際に、第2の発電量(放出時発電量)での内燃機関の運転要求があった場合でも、第1の発電量(制限時発電量)での内燃機関の運転を継続する。これにより、内燃機関の運転は、第2の発電量(放出時発電量)より少ない第1の発電量(制限時発電量)により制御される。この結果、内燃機関のオーバヒートを防止するために内燃機関を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンクの内圧が所定圧力以上になった場合でも、内燃機関がオーバヒートする可能性を低減することができる。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記ハイブリッド自動車は前記発電機で発電した電力により前記ハイブリッド自動車の駆動輪を駆動可能な自動車であり、前記ハイブリッド自動車は、前記駆動に必要な第3の発電量(駆動時発電量)を算出する第1の算出手段を備え、前記優先手段は前記第1の算出手段で算出された前記第3の発電量(駆動時発電量)と前記第2の発電量(放出時発電量)と比較し、発電量の大きな発電量で前記内燃機関の運転を行う。
上記(3)の構成によれば、燃料タンクの内圧が所定圧力以上の場合に、優先手段は、第1の算定手段で算定された第3の発電量(駆動時発電量)と第2の発電量(放出時発電量)とを比較し、発電量の大きな発電量で内燃機関の運転を行うので、内燃機関の吸気通路に放出された燃料蒸散ガスの燃焼が促進される。これにより、燃料タンクの内圧を早期に低下させることができる。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、前記ハイブリッド自動車は走行に必要な電力を蓄える駆動用バッテリーと、前記ハイブリッド自動車の車室内の環境を調整する空調装置と、前記電池の充電に必要な第4の発電量(充電時発電量)を算出する第2の算出手段と、前記空調装置に必要な第5の発電量(空調時発電量)を算出する第3の算出手段と、を備え、前記優先手段は前記第3から第5の発電量の和(駆動時発電量、充電時発電量、及び空調時発電量の和)と前記第1の発電量(制限時発電量)とを比較して前記第1の発電量(制限時発電量)が小さい場合に前記第1の発電量(制限時発電量)を優先する。
上記(4)の構成によれば、優先手段は、第3から第5の発電量の和(駆動時発電量、充電時発電量、及び空調時発電量の和)と第1の発電量(制限時発電量)とを比較して第1の発電量(制限時発電量)が小さい場合には第1の発電量(制限時発電量)を優先するので、冷却水の温度が所定温度以上の場合に第1の発電量(制限時発電量)で内燃機関が制御される。これにより、エンジン運転の熱量を抑えることで、冷却水の温度を早期に低下させることができる。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)または(4)の構成において、前記優先手段は前記第3から第5の発電量の和(駆動時発電量、充電時発電量、及び空調時発電量の和)と前記第2の発電量(放出時発電量)とを比較して前記和が前記第2の発電量(放出時発電量)より大きいときは前記和の発電量を優先する。
上記(5)の構成によれば、燃料タンクの内圧が所定圧力以上の場合に、優先手段は、第3から第5の発電量の和(駆動時発電量、充電時発電量、及び空調時発電量の和)と第2の発電量(放出時発電量)とを比較して前記和が第2の発電量(放出時発電量)より大きいときは前記和の発電量を優先するので、内燃機関の吸気通路に放出された燃料蒸散ガスの燃焼が促進され、燃料タンクの内圧を早期に低下させることができる。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)または(3)の構成において、前記第1の発電量(制限時発電量)は一定の発電量に決定され、前記第2の発電量(放出時発電量)は前記第1の発電量(制限時発電量)よりも大きい一定の発電量に決定される。
上記(6)の構成によれば、冷却水の温度が所定温度以上の場合に、優先手段は、第1の発電量(一定値)で内燃機関の運転を行い、冷却水の温度が所定温度未満で、且つ、燃料タンクの内圧が所定圧力以上の場合に、優先手段は、第2の発電量(一定値)で内燃機関の運転を行う。これにより、ハイブリッド自動車の制御装置の制御構成を簡単な構成にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、内燃機関のオーバヒートを防止するために内燃機関を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンクの内圧が所定圧力以上になった場合でも、内燃機関がオーバヒートする可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド自動車を示す概念図である。
