(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、タイヤ内面の前記トレッド部に対応する領域にタイヤ周方向に沿って接着層を介して帯状の吸音材を接着した空気入りタイヤにおいて、前記吸音材の接着面に前記タイヤ内面に対して接着される接着領域と前記タイヤ内面に対して接着されない非接着領域とを設け、前記接着領域を前記非接着領域によりタイヤ周方向に複数の区域に分割すると共に、前記吸音材がタイヤ周方向の少なくとも1箇所に欠落部を有し、前記欠落部及び前記非接触領域をタイヤ周方向に互いに間隔をおいて配置するにあたって、前記欠落部及び前記非接触領域の合計数がnであるとき、基準配置角度αを360°/nとし、許容誤差角度βを90°/nとし、前記欠落部及び前記非接触領域の実際の配置角度θをα−β≦θ≦α+βとしたことを特徴とする空気入りタイヤ。
前記吸音材はタイヤ周方向に延在する単一の吸音材であり、その長手方向に直交する断面において少なくとも前記接着面に対応する範囲では均一な厚さを有し、その断面形状が長手方向に沿って一定であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
リム組み時にタイヤ内に形成される空洞部の体積に対する前記吸音材の体積の比率が20%よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記吸音材の硬さが60N〜170Nであり、前記吸音材の引張り強度が60kPa〜180kPaであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤ内面のトレッド部に対応する領域に帯状の吸音材を接着するにあたって、吸音材の接着面に生じるせん断歪みを緩和し、吸音材の剥離を抑制することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、タイヤ内面の前記トレッド部に対応する領域にタイヤ周方向に沿って接着層を介して帯状の吸音材を接着した空気入りタイヤにおいて、前記吸音材の接着面に前記タイヤ内面に対して接着される接着領域と前記タイヤ内面に対して接着されない非接着領域とを設け、前記接着領域を前記非接着領域によりタイヤ周方向に複数の区域に分割
すると共に、前記吸音材がタイヤ周方向の少なくとも1箇所に欠落部を有し、前記欠落部及び前記非接触領域をタイヤ周方向に互いに間隔をおいて配置するにあたって、前記欠落部及び前記非接触領域の合計数がnであるとき、基準配置角度αを360°/nとし、許容誤差角度βを90°/nとし、前記欠落部及び前記非接触領域の実際の配置角度θをα−β≦θ≦α+βとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、タイヤ内面のトレッド部に対応する領域にタイヤ周方向に沿って接着層を介して帯状の吸音材を接着した空気入りタイヤにおいて、吸音材の接着面に接着領域と非接着領域とを設け、接着領域を非接着領域によりタイヤ周方向に複数の区域に分割したことにより、インフレートによる膨張や高速走行時の遠心力による径成長や接地時のトレッド部の変形に起因して吸音材の接着面に生じるせん断歪みを緩和し、吸音材の剥離を抑制することができる。その結果、吸音材に基づく騒音低減効果を長期間にわたって維持することができる。
【0009】
本発明において、非接着領域はタイヤ周方向に対して直交する仮想直線と吸音材の全幅にわたって重なるような形状を有することが好ましい。つまり、非接着領域は主としてタイヤ幅方向に沿って延在するのが良い。これにより、吸音材の接着面に生じるせん断歪みを効果的に緩和することができる。
【0010】
また、接着領域を非接着領域によりタイヤ周方向に複数の区域に分割することに加えて、その接着領域を非接着領域によりタイヤ幅方向に複数の区域に分割することが好ましい。この場合、タイヤ周方向のせん断歪みに加えてタイヤ幅方向のせん断歪みを効果的に緩和することができる。
【0011】
吸音材はタイヤ周方向に延在する単一の吸音材であり、その長手方向に直交する断面において少なくとも接着面に対応する範囲では均一な厚さを有し、その断面形状が長手方向に沿って一定であることが好ましい。これにより、接着面積当たりの吸音材の容量を最大限に大きくし、優れた騒音低減効果を得ることができる。また、このような形状を有する吸音材は加工が容易であるため製造コストも安価である。
【0012】
リム組み時にタイヤ内に形成される空洞部の体積に対する吸音材の体積の比率は20%よりも大きいことが好ましい。このように吸音材の体積を大きくすることで優れた騒音低減効果を得ることができ、しかも大型の吸音材であっても良好な接着状態を長期間にわたって確保することができる。空洞部の体積は、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態でタイヤとリムとの間に形成される空洞部の体積である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。但し、タイヤが新車装着タイヤの場合には、このタイヤが組まれた純正ホイールを用いて空洞部の体積を求めることとする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが新車装着タイヤの場合には、車両に表示された空気圧とする。
