(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520921
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】空気式防舷材および空気式防舷材用口金具
(51)【国際特許分類】
E02B 3/26 20060101AFI20190520BHJP
B63B 59/02 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
E02B3/26 K
E02B3/26 D
B63B59/02 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-511568(P2016-511568)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015058951
(87)【国際公開番号】WO2015151938
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-71326(P2014-71326)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 周
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−76609(JP,A)
【文献】
特開2002−115768(JP,A)
【文献】
特開2000−88690(JP,A)
【文献】
特開2003−129446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/26
B63B 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部の両端にボウル状の鏡部を連接した防舷材袋体と、前記鏡部の少なくとも一方に設けられた口金具と、この口金具に前記防舷材袋体の内部空間の内圧が限界圧力に上昇した際に開弁して防舷材袋体の内部空間を外気に連通させて前記内圧を低下させる安全弁と、前記防舷材袋体の内部空間と外気とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する開閉バルブとが設けられた空気式防舷材において、
前記口金具に、前記安全弁を前記防舷材袋体の内部空間と隔絶させる収容室と、この収容室を構成する隔壁に形成されて前記収容室の内部空間と前記防舷材袋体の内部空間を連通させる貫通孔と、この貫通孔を開閉する開閉弁と、この開閉弁を前記貫通孔を閉口する位置で固定する閉口位置固定部材と、この開閉弁を前記貫通孔を開口する位置で固定する開口位置固定部材と、前記収容室の内部空間と外気とを連通させる収容室連通路と、この収容室連通路を開閉する収容室開閉バルブとを備え、前記閉口位置固定部材および前記開口位置固定部材の少なくとも一部が、前記収容室の外側で、かつ、前記口金具の表面側となる位置に配置される構成にしたことを特徴とする空気式防舷材。
【請求項2】
前記開閉弁が、前記収容室に配置される内側フランジと、前記収容室の外側で、かつ、前記口金具の表面側になる位置に配置される外側フランジと、前記内側フランジと前記外側フランジとが対向して端部に固定される軸部とを有して、前記貫通孔に対して近接離反する方向にスライド可能に構成され、前記内側フランジにより前記貫通孔が開閉される構成にした請求項1に記載の空気式防舷材。
【請求項3】
前記貫通孔を閉口する位置で固定した開閉弁と前記貫通孔の周辺の前記隔壁との対向する面にシール材が介在して配置され、前記貫通孔を開口する位置で固定した開閉弁と前記隔壁との対向する面にシール材が介在して配置される構成にした請求項1または2に記載の空気式防舷材。
【請求項4】
防舷材袋体の内部空間の内圧が限界圧力に上昇した際に開弁して防舷材袋体の内部空間を外気に連通させて前記内圧を低下させる安全弁と、前記防舷材袋体の内部空間と外気とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する開閉バルブとを備えて、前記防舷材袋体を構成するボウル状の鏡部に取付けられる空気式防舷材用口金具において、
前記安全弁を前記防舷材袋体の内部空間と隔絶させる収容室と、この収容室を構成する隔壁に形成されて前記収容室の内部空間と前記防舷材袋体の内部空間を連通させる貫通孔と、この貫通孔を開閉する開閉弁と、この開閉弁を前記貫通孔を閉口する位置で固定する閉口位置固定部材と、この開閉弁を前記貫通孔を開口する位置で固定する開口位置固定部材と、前記収容室の内部空間と外気とを連通させる収容室連通路と、この収容室連通路を開閉する収容室開閉バルブとが設けられ、前記閉口位置固定部材および前記開口位置固定部材の少なくとも一部が、前記収容室の外側で、かつ、この口金具の表面側となる位置に配置される構成にしたことを特徴とする空気式防舷材用口金具。
【請求項5】