図2図1に示したハイブリッド自動車のエンジン及び燃料タンク周りの構成を示す構成図である。
図3図2に示したECUの制御構成を示すブロック図である。
図4図3に示したECUの制御内容を示すフローチャートである。
図5図4に示したECUの制御内容を具体的に示す説明図である。
図6図5に示したECUの制御内容を時系列に示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0016】
まず、図1及び図2に基づいて、本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド自動車1の構成を説明する。尚、図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド自動車1を示す概念図である。また、図2は、図1に示したハイブリッド自動車1のエンジン及び燃料タンク周りの構成を示す構成図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド自動車1は、エンジン(内燃機関)21とモータ22を動力装置2とするものである。かかるハイブリッド自動車1は、エンジン21及びモータ22(フロントモータ22A及びリヤモータ22B)のほか、エンジン21で駆動されるジェネレータ(発電機)23と、ジェネレータ23又は商用電源から供給された電気を充電するための駆動用バッテリー24と、エンジン21又はモータ22で駆動される走行装置25(25A,25B)と、を備えている。
また、一実施形態に係るハイブリッド自動車1は、「EV走行」モード、「シリーズ走行」モード、又は「パラレル走行」モードのいずれか一つが任意に選択可能である。これにより、一実施形態に係るハイブリッド自動車1は、「EV走行」モード、「シリーズ走行」モード、又は「パラレル走行」モードの何れか一つが選択され、何れか一つのモードで走行することになる。
【0018】
「EV走行」モードは、図1(a)に示すように、駆動用バッテリー24からモータ22(22A,22B)に電気が供給され、走行装置25(25A,25B)が駆動されるモードであり、モータ22(22A,22B)は駆動されるがエンジン21は停止される。「シリーズ走行」モードは、図1(b)に示すように、エンジン21で駆動されたジェネレータ23から駆動用バッテリー24に電気が供給されるとともに、駆動用バッテリー24からモータ22(22A,22B)に電気が供給され、走行装置25(25A,25B)が駆動されるモードであり、エンジン21及びモータ22(22A,22B)が駆動される。「パラレル走行」モードは、図1(c)に示すように、エンジン21及びモータ22(22A、22B)で走行装置25(25A,25B)が駆動され、エンジン21で駆動されたジェネレータ23から駆動用バッテリー24に余剰電気が供給されるモードであり、「シリーズ走行」モードと同様、エンジン21及びモータ22(22A,22B)が駆動される。
【0019】
図2に示すように、一実施形態に係るハイブリッド自動車1は、車両に搭載される動力装置2と、燃料を貯留する燃料貯留部4と、燃料貯留部4で蒸発した燃料の蒸発ガス(以下、「燃料蒸散ガス」という)を処理する燃料蒸散ガス処理部5、車両の総合的な制御を行うための制御装置であって、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される電子コントロールユニット(以下、ECUという)6と、車両の燃料給油口蓋43の開閉を操作する燃料給油口蓋開閉スイッチ71及び燃料給油口蓋43の開閉を検出する給油口蓋センサ72と、で構成されている。
【0020】
動力装置2は、上述したエンジン21、モータ22、及びジェネレータ23を含んで構成されている。
エンジン21は、例えば、吸気通路噴射型(Multi
Point Injection:MPI)の4サイクル直列4気筒型ガソリンエンジンである。エンジン21には、エンジン21の燃焼室内に空気を取り込む吸気通路26が設けられている。そして、吸気通路26には、吸気通路26の内圧を検出する吸気圧センサ27が設けられている。また、吸気通路26の下流には、エンジン21の吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁28が設けられている。燃料噴射弁28には、燃料配管29が接続され、燃料が供給される。また、エンジン21には、エンジン21を冷却するための冷却水が循環するウォータジャケット(図示せず)が設けられている。そして、ウォータジャケットには、ウォータジャケット内の冷却水の水温を検出する温度センサ30が設けられている。
