特許第6520809号(P6520809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520809
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20190520BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20190520BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   A61F13/475 112
   A61F13/47 100
   A61F13/53 200
   A61F13/47 300
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-89372(P2016-89372)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-196151(P2017-196151A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝井 欣哉
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−104021(JP,A)
【文献】 特開2014−076233(JP,A)
【文献】 特開2010−088538(JP,A)
【文献】 特開2011−177310(JP,A)
【文献】 特開2006−346439(JP,A)
【文献】 特開2001−190592(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00953326(EP,A2)
【文献】 特開平11−313851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、
該吸収体の一方面側に重ねられる液透過性のトップシートと、
前記吸収体の他方面側に重ねられる液不透過性のバックシートと、
着用者への着用状態において着用者の腹側から股下を通り背側にわたる第1の方向に延在し、前記トップシートの前記第1の方向に直交する幅方向両側において、少なくとも一部が前記トップシートに接合される一対のサイドシートであって、前記トップシートとの接合箇所よりも幅方向内側に、前記トップシートに接合されていない起立領域を備え、該起立領域には前記第1の方向に伸縮するゴム状弾性部材が設けられて立体ギャザーを形成するサイドシートとを具える吸収性物品であって、
前記吸収体は、着用者への着用状態において前記股下に位置する部分における両端が、他の部分に比べて幅方向内側に位置するよう幅が狭くなった幅狭部を具え、
前記吸収体の前記幅狭部の幅方向中央に、前記第1の方向に伸びる折れ曲がり部が形成され、この折れ曲がり部を頂部として前記吸収体の幅狭部の両端間が突出して山形に折れ曲がると共に当該山形の吸収体の幅方向側縁部から前記サイドシートが立体ギャザーとして立ち上がり、幅方向に沿ってW字状の断面形状となって、
前記サイドシートの幅方向内側端は、前記吸収体の幅狭部の幅方向端上もしくは、前記幅狭部の幅方向端よりも幅方向内側に位置するとともに、前記起立領域は、前記幅狭部の幅方向端よりも幅方向外側から延在することを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記折れ曲がり部は、前記吸収体が前記折れ曲がり部により助長される折れ曲がり方向に折れ曲がると、前記幅狭部の幅方向端で、前記バックシートが前記折れ曲がり方向と逆方向に折れ曲がることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記サイドシートは幅方向外側から接合領域、前記起立領域に区分され、前記接合領域は、前記トップシートもしくは前記バックシートに接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記サイドシートは、少なくとも前記吸収体の最大幅部分において、前記トップシートに接合されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の幅狭部の側端から前記トップシートとの前記サイドシートの接合個所までの幅と前記立体ギャザーの高さとの和が前記吸収体の幅狭部の幅の1/2よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿などの体液を吸収する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
