(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(オフセット印刷用新聞用紙)
本発明は、基紙と、基紙の両面に塗工層を有するオフセット印刷用新聞用紙に関する。ここで、基紙は、古紙パルプと填料を含み、古紙パルプの含有量は基紙に含まれるパルプ成分の全質量に対して70質量%以上である。塗工層はバインダー成分と顔料を含む。また、本発明のオフセット印刷用新聞用紙の少なくとも一方の面のJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式平滑度は3〜20秒である。
【0014】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙は上記構成を有するため、古紙パルプの含有量が70質量%以上と多い場合であっても、インキ着肉性とインキセット性といった印刷特性と、高速輪転印刷に耐え得る印刷作業性を兼ね備えている。
本発明では、オフセット印刷用新聞用紙の少なくとも一方の面のJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式平滑度は、3〜20秒と低い値となっている。従来は、このような平滑度の低い新聞用紙は用いることができないと考えられていた。しかし、本発明のオフセット印刷用新聞用紙では、所定の構成を有する塗工層を形成し、かつ平滑度を3〜20秒と敢えて低くすることにより、インキ着肉性とインキセット性を両立することに成功した。
さらに、本発明のオフセット印刷用新聞用紙を製造する際には、カレンダー処理を施さないか、もしくは非常に小さなニップ圧におけるカレンダー処理のみが施されている。このため、本発明のオフセット印刷用新聞用紙は十分な厚みを確保することができ、これにより高速輪転印刷に耐え得る印刷作業性を実現することに成功した。
【0015】
また、本発明では、古紙パルプの含有量を70質量%以上とすることができ、100
質量%とすることもできる。これは環境保全の観点からも好ましく、安価な古紙パルプを使用できるといコスト面からも好ましい。通常、古紙パルプは一旦利用されたパルプであり、古紙パルプは脆化していることがあるが、本発明では、特定の塗工層を設け、かつ製造工程を調整することにより、古紙パルプの配合比率を上記のように高めることできる。
【0016】
ここで、印刷特性の指標となるインキ着肉性とは、新聞用紙にオフセット印刷を施した後のインキの発色性や、インキのコントラストの明確性を意味する。また、インキセット性は、新聞用紙へのインキの染み込み易さの指標となるものである。インキセット性が悪いと、印刷工程において印刷機のロール汚れやセットオフ不良等が発生し易くなる。また、印刷後の新聞に触れた際に手指等にインキ汚れが付着する。このように、本願明細書において印刷特性が良いとは、印刷の見た目がよく、かつ印刷後のインキの染み込み性が良いことをいう。
【0017】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の少なくとも一方の面のJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式平滑度は、3〜20秒であればよいが、好ましくは5〜18秒であり、より好ましくは5〜15秒である。なお、本発明では、オフセット印刷用新聞用紙の少なくとも一方の面の平滑度が上記範囲内であればよいが、両面の平滑度が上記範囲内であることが好ましい。本発明では、平滑度を上記範囲内とすることにより、インキセット性を効果的に高めることができる。これにより、製造工程におけるインキ汚れの付着や印刷後のインキ汚れの付着が生じることを抑制することができる。
【0018】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の平滑度は、いわゆるリールサンプル時における平滑度をいう。ここで、リールサンプルとは、抄紙工程の最終工程であるリールパートにおいて、リールスプールで巻き取られることにより得られる大径巻取から採取した上巻きサンプルのことである。なお、リールサンプルは、日々の品質評価、出荷判定等に使用され、枠先サンプルとも呼ばれる。リールパートで得られる大径巻取は、ワインダーパートに運ばれ、紙管に付けて巻き直され、各印刷工場のオフセット輪転印刷機にセットできる巻取の幅と長さに合わせて断裁される。このようにして得られた巻取は、製品巻取、子巻取等と呼ばれ、大きなトイレットロールのような形状である。ワインダーパートで大径巻取を製品巻取に巻き直すとき、大きな張力で巻き取られるため、時間の経過とともに製品巻取は締まり、紙の密度、及び王研式平滑度は大きくなる。巻取サンプルとは、印刷工場等で製品巻取から採取したサンプルのことであり、巻取サンプルの王研式平滑度は、リールサンプルの王研式平滑度対比、巻取り時の張力、巻き長さ、巻取り後の経過時間、および巻取サンプルの採取位置(内側か外側か)等により変動するが、本発明ではリールサンプル時の平滑度の1.5倍として評価をすることができる(即ち、リールサンプル時平滑度をS