【0013】
吸音材の硬さは60N〜170Nであり、吸音材の引張り強度は60kPa〜180kPa以上であることが好ましい。このような物性を有する吸音材はせん断歪みに対する耐久性が優れている。吸音材の硬さは、JIS−K6400−2「軟質発泡材料−物理特性−第2部:硬さ及び圧縮応力−ひずみ特性の求め方」に準拠して測定されるものであって、そのD法(25%定圧縮して20秒後の力を求める方法)により測定されるものである。また、吸音材の引張り強度は、JIS−K6400−5「軟質発泡材料−物理特性−第5部:引張強さ、伸び及び引裂強さの求め方」に準拠して測定されるものである。
【0014】
吸音材はタイヤ周方向の少なくとも1箇所に欠落部を有することが好ましい。このような欠落部を設けることにより、吸音材の接着面に生じるせん断歪みを効果的に緩和することができる。
【0015】
欠落部及び非接触領域はタイヤ周方向に互いに間隔をおいて配置するにあたって、欠落部及び非接触領域の合計数がnであるとき、基準配置角度αを360°/nとし、許容誤差角度βを90°/nとし、欠落部及び非接触領域の実際の配置角度θをα−β≦θ≦α+βとすることが好ましい。これにより、吸音材の接着面に生じるせん断歪みを効果的に緩和することができる。
【0016】
接着層は両面接着テープからなり、その引き剥がし粘着力が8N/20mm〜40N/20mmの範囲にあることが好ましい。これにより、吸音材の固定強度を良好に保ちつつ、吸音材の貼り付け作業及びタイヤ廃棄時の解体作業を容易に行うことが可能になる。両面接着テープの引き剥がし粘着力は、JIS−Z0237に準拠して測定されるものである。即ち、両面粘着シートを、厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせて裏打ちする。この裏打ちされた粘着シートを20mm×200mmの方形状にカットして試験片を作製する。この試験片から剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面を、被着体としてのステンレス鋼(SUS:B304、表面仕上げBA)板に、2kgのローラーを一往復させて貼り付ける。これを23℃、RH50%の環境下に30分間保持した後、引張試験機を用い、JIS Z 0237に準拠して、23℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件にて、SUS板に対する180°引き剥がし粘着力を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す斜視断面図である。
【
図2】
図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す赤道線断面図である。
【
図3】
図3は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材の一例を示す展開図である。
【
図4】
図4は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材の変形例を示す展開図である。
【
図5】
図5は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材の他の変形例を示す展開図である。
【
図6】
図6は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材の他の変形例を示す展開図である。
【
図7】
図7は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材の他の変形例を示す展開図である。
【
図8】
図8は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤを示す赤道線断面図である。
【
図9】
図9は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤを示す赤道線断面図である。
【
図10】
図10は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤを示す赤道線断面図である。
【
図11】
図11は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤを示す赤道線断面図である。
【
図12】
図12は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤを示す赤道線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び
図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1において、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0019】