前記開閉弁が、前記収容室に配置される内側フランジと、前記収容室の外側で、かつ、前記口金具の表面側になる位置に配置される外側フランジと、前記内側フランジと前記外側フランジとが対向して端部に固定される軸部とを有して、前記貫通孔に対して近接離反する方向にスライド可能に構成され、前記内側フランジにより前記貫通孔が開閉される構成にした請求項4に記載の空気式防舷材用口金具。
【請求項6】
前記貫通孔を閉口する位置で固定した開閉弁と前記貫通孔の周辺の前記隔壁との対向する面にシール材が介在して配置され、前記貫通孔を開口する位置で固定した開閉弁と前記隔壁との対向する面にシール材が介在して配置される構成にした請求項4または5に記載の空気式防舷材用口金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式防舷材および空気式防舷材用口金具に関し、さらに詳しくは、使用状態にある空気式防舷材に対して、安全弁の取外し取付け作業および安全弁の開弁圧力の確認試験を行なうことを可能にしてこれら作業に要する労力および時間を大幅に低減させてメンテナンス性を著しく向上させることができる空気式防舷材および空気式防舷材用口金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気式防舷材は、防舷材袋体の内部空間に空気を密封して衝撃緩和等の所定性能を得るようにしている。過剰に圧縮された場合に、防舷材袋体を密閉したままの状態にすると、内部空間の内圧が予め設定している限界圧力を超えて上昇して破損する危険性がある。そこで、防舷材袋体に設けられた口金具には、防舷材袋体の内部空間の内圧が限界圧力を超えた場合に、この内部空間を外気に連通させる安全弁が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この安全弁は、開弁圧力の確認テストや清掃等のメンテナンスのために、定期的(例えば、1年〜3年周期)に口金具から取り外す。防舷材袋体の内部空間に空気が充填されて所定の内圧になっている使用状態にある空気式防舷材の口金具から安全弁を取り外そうとすれば、内部空間から空気が急激に噴出するので安全弁の取り外しは不可能である。そのため、防舷材袋体の内部空間から空気を十分に排出させた後に安全弁の取り外し作業をしている。即ち、安全弁を口金具から取り外すには、使用中の空気式防舷材を陸上や船上等に引き揚げ、次いで、空気を排出させる作業を行なう。取り外した安全弁の開弁圧力の確認テストや清掃等を完了した後は、再び安全弁を口金具に取付けて、防舷材袋体の内部空間に空気を充填し、空気式防舷材を所定位置に設置する作業が必要になる。それ故、口金具に対して、安全弁を取外しおよび取付けしてメンテナンスするには多大な工数および時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2003−129446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、使用状態にある空気式防舷材に対して、安全弁の取外し取付け作業および安全弁の開弁圧力の確認試験を行なうことを可能にしてこれら作業に要する労力および時間を大幅に低減させてメンテナンス性を著しく向上させることができる空気式防舷材および空気式防舷材用口金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の空気式防舷材は、円筒状部の両端にボウル状の鏡部を連接した防舷材袋体と、前記鏡部の少なくとも一方に設けられた口金具と、この口金具に前記防舷材袋体の内部空間の内圧が限界圧力に上昇した際に開弁して防舷材袋体の内部空間を外気に連通させて前記内圧を低下させる安全弁と、前記防舷材袋体の内部空間と外気とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する開閉バルブとが設けられた空気式防舷材において、前記口金具に、前記安全弁を前記防舷材袋体の内部空間と隔絶させる収容室と、この収容室を構成する隔壁に形成されて前記収容室の内部空間と前記防舷材袋体の内部空間を連通させる貫通孔と、この貫通孔を開閉する開閉弁と、この開閉弁を前記貫通孔を閉口する位置で固定する閉口位置固定部材と、この開閉弁を前記貫通孔を開口する位置で固定する開口位置固定部材と、前記収容室の内部空間と外気とを連通させる収容室連通路と、この収容室連通路を開閉する収容室開閉バルブとを備え、前記閉口位置固定部材および前記開口位置固定部材