rl、巻取サンプル時平滑度をS
rwとした場合に、S
rw=1.5S
rlとする)。
【0019】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の厚みは65〜85μmであることが好ましく、70〜85μmであることがより好ましい。本発明では、オフセット印刷用新聞用紙の厚みを上記範囲内とすることにより、オフセット印刷用新聞用紙にオフセット印刷を施す際に走行時のシワの発生や断紙等のトラブルが発生することを抑制することができる、印刷時の作業安定性を高めることができる。また、オフセット印刷用新聞用紙の厚みを上記範囲内とすることにより、新聞用紙の紙腰(手肉感)を良好なものとすることができる。新聞用紙の紙腰(手肉感)は、印刷後に新聞を読む際に必要とされる。
【0020】
従来は、オフセット印刷用新聞用紙において、安価な古紙パルプが多用される場合にはインキ着肉性を高めるために表面の平滑度を高くする必要があり、カレンダー処理は必須の工程であると考えられていた。しかし、ニップ圧が25kN/m以上のカレンダー処理を施す場合、ニップ圧により新聞用紙の厚みが小さくなるため、必要な厚みを確保するために坪量の高い紙を抄紙する必要があった。このため要求される厚みを有する新聞用紙を製造しようとすると、パルプ原料がより多く必要となり、原料コストがかさむという問題があった。
本発明は、所定の構成を有する塗工層を形成することで、このようなカレンダー処理を不要としたものである。このため、要求される厚みを有する新聞用紙を製造するために必要とされるパルプ原料の使用量を減らすことができ、製造コストの抑制も可能となる。また、本発明ではカレンダー処理工程が不要であるため、新聞用紙の製造スピードを高めることもでき、さらに製造工程における燃費等を抑制することもできる。
【0021】
さらに、本発明のオフセット印刷用新聞用紙は、カレンダー処理(例えば、ニップ圧が25kN/m以上のカレンダー処理)が施されていないため、塗工層の破壊が引き起こされないという利点も有している。これにより新聞用紙の表面強度と剛性を高めることができ、印刷特性や印刷作業性をより効果的に高めることができる。
なお、本発明では、カレンダー処理(例えば、ニップ圧が25kN/m以上のカレンダー処理)は施されないことが好ましいが、非常に小さいニップ圧をかけることによる表面処理(非常に小さいニップ圧をかける表面処理を、ライトニップな表面処理ともいう)等を行ってもよい。すなわち、本発明においては、オフセット印刷用新聞用紙の少なくとも一方の面のJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式平滑度を3〜20秒とすることが容易となる。但し、平滑度が上記範囲内となるような条件であれば、ライトニップな表面処理(ここでライトニップな表面処理とは、ニップ圧が25kN/m未満、好ましくは20kN/m以下、より好ましくは15kN/m以下、さらに好ましくは10kN/m以下、特段好ましくは5kN/m以下)等を施すことは除外されない。
【0022】
また、本発明のオフセット印刷用新聞用紙の坪量は、30〜60g/m
2であることが好ましく、36〜46g/m
2であることがより好ましい。オフセット印刷用新聞用紙の坪量を上記範囲内とすることにより、新聞用紙の強度を高め印刷作業性を向上させることができる。また、オフセット印刷用新聞用紙の坪量を上記範囲内とすることにより、新聞用紙の不透明度も高めることができ、新聞用紙として良好な品質を維持することができる。
【0023】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の密度は、0.30〜0.65g/cm
3であることが好ましく、0.40〜0.60g/cm
3であることがより好ましい。本発明では、オフセット印刷用新聞用紙の製造工程でカレンダー処理を施す必要がないため、上記範囲内の密度を有する新聞用紙を得ることができる。これにより、軽量であるが印刷作業性に優れた新聞用紙を得ることができる。