【0021】
燃料貯留部4は、燃料を貯留する燃料タンク41と、燃料タンク41への燃料注入口である燃料給油口42と、車両の車体に設けられる燃料給油口42の蓋である燃料給油口蓋43と、燃料を燃料タンク41から燃料配管29を介して燃料噴射弁28に供給する燃料ポンプ44と、燃料タンク41内の圧力を検出する圧力センサ(タンク圧検出手段)45と、内部に図示しないフロート弁を有し、フロート弁の作用により燃料タンク41から燃料蒸散ガス処理部5への燃料の流出を防止する燃料カットオフバルブ46及び給油時に燃料タンク41内の液面を制御するレベリングバルブ47とで構成されている。また、燃料タンク41内で発生した燃料蒸散ガスは、燃料カットオフバルブ46からレベリングバルブ47を経由して、燃料タンク41外に排出される。
【0022】
燃料蒸散ガス処理部5は、キャニスタ51と、ベーパソレノイドバルブ(キャニスタ開封鎖手段)52と、タンク封鎖弁(タンク開封鎖手段)53と、安全弁54と、エアフィルタ55と、パージソレノイドバルブ(連通路開閉手段)57と、ベーパ配管(連通路)58と、パージ配管(連通路)59とで構成されている。
キャニスタ51は、内部に活性炭を有している。また、キャニスタ51には、燃料タンク41内で発生した燃料蒸散ガス或いは活性炭に吸着した燃料蒸散ガスが流通する蒸散ガス流通孔51aが設けられている。また、キャニスタ51には、活性炭に吸着した燃料蒸散ガスを放出するときに外気を吸入する外気吸入孔51bが設けられている。また、外気吸入孔51bは、外部からのゴミの侵入を防ぐ一方を大気に開放されたエアフィルタ55の他方に連通するように接続されている。
【0023】
ベーパソレノイドバルブ52には、キャニスタ51の蒸散ガス流通孔51aに連通するように接続されるキャニスタ接続口52aが設けられている。また、ベーパソレノイドバルブ52には、一端が燃料タンク41のレベリングバルブ47と連通するように接続されるベーパ配管58の他端が連通するように接続されるベーパ配管接続口52bと、一端がエンジン21の吸気通路26に連通するように接続されるパージ配管59の他端が連通するように接続されるパージ配管接続口52cとが設けられている。そして、ベーパソレノイドバルブ52のベーパ配管接続口52bとパージ配管接続口52cとは、それぞれベーパ配管58とパージ配管59とに接続されている。また、ベーパソレノイドバルブ52は、無通電の状態で閉弁し、外部から駆動信号が供給され通電の状態となることにより開弁状態となる常時閉タイプの電磁弁である。そして、ベーパソレノイドバルブ52は、外部から駆動信号が供給され通電状態で開弁状態であるときには、キャニスタ接続口52aとベーパ配管接続口52bとパージ配管接続口52cとを連通するようにして、キャニスタ51への燃料蒸散ガスの流出入と、エアフィルタ55より吸入される大気のベーパ配管58及びパージ配管59への流入とを可能とする。また、ベーパソレノイドバルブ52は、無通電状態で閉弁状態であるときには、キャニスタ接続口52aが封鎖され、ベーパ配管接続口52bとパージ配管接続口52cのみを連通にして、キャニスタ51への燃料蒸散ガスの流出入とエアフィルタ55からベーパ配管58及びパージ配管59への大気の流入を不可とする。即ち、ベーパソレノイドバルブ52は、閉弁状態であれば、キャニスタ51を封鎖し、開弁状態ではキャニスタ51を開放する。
【0024】
タンク封鎖弁53は、ベーパ配管58に介装されている。また、タンク封鎖弁53は、無通電の状態で閉弁し、外部から駆動信号が供給され通電の状態となることにより開弁状態となる常時閉タイプの電磁弁である。そして、タンク封鎖弁53は、無通電状態で閉弁状態であるとベーパ配管58を封鎖し、外部から駆動信号が供給され通電状態で開弁状態であるとベーパ配管58を開放する。即ち、タンク封鎖弁53は、閉弁状態であれば燃料タンク41を密閉状態に封鎖し、燃料タンク41内で発生した燃料蒸散ガスの燃料タンク41外への流出を不可とし、開弁状態であればキャニスタ51への燃料蒸散ガスの流出を可能とする。
【0025】
安全弁54は、タンク封鎖弁53と並列にベーパ配管58に介装されている。そして、安全弁54は、燃料タンク41内の圧力が上昇すると開弁し、圧力をキャニスタ51へ逃がして燃料タンク41が破裂することを防止するものである。
