特許第6520580号(P6520580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520580
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】電子機器及び密閉状態判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20190520BHJP
   G01M 3/40 20060101ALI20190520BHJP
   H05K 5/06 20060101ALN20190520BHJP
【FI】
   G01M3/26 H
   G01M3/26 N
   G01M3/40 Z
   !H05K5/06 E
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-173804(P2015-173804)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-49169(P2017-49169A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】間野 功
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−122582(JP,A)
【文献】 特開2012−212093(JP,A)
【文献】 特開2015−053606(JP,A)
【文献】 特開昭53−055187(JP,A)
【文献】 特開2012−225715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
H04M 1/00−1/02
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内の圧力を変動させる部材の動きを検知する検知部と、
前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間に基づいて、前記筐体内の密閉状態を判定する処理部と、を備え、
前記検知部は、前記部材に設けられた第1電極と、前記第1電極と並行板電極となるように設けられた第2電極との間の静電容量の時間変化に基づいて前記部材の動きを検知する、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記処理部は、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間の計測を開始するための閾値を設ける、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記処理部は、前記筐体に設けられた開口孔がある場合には、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間が所定時間以上であるときに前記筐体内が密閉状態にあると判定する、請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記処理部は、前記筐体に設けられた開口孔がない場合には、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間が所定時間以下であるときに前記筐体内が密閉状態にあると判定する、請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
コンピュータに、
筐体内の圧力を変動させる部材の動きを検知する検知ステップと、
前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間に基づいて、前記筐体内の密閉状態を判定する処理ステップと、を実行させ、
前記検知ステップは、前記部材に設けられた第1電極と、前記第1電極と並行板電極となるように設けられた第2電極との間の静電容量の時間変化に基づいて前記部材の動きを検知する、
を実行させるための密閉状態判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び密閉状態判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、防水機能を有する可搬可能な情報処理装置(以下、電子機器とも称す)が普及してきている。例えば、PC(Personal Computer)、携帯電話、スマートフォン、ノート
PC、タブレットPC、PDA(Personal Data Assistance)、デジタルカメラ、ゲーム機器等が可搬可能な情報処理装置として例示できる。情報処理装置の利用者(以下、ユーザとも称す)は、防水機能の保証する範囲内において雨天時や水滴等の飛沫を受けるレジャー等での使用が可能となる。
【0003】
防水機能を有する情報処理装置では、例えば、外部インターフェースが接続されるコネクタ等には、浸水等を防ぐためのコネクタキャップ等が備えられている。防水機能を有する情報処理装置では、コネクタキャップの閉めこみにより、外部インターフェースが接続されるコネクタの開口部からの筐体内部への浸水が防止できる。
【0004】
なお、本明細書で説明する技術に関連する技術が記載されている先行技術文献としては、以下の特許文献が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−151656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した防水機能を有する情報処理装置では、コネクタキャップの閉め忘れやコネクタキャップの緩みが生じる恐れがある。コネクタキャップの閉め忘れや緩み等が生じた場合には、筐体内を密閉空間に保つことが困難となり、筐体内が浸水し易くなる。情報処理装置では、例えば、外部インターフェースが接続されるコネクタ等から筐体内への浸水等による、水濡れ故障が発生する恐れがあった。
【0007】
例えば、気圧センサや湿度センサ、温度センサ等を筐体内に搭載し、各センサで検知された情報に基づいて蒸気圧等を計算することで密閉状態を判定し、コネクタキャップの閉め忘れや緩み等によるアラームを通知することが想定される。しかしながら、筐体内の環境状態を検知するセンサを複数に設ける場合には部品点数が増大するため、情報処理装置としてのコストが相対的に増大することとなる。また、密閉状態の判定には複数のセンサ出力を使用するためCPU等への処理負担が増大する。CPU等への処理負担の増大は、例えば、バッテリ等への電力消費を早めるため、情報処理装置の利用時間が短くなる恐れがある。
【0008】
1つの側面では、本発明は、簡易な仕組みで電子機器の密閉状態の判定を可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術は、次の電子機器の構成によって例示できる。すなわち、電子機器は、筐体内の圧力を変動させる部材の動きを検知する検知部と、部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間に基づいて、筐体内の密閉状態を判定する処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上記の電子機器によれば、簡易な仕組みで電子機器の密閉状態の判定を可能とする技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施形態1の電子機器の防水機能を説明する図である。
図1B】実施形態1の電子機器の防水機能を説明する図である。
図2】電子機器に設けられた並行板電極の静電容量値の時間変化を説明する図である。
図3】実施形態1の電子機器のハードウェア構成例を示す図である。
図4】密閉状態の判定処理を例示するフローチャートである。
図5A】実施形態2の電子機器の防水機能を説明する図である。
図5B】実施形態2の電子機器の防水機能を説明する図である。
図5C】実施形態2の電子機器のハードウェア構成例を示す図である。
図6A】実施形態3の電子機器の防水機能を説明する図である。
図6B】実施形態3の電子機器のハードウェア構成例を示す図である。
図7A】変形形態の電子機器の防水機能を説明する図である。
図7B】変形形態の電子機器に設けられた並行板電極の静電容量値の時間変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、一実施形態に係る電子機器について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、電子機器の実施形態の構成には限定されない。以下、図1から図7の図面に基づいて、電子機器を説明する。
【0013】
<実施形態1>
本実施形態の電子機器は、例えば、防水機能を有する可搬可能な情報処理装置である。電子機器には、例えば、PC(Personal Computer)、携帯電話機、スマートフォン、ノ
ートPC、タブレットPC、PDA(Personal Data Assistance)、デジタルカメラ、ゲーム機器等が含まれる。なお、電子機器は、防水機能を有する音楽プレーヤー、腕時計型やリストバンド型、グラス型等のユーザの身体に装着可能なウェアラブル式の電子機器であってもよい。