軽度の尿漏れなどに対処する吸収性物品として、尿パッドが知られている。尿パッドは、使い捨ておむつや下着、尿パッドを保持用に作られたホルダーパンツと呼ばれる布製のパンツ型外装体に取り付けられ、尿等の体液を吸収するものである。尿パッドは、使い捨ておむつや下着、ホルダーパンツの股下部に着脱可能に取り付けられ、体液を吸収した際は、この尿パッドのみを交換するという使用方法で用いられることが多い。このため、尿パッドには様々な脚の動きに対応し、かつ大量の排尿などをすばやくしっかりと吸収する機能が求められる。
【0003】
尿パッドは、尿などの粘性の低い体液をすばやく大量に吸収しなければならないため、股下などはしっかりと覆う程度の幅の吸収体が配置されており、漏れを防止するために股幅よりも広いものも多い。
【0004】
また、股下において吸収体がより肌に密着するように工夫がなされているものもある。例えば、特許文献1には、使い捨ておむつであり、尿パッドではないが、吸収体に予め3本のスリットを入れておき、股下の左右の脚の引き寄せによってW字状に変形し、股下に密着するようにしたものが記載されている。
【0005】
また、脚の様々な動きによって、尿パッドと肌との間に隙間ができると、その隙間から体液が漏れやすい。そこで、このような体液漏れを防止するために、サイドシートを吸収体本体の側縁部から立ち上がるようにした立体ギャザー構造が適用されている。この立体ギャザー構造によるサイドシートが、吸収体本体の端に位置することにより、立体ギャザー部分が堰となって、体液の漏れを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−177310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された股下部に3本のスリットを設け、折り曲げる構成では、股下部分の幅方向両端部分は、肌に対して谷折れに吸収体が折れ曲がった状態となる。このため、吸収体が幅方向で4枚重なる部分が出てきてしまい、着用者によっては股下部分のモコモコ感やごわつきを強く感じ、装着感を低下させてしまう場合があった。この違和感の抑制のために、ポリマーの配分を調整しているが、長時間の着座など左右の脚の引き寄せが頻繁な場合、ポリマーの調整程度では不十分な場合があった。
【0008】
また、このようにW字状に吸収体が折れ曲がるものに対して、立体ギャザーのサイドシートを適用しても次の問題があった。吸収体の側端部に設けられたサイドシートの立体ギャザー立ち上がり位置によっては、吸収体がW字に折れ曲がることによって、立体ギャザー部分が肌に対して寝てしまう場合があった。このように、吸収体の変形に伴って、立体ギャザーによるせき止め機能を十分に発揮できない場合があった。
【0009】
しかも、股下部分の狭くなった吸収体の部分にその幅方向に並ぶ3本のスリットを形成しているため、吸収体の強度が低下してしまい、着用者への着用状態において吸収体が適正な形状から崩れてしまい、体液の漏れにつながってしまう可能性もあった。
【0010】
本願発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、様々な脚の動きによっても肌に密着するとともに、立体ギャザー部分におけるせき止め機能も十分に発揮できる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の吸収性物品は、吸収体と、吸収体の一方面側に重ねられる液透過性のトップシートと、吸収体の他方面側に重ねられる液不透過性のバックシートと、着用者への着用状態において着用者の腹側から股下を通り背側にわたる第1の方向に延在し、トップシートの前記第1の方向に直交する幅方向両側において、少なくとも一部がトップシートに接合される一対のサイドシートであって、トップシートとの接合箇所よりも幅方向内側に、トップシートに接合されていない起立領域を備え、この起立領域には第1の方向に伸縮するゴム状弾性部材が設けられて立体ギャザーを形成するサイドシートとを具えた吸収性物品であって、吸収体は、着用者への着用状態において、前記股下に位置する部分における両端が、他の部分に比べて幅方向内側に位置するよう幅が狭くなった幅狭部を具え、前記サイドシートの幅方向内側端は、吸収体の幅狭部の幅方向端上もしくは、幅狭部の幅方向端よりも幅方向内側に位置するとともに、起立領域は、幅狭部の幅方向端よりも幅方向外側から延在することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用された尿パッドをその肌当接面側から見た一部破断平面図である。