の少なくとも一部が、前記収容室の外側で、かつ、前記口金具の表面側となる位置に配置される構成にしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の空気式防舷材用口金具は、防舷材袋体の内部空間の内圧が限界圧力に上昇した際に開弁して防舷材袋体の内部空間を外気に連通させて前記内圧を低下させる安全弁と、前記防舷材袋体の内部空間と外気とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する開閉バルブとを備えて、前記防舷材袋体を構成するボウル状の鏡部に取付けられる空気式防舷材用口金具において、前記安全弁を前記防舷材袋体の内部空間と隔絶させる収容室と、この収容室を構成する隔壁に形成されて前記収容室の内部空間と前記防舷材袋体の内部空間を連通させる貫通孔と、この貫通孔を開閉する開閉弁と、この開閉弁を前記貫通孔を閉口する位置で固定する閉口位置固定部材と、この開閉弁を前記貫通孔を開口する位置で固定する開口位置固定部材と、前記収容室の内部空間と外気とを連通させる収容室連通路と、この収容室連通路を開閉する収容室開閉バルブとが設けられ、前記閉口位置固定部材および前記開口位置固定部材
の少なくとも一部が、前記収容室の外側で、かつ、この口金具の表面側となる位置に配置される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、口金具に、安全弁を防舷材袋体の内部空間と隔絶させる収容室と、この収容室を構成する隔壁に形成されて収容室の内部空間と防舷材袋体の内部空間を連通させる貫通孔と、この貫通孔を開閉する開閉弁と、この開閉弁を前記貫通孔を閉口する位置で固定する閉口位置固定部材と、この開閉弁を前記貫通孔を開口する位置で固定する開口位置固定部材とが設けられて、前記閉口位置固定部材および前記開口位置固定部材が、前記収容室の外側で、かつ、この口金具の表面側となる位置に配置されるので、開閉弁を開口位置固定部材によって貫通孔を開口する位置で固定すると、収容室の内部空間と防舷材袋体の内部空間とが連通した状態になる。開口位置固定部材を固定する作業は、口金具の表面側、即ち、防舷材袋体の外側で行なうことができる。この状態では、安全弁は通常どおり機能するので、防舷材袋体が過剰に圧縮されても安全弁が開弁してその内部空間の内圧が低下して破損が防止される。
【0009】
一方、開閉弁を閉口位置固定部材によって貫通孔を閉口する位置で固定すると、安全弁が防舷材袋体の内部空間と隔絶された状態になる。閉口位置固定部材を固定する作業は、口金具の表面側、即ち、防舷材袋体の外側で行なうことができる。この状態では、使用状態にある空気式防舷材を陸上や船上に引き揚げることなく使用状態のままで、安全弁を口金具から取外し、また、安全弁を口金具に取付けることができる。
【0010】
また、収容室の内部空間と外気とを連通させる収容室連通路と、この収容室連通路を開閉する収容室開閉バルブとを備えているので、安全弁が防舷材袋体の内部空間と隔絶された状態で、収容室開閉バルブを開いて収容室連通路を通じて収容室の内部空間の内圧を限界圧力まで上昇させることができる。即ち、使用状態にある空気式防舷材に対して、安全弁の開弁圧力の確認試験を行なうことができる。このように本発明によれば、使用状態にある空気式防舷材に対して、安全弁の取外し取付け作業および開弁圧力の確認試験を行なうことができるので、これら作業に要する労力および時間を大幅に低減させてメンテナンス性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の空気式防舷材を縦断面視で例示する全体概要図である。
【
図2】
図2は
図1の本発明の口金具の周辺を例示する平面図である。
【
図3】
図3は
図2のA−A断面視で口金具の内部構造を例示する説明図である。
【
図4】
図4は
図1の貫通孔が閉口した状態の口金具の周辺を平面視で例示する説明図である。
【
図5】
図5は
図4のB−B断面視で口金具の内部構造を例示する説明図である。
【
図6】
図6は本発明の口金具の別の実施形態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図7】
図7は本発明の口金具のさらに別の実施形態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図8】
図8は
図7の貫通孔が閉口した状態を縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の空気式防舷材および空気式防舷材用口金具を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1〜
図5に例示する本発明の空気式防舷材1(以下、防舷材1という)は、ゴムを主材料として補強材が埋設されて構成された防舷材袋体2を有している。防舷材袋体2は、円筒状部3aの筒軸方向両端にボウル状の鏡部3bを連接して形成されている。
【0014】
一方の鏡部3bには本発明の口金具4が設けられている。口金具4は両側の鏡部3bに設けられることもある。口金具4は、円筒凹状の金具部材であり、口金具4の表面側の開口は、ボルト等で取付けられる金具蓋部で覆われることもある。
【0015】
