特許第6520557号(P6520557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6520557排ガス浄化装置及び方法、並びに作物生産用施設への二酸化炭素含有ガスと熱の供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520557
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置及び方法、並びに作物生産用施設への二酸化炭素含有ガスと熱の供給装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20190520BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20190520BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20190520BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20190520BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20190520BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   B01D53/86 245
   B01D53/72ZAB
   B01D53/96 500
   B01D53/50 100
   B01D53/83
   B01D53/81
   B01D53/86 222
   B01D53/86 280
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-161557(P2015-161557)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-39072(P2017-39072A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】高須 展夫
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−267249(JP,A)
【文献】 特開昭55−011020(JP,A)
【文献】 特開平08−229402(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3025591(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/00−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、
前記排ガスに含まれる触媒毒である有機シリコンを吸着する触媒毒除去材と、
前記触媒毒除去材の下流に配置され、前記排ガスに含まれる可燃性ガスを酸化する酸化触媒と、
前記触媒毒除去材と前記酸化触媒との間の排ガス流路に加熱空気を供給し、前記排ガス流路から前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に前記加熱空気を通過させる加熱空気供給装置と、
前記加熱空気供給装置によって供給され、前記触媒毒除去材を通過した前記加熱空気を、前記酸化触媒を経由させることなく排気する加熱空気排気流路と、を備える排ガス浄化装置。
【請求項2】
記触媒毒除去材が、アルミナ又はゼオライトを成分とし、
前記可燃性ガスが、一酸化炭素及びエチレンのうちの少なくとも一つであり、
前記酸化触媒が、貴金属を成分とすることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記触媒毒除去材には、温度230℃以下の前記排ガスが供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記触媒毒除去材には、温度300℃以上の前記加熱空気が供給されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、
前記排ガスに含まれる触媒毒である有機シリコンを触媒毒除去材により吸着し、
前記排ガスに含まれる可燃性ガスを酸化触媒により酸化し、
前記排ガスを前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に供給しないときに加熱空気供給装置が前記触媒毒除去材と前記酸化触媒との間の排ガス流路に加熱空気を供給し、前記排ガス流路から前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に前記加熱空気を通過させ、加熱空気排気流路が前記加熱空気供給装置によって供給され、前記触媒毒除去材を通過した前記加熱空気を、前記酸化触媒を経由させることなく排気し、前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に吸着された前記触媒毒を脱着する排ガス浄化方法。
