(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施形態
A−1.半導体装置の構成
図1は、第1実施形態における半導体装置100の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置100は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。半導体装置100は、トレンチゲート構造を有する。本明細書において、「トレンチゲート構造」とは、半導体層にトレンチを形成し、その中にゲート電極の少なくとも一部が埋め込まれている構造を言う。本実施形態では、半導体装置100は、縦型トレンチMISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態では、半導体装置100は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0016】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸のうち、X軸は、
図1の紙面左から紙面右に向かう軸である。+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、−X軸方向は、紙面左に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Y軸は、
図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸である。+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、−Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Z軸は、
図1の紙面下から紙面上に向かう軸である。+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、−Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
【0017】
半導体装置100は、基板105と、バッファ層107と、n型半導体層110,112と、p型不純物拡散領域118,119と、p型半導体層114と、n型半導体領域116,117と、を備える。半導体装置100は、さらに、絶縁膜130と、ソース電極141と、ボディ電極144と、ゲート電極142と、ドレイン電極143とを備え、また、トレンチ122と凹部128を有する。なお、n型半導体層110,112、p型半導体層114、を総称して単に半導体層とも呼ぶ。また、ソース電極141及びボディ電極144を第1の電極141,144とも呼び、ドレイン電極143を第2の電極143とも呼び、ゲート電極142を制御電極142とも呼ぶ。
【0018】
半導体装置100の基板105は、X軸およびY軸に沿って広がる板状の半導体である。本実施形態では、基板105は、n型半導体層112及びp型半導体層114と異なる半導体により形成されており、基板105は、サファイア(Al
2O
3)から主に形成されているサファイア基板である。本明細書の説明において、「X(例えば、サファイア(Al
2O
3))から主に形成されている」とは、モル分率においてX(例えば、サファイア(Al
2O
3))を90%以上含有することを意味する。
【0019】
半導体装置100のバッファ層107は、基板105の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる半導体層である。本実施形態では、バッファ層107は、窒化アルミニウム(AlN)から主に形成されている。
【0020】
半導体装置100のn型半導体層110は、バッファ層107の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる板状の半導体層である。n型半導体層110は、窒化物半導体から主に形成されており、本実施形態では、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、n型半導体層110は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。本実施形態では、n型半導体層110に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、5×10
18cm
−3である。また、n型半導体層110の厚さ(Z軸方向の長さ)は、0.5μm(マイクロメートル)である。なお、窒化物半導体としては、窒化ガリウム(GaN)の代わりに、例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)を用いてもよい。
【0021】
半導体装置100のn型半導体層112は、n型半導体層110の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる半導体層である。n型半導体層112は、窒化物半導体から主に形成されており、本実施形態では、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、n型半導体層112は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。本実施形態では、n型半導体層112に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、n型半導体層110に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値よりも小さく、5×10