【0014】
本実施形態の電子機器は、外部インターフェースを使用するための接続用コネクタを含む。電子機器は、例えば、接続用コネクタを介して接続された充電用アダプタから供給される電源による充電機能を提供する。また、電子機器は、例えば、接続用コネクタを介して接続されたUSB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カードといった可搬型の記録媒体に対する記録機能を提供する。
【0015】
防水機能を有する電子機器では、例えば、上記の外部インターフェースを使用するための接続用コネクタの開口部に閉めこみ可能な、開閉式のコネクタキャップ等を備える場合がある。電子機器は、例えば、開閉式のコネクタキャップを接続用コネクタの開口部に閉め込むことで、筐体内部を密閉状態とし、該開口部からの筐体内への水等の浸入(浸水)を防止することが可能となる。密閉状態となった電子機器は、例えば、防水機能の保証する範囲内において、雨天時や水滴等の飛沫を受けるレジャー等での使用形態をユーザに提供できる。
【0016】
図1A、1Bに、本実施形態の、開閉式のコネクタキャップを備える電子機器についての防水機能の説明図を例示する。図1A、1Bに例示の電子機器10は、例えば、開閉式
のコネクタキャップ(以下、キャップとも称す)を備える携帯電話機の一例である。図1Aは、電子機器10の全体を俯瞰した斜視図であり、図1Bは、図1Aに例示の電子機器10のA1−A2部における断面図である。
【0017】
図1Aに例示の斜視図において、電子機器10は、例えば、情報出力のためのLCD(Liquid Crystal Display)15a等の表示デバイスを備える。また、電子機器10は、情報入力のための入力ボタン14a等の入力デバイスを備える。入力ボタン14a等が複数に配列された筐体ケース10aの側面には、外部インターフェースを使用するための接続用コネクタの開口部が設けられ、該開口部には筐体内への浸水を防止するための開閉式のコネクタキャップ10gが装着される。
【0018】
図1Bの断面図に例示のように、開閉式のコネクタキャップ10gの周囲には、止水用ガスケット10hが設けられる。止水用ガスケット10hは、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene)等のフッ素樹脂やシリコン樹脂、ゴム等のシール材である。図1B
に例示の電子機器10では、例えば、開閉式のコネクタキャップ10gを接続用コネクタの開口部に閉め込むことにより、コネクタキャップ10gの外周に沿って設けられた止水用ガスケット10hと筐体ケース10aとが密着し、筐体内は密閉状態となる。密閉状態の電子機器10の筐体内部には、密閉空間10zが形成される。
【0019】
電子機器10の筐体ケース10a内には、例えば、携帯電話機等の機能を提供するための各種デバイスが搭載された電子基板、バッテリといった内部実装物10cが含まれる。内部実装物10cと接続用コネクタとは、図示しない配線で接続される。止水用ガスケット10hと筐体ケース10aとが密着することで密閉された筐体ケース10aでは、例えば、接続用コネクタの開口部を介した浸水等による水漏れ故障を防止する防水機能が提供される。開閉式のコネクタキャップ10gが閉め込まれた電子機器10では、防水機能により、雨天時等における携帯電話機等の使用が可能となる。
【0020】
開閉式のコネクタキャップ10gが閉め込まれて密閉状態のときには、例えば、ユーザが、筐体ケース10aに配列された入力ボタン14a等の押下操作を行い難く感じるといった違和感が生じる恐れがある。
【0021】
このため、本実施形態の開閉式のコネクタキャップ10gを備える電子機器10は、例えば、図1Bに例示のように、気圧調整用の開口孔10bを有する。気圧調整用の開口孔10bは、例えば、図1Bに例示のように、筐体ケース10aの入力ボタン14a等が複数に配列された表面と対向する背面側に設けられる。但し、気圧調整用の開口孔10bは、開口孔10bを設けるスペースが確保可能であれば、背面側を除く筐体ケース10aの他の側面に設けられるとしてもよい。例えば、気圧調整用の開口孔10bは、開閉式のコネクタキャップ10gが装着される側面と対向する筐体ケース10aの他の側面側に設けるようにしてもよい。
【0022】
また、気圧調整用の開口孔10bが設けられた筐体ケース10aの内壁面には、該開口孔10bを覆うよう、防水シート10dが設けられる。防水シート10dは、例えば、PTFE等のフッ素樹脂やシリコン樹脂等のシール材である。防水シート10dは、筐体ケース10aの開口孔10bの周囲の内壁面に接するように設けられる。
【0023】
電子機器10は、開口孔10bと、該開口孔10bを覆うように筐体ケース10aの内壁面に設けられた防水シート10dにより、開閉式のコネクタキャップ10gが閉め込まれたときであっても、筐体内部の気圧を一定に調整することが可能となる。また、電子機器10は、筐体ケース10aに設けられた開口孔10bを介した水等の、筐体内への浸水を防止することが可能となる。
【0024】
例えば、開閉式のコネクタキャップ10gが閉め込まれ、電子機器10の筐体内の気圧が一時的に高くなるよう変化したときには、筐体内部の空気が開口孔10bを介して筐体外部へ流出することで、筐体内部の気圧調整が行われる。電子機器10の筐体内部の圧力は、筐体外部の圧力と平衡するよう調整される。筐体内部の空気が開口孔10bを介して筐体外部へ流出する際には、開口孔10bを覆う防水シート10dは、開口孔10b周囲の筐体ケース10aの内壁面に密着する。この結果、開閉式のコネクタキャップ10gを閉め込むことで、電子機器10は密閉される。
【0025】
また、電子機器10が密閉された状態で入力ボタン14a等が押下(筐体内部側への押し込み)された場合には、該入力ボタン14a等の押下により、筐体内部の密閉空間10zには圧力が加えられる。入力ボタン14a等の押下に伴う圧力の変化により、開口孔10bから筐体内部の空気が筐体外部に流出し、気圧調整が行われる。気圧調整が行われた電子機器10では、開閉式のコネクタキャップ10gが閉め込まれた状態であっても、入力ボタン14a等の押下操作に対する違和感が生じることは少ない。
【0026】
ここで、押下操作により、入力ボタン14a等が筐体内部側へ押し込められた状態では、電子機器10の開口孔10bを覆う防水シート10dは、筐体内部の空気の流出と共に開口孔10b周囲の内壁面に密着する。筐体内部は空気の流出と共に負圧状態となる。
【0027】
ここで、例えば、入力ボタン14a等から指等を離した場合には、負圧状態の筐体内の圧力は、開口孔10bを介して筐体外部の空気を筐体内部へ引き込んで流入させる。負圧状態の筐体内の圧力は、例えば、筐体内部側へ押し込められて減少した筐体内部の体積を増加させ、入力ボタン14a等の押し込み前の状態に戻るように作用する。
【0028】
電子機器10では、入力ボタン14a等の押し込みの際には、開口孔10bの周囲の内壁面に密着された防水シート10dの可撓性により吸盤効果が発生する。吸盤効果が発生した電子機器10の筐体内では、例えば、入力ボタン14a等が押し込まれた状態を維持する方向に力が作用する。
【0029】
このため、例えば、電子機器10の筐体内部への、開口孔10bを介して流入する空気の流入量は制限されることとなる。開口孔10bを介して筐体内部への空気の流入量が制限された状態では、筐体内部の単位時間当たりの体積増加量(増加ペース)は制限されることとなる。電子機器10の筐体内部は、押し込んだ入力ボタン14aが、押し込み前の状態(以下、初期位置とも称す)に戻るまでの間は、相対的に負圧の状態が継続することとなる。
【0030】
なお、開口孔10bを覆い、該開口孔10bの周囲の内壁面に密着した防水シート10dによる吸盤効果は、開口孔10bを介して流入する空気の流入量に依存する傾向がある。従って、例えば、開口孔10bの開口面積の大きさを調整することで、外部空気の流入量を制限し、押し込められた入力ボタン14a等の初期位置に戻るまでの期間を、操作性に対する違和感が生じないように調整することが可能となる。
【0031】
本実施形態の電子機器10は、例えば、防水シート10dによる吸盤効果を利用して調整された状態の、押し込められた入力ボタン14a等が初期位置に戻るまでの期間に基づいて、筐体内の相対的な密閉状態を判定する。
【0032】
本実施形態の電子機器10では、例えば、押し込められた入力ボタン14a等が初期位置に戻るまでの期間が、吸盤効果を利用し、操作性に対する違和感が生じないように調整される。例えば、開口孔10bの開口面積を調整することで、入力ボタン14a等に押し
込められて減少した筐体内部の体積の増加ペースが、開口孔10bからの空気の流入量よりも大きくなるようにすることができる。
【0033】
例えば、密閉状態での、開口孔10bの開口面積と押し込められた入力ボタン14a等の初期位置に戻るまでの期間との相対的な関係を実験的に取得する。そして、取得された相対的な関係に基づいて、押し込められた入力ボタン14a等が初期位置に戻るまでの期間を、吸盤効果を確保した上で、操作性に対する違和感が生じないように調整すればよい。電子機器10の筐体サイズ、外形形状、入力ボタン14a等の配置等に応じて、開口孔10bの開口面積を調整することができる。