口金具4には安全弁6と、防舷材袋体2の内部空間2aと外気とを連通させる連通路11と、連通路11を開閉する開閉バルブ11aとが設けられている。口金具4にはさらに、安全弁6を内部空間2aと隔絶させる収容室8と、この収容室8を構成する隔壁7に形成された貫通孔7aと、貫通孔7aを開閉する開閉弁9と、収容室8の内部空間8aと外気とを連通させる収容室連通路12と、収容室連通路12を開閉する収容室開閉バルブ12aとが設けられている。口金具4にはさらに、閉口位置固定部材5aと開口位置固定部材5bとが設けられている。
【0016】
収容室8は、安全弁6が取り付けられた平板部4aから防舷材袋体2の内部空間2aに向かって突出して形成されている。即ち、収容室8は口金具4の裏側となる位置に形成されている。安全弁6は平板部4aを貫通して収容室8の内部空間8aに突出して平板部4aに固定されている。連通路11は平板部4aおよび収容室8を貫通して内部空間2aまで延設されている。収容室連通路12は平板部4aを貫通して収容室8の内部空間8aまで延設されている。
【0017】
安全弁6は、防舷材袋体2が過剰圧縮されても破損しないように設定された限界圧力Pmに上昇した際に開弁し、限界圧力Pm未満では閉弁している。即ち、安全弁6は、防舷材袋体2の内部空間2aの内圧Pが限界圧力Pmに上昇した際に開弁して内部空間2aを外気に連通させる。
【0018】
開閉弁9は、軸部9cの両端にそれぞれ外側フランジ9aと内側フランジ9bとが固定されて、外側フランジ9aと内側フランジ9bとが対向した構成になっている。軸部9cは平板部4aを貫通して、防舷材袋体2の筒軸方向にスライド自在になっている。内側フランジ9bは収容室8の内部空間8aに配置されていて、外側フランジ9aは収容室8の外側で、かつ、口金具4の表面側になる位置に配置されている。開閉弁9は貫通孔7aに対して近接離反する方向にスライド可能に構成されている。
【0019】
図1〜
図3では、開閉弁9が貫通孔7aを開口する位置で開口位置固定部材5bによって平板部4aに固定されて貫通孔7aが開口している。開口位置固定部材5bは、収容室8の外側で、かつ、口金具4の表面側になる位置に配置されている。この状態では、内側フランジ9bと平板部4aとの対向面が気密に当接している。この対向面にはシール材10cを介在させて気密性を向上させるとよい。このシール材10cは円環形状になっている。
【0020】
図4〜
図5では、開閉弁9が貫通孔7aを閉口する位置で閉口位置固定部材5aによって平板部4aに固定されて貫通孔7aが閉口している。閉口位置固定部材5aは、収容室8の外側で、かつ、口金具4の表面側になる位置に配置されている。この状態では、内側フランジ9bと隔壁7との対向面が気密に当接している。この対向面にもシール材10cを介在させて気密性を向上させるとよい。
【0021】
外側フランジ9aには、外側フランジ9aを開閉弁9のスライド方向に貫通する閉口位置用穴10aと開口位置用穴10bとが周方向に交互に間隔をあけて配置されている。閉口位置用穴10aは単純な貫通穴であり、開口位置用穴10bはネジ穴である。閉口位置固定部材5aは通常の固定ボルトである。開口位置固定部材5bは、ボルト頭部側の長手方向半分程度の範囲にネジが切られた固定ボルトである。
【0022】
図3に例示するように、貫通孔7aを開口した状態にするには、外側フランジ9aに形成された開口位置用穴10bに開口位置固定部材5bを螺合させて開口位置固定部材5bの先端を平板部4aの表面に当接させるとともに、内側フランジ9bと平板部4aとの対向面を気密に当接させる。
【0023】
図5に例示するように、貫通孔7aを閉口した状態にするには、外側フランジ9aに形成された閉口位置用穴10aに閉口位置固定部材5aを挿通させて閉口位置固定部材5aの先端を平板部4aの表面に形成されたネジ孔に螺合させるとともに、内側フランジ9bと隔壁7(平板部4aと対向する位置にある隔壁7)との対向面を気密に当接させる。
【0024】
この空気式防舷材1を使用する際には、内部空間2aに空気、或いは、空気および流体(水)を充填して、内部空間2aを所定の初期内圧Piにする。この状態で空気式防舷材1を岸壁等の使用する場所に設置する。この時、
図3に例示するように開閉弁9を貫通孔7aを開口する位置で開口位置固定部材5bにより固定する。これにより、防舷材袋体2の内部空間2aと収容室8の内部空間8aとが貫通孔7aを通じて連通するので内部空間2a、8aは同じ内圧Pになる。
【0025】
この状態で防舷材袋体2が圧縮されて内部空間2aの内圧Pが限界圧力Pmを超えると、内部空間8aの内圧も限界圧力Pmを超えるので安全弁6は開弁する。したがって、防舷材袋体2が過剰に圧縮されて内部空間2aの圧力Pが限界圧力Pmを超えると、安全弁6は従来どおりに機能して、内部空間2aを外気に連通させて内部空間2aの内圧Pを限界圧力Pm以下に低下させる。これにより、防舷材袋部2の破損を防止することができる。
【0026】
安全弁6のメンテナンスを行なう場合には、