パージソレノイドバルブ57は、エンジン21の吸気通路26とベーパソレノイドバルブ52との間のパージ配管59に介装されている。また、パージソレノイドバルブ57は、無通電の状態で閉弁し、外部から駆動信号が供給され通電の状態となることにより開弁状態となる常時閉タイプの電磁弁である。そして、パージソレノイドバルブ57は、無通電状態で閉弁状態であるとパージ配管59を封鎖し、外部から駆動信号が供給され通電状態で開弁状態であるとパージ配管59を開放する。即ち、パージソレノイドバルブ57は、閉弁状態であれば燃料蒸散ガス処理部5よりエンジン21への燃料蒸散ガスの流出を不可とし、開弁状態であればエンジン21へ燃料蒸散ガスの流出を可能とする。
【0026】
つぎに、図3に基づいて、ECU6の構成を説明する。尚、図3は、図2に示したECU6の制御構成を示すブロック図である。
ECU6は、上述したように、車両の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
ECU6の入力側には、上記吸気圧センサ27、温度センサ30、圧力センサ45、車両に備えられた燃料給油口蓋43の開閉を行う燃料給油口蓋開閉スイッチ71及び燃料給油口42の開閉を検出する給油口蓋センサ72が接続されており、これらのセンサ類からの検出情報が入力される。
【0027】
一方、ECU6の出力側には、上記燃料噴射弁28、燃料ポンプ44、ベーパソレノイドバルブ52、タンク封鎖弁53及びパージソレノイドバルブ57が接続されている。
ECU6は、各種センサ類からの検出情報に基づいて、ベーパソレノイドバルブ52、タンク封鎖弁53及びパージソレノイドバルブ57の開閉を制御し、燃料タンク41内と、タンク封鎖弁53とパージソレノイドバルブ57との間のベーパ配管58、パージ配管59の圧力の制御、燃料蒸散ガスのキャニスタ51への吸着及びキャニスタ51に吸着された燃料蒸散ガスのエンジン21の吸気通路26への流出等の燃料蒸散ガス流れを制御するものである。
【0028】
また、ECU6は、エンジン21を冷却する冷却水の温度が所定温度以上の場合にエンジン21の出力を制限する制限手段と、燃料タンク41の内圧が所定圧力以上の場合に燃料タンク41の燃料蒸散ガスをエンジン21の運転中にエンジン21の吸気通路26に放出する放出手段、放出手段による燃料蒸散ガスの放出に対し、制限手段によるエンジンの出力の制限を優先する優先手段と、を備えている。
具体的には、図3に示すように、制限運転フラグ手段61と、パージフラグ手段62と、制限発電量算定手段63と、シリーズ発電量算定手段64と、パージ発電量算定手段65と、制限運転時選定手段66と、パージ時選定手段67と、シリーズ走行時選定手段68と、を含んで構成されている。
【0029】
制限運転フラグ手段(制限手段)61は、温度センサ30で検出される冷却水の温度が所定温度(以下、この温度を「第1温度」という)以上の場合に制限運転フラグをオンにする一方、温度センサ30で検出される冷却水の温度が所定温度(以下、この温度を「第2温度」という)未満の場合に制限運転フラグをオフにするものである。したがって、制限運転フラグは通常時にオフであり、冷却水の温度が上昇して温度センサ30にて検出される温度が第1温度以上になると制限運転フラグ手段61が制限運転フラグをオンとなる一方、冷却水の温度が下降して温度センサ30にて検出される温度が第2温度未満になると制限運転フラグ手段61が制限運転フラグをオフにする。尚、第1温度は、エンジン21のオーバヒートを防止するための指標となる温度であり、第2温度は、第1温度よりも低い温度に設定される。
【0030】
パージフラグ手段(放出手段)62は、圧力センサ45で検出される燃料タンク41の内圧が所定圧力(以下、この圧力を「第1圧力」という)以上の場合にパージフラグをオンにする一方、圧力センサ45で検出される燃料タンク41の内圧が所定圧力(以下、この圧力を「第2圧力」という)未満の場合にオフにするものである。したがって、高温パージフラグは通常時にオフであり、燃料タンク41の内圧が上昇して圧力センサ45にて検出される内圧が第1圧力以上になるとパージフラグ手段62がパージフラグをオンにする一方、パージが終了して圧力センサ45にて検出される内圧が第2圧力未満になるとパージフラグ手段62がパージフラグをオフにする。尚、第1圧力は、燃料タンク41の圧力上昇を防止するための指標となる圧力であり、第2圧力は、第1圧力よりも低い圧力に設定される。
【0031】
制限発電量算定手段(制限手段)63は、冷却水の温度上昇を制限する発電量(第1の発電量)を算定し、該発電量を制限時発電量とするものである。冷却水の温度上昇を制限する発電量(第1の発電量)は、その発電量を指標にエンジン21が制御されても冷却水の温度がそれ以上上昇しない発電量であり、例えば、冷却水の温度が第1温度以上に上昇しない発電量が制限時発電量とされる。