【請求項6】
記触媒毒除去材が、アルミナ又はゼオライトを成分とし、
前記可燃性ガスが、一酸化炭素及びエチレンのうちの少なくとも一つであり、
前記酸化触媒が、貴金属を成分とすることを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化方法。
【請求項7】
前記触媒毒除去材には、温度230℃以下の前記排ガスが供給されることを特徴とする請求項5又は6に記載の排ガス浄化方法。
【請求項8】
前記触媒毒除去材には、温度300℃以上の前記加熱空気が供給されることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の排ガス浄化方法。
【請求項9】
作物生産用施設へ二酸化炭素含有ガスと熱を供給する供給装置であって、
燃料を燃焼する燃焼炉と、
前記燃焼炉から排出される燃焼排ガスとの熱交換により熱を得て、前記作物生産用施設へ熱を供給する熱回収装置と、
前記燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する硫黄酸化物除去装置と、
前記燃焼排ガスに含まれる煤塵を除去する集塵装置と、
前記燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物を除去し、可燃性ガスを分解する触媒反応装置と、
を備え、
前記触媒反応装置が、前記燃焼排ガスに含まれる触媒毒である有機シリコンを吸着する触媒毒除去材と、前記触媒毒除去材の下流に配置され、前記燃焼排ガスに含まれる前記可燃性ガスを酸化する酸化触媒と、前記燃焼排ガスに含まれる前記窒素酸化物を除去する脱硝触媒と、を有し、
前記供給装置はさらに、
前記触媒毒除去材と前記酸化触媒との間の排ガス流路に加熱空気を供給し、前記排ガス流路から前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に前記加熱空気を通過させる加熱空気供給装置と、
前記加熱空気供給装置によって供給され、前記触媒毒除去材を通過した前記加熱空気を、前記酸化触媒を経由させることなく排気する加熱空気排気流路と、を備える作物生産用施設への二酸化炭素含有ガスと熱の供給装置。
【請求項10】
前記燃料が、バイオマスであり、
記触媒毒除去材が、アルミナ又はゼオライトを成分とし、
前記可燃性ガスが、一酸化炭素及びエチレンのうちの少なくとも一つであり、
前記酸化触媒が、貴金属を成分とすることを特徴とする請求項9に記載の作物生産用施
設への二酸化炭素含有ガスと熱の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに含まれる可燃性ガスを酸化触媒により浄化する排ガスの浄化装置及び方法に関し、特に排ガスに含まれる触媒毒を除去して酸化触媒の劣化を抑制する排ガスの浄化装置及び方法に関する。また、本発明は、燃料を燃焼した燃焼排ガスを浄化し、浄化した排ガスを作物生産用施設に作物成長を促進する二酸化炭素含有ガスとして供給することができる作物生産用施設への二酸化炭素含有ガスと熱を供給する供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場や作物栽培ハウス等の作物生産用施設では、温度管理のため重油や灯油等の燃料を燃焼させて得た熱を温水や温風として供給している。また、作物の光合成を促進し、作物の生育促進、収率及び品質の向上のため、作物生産用施設内の二酸化炭素濃度を高める二酸化炭素施用技術があり、燃料を燃焼させた燃焼排ガス中の二酸化炭素を作物生産用施設内に供給し、光合成を促進することが試みられている。
【0003】
しかし、燃料を燃焼させて得られる燃焼排ガス中には、硫黄酸化物、窒素酸化物、煤塵だけでなく、作物の成長に有害なエチレン、作物生産用施設内の作業者に有害な一酸化炭素が含まれる。したがって、作物生産用施設に二酸化炭素を供給するためには、燃焼排ガス中のこれらの有害成分を除去、すなわち燃焼排ガスを浄化することが必要である。排ガスに含まれるエチレン、一酸化炭素等の可燃性ガスを分解するために、酸化触媒が用いられる。酸化触媒には多くの場合、白金等の貴金属が使用される。一方で、白金等の貴金属を使った酸化触媒は、可燃性ガスを酸化分解する性能は高いものの、排ガスに含まれる有機シリコン等の触媒毒により活性が低下することが知られている。また、有機シリコンに耐性のある十分な性能を持った酸化触媒は、いまだ開発されていない。このため、酸化触媒が活性を維持できる寿命は短く、頻繁に交換する必要がありコストが嵩んでいる。
【0004】