16cm
−3である。本実施形態では、n型半導体層112の厚さ(Z軸方向の長さ)は、3.5μmである。
【0022】
半導体装置100のp型不純物拡散領域118,119は、n型半導体層112の+Z軸方向側の少なくとも一部の領域であり、p型不純物を含む領域である。ただし、技術の理解を容易とする観点から、本図面において、p型不純物拡散領域118,119は、p型不純物濃度がn型不純物濃度よりも大きい領域を示す。
【0023】
p型不純物拡散領域118,119は、n型半導体領域116,117の下方に位置し、後述するn型半導体領域形成工程において形成される領域である。具体的には、p型不純物拡散領域118は、n型半導体領域116の下方に位置し、p型不純物拡散領域119は、n型半導体領域117の下方に位置する。ここで、「下方」とは、n型半導体層112とp型半導体層114との積層の方向(Z軸方向)において、p型半導体層114よりもn型半導体層112側(−Z軸方向側)に位置し、かつ、積層の方向(Z軸方向)から見たときに、少なくとも一部が重なる位置にあることを示す。また、p型不純物拡散領域118の厚さ(Z軸方向の長さ)は、n型半導体領域116の厚さ乃至濃度と関連を有し、p型不純物拡散領域119の厚さ(Z軸方向の長さ)は、n型半導体領域117の厚さ乃至濃度と関連を有する。本実施形態では、n型半導体領域117の厚さはn型半導体領域116の厚さに比べて大きいため、p型不純物拡散領域119の厚さはp型不純物拡散領域118の厚さに比べて大きい。p型不純物拡散領域118,119は、X軸およびY軸に沿って広がる半導体領域である。本実施形態では、p型不純物拡散領域118,119は、ケイ素(Si)を含有するとともに、マグネシウム(Mg)についても含有する。
【0024】
半導体装置100のp型半導体層114は、n型半導体層112の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる半導体層である。p型半導体層114は、窒化物半導体から主に形成されており、本実施形態では、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、p型半導体層114は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有するp型半導体の層である。本実施形態では、p型半導体層114に含まれるマグネシウム(Mg)濃度の平均値は、4×10
18cm
−3である。p型半導体層114の厚さ(Z軸方向の長さ)は、半導体装置100がトランジスタとしてより適切に動作する観点から0.5μm以上が好ましく、半導体装置100のオン抵抗を抑える観点から2.0μm以下が好ましく、本実施形態では、1μmである。
【0025】
半導体装置100のn型半導体領域116,117は、p型半導体層114の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる半導体領域である。本実施形態において、n型半導体領域116,117は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、n型半導体領域116,117は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。本実施形態では、n型半導体領域116,117は、p型半導体層114の+Z軸方向側の一部に対してケイ素(Si)のイオン注入が行われたことにより形成された領域である。
【0026】
半導体装置100のトレンチ122は、n型半導体層112及びp型半導体層114に形成され、n型半導体層112の厚さ方向(−Z軸方向)に落ち込んだ溝部である。トレンチ122は、p型半導体層114の+Z軸方向側から、p型半導体層114を貫通し、n型半導体層112に至る。本実施形態では、トレンチ122は、n型半導体層112、p型半導体層114に対するドライエッチングによって形成される。
【0027】
半導体装置100の凹部128は、p型半導体層114、n型半導体層112及びn型半導体層110に形成され、p型半導体層114の厚さ方向(−Z軸方向)に落ち込んだ溝である。凹部128は、p型半導体層114の+Z軸方向側からp型半導体層114及びn型半導体層112を貫通し、n型半導体層110に至る。凹部128は、ドレイン電極143を形成するために用いる。本実施形態では、凹部128は、トレンチ122より+X軸方向側に位置する。本実施形態では、凹部128は、p型半導体層114及びn型半導体層112に対するドライエッチングによって形成される。
【0028】
半導体装置100の絶縁膜130は、電気絶縁性を有する膜である。絶縁膜130は、トレンチ122の内側から外側にわたって形成されている。本実施形態では、絶縁膜130は、トレンチ122の内側に加え、p型半導体層114およびn型半導体領域116,117における+Z軸方向側の面、並びに、凹部128の内側にわたって形成されている。つまり、絶縁膜130は、凹部128の表面を保護する膜としても機能する。本実施形態では、絶縁膜130は、二酸化ケイ素(SiO
2)から主に形成されている。本実施形態では、絶縁膜130は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって形成された膜である。
【0029】
絶縁膜130は、コンタクトホール121,124を有する。コンタクトホール121,124は、絶縁膜130を貫通してp型半導体層114に至る貫通孔である。本実施形態では、コンタクトホール121,124は、絶縁膜130に対するウェットエッチングによって形成される。
