(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献で提案されたフィラーパイプの保持手法は、樹脂製のパイプ挟持部を弾性変形させてフィラーパイプを押し付けているので、フィラーパイプに対する保持力を高めることができる点で優れている。一方、近年では、軽量化の観点から、樹脂製のフィラーパイプが多用されており、樹脂製である故に、低温環境下でのフィラーパイプの縮径化が起き、フィラーパイプのガタツキが起き得る。フィラーパイプのガタツキは、環境温度のみならず、フィラーパイプや固定部材の製造上のバラツキにより起きたり、部品の経年変化によっても起き得ることから、フィラーパイプのガタツキの抑制に加え、ガタツキの抑制機能低下が起きたときの簡便な機能回復を図ることが要請されるに到った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態として実施することができる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、燃料供給装置が提供される。この燃料供給装置は、給油口から燃料タンクに到る燃料流路を形成するフィラーパイプと、該フィラーパイプを車体に対して保持する固定部材であって、前記フィラーパイプの少なくとも一部を外方から取り囲む包囲部と、該包囲部を車体に固定する固定部とを備える固定部材と、少なくとも一部が、前記包囲部の内側に配置された弾性部材とを備える。そして、該弾性部材の少なくとも一部は、前記包囲部が前記フィラーパイプを未保持の状態では押し付けを受けず、前記包囲部が前記フィラーパイプを取り囲んで保持した状態で押し付けを受ける。
【0007】
この形態の燃料供給装置は、包囲部の内側に配置された弾性部材が包囲部によるフィラーパイプの保持状態で包囲部の側に、或いはフィラーパイプの側に押し付けを受けることにより、フィラーパイプのガタツキを抑制することができるほか、ガタツキの抑制機能低下が起きたときには、弾性部材の交換により、ガタツキの抑制機能を容易に回復できる。
【0008】
(2)上記形態の燃料供給装置において、前記弾性部材は、前記包囲部が前記フィラーパイプを未保持の状態では、前記包囲部が前記フィラーパイプを取り囲んで保持した状態での前記フィラーパイプの外周より内側に位置する形状である。こうすれば、包囲部の内側に配置された弾性部材が包囲部によるフィラーパイプの保持状態で押し付けを受けるので、フィラーパイプのガタツキを抑制することができるほか、ガタツキの抑制機能低下が起きたときには、弾性部材の交換により、ガタツキの抑制機能を容易に回復できる。
【0009】
(3)上記形態の燃料供給装置において、前記弾性部材は、前記包囲部または前記フィラーパイプに形成された凹所に組み込まれているようにしてもよい。こうすれば、凹所への弾性部材の組み込みという簡便な作業で、フィラーパイプのガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。
【0010】
(4)上記形態の燃料供給装置において、前記凹所は、前記包囲部または前記フィラーパイプの一部に形成され、前記凹所に組み込まれた前記弾性部材は、圧縮変形或いは撓み変形を起こすようにしてもよい。こうすれば、凹所に組み込まれた弾性部材によりフィラーパイプを押し付けることができるので、フィラーパイプのガタツキを高い実効性で抑制できる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、フィラーパイプの固定具の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は自動車の燃料タンクFTに燃料を供給するための実施形態の燃料供給装置FSの概要を示す説明図である。燃料供給装置FSは、フィラーパイプ30と、燃料蒸気パイプ50と、固定部材70と、逆止弁TVと、ガス放出部BVとを備えている。フィラーパイプ30は、樹脂製のフィラーネック20に、同じく樹脂製のフィラーチューブ40を接続して構成され、給油口FCから燃料タンクFTに到る燃料流路30Pを形成する。フィラーネック20は、固定部材70により車両の燃料給油部(図視略)に固定され、給油口FCへの給油ガンFGの挿入を受け付ける。フィラーチューブ40は、例えば、2箇所に蛇腹構造を有する樹脂製のチューブであり、一定の範囲において、伸縮し、湾曲可能である。このフィラーチューブ40は、逆止弁TVを介して、燃料タンクFTと接続されている。給油口FCに挿入された給油ガンFGから吐出された燃料は、フィラーパイプ30が形成する燃料流路30Pと逆止弁TVを経て、燃料タンクFTに供給される。なお、逆止弁TVは、燃料タンクFTからフィラーチューブ40への燃料の逆流を防止する。