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面4のトレッド部1に対応する領域には、タイヤ周方向に沿って接着層5を介して帯状の吸音材6が接着されている。吸音材6は、連続気泡を有する多孔質材料から構成され、その多孔質構造に基づく所定の吸音特性を有している。吸音材6の多孔質材料としては発泡ポリウレタンを用いると良い。一方、接着層5としては、ペースト状接着剤や両面接着テープを用いることができる。
【0020】
図3は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材6の一例を示すものである。
図3において、Tcはタイヤ周方向、Twはタイヤ幅方向である。
図3に示すように、吸音材6の接着面(タイヤ径方向外側となる面)には、タイヤ内面4に対して接着される接着領域6Aとタイヤ内面4に対して接着されない非接着領域6Bとが設けられている。非接着領域6Bは、吸音材6がタイヤ内面4に対して固定されていない領域であり、接着層5を局部的に排除した領域であっても良く、或いは、例えば、吸音材6の接着面の全域に接着層5を設けた後で局部的に接着力を無効化した領域であっても良い。非接着領域6Bは吸音材6の長手方向の中間部において該吸音材6を全幅にわたって横断している。その結果、接着領域6Aは非接着領域6Bによりタイヤ周方向に複数の区域に分割されている。
【0021】
上述した空気入りタイヤでは、タイヤ内面4のトレッド部1に対応する領域にタイヤ周方向に沿って接着層5を介して帯状の吸音材6を接着するにあたって、吸音材6の接着面に接着領域6Aと非接着領域6Bとを設け、接着領域6Aを非接着領域6Bによりタイヤ周方向に複数の区域に分割しているので、インフレートによる膨張や高速走行時の遠心力による径成長や接地時のトレッド部1の変形に起因して吸音材6の接着面にせん断歪みを生じた場合に、そのせん断歪みを緩和することができる。つまり、接着領域6Aのタイヤ周方向に長くなるとトレッド部1の周長変化に伴うせん断歪みが大きくなるが、接着領域6Aを非接着領域6Bによりタイヤ周方向に複数の区域に分割することでせん断歪みを低減することができる。その結果、吸音材6の剥離を抑制し、吸音材6に基づく騒音低減効果を長期間にわたって維持することができる。
【0022】
非接着領域6Aは吸音材6において少なくとも1箇所設ける必要があるが、吸音材6の長手方向の複数個所に設けるようにしても良い。また、非接着領域6Aにより分割された接着領域6Aの区画同士のタイヤ周方向の距離Dは10mm〜80mmの範囲に設定することが望ましい。この距離Dが10mm未満であるとせん断歪みの緩和効果が低下し、逆に80mmを超えると吸音材6が動き易くなり、それが耐久性の悪化要因となる。
【0023】
図4は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材6の変形例を示すものである。非接着領域6Bの平面視形状を長方形とした
図3の例とは異なって、
図4の例では非接着領域6Bの平面視形状を平行四辺形としている。いずれの場合においても、非接着領域6Bはタイヤ周方向Tcに対して直交する仮想直線Lと吸音材6の全幅にわたって重なるような形状を有している。つまり、非接着領域6Bはタイヤ幅方向Twに沿って延在して吸音材6を横断している。これにより、吸音材6の接着面に生じるせん断歪みを効果的に緩和することができる。特に、上記仮想直線Lに基づく規定を満足するような長方形や平行四辺形を採用するのが良い。
【0024】
図5は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材6の他の変形例を示すものである。
図5においては、非接着領域6Aが吸音材6の長手方向の2個所に設けられている。勿論、吸音材6に対する非接着領域6Aの配置数は更に増やしても良い。
【0025】
図6及び
図7は本発明の空気入りタイヤの内面に接着される吸音材6の他の変形例を示すものである。
図6及び
図7において、吸音材6の接着面には十字形状を有する非接着領域6Bが形成されている。つまり、非接着領域6Bは吸音材6の長手方向の中間部において該吸音材6を全幅にわたって横断し、かつ吸音材6の幅方向の中間部において該吸音材6を全長にわたって縦断している。その結果、接着領域6Aは非接着領域6Bによりタイヤ周方向に複数の区域に分割され、かつ非接着領域6Bによりタイヤ幅方向に複数の区域に分割されている。この場合、タイヤ周方向のせん断歪みに加えてタイヤ幅方向のせん断歪みを効果的に緩和することができる。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、単一の吸音材6がタイヤ周方向に延在しており、吸音材6はその長手方向に直交する断面において少なくとも接着面に対応する範囲では均一な厚さを有し、その断面形状が長手方向に沿って一定であることが好ましい。特に、吸音材6の長手方向に直交する断面での断面形状は長方形(正方形を含む)であることが好ましいが、場合によっては、接着面側が狭くなるような逆台形にすることも可能である。これにより、接着面積当たりの吸音材6の容量を最大限に大きくし、優れた騒音低減効果を得ることができる。また、このような形状を有する吸音材6は加工が容易であるため製造コストも安価である。