【0030】
半導体装置100のボディ電極144は、コンタクトホール121に形成された電極である。本実施形態において、ボディ電極144は、p型半導体層114及びn型半導体領域117と接する。ボディ電極144は、p型半導体層114とオーミック接触する。ここで、オーミック接触とは、ショットキー接触ではなく、コンタクト抵抗が比較的低い接触を意味する。本実施形態では、ボディ電極144は、パラジウム(Pd)から主に形成され、半導体層上に形成した後にアニール処理(熱処理)した電極である。
【0031】
半導体装置100のソース電極141は、コンタクトホール121に形成された電極である。本実施形態では、ソース電極141は、p型半導体層114及びボディ電極144の上に形成されており、ソース電極141は、n型半導体領域116とオーミック接触する。本実施形態では、ソース電極141は、チタン(Ti)から形成されている層にアルミニウム(Al)から形成されている層を積層した後にアニール処理(熱処理)した電極である。本実施形態では、ソース電極141とボディ電極144は電気的に接触しているため、同じ電位の電圧が印加できる。
【0032】
半導体装置100のドレイン電極143は、コンタクトホール124に形成された電極であり、n型半導体層110の上(+Z軸方向側)に形成された電極である。ドレイン電極143は、n型半導体層110とオーミック接触する。本実施形態では、ドレイン電極143は、チタン(Ti)から形成されている層にアルミニウム(Al)から形成されている層を積層した後にアニール処理(熱処理)した電極である。
【0033】
半導体装置100のゲート電極142は、絶縁膜130を介してトレンチ122に形成された電極である。本実施形態では、ゲート電極142は、アルミニウム(Al)から主に形成されている。ゲート電極142に電圧が印加された場合、p型半導体層114に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、ソース電極141とドレイン電極143との間に導通経路が形成される。つまり、ゲート電極142に電圧が印加されることにより、n型半導体層110,112及びp型半導体層114を介してソース電極141及びボディ電極144とドレイン電極143との間に流れる電流を制御する。
【0034】
A−2.半導体装置の製造方法
図2は、第1実施形態における半導体装置100の製造方法を示す工程図である。まず、製造者は、基板105を準備する(工程P100)。本実施形態では、基板105は、サファイア(Al
2O
3)から主に形成されている。
【0035】
次に、製造者は、結晶成長を行う(工程P105)。工程P105は、積層工程とも呼ぶ。具体的には、製造者は、(i)基板105の上にバッファ層107を積層し、(ii)バッファ層107の上にn型半導体層110を積層し、(iii)n型半導体層110の上にn型半導体層112を積層し、(iv)n型半導体層112の上にp型半導体層114を積層する。本実施形態では、製造者は、結晶成長の手法として有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いる。
【0036】
図3は、積層工程(工程P105)後の状態を模式的に示す断面図である。本実施形態では、バッファ層107は、窒化アルミニウム(AlN)から主に形成され、n型半導体層110,112及びp型半導体層114は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。n型半導体層110,112は、ケイ素(Si)をドナー元素として含むn型半導体である。また、p型半導体層114は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含むp型半導体である。
図3に示すとおり、(i)基板105の上にバッファ層107が形成され、(ii)バッファ層107の上にn型半導体層110が形成され、(iii)n型半導体層110の上にn型半導体層112が形成され、(iv)n型半導体層112の上にp型半導体層114が形成されている。
【0037】
積層工程(工程P105(
図2参照))後、製造者は、p型半導体層114の一部にn型半導体領域116,117を形成する(工程P110)。工程P110は、n型半導体領域形成工程とも呼ぶ。n型半導体領域形成工程(工程P110)は、イオン注入を行う工程(工程P120)と熱処理を行う工程(工程P130)とを備える。
【0038】
製造者は、p型半導体層114の上からn型不純物をイオン注入する(工程P120)。本実施形態では、製造者は、n型不純物としてケイ素(Si)をp型半導体層114の中にイオン注入する。具体的には、まず、製造者は、p型半導体層114の上に膜210を形成する。
【0039】
図4は、膜210が形成された状態を模式的に示す断面図である。膜210は、イオン注入にて注入される不純物のp型半導体層114における深さ方向の分布を調整するために用いる。つまり、膜210は、p型半導体層114に注入されるドナー元素をp型半導体層114の表面近傍に集めるために用いる。また、膜210は、イオン注入に伴うp型半導体層114における表面の損傷を防止する機能も有する。本実施形態において、膜210として、膜厚が30nmである二酸化ケイ素(SiO
2)の膜を用いる。本実施形態では、製造者は、プラズマCVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)によって膜210を形成する。次に、製造者は、膜210上の一部にマスク220を形成する。