【0014】
燃料蒸気パイプ50は、一端がガス放出部BVを介して燃料タンクFTと接続され、他端がフィラーネック20から突出した燃料蒸気ポート28(
図2参照)に接続されている。ガス放出部BVは、燃料蒸気パイプ50を燃料タンクFTに接続する継手として機能し、燃料蒸気が含まれるタンク内エアーを燃料蒸気パイプ50に流し込む。燃料蒸気は、給油ガンFGからの給油時に、供給された燃料と共に燃料蒸気パイプ50を通って燃料タンクFTに導かれる。
【0015】
図2はフィラーネック20の周辺構成を示す斜視図であり、
図3は
図2における3−3線に沿って第1実施形態の固定部材70の周辺を断面視して示す説明図である。なお、
図2とそれ以降の図においては、XYZの3軸の座標系を並記し、Z軸をフィラーネック20の延在方向とし、Y軸の+Y方向を後述する燃料蒸気ポート28の形成方向と合致させ、必要に応じて後述の各部材の位置関係をXYZ軸を用いて記述する。
【0016】
フィラーネック20は、フィラーネック本体部25と、燃料蒸気ポート28とを備え、フィラーネック本体部25をZ軸方向に沿って延ばしている。フィラーネック本体部25は、導電性の樹脂からなる中空の円筒形状の部材である。フィラーネック本体部25は、一端に給油口FCを備え、この給油口FCの側で拡径されている。また、フィラーネック本体部25は、他端側にチューブ接続部21を備え、このチューブ接続部21でフィラーチューブ40と接続されている。チューブ接続部21の外周には、圧入されるフィラーチューブ40とのシール性を向上させるために、波状の段部が形成されている。なお、フィラーパイプ30は、フィラーネック本体部25からフィラーチューブ40に掛けて燃料流路30P(
図1参照)を形成する。
【0017】
燃料蒸気ポート28は、フィラーネック本体部25からY軸の+Yの方向に分岐し、フィラーネック本体部25よりも径が小さい中空の円筒形状の部材である。燃料蒸気ポート28の基端側は、フィラーネック本体部25に一体成形によって結合されている。燃料蒸気ポート28の先端側には、燃料蒸気パイプ50が圧入して固定されている。燃料蒸気ポート28の先端側の外周には、圧入される燃料蒸気パイプ50とのシール性を向上させるために、波状の段部が形成されている。
【0018】
固定部材70は、燃料蒸気ポート28が結合されているフィラーネック本体部25の部位に固定される金属製の金具である。この固定部材70は、フィラーネック本体部25の中心軸OLを中心とするフィラーネック外周において、フィラーネック本体部25における燃料蒸気ポート28の結合部から下流の領域において、フィラーネック本体部25を取り囲む。つまり、固定部材70は、第1固定具71と第2固定具72とを、フィラーネック本体部25を挟んで向かい合わせて備え、両固定具をボルト67とナット69で締め付け固定する。
【0019】
第1固定具71は、導電性のステンレス鋼板等をプレスに処して形成された帯状の金属製の部材であり、燃料蒸気ポート28を隙間を持って覆う湾曲部71Aの両側に、大径部71Bを連続して備え、更にこの大径部71Bに平板部71Cを連続させ、平板部71Cの端部には、固定片部71Dを有する。大径部71Bは、フィラーネック本体部25の湾曲に倣って湾曲し、フィラーネック本体部25のほぼ半円の円弧領域を覆うよう形成されている。この大径部71Bは、フィラーパイプ30のフィラーネック本体部25への固定部材70の取付完了状態において、後述の第2固定具72の大径部72Aと協働して、フィラーネック本体部25を外方から取り囲む。なお、図においては、湾曲部71Aを薄肉としているが、大径部71Bと同じ厚さとしてもよい。
【0020】