【0024】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の灰分の含有量は、オフセット印刷用新聞用紙の全質量に対して8〜20質量%であることが好ましく、10〜18質量%であることがより好ましい。オフセット印刷用新聞用紙の灰分は、主に基紙の古紙パルプに由来するものである。通常、基紙に含まれる灰分が多いと、紙が締り易い傾向となり、紙厚を確保することが困難な傾向となる。しかし、本発明では、カレンダー処理を施さなくてもよいか、もしくは非常に小さいニップ圧におけるカレンダー処理のみが施されているため、古紙パルプを主原料として70質量%以上用いた場合であって、且つ灰分の含有量が上述のように多い場合であっても、新聞用紙の厚みを確保することができ、これにより、良好な印刷作業性を実現し得る。なお、オフセット印刷用新聞用紙の灰分は、JIS P 8251に準じて温度525℃、3時間の条件で測定した値とする。
【0025】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の引張強度は、1.50〜3.00kN/mであることが好ましい。また、オフセット印刷用新聞用紙の引裂強度は、300〜500mNであることが好ましい。オフセット印刷用新聞用紙の引張強度と引裂強度を上記範囲内とすることにより、印刷作業性をより効果的に高めることができる。オフセット印刷用新聞用紙の引張強度と引裂強度はJIS P 8113とJIS P 8116に準拠して測定することができる。
【0026】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の白色度は50〜80%であることが好ましく、50〜60%であることがより好ましい。また、オフセット印刷用新聞用紙の不透明度は、90%以上であることが好ましい。白色度はISO 3688に準拠して測定することができ、不透明度はJAPAN TAPPI No.45に準拠して測定することができる。
【0027】
また、本発明のオフセット印刷用新聞用紙の吸油度は80〜160秒であることが好ましく、90〜150秒であることがより好ましく、100〜145秒であることがさらに好ましい。ここで吸油度とは、オフセット印刷用新聞用紙が油を吸収する速度を表し、吸油度の値が大きすぎるとインキセット性が悪化する傾向がある。本発明では、オフセット印刷用新聞用紙の吸油度を上記範囲内とすることにより、良好なインキセット性を発揮することができる。なお、本発明における吸油度は、新聞用紙の表面に、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号を1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間を測定することで評価することができる。
【0028】
(基紙)
古紙パルプの含有量は基紙に含まれるパルプ成分の全質量に対して70質量%以上であればよいが、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。本発明では、古紙パルプの含有量は基紙に含まれるパルプ成分の全質量に対して100質量%であることも好ましい。このように、本発明では、古紙パルプの配合割合が多い場合や、古紙パルプのみがパルプ原料として用いられる場合であっても、印刷特性及び印刷作業性が良好な新聞用紙を製造することができる。また、古紙パルプの多用は資源有効利用の観点や、原料費抑制の観点からも好ましい。
【0029】
本発明で用いる古紙パルプは脱墨古紙パルプであることが好ましい。脱墨古紙パルプは、離解工程、粗選工程、精選工程、脱墨工程及び漂白工程を経て得られる。脱墨古紙パルプの原料となる古紙は、新聞古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙等である。
【0030】
基紙は、古紙パルプ以外の他の原料パルプとして化学パルプや、機械パルプ等を有していてもよい。化学パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)や針葉樹クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプや、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプが挙げられる。また、機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等が挙げられる。
上記の他の原料パルプの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
基紙は、填料を含む。填料としては、例えば、また、ホワイトカーボン、クレー、無定形シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。中でも、ホワイトカーボンであることが好ましい。