【0027】
上記空気入りタイヤをリム組みしたときタイヤ内面4とリムとの間には空洞部7が形成されるが、その空洞部7の体積に対する吸音材6の体積の比率は20%よりも大きいことが好ましい。このように吸音材6の体積を大きくすることで優れた騒音低減効果を得ることができ、しかも大型の吸音材6であっても良好な接着状態を長期間にわたって確保することができる。なお、吸音材6の幅はタイヤ接地幅の30%〜90%の範囲であることが好ましい。
【0028】
吸音材6の硬さ(JIS−K6400−2)は60N〜170Nであり、吸音材6の引張り強度(JIS−K6400−5)は60kPa〜180kPaであることが好ましい。このような物性を有する吸音材6はせん断歪みに対する耐久性が優れている。吸音材6の硬さ又は引張り強度が小さ過ぎると吸音材6の耐久性が低下することになる。特に、吸音材6の硬さは、好ましくは70N〜160Nとし、より好ましくは80N〜140Nとするのが良い。また、吸音材6の引張り強度は、好ましくは75kPa〜165kPaとし、より好ましくは90kPa〜150kPaとするのが良い。
【0029】
また、
図2に示すように、吸音材6はタイヤ周方向の少なくとも1箇所に欠落部8を有することが好ましい。欠落部8とはタイヤ周上で吸音材6が存在しない部分である。吸音材6の接着面に非接着領域6Bを設けることに加えて、吸音材6に欠落部8を設けることにより、吸音材6の接着面に生じるせん断歪みを効果的に緩和することができる。このような欠落部8はタイヤ周上で1箇所又は3〜5箇所設けるのが良い。つまり、欠落部8をタイヤ周上の2箇所に設けると質量アンバランスに起因してタイヤユニフォミティの悪化が顕著になり、欠落部8をタイヤ周上の6箇所以上に設けると製造コストの増大が顕著になる。
【0030】
なお、欠落部8をタイヤ周上の2箇所以上に設ける場合、吸音材6がタイヤ周方向に途切れることになるが、そのような場合であっても、例えば、両面接着テープからなる接着層5のような他の積層物で複数の吸音材6を互いに連結するようにすれば、これら吸音材6を一体的な部材として取り扱うことができるため、タイヤ内面への貼り付け作業を容易に行うことができる。
【0031】
図8〜
図12は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図2に示す実施形態では吸音材6の長手方向の1箇所に非接着領域6Bを設けているが、
図8に示す実施形態では吸音材6の長手方向の2箇所に非接着領域6Bを設け、
図9に示す実施形態では吸音材6の長手方向の3箇所に非接着領域6Bを設け、
図10に示す実施形態では吸音材6の長手方向の4箇所に非接着領域6Bを設けている。特に、吸音材6の長手方向の1〜3箇所に非接着領域6Bを設けることが好ましい。この場合、せん断歪みの緩和効果と製造コストの抑制とを両立することができる。
【0032】
更に、
図11に示す実施形態では欠落部8をタイヤ周上の3箇所に設け、各吸音材6の長手方向の1箇所に非接着領域6Bを設けている。また、更に、
図12に示す実施形態では欠落部8をタイヤ周上の4箇所に設け、各吸音材6の長手方向の1箇所に非接着領域6Bを設けている。
【0033】
上述のような各種の実施形態において、欠落部8及び非接触領域6Bをタイヤ周方向に互いに間隔をおいて配置するにあたって、欠落部8及び非接触領域6Bの合計数がnであるとき、基準配置角度αを360°/nとし、許容誤差角度βを90°/nとし、欠落部8及び非接触領域6Bの実際の配置角度θをα−β≦θ≦α+βとすることが好ましい。例えば、
図2の実施形態ではθ=180°±45°であり、
図8の実施形態ではθ=120°±30°であり、
図9の実施形態ではθ=90°±22.5°であり、
図10の実施形態ではθ=72°±18°であり、
図11の実施形態ではθ=60°±15°であり、
図12の実施形態ではθ=45°±11.25°である。このように欠落部8及び非接触領域6Bをタイヤ周上において実質的に等間隔で配置することにより、吸音材6の接着面に生じるせん断歪みを効果的に緩和することができる。なお、欠落部8及び非接触領域6Bの配置角度θはタイヤ回転軸Oの周りに測定される角度であって、欠落部8及び非接触領域6Bのタイヤ周方向の中心位置を基準とする角度である。
【0034】
接着層5はその引き剥がし粘着力(JIS−Z0237:2009)が8N/20mm〜40N/20mmの範囲にあることが好ましい。これにより、吸音材6の固定強度を良好に保ちつつ、吸音材6の貼り付け作業及びタイヤ廃棄時の解体作業を容易に行うことが可能になる。つまり、接着層5の剥離力が弱過ぎると吸音材6の固定状態が不安定になり、逆に接着層5の剥離力が強過ぎると吸音材6の貼り付け作業において貼り付け位置を変更することが困難になり、タイヤ廃棄時には吸音材6を引き剥がすことが困難になる。特に、接着層5の引き剥がし粘着力は、好ましくは9N/20mm〜30N/20mm、より好ましくは10N/20mm〜25N/20mmとするのが良い。
【0035】