平板部71Cは、フィラーパイプ30のフィラーネック本体部25への固定部材70の取付に際し、ボルト67とナット69による後述の第2固定具72の平板部72Cとの固定部位となる。なお、平板部71Cには、ボルト67の挿入のための貫通孔が形成されている。
【0021】
固定片部71Dは、大径部71Bに連続した平板部71Cの先端から屈曲形成され、図示しない車体の固定ポジションVBに、ボルト67により固定される。このため、本実施形態では、第1固定具71の固定片部71Dが本願における固定部を具現化している。固定ポジションVBへの固定片部71Dの固定により、固定部材70は、上記した第1固定具71と後述の第2固定具72とでフィラーパイプ30のフィラーネック本体部25を取り囲んだ上で、フィラーパイプ30を車体に対して保持する。
【0022】
第2固定具72は、第1固定具71と同様、導電性のステンレス鋼板等をプレスに処して形成された帯状の金属製の部材であり、大径部72Aと、この大径部72Aの両端に連続する平板部72Cとを備える。第2固定具72の大径部72Aは、フィラーネック本体部25の湾曲に倣って湾曲し、フィラーネック本体部25のほぼ半円の円弧領域を覆うよう形成されている。この大径部72Aは、固定部材70の大径部71Bとフィラーネック20のフィラーネック本体部25を挟んで向かい合い、フィラーパイプ30のフィラーネック本体部25への固定部材70の取付完了状態において、固定部材70の大径部71Bと協働して、フィラーネック本体部25を外方から取り囲む。このため、本実施形態では、第1固定具71の大径部71Bと第2固定具72の平板部72Cが本願における包囲部を具現化している。
【0023】
第2固定具72の平板部72Cは、第1固定具71の平板部71Cと向かい合い、固定部材70がフィラーパイプ30のフィラーネック20を車両、詳しくは固定ポジションVBに対して固定する際に、ボルト67とナット69とによって締め付け固定される。なお、平板部72Cにあっても、平板部71Cと同様、ボルト67の貫通孔を備える。
【0024】
この他、固定部材70は、フィラーネック20のフィラーネック本体部25の外周に弾性部材80を備え、弾性部材80を第1固定具71の大径部71Bと第2固定具72の大径部72Aの内側に配置させている。弾性部材80は、ニトリルゴム等のゴムを用いて作製された断面円形の弾性体であり、例えば、Oリングで代用できる。弾性部材80を円形以外の異形断面(例えば、矩形断面)の弾性体とすることもできる他、ガスケットで代用してもよい。フィラーネック本体部25は、弾性部材80の装着用の環状の凹状溝81を備える。この凹状溝81は、上記の両大径部がフィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に、中心軸OLの軸回りに環状に形成されているので、凹状溝81に装着された弾性部材80は、フィラーパイプ30のフィラーネック20、詳しくはそのフィラーネック本体部25を上記の両大径部が取り囲む包囲領域に配設されることになる。そして、この弾性部材80は、フィラーパイプ30のフィラーネック本体部25を固定部材70が未保持の状態では、フィラーネック本体部25の凹状溝81に装着済みである。その一方、第1固定具71と第2固定具72とでフィラーネック本体部25を取り囲むよう、固定部材70がフィラーネック本体部25を保持すると、弾性部材80は、上記した大径部71Bと大径部72Aの内周壁に接触して、押し付けを受ける。このようにして弾性部材80は、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の両大径部の内周壁との間に介在することから、フィラーネック本体部25の寸法変化(拡径変化や縮径変化)に追従して弾発する。
【0025】
こうして配設される弾性部材80と燃料蒸気ポート28との干渉を避けるため、フィラーネック本体部25は、凹状溝81を燃料蒸気ポート28の下流側に形成して、凹状溝81に装着された弾性部材80を介在させて、固定部材70によりフィラーネック本体部25を取り囲む。なお、弾性部材80は、環状の一体品であってもよく、凹状溝81に点在するよう装着される円弧状のパーツ品であってもよい。いずれの場合であっても、弾性部材80は、固定部材70の組み付け前に、フィラーネック本体部25の凹状溝81に装着される。
