(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
{第1実施形態}
第1実施形態に係る電圧測定装置2Aについて説明する。
図1は電圧測定装置2Aの構成及びその周辺の構成を例示するブロック図である。電圧測定装置2Aは車載される蓄電装置1(図中「BAT」と表記)の開放時電圧を測定する機能を担う。蓄電装置1は、直流バス211を介してオルタネーター4(図中「ALT」と表記)に接続される。
【0011】
オルタネーター4は、エンジン(不図示)の回転によって発電する車載用の発電機として機能し、直流バス211を充電経路として蓄電装置1を充電する。通常、直流バス211には正電位が引加される。但しオルタネーター4が発電する電圧(発電電圧)は、エンジンECU(エレクトロニックコントロールユニット)5によって所定の電圧値となるように制御される。
【0012】
蓄電装置1は例えば鉛蓄電池であってもよいし、電気二重層キャパシタであってもよい。車両負荷3は車載される電気負荷であり、直流バス211を介してオルタネーター4及び蓄電装置1のいずれからも給電され得る。
【0013】
電圧測定装置2Aは、リレー200と、電源回路203と、電圧測定部201,202と、制御回路204とを備える。電源回路203は直流バス211に接続され、直流バス211から引加される電圧Vbを変換して制御回路204に与える。電圧Vbは電圧測定部202(図中で「電圧モニタB」と表記)によって測定される。
【0014】
リレー200は蓄電装置1と直流バス211との間に介在し、端200a,200bを有する。つまり蓄電装置1はリレー200を介して間接的に直流バス211に接続される。端200aは蓄電装置1に接続され、端200bは直流バス211に接続される。リレー200において、端200a,200bの間は、電圧Vbが第1閾値以下のときにクローズ(短絡)し、第2閾値以上のときにオープン(開放)する。但し、第1閾値は第2閾値よりも小さい。
【0015】
制御回路204(図中で「CPU」と表記)は電源回路203から動作電力を受けて動作する。制御回路204は公知のマイクロコンピュータを用いて実現することができる。制御回路204の具体的な第1の動作は、エンジンECU5に対し、オルタネーター4の発電電圧を制御させることである。具体的な第2の動作は、電圧測定部202に対して電源回路203に引加される電圧Vbを測定させ、その値に基づいてリレー200の開閉を制御することである。具体的な第3の動作は、端200aに印加される電圧Vaを、少なくともリレー200が開放状態のときに電圧測定部201(図中で「電圧モニタA」と表記)に測定させることである。
【0016】
図2は第1実施形態に係る電圧測定装置2Aの動作を例示するフローチャートであり、制御回路204による制御を示す。ステップS101〜S104,S106,S108は上述の第2の動作に対応し、ステップS105,S107は上述の第3の動作に対応する。
図2において「バッテリ診断」とは、蓄電装置1の診断を指す。当該診断には、蓄電装置1の開放時電圧の取得が含まれる。
【0017】
ステップS101では一旦、制御回路204によってリレー200がクローズ(ON)される。通常、蓄電装置1はオルタネーター4から直流バス211を介して充電され、直流バス211を介して車両負荷3へ放電するので、車両走行中はリレー200はクローズされている。ステップS101を省略してもよい。
【0018】
ステップS101の実行後、ステップS102において電圧Vbが第2閾値以上か否かが判断される。第2閾値は車両負荷3への給電が十分となる電圧値である。かかる電圧値は車両負荷3の特性から予め設定できる。電圧Vbはオルタネーター4が発電する電圧であり、これが車両負荷3への給電に対して余力があるか否かが判断されるので、
図2ではステップS102において「発電電圧余力あり?」と表記した。当該判断が肯定的であれば(電圧Vbが第2閾値以上であれば)、ステップS103においてリレー200がオープン(OFF)される。これにより、蓄電装置1は車両負荷3、オルタネーター4から遮断され、充放電しなくなる。このようにして、蓄電装置1の開放時電圧(図において「OCV」と表記)の測定が可能となる。
【0019】
ステップS102において判断が否定的であれば(電圧Vbが第2閾値未満であれば)、ステップS108においてリレー200がクローズされる。これは、リレー200がオープンして開放時電圧の測定を開始すると、蓄電装置1から車両負荷3への給電がなくなることによって、車両負荷3への給電が不足することが予測されるからである。かかる給電不足を回避するため、ステップS102という判断工程が設けられる。
【0020】
開放時電圧は、具体的には、リレー200がオープンのときに、電圧測定部201が測定する電圧Vaである。もちろん、電圧測定部201は、リレー200がクローズのときに電圧Vaを測定してもよいが、少なくともリレー200がオープンのときには電圧Vaを測定する。
【0021】