有機シリコン等の触媒毒に対処する方法がいくつか開示されている。特許文献1には、塗装乾燥炉排ガスや印刷工場内の空調排ガスなどの有機シリコン含有排ガスに対して、有機シリコンをあらかじめ活性炭により吸着除去したのち、白金触媒に接触させて燃焼脱臭する排ガスの燃焼脱臭方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、有機シリコン含有排ガスを250℃以上でゼオライトにより処理することで有機シリコンを除去する処理方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、排ガス中に含まれる有機シリコン化合物をゼオライト又は活性アルミナにより除去する技術が開示されており、その除去工程の温度は400〜700℃とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−267249号
【特許文献2】特開昭59−147623号
【特許文献3】特開2009−136841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料を燃焼した燃焼排ガス中の可燃性ガスを分解するために酸化触媒を用いる際に、酸化触媒の触媒毒となる有機シリコンを除去する必要があるが、特許文献1〜3のような有機シリコンを除去する対策技術は、以下の理由で燃焼排ガスの処理に適用することが出来ない。
【0009】
特許文献1には、有機シリコンをあらかじめ活性炭で吸着除去した排ガスを、白金触媒に接触させる排ガスの燃焼脱臭方法が開示されている。しかし、活性炭は、酸素を含む高温ガスに接触させると発火する危険があるので、燃焼排ガスの処理には安全上の観点で適用できない。
【0010】
特許文献2には、有機シリコン含有排ガスを250℃以上でゼオライトにより処理することで有機シリコンを除去する処理方法が開示されている。 しかし、燃焼排ガスを熱回収した後バグフィルタで除塵処理した排ガスは一般に200℃以下、高くとも230℃以下であるため、バグフィルタの下流にゼオライトや酸化触媒を配置しても排ガス温度が低いため十分な効果が得られない。また、除塵処理した排ガスをゼオライト処理に適した温度まで排ガスを昇温するためには、多大なエネルギーを要し、経済的でない。
【0011】
特許文献3には、排ガス中に含まれる有機シリコン化合物をゼオライト又は活性アルミナにより除去する技術が開示されており、その除去工程の温度は400〜700℃とされている。しかし、燃焼排ガスを熱回収した後バグフィルタで除塵処理した排ガスは一般に200℃以下、高くとも230℃以下であるため、バグフィルタ下流にゼオライト又は活性アルミナ材を配置しても排ガス温度が低いため十分な効果が得られない。また、除塵処理した排ガスをゼオライト又は活性アルミナ処理に適した温度まで排ガスを昇温するためには、多大なエネルギーを要し、経済的でない。
【0012】
そこで、本発明は、排ガスに含まれる可燃性ガスを酸化触媒により分解して浄化する際に、排ガス中の有機シリコン等の触媒毒によって酸化触媒の活性が低下するのを防止できる新たな排ガス浄化装置及び方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、燃料を燃焼した燃焼排ガスを浄化し、浄化した排ガスを作物生産用施設に作物成長を促進する二酸化炭素含有ガスとして供給することができる作物生産用施設への二酸化炭素含有ガスと熱を供給する供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、前記排ガスに含まれる触媒毒である有機シリコンを吸着する触媒毒除去材と、前記触媒毒除去材の下流に配置され、前記排ガスに含まれる可燃性ガスを酸化する酸化触媒と、前記触媒毒除去材と前記酸化触媒との間の排ガス流路に加熱空気を供給し、前記排ガス流路から前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に前記加熱空気を通過させる加熱空気供給装置と、前記加熱空気供給装置によって供給され、前記触媒毒除去材を通過した前記加熱空気を、前記酸化触媒を経由させることなく排気する加熱空気排気流路と、を備える排ガス浄化装置である。
【0015】