【0026】
以上説明した構成を備える第1実施形態の燃料供給装置FSは、フィラーパイプ30をそのフィラーネック本体部25において固定部材70により保持するに当たり、固定部材70を構成する第1固定具71の大径部71Bと第2固定具72の大径部72Aがフィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に、Oリングやガスケットの弾性部材80を配設した。こうして配設された弾性部材80は、固定部材70によるフィラーネック本体部25の保持状態で、上記の両大径部の側に、或いはフィラーネック本体部25の側に押し付けを受けて圧縮し、この圧縮に伴い弾発する。よって、第1実施形態の燃料供給装置FSによれば、保持したフィラーパイプ30のガタツキを抑制することができる。しかも、保持したフィラーパイプ30にガタツキが起きれば、弾性部材80の交換・再装着により、ガタツキ抑制機能を容易に回復できる。
【0027】
第1実施形態の燃料供給装置FSは、Oリングやガスケットの弾性部材80をフィラーネック本体部25の凹状溝81に組み込に装着するようにした。よって、第1実施形態の燃料供給装置FSによれば、凹状溝81への弾性部材80の組み込みという簡便な作業で、フィラーパイプ30のガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。
【0028】
図4は
参考例の固定部材70Aの周辺を
図3と同様に断面視して示す説明図である。この
参考例では、フィラーネック本体部25に既述した環状の凹状溝81を備えず、フィラーネック本体部25にZ軸に沿って延びた矩形陥没状の凹状溝82を備え、この凹状溝82に弾性部材90を装着して備える。弾性部材90は、ニトリルゴム等のゴムを用いて、フィラーネック本体部25の凹状溝82に嵌まり込む幅(図におけるX軸方向の幅)と長さ(図におけるZ軸方向の長さ)の直方体形状に押出成形された弾性体であり、凹状溝82嵌め込み装着される。
【0029】
弾性部材90の装着対象である凹状溝82は、第1固定具71の大径部71Bと第2固定具72の大径部72Aがフィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に、中心軸OLに沿って形成されている。よって、この凹状溝82に装着された弾性部材90は、フィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に配設されて、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の大径部72Aの内周壁との間に介在し、固定部材70Aによるフィラーネック本体部25の保持状態で、上記の両大径部の側に、或いはフィラーネック本体部25の側に押し付けを受けて圧縮し、この圧縮に伴い弾発する。この結果、弾性部材90を具備した固定部材70Aを有する
参考例によっても、フィラーネック本体部25の寸法変化(拡径変化や縮径変化)に追従した弾発により、フィラーパイプ30のガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。
【0030】
図5は
参考例の第1変形例の固定部材70Bの周辺を
図3と同様に断面視して示す説明図である。この第1変形例の固定部材70Bは、第2固定具72の大径部72Aに円形の陥没凹部83を備え、この陥没凹部83に適宜な径のコイルスプリングである弾性部材100を装着して備える。
【0031】
弾性部材100の装着対象である陥没凹部83は、第1固定具71の大径部71Bと第2固定具72の大径部72Aがフィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に形成されている。この陥没凹部83に組み込み装着された弾性部材100は、フィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に配設されて、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の両大径部の内周壁との間に介在し、固定部材70Bによるフィラーネック本体部25の保持状態で、フィラーネック本体部25の側に押し付けを受けて圧縮し、フィラーネック本体部25の寸法変化(拡径変化や縮径変化)に追従してY軸方向に沿って弾発する。