【0034】
なお、吸盤効果は、防水シート10dが開口孔10bの周囲の内壁面に密着した状態での、開口孔10bを介して流入する空気の流入量に依存する。このため、例えば、防水シート10dの材質、厚さ等に基づいて、入力ボタン14a等に押し込められて減少した筐体内部の体積の増加ペースが、開口孔10bからの空気の流入量よりも大きくなるよう調整してもよい。開口孔10bの開口面積と防水シート10dの材質、厚さ等を組み合せ、空気の流入量を調整するとしてもよい。
【0035】
開閉式のコネクタキャップ10gが適切に閉め込まれた密閉状態では、押し込められた入力ボタン14a等が初期位置に戻るまでの期間は、調整された吸盤効果に依存することとなる。
【0036】
一方、コネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する場合には、例えば、接続用コネクタの開口部を経由して筐体内部に空気が流入する。吸盤効果を伴う開口孔10bを経由せずに外部空気が流入するため、電子機器10では、押し込められた入力ボタン14a等が初期位置に戻るまでの期間は、密閉状態と比較して相対的に短くなる。つまり、押下操作に応じて、筐体内部から筐体外部へ空気を流出させる、或いは、筐体外部から筐体内部へ空気を流入させるように動作する入力ボタン14a等の部材の時間変化を捉えることで、筐体内の密閉状態が判定できる。
【0037】
本実施形態の電子機器10は、例えば、ユーザの押下操作等により、筐体内部側に押し込められ、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する入力ボタン14a等の部材の動きを検知する手段を備える。
【0038】
電子機器10は、例えば、図1Bに例示のように、押下式の入力ボタン14aの筐体内部側に電極10eを設ける。同様にして、電子機器10は、筐体ケース10a内に収容される内部実装物10cに電極10fを設ける。電極10eと電極10fとは、筐体内部の空気層をギャップとした並行板電極となるように対向する位置に設けられる。
【0039】
なお、押下式の入力ボタン14aに設けられた電極10eは「第1電極」の一例である。また、内部実装物10cに設けられた電極10fは「第2電極」の一例である。
【0040】
ここで、電極10eおよび電極10fによる、空気層をギャップとした並行板電極の静電容量値は、以下の数式(1)により表すことができる。
【0041】
静電容量値(C)=ε*S/d … 数式(1)
なお、数式(1)において、“ε”は並行板電極のギャップとなる空気層の誘電率を表し、“S”は電極10eおよび電極10fの電極面積を表し、“d”は電極10eと電極10fとの間の電極間距離を表す。数式(1)に示すように、電極10eおよび電極10fによる並行板電極の静電容量値(C)は、電極間距離(d)に反比例して変化する。
【0042】
本実施形態の電子機器10は、電極10e、10fで構成される並行板電極を備えることで、ユーザの押下操作等により、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する入力ボタン14a等の部材の動きを静電容量値の変化として検出することができる。本実施形態の電子機器10は、電極10e、10fで構成される並行板電極を備えることで、入力ボタン14a等の初期位置から押下位置までの距離変化を静電容量値(C)の変化として捉えることが可能となる。本実施形態の電子機器10は、静電容量値(C)の時間変化を計測することで、押し込められた入力ボタン14a等の初期位置に戻るまでの期間を測定することが可能となる。
【0043】
図2に、電極10e、10fによる並行板電極の静電容量値(C)の時間変化についての説明図を例示する。図2は、電極10eが設けられた入力ボタン14aの押下操作に伴う、並行板電極の静電容量値(C)の変化を表す。図2の説明図において、縦軸は電極10e、10fによる並行板電極の静電容量を表し、横軸は入力ボタン14aへの押下操作に伴う経過時間を表す。
【0044】
また、図2に例示の説明図において、グラフG1は、開閉式のコネクタキャップ10gが閉め込まれて密閉状態となった場合の静電容量値の時間変化を表すグラフである。また、グラフG2は、開閉式のコネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する場合の静電容量値の時間変化を表すグラフである。
【0045】
なお、静電容量値Csは、押下操作前の初期位置における静電容量値を表し、静電容量値Cpは、押下操作によって入力ボタン14aの押し込み位置がピークとなる位置での静電容量値を表す。なお、以下の説明では、入力ボタン14aの押し込み位置がピークとなる位置において、入力ボタン14aに接触させた操作指等が離れるものと想定する。
【0046】
グラフG1に示すように、密閉状態の電子機器10では、電極10e、10fによる並行板電極の静電容量は、入力ボタン14aに対する押下操作の開始(開始時間ts)から押し込み位置がピーク位置になるまで増加する。並行板電極の静電容量値は、押下操作開始時の静電容量値Csから押し込み位置がピーク時の静電容量値Cpの間で増加するように変化する。
【0047】
同様にして、入力ボタン14aの押し込み位置がピークとなる位置で操作指が離れたときから初期位置に戻るまでの並行板電極の静電容量は、静電容量値Cpから静電容量値Csの間で減少するように変化する。密閉状態の電子機器10では、並行板電極の静電容量は、防水シート10dによる吸盤効果を伴い、操作性に対する違和感が生じないように調整された期間で減少するよう変化する。
【0048】
一方、開閉式のコネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する電子機器10では、入力ボタン14aに対する押下操作の開始から押し込み位置がピーク位置になるまでの並行板電極の静電容量の変化は、密閉状態の場合と同様にして変化する。並行板電極の静電容量値は、押下操作開始時の静電容量値Csから押し込み位置がピーク時の静電容量値Cpの間で増加するように変化する。
【0049】
また、入力ボタン14aの押し込み位置がピークとなる位置で操作指が離れたときから初期位置に戻るまでの並行板電極の静電容量は、静電容量値Cpから静電容量値Csの間で減少するように変化する。
【0050】
しかしながら、コネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する場合では、接続用コネクタの開口部を経由して筐体内部に空気が流入する。このため、グラフG2の破線領域に示すように、静電容量値Cpから静電容量値Csの間で減少する静電容量の変化の
傾斜は、グラフG1の減少変化の傾斜と比較して相対的に急傾斜となる。
【0051】
例えば、入力ボタン14aの押下操作に伴う、静電容量値Csから静電容量値Cpまでの間で変化する静電容量範囲の中で、入力ボタン14aが押下されたと判断するための閾値を静電容量値C0に設定する。同様にして、押下操作により押し込められた入力ボタン14aが初期位置に復帰した(戻った)と判断するための閾値を静電容量値C1に設定する。各静電容量値の相対的な大小関係は、Cp>C0>C1>Csである。
【0052】
電極10e、10fによる並行板電極を備える電子機器10では、例えば、閾値となる静電容量値C0から静電容量値C1に至るまでの減少変化の経過時間を計測することで、計測された経過時間に基づいて筐体内の相対的な密閉状態の判定が可能となる。
【0053】
図2において、例えば、静電容量値Cpが検出された後の、閾値となる静電容量値C0が検出された時間を基準時間t0とする。コネクタキャップ10gが閉め込まれて密閉状態となった場合では、静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間はt1となる。一方、コネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する場合では、静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間はt2となる。各経過時間の相対的な大小関係は、t1>t2となる。
【0054】
電子機器10は、例えば、コネクタキャップ10gが閉め込まれて密閉状態となった場合の静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間t1を閾値として予め保持する。そして、電子機器10は、例えば、静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間tと、保持された閾値t1との大小関係に基づいて、筐体内部の密閉状態を判定することが可能となる。本実施形態の電子機器10では、簡易な仕組みで密閉状態を判定することが可能となる。電子機器10は、密閉状態の判定結果に基づいて、コネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等を警告することが可能となる。