本発明の他の態様は、排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記排ガスに含まれる触媒毒である有機シリコンを触媒毒除去材により吸着し、前記排ガスに含まれる可燃性ガスを酸化触媒により酸化し、前記排ガスを前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に供給しないときに加熱空気供給装置が前記触媒毒除去材と前記酸化触媒との間の排ガス流路に加熱空気を供給し、前記排ガス流路から前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に前記加熱空気を通過させ、加熱空気排気流路が前記加熱空気供給装置によって供給され、前記触媒毒除去材を通過した前記加熱空気を、前記酸化触媒を経由させることなく排気し、前記触媒毒除去材及び前記酸化触媒に吸着された前記触媒毒を脱着する排ガス浄化方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触媒毒除去材が長期にわたって触媒毒除去性能を保つことができ、低コストで効果的な排ガス中の触媒毒除去対策が得られる。本発明は、燃焼排ガスの浄化に適しているが、浄化の対象は燃焼排ガスに限られない。例えば塗装工場、印刷工場等の様々な工場の製造工程から排出される排ガスの浄化にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の排ガス浄化装置を使用した、作物生産用施設への二酸化炭素含有ガスと熱の供給装置の模式図である。
図2】本実施形態の触媒反応装置の詳細図である。
図3】本実施形態の触媒反応装置の他の例の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態の排ガス浄化装置及び作物生産用施設への二酸化炭素含有ガスと熱の供給装置(以下、単に供給装置という)を詳細に説明する。ただし、本発明は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0019】
図1は、本実施形態の排ガス浄化装置を組み込んだ供給装置の模式図を示す。図1において、符号1は燃焼炉、符号2は熱回収装置、符号3は硫黄酸化物除去装置、符号4は集塵装置、符号5は触媒反応装置、符号6は加熱空気供給装置、符号7は冷却装置、符号8は浄化ガス利用施設であって植物工場や作物栽培ハウス等の作物生産用施設である。硫黄酸化物除去装置3、集塵装置4、触媒反応装置5、加熱空気供給装置6が排ガス浄化装置9を構成する。
【0020】
本実施形態の供給装置は、燃焼排ガスを作物の成長や作業者に有害とならないレベルまで高度に浄化して、燃焼排ガス中の二酸化炭素を作物生産用施設8へ供給すると共に、燃焼排ガスの熱を回収して作物生産用施設8へ供給する。作物生産用施設8に燃焼排ガスを浄化したガスを供給するのは、作物の光合成が進む昼間の時間帯であり、夜間は燃焼排ガスを浄化したガスの供給の必要が無い。したがって、夜間は排ガス浄化装置9を稼動させず、燃焼排ガスは集塵装置4から大気中へ排気され、熱のみを回収して利用する。
【0021】
燃焼炉1は、バイオマス等の燃料を燃焼する。燃焼排ガス中には、硫黄酸化物、窒素酸化物、煤塵だけでなく、作物の成長に有害なエチレン、作物生産用施設8内の作業者に有害な一酸化炭素が含まれる。エチレンは、蕾の脱落や葉や花の生育不良を招いたり、作物が熟すのを促進するため収穫時の作物が熟しすぎて出荷できないという問題を発生させる。一酸化炭素は、作物生産用施設8内で働く作業者に有害である。二次燃焼室を備える大規模な燃焼炉では、一酸化炭素を十分に燃焼して除去できるが、小規模の燃焼炉では、二次燃焼室を備えないことが多く、一酸化炭素を除去する必要がある。硫黄酸化物や窒素酸化物もまた、作物の成長に悪影響を与えることが知られている。煤塵は有害物を除去するための装置の機能を低下させたり、作業者の健康に悪影響を与える。排ガス浄化装置9は、燃焼排ガスを作物の成長や作業者に有害とならないレベルまで高度に浄化する。
【0022】
熱回収装置2は、熱交換器を備え、燃焼炉1から排出される燃焼排ガスとの熱交換により熱を得て、作物生産用施設8へ熱を供給する。熱は、例えば温水として温水配管を介して作物生産用施設8へ供給され、暖房や温度管理に用いられる。
【0023】
硫黄酸化物除去装置3は、燃焼排ガスにアルカリ剤粉末としての炭酸水素ナトリウムを吹き込み、硫黄酸化物と炭酸水素ナトリウムとを反応させる。硫黄酸化物と炭酸水素ナトリウムとの反応生成物は、集塵装置4で煤塵とともに集塵除去される。これにより、燃焼排ガス中の硫黄酸化物を除去することができる。
【0024】
集塵装置4は、バグフィルタを備え、燃焼排ガスに含まれる煤塵や上記反応生成物を除去する。燃焼排ガスはバグフィルタにて集塵処理され、燃焼排ガス中の煤塵が除去される。バグフィルタの耐熱温度は一般に200℃、高くとも230℃であり、その耐熱温度以下の温度で燃焼排ガスを集塵装置4に供給するように、熱回収装置2により燃焼排ガスから熱回収し減温する。
【0025】