但し、蓄電装置1の開放時電圧は、特に蓄電装置1に鉛蓄電池のような化学電池が採用された場合、安定するまでに時間がかかる。よってステップS104において開放時電圧が安定したと判断されてから、ステップS105においてバッテリ診断が行われる。これは電圧Vaの測定を含む。
【0022】
ステップS104では、電圧Vaの変動が所定範囲に収まることをもって開放時電圧が安定したと判断してもよい。ステップS103によってリレー200がオープンとなってから、開放時電圧が安定するのに必要と想定される所定の時間が経過したことをもって、開放時電圧が安定したと判断してもよい。
【0023】
ステップS104の判断が否定的(開放時電圧が安定していないという判断)であれば、ステップS102が再び実行され、開放時電圧の電圧Vbが第2閾値以上であるか否かが判断される。このように開放時電圧が安定するのを待機している間でも、ステップS102が再び実行されることにより、車両負荷3への給電不足が回避される。
【0024】
同様に、ステップS105によってバッテリ診断を開始した後も、ステップS106によって電圧Vbが第1閾値よりも大きいか否かが判断される。第1閾値は車両負荷3への給電に必要な電圧値である。かかる電圧値は車両負荷3の特性から予め設定できる。バッテリ診断中に電圧Vbが第1閾値以下になれば、バッテリ診断を中止し、蓄電装置1から車両負荷3への給電を可能とすべくリレー200をクローズする。つまり、ステップS106の判断結果が否定的であれば、ステップS108が実行される。
【0025】
バッテリ診断中に電圧Vbが第1閾値よりも大きな値を維持していれば、ステップS106の判断は肯定的となり、ステップS107においてバッテリ診断が終了したか否かが判断される。これは蓄電装置1の診断が、開放時電圧の電圧Vaのみならず、例えば既に取得されていた蓄電装置1の内部抵抗を用いた総合的な判断を必要とするため、必ずしも電圧Vaの取得のみで診断が終了しないことに鑑みて設けられた工程である。ステップS107の判断結果が否定的であれば(バッテリ診断が終了していなければ)ステップS105,S106が繰り返し実行される。このようにバッテリ診断時でも、ステップS106が再び実行されることにより、車両負荷3への給電不足が回避される。
【0026】
ステップS107の判断結果が肯定的であれば(バッテリ診断が終了していれば)、蓄電装置1への充放電を可能にするため、ステップS108においてリレー200がクローズ(ON)される。
【0027】
このように第1閾値を用いて走行中の車両負荷3への給電を優先するので、蓄電装置1の開放時電圧の測定によって車両の走行中の電力が不足することが回避される。
【0028】
以下、上記の動作を時間的推移の観点で説明する。
図3及び
図4はいずれも横軸に時間をとり、電圧Vb、リレー200の動作、バッテリ診断の状況を示すグラフである。但し
図3は診断が中断されない場合を、
図4は診断が中断される場合を、それぞれ示す。
【0029】
図3、
図4のいずれの場合でも時刻t01において、上述の第1の動作に対応した事象が発生する。具体的には制御回路204の制御のもと、エンジンECU5がオルタネーター4に対して所定の電圧値Vb0(>0)で発電するように指示する。これにより、電圧Vbは上昇し、電圧値Vb0に至る。電圧Vbが第2閾値に至るまでは、ステップS102,S108が実行される。第2閾値は電圧値Vb0以下に、例えば電圧値Vb0に設定される。
【0030】
図3、
図4のいずれの場合でも、時刻t1までに電圧Vbが電圧値Vb0に至り、時刻t1でステップS103が実行される。これによりリレー200はOFF(オープン)する。その後、ステップS104,S102,S103が繰り返し実行され、時刻t2においてステップS105が実行される。このように
図3、
図4のいずれの場合でも、ステップS103が実行された後はステップS105が実行されるまで、電圧Vbは第2閾値未満とはならなかった場合を例示する。
【0031】
図3ではステップS107で肯定的な判断が得られるまでの間、電圧Vbが電圧値Vb0を維持し、(第2閾値よりも小さな)第1閾値以下にはならなかった場合を示す。この場合ステップS106の判断結果は否定的となることはない。時刻t3においてステップS107で肯定的な判断が得られ、ステップS108が実行されることによりリレー200はON(クローズ)する。
【0032】
図4では第1閾値として値(Vb0−ΔV)(但しΔV>0)を採用した場合が例示される。ステップS105〜S107が繰り返し実行されている途中で、電圧Vbが低下し、時刻t4において第1閾値に達する。これによりステップS106の判断結果が否定的となり、ステップS108によってリレー200はON(クローズ)する。そしてステップS107で肯定的な判断が得られる前にステップS108が実行されたので、バッテリ診断は中断される。
【0033】