【0055】
〔装置構成〕
図3に、本実施形態の電子機器10のハードウェア構成の一例を例示する。図3に例示の電子機器10は、接続バスB1によって相互に接続されたCPU(Central Processing
Unit)11、主記憶部12、補助記憶部13、入力部14、出力部15、通信部16を
有する。主記憶部12及び補助記憶部13は、電子機器10が読み取り可能な記録媒体である。
【0056】
図3に例示の、本実施形態の電子機器10は、電極10e、10f、静電容量検出部101を有する。電極10eと電極10fとは、図1B等で説明したように、並行板電極を構成する。電極10eは静電容量検出部101と接続し、電極10fは、例えば、図1Bに例示の内部実装物10cのGND端子に接続する。並行板電極には、入力ボタン14a等の押下操作による電極間距離の変化に対応した静電容量値の増減を検出するための電荷が蓄えられる。
【0057】
静電容量検出部101は、例えば、印加電圧(V)に対する電荷(Q)から、並行板電極の静電容量値を検出する。電子機器10のCPU11は、例えば、図2で説明したように、電極10e、10fによる並行板電極の静電容量値の時間軸上の変化に基づいて、電子機器10の筐体内部の密閉状態を判定する。
【0058】
電子機器10は、CPU11が補助記憶部13に記憶されたプログラムを主記憶部12の作業領域に実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行う。これにより、電子機器10は、所定の目的に合致した機能を提供することができる。
【0059】
CPU11は、電子機器10全体の制御を行う中央処理演算装置である。CPU11は、補助記憶部13に格納されたプログラムに従って処理を行う。主記憶部12は、CPU11がプログラムやデータをキャッシュしたり、作業領域を展開したりする記憶媒体である。主記憶部12は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。なお、CPU11は、マイコン、チップセット等であってもよい。
【0060】
補助記憶部13は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部13は、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部13には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部16を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、有線および無線ネットワーク上のPCやサーバ等の情報処理装置、外部記憶装置等が含まれる。
【0061】
補助記憶部13は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ソリッドス
テートドライブ装置、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)装置等であ
る。また、補助記憶部13としては、例えば、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置等が提示できる。記録媒体としては、例えば、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)を含むシリコンディスク、ハードディスク、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等がある。
【0062】
入力部14は、操作者等からの操作指示等を受け付ける。入力部14は、入力ボタン14a、タッチセンサ、ポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイスである。入力部14には、キーボード、ワイヤレスリモコン等が含まれるとしてもよい。ポインティングデバイスには、例えば、タッチセンサと出力部15のLCD(Liquid Crystal Display)15a等の表示デバイスとを組合せたタッチパネル、マウス、トラックボール、ジョイスティック等が含まれる。
【0063】
なお、図1Bで説明したように、入力ボタン14aには電極10eが設けられる。但し、電極10eが設けられる入力ボタン14aは、例えば、十字キーといった入力デバイスに限定されるとしてもよい。入力ボタン14aに設けられた電極10eと対向して設けられた電極10fとで構成される並行板電極に蓄えられた静電容量値に基づいて、入力ボタン14aの押下操作に伴う静電容量値の増減を検出可能であればよい。
【0064】
出力部15は、CPU11で処理されるデータや主記憶部13に記憶されたデータを出力する。出力部15は、LCD15a、PDP(Plasma Display Panel)、EL(Electroluminescence)パネル、有機ELパネル、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスである
【0065】
通信部16は、例えば、電子機器10に接続する有線および無線ネットワーク等とのインターフェースである。ネットワークには、例えば、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、LAN(Local Area Network)等が含まれる。
【0066】
電子機器10は、CPU11が補助記憶部13に記憶されているOS、各種プログラムや各種データを主記憶部12に読み出して実行することにより、対象プログラムの実行と共に、静電容量検出部101を提供する。但し、静電容量検出部101の一部がハードウェア回路によって動作するものであってもよい。また、電子機器10は、静電容量検出部101が参照し、或いは、管理するデータの格納先として、例えば、補助記憶部13を備える。
【0067】
〔処理フロー〕
以下、図4に例示のフローチャートを参照し、本実施形態の電子機器10の密閉状態の判定処理を説明する。図4は、電極10e、10fによる並行板電極の静電容量値の変化に基づいて、電子機器10の筐体内部の密閉状態を判定する処理のフローチャートの例示である。図4に例示の処理は、例えば、CPU11が主記憶部12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより実行される。
【0068】
図4に例示のフローチャートにおいて、密閉状態の判定処理の開始は、例えば、電極10eが設けられた入力ボタン14a等の押下操作のときが例示できる。入力ボタン14a等に設けられた電極10eは、例えば、図1Bに例示のように、内部実装物10cに設けられた電極10fと対向し、筐体内部の空気層をギャップとした並行板電極を構成する。電極10e、10fからなる並行板電極の静電容量値(C)は、電極間距離(d)に反比例して変化する。並行板電極の静電容量値(C)は、例えば、静電容量検出部101により検出される。
【0069】
電子機器10は、例えば、1msといった一定の周期間隔で、静電容量検出部101を介して検出された静電容量値(C)を取得する(S1)。電子機器10は、例えば、取得した静電容量値(C)と、該静電容量値(C)を取得した時間情報とを対応付けて主記憶部12の所定の領域に一時的に記憶する。なお、静電容量値(C)を取得した時間情報は、例えば、電子機器10が備えるタイマー等のカウント値であってもよい。電子機器10では、一定の周期間隔で取得された静電容量値(C)の時系列データが取得される。
【0070】
S2の処理では、電子機器10は、例えば、静電容量検出部101を介して取得された静電容量値(C)の時系列データに基づいて、入力ボタン14aの押下操作が実行されたことを判定する。電子機器10は、例えば、図2等で説明したように、取得された静電容量値(C)の時間変化が減少傾向にあり、かつ、取得された静電容量値(C)が、入力ボタン14aの押下操作の実行を判定するための閾値(C0)より相対的に小さいことを判定する。なお、入力ボタン14aの押下操作前の初期位置では、図2で説明したように、静電容量値(C)は、“C=Cs”である。
【0071】
電子機器10は、例えば、S1の処理で取得された静電容量値(C)と直前のサンプリング周期で取得された静電容量値(C´)との差分値(ΔC)を算出する。また、電子機器10は、例えば、S1の処理で取得した静電容量値(C)と、入力ボタン14aの押下操作を判定するための閾値Csとの比較を行う。そして、電子機器10は、算出した差分値(ΔC)が、“ΔC<0”を満たし、且つ、S1の処理で取得した静電容量値Cが、“C<C0”を満たすか否かを判定する。
【0072】
電子機器10は、例えば、“ΔC<0”、且つ、“C<C0”を満たさない場合には(S2,NO)、S1の処理に移行し、S1−S2の処理を繰り返す。電子機器10は、取得された静電容量値(C)の時間変化が減少傾向にあり、かつ、取得された静電容量値(C)が、入力ボタン14aの押下操作を判定するための閾値(C0)未満となるまで、S1−S2の処理を繰り返す。
【0073】