燃焼排ガスは、触媒反応装置5に導かれる。このときの燃焼排ガスの温度は、集塵装置4の運転に適した温度である一般に200℃以下、高くとも230℃以下である。触媒反応装置5内には、酸化触媒13と脱硝触媒11と後述する触媒毒除去材12がそれぞれ層状で内蔵される(図2図3参照)。酸化触媒13と脱硝触媒11の順序はどちらが上流であっても下流であってもかまわない。酸化触媒13では、可燃性ガスである一酸化炭素とエチレンが酸化分解される。脱硝触媒11では、集塵装置4と触媒反応装置5とを接続する排ガス流路に設けた図示しない脱硝剤吹込み装置により吹き込んだ脱硝剤(アンモニア)との反応により窒素酸化物が分解される。酸化触媒13、脱硝触媒11は、煤塵により性能低下するので、触媒反応装置5を集塵装置4の下流に設置する必要がある。
【0026】
脱硝触媒11は限定されないが、TiOを担体とし、V、WO等を活性体とするものである。脱硝触媒11の触媒形状には、圧力損失の少ないハニカム状や板状の並行流型を用いる。酸化触媒13は限定されないが、担体に白金やロジウム等の貴金属を担持させた触媒を用いるものである。酸化触媒13の触媒形状には、圧力損失の少ないハニカム状や板状の並行流型を用いる。
【0027】
図2は、触媒反応装置5を詳細に示したものである。触媒反応装置5は、集塵装置4(図1参照)の下流側に接続される燃焼排ガス入口5aと、冷却装置7(図1参照)の上流側に接続される浄化ガス出口5bと、を備える。触媒反応装置5では、脱硝触媒11が上流に酸化触媒13が下流に配置される。さらに、酸化触媒13の上流には、有機シリコンを吸着する触媒毒除去材12が配置される。すなわち、触媒反応装置5には、上流から脱硝触媒11、触媒毒除去材12、酸化触媒13が配置され、それぞれの間に燃焼排ガスが流通する排ガス流路が設けられる。触媒毒除去材12は、アルミナあるいはゼオライトを成分とするものである。触媒毒除去材12の形状には、圧力損失の少ないハニカム状や板状の並行流型を用いる。
【0028】
加熱空気供給装置6は、触媒毒除去材12と酸化触媒13との間の触媒反応装置5内排ガス流路に加熱空気を供給する。触媒毒除去材12を通過した加熱空気は、酸化触媒13を経由することなく、触媒毒除去材12の上流から加熱空気排気流路5cを介して大気に排気される(排気A)。酸化触媒13を通過した加熱空気は、酸化触媒13の下流から加熱空気排気流路5dを介して大気に排気される(排気B)。加熱空気供給装置6は、大気から取り入れた空気を加熱する電気ヒーター式加熱装置と加熱空気を送気する送風機とで構成されるが、空気加熱を、燃料を燃焼するバーナー燃焼器や、熱回収装置2で回収した熱を利用して行ってもよい。
【0029】
昼間、作物生産用施設8に燃焼排ガスを浄化した浄化ガスを供給しているときには、燃焼排ガスが触媒反応装置5内を脱硝触媒11、触媒毒除去材12、酸化触媒13の順に通過し、浄化される。発明者の検討の結果、燃焼排ガス中に含まれる有機シリコンは、排ガスの温度が230℃以下であっても、触媒毒除去材12に吸着されて下流の酸化触媒13に到達しないことが分かった。また、更に検討を進めたところ、有機シリコンを吸着した触媒毒除去材12に加熱空気を送風し、300℃以上に加熱すると、有機シリコンの一部が触媒毒除去材12の中で分解し、一部は脱着して加熱空気に同伴されて除去されることが分かった。
【0030】
したがって、昼間、作物の光合成を促進する二酸化炭素を供給するため、作物生産用施設8に浄化ガスを供給しているときには、有機シリコンが触媒毒除去材12に吸着されるので、酸化触媒13は触媒毒に被毒されることなく可燃性ガスを分解する性能を発揮することができる。また、酸化触媒13の性能が劣化することなく、長期間使用することができる。一方、夜間には、作物の光合成を行わないので、作物生産用施設8に浄化ガスを供給しない。このため、燃焼排ガスは熱供給のための熱回収だけ行われ、熱回収装置2から排出された燃焼排ガスは触媒反応装置5に供給されず、大気中へ排気される。この間に加熱空気供給装置6を稼動し、加熱空気を触媒毒除去材12と酸化触媒13との間の排ガス流路から触媒毒除去材12に供給することで、触媒毒除去材12を加熱し、吸着した有機シリコンを分解、あるいは脱着除去することができる。触媒毒除去材12から脱着除去された有機シリコンは加熱空気に同伴され加熱空気排気経路5cから排気される(排気A)。これにより、触媒毒除去材12は長期にわたって有機シリコン除去性能を保つことができる。
【0031】
また、夜間供給される加熱空気を酸化触媒13にも接触させて加熱することができる。 これにより、昼間運転時に触媒毒除去材12を通過して酸化触媒13に微量に付着した有機シリコンを除去して酸化触媒13の性能低下を防止することができる。
【0032】