填料の含有量は、基紙に含まれるパルプ成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましく、1.0〜10質量部であることがさらに好ましい。填料の含有量を上記範囲内とすることにより、適切な不透明度を保ちながら、パイリングや粉落ちなどの発生を抑制することができる。
【0032】
基紙には、必要に応じて、内添サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、歩留り向上剤、耐水化剤、紫外線吸収剤、ピッチコントロール剤等の公知公用の抄紙用薬品を適宜添加してもよい。これらの薬品は抄紙工程のスラリーに添加されることが好ましい。
基紙に歩留り向上剤が含まれる場合は、歩留り向上剤の含有量は、基紙の全質量に対して、10〜1000質量ppmであることが好ましい。また、基紙にピッチコントロール剤が含まれる場合は、ピッチコントロール剤の含有量は、基紙の全質量に対して、0.05〜5.0質量%であることが好ましい。
【0033】
基紙の厚みは、60〜85μmであることが好ましく、65〜85μmであることがより好ましい。また、基紙の坪量は、25〜60g/m
2であることが好ましく、30〜46g/m
2であることがより好ましい。基紙は紙厚や坪量が均一なものであることが好ましく、このような基紙を用いることにより、カレンダー処理を施さなくても印刷特性に優れたオフセット印刷用新聞用紙を得ることができる。
【0034】
(塗工層)
本発明のオフセット印刷用新聞用紙は、基紙の両面に塗工層を有する。塗工層はバインダー成分と顔料を含む。
【0035】
塗工層に含まれる顔料としては、炭酸カルシウム(単に炭カルともいう)、カオリン、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、サチンホワイト等を挙げることができる。中でも、塗工層は、炭酸カルシウム及びカオリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、炭酸カルシウム及びカオリンの両方を含むことがより好ましい。
【0036】
塗工層は顔料として炭酸カルシウムを含むことが好ましい。炭酸カルシウムは安価であるため製造コストを抑制することからも好ましく用いられる。また、炭酸カルシウムは、高白色度、高不透明度を有する顔料であるため、高品質な新聞用紙を製造することが可能となる。
炭酸カルシウムとしては針状、紡錘状、立方状など各種炭酸カルシウムを用いることができる。製紙工程で製造される苛性化軽質炭酸カルシウムのようなものも含め、重質炭酸カルシウムまで、あらゆる炭酸カルシウムが利用可能である。中でも、軽質炭酸カルシウムは好ましく用いられる。
【0037】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。炭酸カルシウムの平均粒子径を所望の範囲とするために、各種粉砕機を使用することができる。なお、本願明細書における平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(形式:SALD−2000、島津製作所製)にて粒度分布を測定し得られたメディアン径である。
【0038】
顔料として炭酸カルシウムを使用する場合、その炭酸カルシウムの含有量は、塗工層に含まれる顔料の全質量に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。炭酸カルシウムの含有量を上記範囲とすることにより、新聞用紙の不透明度を高めることができ、高品質な新聞用紙を製造することができる。また、炭酸カルシウムの含有量を上記範囲とすることにより、インキセット性をより高めることができ、印刷特性をより良化させることができる。
なお、炭酸カルシウムの含有量は、JIS P 8252に準じて温度900℃、3時間で炭酸カルシウム分を酸化カルシウムに転化させ、その差分を算出することにより求めた値とする。
【0039】
炭酸カルシウムとしては、塗工液の溶液に分散し易いように分散剤等が配合されたものを用いてもよい。一方、塗工層でインキの吸収を良くするためには、炭酸カルシウムを若干凝集させることも有効であるため、分散剤等の使用量を調整することも好ましい。
また、炭酸カルシウムは、合成により製造してもよく、このような場合は、炭酸カルシウムを合成後に乾燥させずに塗工液に混合することが好ましい。
【0040】