図2図1に示した尿パッドを分解状態で表す立体投影図である。
図3図1に示した尿パッドの模式的斜視図である。
図4図1に示した尿パッドを非肌対向面側から見た平面図である。
図5図1のV−V線で切断した状態に対応した尿パッドの断面図である。
図6図1のVI−VI線で切断した状態に対応した尿パッドの断面図である。
図7】着用者への着用状態における尿パッドの股下部分を幅方向に沿って切断した模式的部分斜視図である。
図8図7に示した尿パッドの切断端面を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明が適用された尿パッドの一実施形態について、図1から図8を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明による尿パッドは、例えば、テープ型おむつ、パンツ型おむつ、あるいはホルダーパンツ等に装着され、これらと併せて着用者に着用される。
【0015】
本実施形態において、「長手方向」とは、尿パッドにおいて、前身頃から後身頃にわたる第1の方向をいう。すなわち、着用者が本実施形態の尿パッド等を装着した際に腹側から股下を通り、背側にわたる方向をいう。また、「幅方向」とは、尿パッドの一方の側端と他方の側端とをつなぐ方向、すなわち長手方向(第1の方向)に平面的に直交する第2の方向を意味する。図において、長手方向はY軸で示し、幅方向はX軸で示す。
【0016】
尿パッド12をその肌当接面側から見た平面形状を図1に示し、その非肌対向面側の平面形状を図4に示し、図1中のV−V線およびVI−VI線に沿った断面構造を図5および図6に示す。本実施形態における尿パッド12は細長い矩形のシート状をなし、着用者への着用状態では、腹側から股下を通って背側まで延在する。以下、尿パッド12の腹側に位置する部分を前身頃12F,背側に位置する部分を後身頃12R,股下に位置する部分を股下部12Cと便宜的に記述する。尿パッド12の長手方向に沿った股下部12Cの長さLCは、尿パッド12の全長Lの20〜70%ほどである。この関係は尿パッド12の用途(軽失禁用パッド、おむつにおける尿パッド部分など)に応じて、尿パッド12自体の長さが異なるためである。したがって、股下部12Cの長さLCは、着用者の股下を覆う上での適当な長さであるとも定義できる。
【0017】
この尿パッド12は、液不透過性のバックシート19とこのバックシート19よりも少し小さめの寸法形状を持つ液透過性のトップシート20と細長いシート状をなす吸収体21とを備えた吸収性本体10と、この吸収性本体10の肌対向面側の幅方向左右両側にその長手方向全体にわたって重ね合された液不透過性の左右一対のサイドシート22とで主要部が構成される。本実施形態の尿パッド12は、腹側から背側にわたる長手方向が、幅方向に比べて長い略長方形状としたが、これに限らず、長手方向の長さと幅方向の長さが同程度の略正方形や、後述する吸収体21の輪郭形状に対応させたりすることすることもできる。要するに、尿パッド12の寸法および輪郭形状など、着用対象者の体形などに応じて適宜選択可能である。
【0018】
吸収体21はトップシート20とバックシート19の間に配置され、トップシート20を透過した尿等の体液を吸収し、保持する。吸収体21はこのような機能を果たすために、吸収性材料によって構成されており、吸収性材料は、吸収機能を有する公知の材料を採用することができる。具体的には、例えばフラッフパルプ、高吸水性ポリマー(SAP)、又は親水性シートを用いてもよい。これらの吸収性材料は1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用して用いてもよい。本実施形態においては、フラッフパルプに高吸水性ポリマー(SAP)を混ぜ込んだものをマット状にし、単層、または複数層を積層したものを用い、全体をティシュ23で被覆している。