【0040】
図5は、マスク220が形成された状態を模式的に示す断面図である。マスク220は、p型半導体層114のドナー元素を注入しない領域の上に形成される。本実施形態では、マスク220は、ソース電極141をn型半導体領域116とオーミック接触させる位置及びp型不純物拡散領域119を形成させる位置を考慮して、形状が決定されている。本実施形態では、製造者は、フォトレジスト(Photoresist)によってマスク220を形成する。本実施形態では、マスク220の膜厚は、約2μmである。
【0041】
その後、製造者は、p型半導体層114の上から第1のイオン注入を行う。なお、本実施形態では、イオン注入(工程P120)として、第1のイオン注入(工程P122)と第2のイオン注入(工程P124)とを行う。第1のイオン注入(工程P122)は、n型半導体領域117を形成するためのイオン注入であり、第2のイオン注入(工程P124)は、n型半導体領域116を形成するためのイオン注入である。
【0042】
本実施形態では、第1のイオン注入(工程P122)として、製造者は、p型半導体層114に対してケイ素(Si)をイオン注入する。本実施形態において、第1のイオン注入時のトータルドーズ量を2.25×10
15cm
−2とする。また、本実施形態において、p型半導体層114の+Z軸方向側の表面から0.5μmまでの領域におけるケイ素濃度が約4×10
19cm
−3となるように、製造者は、イオン注入時の加速電圧を調整し、複数回に分けてイオン注入を行う。具体的には、以下のように第1のイオン注入(工程P122)を行う。
〈第1のイオン注入条件〉
・1回目
加速電圧:30keV
ドーズ量:0.5×10
14cm
−2
・2回目
加速電圧:50keV
ドーズ量:1×10
14cm
−2
・3回目
加速電圧:100keV
ドーズ量:1×10
14cm
−2
・4回目
加速電圧:150keV
ドーズ量:2×10
14cm
−2
・5回目
加速電圧:200keV
ドーズ量:2×10
14cm
−2
・6回目
加速電圧:250keV
ドーズ量:2×10
14cm
−2
・7回目
加速電圧:350keV
ドーズ量:4×10
14cm
−2
・8回目
加速電圧:500keV
ドーズ量:1×10
15cm
−2
【0043】
第1のイオン注入(工程P122)により、膜210のうちマスク220に覆われていない部分の下において、p型半導体層114にドナー元素が注入された領域としてイオン注入領域117Nが形成される。イオン注入領域117Nにおけるn型不純物濃度は、膜210の材質や膜厚、イオン注入の加速電圧やドーズ量を調整することにより所望の濃度に調整することができる。なお、イオン注入領域117Nは、注入されたn型不純物がドナー元素として機能するように活性化されていないため、n型の導電性を有していない。このため、イオン注入領域117Nは、抵抗が高い領域である。
【0044】
次に、製造者は、膜210の上のマスク220を除去する。本実施形態では、製造者は、ウェットエッチングによってマスク220を除去する。その後、製造者は、膜210上の一部にマスク230を形成する。
【0045】
図6は、マスク230が形成された状態を模式的に示す断面図である。マスク230は、第2のイオン注入(工程P124)において、p型半導体層114のドナー元素を注入しない領域上に形成される。本実施形態では、マスク230は、ソース電極141とドレイン電極143との間に電流が流れる際の抵抗のうち、ソース電極141とp型半導体層114に形成される反転層によるチャネルとの間における抵抗を抑制する点を考慮して、形状が決定されている。具体的には、半導体層の積層の方向(Z軸方向)から見たときに、n型半導体領域116がゲート電極142の少なくとも一部と重なるように、マスク230が形成される。本実施形態では、製造者は、フォトレジスト(Photoresist)によってマスク230を形成する。本実施形態では、マスク230の膜厚は、約2μmである。
【0046】
その後、製造者は、p型半導体層114の上から第2のイオン注入(工程P124)を行う。本実施形態では、製造者は、p型半導体層114に対してケイ素(Si)をイオン注入する。本実施形態において、イオン注入時のトータルドーズ量を1.3×10
15cm
−2とする。また、本実施形態において、p型半導体層114の+Z軸方向側の表面から0.1μmまでの領域におけるケイ素濃度が約1×10
20cm
−3となるように、製造者は、イオン注入時の加速電圧を調整し、複数回に分けてイオン注入を行う。具体的には、以下のようにイオン注入を行う。
【0047】
〈第2のイオン注入条件〉
・1回目
加速電圧:50keV
ドーズ量:6.5×10
14cm
−2
・2回目
加速電圧:100keV
ドーズ量:6.5×10
14cm
−2
【0048】
図7は、第2のイオン注入がp型半導体層114に行われた状態を模式的に示す断面図である。第2のイオン注入により、膜210のうちマスク230に覆われていない部分の下において、p型半導体層114にドナー元素が注入された領域としてイオン注入領域116Nが形成される。
【0049】
イオン注入領域11
7Nと同様に、イオン注入領域11
6Nにおけるn型不純物濃度は、膜210の材質や膜厚、イオン注入の加速電圧やドーズ量を調整することにより所望の濃度に調整することができる。また、イオン注入領域11
6Nについても、注入されたn型不純物がドナー元素として機能するように活性化されていないため、n型の導電性を有していない。このため、イオン注入領域11
6Nについても、抵抗が高い領域である。
【0050】