尚、制限時発電量は、任意に設定した固定値でもよいし、任意に設定した上限値以下の変動値でもよい。また、ハイブリッド自動車の運転状態等に応じて変動するものとしてもよい。
例えば、制限発電量算定手段63が、モータ22の駆動に供する電気量(第3の発電量)を算出する算出手段(第1の算出手段)と、駆動用バッテリー24の充電に供する電気量(第4の発電量)を算出する算出手段(第2の算出手段)と、車室内の環境を調整する空調装置に供する電気量(第5の発電量)を算出する算出手段(第3の算出手段)とを含み、第3から第5の発電量の和と第1の発電量とを比較して、第1の発電量が小さい場合に第1の発電量を優先し、制限時発電量としてもよい。
【0032】
シリーズ発電量算定手段64は、ハイブリッド自動車1のシリーズ走行に際して必要な電気量を算定し、該電気量をシリーズ発電量とするものである。シリーズ走行に際して必要な電気量は、例えば、モータ22の駆動に供する電気量、駆動用バッテリー24の充電に供する電気量、及び、空調装置その他補機の運転に供する電気量であり、ハイブリッド自動車1の走行中に駆動用バッテリー24を充電しない場合には、駆動用バッテリー24の充電に供する電気量は0(ゼロ)となる。
【0033】
パージ発電量算定手段(放出手段)65は、燃料蒸散ガスの吸気通路への放出(以下「パージ」という)に際して必要な電気量(第2の発電量)を算定し、該電気量を放出時発電量とするものである。パージに際して必要な電気量は、例えば、予め設定されたパージ時所定発電量、及び、シリーズ走行に際して必要な電気量のうち、大きい方を放出時発電量とする。
また、例えば、パージ発電量算定手段65が、モータ22の駆動に供する電気量(第3の発電量)を算出する算出手段(第1の算出手段)と、駆動用バッテリー24の充電に供する電気量(第4の発電量)を算出する算出手段(第2の算出手段)と、車室内の環境を調整する空調装置に供する電気量(第5の発電量)を算出する算出手段(第3の算出手段)とを含み、第3から第5の発電量の和と第2の発電量とを比較して、前記和が第2の発電量よりも大きい場合に前記和の発電量を優先し、放出時発電量としてもよい。
【0034】
制限運転時選定手段(優先手段)66は、制限運転フラグがオンの場合に制限発電量算定手段63で算定された制限時発電量をエンジン21の制御指標に選定するものである。したがって、制限運転フラグがオンで、且つ、パージフラグがオフの場合は勿論、制限運転フラグがオンで、且つ、パージフラグがオンの場合には、制限発電量算定手段63で算定された制限時発電量をパージ発電量算定手段65で算定された放出時発電量に優先し、該制限発電量をエンジン21の制御指標に選定する。
【0035】
パージ時選定手段(放出手段)67は、制限運転フラグがオフ、且つ、パージフラグがオンの場合にパージ発電量算定手段65で算定されたパージ発電量をエンジン21の制御指標に選定するものである。
【0036】
シリーズ走行時選定手段68は、制限運転フラグがオフ、且つ、パージフラグがオフの場合にシリーズ発電量算定手段64で算定されたシリーズ発電量をエンジン21の制御指標に選定するものである。
【0037】
次に、図4に基づいて、ハイブリッド自動車1のシリーズ走行モードにおけるECU6の制御内容について説明する。尚、図4は、図3に示したECU6の制御内容を示すフローチャートである。
【0038】
ハイブリッド自動車1は、温度センサ30にてエンジン21を冷却する冷却水の温度が検出され、圧力センサ45にて燃料タンク41の内圧が検出されている。
そして、ECU6では、温度センサ30にて検出される冷却水の温度が第1温度以上になると制限運転フラグ手段61が制限運転フラグ(制限運転要求)をオフからオンにする一方、温度センサ30にて検出される冷却水の温度が第2温度未満になると制限運転フラグ手段61が制限運転フラグをオンからオフにする。
また、ECU6では、圧力センサ45にて検出される燃料タンク41の内圧が第1圧力以上になるとパージフラグ手段62がパージフラグ(パージ要求)をオフからオンにする一方、圧力センサ45にて検出される燃料タンク41の内圧が第2圧力未満になるとパージフラグ手段62がパージフラグをオンからオフにする。
【0039】
ECU6は、ハイブリッド自動車1でシリーズ走行モードが選択されると、図4に示すように、制限発電量算定手段63が制限時発電量を算定し(ステップS1)、シリーズ発電量算定手段64がシリーズ発電量を算定する(ステップS2)。また、パージ発電量算定手段65が放出時発電量を算定する(ステップS3)。
【0040】
