(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導波路同士が接続された第1の走査導波路を介して第1の方向に配列された複数の請求項1に記載のスイッチ式光アンテナ、前記第1の走査導波路に第3の方向性結合器で結合された第1の走査リング導波路、および前記第1の走査リング導波路の少なくとも一部の屈折率を変化させる第1の走査屈折率調整部を備えた単位走査アレイが前記第1の方向と交差する第2の方向に複数配列された走査アレイと、
複数の前記単位走査アレイの前記屈折率調整部同士が前記第2の方向に接続されて一体化された複数の第2の走査屈折率調整部と、
複数の前記第1の走査リング導波路の各々に各々第4の方向性結合器を介して結合された第2の走査導波路と、
を含むスイッチ式光アンテナアレイ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示されたような従来技術に係るフェーズドアレイアンテナで2次元走査を行えるようにしようとすると、ヒータに個別電極を配置する必要がある等の理由から光配線、電気配線の引き回しがネックになる。従って、スイッチ式光アンテナが高密度に配置されたスイッチ式光アンテナアレイ、あるいは光走査装置を実現することには一定の限界があった。
【0005】
また、非特許文献1に開示されたフェーズドアレイアンテナのように、光を放射するエレメント(回折格子)の間隔が取り扱う光の波長の1/2より大きい場合は、グレーティングローブとよばれるサイドローブが発生する場合が多い。一方、半導体レーザを用いた機器の一例として例えば測距センサを考えた場合、赤外から可視域での2μm程度の波長が用いられる。すると、エレメント間隔が半波長である1μm以下となり、一般的な屈折率である屈折率3程度の材料で構成する導波路では、導波モードが結合することなしに伝播することができない。すなわち、従来技術においては、導波路を近づけるとモード結合が生じ、遠ざけるとグレーティングローブが発生するという問題を生ずる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、光配線、電気配線の規模を削減しつつ、2次元配置、高密度配置が可能なスイッチ式光アンテナ、スイッチ式光アンテナアレイ、および光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のスイッチ式光アンテナは、光の入力端および出力端を有する導波路と、前記導波路に第1の方向性結合器を介して結合されたリング導波路と、前記リング導波路の内部に配置されるとともに、前記リング導波路と第2の方向性結合器を介して結合された回折格子と、前記リング導波路の少なくとも一部の屈折率を変化させる屈折率調整部と、を含
み、前記リング導波路で構成されるリング共振器の共振条件を満たす波長の光が前記リング導波路を周回するとともに、前記屈折率調整部は、前記リング導波路の少なくとも一部の屈折率を変化させることによって、前記入力端から入力された光の特定の波長の光を前記第1の方向性結合器を介して前記リング導波路に導くとともに前記第2の方向性結合器を介して前記回折格子から出射させるものである。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載のスイッチ式光アンテナアレイは、前記導波路同士が接続された第1の走査導波路を介して第1の方向に配列された複数の請求項1に記載のスイッチ式光アンテナ、前記第1の走査導波路に第3の方向性結合器で結合された第1の走査リング導波路、および前記第1の走査リング導波路の少なくとも一部の屈折率を変化させる第1の走査屈折率調整部を備えた単位走査アレイが前記第1の方向と交差する第2の方向に複数配列された走査アレイと、複数の前記単位走査アレイの前記屈折率調整部同士が前記第2の方向に接続され
て一体化された複数の第2の走査屈折率調整部と、複数の前記第1の走査リング導波路の各々に各々第4の方向性結合器を介して結合された第2の走査導波路と、を含むものである。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、複数の前記回折格子の各々が偏光分離回折格子であり、前記第2の方向に配列された複数のスイッチ式光アンテナのリング導波路が各々第5の方向性結合器を介して結合された複数の第3の走査導波路と、前記複数の第3の走査導波路の各々に各々第6の方向性結合器を介して結合された複数の第2の走査リング導波路と、前記複数の第2の走査リング導波路の各々に各々第7の方向性結合器を介して結合された第3の走査導波路と、を含むものである。