なお、リレー200はノーマリークローズ形であることが望ましい。ノーマリークローズ形であっても上記の動作は妨げられない。バッテリ診断の途中のリレー200がオープンの状態において、オルタネーター4の発電能力が低下、あるいは更に不全となった場合、あるいは電源回路203の機能が低下、あるいは更に不全となった場合、ノーマリークローズ形のリレー200はクローズするので、車両負荷3への給電に蓄電装置1を利用することができる。これは走行中の車両負荷3への給電を妨げない観点で望ましい。
【0034】
{第2実施形態}
第2実施形態に係る電圧測定装置2Bについて説明する。
図5は、電圧測定装置2Bの構成及びその周辺の構成を例示するブロック図である。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様の構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
電圧測定装置2Bは電圧測定装置2Aに対して蓄電装置206(図中「補助電源」と表記)及びダイオード207を追加した構成を有している。ダイオード207は、直流バス211に接続されたアノードと、電源回路203に接続されたカソードとを有する。電源回路203にはダイオード207を介して直流バス211から電圧Vbが引加される。
【0036】
ダイオード207のカソードは蓄電装置206にも接続される。蓄電装置206は例えば電気二重層キャパシタであり、例えばその静電容量は数百μF〜1mF程度である。
【0037】
ダイオード207は直流バス211から蓄電装置206への充電を可能にしつつ、蓄電装置206から直流バス211への放電を阻止する。つまり蓄電装置206は車両負荷3へ給電する機能を有さずに、電源回路203へ給電する機能を有する。
【0038】
電圧測定部202はダイオード207のカソードの電圧を測定する。当該電圧は、第1実施形態と同様に、電源回路203に直流バス211から引加される電圧Vbである。よって電圧測定装置2Bも電圧測定装置2Aと同様に、
図2に示されたフローチャートを実行することができ、以て蓄電装置1の開放時電圧の測定によって車両の走行中の電力が不足することは回避される。
【0039】
さて、車両が停車している間はオルタネーター4は発電しないが、車両負荷3に給電する必要がある。このような給電に必要な電流は暗電流といわれ、例えば無線でドアを開扉する機能のような無線通信に必要とされる。通常、暗電流は蓄電装置1の放電によって得られる。しかし、暗電流は走行中の給電に採用される電流とは異なり、これを維持する必要性は小さい。よってリレー200をオープンにして開放時電圧を測定することができる。
【0040】
しかし停車時にはオルタネーター4から電源回路203には給電されない。よって車両が停車している場合にリレー200をオープンにして開放時電圧を測定しようとしても、制御回路204は動作しない。そこで第2実施形態では、車両が停車している場合にも蓄電装置1の開放時電圧を測定する技術を示す。このような技術を説明するので、
図5では、オルタネーター4に対して発電電圧を指示する(
図1に示された)エンジンECU5を省略している。
【0041】
図6は第2実施形態に係る電圧測定装置2Bの動作を例示するフローチャートであり、制御回路204による制御を示す。ステップS201,S203,S204,S205,S207,S208は、それぞれ
図2のステップS101,S103,S104,S105,S107,S108と同じ工程である。
【0042】
第2実施形態では、第1実施形態のステップS102に代替してステップS202が実行される。ステップS202において、制御回路204は第4の動作として、車両が長期駐車状態にあるか否か(所定時間以上駐車しているか否か)を判断する。ステップS102と類似して、その判断結果が肯定的であればステップS203が実行され、否定的であればステップS208が実行される。
【0043】
ステップS202はイグニッションがオフされ続けて所定時間(例えば1時間)が経過したか否かを基準として判断することもできるし、直流バス211あるいは車両負荷3に流れる電流が所定値以下(暗電流と推測されるレベル)を維持して所定時間が経過したか否かを基準として判断することもできる。イグニッションがオフされたことの検出や、直流バス211あるいは車両負荷3に流れる電流の検出は、周知の技術であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
第2実施形態では、ステップS205でバッテリ診断が実行された後、第1実施形態のステップS106に代替してステップS206a,S206bが実行される。ステップS206aは車両の乗車信号がないか否かを判断する。乗車信号は車両が走行することを予期する信号であり、例えば車両のドアの開扉を示す信号、イグニッションキーの挿入を示す信号を採用することができる。これらの信号の生成、授受も周知の技術であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0045】