一方、電子機器10は、例えば、“ΔC<0”、且つ、“C<C0”を満たす場合には(S2,YES)、S3の処理に移行する。S3の処理では、電子機器10は、例えば、S1の処理で取得した静電容量値(C)の時間情報を“基準時間t0”として主記憶部12の所定の領域に一時的に記憶する。
【0074】
S4の処理では、電子機器10は、例えば、静電容量値(C)の取得処理を継続して実
行する。取得した静電容量値(C)は、時間情報と対応付けられて主記憶部12の所定の領域に一時的に記憶される。
【0075】
S5の処理では、電子機器10は、例えば、S4の処理で取得した静電容量値(C)が、押下操作により押し込められた入力ボタン14aが初期位置に復帰した(戻った)と判断するための閾値C1未満となることを判定する。閾値C1については図2で説明した。
【0076】
電子機器10は、例えば、S4の処理で取得した静電容量値(C)が、“C<C1”を満たさない場合には(S5,NO)、S4の処理に移行し、S4−S5の処理を繰り返す。電子機器10は、取得された静電容量値(C)が、入力ボタン14aの初期位置に復帰したと判断するための閾値C1未満となるまで、S4−S5の処理を繰り返す。
【0077】
一方、電子機器10は、例えば、S4の処理で取得した静電容量値(C)が、“C<C1”を満たす場合には(S5,YES)、S6の処理に移行する。S6の処理では、電子機器10は、例えば、S4の処理で取得した静電容量値(C)の時間情報を“到達時間t1”として主記憶部12の所定の領域に一時的に記憶する。
【0078】
S7の処理では、電子機器10は、例えば、S3の処理で記憶された“基準時間t0”と、S6の処理で記憶された“到達時間t1”との差分値(Δt)を算出する。電子機器10は、例えば、差分値(Δt)を“Δt=t1−t0”として算出する。算出された差分値(Δt)は、S8の処理に引き渡される。
【0079】
電子機器10は、例えば、S7の処理で引き渡された差分値(Δt)に基づいて、筐体内部の密閉状態を判定する(S8)。“基準時間t0”と、“到達時間t1”との差分値(Δt)である経過時間に基づく、密閉状態の判定については図2で説明した。
【0080】
電子機器10は、例えば、S7の処理で引き渡された差分値(Δt)が筐体内部の密閉状態を判定するための経過時間である閾値(tref)以上であるか否かを判定する。電子機器10は、例えば、S7の処理で引き渡された差分値(Δt)が閾値(tref)以上である場合には(S8,YES)、S9の処理に移行する。
【0081】
S9の処理では、電子機器10は、筐体内部の密閉状態が防水機能を提供できる状態であると判断する。電子機器10は、S9の処理後、処理中の密閉状態の判定処理を終了する。なお、電子機器10は、例えば、S9の処理で筐体内部の密閉状態が防水機能を提供できる状態であると判断する場合には、LCD15a等の表示デバイスに、「防水判定OK」といった表示を行うとしてもよい。
【0082】
また、電子機器10は、例えば、S7の処理で引き渡された差分値(Δt)が閾値(tref)以上でない場合には(S8,NO)、S10の処理に移行する。S10の処理では、電子機器10は、筐体内部の密閉状態が防水機能を提供できる状態にないと判断する。電子機器10は、S10の処理で筐体内部の密閉状態が防水機能を提供できる状態にない判断する場合には、例えば、LCD15a等の表示デバイスに、「防水判定NG」といった表示を行う等のアラーム通知を行う(S11)。電子機器10は、密閉状態の判定結果のアラーム通知を行うことで、ユーザに対してコネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等を警告することが可能となる。なお、アラーム通知の方法は任意に設定できる。例えば、電子機器10の出力部15のスピーカを介して警告音を発信するとしてもよく、LCD15a等を明滅させるとしてもよい。電子機器10の密閉状態が防水機能を提供する状態にないことを示す方法であればよい。
【0083】
ここで、電子機器10で実行されるS1−S6の処理は、筐体内の圧力を変動させる部
材の動きを検知する検知ステップの一例である。また、電子機器10のCPU11等は、体内の圧力を変動させる部材の動きを検知する検知部の一例としてS1−S6の処理を実行する。
【0084】
また、電子機器10で実行されるS7−S11の処理は、部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間に基づいて、筐体内の密閉状態を判定する処理ステップの一例である。また、電子機器10のCPU11等は、部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間に基づいて、筐体内の密閉状態を判定する処理部の一例としてS7−S11の処理を実行する。
【0085】
以上、説明したように、本実施形態の電子機器10は、入力ボタン14a等に設けられた電極10eと、内部実装物10cに設けられた電極10fとで構成される並行板電極を備える。電極10eと電極10fとは対向して対となり、ユーザの押下操作等により、筐体内部側に押し込められ、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する入力ボタン14a等の部材の動きを静電容量値の変化として検出する並行板電極を構成する。
【0086】
そして、本実施形態の電子機器10は、並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいて、入力ボタン14aの押下操作の実行を判定することができる。同様にして、電子機器10は、入力ボタン14aの押下操作の実行後に該入力ボタン14aの初期位置に復帰した(戻った)と判定することができる。本実施形態の電子機器10は、並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいて、入力ボタン14aの押下操作の際の、初期位置に戻るときに要した時間を経過時間として特定することができる。
【0087】
電子機器10では、例えば、密閉状態にある場合の経過時間は、密閉状態にない場合の経過時間と比較して相対的に長くなる傾向がある。本実施形態の電子機器10は、特定した経過時間に基づいて、筐体内の密閉状態を判定することができる。この結果、本実施形態の電子機器10では、簡易な仕組みにより密閉状態を判定することが可能となる。
【0088】
<実施形態2>
実施形態1では、防水機能を有する電子機器10として、入力ボタン14a等を複数に備える携帯電話機を一例として説明した。実施形態1で説明した、筐体内の密閉状態の判定処理は、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材を備える電子機器10であれば適用が可能である。実施形態2(以下、本実施形態とも称す)の電子機器10は、例えば、押下式の指紋センサを備えるスマートフォンやタブレットPC、PDA等の一例である。
【0089】
図5A、5Bに、本実施形態の押下式の指紋センサを備える電子機器10についての説明図を例示する。図5A、5Bに例示の電子機器10は、例えば、押下式指紋センサ14cを備えるスマートフォンの一例である。図5A、5Bに例示の電子機器10は、実施形態1と同様に開閉式のコネクタキャップ(以下、キャップとも称す)を備える。なお、図5Aは、本実施形態の電子機器10の全体を俯瞰した斜視図であり、図5Bは、図5Aに例示の電子機器10のB1−B2部における断面図である。
【0090】
図5A、5Bに例示の説明図において、本実施形態の電子機器10は、タッチパネル10jを備える。タッチパネル10jは、例えば、タッチセンサ14bといった入力デバイスとLCD15a等の表示デバイスとを組合せたポインティングデバイスである。タッチパネル10jでは、例えば、LCD15a等の表示デバイス面に接触させた指等の接触位置が、タッチセンサ14bを介して検出される。電子機器10のユーザは、例えば、LCD15a等の表示デバイス面に指等を接触させて操作することにより、表示デバイスに表示された表示部品に対する操作指示を行うことが可能となる。
【0091】
また、図5Aに例示の電子機器10は、入力部14に押下式指紋センサ14cを備える。本実施形態の電子機器10は、例えば、一定時間にタッチパネル10j等への接触操作を検知しない場合には、表示画面を消灯させるスリープモード機能を有する。電子機器10は、スリープモード機能を有することで、ユーザ操作を検出しない期間における、LCD15a等の表示デバイスで消費される電力消費を抑制できる。
【0092】
押下式指紋センサ14cは、例えば、該センサ14cに対するユーザの指等による押下操作を検出する。押下式指紋センサ14cを介して押下操作を検出した電子機器10は、例えば、スリープモードに移行したLCD15a等の表示デバイスを点灯状態に復帰させる。
【0093】
また、押下式指紋センサ14cは、該センサ14cに接触させたユーザの指の指紋を検出する。押下式指紋センサ14cを介して接触指の指紋を検出した電子機器10は、例えば、予め登録されたユーザの接触指の指紋との照合を行い、指紋認証を行う。指紋認証が行われた電子機器10では、例えば、スリープモードに移行した電子機器10への、タッチパネル10jを介した接触操作入力を受け付けるためのロック解除が行われる。