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の光走査装置は、請求項2または請求項3に記載のスイッチ式光アンテナアレイと、複数の前記スイッチ式光アンテナの上部に設けられたレンズと、を含むものである。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記レンズが複数の前記スイッチ式光アンテナの各々に対応させて配置された複数のマイクロレンズを含むマイクロレンズアレイであるものである。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記複数のマイクロレンズの配列ピッチが複数の前記スイッチ式光アンテナの配列ピッチより大きいものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光配線、電気配線の規模を削減しつつ、2次元配置、高密度配置が可能なスイッチ式光アンテナ、スイッチ式光アンテナアレイ、および光走査装置を提供することが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1を参照して、本実施の形態に係るスイッチ式光アンテナについて説明する。
図1は、本実施の形態に係るスイッチ式光アンテナ10の平面図を示している。
【0017】
図1に示すように、スイッチ式光アンテナ10は、回折格子12、リング導波路16、方向性結合器14−1、14−2、ヒータ18、および導波路20を備え、基板30上に光導波路技術によって集積化されている。
【0018】
導波路20は、一端から入力光Pinを導入するとともに、他端から透過光Pthを出力する光導波路である。
【0019】
リング導波路16は方向性結合器14−2を介して導波路20と光結合された光導波路である。
【0020】
回折格子12は伝播してきた光を出力光Poutとして放射する部位であり、リング導波路16の内部に配置されている。回折格子12は方向性結合器14−1を介してリング導波路16に光結合されている。つまり、回折格子12は、リング導波路16に導入された入力光Pinを出力光Poutとして出射する。回折格子12の形態は特に限定されないが、本実施の形態では一例としてテーパ付回折格子を用いている。
【0021】
ヒータ18はリング導波路16上に配置され、リング導波路16の一部の領域に熱を付与し、熱光学効果によって当該領域の屈折率を変化させる。
【0022】
以上のように構成されたスイッチ式光アンテナ10では、導波路20、リング導波路16、方向性結合器14−1、14−2、およびヒータ18によってリング共振器型のリングスイッチが構成されている。すなわち、リング導波路16によってリング共振器が構成されており、リング導波路16の長さに基づく所定の共振条件を満たす波長の光だけがリング導波路を周回することができる。一方、ヒータ18によってリング導波路16の一部に熱を付与すると、その部分の屈折率が変化し、リング導波路の等価光路長が変化する。
そのため、ヒータ18によってリング導波路16に熱を付与することによって、入力光Pinとして導波路20に導入された光のうち、特定の波長の光を方向性結合器14−2を介してリング導波路16に導くとともに、方向性結合器14−1を介して回折格子12から出射させることができる。なお、入力光Pinのうちリング導波路16に導入されなかった光は、透過光Pthとして導波路20から外部に導かれる。
【0023】
以上の説明で明らかなように、スイッチ式光アンテナ10では、従来個別に配置されていた回折格子12をリング導波路16の内部に配置したので、回折格子12およびリング導波路16のレイアウト面積が縮小される。すなわち、従来は回折格子12とリング導波路16のレイアウト面積が必要であったところ、リング導波路16のレイアウト面積だけですむことになる。
【0024】
従って、本実施の形態に係るスイッチ式光アンテナ10によれば、スイッチ式光アンテナの高密度配置が可能となる。なお、本実施の形態では、熱光学効果を用いて屈折率を変化させる光スイッチを用いた形態を例示して説明したが、電流を注入して屈折率を変化させる光スイッチを用いた形態としてもよい。
【0025】
[第2の実施の形態]
図2を参照して、本実施の形態に係るスイッチ式光アンテナアレイ50について説明する。
図2は、スイッチ式光アンテナアレイ50の平面図を示している。スイッチ式光アンテナアレイ50は、上記実施の形態に係るスイッチ式光アンテナ10を複数個(
図2では、12個の場合を例示している)配置して構成されている。
【0026】