乗車信号があればステップS206aの判断は否定的となり、車両の走行が予期されるので、ステップS106と類似してステップS208が実行される。乗車信号がなければステップS206aの判断は肯定的となり、ステップS206bが実行される。ステップS206bでは蓄電装置206の電圧(図中「補助電源電圧」と表記)が正常か否かが判断される。ここで補助電源電圧は電圧Vbと一致するので、電圧測定部202によって測定される。この補助電源電圧は、電源回路203によって変換されて制御回路204に与えられる。よって電圧Vbが、電源回路203によって変換されて制御回路204の動作に必要な電圧値に達すると推定される電圧以上であれば、補助電源電圧は正常であると判断され(肯定的判断)、ステップS207が実行される。そうでなければ(否定的判断)ステップS208が実行される。
【0046】
以上のようにして、
図6のフローチャートでは第2閾値は用いないが、補助電源電圧が正常であると判断される値を第1閾値として採用することにより、停車中でも開放時電圧の測定ができる。
【0047】
以下、上記の動作を時間的推移の観点で説明する。
図7及び
図8はいずれも横軸に時間をとり、乗車状態、リレー200の動作、電源回路203に供給される電源(図中「ユニット電源」と表記)の種類、バッテリ診断の状況を示すグラフである。但し
図7は診断が中断されない場合を、
図8は診断が中断される場合を、それぞれ示す。
【0048】
図7、
図8のいずれの場合でも時刻t02において、イグニッションがオフする(あるいは車両負荷3に流れる電流が暗電流レベルとなる)。そして所定時間が経過して時刻t1においてステップS202の判断結果が肯定的になる。これによりステップS203が実行され、リレー200はOFF(オープン)する。その後、ステップS204,S202,S203が繰り返し実行され、時刻t2においてステップS205が実行される。このように、
図7、
図8のいずれの場合でもステップS203が実行された後は、ステップS205が実行されるまで駐車状態の中断(例えば乗車など)はなかった場合を例示する。
【0049】
図7ではステップS207で肯定的な判断が得られるまでの間、乗車信号がなく、かつ補助電源電圧も正常であった場合を示す。この場合ステップS206a,S206bの判断結果は否定的となることはない。時刻t3においてステップS207で肯定的な判断が得られ、ステップS208が実行されることによりリレー200はON(クローズ)する。
【0050】
図8ではステップS207で肯定的な判断が得られる前に、時刻t5において乗車信号があった、あるいは補助電源電圧が正常でなくなった場合を示す。これによりステップS206aあるいはステップS206bのいずれかの判断結果が否定的となり、ステップS208によってリレー200はON(クローズ)する。そしてステップS207で肯定的な判断が得られる前にステップS208が実行されたので、バッテリ診断は中断される。
【0051】
このように蓄電装置206を補助電源として用いることにより、車両が駐車中であっても電源回路203へ給電され、蓄電装置1の開放時電圧が測定される。しかもステップS206aの判断を採用することにより、車両の走行開始が予期される場合には、リレー200及び直流バス211を介して蓄電装置1が車両負荷3に接続されるので、走行開始を妨げない。更に、ステップS206bの判断を採用することにより、制御回路204の動作不全を回避できる。
【0052】
本実施形態においてもリレー200はノーマリークローズ形であることが望ましい。ノーマリークローズ形であっても上記の動作は妨げられないし、もしも蓄電装置206からの給電が不足して制御回路204の動作不全が発生したとしても、クローズしたリレー200を介して蓄電装置1から電源回路203に給電され、ひいては制御回路204の動作を復活させるからである。
【0053】
{変形例}
第1実施形態において、ステップS106の判断の根拠として、車両負荷3に流れる電流が増加したか否かを採用してもよい。かかる電流の増大はリレー200がオープンしているときの車両負荷3への給電不足を招来するからである。この場合、当該電流が増加したらステップS108が実行され、増加していなければステップS107が実行される。
【0054】
第2実施形態において、蓄電装置206は、
図5で例示されるように電圧測定装置2Bに内蔵されてもよいし、電圧測定装置2Bの外部に設けてもよい。また、蓄電装置206と電圧測定装置2Bとをまとめて、蓄電装置1の開放時電圧を測定する電圧測定システムであると考えることができる。
【0055】
電圧測定装置2A,2Bは、車両に搭載されるリレーボックスに内蔵してもよいし、蓄電装置1とリレーボックスとの間に設けてもよい。
【0056】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0057】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。