ここで、イオン注入領域116N,117Nにおけるケイ素濃度は、p型半導体層114内のマグネシウム濃度よりも高いことが好ましく、p型半導体層114内のマグネシウム濃度の2倍以上がより好ましく、p型半導体層114内のマグネシウム濃度の4倍以上がさらに好ましく、p型半導体層114内のマグネシウム濃度の5倍以上がよりいっそう好ましい。また、イオン注入領域116N,117Nにおけるケイ素濃度は、p型半導体層114における結晶性を劣化させない観点から、1×10
22cm
−3以下が好ましい。
【0051】
その後、製造者は、p型半導体層114の上の膜210及びマスク230を除去する。本実施形態では、製造者は、ウェットエッチングによって膜210及びマスク230を除去する。以上により、イオン注入(工程P120(
図2参照))が完了する。
【0052】
イオン注入(工程P120)を行った後、製造者は、イオン注入領域116N,117Nにおけるn型不純物を活性化させるための活性化アニール(熱処理)(工程P130)を行う。工程P130において、製造者は、p型半導体層114及びイオン注入領域116N,117Nを加熱することによって、n型の導電性を有するn型半導体領域116,117をp型半導体層114に形成する。まず、製造者は、p型半導体層114及びイオン注入領域116N,117Nの上にキャップ膜240を形成する。
【0053】
図8は、キャップ膜240が形成された状態を模式的に示す断面図である。キャップ膜240は、加熱に伴うp型半導体層114及びイオン注入領域116N,117Nにおける表面の損傷を防止する機能を有する。本実施形態では、製造者は、スパッタ法によってキャップ膜240を形成する。また、本実施形態では、キャップ膜240は、窒化ケイ素(SiN
X)から主に形成されている。
【0054】
次に、製造者は、p型半導体層114及びイオン注入領域116N,117Nを加熱する。p型半導体層114及びイオン注入領域116N,117Nを加熱する温度は、半導体装置100の耐圧をより向上させる観点から、1000℃以上1400℃以下が好ましく、1050℃以上1250℃以下であることがより好ましい。また、加熱時間は、半導体装置100の耐圧をより向上させる観点から、1分以上10分以下が好ましく、1分以上5分以下が好ましい。本実施形態では、製造者は、次の条件で熱処理を行う。
<熱処理の条件>
雰囲気ガス:窒素
加熱温度:1150℃
加熱時間:4分
【0055】
熱処理の後、製造者は、p型半導体層114及びイオン注入領域116N,117N(n型半導体領域116,117)の上からキャップ膜240を除去する。本実施形態では、製造者は、ウェットエッチングによってキャップ膜240を除去する。以上により、活性化アニール(工程P130(
図2参照))が完了し、同時に、n型半導体領域形成工程(工程P110)が完了する。
【0056】
図9は、活性化アニール(工程P130)が完了した状態を模式的に示す断面図である。活性化アニール(工程P130(
図2参照))により、イオン注入領域116Nがn型半導体領域116となり、イオン注入領域117Nがn型半導体領域117となる。
【0057】
また、イオン注入(工程P120)と熱処理(工程P130)とを経ることにより、つまり、n型半導体領域形成工程(工程P110)を経ることにより、n型半導体領域116,117の下方に位置する領域であって、n型半導体層112の+Z軸方向側の領域に、p型不純物拡散領域118,119が形成される。具体的には、p型不純物拡散領域118は、n型半導体領域116の下方に位置し、p型不純物拡散領域119は、n型半導体領域117の下方に位置する。p型不純物拡散領域118,119は、p型半導体層114に含まれるp型不純物がn型半導体層112に拡散することによって形成された領域である。p型不純物拡散領域118,119に含まれるp型不純物濃度は、イオン注入(工程P120)時の加速電圧やドーズ量、熱処理(工程P130)の加熱温度や加熱時間を調整することにより調整できる。例えば、イオン注入(工程P120)時の加速電圧を高くする、もしくはドーズ量を多くすることにより、p型不純物拡散領域118,119に拡散するp型不純物濃度を高くすることができる。
【0058】
n型半導体領域形成工程(工程P110(
図2参照))の後、製造者は、p型半導体領域114中のマグネシウム(Mg)を活性化させるための活性化アニール(熱処理)を行う(工程P135)。本実施形態では、窒素(N2)流量に対する酸素(O
2)流量の割合が5%の窒素雰囲気下において、700℃5分間の熱処理が行われる。なお、この熱処理条件は、特に、限られず、例えば、この熱処理として、酸素(O
2)を含まない窒素雰囲気下において、900℃10分間行ってもよい。また、p型半導体領域114中のマグネシウム(Mg)を活性化させるための活性化アニール(熱処理)は、p型半導体層114を形成(工程P110)の後、かつ、n型半導体領域形成工程(工程P110)の前に行ってもよい。
【0059】
活性化アニール(工程P135)を行った後、製造者は、ドライエッチングによってトレンチ122及び凹部128を形成する(工程P140)。工程P140を、トレンチ形成工程とも呼ぶ。
【0060】
図10は、トレンチ122及び凹部128が形成された状態を模式的に示す断面図である。製造者は、p型半導体層114を貫通してn型半導体層112に至るまで落ち込んだトレンチ122と、p型半導体層114及びn型半導体層112を貫通してn型半導体層110に至る凹部128を形成する。本実施形態では、製造者は、塩素系ガスを用いたドライエッチングによってトレンチ122及び凹部128を形成する。
【0061】