【0094】
図5Aに例示するように、押下式指紋センサ14cは、例えば、タッチパネル10jが設けられた筐体の背面側に設けられる。本実施形態の電子機器10では、押下式指紋センサ14cを筐体の背面側に設けることで、該センサ14cに接触させた指等による押下操作を検出すると共に検出された接触指の指紋に基づく指紋認証が可能となる。電子機器10のユーザは、例えば、押下式指紋センサ14cに接触させた指を入れ替えることなく、LCD15a等を点灯状態に復帰させ、タッチパネル10jへの操作入力を受け付けるためのロック解除を同時に行うことが可能となる。筐体の背面側に押下式指紋センサ14cが設けられた電子機器10では、例えば、スリープモードからの復帰およびロック解除等についての利便性が向上できる。
【0095】
図5Bの断面図に例示のように、電子機器10は、実施形態1と同様に、筐体ケース10aの側面側に外部インターフェースを使用するための接続用コネクタを有する。接続用コネクタの開口部には、筐体内部への浸水を防止するための開閉式のコネクタキャップ10gが装着される。
【0096】
電子機器10は、実施形態1と同様に、開閉式のコネクタキャップ10gの周囲に止水用ガスケット10hを備え、止水用ガスケット10hと筐体ケース10aとの密着により、筐体内部を密閉状態とする。接続用コネクタの開口部に対するコネクタキャップ10gの閉め込みに伴い、電子機器10の筐体内には密閉空間10zが形成される。また、電子機器10の筐体内には、例えば、スマートフォンの機能を提供するための各種デバイスを搭載する電子基板等の内部実装物10cが含まれる。
【0097】
図5Bに例示のように、電子機器10は、実施形態1と同様に、気圧調整用の開口孔10bを有し、筐体ケース10aの内壁面には、該開口孔10bを覆うよう、防水シート10dが設けられる。なお、図5Bに例示の電子機器10においても、実施形態1と同様に、防水シート10dによる吸盤効果の調整が行われる。
【0098】
図5Bに例示の電子機器10では、ユーザの押下操作が行われる押下式指紋センサ14cに対し、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材の動きを検知する手段が設けられる。つまり、図5Bに例示のように、本実施形態の電子機器10は、押下式指紋センサ14cの筐体内部側に電極10eを設け、筐体ケース10a内に収容される内部実装物10c側に電極10fを設ける。電極10eと電極10fとは、筐体内部の空気層をギャ
ップとした並行板電極となる位置に対向して設けられる。
【0099】
ここで、押下式指紋センサ14cに設けられた電極10eは「第1電極」の一例である。また、内部実装物10cに設けられた電極10fは「第2電極」の一例である。
【0100】
電極10eと電極10fとは対向して対となり、ユーザの押下操作等により、筐体内部側に押し込められ、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材である押下式指紋センサ14cの動きを静電容量値の変化として検出する並行板電極を構成する。この結果、本実施形態の電子機器10においても、並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいた密閉状態の判定が可能となる。
【0101】
図5Cに、本実施形態の電子機器10のハードウェア構成の一例を例示する。図5Cに例示の電子機器10は、図3に例示の実施形態1の電子機器10の構成と、入力部14に上記したタッチセンサ14b、押下式指紋センサ14cを備える点で相違し、他の構成については実施形態1の電子機器10と同様である。なお、タッチセンサ14b、押下式指紋センサ14cについては、図5A等で説明した。
【0102】
図5Cに例示の静電容量検出部101は、例えば、押下式指紋センサ14cに設けられた電極10eに接続する。なお、電極10fは、例えば、図5Bに例示の内部実装物10cのGND端子に接続する。押下式指紋センサ14cに設けられた電極10eと、内部実装物10cに設けられた電極10fとで構成される並行板電極には、例えば、押下式指紋センサ14cの押下操作による電極間距離の変化に対応した静電容量値の増減を検出するための電荷が蓄えられる。
【0103】
本実施形態の電子機器10は、押下式指紋センサ14cに設けられた電極10eと、内部実装物10cに設けられた電極10fとで構成される並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいて、図4に例示の密閉状態の判定処理を実行する。
【0104】
判定処理の結果、本実施形態の電子機器10は、例えば、押下式指紋センサ14cの押下操作の実行を判定できる。また、本実施形態の電子機器10は、例えば、押下式指紋センサ14cの押下操作の実行後に、該センサ14cの初期位置に復帰した(戻った)ことを判定できる。本実施形態の電子機器10は、並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいて、押下式指紋センサ14cの押下操作の際の、初期位置に戻るときに要した時間を経過時間として特定することができる。
【0105】
この結果、本実施形態の電子機器10においても、特定した経過時間に基づいて、押下式指紋センサ14cに設けられた筐体内の密閉状態を判定することができる。なお、本実施形態の電子機器10では、電極10eが押下式指紋センサ14cに設けられるため、スリープ状態からの復帰、ロック解除の認証と共に筐体内部の密閉状態が判定できる。このため、電子機器10のユーザは、防水機能を意識することなく筐体内部の防水性能の確認を行うことが可能となり、利便性を向上させることができる。本実施形態の電子機器10では、防水機能を確認するための専用のボタン等を設けなくても良いため、筐体の小型化、製品コストの削減の要求に適応することができる。
【0106】
<実施形態3>
実施形態3(以下、本実施形態とも称す)の電子機器10は、例えば、タッチパネル10kを備えるスマートフォンやタブレットPC、PDA等の一例である。但し、本実施形態の電子機器10は、圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル10kを備える。圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル10kでは、例えば、タッチパネル10kの表面に接触させたユーザの指等の筐体内部側への押圧力を検知することで、指等
の接触位置における押下操作を検出する。なお、実施形態3の電子機器10は、実施形態1、2と同様に、開閉式のコネクタキャップ(以下、キャップとも称す)を備える。実施形態3の電子機器10においても、コネクタキャップの閉め込みにより筐体内の密閉状態が確保される。
【0107】
図6Aに、本実施形態の圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル10kを備える電子機器10についての説明図を例示する。図6Aに例示の電子機器10は、例えば、圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル10kを備える電子機器としてのスマートフォンの一例である。図6Aは、電子機器10の表面に設けられたタッチパネル10kから背面側方向への断面図を表す。
【0108】
また、図6Bに、本実施形態の電子機器10のハードウェア構成の一例を例示する。図6Bに例示の電子機器10は、図5Cに例示の実施形態2の電子機器10の構成と、入力部14にタッチパネル10kを備えること、撓み量・圧力変換部102を備えることで相違する。上記の相違構成を除く他の構成については実施形態2の電子機器10と同様であるため、以下の説明では、実施形態2との相違点であるタッチパネル10k、撓み量・圧力変換部102を主に説明する。
【0109】
図6Aに例示のように、電子機器10は、実施形態1、2と同様に、筐体ケース10aの側面側に外部インターフェースを使用するための接続用コネクタを有する。接続用コネクタの開口部には、筐体内部への浸水を防止するための開閉式のコネクタキャップ10gが装着される。
【0110】
電子機器10は、実施形態1、2と同様に、開閉式のコネクタキャップ10gの周囲に止水用ガスケット10hを備え、止水用ガスケット10hと筐体ケース10aとの密着により、筐体内部を密閉状態とする。接続用コネクタの開口部に対するコネクタキャップ10gの閉め込みに伴い、電子機器10の筐体内には密閉空間10zが形成される。
【0111】
また、電子機器10は、実施形態1、2と同様に、気圧調整用の開口孔10bを有し、筐体ケース10aの内壁面には、該開口孔10bを覆うよう、防水シート10dが設けられる。なお、図6Aに例示の電子機器10においても、実施形態1、2と同様に、防水シート10dによる吸盤効果の調整が行われる。
【0112】