【0019】
吸収体21は、股下部12Cに対応した部分の幅が前身頃12Fおよび後身頃12Rに対応した部分の幅に比べて狭くなった幅狭部21cを有する。すなわち、前身頃12Fおよび後身頃12Rに対応した吸収体21の部分の幅がほぼ等しく、吸収体21の幅狭部21cがその中央側に向けてえぐれた砂時計型を有し、この幅狭部21cの最小幅WCは、着用者の股間と同じかやや広い程度である。このように、吸収体21の幅狭部21cについては、その幅方向両端部を大きくえぐった形とすることで、装着した際に、吸収体21の幅狭部21cが股間内に収まり、股間における吸収体21のもたつきを抑制することができる。このような観点から、尿パッド12自体の輪郭形状を吸収体21の輪郭形状に適合した砂時計型にすることも有効である。幅狭部21cの形状は、任意の曲率の円弧と直線とを組み合わせたり、複数の直線を組み合わせたり、単一曲率の円弧にて形成することが可能である。尿パッド12自体の幅Wは、着用者の股間の幅よりも広いものであり、股間および、股間からつながる腹側、背側を十分に覆うことができる。
【0020】
次に、トップシート20は、着用者の股下の肌に直接接し、尿等の体液を吸収体21に透過させるためのものである。そのため、トップシート20は、肌触りのよい液透過性材料で形成されている。具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロンの如き熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることができる。
【0021】
バックシート19は、吸収体21に吸収された液体が、外部に漏れ出すことを防止するための部材である。したがって、バックシート19は液不透過性材料、すなわち撥液性材料にて構成され、例えばポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムを採用することができる。また、液を漏らさずに通気性を確保するために、0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0022】
また、図6の断面図に示されるように、トップシート20は、吸収体21の幅方向左右外側まで延出し、吸収体21の端を包み込むようになっている。また、トップシート20の一部、すなわち、肌非対向面側に位置する部分とバックシート19とを接合することで、トップシート20とバックシート19とで吸収体21を内包している。
【0023】
加えて、トップシート20と吸収体21との間に液透過性のセカンドシート(不図示)を設けてもよい。セカンドシートは、トップシート20を透過した液体を拡散させることを目的として配置されるシート状部材である。セカンドシートを設けることで、着用者が着座時など、尿パッド12が圧迫されて、吸収体21とトップシート20との間に十分な空間が形成されない場合においても、液が拡散しやすくなる。液が拡散しやすいため、液の吸収速度が低下することを抑制できる。セカンドシートを構成する材料としては、トップシート20と同様に、液透過性の織布、不織布、多孔性フィルム等を用いることができる。
【0024】
一対のサイドシート22は、吸収性本体10の両側縁に沿って、体液の横漏れを防止する立体ギャザー24gを形成する。サイドシート22としては、撥水性と通気性を有するものが適している。具体的な材料として、例えば、カードエンボスやスパンボンド等の製法により形成された不織布シートを用いることができ、特に、防水性と通気性の高いSMSやSMMS等の不織布シートを用いるのが好ましい。また、サイドシート22は、織布や不織布に撥水加工を施したものであってもよい。
【0025】
図1および図5に示されるように、サイドシート22は、吸収性本体10の幅方向両端にそれぞれ設けられ、長手方向に沿って伸びる帯状のシートである。サイドシート22は、幅方向外側から接合領域ZCと起立領域ZSに分けられる。幅方向外側に位置する接合領域ZCは、具体的には、吸収体21の肌対向面上に位置し、トップシート20と接合される部分と、吸収体21よりも幅方向外側に延在し、バックシート19と接合される部分がある。一方、サイドシート22の起立領域ZSは、トップシート20に固定されておらず、その幅方向内側の端部は自由端であるが、これらの長手方向両端部は、トップシート20に接合された状態となっている。