上述した空気入りタイヤは、カーカス層やインナーライナー層等のタイヤ構成部材を有しているが、そのタイヤ構成部材は帯状部材のタイヤ周方向両端部を互いにスプライスすることで成形され、タイヤ幅方向に延在するスプライス部を有している。このようなタイヤ構成部材を有する場合、そのスプライス部を吸音材6の非接着領域6Bに配置することが好ましい。より具体的には、
図3〜
図7に示すような仮想直線Lに沿ってスプライス部を配置するのが良い。吸音材6をタイヤ内面4に接着する場合、特に両面接着テープを用いる場合には、施工時にスプライス部の段差に両面接着テープが追従できず局部的に浮いてしまうことがある。このような局部的な接着不良がタイヤ走行時のトレッド部の変形に伴って徐々に拡大し、遂には吸音材6が脱落してしまうことがある。これに対して、カーカス層やインナーライナー層に代表されるタイヤ構成部材のスプライス部を吸音材6の非接着領域6Bに配置することにより、上述のような不都合を回避し、吸音材6の接着耐久性を確保することができる。
【実施例】
【0036】
タイヤサイズ215/45R17で、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、タイヤ内面のトレッド部に対応する領域にタイヤ周方向に沿って接着層を介して帯状の吸音材を接着した空気入りタイヤにおいて、吸音材の接着状態を種々異ならせた比較例1及び実施例1〜3のタイヤを製作した。
【0037】
比較例1では、帯状の吸音材のタイヤ周方向の1箇所に欠落部を設け、吸音材の接着面全域を接着領域とした。
【0038】
実施例1では、帯状の吸音材のタイヤ周方向の1箇所に欠落部を設け、
図2のように吸音材の接着面に接着領域と非接着領域とを設け、接着領域を非接着領域によりタイヤ周方向に2つの区域に分割した。欠落部及び非接触領域の配置角度θは180°とした。また、非接着領域の平面視形状は
図3のように長方形とした。
【0039】
実施例2では、帯状の吸音材のタイヤ周方向の1箇所に欠落部を設け、
図2のように吸音材の接着面に接着領域と非接着領域とを設け、接着領域を非接着領域によりタイヤ周方向に2つの区域に分割した。欠落部及び非接触領域の配置角度θは180°とした。また、非接着領域の平面視形状は
図6のように十字形状とし、接着領域を非接着領域によりタイヤ幅方向に2つの区域に分割した。
【0040】
実施例3では、帯状の吸音材のタイヤ周方向の1箇所に欠落部を設け、
図8のように吸音材の接着面に接着領域と非接着領域とを設け、接着領域を非接着領域によりタイヤ周方向に3つの区域に分割した。欠落部及び非接触領域の配置角度θは120°とした。また、非接着領域の平面視形状は
図5のように長方形とした。
【0041】
比較例1及び実施例1〜3において、以下の事項を共通にした。吸音材の長手方向に直交する断面における断面形状は長方形とし、その断面形状をタイヤ周方向に沿って一定とした。リム組み時にタイヤ内に形成される空洞部の体積に対する吸音材の体積の比率は30%とした。吸音材の硬さは80Nとし、吸音材の引張り強度は90kPaとした。接着層の引き剥がし粘着力は16N/20mmとした。
【0042】
これら比較例1及び実施例1〜3の空気入りタイヤをそれぞれリムサイズ17×7JJのホイールに組み付け、空気圧150kPa、荷重5kN、速度150km/hの条件でドラム試験機にて100時間の走行試験を実施した後、吸音材の接着剥がれの有無を目視により確認した。また、耐接着剥がれ性の指標として、上記と同様の走行条件でドラム試験機にて走行試験を実施し、10時間毎に吸音材の接着剥がれの有無を確認し、接着剥がれが生じるまでの走行距離を求めた。耐接着剥がれ性の評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐接着剥がれ性が優れていることを意味する。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、比較例1のタイヤでは100時間の走行試験後において吸音材の接着剥がれが顕著に発生していたが、実施例1〜3のタイヤでは100時間の走行試験後において吸音材の接着剥がれが全く認められなかった。
【0045】
次に、吸音材の硬さ、吸音材の引張り強度、接着層の引き剥がし粘着力、欠落部及び非接触領域の配置角度θを異ならせたこと以外は実施例1又は3と同じ構造を有する実施例4〜11のタイヤを用意した。
【0046】
これら実施例4〜11のタイヤについて、上記と同様の方法により、100時間の走行試験後における吸音材の接着剥がれの有無と耐接着剥がれ性を評価した。その結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、吸音材の硬さ、吸音材の引張り強度、接着層の引き剥がし粘着力を変化させた実施例4〜7のタイヤでは、実施例1又は3と同様に、100時間の走行後において吸音材の接着剥がれが全く認められなかった。また、実施例8と実施例9との対比及び実施例10と実施例11との対比からも明らかなように、欠落部及び非接触領域の合計数をnとし、基準配置角度αを360°/nとし、許容誤差角度βを90°/nとしたとき、欠落部及び非接触領域の実際の配置角度θがα−β≦θ≦α+βを満足する場合に良好な結果が得られていた。