そして、ECU6では、シリーズ走行モードで、制限運転フラグがオフ(ステップS4:No)で、且つ、パージフラグがオフ(ステップS5:No)の場合に、シリーズ走行時選定手段68がシリーズ発電量算定手段64で算定されたシリーズ発電量をエンジン21の制御指標に選定する(ステップS6)。これにより、エンジン21はシリーズ発電量算定手段64で算定されたシリーズ発電量を制御指標に運転される。
【0041】
そして、ECU6では、温度センサ30で検出される冷却水の温度が第1温度以上になると、制限運転フラグ手段61が制限運転フラグをオフからオンにする(ステップS4:Yes)。すると、ECU6は、シリーズ走行モードからEV走行モードへの変更を禁止し、制限運転時選定手段66が制限発電量算定手段63で算定された制限時発電量をエンジン21の制御指標に選定する(ステップS7)。これにより、エンジン21は制限時発電量を制御指標に制御され、冷却水の温度上昇は制限される。
【0042】
一方、ECU6では、制限運転フラグがオンの場合に、圧力センサ45で検出される燃料タンク41の内圧が第1圧力以上になると、パージフラグ手段62がパージフラグをオフからオンにする。しかしながら、制限運転フラグがオン(ステップS4:Yes)で、且つ、パージフラグがオンの場合には、制限運転時選定手段66が制限発電量算定手段63で算定された制限時発電量をパージ発電量算定手段65で算定された放出時発電量よりも優先し、制限時発電量をエンジン21の制御指標に選定した状態を維持する。これにより、ハイブリッド自動車1は、燃料タンク41の内圧が第1圧力以上になってもエンジン21は制限時発電量を制御指標に制御され、冷却水の温度上昇は制限される。
【0043】
他方、ECU6では、温度センサ30で検出される冷却水の温度が第2温度未満になると、制限運転フラグ手段61が制限運転フラグをオンからオフにする(ステップS4:No)。これにより、ECU6では、制限運転フラグがオフ(ステップS4:No)、且つ、高温パージフラグがオン(ステップS5:Yes)となり、パージ時選定手段67がパージ発電量算定手段65で算定された放出時発電量をエンジン21の制御指標に選定する(ステップS8)。これにより、エンジン21はパージ発電量算定手段65で算定された放出時発電量をエンジン21の制御指標に選定する。したがって、エンジン21は放出時発電量を制御指標に制御される。本実施形態では、放出時発電量はシリーズ発電量算定手段で算定されたシリーズ発電量及び予め設定されたパージ時所定発電量のうち大きなものが採用される。
【0044】
尚、ECU6では、制限運転フラグがオフ、且つ、パージフラグがオフの場合に、圧力センサ45で検出される燃料タンクの圧力が第1圧力以上になると、パージフラグがオフからオンになる。これによっても、ECU6では、制限運転フラグがオフ(ステップS4:No)、且つ、パージフラグがオン(ステップS5:Yes)となり、パージ時選定手段67がパージ発電量算定手段65で算定された放出時発電量をエンジンの制御指標に選定する(ステップS8)。
【0045】
また、ECU6では、制限運転フラグがオフ、且つ、パージフラグがオンになると、パージを開始する。エンジン21の回転速度が所定回転速度となると、タンク封鎖弁53を開弁し、ベーパソレノイドバルブ52を閉弁して、同時に高圧開始タイマを作動させカウントの加算を開始する。次に、開始タイマのカウントが予め試験等で確認された燃料タンク41の内圧と、タンク封鎖弁53からパージソレノイドバルブ57までのベーパ配管58とパージ配管59との内圧とが同一の圧力となる期間に設定された第2の所定時間となると、パージソレノイドバルブ57を開弁する。そして、燃料タンク41の内圧が第2圧力以下となると、確認タイマを作動させ、第1の所定時間からカウントの減算を開始する。確認タイマが0(ゼロ)となると、タンク封鎖弁53を閉弁し、タンク封鎖弁53の閉弁からのパージ流量の積算量であるパージ終了時積算量の算出を開始する。次にパージ終了時積算量がタンク封鎖弁53からパージソレノイドバルブ57までのベーパ配管58内とパージ配管59内の内圧が大気圧(1気圧)となる第2の所定積算量以上となると、ベーパソレノイドバルブ52を開弁する。そして、パージ終了時積算量が第2の所定積算量に少なくともパージソレノイドバルブ57までのベーパ配管58内とパージ配管59内との容積を加算した数値に設定される第1の所定積算量以上となると、パージソレノイドバルブ57を閉弁し、パージを終了する。
【0046】