図2に示すように、各々がスイッチ式光アンテナ10であるスイッチ式光アンテナ10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、10−10、10−11、10−12、リング導波路54−1、54−2、54−3、ヒータ56−1、56−2、56−3、56−4、56−5、56−6、56−7、導波路58−1、58−2、58−3、58−4、配線60−1、60−2を含んで構成されている。以上のスイッチ式光アンテナアレイ50を構成する各構成部位は、光導波路技術によって基板52上に集積化されている。
【0027】
導波路58−4は、一端から入力光Pinが入力される入射用の光導波路であり、他端が
図2に示す座標軸でY方向に延伸されている。導波路58−4には、方向性結合器62−2を介して、リング導波路54−1、54−2、54−3の各々が結合されている。
【0028】
リング導波路54−1にはヒータ56−7が設けられ、リング導波路54−2にはヒータ56−6が設けられ、リング導波路54−3にはヒータ56−5が設けられている。ヒータ56−5、56−6、56−7の各々の一端は共通の配線である配線60−2に接続され、ヒータ56−5、56−6、56−7の他端は、各々パッドPyに接続されている。パッドPyは外部との接続用の端子である。また、配線60−2は、一例として金属薄膜で形成されている。
【0029】
導波路58−1、58−2、58−3は、各々一端が導波路58−4の近傍に配置され、他端が−X方向に延伸されている。導波路58−1には、各々が方向性結合器14−2(
図1参照)を介して、スイッチ式光アンテナ10−1、10−4、10−7、10−10が結合されている。同様に、導波路58−2には、各々が方向性結合器14−2を介して、スイッチ式光アンテナ10−2、10−5、10−8、10−11が結合され、導波路58−3には、各々が方向性結合器14−2を介して、スイッチ式光アンテナ10−3、10−6、10−9、10−12が結合されている。
【0030】
スイッチ式光アンテナ10−1、10−2、10−3にはヒータ56−1が共通に配置され、スイッチ式光アンテナ10−4、10−5、10−6にはヒータ56−2が共通に配置され、スイッチ式光アンテナ10−7、10−8、10−9にはヒータ56−3が共通に配置され、スイッチ式光アンテナ10−10、10−11、10−12にはヒータ56−4が共通に配置されている。ヒータ56−1、56−2、56−3、56−4の各々の一端は共通の配線である配線60−1に接続され、他端はパッドPxに接続されている。パッドPxは外部との接続用の端子である。また、配線60−1は、一例として金属薄膜で形成されている。
【0031】
以上の構成を有するスイッチ式光アンテナアレイ50では、導波路58−4から入射された入力光Pinの伝播を行方向(X方向)、および列方向(Y方向)に制御することにより、スイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12の各々から出力光Poutを選択的に出射させることが可能となっている。
【0032】
まず、行方向の光の伝播制御について説明する。リング導波路54−1、ヒータ56−7、方向性結合器62−2、62−1によって導波路58−1への結合、非結合が制御される。すなわち、導波路58−4を伝播する入力光Pinは、ヒータ56−7の調整によって導波路58−1への結合、非結合が制御される。同様に、リング導波路54−2、ヒータ56−6、方向性結合器62−2、62−1によって導波路58−2への結合、非結合が制御され、リング導波路54−3、ヒータ56−5、方向性結合器62−2、62−1によって導波路58−3への結合、非結合が制御される。以下、リング導波路54−1、54−2、54−3を用いた、行方向に光の伝播を制御する構成を「X光マルチプレクサ」という。
【0033】
次に、列方向の光の伝播制御について説明する。スイッチ式光アンテナ10−1、10−2、10−3の部分について考えると、X光マルチプレクサによって導波路58−1、58−2、58−3のいずれか(複数であってもよい)を伝播してきた伝播光は、ヒータ56−1を調整することによって、スイッチ式光アンテナ10−1、10−2、10−3のいずれか(複数であってもよい)から出射される。同様に、導波路58−1、58−2、58−3のいずれかを伝播してきた伝播光は、ヒータ56−2を調整することによって、スイッチ式光アンテナ10−4、10−5、10−6のいずれかから出射され、導波路58−1、58−2、58−3のいずれかを伝播してきた伝播光は、ヒータ56−3を調整することによって、スイッチ式光アンテナ10−7、10−8、10−9のいずれかから出射され、導波路58−1、58−2、58−3のいずれかを伝播してきた伝播光は、ヒータ56−4を調整することによって、スイッチ式光アンテナ10−10、10−11、10−12のいずれかから出射される。以下、ヒータ56−1、56−2、56−3、56−4の各々を用いた列方向に光の伝播を制御する構成を「Y光マルチプレクサ」という。すなわち、