塗工層は炭酸カルシウムに加えて、カオリンを有することが好ましい。カオリンの含有量は、塗工層に含まれる顔料の全質量に対して60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下以上であることがさらに好ましい。また、塗工層が炭酸カルシウムとカオリンを含む場合、炭酸カルシウムとカオリンとの配合割合(質量比)は、炭酸カルシウム:カオリン=70:30〜40:60であることが好ましい。
【0041】
塗工層は顔料としてカオリンを含むことが好ましい。カオリンは高扁平な顔料であるため、動摩擦係数を低下させる場合、または平滑度や光沢度を向上させる場合に好適である。また、カオリンは高不透明度を有する顔料であるため、高品質な新聞用紙を製造することが可能となる。
カオリンとしては、一級カオリン、二級カオリン、微粒カオリン、デラミネーテッドカオリン、高白カオリン、エンジニアードカオリン、焼成カオリン、化学構造化カオリンなどが挙げられる。中でも、一級カオリン、二級カオリン、微粒カオリンは安価であり、動摩擦係数を低下させる場合に好適に用いられる。また、デラミネーテッドカオリンは炭酸カルシウムと併用したときの不透明度向上効果が高いためより好ましい。なお、デラミネーテッドカオリンは、層状構造の塊状カオリンを単層に剥がすことで得られる粘土鉱物であって、アスペクト比(長径と厚さとの比)が大きいカオリンである。
【0042】
塗工層はバインダー成分を含有する。バインダー成分として、水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。水溶性高分子化合物としては、例えば、澱粉、水溶性セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド等が挙げられる。なお、水溶性高分子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
バインダー成分としては、澱粉を用いることが好ましい。澱粉としては、一般的に用いられる生澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等のエステル化澱粉、酵素変性澱粉等を用いることができる。
【0044】
また、澱粉以外のバインダー成分としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース類、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、プルラン等の天然水溶性高分子誘導体類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の合成水溶性高分子類等を挙げることができる。
【0045】
塗工層はさらに、バインダー成分としてラテックス樹脂を含有してもよい。ラテックス樹脂としては、例えば、天然ゴムラテックス、合成樹脂ラテックス等が挙げられる。ラテックスとしては、具体的には、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等を挙げることができる。
【0046】
塗工層に含まれるバインダー成分の含有量は、顔料100質量部に対して20質量部以上150質量部未満であることが好ましい。バインダー成分の含有量は、顔料100質量部に対して、20〜100質量部であることがより好ましく、30〜90質量部であることがさらに好ましい。塗工層に含まれるバインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、新聞用紙の表面強度、インキ着肉性及びインキセット性を良化させることができる。
【0047】
また、塗工層には必要に応じて、保水剤、表面サイズ剤、消泡剤類、スライムコントロール剤類、染料類などを適宜配合してもよい。
【0048】
(オフセット印刷用新聞用紙の製造方法)
本発明は、古紙パルプと填料を含む基紙を得る工程と、基紙の両面にバインダー成分と顔料を含む塗工液を塗工して塗工層を形成する工程とを含むオフセット印刷用新聞用紙の製造方法に関するものでもある。ここで、基紙に含まれる古紙パルプの含有量は基紙に含まれるパルプ成分の全質量に対して70質量%以上である。また、上記製造工程を経て製造されるオフセット印刷用新聞用紙の少なくとも一方の面のJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式平滑度は3〜20秒である。
【0049】