しかも、弾性部材100は、コイルスプリングであるので、フィラーネック本体部25の外周壁に触れて圧縮変形することで、フィラーネック本体部25を押し付ける力(以下、この力を押圧力と称する)を誘起し、この押圧力をフィラーネック本体部25に及ぼすことでガタツキを抑制する。よって、弾性部材100を具備した固定部材70Bを有する第1変形例によっても、フィラーパイプ30のガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。
【0032】
図6は
参考例の第2変形例の固定部材70Cの周辺を
図3と同様に断面視して示す説明図である。この第2変形例の固定部材70Cは、第2固定具72の大径部72Aに、矩形形状で陥没した陥没凹部83を備え、この陥没凹部83に弾性部材110を装着して備える。この弾性部材110は、ポリアセタールやアクリル等の適宜な樹脂を用いた樹脂成形品であり、二枚の矩形片を一端で結合した二股状の部材であり、無負荷状態では、矩形片が離れる形状である。その一方、矩形片の間が縮むように力を受けると、撓み変形を起こして矩形片が離れる側に弾発力を誘起する。この弾性部材110は、図示するように、一方の矩形片が陥没凹部83の底面に当たり、他方の矩形片がフィラーネック本体部25の外周壁に当たるよう、陥没凹部83に組み込まれている。よって、陥没凹部83に装着された弾性部材110は、フィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に配設されて、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の両大径部の内周壁との間に介在し、固定部材70Cによるフィラーネック本体部25の保持状態で、フィラーネック本体部25の側に押し付けを受けて圧縮し、フィラーネック本体部25の寸法変化(拡径変化や縮径変化)に追従してY軸方向に沿って弾発する。しかも、弾性部材110は、フィラーネック本体部25の外周壁に触れて撓み変形して押圧力(弾発力)を誘起し、この押圧力をフィラーネック本体部25に及ぼすことでガタツキを抑制する。よって、弾性部材110を具備した固定部材70Cを有する第2変形例によっても、フィラーパイプ30のガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。
【0033】
図7は
参考例の第3変形例の固定部材70Dの周辺を
図3と同様に断面視して示す説明図である。この第3変形例の固定部材70Dは、第2固定具72の大径部72Aの陥没凹部83に弾性部材120を装着して備える。この弾性部材120は、アクリル等の適宜な樹脂を用いて中空形状に成形した樹脂成形品であり、無負荷状態では、中空部が最大限に拡張して天井凸部を迫り出している。その一方、天井凸部が押し付けられて中空部が狭小化されると、天井凸部を迫り出す弾発力を誘起する。この弾性部材120は、図示するように、天井凸部がフィラーネック本体部25の外周壁に当たるよう、陥没凹部83に組み込まれている。よって、陥没凹部83に装着された弾性部材120は、フィラーネック本体部25を取り囲む包囲領域に配設されて、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の両大径部の内周壁との間に介在し、固定部材70Dによるフィラーネック本体部25の保持状態で、フィラーネック本体部25の側に押し付けを受けて圧縮し、フィラーネック本体部25の寸法変化(拡径変化や縮径変化)に追従してY軸方向に沿って弾発する。しかも、弾性部材120は、フィラーネック本体部25の外周壁に触れて撓み変形して押圧力(弾発力)を誘起し、この押圧力をフィラーネック本体部25に及ぼすことでガタツキを抑制する。よって、弾性部材120を具備した固定部材70Dを有する第2変形例によっても、フィラーパイプ30のガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。
【0034】