図5に例示するように、開閉弁9を貫通孔7aを閉口する位置で閉口位置固定部材5aにより固定する。これにより、収容室8によって安全弁6は防舷材袋体2の内部空間2aとは隔絶される。それ故、安全弁6を口金具4から取外す作業および口金具4に取付ける作業を安全に行なうことができる。したがって、使用状態にある空気式防舷材1を陸上や船上に引き揚げることなく使用状態のままで、安全弁6の取外しおよび取付けを行なえる。
【0027】
また、開閉弁9により貫通孔7aを閉口した状態では、収容室開閉バルブ12aを開いて収容室連通路12を通じて収容室8の内部空間8aに圧縮空気を注入することで、内部空間8aの内圧を限界圧力Pmまで上昇させることができる。即ち、使用状態にある空気式防舷材1に対して、安全弁6の開弁圧力の確認試験を行なうことができる。このように本発明によれば、使用状態にある空気式防舷材1に対して、安全弁6の取外し取付け作業および開弁圧力の確認試験を行なうことができるので、これら作業に要する労力および時間を大幅に低減させてメンテナンス性を著しく向上させることができる。
【0028】
図6に例示する口金具4の別の実施形態では、通常の固定ボルトである開口位置固定部材5cと、平板部4aと外側フランジ9aとの間に介在してスペーサとなる開口位置固定部材5dとが設けられている。
図6に例示するように、貫通孔7aを開口した状態にするには、平板部4aと外側フランジ9aとの間に開口位置固定部材5dを介在させる。次いで、外側フランジ9aに形成された開口位置用穴10bに開口位置固定部材5cを螺合させて開口位置固定部材5cの先端をスペーサとなる開口位置固定部材5dの表面に当接させるとともに、内側フランジ9bと平板部4aとの対向面を気密に当接させる。この実施形態の口金具4によれば、開口位置固定部材5cとなる固定ボルトの長さを短くすることができる。
【0029】
図7に例示する口金具4の実施形態では、平板部4aを貫通する筒状のガイド体13が設けられている。ガイド体13は一端部が拡径したフランジ状に形成されていて平板部4aに固定されている。ガイド体13の他端部は収容室8の内部空間8aの途中の位置まで延在している。
【0030】
ガイド体13の内部に形成されたガイド穴13aは、防舷材袋体2の筒軸方向に延在している。このガイド穴13aには、開閉弁9を構成する軸部9cが挿通している。軸部9cの一方端、他方端にはそれぞれ、外側フランジ9a、内側フランジ9bが一体的に設けられている。軸部9cの外周面とガイド穴13aの内周面とは螺合していて、軸部9cを回転させることにより、内側フランジ9b(開閉弁9)が貫通孔7aに対して近接または離反する方向に移動する。ガイド穴13aの内周面には軸部9cの外周面に当接して、互いのすき間を塞いで気密性を確保するシール材10cが設けられている。
【0031】
さらに、ガイド体13の一端部には、外側フランジ9aを覆うカバー14が着脱自在に設けられている。カバー14の内側には外側フランジ9aが嵌合する嵌合部14aが設けられている。貫通孔7aを開口するには、カバー14を外側フランジ9aから取り外し、外側フランジ9aとともに軸部9cを回転させて、内側フランジ9bを貫通孔7aから離反させる。
【0032】
カバー14によって外側フランジ9aを覆うことにより、開閉弁9が意図せずに操作されることが防止される。
図7に例示するように貫通孔7aが開口している状態では、軸部9cの他方端に設けられた内側フランジ9bが、ガイド体13の他端面に当接している。この実施形態では、螺合するガイド体13および軸部9cが開口位置固定部材として機能する。
【0033】
図8に例示するように貫通孔7aを閉口するには、外側フランジ9aからカバー14を取り外し、外側フランジ9aとともに軸部9cを回転させて(貫通孔7aを開口する場合とは軸部9cを反対回転させて)、内側フランジ9b(開閉弁9)を貫通孔7aに向かって前進させる。これにより、内側フランジ9cを隔壁7の対向面に気密に当接させる。軸部9cとガイド穴13aとは螺合しているので、貫通孔7aを閉口する位置で開閉弁9を簡単に固定することができる。この実施形態では、螺合するガイド体13および軸部9cが閉口位置固定部材として機能する。
【0034】
この実施形態では、ガイド体13の他端部の位置(ガイド体13の収容室8の内部空間8aへの突出長さ)に応じて、貫通孔7aを開閉させるための開閉弁9のストローク(軸方向移動量)を変えることができる。したがって、開閉弁9のストロークを最小限にすることが容易になる。
【符号の説明】
【0035】
1 空気式防舷材
2 防舷材袋体
2a 内部空間
3a 円筒状部
3b 鏡部
4 口金具
4a 平板部
5a 閉口位置固定部材
5b、5c、5d 開口位置固定部材
6 安全弁
7 隔壁
7a 貫通孔
8 収容室
8a 内部空間
9 開閉弁
9a 外側フランジ
9b 内側フランジ
9c 軸部
10a 閉口位置用穴
10b 開口位置用穴
10c シール材
11 連通路
11a 開閉バルブ
12 収容室開閉路
12a 収容室開閉バルブ
13 ガイド体
13a ガイド穴
14 カバー
14a 嵌合部