【0026】
ここで、幅狭部21cにおける吸収体21の側端縁からサイドシート22の接合領域ZCと起立領域ZSとの境界までの距離をL1,立体ギャザー24gとなる起立領域ZSの幅をWG、前身頃12Fおよび後身頃12Rに対応する吸収体21の部分の最大幅をWEとすると、以下の関係、すなわち
(WC/2)<L1+WG
1≦WG
(WC/2)+L1<(WE/2)
を満たすことが好ましい。より具体的には、吸収体21の最小幅WCは吸収体21の最大幅WEの40〜60%程度であることが望ましく、成人を対象とした場合、WCは60mmから160mm、WEは120mmから260mmの範囲が望ましい。
【0027】
また、サイドシート22の起立領域ZSにおける自由端部22aには、長手方向に沿って糸ゴムなどのゴム状弾性部材24が固定されている。このゴム状弾性部材24は引き伸ばした状態で、自由端部22aの長手方向にわたって固定されており、このゴム状弾性部材24が縮むことで、サイドシート22の起立領域ZSに立体ギャザー24gが形成される。また、このゴム状弾性部材24が縮まることにより、サイドシート22は長手方向中央に引き寄せられて、図3に示されるように、自由端部22aが着用者の肌に当接する方向に向かって立ち上がることとなる。
【0028】
図4に示されるように、尿パッド12の前身頃12Fの肌非対向面には、おむつ等に尿パッド12を接合するための装着部25が設けられている。この装着部25は、接着剤層25aと、この接着剤層25aを使用まで封止する剥離紙25bとからなっている。尿パッド12使用時は、この剥離紙25bを取り除いて、接着剤層25aを露出させ、この接着剤層25aをおむつ等の内面シート、例えばトップシートに接合することで、おむつ等に尿パッド12を接合する。なお、装着部25の構造はこれに限らず、後身頃12Rにも設けることが可能であり、外装部材11に対して面ファスナーなどを用いて交換可能に接合することも有効である。
【0029】
ところで、サイドシート22は、図1に示す状態において、その幅方向内側の端部が、吸収体21の側端縁から、その幅方向中央側に入ったところに位置するようになっている。そして、サイドシート22の起立領域ZSの幅方向内側端(起立領域先端)が、吸収体21の幅狭部21cの端部上に位置するようになっている。すなわち、本実施形態におけるサイドシート22の幅WSは、吸収性本体10の幅方向外側端から、吸収体21の幅狭部21cの内側端までの長さに一致するが、さらに内側に入る程度まで長くてもよい。この場合、吸収体21の幅狭部21cの側端縁よりも30mm程度以内に収めることが好ましい。これよりもサイドシート22の幅WSを内側に拡げると、着用時に立体ギャザー24gが内側に倒れた場合にトップシート20が疎水性のサイドシート22で覆われてしまい、トップシート20の露出面積が少なくなって尿漏れにつながる可能性が生ずる。このため、サイドシート22の幅WSは、尿パッド12の幅Wの20〜30%程度が望ましい。
【0030】
そして、吸収体21の幅狭部21cの中央には、その長手方向に沿って伸びる折れ曲がり部21aが設けられている。この折れ曲がり部21aは、吸収体21の幅狭部21cの幅WCを二等分した位置でかつ、尿パッド12の幅Wを二等分した位置に配置されている。この折れ曲がり部21aは、着用者の両太ももの動きによって、尿パッド12が幅方向に引き寄せられ、尿パッド12が折れ曲がる際に他の部分に比べて優先して折れ曲がるように予め加工された易折部である。折れ曲がり部21aは、肌対向面側から見てその部分が突出するように折れる。すなわち、肌に向かって折れる山折部として形成されている。尿パッド12の幅方向端部から折れ曲がり部21aまでの長さは、尿パッド12の幅Wの約半分となる。尿パッド12は、その幅方向中心線が、着用者の股間の中央に位置するように配置するのが好ましく、この折れ曲がり部21aが股間の中央に位置するように、幅をほぼ二等分した位置に配置している。
【0031】