ここで、n型半導体層112とp型半導体層114との積層の方向(Z軸方向)において、p型不純物拡散領域118,119の底面BS1は、トレンチ122の底面BS2と同じか、もしくはトレンチ122の底面BS2より下(−Z軸方向側)に位置する。本実施形態では、p型不純物拡散領域118,119の底面BS1は、トレンチ122の底面BS2より下(−Z軸方向側)に位置する。ここで、「p型不純物拡散領域118,119の底面BS1」とは、p型不純物拡散領域118,119の領域のうち、最も−Z軸方向側の界面を言う。また、「トレンチ122の底面BS2」とは、トレンチ122のうち、最も−Z軸方向側の面を言う。
【0062】
本実施形態では、トレンチ形成工程(工程P140)は、n型半導体領域形成工程(工程P110)の後に行われている。そして、トレンチ形成工程(工程P140)において、p型不純物拡散領域119の一部と重なる位置にトレンチ122が形成されている。このため、トレンチ122の底面BS2の一部が、p型不純物拡散領域119により形成されている。
【0063】
トレンチ122及び凹部128を形成した後(工程P140)、製造者は、トレンチ122の内側に絶縁膜130を形成する(工程P150)。本実施形態では、製造者は、n型半導体層110,112及びp型半導体層114の露出した表面に対して、ALDによって絶縁膜130を成膜する。
【0064】
その後、製造者は、ソース電極141と、ボディ電極144と、ゲート電極142と、ドレイン電極143とを形成する(工程P160)。具体的には、製造者は、絶縁膜130にコンタクトホール121,124(
図1参照)をウェットエッチングによって形成する。その後、製造者は、コンタクトホール121内にp型半導体層114及びn型半導体領域117と接するボディ電極144を形成し、n型半導体領域116及びボディ電極144の上にソース電極141を形成する。また、製造者は、コンタクトホール124内にn型半導体層110と接するドレイン電極143を形成する。つまり、製造者は、n型半導体層110の上(+Z軸方向側)にドレイン電極143を形成する。このとき、ボディ電極144,ソース電極141,およびドレイン電極143を形成する際にはオーミック接触を得るためのアニール処理(熱処理)を行うが、アニール処理(熱処理)は各電極形成毎に行ってもよいし、ボディ電極144とソース電極141とをまとめて行ってもよい。また、ボディ電極144,ソース電極141,およびドレイン電極143を形成後に一括してアニール処理(熱処理)を行ってもよい。そして、製造者は、トレンチ122において絶縁膜130の上にゲート電極142を形成する。これらの工程を経て、半導体装置100が完成する。
【0065】
A−3.効果
第1実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、p型不純物のイオン注入を行わずに、n型半導体領域形成工程(工程P110)においてp型不純物拡散領域118,119が形成される。このため、第1実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、トレンチ122の底面BS2の外周付近に電界が集中することを抑制できる。この結果として、第1実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、半導体装置の耐圧を向上できる。
【0066】
また、第1実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、n型半導体層112とp型半導体層114との積層の方向(Z軸方向)において、p型不純物拡散領域118,119の底面BS1は、トレンチ122の底面BS2と同じか、もしくはトレンチ122の底面BS2より下(−Z軸方向側)に位置する。このため、第1実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、トレンチ122の底面BS2の外周付近に電界が集中することを、より効果的に抑制できる。
【0067】
また、第1実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、トレンチ122の底面BS2の一部が、p型不純物拡散領域119により形成されている。このため、第1実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、トレンチ122の底面BS2の外周付近に電界が集中することを、さらに効果的に抑制できる。
【0068】
以下、上述のn型半導体領域形成工程(工程P110)を経ることによって、n型半導体層112にp型不純物拡散領域118,119が形成されることを裏付ける評価試験の結果を示す。
【0069】
A−4.評価試験
評価試験には、以下の試料を用いた。試験者は、試料1から試料3を用意した。具体的には、試験者は、まず、第1実施形態と同じ方法により、基板105を準備して(工程P105)、結晶成長を行った(工程P110)。その後、試験者は、(i)イオン注入(工程P120)を行わず、熱処理(工程P130)を行った試料1と、(ii)イオン注入(工程P120)を行い、熱処理(工程P130)を行わない試料2と、(iii)イオン注入(工程P120)を行った後、熱処理(工程P130)を行った試料3とを用意した。つまり、試料1から試料3は以下のような関係となる。なお、試験者は、イオン注入として、上述した(i)n型半導体領域117を形成するための第1のイオン注入(工程P122)と、(ii)n型半導体領域116を形成するための第2のイオン注入(工程P124)との両方を行った。
・試料1:イオン注入無し、熱処理有り