図6Aに例示の電子機器10において、電子機器10の筐体内には、例えば、スマートフォンの機能を提供するための各種デバイスを搭載する電子基板等の内部実装物10cが含まれる。内部実装物10cの表面側には、表示デバイスであるLCD15a等のモジュールが配置される。表示デバイスであるLCD15a等の表面には、例えば、タッチパネル10kに対する指X等の押圧力Pを検知するための電極10fが設けられる。タッチパネル10kと、LCD15a等の表面に設けられた電極10fは、例えば、筐体内の空気層を挿み対向する。
【0113】
タッチパネル10kを備える電子機器10では、例えば、図5A等で説明したように、LCD15a等の表示デバイスに表示された表示部品等に対する接触操作が検出される。タッチパネル10kに接触させた指Xの接触位置は、例えば、LCD15aと組み合わされたタッチセンサ14bにより検出される。
【0114】
圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル10kは、例えば、ITO(酸化インジウムスズtin-doped indium oxide)等の透明電極である受信側電極及び送信側電極が、縦横2層に交差するようマトリクス状に配置されたタッチセンサ14bを有する。タッチセンサ14bは、例えば、タッチパネル10kに接触させた指Xの接触位置に対する、
受信側電極と送信側電極とが交差する交点の、電界の変化を検出信号として検知する。
【0115】
電子機器10は、例えば、タッチセンサ14bの検出信号に基づいて、タッチパネル10kに接触させた指Xの接触位置を検出する。電子機器10は、例えば、組合せられたLCD15a等の表示デバイスの左上角部を原点とし、表示デバイスの左右方向をX軸、上下方向をY軸とした(X,Y)の2次元座標としてタッチパネル10kに接触させた指Xの接触位置を検出する。
【0116】
また、電子機器10のタッチパネル10kは、接触位置における指Xの筐体内部側への撓み量を検出する。電子機器10で検出された撓み量は、撓み量・圧力変換部102により、指Xの筐体内部側への押圧力Pに変換される。
【0117】
図6Aに例示のように、電子機器10のタッチパネル10kは、例えば、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材の動きを検知する手段としての電極10eとして機能する。そして、電極10eとして機能するタッチパネル10kは、LCD15a等の表面に設けられた電極10fとの間で、筐体内部の空気層をギャップとした並行板電極を構成する。並行板電極は、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材であるタッチパネル10kの動きを、図3等に例示のように、静電容量値の変化として検出する。
【0118】
ここで、電極10eとして機能するタッチパネル10kは「第1電極」の一例である。また、LCD15a等の表面に設けられた電極10fは「第2電極」の一例である。
【0119】
図6Bに例示のように、電子機器10は、タッチパネル10kに対する撓み量を静電容量値の変化として検出する。検出された静電容量値は、例えば、撓み量・圧力変換部102に引き渡される。撓み量・圧力変換部102では、予め定められた静電容量値と押圧力との相対関係に基づいて、引き渡された静電容量値に対応付けられた押圧力が特定される。電子機器10は、例えば、撓み量・圧力変換部102で特定された押圧力に基づいて、指X等の接触位置に表示された表示部品に対する操作指示等の受け付けを決定する。
【0120】
同様にして、電子機器10は、タッチパネル10kの筐体内部の圧力を変動させる動きに対応して変化する並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいて、図4に例示の密閉状態の判定処理を実行する。
【0121】
判定処理の結果、電子機器10は、例えば、タッチパネル10kの接触操作の際の押下を閾値C0に基づいて判定できる。同様にして、電子機器10は、例えば、タッチパネル10kの接触操作の際の押下の検出後に、該タッチパネル10kの初期位置に復帰した(戻った)ことを閾値C1に基づいて判定できる。電子機器10は、並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいて、タッチパネル10kの接触操作の押下の際の、初期位置に戻るときに要した時間を経過時間(減少傾向の閾値C0−C1への到達時間)として特定することができる。
【0122】
この結果、本実施形態の電子機器10においても、実施形態1、2と同様にして、タッチパネル10kの筐体内部の圧力を変動させる方向の動きに対応して変化する、並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいた密閉状態の判定が可能となる。なお、本実施形態の電子機器10では、タッチパネル10kの表面に指X等を接触させた際の押圧力に基づいて、筐体内部の密閉状態が判定できる。このため、電子機器10のユーザは、防水機能を意識することなく筐体内部の防水性能の確認を行うことが可能となり、利便性を向上させることができる。本実施形態の電子機器10では、防水機能を確認するための専用のボタン等を設けなくても良いため、筐体の小型化、製品コストの削減の要求に適応することが可能となる。
【0123】
ところで、圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル10kでは、押し込み量によっては戻りのストローク量(電極間の距離変化量)が変動する恐れがある。ストローク量が変動した場合には、タッチパネル10kの初期位置に復帰するまでの経過時間の変動が起こり得る。
【0124】
本実施形態の電子機器10では、撓み量・圧力変換部102とは独立して、タッチパネル10kの接触操作の際の押下を判定するための閾値C0が設定できる。同様にして、電子機器10では、撓み量・圧力変換部102とは独立して、接触操作の際の押下の検出後に、該タッチパネル10kの初期位置に復帰した(戻った)ことを判定するための閾値C1を設定できる。この結果、本実施形態の電子機器10では、押し込み量によってストローク量が変動する場合であっても、例えば、タッチパネル10kの接触操作の際の押下を判定するための閾値C0の値をC1側に移動させることで、密閉状態を判定する時間計測が可能となる。本実施形態の電子機器10では、圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル10kへの、押し込み量の変化に起因する密閉状態の誤判定を抑止することが可能となる。
【0125】
<変形形態>
実施形態1−3の電子機器10では、例えば、筐体ケース10aに設けられた気圧調整用の開口孔10b、防水シート10dで得られる吸盤効果で制限された空気の流入に基づいて、密閉状態の判定を行っていた。
【0126】
押下操作により、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材の、初期位置に戻るまでの経過時間に基づく筐体内の密閉状態の判定処理は、開口孔10b、防水シート10dを有しない構成であっても、適用が可能である。
【0127】
図7Aに、開口孔10b、防水シート10dを有さない変形形態の電子機器10の説明図を例示する。図7Aに例示の電子機器10は、例えば、開口孔10b、防水シート10dを有さない場合の、実施形態1で説明した防水機能を有する携帯電話機の構成例である。
【0128】
気圧調整用の開口孔等を有さない場合には、コネクタキャップ10gの閉め込みにより、電子機器10の筐体内は、空気の流入出が発生しない密閉状態となる。空気の流入出が行われない密閉状態では、筐体内に封入された空気により、例えば、ユーザが、筐体ケース10aに配列された入力ボタン14a等の押下操作を行い難く感じるといった違和感が生じる。
【0129】
しかしながら、筐体内に封入された空気は一定の気圧範囲で弾性圧縮が可能であるため、電子機器10は、入力ボタン14a等の押下操作を受け付けることができる。つまり、入力ボタン14a等の押下操作に伴って筐体内部側に押し込められた状態では、筐体内に封入された空気は、弾性圧縮されて一時的に正圧状態となる。正圧状態の電子機器10では、押し込められた入力ボタン14a等には圧縮された空気圧による反発力が作用する。このため、入力ボタン14a等から指等を離した場合には、筐体内の空気圧は、相対的に短時間で押し込み前の状態に戻るように作用する。
【0130】
一方、コネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する場合には、例えば、接続用コネクタの開口部を経由して空気が流出入する。例えば、コネクタキャップ10gの閉め忘れや緩みが存在する場合には、入力ボタン14a等の押し込み時には、開口部を介して筐体内の空気が流出し、筐体外部との気圧が釣り合う。筐体外部と筐体内部の気圧が釣り合った状態では、押し込んだ入力ボタン14aには、正圧状態での反発力が作用しない
。このため、コネクタキャップ10gの閉め忘れや緩みが存在する場合には、押し込み前の状態である初期位置に戻るまでの期間は、密閉状態と比較して相対的に長くなる。
【0131】