図8は第2実施形態
の固定部材70Eの周辺を
図3と同様に断面視して示す説明図である。この第4変形例の固定部材70Eの保持対象のフィラーパイプ30のフィラーネック20は、フィラーネック本体部25に、X軸方向の両端に、位置決め用の凸部25aを有する。そして、このフィラーネック本体部25を取り囲む第1固定具71と第2固定具172は、平板部71Cおよび平板部72Cを凸部25aをY軸方向から挟持するよう、屈曲させている。第2固定具172は、この平板部72Cに、凹状溝82をZ軸方向に沿って備え、この凹状溝82に弾性部材90を装着している。弾性部材90は、ニトリルゴム等のゴムを用いて、大径部72Aの凹状溝82に嵌まり込む幅(図におけるX軸方向の幅)の直方体形状に押出成形された弾性体であり、両端に挟持片91を備える。挟持片91は、弾性部材90が凹状溝82嵌め込み装着された際に、平板部72Cの外周壁に回り込み、弾性部材90を平板部72Cに対して挟持する。
【0035】
平板部72Cに設けた凹状溝82にあっても、第1固定具71の平板部71Cと第2固定具172の平板部72Cとでフィラーネック本体部25の凸部25aを取り囲む囲領域に形成されている。よって、この凹状溝82に装着された弾性部材90は、フィラーネック本体部25の凸部25aを取り囲む包囲領域に配設されて、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の平板部72Cの内周壁との間に介在し、固定部材70Eによるフィラーネック本体部25の保持状態で、フィラーネック本体部25における凸部25aの側に押し付けを受け、凸部25aの寸法変化(拡幅変化や狭小変化)に追従して弾発する。この結果、平板部72Cに弾性部材90を具備した固定部材70Eを有する第4変形例によっても、フィラーパイプ30のガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。なお、第2固定具172において、−Xの方向の側の平板部72Cにも弾性部材90を装着するようにしてもよい。
【0036】
図9は第2実施形態の
第1変形例の固定部材70Fの周辺を
図3と同様に断面視して示す説明図である。この
第1変形例固定部材70Fの保持対象のフィラーパイプ30のフィラーネック20は、フィラーネック本体部25に、位置決め用の凸部25aを有し、固定部材70Fは、第2固定具272でのみ、フィラーネック20のフィラーネック本体部25を保持する。この第2固定具272は、X軸の−Xの方向の平板部72Cに、凹状溝82と、この凹状溝82に装着された弾性部材90を備え、平板部72Cの先端部を屈曲して凹所77を形成している。そして、この凹所77にフィラーネック20の凸部25aを入り込ませ、他方の平板部72Cの側で凸部25aにボルト67でネジ締め固定されると、固定部材70Fの第2固定具272は、大径部72Aの領域においてフィラーネック20のフィラーネック本体部25を取り囲み、平板部72Cの領域においてフィラーネック本体部25の凸部25aを取り囲み、フィラーネック20を保持する。凹状溝82に装着された弾性部材90は、フィラーネック本体部25の凸部25aを取り囲む包囲領域において、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む平板部72Cの内周壁との間に介在し、固定部材70Fによるフィラーネック本体部25の保持状態で、フィラーネック本体部25における凸部25aの側に押し付けを受け、凸部25aの寸法変化(拡幅変化や狭小変化)に追従して弾発する。この結果、平板部72Cに弾性部材90を具備した固定部材70Fを有する
第1変形例によっても、フィラーパイプ30のガタツキ抑制やガタツキの抑制機能の回復を図ることができる。
【0037】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0038】
既述した実施形態では、フィラーパイプ30におけるフィラーネック20のフィラーネック本体部25を固定部材70で取り囲んで、フィラーパイプ30を保持したが、フィラーネック20より下流側、例えば、
図1におけるフィラーチューブ40の直線管路部を固定部材70で取り囲んで、フィラーパイプ30を保持してもよい。