・試料2:イオン注入有り、熱処理無し
・試料3:イオン注入有り、熱処理有り
【0070】
図11は、評価試験の結果を示す図である。
図11は、各試料のp型半導体層114及びn型半導体層112におけるマグネシウム(Mg)の不純物濃度を二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)により測定した結果を示す。
図11において、p型半導体層114、n型半導体層112の−Z軸方向の深さ(μm)を示し、縦軸はマグネシウム(Mg)の濃度(cm
−3)を示す。深さ0μmは、p型半導体層114(
図1参照)の+Z軸方向側の表面である。
【0071】
図11から、以下のことが分かる。つまり、深さが0μmから約1μmまでの領域は、マグネシウム濃度が約4×10
18cm
−3でほぼ一定の領域であり、p型半導体層114に相当する領域である。また、深さが約1.0μm以上の領域は、n型半導体層112に相当する領域である。
【0072】
図11に示される結果から、イオン注入を行った後に熱処理を行った場合(試料3)は、マグネシウム(Mg)のn型半導体層112への拡散が起こっていることが分かる。また、本実施形態におけるn型半導体層112のケイ素濃度の平均値が5×10
18cm
−3であるところ、少なくとも深さが2μmの領域までは、n型半導体層112のマグネシウム濃度は5×10
18cm
−3よりも高いことが分かる。つまり、n型半導体層112の+Z軸方向側の界面から1μmの領域では、マグネシウム濃度のほうがケイ素濃度よりも高いことが分かる。
【0073】
イオン注入を行わない場合(試料1)や、熱処理を行わない場合(試料2)においては、マグネシウム(Mg)のn型半導体層112への拡散が僅かながら
図11から見られる。しかし、試料1,2の拡散は、n型半導体層112の電気的特性に影響を与えるレベルではないことや、イオン注入を行った後に熱処理を行った場合(試料3)に比べて拡散量が十分に小さいことが、
図11から分かる。
【0074】
以上のように、評価試験の結果から、n型半導体層112及びp型半導体層114が上述のn型半導体領域形成工程(工程P110)を経ることによって、n型半導体層112のp型不純物拡散領域118,119が形成されることが分かる。
【0075】
B.第2実施形態
図12は、第2実施形態における半導体装置200の構成を模式的に示す断面図である。第2実施形態の半導体装置200は、第1実施形態の半導体装置100と比較して、半導体装置100のソース電極141とボディ電極144との機能を備えるソース電極141Aを備えている点が異なるが、それ以外は同じである。第2実施形態のソース電極141Aは、−Z軸方向側から順に、パラジウム(Pd)から形成されている層と、チタン(Ti)から形成されている層と、アルミニウム(Al)から形成されている層とを積層した後、アニール処理(熱処理)した電極である。なお、ソース電極141Aは、チタン(Ti)から形成されている層と、アルミニウム(Al)から形成されている層とを積層せず、パラジウム(Pd)から形成されている層のみとしてもよい。
【0076】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、p型不純物のイオン注入を行わずに、トレンチ122底面の外周付近に電界が集中することを抑制できる。また、第2実施形態の製造方法においては、第1実施形態の製造方法のように、ソース電極141とボディ電極144とを別々に形成する必要がなく、ソース電極141Aを一度に形成できるため、工数を削減できる。
【0077】
C.第3実施形態
図13は、第3実施形態における半導体装置300の構成を模式的に示す断面図である。第3実施形態の半導体装置300は、第1実施形態の半導体装置100と比較して、トレンチ122の底面BS2の一部がp型不純物拡散領域119により形成されていない点が異なるが、それ以外は同じである。つまり、半導体装置300のn型半導体領域117Aの形成位置が、半導体装置100のn型半導体領域117の形成位置と異なるため、半導体装置300のp型不純物拡散領域119Aの形成位置が、半導体装置100のp型不純物拡散領域119の形成位置と異なるが、それ以外は同じである。
【0078】
第3実施形態の製造方法においても、第1実施形態と同様に、p型不純物のイオン注入を行わずに、トレンチ122底面の外周付近に電界が集中することを抑制できる。なお、第1実施形態の半導体装置100は、トレンチ122の底面BS2の一部がp型不純物拡散領域119により形成されているため、トレンチ122の底面BS2の外周付近に電界が集中することを、より効果的に抑制できる。しかし、第3実施形態の製造方法によれば、トレンチ122の底面BS2の一部がp型不純物拡散領域119により形成されていないため、トレンチ形成工程の後に、n型半導体領域形成工程を行うことができる。このため、製造工程を柔軟に変更できる。
【0079】
D.第4実施形態
図14は、第4実施形態における半導体装置400の構成を模式的に示す断面図である。第4実施形態の半導体装置400は、第3実施形態の半導体装置300と比較して、(i)n型半導体領域116が形成されていないことにより、p型不純物拡散領域118が形成されていない点が異なり、(ii)半導体装置400のn型半導体領域117Bの形成位置が、半導体装置300のn型半導体領域117Aの形成位置と異なるが、それ以外は同じである。第4実施形態では、トランジスタをオンにできるように、Z軸方向から見たときに、ゲート電極142とn型半導体領域117Bとの少なくとも一部が重なるように、n型半導体領域117Bの形成位置が決定されている。