図2に示す例では、4個のY光マルチプレクサが配置されている。
【0034】
以上のような構成を有するスイッチ式光アンテナアレイ50では、ヒータを制御する配線として共通の配線60−1、60−2を用いており、個々の光スイッチごとに配線を設ける必要がないので、光配線、電気配線の規模を削減され、また、容易に2次元配置することができる。さらに、スイッチ式光アンテナアレイ50を構成する個々の光アンテナとして、スイッチ式光アンテナ10を用いているので、高密度配置が可能なスイッチ式光アンテナアレイを実現することが可能となっている。
【0035】
[第3の実施の形態]
図3を参照して、本実施の形態にかかる光走査装置について説明する。
図3は、本実施の形態に係る光走査装置100の斜視図を示している。
【0036】
図3に示すように、光走査装置100は、入力光Pinを発生する光源(図示省略)と上記実施の形態に係るスイッチ式光アンテナアレイ50を含んで構成されている。スイッチ式光アンテナアレイ50に入射した入力光Pinは、上述した制御によってスイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12のいずれかから出力光Poutとして出力される。
その際、スイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12の各々に含まれる回折格子12の指向性を異ならせておくことで、出力光Poutの2次元スキャンが可能となる。回折格子12の指向性は、例えば回折格子12に設けるスリットのピッチや角度を変えることにより異ならせることができる。
【0037】
<第3の実施の形態の第1の変形例>
図4を参照して、本実施の形態に係る光走査装置100aについて説明する。光走査装置100aは、上記の光走査装置100にレンズ102を設けた形態である。レンズ102は、スイッチ式光アンテナアレイ50に配置されたスイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12の上部に配置されている。
【0038】
図4(a)に示すように、スイッチ式光アンテナアレイ50に入力された入力光Pinは、上述した制御によってスイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12のいずれかから出射され、レンズ102を介して出力光Poutとして出力される。
図4(b)に示す原理図から明らかなように、本実施の形態に係る光走査装置100aでは、小さいチップで指向性が鋭くなる。
【0039】
<第3の実施の形態の第2の変形例>
図5を参照して、本実施の形態に係る光走査装置100bについて説明する。光走査装置100bは、上記実施の形態に係る光走査装置100aにマイクロレンズアレイ104を追加した形態である。
図5(a)に示すように、マイクロレンズアレイ104の個々のレンズは、スイッチ式光アンテナアレイ50に配置されたスイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12の各々の上部に配置されている。
【0040】
図5(a)に示すように、スイッチ式光アンテナアレイ50に入力された入力光Pinは、上述した制御によってスイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12のいずれかから出射され、マイクロレンズアレイ104、レンズ102を介して出力光Poutとして出力される。スイッチ式光アンテナアレイ50では、
図2に示すように、配線60−1等、導波路58−1等のためのスペースがあるので、出力光Poutではそのスペースに起因する隙間が空く。本実施の形態に係る光走査装置100bでは、
図5(b)に示すように、マイクロレンズアレイ104によって一旦コリメート化し、隙間をなくすように構成されている。従って、本実施の形態に係る光走査装置100bでは、ビーム発散角が狭くされ、指向性が鋭く、かつ隙間のない出力光Poutが得られる。なお、光走査装置100bではレンズ102を省略してもよい。
【0041】
<第3の実施の形態の第3の変形例>