そして、パージが終了し、圧力センサ45で検出される燃料タンク41の内圧が第2圧力未満になると、パージフラグ手段62がパージフラグをオンからオフにする(ステップS5:No)。すると、ECU6では、シリーズ走行モードからEV走行モードへの変更を許容し、シリーズ走行時選定手段68がシリーズ発電量算定手段64で算定されたシリーズ発電量をエンジン21の制御指標に選定する(ステップS6)。これにより、エンジン21はシリーズ発電量算定手段64で算定されたシリーズ発電量を制御指標に運転される。
【0047】
次に、図5及び図6に基づいて、ハイブリッド自動車1のシリーズ走行モードにおけるECU6の制御内容をより具体的に説明する。尚、図5は、図4に示したECU6の制御内容をより具体的に示す説明図であり、図6は、図5に示したECU6の制御内容を時系列に示すタイムチャートである。
図5に示すように、シリーズ走行モードで、制限運転フラグがオフで、且つ、パージフラグがオフの場合に、シリーズ走行時選定手段68がシリーズ発電量算定手段64で選定されたシリーズ発電量を制御指標に選定する。これにより、シリーズ発電量が指標発電量になり、エンジン21はシリーズ発電量を制御指標に運転される。
【0048】
この状態から温度センサ30で検出される冷却水の温度が第1温度以上になると、制限運転フラグ手段61が制限運転フラグをオフからオンにする(図6(1))。すると、ハイブリッド自動車1は、シリーズ走行モードからEV走行モードへの変更が禁止され、制限運転時選定手段66が制限発電量算定手段63で算定された制限時発電量をエンジン21の制御指標に選定する。これにより、制限時発電量が指標発電量になり、図6に示すように、エンジン21は制限時発電量を制御指標に運転される。
【0049】
この状態から圧力センサ45で検出される燃料タンク41の内圧が第1圧力以上になると、パージフラグ手段62がパージフラグをオフからオンにする(図6(2))。しかしながら、制限運転フラグがオンで、且つ、パージフラグがオンの場合には、図5に示すように、制限運転時選定手段66が制限発電量算定手段63で算定された制限時発電量をパージ発電量算定手段で算定された放出時発電量よりも優先し、制限時発電量をエンジン21の制御指標に選定した状態を維持する。これにより、制限時発電量が指標発電量になり、図6に示すように、エンジン21は制限時発電量を制御指標に運転される。
【0050】
この状態から温度センサ30で検出される冷却水の温度が第2温度未満になると、制限運転フラグ手段61が制限運転フラグをオンからオフにする(図6(3))。これにより、制限運転フラグがオフで、且つ、パージフラグがオンとなり、ECU6では、パージ時選定手段67がパージ発電量算定手段65で算定された放出時発電量を制御指標に選定する。これにより、放出時発電量が指標発電量となり、エンジン21は、放出時発電量を制御指標に運転される。
【0051】
尚、パージ発電量算定手段65は、予め設定されたパージ時所定発電量、シリーズ走行に際して必要な電気量(シリーズ発電量)のうち、大きい方を放出時発電量とするので、図6(4)に示すように、ハイブリッド自動車1の走行に合わせて放出時発電量が増大する。
【0052】
この状態から圧力センサ45で検出される燃料タンク41の内圧が第2圧力以下になると、パージフラグ手段62がパージフラグをオンからオフにする(図6(5))。これにより、制限運転フラグがオフで、且つ、パージフラグがオフとなり、ECU6では、シリーズ走行時選定手段68がシリーズ発電量算定手段64で算定されたシリーズ発電量を制御指標に選定する。これにより、シリーズ発電量が指標発電量となり、エンジン21は、シリーズ発電量を制御指標に運転される。
【0053】
尚、図5に示すように、シリーズ発電量及び制限時発電量は、その他制限時発電量以下に制限され、シリーズ発電量、制限時発電量、及び放出時発電量は、モータ22の駆動に供される電気量、電池入力性能(例えば、残容量(SOC)等)、及び補機の駆動に供される電気量の和以下に制限される。尚、その他制限時発電量は、エンジン21の運転によりジェネレータ23が発電できる最大発電量等が設定される。
【0054】
上述した一実施形態に係るハイブリッド自動車1のECU6によれば、放出手段による燃料蒸散ガスの放出に対し制限手段によるエンジン21の出力の制限を優先する優先手段を備えるので、冷却水の温度が所定温度以上で、且つ、燃料タンク41の内圧が所定圧力以上の場合に、放出手段による燃料蒸散ガスの放出に対し制限手段によるエンジン21の出力の制限を優先する。これにより、エンジン21のオーバヒートを防止するためにエンジン21を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンク41の内圧が所定圧力以上となった場合でも、エンジン21がオーバヒートする可能性を低減することができる。