図6に示されるように、折れ曲がり部21aは、吸収体21をエンボス加工することによって圧縮形成することができる。もしくは吸収体21にスリットを刻設して形成することも可能である。圧縮は、吸収体21の肌対向面側からなされていても、肌非対向面側からなされていても、両面からなされていてもよい。例えば、折れ曲がり部21aは、吸収体21の肌非対向面側から圧縮されたエンボス加工がなされている。このエンボス加工による筋付けによって、この折れ曲がり部21aは、吸収体21の他の部分に比べて優先して折れ曲がる。より良好なフィット性が得られるように、尿パッド12の後身頃12R側に位置する折れ曲がり部21aの端部を二股に分岐させたり、あるいはその幅を拡げたりすることも有効である。
【0032】
サイドシート22は、その接合領域ZCにてトップシート20およびバックシート19に接合されており、尿パッド12の股下部12Cにおいて、サイドシート22の真下には吸収体21が存在しない状態となっている。また、図6に示されるように、起立領域ZSの基端、すなわち起立領域ZSと接合領域ZCとの境界は、吸収体21の幅狭部21cの側端縁からWGだけ離れることとなる。言い換えると、本実施形態における吸収体21の幅狭部21cの側端縁から、起立領域ZSと接合領域ZCとの境界までの距離L1は、サイドシート22の起立領域ZSの幅WGと等しいけれども、大人用の尿パッドの場合、この距離L1は、20mm以上であることが望ましい。
【0033】
このような構造の尿パッド12は、図6に示されるように、吸収体21の幅狭部21cを中心としてサイドシート22の立体ギャザー24gの部分が高く立ち上がったものとなる。
【0034】
そして、着用者が本実施形態の尿パッド12を着用し、図7に示されるように、脚の動きによって尿パッド12が幅方向に引き寄せられた場合、吸収体21は折れ曲がり部21aを頂部として股間に向かって突出するように山形に折れ曲がる。このように折れ曲がることにより、例えば、着用者が女性の場合、折れ曲がり部21aが尿道口付近に位置し、他の部分は股間と隙間を有することができる。このため、尿パッド12の股間におけるフィット性が向上するとともに、肌への接触面積を抑制できるので、尿パッド12が体液を吸った後もさらりとした感触を維持できる。また、尿パッド12の股下部12Cに対応した吸収体21の幅狭部21cの幅WCが狭いため、両脚を寄せても、吸収体21がもたつかない。
【0035】
加えて、吸収体21の幅狭部21cの幅方向端縁から延在するバックシート19およびトップシート20の部分は、サイドシート22が接合されておらず、吸収体21が存在しない柔軟な自由領域12aを形成する。このため、ゴム状弾性部材24の伸縮による立体ギャザー24gの立ち上がりに引っ張られて、この自由領域12aも立ち上がることとなる。結果として、吸収体21の幅狭部21c付近の立体ギャザー24gの立ち上がり高さは、尿パッド12の自由領域12aの長さL1に伴って高くなり、立体ギャザー24gの端部、すなわち、サイドシート22の自由端部22aの方が、折れ曲がり部21aの尾根よりも着用者の肌に近いところに位置することとなる。このようにサイドシート22の立体ギャザー24g部分が立ち上がることにより、尿パッド12の股下部12Cは、図7および図8に示されるように、断面がW字状となる。そして、中央の折れ曲がり部21aの尾根(頂点)から吸収体21の側端までの距離WC/2と、吸収体21の側端からサイドシート22の自由端部22aまでの距離L2とを比較すると、L2の方がWC/2よりも長い関係となる。このように、サイドシート22の立体ギャザー24gの部分が高く立ち上がることにより、立体ギャザー24gの部分が確実に着用者の股間に密着し、吸収体21が位置する部分の空間を閉空間とする。高さのある立体ギャザー24gによって、尿などの体液をしっかりとせき止め、外への漏れ出しを確実に防止する。
【0036】
また、W字状における中央の山部分のみに吸収体21が位置し、両側の立ち上がり部分には、吸収体21は位置しないので、吸収体21の重なりを山部分のみにすることができ、吸収体21の三重、四重の重なりがなく、厚みが増すことがない。
【0037】
このように、尿パッド12の股下部12Cにおいては、他の部分よりも吸収体21の幅が狭い幅狭部21cを設け、その幅狭部21cの幅WCを着用者の股間の幅程度とすることにより、吸収体21が着用者の股下でもたつくことがなく、尿パッド12が体液を吸って膨らんだりしても、股下で吸収体21が寄せ重なることが抑制され、着用による不快感を低減することができる。