古紙パルプと填料を含む基紙を得る工程では、古紙パルプと填料を含むスラリーを抄紙する。抄紙する際の抄紙機としては、ギャップフォーマー式抄紙機を用いることが好ましい。ギャップフォーマー式抄紙機は、1500m/minを超えるような高速で抄紙できる高い操業効率を有し、かつ不透明度の高い基紙を抄紙することができるため好ましく用いられる。ギャップフォーマー式抄紙機では、スライスより噴射された原料スラリーが同時に両面よりワイヤーで挟み込まれるため、表裏差が少なく、基紙の断面を観察したときに表裏対象の紙層構造をとる。このため、両面印刷が施される新聞用紙として好適である。その他の抄紙機としては、例えば、長網式抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等も用いてもよい。
【0050】
基紙を得る工程は、基紙を中性抄紙法で抄造する工程を含むことが好ましい。ここで、中性抄紙法は、スラリーのpHを6〜8.5とした弱酸性から弱アルカリの条件下で行う抄紙法である。中性抄紙法は填料として炭酸カルシウムを使用した場合であっても炭酸カルシウムが溶解しないため、填料に炭酸カルシウムを使用する際に特に好適な方法である。
【0051】
基紙の両面にバインダー成分と顔料を含む塗工液を塗工して塗工層を形成する工程では、上述したようなバインダー成分と顔料を含む塗工液を基紙の両面に塗工する。この際に使用される塗工装置としては、例えば、ゲートロールコーターを挙げることができる。ゲートロールコーターは、後述する塗工量を達成するのに適した設備である。また、ゲートロールコーターは、他の塗工装置に比べ製造される新聞用紙の不透明度を高め得る点においても有利である。
ゲートロールコーターなどのロールコーターは、ロール上で塗工液のフィルムを形成してから基紙に転写するため、基紙の内部にまで塗工液が浸透せず、表面に留まることができる。このため、形成される塗工層は、印刷に対するバリア層として機能する。この塗工層が、印刷時にインキが基紙へ浸透することを抑制するため、良好な印刷後不透明度が得られる。ここで、印刷後不透明度とは、新聞用紙に印刷を施した後の印刷文字等が裏面に透けて見える「透き通し」や、インキ油分の「染み通し」を示す指標である。印刷後不透明度は、JAPAN TAPPI No.45に準拠して測定できる。
なお、ゲートロールコーターはオンマシンのゲートロールコーターであることが好ましく、すなわち、塗工液の塗工はギャップフォーマー式抄紙機で行われることが好ましい。
【0052】
なお、塗工層を形成する工程では、その他の塗工機を使用してもよい。その他の塗工機としては、ツーロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、オフマシンゲートロール、トレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンアプリケーション、ショートドゥエル等のベベルタイプやベントタイプのブレードコーターロッドブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、グラビアコーターなどの装置を挙げることができる。
【0053】
塗工層を形成する工程は、基紙の両面に塗工液を合計固形分量が0.5〜3.0g/m
2となるように塗工する工程であることが好ましい。塗工後の固形分量は、両面の合計分量であり、0.6〜2.8g/m
2であることがより好ましく、1.0〜2.5g/m
2であることがさらに好ましい。塗工後の固形分量を上記範囲内とすることにより、新聞用紙の印刷後不透明度を高めることができる。また、塗工後の固形分量を上記範囲内とすることにより、インキセット性をより効果的に高めることができる。
【0054】
塗工層を形成する工程の後には、塗工液を乾燥させる工程を設けてもよい。このような乾燥工程では、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の各種方式が採用できる。
【0055】
本発明においては、塗工層を形成する工程の後には、カレンダー処理工程を含まないことが好ましい。すなわち、塗工層を形成する工程の後に必要に応じて乾燥工程を設ければ、本発明のオフセット印刷用新聞用紙が完成する。
【0056】
(オフセット印刷用インキ)
オフセット印刷用インキは、顔料、ビヒクル、補助成分を含む。オフセット印刷用インキとしては環境対応型インキを用いることが好ましく、環境対応型インキとは、有機溶剤のうちの少なくとも芳香族炭化水素分をゼロとし、大豆油などの植物由来の油を使用したものである。
【0057】