図6を参照して、本実施の形態に係る光走査装置100cについて説明する。光走査装置100cは、上記実施の形態に係る光走査装置100にマイクロレンズアレイ104を追加し、さらにマイクロレンズアレイ104を構成する各レンズのピッチを上記実施の形態に係る光走査装置100bと異ならせた形態である。
【0042】
図6(a)に示すように、スイッチ式光アンテナアレイ50に入力された入力光Pinは、上述した制御によってスイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12のいずれかから出射され、マイクロレンズアレイ104を介して出力光Poutとして出力される。本実施の形態に係る光走査装置100cでは、
図6(b)に示すように、マイクロレンズアレイ104を構成する各レンズの配列ピッチと、スイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12の配列ピッチとを異ならせている。光走査装置100cでは、マイクロレンズアレイ104を構成する各レンズの配列ピッチを、スイッチ式光アンテナ10−1ないし10−12の配列ピッチよりも大きくしているので、出力光Poutを
図6(b)に示すように放射させることができる。
【0043】
以上のように、上記各実施の形態に係る光走査装置によれば、スイッチ式光アンテナアレイを構成するスイッチ式光アンテナの配列ピッチを狭くすることができるので、サイドローブの発生が抑制された単峰性の光ビームを2次元走査することができる。
【0044】
[第4の実施の形態]
図7を参照して、本実施の形態に係るスイッチ式光アンテナ10a、10bについて説明する。スイッチ式光アンテナ10a、10bは、上記実施の形態に係るスイッチ式光アンテナ10における回折格子12の代わりに、偏光分離回折格子を用いた形態である。スイッチ式光アンテナ10aは送信用のスイッチ式光アンテナであり、スイッチ式光アンテナ10bは受信用のスイッチ式光アンテナである。
【0045】
まず、
図7(a)を参照して、スイッチ式光アンテナ10aについて説明する。スイッチ式光アンテナ10aは、P偏光である入力光Pipと、S偏光である入力光Pisを入力し、これらを合波して送信光Ptとして出射する。
図7(a)に示すように、スイッチ式光アンテナ10aは、偏光分離回折格子22、リング導波路16、導波路20−1、20−2、および方向性結合器14−1、14−2、14−3、14−4を含んで構成されている。
【0046】
導波路20−1はP偏光である入力光Pipを導入する光導波路であり、導波路20−2はS偏光である入力光Pisを導入する光導波路である。導波路20−1は方向性結合器14−2によってリング導波路16に結合され、導波路20−2は方向性結合器14−4によってリング導波路16と結合されている。なお、リング導波路上のいずれかの箇所にヒータが配置されるが、
図7(a)では図示を省略している。
【0047】
図7(a)に示すように、図示しないヒータでリング導波路16に付与する熱量を調整することにより、所定の共振条件を満たす入力光PipとPisとが合波されて、偏光分離回折格子22から送信光Ptとして出射される。すなわち、図示しないヒータによって所定の共振条件が満たされると、導波路20−1を伝播してきた入力光Pipが、方向性結合器14−2、14−3を介して偏光分離回折格子22に入力される。また、図示しないヒータによって所定の共振条件が満たされると、導波路20−2を伝播してきた入力光Pisが、方向性結合器14−4、14−1を介して偏光分離回折格子22に入力される。偏光分離回折格子22に入力された入力光PipとPisは合波され、送信光Ptとして偏光分離回折格子22から出射される。
【0048】
次に、
図7(b)を参照して、スイッチ式光アンテナ10bについて説明する。
図7(b)に示すように、スイッチ式光アンテナ10bは、偏光分離回折格子22、リング導波路16、導波路20−1、20−2、および方向性結合器14−1、14−2、14−3、14−4を含んで構成されている。また、リング導波路上のいずれかの箇所にヒータが配置されるが、
図7(b)では図示を省略している。つまり、物理的な構成はスイッチ式光アンテナ10aと同じであり、光の伝播方向が異なっている。
【0049】
スイッチ式光アンテナ10bは、P偏光とS偏光が合波された受信光Prを偏光分離回折格子22で受信する。偏光分離回折格子22で受信された受信光Prは、偏光分離回折格子でP偏光とS偏光に分離される。図示しないヒータによって所定の共振条件が充足されると、P偏光の出力光Popは方向性結合器14−3、14−2を介して導波路20−1から出射される。一方、図示しないヒータによって所定の共振条件が充足されると、S偏光の出力光Posは方向性結合器14−1、14−4を介して導波路20−2から出射される。