【0055】
具体的には、冷却水の温度が第1温度以上で、且つ、燃料タンク41の内圧が第1圧力以上の場合に、制限時発電量を放出時発電量よりも優先し、エンジン21の制御指標とするので、エンジン21のオーバヒートを防止するためにエンジン21を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンク41の内圧が第1圧力以上になった場合でも、エンジン21がオーバヒートする可能性を低減することができる。
【0056】
また、一実施形態に係るハイブリッド自動車1のECU6によれば、制限時発電量でエンジン21を制御している際に、放出時発電量でのエンジン21の運転要求があった場合でも、制限時発電量でのエンジン21の運転を継続する。これにより、エンジン21の運転は、放出時発電量より少ない制限時発電量により制御される。この結果、エンジン21のオーバヒートを防止するためにエンジン21を運転し、冷却水を循環させた状態で燃料タンク41の内圧が所定圧力以上になった場合でも、エンジン21がオーバヒートする可能性を低減することができる。
【0057】
また、一実施形態に係るハイブリッド自動車1のECU6によれば、燃料タンク41の内圧が所定圧力以上の場合に、優先手段は、第1の算定手段で算定された駆動時発電量と放出時発電量とを比較し、発電量の大きな発電量でエンジン21の運転を行うので、エンジン21の吸気通路26に放出された燃料蒸散ガスの燃焼が促進される。これにより、燃料タンク41の内圧を早期に低下させることができる。
【0058】
また、一実施形態に係るハイブリッド自動車1のECU6によれば、優先手段は、駆動時発電量、充電時発電量、及び空調時発電量の和と制限時発電量を比較して制限時発電量が小さい場合には制限時発電量を優先するので、冷却水の温度が所定温度以上の場合に制限時発電量でエンジン21が制御される。これにより、エンジン運転の熱量を抑えることで、冷却水の温度を早期に低下させることができる。
【0059】
また、一実施形態に係るハイブリッド自動車1のECU6によれば、燃料タンク41の内圧が所定圧力以上の場合に、優先手段は駆動時発電量、充電時発電量、及び空調時発電量の和と放出時発電量とを比較して前記和が放出時発電量より大きいときは前記和の発電量を優先するので、エンジン21の吸気通路26に放出された燃料蒸散ガスの燃焼が促進され、燃料タンク41の内圧を早期に低下させることができる。
【0060】
また、一実施形態に係るハイブリッド自動車1のECU6では、制限時発電量は一定の発電量に決定され、放出時発電量は制限時発電量よりも大きい一定の発電量に決定されてもよい。このようにすれば、制限時発電量は一定の発電量に決定され、放出時発電量は制限時発電量よりも大きい一定の発電量に決定されるので、冷却水の温度が所定温度以上の場合に、優先手段は、制限時発電量(一定値)でエンジン21の運転を行い、冷却水の温度が所定温度未満で、且つ、燃料タンク41の内圧が所定圧力以上の場合に、優先手段は、放出時発電量(一定値)でエンジン21の運転を行う。これにより、ハイブリッド自動車の制御装置の制御構成を簡単な構成にすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ハイブリッド自動車
2 動力装置
21 エンジン
22 モータ
22A フロントモータ
22B リヤモータ
23 ジェネレータ
24 駆動用バッテリー
25 走行装置
26 吸気通路
27 吸気圧センサ
28 燃料噴射弁
29 燃料配管
30 温度センサ
4 燃料貯留部
41 燃料タンク
42 燃料給油口
43 燃料給油口蓋
44 燃料ポンプ
45 圧力センサ
46 燃料カットオフバルブ
47 レベリングバルブ
5 燃料蒸散ガス処理部
51 キャニスタ
51a 蒸散ガス流通孔
51b 外気吸入孔
52 ベーパソレノイドバルブ
52a キャニスタ接続口
52b ベーパ配管接続口
52c パージ配管接続口
53 タンク封鎖弁
54 安全弁
55 エアフィルタ
57 パージソレノイドバルブ
58 ベーパ配管
59 パージ配管
6 電子コントロールユニット(ECU)
61 制限運転フラグ手段
62 パージフラグ手段
63 制限発電量算定手段
64 シリーズ発電量算定手段
65 パージ発電量算定手段
66 制限運転時選定手段
67 パージ時選定手段
68 シリーズ走行時選定手段
71 燃料給油口蓋開閉スイッチ
72 給油口蓋センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6