大豆油インキは、タックの強いインキであり、新聞用紙には表面強度が要求される。さらに、大豆油インキは粘度が高く、新聞用紙に浸透しにくいという面もある。コールドセット型のオフセット印刷においては、溶剤を蒸発させる加熱乾燥を行わないため、紙にインキをすみやかに吸収させる必要がある。このため、オフセット印刷用新聞用紙にはインキセット性が要求される。本発明のオフセット印刷用新聞用紙は上述した構成を有するため、優れたインキセット性を有しており、大豆油インキ等の環境対応型インキを用いた場合であっても良好な印刷特性を発揮することができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、以下において、実施例4、6、7及び8はそれぞれ、参考例4、6、7及び8と読み替えるものとする。
【0059】
(実施例1)
脱墨古紙パルプ(DIP)を離解し、リファイナーでフリーネス120mlCSF(カナダ標準フリーネス)に調製したパルプスラリーを得た。ここでパルプスラリーには、DIPが絶乾パルプ換算で100質量部含まれていた。
次に、内添填料としてホワイトカーボンを1質量部、硫酸バンドを1質量部添加し、紙料を調製した。得られた紙料をギャップフォーマー形式(MHフォーマー)の抄紙機で抄紙した。抄紙pHは7.5であった。
塗液として、炭酸カルシウム65質量部、カオリン35質量部、カラー用澱粉(コーンスターチH:王子コーンスターチ株式会社製及びピラーP−4N:ピラースターチ社製)38質量部、ラテックス(OJ−3000W、JSR株式会社製)1.9質量部となるように混合して顔料分散液を調製し、これをゲートロールコーター(三菱重工製)を使用して乾燥後の塗工量が両面で合計2.5g/m
2となるように塗布した。塗工量を監視しながら自動で基紙と塗工層を合わせた坪量40.0g/m
2となるよう設定した。なお、上記炭酸カルシウムは、炭酸ガスと石灰乳との反応による炭酸ガス法により製造した平均粒子径0.7μmのカルサイト系紡錘状軽質炭酸カルシウムであり、製造後そのまま乾燥することなく塗料に用いた。乾燥後、カレンダー処理を行わずに、実施例1のオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0060】
(実施例2及び3)
針葉樹クラフトパルプ(KP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)及び脱墨古紙パルプ(DIP)の混合割合を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0061】
(実施例4及び5)
基紙の坪量が表1に記載の通りとなるように抄紙条件を調整した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0062】
(実施例6)
顔料分散液の配合割合を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0063】
(実施例7)
顔料分散液の配合割合を表1に記載の通りに変更し、かつ顔料分散液の塗工量を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0064】
(実施例8)
顔料分散液の塗工量を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0065】
(比較例1)
針葉樹クラフトパルプ(KP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)及び脱墨古紙パルプ(DIP)の混合割合を表1に記載の通りに変更し、顔料分散液の配合割合を表1に記載の通りに変更し、かつ顔料分散液の塗工量を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0066】
(比較例2)
顔料分散液を塗工・乾燥後に樹脂ロール/金属ロールよりなる1ニップ×1スタックのソフトニップカレンダー(キュースタ製)にてニップ圧が25kN/mとなるようにカレンダー処理を施した以外は実施例1と同様にして、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0067】
(比較例3)
顔料分散液を塗工・乾燥後に樹脂ロール/金属ロールよりなる1ニップ×1スタックのソフトニップカレンダー(キュースタ製)にてニップ圧が25kN/mとなるようにカレンダー処理を施した以外は実施例2と同様にして、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0068】
(測定方法及び評価方法)
(密度)
常法により、坪量と厚さより求めた。
【0069】
(灰分)
JIS P 8251に準じて温度525℃、3時間を適用した。また、JIS P 8252に準じて温度900℃、3時間で炭酸カルシウム分を酸化カルシウムに転化させ、その差分より炭酸カルシウム分を求めた。
【0070】
(引張強度・引裂強度)