【0039】
既述した実施形態では、フィラーネック20を導電性の樹脂から形成したが、フィラーネック20を金属製としてもよい。この場合には、固定部材70を構成する各部材を樹脂製としてもよい。
【0040】
図8と
図9に示す弾性部材90を、
図5〜
図7に示す弾性部材100や弾性部材110、或いは弾性部材120とするようにもできる。
【0041】
図3に示す固定部材70では、凹状溝81をフィラーネック本体部25の外周に形成したが、第1固定具71の大径部71Bと第2固定具72の大径部72Aの内周壁に環状、詳しくは半円の環状に凹状溝82をそれぞれ設け、この凹状溝82に弾性部材80を装着するようにしてもよい。こうした構成であると、弾性部材80は、フィラーパイプ30のフィラーネック本体部25を固定部材70が未保持の状態では、外部から力を受けていないいわゆるフリーの状態であることから押し付けを受けておらず、フィラーネック本体部25の外周より内側に位置する形状を採る。その一方、第1固定具71と第2固定具72とでフィラーネック本体部25を取り囲むよう、固定部材70がフィラーネック本体部25を保持すると、弾性部材80は、フィラーネック本体部25に接触するよう押し付けを受ける。このようにして弾性部材80は、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の両大径部の内周壁との間に介在することから、フィラーネック本体部25の寸法変化(拡径変化や縮径変化)に追従して弾発する。よって、第1固定具71の大径部71Bと第2固定具72の大径部72Aに設けた凹状溝81に弾性部材80を装着した構成であっても、既述した効果を奏することができる。なお、弾性部材80と燃料蒸気ポート28との干渉を避けるため、固定部材70は、凹状溝81に装着された弾性部材80が燃料蒸気ポート28の下流側に位置するよう、フィラーネック本体部25を取り囲む。
【0042】
弾性部材80は、環状の一体品であってもよく、大径部71Bの凹状溝81と大径部72Aの凹状溝81とに別々に装着される半円弧状のパーツ品であってもよい。一体品の場合には、固定部材70の組み付け前に、弾性部材80がフィラーネック本体部25の外周にセットされる。半円弧状のパーツ品であれば、そのパーツ品の弾性部材80が固定部材70の組み付け前に、第1固定具71と第2固定具72のそれぞれの凹状溝81に予め装着される。弾性部材80をパーツ品とする場合には、半円弧状のパーツ品に限らず、1/3の円弧状、1/4の円弧状といった多パーツ品とし、第1固定具71と第2固定具72のそれぞれの凹状溝81に、一つ或いは複数を装着するようにしてもよい。なお、フィラーネック20は、フィラーネック本体部25における固定部材70の装着領域において、第1固定具71と第2固定具72のZ軸方向の幅より幅広の溝をZ軸方向に沿って有するので、上記した第1固定具71と第2固定具72で構成される固定部材70は、Z軸方向においてズレを起こすことはない。
【0043】
図4に示す固定部材70Aでは、凹状溝82をフィラーネック本体部25の外周に形成したが、第2固定具72の大径部72Aに凹状溝82に設け、この凹状溝82に弾性部材90を装着するようにしてもよい。こうした構成であっても、弾性部材90は、フィラーパイプ30のフィラーネック本体部25を固定部材70Aが未保持の状態では、外部から力を受けていないいわゆるフリーの状態であることから押し付けを受けておらず、フィラーネック本体部25の外周より内側に位置する形状を採る。その一方、第1固定具71と第2固定具72とでフィラーネック本体部25を取り囲むよう、固定部材70Aがフィラーネック本体部25を保持すると、弾性部材90は、フィラーネック本体部25に接触するよう押し付けを受ける。このようにして弾性部材90は、フィラーネック本体部25とこれを取り囲む上記の両大径部の内周壁との間に介在することから、フィラーネック本体部25の寸法変化(拡径変化や縮径変化)に追従して弾発する。よって、第2固定具72の大径部72Aに設けた凹状溝82に弾性部材90を装着した構成であっても、既述した効果を奏することができる。なお、弾性部材90は、
図8に示したように挟持片91を有するものとできる。