図3は、上流から触媒毒除去材12、酸化触媒13、脱硝触媒11の順に配置した触媒反応装置5´を示す。この場合、夜間運転時に加熱空気は、触媒毒除去材12と酸化触媒13との間の排ガス流路に供給される。触媒毒除去材12を通過した加熱空気は、酸化触媒13を経由することなく、触媒毒除去材12の上流から加熱空気排気流路5c´を介して大気に排気される(排気A)。酸化触媒13を通過した加熱空気は、下流の脱硝触媒11を通過して、脱硝触媒11の下流から加熱空気排気流路5d´を介して大気に排気される(排気B)。加熱空気を触媒毒除去材12に供給することで、触媒毒除去材12を加熱し、吸着した有機シリコンを分解、あるいは脱着除去することができる。触媒毒除去材12から脱着除去された有機シリコンは、加熱空気に同伴され加熱空気排気経路5c´から排気される(排気A)。これにより、触媒毒除去材12は長期にわたって有機シリコン除去性能を保つことができる。また、加熱空気が酸化触媒13及び脱硝触媒11を通過するので、昼間運転時に触媒毒除去材12を通過して酸化触媒13及び脱硝触媒11に微量に付着した有機シリコンを除去して酸化触媒13と脱硝触媒11の性能低下を防止することができる。
【0033】
図1に示すように、触媒反応装置5を通過した燃焼排ガスは、冷却装置7に導かれ、冷却される。燃焼排ガスにはさらに空気(外気)が混合されて、利用できる温度域(例えば30℃)まで冷却され、作物生産用施設8に供給される。
【0034】
上記の各構成要素の装置を備える供給装置により、燃焼排ガス中の作物又は作業者に有害な硫黄酸化物、窒素酸化物、一酸化炭素、エチレンを効率よく除去でき、作物の成長に悪影響を与えることが無い浄化ガスを作物生産用施設に供給して、作物の成長促進に有効となる二酸化炭素を植物に与えることができ、さらに、燃焼排ガスから熱回収して、作物生産用施設に熱を供給することができる。また、一酸化炭素、エチレンの可燃性ガスを除去する酸化触媒の性能低下を引き起こす触媒毒を除去するので、酸化触媒は触媒毒に被毒されることなく可燃性ガスを分解する性能を発揮することができ、酸化触媒の性能が低下することなく、長期間使用することができる。さらに、加熱空気を触媒毒除去材に供給することで、吸着した触媒毒を分解、あるいは脱着除去することができ、触媒毒除去材が長期にわたって触媒毒除去性能を保つことができる。
【実施例1】
【0035】
以降、実施例をまじえて本発明を詳細に説明する。
(実施例)
図1の装置において、燃料として木質チップを120kg/hrの供給量にて燃焼炉に供給し、昼夜連続運転を実施した。
【0036】
触媒反応装置には、図3に示した構成のものを使用した。排ガス浄化装置は昼間の11時間運転して浄化ガスを利用した。それ以外の夜間13時間は燃焼排ガスを大気中へ排気した。夜間運転中の5時間に300℃の加熱空気を供給した。昼間に触媒反応装置へ供給する燃焼排ガスの温度は190℃であった。触媒反応装置入口での燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度は90ppmであり、エチレン濃度は1ppmであった。
【0037】
ここで用いた酸化触媒、脱硝触媒及び触媒毒除去材は以下のとおりである。
酸化触媒 白金触媒、ハニカム状、0.07m
脱硝触媒 バナジウム触媒、ハニカム状、0.5m
触媒毒除去材 アルミナ、ハニカム状、0.1m
【0038】
運転開始1日目と90日間運転したときの酸化触媒による一酸化炭素およびエチレンの分解率を表1に示す。
【表1】
【0039】
90日目の浄化後の浄化ガスのその他の成分を以下に示す。
煤塵 0.4mg/Nm未満
硫黄酸化物 0.5ppm未満
窒素酸化物 4ppm
二酸化炭素 7%
【0040】
表1に示すように、作物の成長や作業者に有害とならないレベルまで排ガスを浄化できる高度な燃焼排ガス浄化を実現することができた。 また、90日目でも酸化触媒の性能低下は認められなかった。
(比較例1)
【0041】
比較例1として、夜間に触媒毒除去材への加熱空気の供給を行わないことを除き、実施例と同じ条件で30日間稼動させた。運転開始1日目と30日間運転したときの酸化触媒による一酸化炭素およびエチレンの分解率を表2に示す。
【表2】
【0042】
表2に示すように、触媒毒除去材への加熱空気供給を行わない場合には、酸化触媒の性能低下が認められた。
(比較例2)
【0043】
比較例2として、触媒毒除去材を設置しないことを除き、実施例と同じ条件で、夜間運転中の5時間に300℃の加熱空気を供給して30日間稼動させた。運転開始1日目と30日間運転したときの酸化触媒による一酸化炭素およびエチレンの分解率を表3に示す。
【表3】
【0044】
表3に示すように、触媒毒除去材を設置しない場合には、酸化触媒の性能低下が認められた。触媒毒が酸化触媒の性能を低下させた結果である。しかし、比較例1に比べ酸化触媒の性能低下の割合が小さいのは、加熱空気供給により酸化触媒に付着した触媒毒をある程度除去できたためと考えられる。
【符号の説明】
【0045】
1…燃焼炉
2…熱回収装置
3…硫黄酸化物除去装置
4…集塵装置
5、5´…触媒反応装置
5c、5c´…加熱空気排気流路
6…加熱空気供給装置
7…冷却装置
8…浄化ガス利用施設(作物生産用施設)
9…排ガス浄化装置
11…脱硝触媒
12…触媒毒除去材
13…酸化触媒
図1
図2
図3