新聞用紙の縦方向(塗工方向)の引張強度をJIS P 8113に準拠して測定した。新聞用紙の横方向の引裂強度はJIS P 8116に準拠して測定した。
【0071】
(王研式平滑度)
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.5−2:2000による空気リーク方式の王研式平滑度計(旭精工社製)を用いて測定した。
【0072】
(白色度)
白色度はJIS P 8148に準拠して測定した。
【0073】
(不透明度)
JAPAN TAPPI No.45に準拠して測定した。
【0074】
(吸油度)
吸油度はオフセット印刷用新聞用紙の表面に、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号を1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間を測定した。
【0075】
(表面強度)
オフセット印刷用新聞用紙を貼り付けたサンプル台紙を作成し、RI印刷試験機にて、印刷インキ(T&K TOKA株式会社製)を0.4cc使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。評価は下記基準で行った。なお、評価が△未満のものは、実用上問題がある。
<評価基準>
◎:ピッキングの発生が全くなく、表面強度が極めて高かった。
○:ピッキングの発生がほとんどなく、実用的な表面強度が確保されていた。
△:ピッキングの発生がややあり表面強度が低かった。
×:ピッキングの発生が多くあり、表面強度が極めて低かった。
【0076】
(インキ着肉性)
オフセット印刷機(三菱リソピアL−BT3−1100)を用いて、カラー4色刷りを行い、10万部印刷を行った後、インキ着肉性を目視評価した。インキ着肉性の評価においては、印刷面のインキの発色性やインキのコントラストの明確性について評価した。評価は下記基準で行った。なお、評価が△未満のものは、実用上問題がある。
<評価基準>
◎:インキ着肉性が極めて高かった。
○:実用的なインキ着肉性が確保されていた。
△:インキ着肉性が低かった。
×:インキ着肉性が極めて低かった。
【0077】
(インキセット性)
オフセット印刷用新聞用紙を貼り付けたサンプル台紙を作成し、RI印刷試験機にて、大豆油インキ(大日本インキ化学工業社製ナチュラリス100)を0.5cc使用して印刷を行った。印刷は、サンプルがインキロールにタッチしたところから一定時間ごとに2〜3cmずつ行い、印刷終了後のインキロールを別の紙面に写し取り、その濃度変化を目視評価した。評価は下記基準で行った。比較例2の試料を基準品とした。 なお、評価が△未満のものは、実用上問題がある。
◎:基準品と比較して、印刷終了後のコールドオフセット印刷用新聞用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度が明確に低い。
○:基準品と比較して、印刷終了後のコールドオフセット印刷用新聞用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度がやや低い。
△:基準品と同等のインキ濃度。
×:基準品と比較して、印刷終了後のコールドオフセット印刷用新聞用紙の表面を転写した片面塗工紙のインキ濃度が高い。
【0078】
(印刷作業性)
オフセット印刷機(三菱リソピアL−BT3−1100)を用いて、カラー4色刷りを行い、10万部印刷を行った後、印刷作業性を評価した。印刷作業性の評価においては、走行時のシワが発生しないか、断紙等のトラブルがないかといった高速輪転印刷に耐え得るかを評価した。評価は下記基準で行った。なお、評価が△未満のものは、実用上問題がある。
<評価基準>
◎:走行時のシワの発生及び断紙の発生が全くなく、印刷作業性が極めて高かった。
○:走行時のシワの発生及び断紙の発生がほとんどなく、実用的な印刷作業性が確保されていた。
△:走行時のシワの発生もしくは断紙の発生がややあり、印刷作業性が低かった。
×:走行時のシワの発生もしくは断紙の発生が多くあり、印刷作業性が極めて低かった。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例で得られたオフセット印刷用新聞用紙においては、インキ着肉性及びインキセット性が良好であった。また、実施例で得られたオフセット印刷用新聞用紙にオフセット印刷を施した場合に、走行時のシワの発生や断紙等のトラブルが抑制されており、印刷作業性が優れていた。一方、比較例で得られたオフセット印刷用新聞用紙においては、インキ着肉性とインキセット性が両立されておらず、印刷作業性も安定していなかった。