【0038】
なお、幅狭部21cの存在によって股下部12Cにおける吸収体21の量が少なくなるので、大量の体液を吸収する目的で、高吸収性ポリマーの量を前身頃12F、後身頃12Rに対応する部分に比べて多くしても良い。この場合、吸収体21の幅狭部21cの剛度は他の部分に比べて増す場合もあるが、股下部12Cにおける吸収体面積自体が前身頃12Fおよび後身頃12Rにおける吸収体面積に比べて小さく、中央部の折れ曲がり部21aで二つ折りになるため、ごわつき感はさほど問題にならない。
【0039】
また、尿パッド12の股下部12Cの中央に折れ曲がり部21aを設け、着用者の脚の引き寄せなど、脚の動きによって、尿パッド12が折れる際にも、折れ曲がり部21aが優先して折れ曲がる。これにより、尿パッド12の中央が肌に向かって突出するように折れ曲がる。この変形により、折れ曲がり部21aの頂点が股間に接触する一方、他の部分は肌との間に隙間を形成できるため、尿パッド12が肌と接触し圧迫を与える面を最低限に抑え、不快感を抑制する。
【0040】
また、股下部12Cに位置するサイドシート22は、吸収体21が幅狭となっているため、立体ギャザー24gによって高く立ち上がることができ、着用者の鼠径部に確実に密着して、体液の漏れを防ぐことができる。また、股下部12Cにおいて、尿パッド12は断面W字状に変形するが、吸収体21自体は、折れ曲がり部21aによる中央の山折れの部分のみで、両側の谷折れから立ち上がる部分は、サイドシート22、バックシート19のみである。このため、吸収体21の重なりは、折れ曲がり部21aによる中央の山折れの部分のみで、幅方向の厚みが薄く、股間にフィットしやすい。
【0041】
加えて、両側の谷折れから立ち上がる部分は、サイドシート22と、バックシート19と、トップシート20とのシート部材のみであるから、両側の谷折れで吸収体21も折れる従来のものに比べて柔らかく、脚の動きに追従しやすい。したがって、立体ギャザー24g部分が着用者の鼠径部から離れて、隙間ができることがない。
【0042】
また、立体ギャザー24gによって立ち上がる部分が高いため、体液のせき止め効果が高い。
【0043】
なお、吸収体21は一層あるいは複数層のパルプにて形成することも可能であり、また当該パルプ層にパルプを含まない吸収シートを併用した複数層の構造であってもよい。この場合、パルプを含まない吸収シートは幅狭部21cを具えず、前身頃、股下部、後身頃の領域が同一の幅で形成されたものであってもよい。パルプを含まない吸収シートは柔らかいので、尿パッド12が股下で折れ曲がった際に、バックシート19と同じように、立体ギャザー24gの立ち上がりに引っ張られて立ち上がることとなる。したがって、尿パッド12は、本実施形態と同様のW字状の変形となる。
【0044】
また、尿パッド12の股下部12CをW字状に容易に変形させ、着用中にこの変形状態を維持するため、谷折れ部となって着用者の荷重が集中して加わる箇所の一つである吸収体21の幅狭部21cの左右両端をプレス加工するなどし、吸収体21の他の部分よりも剛性を増大させた構造としてもよい。また、尿パッド12の股下部12Cの変形形状は、W字状に限らず、例えば、バックシート19の幅方向両端部がその幅方向中間部を境として互いに接近する方向へ尿パッド12を変形してバックシート19の幅方向両端部を接着し、この変形状態を維持するようにしてもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、本発明が適用された尿パッドについて説明したが、本発明は尿パッドに限らず、テープ型おむつやパンツ型おむつ等の他の吸収性物品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
12 尿パッド
19 バックシート
20 トップシート
21 吸収体
21a 折れ曲がり部
21c 幅狭部
22 サイドシート
24 ゴム状弾性部材
24g 立体ギャザー
25 装着部
25a 接着剤層
25b 剥離紙
1 吸収体の側端縁からサイドシートの接合領域と起立領域との境界までの距離
C 幅狭部の幅
E 吸収体の最大幅
G 起立領域の幅
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8