【0050】
[第5の実施の形態]
図8を参照して、本実施の形態に係るスイッチ式光アンテナアレイ50aについて説明する。スイッチ式光アンテナアレイ50aは、上記実施の形態に係る複数の(
図8では、12個の場合を例示している)スイッチ式光アンテナ10bをアレイ状に配置して構成され、光受信器としての機能を有している。
【0051】
図8に示すように、スイッチ式光アンテナアレイ50aは、各々がスイッチ式光アンテナ10bであるスイッチ式光アンテナ10b−1、10b−2、10b−3、10b−410b−5、10b−6、10b−7、10b−8、10b−9、10b−10、10b−11、10b−12、リング導波路54−1、54−2、54−3、54−4、54−5、54−6、54−7、ヒータ56−1、56−2、56−3、56−4、56−5、56−6、56−7、56−8、56−9、56−10、56−11、導波路58−1、58−2、58−3、58−4、58−5、58−6、58−7、58−8、58−9、配線60−1、60−2、方向性結合器62−1、62−2、64−1、64−2、パッドPx1、Px2、Pyを含んで構成されている。以上のスイッチ式光アンテナアレイ50aを構成する各構成部位は、光導波路技術によって基板52上に集積化されている。
【0052】
図8において
図2に示すスイッチ式光アンテナアレイ50と同じ機能を有する構成には同じ符号を付している。すなわち、
図8においては、リング導波路54−1、54−2、54−3、ヒータ56−1、56−2、56−3、56−4、56−5、56−6、56−7、導波路58−1、58−2、58−3、58−4、配線60−1、60−2によって、スイッチ式光アンテナアレイ50aの行方向、列方向の制御がなされ、スイッチ式光アンテナ10aの各々の受信、非受信が制御される。すなわち、リング導波路54−1、54−2、54−3により光の伝播方向を行方向に制御するX光マルチプレクサが構成され、ヒータ56−1、56−2、56−3、56−4により光の伝播方向を列方向に制御するY光マルチプレクサが構成されている。
【0053】
スイッチ式光アンテナアレイ50aは、
図2に示すスイッチ式光アンテナアレイ50に対して、さらにリング導波路54−4、54−5、54−6、54−7、導波路58−5、方向性結合器64−1、64−2、パッドPx2が追加されている。スイッチ式光アンテナアレイ50aでは、P偏光成分とS偏光成分を含む受信光Prがスイッチ式光アンテナ10b−1、10b−2、10b−3、10b−4、10b−5、10b−6、10b−7、10b−8、10b−9、10b−10、10b−11、10b−12に一括して照射される。以上のような構成によって、スイッチ式光アンテナアレイ50aでは、P偏光成分とS偏光成分を分離して受信光Prの受信制御を行うことが可能となっている。
【0054】
次に、スイッチ式光アンテナアレイ50aの動作について説明する。例えば、スイッチ式光アンテナ10b−1に入射した受信光Prに含まれるP偏光、S偏光を各々出力させる場合について考える。スイッチ式光アンテナアレイ50aでは、導波路58−4の一端がP偏光成分の出力光Popの出力端、導波路58−5の一端がS偏光成分の出力光Posの出力端となっている。従って、まずヒータ56−7によって導波路58−1による経路が選択され、ヒータ56−8によって導波路58−6による経路が選択される。
【0055】
P偏光成分については、ヒータ56−1を調整してスイッチ式光アンテナ10b−1の方向性結合器14−3、14−2(
図7(b)参照)を介し、導波路58−1に結合させる。導波路58−1を伝播したP偏光成分は、方向性結合器62−1、リング導波路導54−1、方向性結合器62−2を介して導波路58−4に移行し、出力光Popとして出力される。一方、S偏光成分については、ヒータ56−1を調整してスイッチ式光アンテナ10b−1の方向性結合器14−1、14−4(
図7(b)参照)を介し導波路58−6に結合させる。導波路58−6を伝播したS偏光成分は、方向性結合器64−1、リング導波路54−4、方向性結合器64−2を介して導波路58−5に移行し、出力光Posとして出力される。
【0056】
以上のように、本実施の形態に係るスイッチ式光アンテナアレイによれば、外界からの光の偏光を分離することが可能となり、方向性結合器の向きで閉じた導波路を周回する光の向きを変えることが可能となっている。