従って、空気の流入出が発生しない密閉状態の場合であっても、筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材の、初期位置に戻るまでの経過時間に基づいて筐体内の密閉状態を判定することが可能となる。なお、変形形態の電子機器10においても、実施形態1−3と同様にして、電極10e、電極10fによる並行板電極の静電容量値の時間変化に基づいて、押し込められた入力ボタン14a等の初期位置に戻るまでの期間を測定することが可能となる。
【0132】
図7Aに説明図において、変形形態の電子機器10は、例えば、押下式の入力ボタン14aの筐体内部側に電極10eを設け、筐体ケース10a内に収容される内部実装物10c側に電極10fを設ける。電極10eと電極10fとは、筐体内部の空気層をギャップとした並行板電極となる位置に対向して設けられる。電極10e、10fで構成される並行板電極は、入力ボタン14a等の初期位置から押下位置までの距離変化を静電容量値(C)の変化として捉えることができる。変形形態の電子機器10においても、静電容量値(C)の時間変化を計測することで、押し込められた入力ボタン14a等の初期位置に戻るまでの期間を測定することが可能となる。
【0133】
図7Bに、空気の流入出が発生しない密閉状態の場合の電極10e、10fによる並行板電極の静電容量値(C)の時間変化についての説明図を例示する。図7Bの説明図において、縦軸は電極10e、10fによる並行板電極の静電容量を表し、横軸は入力ボタン14aへの押下操作に伴う経過時間を表す。グラフG3は、開閉式のコネクタキャップ10gが閉め込まれて密閉状態となった場合の静電容量値の時間変化を表し、グラフG4は、開閉式のコネクタキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する場合の静電容量値の時間変化を表す。
【0134】
グラフG3,G4に例示するように、変形形態の電子機器10の電子機器10においても、入力ボタン14aに対する押下操作の開始(開始時間ts)から押し込み位置がピーク位置になるまでの静電容量値は、実施形態1−3と同様に変化する。
【0135】
また、入力ボタン14aの押し込み位置がピークとなる位置で操作指が離れたときから初期位置に戻るまでの並行板電極の静電容量についても、実施形態1−3と同様に変化する。但し、グラフG4の破線領域に示すように、静電容量値Cpから静電容量値Csの間で減少する静電容量の変化の傾斜は、グラフG3の減少変化の傾斜と比較して相対的に緩傾斜となる。
【0136】
実施形態1−3と同様にして、入力ボタン14aの押下操作に伴う、静電容量値Csから静電容量値Cpまでの間で変化する静電容量範囲の中で、入力ボタン14aが押下されたと判断するための閾値を静電容量値C0に設定する。また、押下操作により押し込められた入力ボタン14aが初期位置に復帰した(戻った)と判断するための閾値を静電容量値C1に設定する。各静電容量値の相対的な大小関係は、Cp>C0>C1>Csである。なお、静電容量値Cpが検出された後の、閾値となる静電容量値C0が検出された時間を基準時間t0とする。
【0137】
図7Bに例示のように、グラフG3では、静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間はt3となり、グラフG4では、静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間はt4となる。各経過時間の相対的な大小関係は、t4>t3となる。
【0138】
コネクタキャップ10gが閉め込まれた密閉状態では、筐体内の空気圧から反発力を受けるため、経過時間t3がキャップ10gの閉め忘れや緩み等が存在する場合に比べ相対的に短くなる。変形形態の電子機器10では、例えば、コネクタキャップ10gが閉め込まれて密閉状態となった場合の静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間t3を閾値として予め保持する。そして、変形形態の電子機器10は、例えば、静電容量値C0が検出されてから静電容量値C1を検出するまでの経過時間tと、保持された閾値t3との大小関係に基づいて筐体内部の密閉状態を判定すればよい。
【0139】
例えば、変形形態の電子機器10は、図4に例示のフローチャートのS8の処理において、S7の処理から引き渡された差分値(Δt)が筐体内部の密閉状態を判定するための経過時間である閾値(tref)として“t3”を保持すればよい。そして、変形形態の電子機器10は、S7の処理で引き渡された差分値(Δt)が閾値(tref=“t3”)を超える場合には(S8,YES)、S10−S11の処理を実行するとすればよい。また、変形形態の電子機器10は、S7の処理で引き渡された差分値(Δt)が閾値(tref=“t3”)以下である場合には(S8,NO)、S9の処理を実行するとすればよい。
【0140】
変形形態の電子機器10では、空気の流入出が発生しない密閉状態の場合であっても、押下操作に伴う筐体内部の圧力を変動させる方向に動作する部材の、初期位置に戻るまでの経過時間に基づく筐体内の密閉状態の判定処理が実行できる。
【0141】
《コンピュータが読み取り可能な記録媒体》
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0142】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【0143】
《その他》
以上の実施形態は、さらに以下の付記と呼ぶ態様を含む。以下の各付記に含まれる構成要素は、他の付記に含まれる構成と組み合わせることができる。
(付記1)
筐体内の圧力を変動させる部材の動きを検知する検知部と、
前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間に基づいて、前記筐体内の密閉状態を判定する処理部と、
を備える電子機器。
(付記2)
前記検知部は、前記部材に設けられた第1電極と、前記第1電極と並行板電極となるように設けられた第2電極との間の静電容量の時間変化に基づいて前記部材の動きを検知する、付記1に記載の電子機器。
(付記3)
前記処理部は、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間の計測を開始するための閾値を設ける、付記1または2に記載の電子機器。
(付記4)
前記処理部は、前記筐体に設けられた開口孔がある場合には、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間が所定時間以上であるときに前記筐体内が密閉状態にあると判定する、付記1から付記3の何れか一の付記に記載の電子機器。
(付記5)
前記処理部は、前記筐体に設けられた開口孔がない場合には、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間が所定時間以下であるときに前記筐体内が密閉状態にあると判定する、付記1から付記3の何れか一の付記に記載の電子機器。
【0144】
(付記6)
コンピュータに、
筐体内の圧力を変動させる部材の動きを検知する検知ステップと、
前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間に基づいて、前記筐体内の密閉状態を判定する処理ステップと、
を実行させるための密閉状態判定プログラム。
(付記7)
前記検知ステップは、前記部材に設けられた第1電極と、前記第1電極と並行板電極となるように設けられた第2電極との間の静電容量の時間変化に基づいて前記部材の動きを検知する、付記6に記載の密閉状態判定プログラム。
(付記8)
前記処理ステップは、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間の計測を開始するための閾値を設ける、付記6または7に記載の密閉状態判定プログラム。
(付記9)
前記処理ステップは、前記筐体に設けられた開口孔がある場合には、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間が所定時間以上であるときに前記筐体内が密閉状態にあると判定する、付記6から付記8の何れか一の付記に記載の密閉状態判定プログラム。
(付記10)
前記処理ステップは、前記筐体に設けられた開口孔がない場合には、前記部材が操作された際に基準位置に戻る時に要した時間が所定時間以下であるときに前記筐体内が密閉状態にあると判定する、付記6から付記8の何れか一の付記に記載の密閉状態判定プログラム。
【符号の説明】
【0145】
10 電子機器
10a 筐体ケース
10b 開口孔
10c 内部実装物
10d 防水シート
10e 電極
10f 電極
10g コネクタキャップ
10h 止水用ガスケット
10j タッチパネル
10k 圧力検知機能を有する静電容量方式のタッチパネル
11 CPU
12 主記憶部
13 補助記憶部
14 入力部
14a 入力ボタン
14b タッチセンサ
14c 押下式指紋センサ
15 出力部
15a LCD
101 静電容量検出部
102 撓み量・圧力変換部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B