【0080】
第4実施形態の製造方法においても、第1実施形態と同様に、p型不純物のイオン注入を行わずに、トレンチ122底面の外周付近に電界が集中することを抑制できる。また、第4実施形態の製造方法では、第1実施形態の製造方法のように、第1のイオン注入及び第2のイオン注入を行わず、n型半導体領域117Bを形成するための第1のイオン注入のみを行えばよいため、工程数を削減できる。
【0081】
E.第5実施形態
図15は、第5実施形態における半導体装置500の構成を模式的に示す断面図である。第5実施形態の半導体装置500は、第1実施形態の半導体装置100と比較して、(i)基板105とバッファ層107とを備えず、(ii)n型半導体層110の変わりに、窒化ガリウム基板110Aを用い、(iii)窒化ガリウム基板110Aの−Z軸方向側の面にドレイン電極143Aを備える点が異なるが、それ以外は同じである。本実施形態では、窒化ガリウム基板110Aのケイ素濃度は1.0×10
18cm
−3である。また、本実施形態では、n型半導体層112のケイ素濃度は1.0×10
16cm
−3であり、膜厚は10μmである。
【0082】
第5実施形態では、第1乃至第4実施形態とは異なり、窒化ガリウム基板110Aとその上の半導体層とが同じ材料からなる半導体により形成されている。このように、第1乃至第4実施形態と異なる基板を用いる場合、p型半導体層114に含まれるp型不純物がn型半導体層112に拡散する程度が異なるため、形成されるp型不純物拡散領域118,119におけるp型不純物の濃度も異なる。そこで、第5実施形態では、p型不純物拡散領域118,119に拡散するp型不純物濃度をn型半導体層112の濃度に応じた値にするため、イオン注入(工程P120)時のドーズ量を多くしている。具体的には、第1のイオン注入(工程P122), 第2のイオン注入(工程P124)とも、加速電圧は同じでドーズ量を2倍にしてイオン注入を行う。
【0083】
第5実施形態の製造方法においても、第1実施形態と同様に、p型不純物のイオン注入を行わずに、トレンチ122の底面BS2の外周付近に電界が集中することを抑制できる。
【0084】
F.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0085】
本発明が適用される半導体装置は、上述の実施形態で説明した縦型トレンチMISFETに限られない。本発明が適用される半導体装置は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのトレンチゲート構造を有し、制御電極で反転層を形成する原理を用いて電流を制御する半導体装置であってもよい。
【0086】
上述の実施形態において、p型不純物としてマグネシウム(Mg)を用いている。しかし、本発明はこれに限らない。p型不純物として、例えば、ベリリウム(Be)や、炭素(C)や、亜鉛(Zn)を用いてもよい。
【0087】
上述の実施形態において、n型不純物としてケイ素(Si)を用いている。しかし、本発明はこれに限らない。n型不純物として、例えば、酸素(O)や、ゲルマニウム(Ge)を用いてもよい。
【0088】
上述の実施形態において、基板の材料は、サファイア(Al
2O
3)や窒化ガリウム(GaN)に限らず、例えば、ケイ素(Si)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)および炭化ケイ素(SiC)などの他の半導体であってもよい。同様に、半導体層の材料は、窒化ガリウム(GaN)に限らず、例えば、ケイ素(Si)や、炭化ケイ素(SiC)などの他の半導体であってもよい。
【0089】
第1実施形態において、イオン注入(工程P120)として、第1のイオン注入(工程P122)と第2のイオン注入(工程P124)の2回のイオン注入を行っているが、イオン注入の回数は、1回であってもよいし、3回以上であってもよい。また、イオン注入の条件(例えば、加速電圧およびドーズ量など)は、ドナー元素を注入する具合に応じて適宜調整できる。
【0090】
上述の実施形態において、絶縁膜の材質は、電気絶縁性を有する材質であればよく、二酸化ケイ素(SiO2)の他、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)などの少なくとも1つであってもよい。絶縁膜は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。絶縁膜を形成する手法は、ALDに限らず、ECRスパッタであってもよいし、ECR−CVDであってもよい。
【0091】
上述の実施形態において、各電極の材質は、上述の材質に限らず、他の材質であってもよい。例えば、ボディ電極144およびソース電極141Aに用いられているパラジウム(Pd)の変わりに、ニッケル(Ni)や白金(Pt)を用いてもよい。
【0092】
上述の実施形態において、半導体装置100は、n型半導体層として、n型半導体層110とn型半導体層112との2層を備えている。しかし、本発明はこれに限られない。n型半導体層は1層でもよく、3層以上であってもよい。
【0093】
上述の実施形態において、n型半導体層112とp型半導体層114との積層の方向(Z軸方向)において、p型不純物拡散領域118,119の底面BS1は、トレンチ122の底面BS2と同じか、もしくはトレンチ122の底面BS2より下(−Z軸方向側)に位置する。しかし、本発明はこれに限られない。n型半導体層112とp型半導体層114との積層の方向(Z軸方向)において、p型不純物拡散領域118,119の底面BS1は、トレンチ122の底面BS2より上(+Z軸方向側)に位置してもよい。